子どもへの しつけ・教育観 - CRN 子どもは未来である

●子育て生活基本調査報告書@
第
2章
子どもへの
しつけ・教育観
43
●子育て生活基本調査報告書@
1
日頃の生活習慣
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
1.生活習慣の実態
ここでは、子どもの日頃の生活習慣につい
準備」16.3ポイント差(男子65.3%、女子
て、「自分一人でできる」「親がときどき手伝
81.6%)、「歯磨きの習慣」14.3ポイント差
う(言う)」「親がよく手伝う(言う)」「自分
(男子62.2%、女子76.5%)だった。
一人でできない」の4段階でたずね、生活習
学年が上がっても約束は守れない
慣の自立度について明らかにした。
(図2−3)
自立度が高いのは、翌日の学校の準備
「自分一人でできる」割合の学年による推
(図2−1)
移をみてみた。どの項目も学年が上がるにし
調査対象が小3生∼中3生のため、日頃の
たがって「自分一人でできる」割合は高くな
生活習慣についてはかなり自立できている。
るが、とくに変化が大きいのは「歯磨きの習
「自分一人でできる」と「親がときどき手伝
慣」「食事のマナー」「あいさつやお礼を言う
う(言う)」の割合を合わせると、8項目す
こと」「翌日の学校の用意や準備」だった。
べてにおいてほぼ7割を超えていた。
逆に「自分一人でできる」割合の伸びが少な
「自分一人でできる」割合が高い上位3位
いのは、「約束を守ること」(中3生と小3生
をみると、第1位「翌日の学校の用意や準備」
の差9.2ポイント)、「家事の手伝い」(同12.4
73.5%、第2位「歯磨きの習慣」69.4%、第
ポイント)、「決まった時間に起床・就寝する
3位「あいさつやお礼を言うこと」61.4%だ
こと」
(同14.7ポイント)
、
「遊んだあとや部屋
った。逆に「親がよく手伝う(言う)」割合
の片づけ」
(同22.7ポイント)だった。これら
が高いのは「決まった時間に起床・就寝する
の項目は、年少児(前回調査)から中3生ま
こと」「遊んだあとや部屋の片づけ」「家事
で12学年通してみても「自分一人でできる」
の手伝い」だった。それらの項目は「自分一
割合の伸びは低く、おそらく成人するまで大
人でできない」数値も他の項目に比べて若干
幅な上昇はしないだろう。基本的な生活習慣
高く、「家事の手伝い」は4.4%だった。
やルールは、成長にしたがい習慣化がむずか
しくなると考えられるため、自立度の低いこ
女子のほうが自立している(図2−2)
れらの項目は、とくに幼児期からきちんとし
男女別に「自分一人でできる」割合をみる
つけていく必要があるだろう。また、小学校
と、すべての項目で女子の数値が高かった。
高学年∼中学生へと成長するにつれて、親は
これは前回調査の年少児から小2生までの傾
学習面のしつけに意識が偏りがちだが、生活
向と同様である。とくに差が大きいのは、
習慣についても引き続き配慮していくことが
「約束を守ること」19.8ポイント差(男子
大切である。
38.7%、女子58.5%)、「翌日の学校の用意や
44
●子育て生活基本調査報告書@
図2−1 日頃の生活習慣
自分一人でできない
(%)
自分一人でできる
親がときどき手伝う(言う)
親がよく手伝う(言う)
31.0
38.3
26.5
A.決まった時間に起床・
就寝すること
B.あいさつやお礼を言う
こと
61.4
C.食事のマナー
3.0
1.2
4.7 0.4
1.2
32.3
47.6
無答
不明
41.8
0.3
9.0
1.4
D.歯磨きの習慣
69.4
21.4
0.5
7.5
1.2
E.遊んだあとや部屋の
片づけ
29.7
F.家事の手伝い
42.0
21.6
23.8
49.9
G.翌日の学校の用意や準備
3.4 1.1
22.2
73.5
4.4 1.9
17.7
●
第
2
章
0.8
6.7
1.3
H.約束を守ること
48.6
38.9
1.3
10.0
1.2
(全体4475人)
図2−2 日頃の生活習慣(自分一人でできる割合)×性
0
10
20
30
40
50
60
80
90
(%)
100
29.6
A.決まった時間に起床・
就寝すること
31.7
58.8
B.あいさつやお礼を言う
こと
63.6
男子(2189人)
44.8
C.食事のマナー
50.2
女子(2177人)
62.2
D.歯磨きの習慣
76.5
25.1
E.遊んだあとや部屋の
片づけ
F.家事の手伝い
70
34.5
19.4
23.6
65.3
G.翌日の学校の用意や準備
81.6
38.7
H.約束を守ること
58.5
45
▼
日
頃
の
生
活
習
慣
▼
Q
8
▼
集
計
表
P.
