L0 ノルム最小化による画像ディテール改善手法の開発 Image

L0 ノルム最小化による画像ディテール改善手法の開発
Image enhancement using L0 norm minimization
ヒューマンインタフェース学講座
指導教員:
1.はじめに
0312010050
川原
Prima Oky Dicky A.
徹也
伊藤久祥
画素との距離と輝度差を考慮しているため,エッジを保存し
ながら,画像を平滑化することができる.
近年,高分解能のディジタルカメラの普及により,大容量
のディジタル画像を扱う機会が増えてきている.しかしなが
ら,そのような画像においても,必ずしもディテールが適切
3.提案の画像ディテール改善手法
に表現されているとは限らない.特に高ダイナミックレンジ
提案手法では,Bae ら(2006)の手法に基づき,まず原画
で撮影された画像でなければ,その問題が顕著である.先行
像およびモデル画像に対して L0 ノルムを最小化2)し,ベース
研究では,画像の低周波成分(以後,ベース画像と呼ぶ)と
画像を生成する.モデル画像にはテクスチャ領域に強いコン
高周波成分(以後,テクスチャ画像と呼ぶ)を分離し,独立
トラストを持つ画像や,画像全体に中間トーンや鮮やかな質
にモデル画像を用いたコントラストの調整やエッジの強調な
感を持つ画像が適している.
どの補正処理を施すことで,画像ディテールの改善が行われ
次に,原画像とベース画像との差をとり,テクスチャ画像
てきた(Bae ら, 2006)1).しかしながら,画像周波数の分離
を生成する.また,モデル画像のベース画像のヒストグラム
に使用されたバイラテラルフィルタ等によって,もとの画像
を用いて,原画像のベース画像のコントラストを調整する.
の勾配が歪むという問題が指摘されており,出力画像にもそ
そして,テクスチャ画像にハイパスフィルタリング処理を
の影響を及ぼすことがある.本研究は,画像勾配の歪みを最
適用し,テクスチャ画像の周波数の強弱から画像ディテール
小限にするために,L0 ノルムの最小化によるベース画像の作
の改善処理時に用いる重みを計算する(以後,DH と呼ぶ).
成を行い,画像ディテールの改善を試みる.
DH の値はテクスチャ画像周波数の弱い成分はそのまま残し,
強い成分は改善処理のために強調することが望ましい.そこ
2.先行研究
で,提案手法では通常のハイパスフィルタではなく,5×5 の
ω=2 としたハイブーストフィルタ(図1)による畳み込み演
一般に,画像ディテールのための画像周波数の分離のため
算を用いた.
に,エッジ保存型の平滑化処理が用いられる.このような平
滑化処理の代表として,トータルバリエーションやバイラテ
ラルフィルタをもとにした処理が知られている.バイラテラ
ルフィルタは,注目画素と近傍画素との距離およびその輝度
差をガウス関数で重み付けして平滑化を行う手法である.こ
こで,入力画像を f,平滑化処理後の画像をgとしたとき,
-1/25
-1/25
-1/25
-1/25
-1/25
-1/25
-1/25
-1/25
-1/25
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-1/25
-1/25
(25ω-1)/25
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-1/25
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-1/25
-1/25
-1/25
-1/25
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-1/25
図1 5×5 のハイブーストフィルタカーネル
バイラテラルフィルタは以下の式で表される.
最後に,DH に任意のパラメータλを加算したものとテク
w
w
m 2 n 2 f ( i , j ) f ( i m ,i n ) 2
f ( i m , j n ) exp 2 2 exp 2 2
n w m w
1 2
g (i, j )
w
w
m 2 n 2 f ( i , j ) f ( i m ,i n ) 2 exp 2 2 exp 2 2
n w m w
1 2
ここで,i と j は注目画素の座標,m と n は近傍画素の座標,
w は近傍画素までの最大距離,σ1 とσ2 は距離と輝度差の標
準偏差である.以上のように,バイラテラルフィルタは近傍
スチャ画像を乗算することで調整処理を行い,それとベース
画像を加算したものを最終的な出力画像とする.
4.評価実験
本研究では,エッジ保存型平滑化処理の精度が画像勾配に
及ぼす影響とそれによる画像ディテールの改善結果を調べる
提案手法の出力画像内に層状の模様が発生することがあっ
ために評価実験を行った.評価実験では,分離処理のフィル
た.これは,ベース画像のコントラスト調整が起因している
像を比較する.実験でのλの値はどの画像でも比較的に良好
と考えられる.
な結果を得ることができた 1+(DH の最大値)-(DH の最小値)
とし,モデル画像はアンセル・アダムスの"Clearing Winter
提案手法
入力画像
バイラテラル
Storm"を用いる(図2).
図2 モデル画像:Clearing Winter Storm
4.1.実験内容
実験画像として被写体と背景の輝度差が大きい等,エッジ
が強いと見られる画像 5 枚(A グループ)と自然現象やピン
図4 B グループの入力画像と提案手法およびバイラテラ
トのずれなどで被写体がぼやけた画像 5 枚(B グループ)を
ルフィルタを用いた手法の出力画像
用意し,それぞれの手法で得られた出力画像を比較する.図
3に実験用の画像の一部を示す.
図5 入力画像と層状の模様が出た出力画像
5.おわりに
本研究では,画像勾配の L0 ノルムの最小化を用いた平滑
化手法による画質改善手法を提案した.評価実験の結果から,
ベース画像のコントラスト調整を改善する必要がわかった.
しかし,B グループの出力結果から,提案手法がバイラテラ
A グループ
B グループ
図3 実験用の画像の一部
ルフィルタを用いた手法よりも良好な結果を得る可能性があ
ることを示した.現時点ではグレイスケール画像にしか適用
できないため,今後はカラー画像への適用を目指していく.
4.2.実験結果
図4,5に評価実験結果の一部を示す.その結果,A グル
ープの各手法の出力画像を比較したが,大きな差は見られな
かった.B グループの出力画像では,バイラテラルフィルタ
参考文献
Soomin Bae, et al. “Two-scale Tone Management for
Photographic Look” , ACM Transactions on Graphics ,
Volume 25, Issue 3 (Proc. of SIGGRAPH 2006)
1)
の出力にはノイズが発生したり,補正の効果が見られないも
Li Xu, et al. “Image Smoothing via L0 Gradient
Minimization”,ACM Transaction on Graphics,Volume 30
Issue 6(Proc. of SIGGRAPH Asia 2011)
2)
のがあったが,提案手法ではバイラテラルフィルタよりも補
正効果の高い出力画像を得ることができた.しかしながら,