任天堂らしさと今後の成長課題 ‐ユーザーとの対話の歴史とアンケート調査から‐ 09E419 長谷川茜 Ⅰ.国内ゲームメーカーの頂点に立つ任天堂 2010 年の国内のゲーム機市場の占有率は、任天堂が 49.7%、SCE が 48.1%と市場をほぼ2分して おり、国内のゲームソフト市場は、全販売本数の 20.5%を占めている任天堂を筆頭に、11 社以上のメ ーカーが鎬を削っている。これらのことから、ゲーム機およびゲームソフト市場でどちらもトップを 誇っている任天堂に焦点を当てて、その成功要因を探るとともに、今後の成長課題を示すことにした。 Ⅱ.任天堂の成功までの道程 任天堂は 1889 年に創業し、1983 年に「ファミリーコンピューター」がヒットしたことで、ゲーム メーカーとして広く知れ渡るようになった。しかし、その後 1996 年に発売した「ニンテンドウ 64」 と 2001 年に発売した「ニンテンドーゲームキューブ」は不振に終わった。この2つのゲーム機が持つ 特徴と、ライバルである SCE の「PlayStation」および「PlayStation 2」の特徴の比較を通して、 「ゲ ーム機のコンセプトや特徴と消費者のニーズのミスマッチ」が失敗要因であることを導き出した。ま た、任天堂が 2006 年に発売した「Wii」の世界的なヒットについては、Wii と SCE の「PlayStation 3」 のユーザーの傾向を、ユーザーのゲームの利用目的や一緒に利用する人を調査する WEB アンケート の結果を用いて比較したところ、Wii の「老若男女誰もが使える、ゲーム利用者の使いやすさを第一に 考えたコンセプト」が、ユーザー層の拡大に繋がったことが成功要因であると分かった。 Ⅲ.アンケートから考える Wii U の今後 香川大学経済学部の 18 歳から 20 歳までの学生 63 人を対象に、任天堂のゲームの利用状況や、任天 堂の新作ゲーム機である「Wii U」の認知度および購入意欲をアンケートで調査したところ、51 人か ら有効回答を得た。まず、全体の 88%の 45 人が任天堂のゲームを所持しており、そのうち 62%が、 月に1回以上は任天堂のゲームを利用していることが分かった。次に、任天堂ゲームの利用者 45 人の うち、Wii U を知っている人は 78%に上ったが、Wii U を購入する予定である人はわずか 11%であり、 Wii U のことを知っている人は多いものの、Wii U を購入する予定の人が非常に少ないことが分かった。 そこで、Wii U の掲げる魅力が消費者にとって魅力的ではないと考え、Wii U のコンセプトである「世 界中の人を繋げる」為の機能と類似したサービスや商品が既にあることや、Wii U の価格が消費者に とって高すぎることを示すアンケート調査の結果から、Wii U は消費者のニーズとのミスマッチを起 こしている為、失敗に終わるのではないかという見解を導き出した。 Ⅳ.結論 任天堂のこれまでの失敗と成功の歴史およびアンケートの調査結果を照らし合わせた分析から、消 費者が任天堂のゲーム機に求めているのは、性能の高さや機能の盛り込みではなく、 「老若男女誰でも わいわいと、簡単に楽しむことができる、ゲームの敷居の低さ」であることを示した。そしてこれこ そが任天堂らしさであり、このようなゲームを作っていくことが今後の任天堂には必要であると結論 付けた。 (宮脇秀貴ゼミ)
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