128
∼
●子育て生活基本調査報告書@
第2子以降のほうがお手伝いできる
状況別に「自分一人でできる」割合をみたが、
出生順位別(第1子と第2子以降別)に「自
あまり差はなかった。一番大きな差があった
分一人でできる」割合をみると、すべての項
のは、
「決まった時間に起床・就寝すること」
目で第2子以降のほうが高かった。一番差が
で、
常勤者の子どもの割合が最も高かった(専
大きいのは「家事の手伝い」で、第1子17.6
業主婦31.1%、パートタイマー29.1%、常勤者
%、第2子以降25.1%と7.5ポイントの差がみ
36.0%で、最大6.9ポイントの差があった)
。
られた。上にきょうだいがいると、一緒にお
若干常勤者の子どもが自立しているようだが、
手伝いをする機会が増えるため、自立度が高
母親が家庭で過ごす時間の長さは、生活習慣
くなるのではないだろうか。次に母親の就業
の自立度にあまり関係ないといえるだろう。
2.もう少しきちんとやってほしいこと
ここでは、前の質問で聞いた生活習慣8項
習慣」6.1ポイント差(男子13.4%、女子7.3%)
目の中から、
「もう少しきちんとやってほしい」
だった。前述のように男子のほうが約束を守
と思うことすべてに○をしてもらった結果を
れないため、男子の母親がそれを強く望むの
まとめた。
は理解できるが、そもそも男子のほうがなぜ
約束を守れないのか。反抗期特有の親(母)
「遊んだあとや部屋の片づけ」をきちんと
子関係のむずかしさが男子により顕著に出て
してほしい(図2−4)
いるからだろうか。大変興味深いところであ
母親が子どもに対してきちんとやってほし
る。一方、女子をもつ母親が求めているのは
いと思うことは、第1位「遊んだあとや部屋
「家事の手伝い」で、男子16.5%に対して女子
の片づけ」41.2%、第2位「決まった時間に
27.4%と10.9ポイントの差があった。
“女の子
起床・就寝すること」23.4%、第3位「家事
に家事を手伝ってもらいたい”という考え方
の手伝い」21.8%、第4位「約束を守ること」
の母親が多いようだ。学校教育では家庭科の
19.1%、第5位「あいさつやお礼を言うこと」
男女共修が実施されているが、家庭では相変
15.1%だった。片づけは、前回調査でも第1
わらず女子に家事の手伝いを望んでいる。そ
位で、生活習慣の自立に関する親の願いは変
のような親の考え方が変わらないかぎり、教
わらないことがわかる。
育効果はあまり期待できないのではないだろ
うか。
女子に家事の手伝いを求めている
学年が上がるにつれて、家事の手伝いを
男女別にみると、ほとんどの項目で男子の
割合が高かった。前述のように男子のほうが
期待(図2−5)
自立していないため、当然の結果といえそう
学年が上がるにつれて、ほとんどの項目で
だ。とくに男子の割合が高いのは、「約束を
きちんとしてほしい割合は低くなる傾向にあ
守ること」13.5ポイント差(男子25.9%、女子
る。ただし、「家事の手伝い」だけは学年が
12.4%)
、
「翌日の学校の用意や準備」11.2ポイ
上がると数値が高くなり、小3生∼中3生ま
ント差(男子18.0%、女子6.8%)、「歯磨きの
でで8.3ポイント高くなっていた。
46
●子育て生活基本調査報告書@
図2−3 日頃の生活習慣(自分一人でできる割合)×学年
(%)
100
90
86.2 歯磨きの習慣
82.4 翌日の学校の用意や準備
83.0
78.7
80
82.4
74.6 あいさつやお礼を言うこと
72.3
70
73.5
67.6
65.5
66.3
60.6
60
50
54.7
48.2
50.6
43.1
40
43.5
41.9
30.3
20
50.4
49.1
49.5
48.5
48.1
30.2
25.6
25.3
23.0
19.5
20.6
16.5
小3生
(492人)
小4生
(510人)
42.2 遊んだあとや部屋の片づけ
37.7 決まった時間に起床・就寝すること
34.9
34.7
30.6
28.4
23.8
52.3 約束を守ること
51.6
32.5
29.6
19.8
17.1
55.5
56.5
41.4
33.7
30
64.3 食事のマナー
64.0
60.9
54.3
70.7
●
第
2
章
29.5 家事の手伝い
22.8
20.1
10
0
小5生
(543人)
小6生
(585人)
中1生
(901人)
中2生
(806人)
中3生
(621人)
図2−4 もう少しきちんとやってほしいと思うこと × 性
0
5
10
15
20
25
30
35
40
(%)
45
23.4
23.3
23.8
A.決まった時間に起床・
就寝すること
15.1
15.6
14.9
B.あいさつやお礼を言う
こと
全体(4475人)
11.2
11.7
11.0
C.食事のマナー
男子(2189人)
女子(2177人)
10.4
D.歯磨きの習慣
13.4
7.3
41.2
41.8
40.6
E.遊んだあとや部屋の片
づけ
21.8
16.5
F.家事の手伝い
27.4
12.4
G.翌日の学校の用意や準備
18.0
6.8
19.1
H.約束を守ること
25.9
12.4
47
▼
日
頃
の
生
活
習
慣
▼
Q
8
▼
集
計
表
P.
128
∼
●子育て生活基本調査報告書@
出生順位別、母親の就業状況別で差はない
第2子以降39.1%)だった。また、母親の就
出生順位別では、第1子のほうがきちんと
業状況別ではほとんど差はなかったが、「遊
してほしいと思う割合が高い。しかし第2子
んだあとや部屋の片づけ」だけ多少差がみら
以降との差はそれほど大きくない。差がある
れた。専業主婦40.3%、パートタイマー41.5
のは「家事の手伝い」5.2ポイント差(第1子
%、常勤者44.9%と、専業主婦に比べて常勤
24.6%、第2子以降19.4%)
、
「遊んだあとや部
者のほうが4.6ポイント高かった。
屋の片づけ」4.5ポイント差(第1子43.6%、
3.生活習慣や自立状況に対する満足度
2子以降を比較すると、第2子以降の満足度
ここでは、子どもの日頃の生活習慣や自立
の状況に対する満足度を「とても満足してい
が高かった。学年別、母親の就業状況別では、
る」「まあ満足している」「あまり満足してい
大きな差はなかった。
ない」
「ぜんぜん満足していない」の4段階で
「片づけ」「起床就寝」「約束を守ること」
たずねた。
の自立度が母親の満足度を左右する
満足度は高い(図2−6)
母親を子どもの自立状況に満足している群
「とても満足している」7.0%、「まあ満足
(「とても満足している」と「まあ満足してい
している」69.3%、「あまり満足していない」
る」を合計した割合、以下「満足群」
)と満足
20.3%、
「ぜんぜん満足していない」2.0%だっ
していない群(「あまり満足していない」と
た。
「とても満足している」と「まあ満足して
「ぜんぜん満足していない」を合計した割合、
いる」を合計した割合は76.3%となり、8割
以下「不満足群」
)に分け、子どもの自立の状
弱の人が子どもの自立の状況に満足している
況(
「自分一人でできる」と「親がときどき手
ことがわかる。満足度は前回調査に比べて高
伝う(言う)
」を合計した割合)を比較してみ
くなっていた。
た。満足・不満足群で差が大きいのは、第1
位「遊んだあとの片づけ」(満足群−不満足
女子、第2子以降の満足度が高い(図2−6、7)
群=29.0ポイント)
、第2位「決まった時間に
「とても満足している」と「まあ満足してい
起床・就寝すること」(同27.7ポイント)、第
る」を合計した割合を男女で比較すると、男
3位「約束を守ること」
(同24.1ポイント)だ
子72.0%、女子81.0%と、女子のほうが9.0ポ
った。「片づけ」「起床就寝」「約束を守るこ
イント高かった。女子のほうが満足度が高い
と」の自立度が母親の満足度を左右すること
ことがわかる。また、同じように第1子と第
がわかった。
48
●子育て生活基本調査報告書@
図2−5 もう少しきちんとやってほしいと思うこと×学年
(%)
60
51.6
50
50.4
44.9
41.1
40
36.8
35.6
33.2 遊んだあとや部屋の片づけ
30
26.0
20
22.1
19.3
18.8
16.9
12.9 13.3
12.3
24.6
21.7
21.5
16.9
13.7
11.8
10.4
11.8
11.4
9.7
9.4
小5生
(543人)
小6生
(585人)
中1生
(901人)
23.7
23.1
19.8
19.2
17.1 17.3
14.5
22.4
21.3
19.3
18.1
15.9
10
23.2
23.1
18.3
25.2
24.3 決まった時間に起床・就寝すること
24.2 家事の手伝い
23.3
17.5
16.6 約束を守ること
11.2
9.2
8.1
4.8
9.2
8.5
6.6
4.5
翌日の学校の用意や準備
あいさつやお礼を言うこと
食事のマナー
歯磨きの習慣
●
第
2
章
0
小3生
(492人)
小4生
(510人)
中2生
(806人)
中3生
(621人)
図2−6 日頃の生活習慣や自立の状況に対する満足度×性
0
10
20
30
40
50
60
(%)
80
全体(4475人)
7.0
5.7
8.7
とても満足している
70
男子(2189人)
女子(2177人)
69.3
66.3
72.3
まあ満足している
20.3
24.3
あまり満足していない
15.8
ぜんぜん満足していない
2.0
2.5
1.6
図2−7 日頃の生活習慣や自立の状況に対する満足度×出生順位
とても
満足している
第1子
6.0
(2100人)
第2子以降
8.0
(2348人)
まあ満足している
あまり
満足していない
67.9
22.4
70.5
18.4
49
ぜんぜん
満足していない
無答不明
2.8
0.9
1.3
1.8
▼
日
頃
の
生
活
習
慣
▼
Q
9
▼
集
計
表
P.
