ドクターおぐちのつぶやき - おぐちこどもクリニック

こどもの城通信 vol.47
わ ん だ ぁ ら ん ど 2010 夏号
ドクターおぐちのつぶやき
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EGO SUM LUX MONDI
~
ドイツ在住の初孫に会う為に、6 月初旬に2週間もの長い休みを取って、イタリアに旅行してきました。直行便でミラノ、ユーロスタ
ーでフィレンツェに行き、数日滞在し、またユーロスターでベネツィアに移動して次男一家に合流。最後にレンタカーを借りて次男の運
転でドロミテ(イタリアアルプス)に行きました。晴天に恵まれ、中世の町並みとイタリアンを堪能し、生後1才5ヶ月の可愛い盛りの
初孫(またしても男児!)ともゆっくりと遊んできました。
ミラノの美しく壮麗な大理石で出来た Duomo(大聖堂)、そしてフィレンツェのクーポラ(丸天井)で有名な Duomo など数限りない
有名な教会建築と、そして当たり前のように数百年を過ぎた街並、どれをとっても素晴しいものでした。一日に何度もあちらこちらから
教会の鐘の音がカランカランと聴こえてくる風情、そして夜はライトアップされた美しい中世の建物を見ながら広場のレストランで食事
を摂りました。
フィレンツェでは、小児科医として是非訪れたかった 14 世紀に創立された教会付属の“捨て子院(ISTITUTO DEGLI INNOCENTI DI
FIRENZE)
”を見学しました.INNOCENTI の意味は解りますか?これはイタリア語で,INNOCENTO の複数形で、英語の INOCENCE
と同じ単語で,意味は共に無垢、無実、あるいは幼子、さらにイタリア語では“捨て子”の意味があります.つまり子どもは無垢な存在
ですね。子どもの人権なんかは全く顧みられていなかった中世に,捨て子を受け入れ、大切に育てていたのです(フィレンツェとその周
辺から年間 6-700 人の捨て子)
.乳母を探して、可能な限り母乳栄養を試みていましたが、とても全ての乳児に母乳を与えることは出
来ず、手厚い養護にも関わらず乳児は栄養不良や感染症で次々と亡くなり、何と乳児死亡率は 50%を越えていたのです。それでも、乳
幼児期を乗り越えて育ったこども達には、教育を授け、特別な才能に恵まれた子には音楽を教え、
中には教会の司祭にまでなった子もいたのです。捨て子院の入り口には素晴らしい彫像が置かれ
ており(右写真)
、それはマリア様と幼子イエスの母子像です。幼子イエスが掲げている巻物に
は、次のようなラテン語が書かれていました。
『EGO SUM LUX MONDI=I am the light of
the world』
、そうです、こども達は世の光である、と宣言しているのです。EGO は自我です
から、私の意、LUX も光、MONDI は世界ということも何となく解ります。
私は、新生児センターで、死に瀕した赤ちゃん達、重度な
障害児のケアに当たってきましたが、正にこども達は障害
があろうとなかろうと、世の光であり、その気持ちを持っ
て治療していたか?と思い至りました。その思いは開業し
た今も同じで、クリニックには世の光である幼子達がたく
さん来ているのです。
この彫像以外に、美しい母子像が描かれた絵画にも接しました。その中のひとつは、マリア様の優
雅な立ち姿、そしてそのマントの下に多くの捨て子たちを庇護している絵でした(左絵)。マリア
様は母親の理想の姿ですね。こども達の表情を見てください。憧憬と絶対的信頼の眼差しが描かれ
ています。戦乱と疫病が蔓延していた中世に、捨て子院では修道尼は現代の看護師と同様、こども
達の命を守り育む為に懸命に働いていたのです。そうです、この捨て子院は小児病院の原点だった
のです。
クリニック情報
その 1
予防注射について
クリニック情報 その 2
最近の流行疾患
ワクチンの不足により多くの方々に長期間お待ちいただいた Hib
最近クリニックを受診する子どもたちに、流行性耳下腺園
ワクチンでしたが、ワクチン不足が解消され現在随時予約を受け付
(おたふく)と手足口病が多く見られます。例年より罹患す
けています。また、日本脳炎も新しいワクチンとなり、再開しまし
る子どもが多いという報道もあるようで、お母さん方にとっ
た。一方、予防接種の種類が増えたことで、クリニックでは注射の
ては心配なニュースかと思います。しかしどちらの病気も、
予約枠がすぐにいっぱいになるという状況が続いています。
ほとんどの場合高い発熱は見られず、有効な薬もないため自
ご迷惑をおかけしていますが、ご理解下さい。
然の経過を見るしかありません。おたふくの場合は耳下腺の
ちなみに、以下の 4 種類の不活化ワクチンは、2 種類まで同時に
腫脹によって、手足口病の場合口内にできる発疹によって、
接種できます。
痛みが伴い食欲が落ちるということがありますので、のど越
【三種混合・ヒブ・肺炎球菌・日本脳炎】
しの良いものを少しずつ与えて
*ヒブ・肺炎球菌は自費扱いワクチンです。
子どもたちの自然治癒力を見守っ
ていきましょう。
~日射病と熱射病~
心配なことがありましたら、看護
師にご相談下さい。
むし暑い季節がやってきました。これからの季節、気をつけたいのが日
射病・熱射病ですが、皆さんこれらの違いについてご存知でしょうか?
【日射病】強い日差しを浴びて体が熱くなると、体温を下げるために
◆夏休みのお知らせ◆
末梢血管、つまり皮膚表面の血管が拡がり(皮膚が赤くなるのはこ
のため)
、外に熱を出そうとします。その結果、身体の中のほうに
ある血管の中の血液量が減って、血圧が下がり、脈が速くなったり
クリニック:8 月 1 日(日)~8 日(日)
冷や汗をかいたりすること。
および 8 月の毎週土曜日
【熱射病】日差しとは関係なく、大量の発汗による脱水に加えて、体温
調節ができなくなり,うつ熱(熱が身体にこもる)状態になること。
バンビ:8 月 7 日(土)~15 日(日)
通常日射病では体温は平熱または低下ですが、熱射病は体温が上昇
し、より重篤な状態になります。特に体温調節機能の未熟な乳児期は、
体温が上昇しやすく、重篤になりやすいので、注意が必要です。
日射病・熱射病などをまとめて『熱中症』と呼びます。
【対処法】基本は予防です。
*強い日差しや暑い時間帯の長時間外出は避ける。
*水分補給をこまめにする。発汗が多いときは、少し塩分の入った
スポーツ飲料がお勧めです。
*顔が真っ赤にほてったり、なんとなく元気がなくなったときは、涼し
い場所に移動し、水平に寝かせて身体を冷やしたり、水分を与えます。
体温が上昇し、ぐったりして水分を取れなくなったときは、
すぐに受診してください。
*ベビーカーは中に熱がこもりやすく、子どもはより地面に近い位置に
若いつもりでいましたが、さすがに孫が生まれると、名実共に爺
いて照り返しなどの影響を受けるので、お母さんが感じている以上に
さん、婆さんになってしまった様です.本当に人生は回るのだと
暑い環境です。こまめにお子さんの様子を見るようにしましょう。
思います.
【HP のご案内】おぐちこどもクリニック:http://oguchi-ped.cside.com/
ふぁみりぃさぽぉと ばんびぃの: http://fs-bambino.com/