経済・金融の国際化と不動産 第6章

第6章 経済・金融の国際化と不動産
第 6章
経済・金融の国際化と不動産
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⃝「為替レート」の基本的な変動要因としては、理論的には購買力平価等があげられるが、現実には、各
国の経済動向、金融当局の金融緩和状況等さまざまな要因が影響している。
⃝円高は、輸入品の価格低下や生産者物価が低下するというメリットがある反面、輸出の価格競争力を低
下させる。一方、円安は、輸出数量を押上げる要因になり、株価上昇、国内の企業・消費者マインドの
改善等、景気にプラスの影響を与える反面、円安による原材料などの輸入価格の上昇というマイナス面
もある。
経済・金融編
⃝「実効為替レート」は、自国と主要な他国・地域通貨間の為替レートを、貿易額のウエイトで加重平均
し指数化したものを使用し、自国通貨の対外競争力を単一の指標で捉えようとするものである。
⃝国ごとの一定期間の収支状況をまとめたものが国際収支であり、「経常収支」「金融収支」等で構成され
ている。平成25(2013)年度の経常収支は+0.8兆円とかろうじて黒字を確保したが、前年度比▲3.4兆
円と大幅な黒字幅縮小となった。そのうち、特に「貿易収支」
「サービス収支」がともに赤字で、
「貿易・
サービス収支」は3年連続の赤字となり、赤字幅も拡大している。
1.国際金融と為替レート
⑴ 為替レート
本来為替レートは、通貨の交換当事者が市場で自由に決められる性質のものであるが、
市場の自由に任せておくと通貨の交換比率、すなわち一国の通貨価値が予想外の変動をき
たし、その国の経済に混乱をもたらしかねない。そこで通貨の発行主体である各国は、為
替レートに関する国の政策として、大別すれば「変動レート制」(注1)と「固定レート制」
(注2)
のどちらかを採用している。日本やアメリカなどは変動レート制を採用しているが、
発展途上国の多くは固定レート制である。また中国のように、固定レート制から変動レー
ト制への移行過程(注3)の国もある。
(注1)
先進各国が採用している、大部分を外国為替市場に委ねている制度。
(注2)
1ドル360円時代の日本が、固定為替レート制度であった。
(注3) 中国は、平成17(2005)年7月から「管理フロート制」に移行している。これは、
ドルなどの主要通貨の動きをミックスして(通貨バスケット)為替相場を管理するも
ので、かねてよりアメリカなどから、為替の自由化への強い要請があったのを受けた
もの。
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⑵ 「円高・円安」の意味
我々は、モノやサービスの値段について、その数字が大きくなれば高くなる、小さくなれ
ば安くなると判断している。しかし、外国為替レートの場合は、1ドル100円が90円のよう
に数字が小さくなれば「円高」、80円が90円のように数字が大きくなれば「円安」といって
いるが、これはそれぞれ「ドル安」「ドル高」と表現すると理解が早くなる。
図表6-1 日本の為替レートの推移(円ドル・円ユーロ相場)
出所:日本銀行「経済・物価情勢の展望(2014年4月)」
このような理解が必要な背景は、以下のとおりである。
外国為替レートは、ある国の通貨と他の国の通貨との交換比率であるから、それはとりも
なおさず、ある国の通貨で他の国の通貨を買うときの売買価格ということとなる。
例えば、外国人投資家(注)が日本の株式や不動産をドルで買おうとすると、ドルでは日
本国内での支払いができないので、いったんドルを日本円に替える──ドルで円紙幣を買う
──必要がある。
(注)
外国人投資家とは、外為法における「非居住者」をいい、「外国の通貨で投資損益を判断
する外国通貨の持主である個人や法人」のことである。日本人が、ケイマン籍など外国籍の
法人を作り、その名義で取引をしても「非居住者」となる。
そのときの為替レート=売買価格が80円(手数料は考慮していない)だとすると、1ドル
で80円の円貨が買えるわけだから、
“日本円紙幣という品物”の1単位、例えば100円については、
その買値χドルは、
1ドル:χドル=80円:100円 χ=100円÷80円≒1.25
で、約1.25ドルとなる。いわば、1万円札の値段が125ドル、というわけである。
日本円の100円の値段が、1.25ドルから1.1ドルになったとする。これが円安である。
そしてこのときの1ドルで買える円貨β円は、
1.1ドル:1ドル=100円:β円 β=100円÷1.1ドル≒90.9
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