130
∼
●子育て生活基本調査報告書@
2
保護者と学校の教育の役割分担
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
子どものしつけや教育について、
「家庭と学
なども家庭の役割としていることがわかる。
校のお互いの役割分担」をどのように考えて
学校の役割とする回答が多くなるのは、
「授
いるかを、
「学校に遅刻しない」から「将来の
業中騒いだり、立ち歩いたりしない」「スポ
進路・進学先を考えること」まで、18項目に
ーツ能力や体力の向上」「音楽や美術など芸
わたってたずねた。内容は、学校での行動や
術面の才能を伸ばす」の三つである。教室内
勉強、あるいは生活習慣、社会的マナー、進
のこと、そして専門性を要するもの、などが
路など多岐にわたる。選択肢は、「どちらか
学校の役割と考えられているのだろう。ただ
というと家庭が教育する」「どちらかという
し、これらの項目も圧倒的に学校の役割と考
と学校が教育する」「あえて教育しなくてよ
えられているわけではない。「音楽や美術な
い」の三つである。
ど芸術面での才能を伸ばす」などは、家庭の
役割とする比率(4割前後)と学校の役割と
家庭の役割とする項目が圧倒的に多い
する比率(5割前後)には、あまり差がみら
(図2−8)
れないのである。分担意識が家庭と学校の間
で拮抗している項目ともいえるだろう。
図2−8は、結果を子どもの性別に示した
ものであるが、性別にかかわらず、家庭の役
「あえて教育しなくてもよい」という選択
割とする項目が非常に多くなっている。全18
肢は、18項目全体を通して比率は低い。ほと
項目中、15項目において「どちらかというと
んどの項目で、1割以下となっている。した
家庭が教育する」という回答比率が他の選択
がって、これら18項目は、その多くは家庭に
肢を上回っている。家庭の役割とする回答が
おいて、またいくつかは学校において教育す
9割を超える項目は五つある。「学校に遅刻
るものと考えられているということになる。
しない」「忘れ物をしない」「起床時間・就寝
なお、
「あえて教育しなくてよい」が1割前後
時間などの生活習慣」「歯の健康管理」「乗り
に高まるのは、
「友だちとのつきあい方」
「スポ
ものや路上などでのマナー」である。家庭内
ーツ能力や体力の向上」
「音楽や美術など芸術
の基本的生活習慣とともに、社会的なマナー
面の才能を伸ばす」の三つのみである。
50
●子育て生活基本調査報告書@
子どもの性別で差がない教育の分担
鮮明な変化を示しているわけではないとして
同じく図2−8で、子どもの性別による家
も、子どもが大きくなるにしたがって、家庭
庭と学校の役割分担についての考えの差をみ
の役割という考えが少しは減少しているとい
ることができる。図に示すように、子どもの
ってよいだろう。
性別で結果に大きな差はない。「音楽や美術
など芸術面の才能を伸ばす」
という項目のみ、
母親の就労の有無によって
子どもが女子のとき、「どちらかというと家
分担意識に差はない
庭が教育する」が多く、男子のとき、「ど
母親の就業状況別(専業主婦、パートタイ
ちらかというと学校が教育する」が多くなっ
マー、常勤者)に、家庭と学校の役割分担に
ているくらいである。しかし、これも5%程
ついての考えをたずねた結果をみたが、ほと
度のわずかな違いであり、全体としては差が
んど差がなかった。「どちらかというと家庭
ないといってよいだろう。
が教育する」という割合が、専業主婦が常に
多いわけではない。常勤者の母親が多い項目
学年別にみる教育分担の考え
もある。
●
第
2
章
小3生から中3生まで、子どもの学年によ
って、家庭と学校の役割分担についての考え
子どもの出生順位別でも差はない
が変化するだろうか。
子どもが第1子か、第2子以降かの別によ
って結果をみたが、あまり違いはなかった。
項目によって違いを示しているものといな
いものがある。違いを示している項目をあげ
てみよう。学年別というより、小学校と中学
以上、子どものしつけや教育について、家
校という学校段階で違いがみられる。「どち
庭と学校とを対比的に示した上で、その役割
らかというと家庭が教育する」という割合が、
分担を問うてみたわけである。
小学校段階のほうが中学校段階より多いのは、
「夏休み中の勉強」「家での学習習慣」「スポ
ーツ能力や体力の向上」「将来の進路・進学
先を考えること」などである。逆に、中学校
段階のほうが小学校段階より「どちらかとい
▼
保
護
者
と
学
校
の
教
育
の
役
割
分
担
▼
Q
10
▼
集
計
表
P.
