1. 国際通貨危機を理解するために

Lecture Notes on Global Investment 2015 (No.6) (2015/11/11)
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第 6 章 通貨基礎編(1)
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参考文献:(1)クルグマン・オブズフェルド著「国際経済 理論と政策 第3版」(新世社)、(2)イートウェル&テ
ーラー著「金融グローバル化の危機」(岩波書店)、(3)小川英治著「国際金融入門」(日経文庫)、(4)経済セミ
ナー特集「通貨制度」 (4)ラインハート・ロゴフ著「国家は破綻する」(日経 BP 社) 特に以下の講義ノートは
(1)によるところが大きい。
1. 国際通貨危機を理解するために
(1)通貨制度 メキシコ通貨危機やアジア通貨危機などの通貨・金融危機が起こった背景を明らかにするためには,通貨制
度を理解する必要がある(参考文献(3)(4)参照のこと)。 問題)1992 年の欧州通貨危機、1994 年のメキシコ通貨危機、1997 年以降のアジア通貨危機、1998 年のロ
シア通貨危機、1998 年以降のブラジル通貨危機、最近ではアルゼンチンで通貨危機の様相を呈している。こ
れらの通貨危機を経験した国が採用していた通貨制度は何か?
(2)分析用具
1.資産収益率は同じ通貨で計ったもので比較しないと意味がない。
例)米国のドル預金の利子率は10%(ドル表示)、日本の円預金の利子率は5%(円表示)。このとき、
ドル預金のほうが有利といえるか?
2.利子平価条件式
R$=R¥+ (Ee-E)/E ・・・・
(1)
R$=米国のドル預金の利子率、R\=日本の円預金の利子率、E=為替レート($/¥)、Ee=予想為替レート
問題)為替レートの単位を(¥/$)の場合、利子平価条件式はどうなるか。
R$=R¥+ (Ee-E)/E
ドル預金の資産収益
円預金の資産収益率
率(ドル表示)
(ドル表示)
(1)式をグラフ化すると、下図のようになる(Y 軸の単位は為替レート、X 軸の単位は資産収益率)。
上のグラフにおける、E*は均衡為替レートとよばれている。
為替レートが E1、E2 の値をとった場合のドル預金、円預金の資産収益率はそれぞれ以下のグラフで示さ
れる。
チェック問題習
問1) Rwon=韓国のウォン預金の利子率、Ryuan=中国人民元の利子率、E=為替レート(Won/Yuan)、
Ee=予想為替レートとすると、このときに成立する利子平価条件式を示しなさい。
利子平価条件式をグラフ化すると、下図のようになる(Y 軸の単位は為替レート、X 軸の単位は資産収益率)。
上のグラフにおける、E*は均衡為替レートとよばれている。
為替レートが E1、E2 の値をとった場合のドル預金、円預金の資産収益率はそれぞれ以下のグラフで示さ
れる。
(1)分析用具(再論)
1.資産収益率は同じ通貨で計ったもので比較しないと意味がない。 例)米国のドル預金の利子率は10%
(ドル表示)、日本の円預金の利子率は5%(円表示)。このとき、ドル預金のほうが有利といえるか?
2.利子平価条件式
R$=REURO+(Ee-E)/E
ドル預金の
EURO 預金の資産
資産収益率(ドル表示)
収益率(ドル表示)
↓ A
↓
B
ただし、R$=ドル預金の利子率、REURO=EURO 預金の利子率、E=為替レート($/EURO)、Ee=予想
為替レート
◆練習問題1(R$=Reuro+(Ee-E)/E を仮定する)
Q:FRB が金融緩和策をとった(=R$の低下)。ドルは(①増価する、②減価する、③変化しない)。
<考え方>
金融政策における公開市場操作⇒①売りオペ、②買いオペ
この場合、FRB は金融緩和策をとったので、買いオペになる。
(※FRB による買いオペ→国債の購入→中央銀行当座預金の増加→ハイパワードマネーの増加→貨幣供
給量の増加)
ハイパワードマネー=現金+中央銀行当座預金…①
貨幣供給量=貨幣乗数×ハイパワードマネー…②
国債を購入することによって、中央銀行当座預金が増加するために、ハイパワードマネーも増加
する(①より)。同時に、貨幣乗数が一定である場合、ハイパワードマネーが増加したことから、
貨幣供給量も増加する(②より)。したがって、FRB による買いオペは、貨幣供給量の増加とな
る。
貨幣供給量の増加(M/P→M’/P)により、均衡金利が R*→R**へとシフトする。
図4を左に90度反転させる。
アメリカ貨幣市場の貨幣供給量が増加した(M/P→M’/P)ので、アメリカ預金資産収益率は R$→R’
$へとシフトし、為替レートも E*→E**へとシフトする。したがって、アメリカ預金資産収益率が低下
し、為替レートが減価していることがわかる。→正解は「②下がる」(=減価する)
◆練習問題2
Q:EU の中央銀行(ECB)が金融緩和策をとった。ドルは(①増価する、②減価する、③変化しない)。
<考え方>
中央銀行による買いオペ⇒ユーロ金利の低下⇒ユーロの為替レートが E*→E**へとシフト(ユーロ為替
レートの下落)⇒ドル高・ユーロ安
ユーロ預金金利(REURO)が①上がるケース:資産収益率曲線は右にシフト,②下がるケース:資産収益
率曲線は左にシフト
したがって、正解は「①増価する」
◆練習問題 3
Q:ほとんどの投資家が、今後ドルが減価すると予想した場合、ドルは(①増加する、②減価する、③変
化しない)。