130
∼
うと家庭が教育する」という割合が多い項目
はあまりみられない。このことからすると、
51
●子育て生活基本調査報告書@
図2−8 家庭と学校の教育の役割分担×性
(%)
どちらかというと家庭が教育する
A.学校に
遅刻
しない
全体(4475人)
95.2
男子(2189人)
95.5
女子(2177人)
94.9
B.忘れ物をしない
全体
92.3
男子
92.2
女子
92.4
あえて教育しなくてよい
どちらかというと学校が教育する
1.1
3.0
2.9
1.8
2.5
2.0
3.3
1.7
3.3
2.7
86.2
7.8
86.2
8.1
女子
86.3
7.6
D.授業中騒いだり、 全体
立ち歩いたりしな
い
男子
25.7
69.3
25.0
69.9
女子
26.5
F.先生への態度や
言葉づかい
H.行きしぶり・
不登校
I.夏休み中の勉強
2.9
3.1
2.7
3.0
3.0
3.1
1.9
3.0
2.0
3.0
1.8
2.9
68.8
全体
75.3
17.5
5.7
男子
74.3
18.5
5.9
女子
76.6
16.3
5.5
全体
80.0
14.8
男子
78.9
15.7
全体
58.5
34.1
5.3
男子
58.9
34.1
4.8
女子
58.4
33.9
5.7
全体
69.6
17.9
4.8 7.6
男子
69.7
18.3
4.9 7.1
女子
69.5
17.6
4.8
1.5
1.3
1.6
1.9
3.4
1.8
3.6
1.9
3.1
13.8
81.2
女子
G.登下校時の安全
2.5
1.2
2.2
1.4
3.0
1.0
0.9
C.文房具や教科書を 全体
大切に使う
男子
E.いじめをしない
無答不明
1.0
2.1
2.1
2.0
8.1
全体
72.0
19.1
5.8
3.1
男子
71.4
20.2
5.4
3.0
女子
72.5
18.1
6.2
3.2
(次ページへつづく)
52
●子育て生活基本調査報告書@
(%)
あえて教育しなくてよい
どちらかというと学校が教育する
どちらかというと家庭が教育する
J.家での
全体(4475人)
学習習慣
男子(2189人)
85.8
8.3
86.1
8.6
女子(2177人)
85.3
8.1
K.起床時間・就寝時 全体
間などの生活習慣
男子
96.8
女子
96.9
L.歯の健康管理
(歯磨き指導)
M.友だちとの
つきあい方
無答不明
2.9
3.0
2.4
2.9
3.5
3.1
0.1
0.1
96.8
全体
93.8
男子
94.1
女子
93.5
1.5
1.6
1.2
1.8
1.7
1.3
0.1
2.0
2.2
2.0
1.9
2.1
2.5
1.8
1.9
2.2
全体
61.5
19.6
12.2
6.8
男子
60.8
20.3
12.5
6.3
10.8
7.4
62.9
女子
19.0
1.3
3.4
0.9
3.2
1.7
3.8
全体
90.3
5.0
男子
90.8
5.1
女子
89.9
全体
O.お年寄りや
障害のある人への
思いやり
男子
88.5
5.5
88.7
5.8 4.7
女子
88.3
5.1
5.1
N.乗りものや路上
などでのマナー
P.スポーツ能力や
体力の向上
4.8
全体
16.4
69.7
9.0
4.9
男子
17.5
68.6
9.0
4.8
9.1
4.7
9.1
5.3
9.4
4.9
8.8
5.5
女子
Q.芸術面の才能を
伸ばす環境を
整える
4.6
全体
男子
女子
71.1
15.1
37.8
47.8
35.3
50.4
40.1
45.7
R.将来の進路・進学 全体
先を考えること
男子
64.8
22.0
5.8
7.5
65.0
21.1
6.4
7.6
女子
64.7
22.6
53
5.4
7.3
1.2
0.9
1.6
●
第
2
章
▼
保
護
者
と
学
校
の
教
育
の
役
割
分
担
▼
Q
10
▼
集
計
表
P.
130
∼
●子育て生活基本調査報告書@
3
学校への保護者の要望
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
全体の5%以上の親が要望・意見としてあげ
学校への要望を自由に記入してもらった。
回答の内容は多様である。一人で複数の要望
ているものである。親の要望は多様であるこ
を記入したものもある。これらをアフターコ
とがわかる。以下、これら比較的要望の多か
ードして、表2−1のように要望・意見を合
った七つの項目を順にみていこう。
計71個に分類した。回答者は1,043人である
男子の親にとくに多い
が、複数(最大四つ)回答した人もいるので、
「子どもの意見に耳を傾けて」
回答頻度(1,707)は回答者数を上回ってい
子どもの性別でみると、「子どもの意見に
る。
耳を傾けて。子ども一人ひとりをよく見守っ
どんな要望が多いか?
てほしい」というのを、男子の親の2割近く
「子どもの声に耳を傾けて」が一番
(18.5%)があげている。これは女子の親(12.3
(表2−1)
%)
よりも多い。「人間性が信頼できない先
要望の多かったものから順に七つあげると
生が多い」や「教師の質を上げてほしい。も
次のようになる。「子どもの意見に耳を傾け
っと経験のある教員を」「もっと一人ひとり
て。子ども一人ひとりをよく見守ってほしい」
にわかる教え方を。もっとおもしろい授業を」
も男子の親に比較的多くなっている。
「教師の質を上げてほしい。もっと経験のあ
る教員を」「親同士が仲良くなれる機会が少
女子の親に比較的多い要望は、「勉強だけ
ない」
「人間性が信頼できない先生が多い」
「勉
でなく人格教育も」や「制服の規則を実際の
強だけでなく人格教育も」「担任の先生の声
気温に即したものに。校則・管理が厳しい・
が伝わってこない。学級便りを。もっと学校
不適当」
「学校との連絡・交流方法の改善」な
の様子を知らせてほしい」「教育制度への不
どである。
満・改善」である。これら七つは、いずれも
54
●子育て生活基本調査報告書@
表2ー1 学校への保護者の要望(上位15位)
順位
項目
総数
1
子どもの意見に耳を傾けて。子ども一人ひとりをよく見守ってほしい
162
68
94
2
教師の質を上げてほしい。もっと経験のある教員を
94
49
45
3
親同士が仲良くなれる機会が少ない
74
30
44
4
人間性が信頼できない先生が多い
64
25
39
5
勉強だけでなく人格教育も
59
22
37
6
担任の先生の声が伝わってこない。学級便りを。もっと学校の様子を
知らせてほしい
55
28
27
7
教育制度への不満・改善
52
21
31
8
クラス人数を減らしてほしい
51
42
9
8
もっと一人ひとりにわかる教え方を。もっとおもしろい授業を
51
23
28
10
子どもが楽しく行ける環境を整えてほしい
46
33
13
11
学校との連絡・交流方法の改善
42
25
17
11
校則・管理が厳しい・不適当
42
8
34
13
設備改善・充実を
40
26
14
13
親同士のトラブル
40
31
9
15
もっと学校のことをオープンにしてほしい
38
12
26
1707
799
908
全回答数
(全体4475人、そのうち回答1043人)
55
小学校
中学校
●
第
2
章
▼
学
校
へ
の
保
護
者
の
要
望
▼
Q
11
●子育て生活基本調査報告書@
保護者の生の声
いか。クラス数の1.5倍の先生もしくはクラス
質問は自由記述であるから、調査票に書か
人数を25名くらいまでに引き下げてもらえな
いだろうか」(小4女子/第1子/37歳/公立)
れたそのままの声をいくつか紹介しておきた
い。子どもの通う学校への要望から、現代の
「今の子どもは学習することが多いので、
教育や親についての意見まで、さまざまであ
少しかわいそうと思う。行事はとても楽しい
る。多くは紹介できないが、各学年二つずつ、
のに、後から学習がせまってくるような感じ
調査票から書きぬいて示そう。
で『疲れた∼』と言う言葉をよく耳にする。
「今のお母さんたちは自分の子しか見ない
同じ市内でも学校によって学習の大変さに差
人がたくさんいると思います。もっといろん
があることも耳にするので、その点も気にな
な子どもたちを見てこんな子もいるんだ……
る」
(小4女子/第1子/37歳/公立)
などいろいろ母親も勉強したほうがいいと思
「親同士が仲良くやらなければいじめはな
います」
(小3男子/第1子/32歳/公立)
くならないと思う」
(小5男子/第1子/33歳/公
「子どもにあいさつをと言っているわりに、
立)
先生がしっかりあいさつできず、態度も悪い。
「役員にたびたびならされて困る。広くみ
まず子どもの見本になるようにしてほしい。
なが受けられるよう(父親も含め)役員会は
また、好き嫌いはあるが、平等にして接して
夜に!!
ぜひ」(小5女子/第1子/39歳/公立)
ほしい。親の目を気にしてびくびくしていな
「子どもの本当の姿を見てほしい。自分の
いでしっかりした信条を持ってほしい」(小3
好みや成績のよい子だけを見ないで。表面的
女子/第1子/35歳/公立)
にしか見えていないのに自己満足しないで。
「少子化で、クラス数が減っている。教員
悩んでいる子、苦しんでいる子は、先生の目
の採用も減っているのだろうか。教員側が活
の前にいます」(小6女子/第2子/38歳/公立)
性化してほしい。小学校でも体育、美術専任
「塾などに行かなくてもいいように、勉強
の先生がいてもよいのではないだろうか。学
は学校でちゃんと身につけさせてほしい」
校あたりの教員数が減っても、仕事は変わら
(小6女子/第2子/42歳/公立)
ず、一人ひとりの負担が増えているのではな
「まず先生方が生徒と親に対して表と裏が
56
●子育て生活基本調査報告書@
ないこと。先生でも生徒たちに乱暴な言葉づ
すら感じるときがある。子どもたちにも無言
かいをしないでほしい。授業やその他の時間
の圧力となっているような気がする。人間的
もちょっとした工夫で楽しい学校生活の基本
に生徒に影響を与えられるような教師がたく
をつくってほしい。学校内の掃除などはどん
さん増えてほしいと心から願います(もちろ
どんやらせてほしい。先生方のほうから生徒
んすばらしい教師もいらっしゃるが)。」(中2
たちの考えや気持ちを押さえつけずに、自由
男子/第3子/51歳/公立)
にうけとめてあげてほしい。これはうちの学
「『何をすると内申がアップします』など
校にいえることでなく、どこの学校でもそう
と授業中に先生が子どもたちに言うことは好
あってほしいなあという意見の一つです」
きではない」(中2女子/第2子/42歳/公立)
「塾通いしていないと、高校の情報が入ら
(中1女子/第1子/36歳/私立)
「学校での子どもの様子がわかるような材料
なく、自分のレベルや高校の内容などわから
がほしいです。学校に出向く機会をもう少し増
なく不安が多い。教室に置いてある情報誌は
やすとか、子どもの文章の文集のようなもの、
足りないのでゆっくり見られないとのこと。
授業の様子がわかる資料など、家庭向けにも配
家庭にも何らかの資料がほしかった」(中3女
布してほしい。自分の子どもだけでなく、同じ
子/第2子/48歳/公立)
クラス同じ学年の他の子どもたちが、どんなこ
「子どもたちの個性を大切にした教育を考
とを考え、感じているのかということがわかる
えていただきたい。集団生活だからといって、
ようなもの」
(中1男子/第2子/35歳/公立)
すべての子どもが適応できると考えた上に今
「今、学校生活の中で一番精神的にも大切
の教育は行われている。その枠にはまれない
なときが中学校であるはずなのに、なぜか暗
子どもはおちこぼれになっているが、学校は
いイメージがある。それはたぶん“進学”と
そのような子どもたちに対して今は何もでき
いうものを意識している親と学校のあり方に
ないでいる。特別授業だって必要だと思いま
原因があるような気がする。成績だけで人間
す」(中3男子/第2子/41歳/公立)
を評価してしまう(言葉では絶対そうは言わ
ないが)今の学校のあり方には絶望的なもの
57
●
第
2
章
▼
学
校
へ
の
保
護
者
の
要
望
▼
Q
11
●子育て生活基本調査報告書@
4
家庭で心がけている生活習慣
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
家庭で子どもを育てていく上で、母親はど
これら3項目は子どもの学年が上がってい
のようなことを心がけているのか、7項目に
ってもあまり変わらない(図2−10)。「あい
ついて、「とても心がけている」から「ぜん
さつやお礼ができるように」というしつけは
ぜん心がけていない」までの4段階の選択肢
小3生では98.6%(とても+まあ、以下同じ)、
を設けて答えてもらった。図2−9では「と
中3生でも96.9%の母親が心がけている。
「友
ても心がけている」の多い順に並べてある。
だちづきあいは大切に」は小3生96.9%、中
3生93.4%、「目上の人などへの言葉づかい」
人とのコミュニケーションがやはり大切
は多少変化はあるが、小3生92.6%、中3生
(図2−9、10)
93.5%となっている。すべての学年で共通に
重視されているしつけだといえよう。
上位の2項目、
「あいさつやお礼ができるよ
うに」「友だちづきあいは大切に」は、「とて
も+まあ心がけている」を合わせると95.0%
生活の基礎習慣のしつけ(図2−10)
以上の母親が心がけているしつけである。さ
一方、「朝起きる時間や夜寝る時間など規
らに第3位の「目上の人などへの言葉づかい」
則正しい生活リズム」は生活の基礎習慣のし
も、単に基本的な礼儀というだけでなく、人
つけである。これは「とても心がけている」
とのよい関係を持ち続けるための基本的なマ
と「まあ心がけている」を合わせると第2位
ナーであると考えると、母親たちは日頃、礼
になる。とくに小3生の母親は97.7%もが心
儀をわきまえて周囲の人々とのコミュニケー
がけており、中3生になると91.3%へとやや
ションをうまく保てる人になってもらいたい
減少する。しかし、第1章1節「現在の子育
と思って子どもを育てていることがわかる。
ての気がかり」の結果をみると、「生活リズ
母親が家庭で行っているしつけには、「q
ムと朝起きる時間・夜寝る時間」をあげる母
生活の基礎習慣、w行儀、作法などの社会生
親は学年が上がるにつれて多くなっていく
活のルール、e独立した社会人として必要な
(小3生30.9%、中3生47.3%)。中3生にも
能力の養成、の三つがある」と松田道雄は述
なると、子どもの不規則な生活ぶりが悩みの
べている
(『私の幼児教育論』岩波新書 1965)
種となってはいるものの、基礎的なしつけは
が、今回の調査で上位になった3項目は社会
もうしなくなっている様子がうかがえる。
生活のルールのしつけ項目に入る。
58
●子育て生活基本調査報告書@
図2ー9 家庭で心がけている生活習慣
とても心がけている
(%)
無答不明
ぜんぜん心がけていない
あまり心がけていない
まあ心がけている
65.8
31.8
C.あいさつやお礼がで
きるように
E.友だちづきあいは大
切に
53.7
D.目上の人などへの言
葉づかい
B.子どもの帰宅時間に
はだれかが家にいる
F.テレビゲームで遊ぶ
時間を決めている
44.6
40.0
A.起床・就寝など規則
正しい生活リズム
3.4
0.3
1.3
41.3
47.3
6.7
44.2
36.6
4.6
46.1
G.子どもが手伝う家事
17.7
を決めている
(全体4475人)
18.1
42.3
33.1
0.4
1.1
2.8
1.6
11.3
57.2
24.2
1.4
0.1
0.9
0.3
1.2
4.9 6.8
5.8
1.2
図2ー10 家庭で心がけている生活習慣×学年
「とても+まあ心がけている」割合
(%)
98.6
100
97.7
96.9
90
92.6
90.2
98.8
97.3
98.0
95.8
94.0
94.3
86.9
94.8
78.4
94.2
92.7
96.8
94.7
93.3
92.1
88.8
83.4
80
98.3
96.0
83.6
84.8
96.6
94.2
92.2
90.2
83.0
96.9 C.あいさつやお礼ができるように
93.5 D.目上の人などへの言葉づかい
93.4 E.友だちづきあいは大切に
91.3 A.起床・就寝など規則正しい生活
リズム
79.7
77.8
76.3
B.子どもの帰宅時間にはだれか
が家にいる
76.1
70
68.3
66.3
64.3
62.2
64.7
64.2
60.7
60
50
小3生
(492人)
小4生
(510人)
小5生
(543人)
小6生
(585人)
56.4
55.8
中1生
(901人)
中2生
(806人)
59
53.9
F.テレビゲームで遊ぶ時間を決
めている
G.子どもが手伝う家事を決めて
いる
中3生
(621人)
●
第
2
章
▼
家
庭
で
心
が
け
て
い
る
生
活
習
慣
▼
Q
12
▼
集
計
表
P.
134
∼
●子育て生活基本調査報告書@
お手伝いと母親の就業状況(図2−11)
学年差が大きいテレビゲームとお手伝い
(図2−10)
この「子どもが手伝う家事を決めている」
さて、「テレビゲームで遊ぶ時間を決めて
は、母親の就業状況でやや異なっている。
いる」と「子どもが手伝う家事を決めている」
「とても心がけている」のは、専業主婦15.3%、
は、家庭で具体的に“決まり”を作っている
パートタイマー18.9%、常勤者21.4%で、働
かどうかという項目である。7項目中、肯定
く母親が家事を手伝わせようとしている様子
率が最も低かったのがこの2項目である。そ
がうかがえる。ところが、これを小・中学生
れでも、「テレビゲーム」については70.3%
別にみてみると、図2−11のように、中学生
( 全 体 値 )、「 家 事 の 手 伝 い 」 に つ い て は
になると母親の就業状況による違いは大変小
さくなる。
60.0%(全体値)の母親が心がけていた。
この2項目は学年差が比較的大きい。図を
みると、中学生になるとぐっと割合が低くな
子どもの帰宅を家で迎える(図2−10)
ることがわかる。とくに、「テレビゲームの
「子どもの帰宅時間にはだれかが家にいる
しつけ」のほうは、小3生78.4%、中3生
ようにしている」のは、やはり小学生の母親
60.7%と、差が大きい。テレビゲームをする
に多く、中学生になるとゆるやかだが減少し
子どもは中学生になるとかなり少なくなるこ
ていく(図2−10)
。小3生で90.2%、中3生
とが種々の調査で報告されているが(例えば
では79.7%の母親が、だれかが家で子どもの
『東京都子ども基本調査報告書』東京都生活
帰宅を迎える、としている。母親の就業状況
文化局 1996など)
、それを反映しているのか、
別に「とても心がけている」割合をみると、
第1章1節「現在の子育ての気がかり」の
専業主婦55.2%、パートタイマー31.7%、常
ように(数値は巻末の基礎集計表を参照)、
勤者23.8%となっている。小・中学生別にみ
ても同様に就業状況による違いがみられた。
「家でのテレビゲームなどの遊び」に関して
悩みや気がかりをもっている母親は中学生に
なると少なくなる(小3生の27.4%、中3生
男子と女子(図2−12)
の16.9%)。「テレビゲームのしつけをする」
7項目について子どもの性別にみたが、違
割合が中学生の母親で低くなるのは、このよ
いは概して小さい。目立つのは「テレビゲー
うな実態と関係しているようである。
ムで遊ぶ時間を決めている」である。男子の
「子どもが手伝う家事を決める」よう心が
母親のほうがこのしつけを心がけている。テ
けている母親は、小学生ではまだ6割を超え
レビゲームに熱中するのは、「現在の子育て
ているが、中学生になると少なくなり、中3
の気がかり」の結果からわかるように、男子
生では53.9%になってしまう。
に多いことによるものであろう。
60
●子育て生活基本調査報告書@
図2ー11 家庭で心がけていること×母親の就業状況
「子どもが手伝う家事を決めている」
とても
心がけている
まあ心がけている
14.8
46.9
専業主婦
小学生
パートタイマー
(2130人)
21.0
常勤者
46.0
27.1
専業主婦
常勤者
28.0
43.9
15.8
中学生
パートタイマー
(2328人)
(%)
あまり心がけていない
無答不明
ぜんぜん心がけていない
3.8
34.1
0.5
4.4 0.6
3.4
0.3
25.3
36.9
39.9
17.2
40.7
34.6
16.6
41.7
32.4
6.6
0.8
7.0
0.4
8.0
1.3
(小学生とは、小3生∼小6生)
図2ー12 家庭で心がけている生活習慣×性
0
20
40
60
(%)
100
80
93.6
A.起床・就寝など規則正し
い生活リズム
94.2
83.9
B.子どもの帰宅時間には
だれかが家にいる
84.6
97.1
C.あいさつやお礼ができる
ように
98.0
91.1
D.目上の人などへの言葉づ
かい
92.5
94.1
E.友だちづきあいは大切に
96.0
75.0
F.テレビゲームで遊ぶ時間
を決めている
65.1
58.1
G.子どもが手伝う家事を決
めている
61.4
「とても+まあ心がけている」
割合
61
男子(2189人)
女子(2177人)
●
第
2
章
▼
家
庭
で
心
が
け
て
い
る
生
活
習
慣
▼
Q
12
▼
集
計
表
P.
134
∼
●子育て生活基本調査報告書@
5
家庭の教育方針
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
家庭の教育方針など8項目についてどの程
れる。子どもの高校・大学への進学が近づく
度あてはまるかをたずねた。「とてもあては
と、受験競争に巻き込まれていく様子がうか
まる」の多い順に並べたのが図2−13である。
がえる。
さまざまな内容の項目なので、項目間の関連
これについての性差をみると(図2−15)、
から三つの群に分けてその順にみていくこと
「教育・進学面で世間の流れに乗り遅れない」
にしよう。最も強い相互関連を示す第1群
「習い事や塾に通わせないと不安」の二つの
は、「教育に必要なお金はかける」「教育・
項目で男子がやや多い。男子の母親のほうが
進学面で世間の流れに乗り遅れない」「習い
勉強重視の方針をもっている傾向がみえる。
事や塾に通わせないと不安」の3項目で、子
親が主導するしつけは子どもの成長で減少
どもの教育に積極的にエネルギーを注ごうと
(図2−13、14)
する方針をあらわす項目群である。第2群
第2群、「親子で意見が違うとき、親の意
は、
「子どもより親の意見を優先させている」
「子どもがすることを親が決めたり手伝った
見を優先させている」「子どもがすることを
りする」の2項目で、親が日常のしつけ場面
親が決めたり手伝ったりすることがある」も、
で主導権を発揮しているという内容である。
肯定率は5割以下であった(図2−13)。こ
この二つの項目群から結果をみていくこと
のような、親の意見を優先させたり、ある意
にしよう。
味で過度に手伝ったりすることは、学年が上
になるにつれて減少していく様子がはっきり
勉強を重視する方針は中学生の母親に多い
とあらわれている(図2−14)。「親の意見を
(図2−13∼15)
優先させている」に「あてはまる(とても+
まあ)
」としているのは小3生では53.2%だが、
第1群についてみると、「教育に必要なお
金はかける」に肯定的な母親は図2−13の通
中3生になると36.3%と少なくなる。「親が
り、7割いる(とても+まああてはまる)
決めたり手伝ったりする」も、小3生51.3%、
が、「教育・進学面で世間の流れに乗り遅れ
中3生33.0%である。
ない」
「習い事や塾などに通わせないと不安」
母親の就業状況との関連をみると、「子ど
は5割に満たない肯定率で、あまり多くはな
もがすることを親が決めたり手伝ったりする」
い。
に「あてはまる」としているのは、専業主婦
に多く(45.4%)、常勤者に少ない(38.5%)。
これらの項目に「あてはまる」としている
割合は小学生の母親よりも中学生の母親に多
このような考え方は子どもの成長段階で異な
い。学年ごとの肯定率をグラフにしたものが
ると考えられるので、小・中学生別に関連を
図2−14である。「教育に必要なお金はかけ
みたが、いずれの場合も母親の就業状況によ
る」は学年上昇につれて上がっていき、「教
育・進学面で世間の流れに乗り遅れない」
「習
“子ど
る違いが見いだされた。専業主婦は、
もがすることを自分がしてしまっている”
と
い事や塾などに通わせないと不安」は中3生
感じているのだろうか。
でやや低下するが、おおむね上昇傾向がみら
62
●子育て生活基本調査報告書@
図2ー13 家庭の教育方針
とてもあてはまる
C.どういう友だちとつき
あっているか知る
41.7
A.しつけや教育について
は夫婦で考えている
50.2
38.4
B.勉強のことは口出しせず
子どもにまかせている
8.3
H.習い事や塾に通わせな
いと不安である
7.9
G.教育・進学面で世間の
流れに乗り遅れない
6.7
D.子どもより親の意見を
優先させている
5.3
3.7
1.7
23.8
41.2
38.9
34.8
40.3
40.2
41.4
46.6
38.9
10.1
49.4
8.5
4.2
7.3
2.6
(全体4475人)
図2ー14 家庭の教育方針×学年
(%)
100
「とても+まああてはまる」割合
92.6
94.1
91.6
92.5
91.6
92.7
88.2
90
81.9
82.8
81.4
80
70
66.9
66.8
80.4
69.1
80.8
73.9
81.9
75.5
C.どういう友だちとつきあっ
ているか知る
81.6
A.しつけや教育については
夫婦で考えている
77.4 F.教育に必要なお金はかける
60.2
60
53.2
50
40
51.3
40.7
40.5
38.0
51.6
50.3
50.4
46.6
42.4
42.3
40.4
46.1
42.0
41.2
52.0
51.9
46.9
44.5
41.2
51.1
49.6
45.2
53.1
47.9
42.9
41.7
39.8
35.2
30
20
小3生
(492人)
小4生
(510人)
小5生
(543人)
小6生
(585人)
中1生
(901人)
63
中2生
(806人)
55.4
B.勉強のことは口出しせず子
どもにまかせている
48.4
G.教育・進学面で世間の
42.8 流れに乗り遅れない
H.習い事や塾に通わせないと
36.3 不安である
D.子どもより親の意見を
優先させている
33.0 E.子どもがすることを親が
決めたり手伝ったりする
中3生
(621人)
1.5
1.6
15.4
42.5
0.6
1.4
3.4
2.1
13.1
51.9
E.子どもがすることを親が
決めたり手伝ったりする
6.1
43.0
18.9
F.教育に必要なお金はか
ける
(%)
無答不明
ぜんぜんあてはまらない
あまりあてはまらない
まああてはまる
●
第
2
章
2.0
2.5
1.8
▼
家
庭
の
教
育
方
針
▼
Q
13
▼
集
計
表
P.
136
∼
●子育て生活基本調査報告書@
夫婦協力の家庭教育(図2−13、14)
った。前節で、周囲とのコミュニケーションを
第3群、
「子どものしつけや教育については
重視するしつけ態度がみられたが、学校生活に
夫婦で考えている」については、
「とてもあて
なじむためには友だち関係が重要だといわれる
はまる」38.4%と「まああてはまる」43.0%を
なか、子どもの友だち関係に強い関心をもつ母
合わせて8割以上の母親が肯定している。学年
親がいかに多いかがわかる結果である。第1章
別にみると、小3生から中3生までほとんど差
1節の「現在の子育ての気がかり」でも5番目
がない(図2−14)
。どの学年の母親にも共通
に多く「友だちとのかかわり方」があげられて
にこの方針が用いられていることがわかる。
おり、関連する結果となっている。
就業状況別には違いがみられた。「とて
も+まああてはまる」の割合は、専業主婦
男子と女子(図2−15)
85.6%、パートタイマー81.1%、常勤者74.4%
家庭の教育方針は男女で違いがみられるだ
と、就業時間が長いほど割合が低くなってい
ろうか。差の見いだされる項目は少ない。最
る。忙しい生活の中で夫婦で考える時間的余
もはっきりしているのは、「勉強のことは口
裕が比較的少ないのであろうか。しかし、
出しせず子どもにまかせている」である。女
「ぜんぜんあてはまらない」は、専業主婦の
子の母親のほうが、これについて「あてはま
2.0%、常勤者でも5.5%とごく少数であった。
る」とする割合が高い。小・中学生別にみて
も、この性差はみられた。前述したように、
子どもの友だちへの関心
「 教 育 ・ 進 学 面で世間の流れに乗り遅れな
(図2−13、14)
い」と「習い事や塾に通わせないと不安」に
「子どもがどういう友だちとつきあってい
も性差がみられたが、「勉強のことは口出し
るかを知るようにしている」も、「とても+
せずまかせる」についても同じ傾向の性差で
まああてはまる」とする母親が91.9%と圧
ある。男子の母親のほうが勉強のしつけを厳
倒的多数派である。図2−14の通り、学年差
しくしている様子が示されている。
もみられず、どの学年でもこれが第1位であ
64
●子育て生活基本調査報告書@
図2ー15 家庭の教育方針×性
0
20
40
60
(%)
100
80
82.6
A.しつけや教育については
夫婦で考えている
80.0
45.2
B.勉強のことは口出しせず
子どもにまかせている
53.7
91.1
C.どういう友だちとつき
あっているか知る
82.6
92.5
45.4
D.子どもより親の意見を
優先させている
47.6
男子(2189人)
女子(2177人)
●
第
2
章
42.0
E.子どもがすることを親が
決めたり手伝ったりする
40.7
71.3
F.教育に必要なお金はか
ける
70.1
48.5
G.教育・進学面で世間の
流れに乗り遅れない
45.1
43.9
H.習い事や塾に通わせな
いと不安である
41.5
「とても+まああてはまる」割合
65
▼
家
庭
の
教
育
方
針
▼
Q
13
▼
集
計
表
P.
136
∼
●子育て生活基本調査報告書@
6
現在の子育て生活の満足度
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
子どもと一緒に遊ぶ母親は満足度が高い
現在の子育て生活全般に対して母親として
どのくらい満足しているかをたずねると、図
子育て生活満足度に影響するのはやはり子
2−16の通り、
「まあ満足している」が65.4%
育ての状況である。第1章8節との関連をみ
と最も多かった。
「とても満足している」を合
ると、「子どもと一緒に遊ぶ・話をする」こと
わせると、72.6%の母親が満足している。
がある母親は子育て生活全般に満足してい
る。また、「家族みんなで遊ぶ・話をする」
子どもの学年差は小さい(図2−17)
機会の多い母親は満足度が高い。
学年別のグラフをみると、
「とても満足して
いる」の割合が小3生で最も低く、次第に上
子どもと自分が成長したと感じる母親は
昇して中1生で8.9%に達し、中2生、中3生
満足度が高い
また、「子どもが成長したと感じる」こと
でやや低くなる、という傾向がみられる。し
や「子どもが親に対して思いやりのある言葉
かし、わずかの差にすぎない。
や態度を示してくれたと感じる」ことは子育
中学生では女子の母親が満足(図2−18)
ての喜びをもたらしてくれるようで、そのよ
性別による違いは全体では小さい。しかし
うなことが「よくある」または「ときどきあ
小・中学生別にみると、図2−18のようにな
る」母親は、子育て生活満足度が大変高い。
る。小3生から小6生の母親では子どもの性
そうした経験は、「子どもをもつことによっ
別による違いはないが、中学生になると、女
て自分自身が成長したと感じる」という感慨
子の母親の「とても+まあ満足している」が
につながるようで、その満足度も高い。
76.8%で男子の母親より多い。第2章1節の
生活習慣や自立の状況についての満足度は明
就業状況と子育て生活満足度(図2−19)
らかに女子の母親のほうが高かったが、それ
最後に母親の就業状況との関連をみておこ
とも関係があろう。前節でみたが、勉強のこ
う。図2−19では専業主婦が最も満足度が高
となどであれこれ言うことも女子に対しては
く、次いでパートタイマー、常勤者と続く。
少なくてすむなど、教育・しつけ面で女子に
しかし、これを小・中学生別に集計すると、
対しては楽な場合が多いのかもしれない。
小3生∼小6生では確かに専業主婦の満足度
が高いが、中学生の母親ではこの違いはみら
れなくなる。小学生の働く母親への子育て支
援の重要性を考えさせるデータである。
図2−16 現在の子育て生活全般の満足感
(%)
とても
満足している
まあ満足している
あまり
満足していない
7.2
65.4
23.3
(全体4475人)
66
ぜんぜん
満足していない
無答不明
2.4
1.7
●子育て生活基本調査報告書@
図2−17 現在の子育て生活全般の満足感×学年
とても
満足している
ぜんぜん
満足していない (%)
無答不明
あまり満足していない
まあ満足している
小3生
5.1
(492人)
65.0
27.2
0.4
2.2
小4生
6.9
(510人)
62.2
26.7
2.4
2.0
2.6
小5生
6.4
(543人)
67.4
22.1
1.5
1.2
小6生
8.5
(585人)
66.8
21.9
1.5
3.3
中1生
(901人)
8.9
64.6
21.1
2.1
●
第
2
章
2.4
中2生
6.3
(806人)
67.9
21.6
1.9
2.3
中3生
7.2
(621人)
63.1
25.0
2.4
図2−18 現在の子育て生活全般の満足感×性・学年
(%)
80
75
「とても+まあ満足している」割合
76.8
74.4
72.6
72.1
70
▼
集
計
表
P.
142
∼
65
60
男子 女子
(1025人)(1035人)
男子 女子
(1119人)(1101人)
小3生∼小6生
中1生∼中3生
図2−19 現在の子育て生活全般の満足感×母親の就業状況
(%)
とても
満足している
まあ満足している
あまり
満足していない
8.3
68.6
20.4
専業主婦
(1800人)
パートタイマー
(1803人)
6.2
常勤者
(706人)
6.9
65.6
24.7
59.3
29.2
67
▼
現
在
の
子
育
て
生
活
の
満
足
度
▼
Q
18
ぜんぜん
満足していない
無答不明
1.8
0.9
2.3
1.2
3.4
1.1