米国 IT 業界の動向 2011 年 1 月 JETRO/IPA New York 1.主要 IT 企業動向 (1)グーグル ・ グーグルは現在、新たな収入源としてオンライン教育ソフトの開発を強化 している。同社はすでに、グロキット(Grockit)やアビアリー(Aviary) が提供するオンライン教材をグーグル・アップス・マーケットプレイス (Google Apps Marketplace)で販売。加えて、昨年からは、ワードプロ セッサや電子メール、表計算といった汎用アプリケーションを教師や生徒 に無料で提供している。同社は今後、各学校が設置したウェブサイト内部 でアップス・マーケットプレイスを運営できるようにしていく計画だ。オ ンライン教育プログラム市場は、年間50億ドル規模と言われており、有望 市場の1つとして期待されている。【12月28日 Businessweek】 ・ グーグルは、デジタル・ニューススタンド(eニューススタンド)の開設 に向けて米出版社大手と協議を進めている。eニューススタンドは、新聞 や雑誌の電子版を一ヵ所で購入できるシステムの総称。グーグルは、携帯 機器向け新規サービスの基盤を確立し、アップルに対抗する考えだ。 関係筋によると、グーグルは現在、タイムワーナー傘下のタイム社ほか、 コンデ・ナスト(Conde Nast)、ハースト(Hearst)といった出版大手と 話し合いを進めている。話し合いでは、アンドロイド・アップスでの販 売手数料を、アップルのiチューンズ(売り上げの30%)よりも低く設定 して、提示しているという。話し合いに参加している出版社大手幹部に よると、今のところ具体的な内容を詰めるまでに至っていないという。 【1月2日 WSJ】 ・ グーグルは、2014年には1兆ドル強の市場が創出されると見込まれる中、 携帯電話機を使った非接触型電子決済サービスを開発している。新規サー ビスでは、短距離無線通信(NFC)技術を採用し、10cmの距離でデータを 転送できるようにする。さらに、携帯電話機に組み込まれた決済用チップ には、銀行口座やギフトカード、各種特典カード、クーポンなどの情報も 保存できるようにする。また、オンライン購入の決済も行える。たとえば、 映画のポスターを携帯電話機で撮影すると、予告編を検索して再生。ユー ザーがチケットを購入したい場合は、決済用チップの情報を利用して支払 処理ができる。 関係筋によると、同社は、2011年中の実用化を目指す。また実験対象と なる電話機は、サムスン電子と共同開発した「ネクサスS」になる予定。 【1月5日 SF Chronicle】 ・ グーグルは、これまでウェブ上で提供してきた翻訳サービス「グーグル・ トランスレート(Google Translate)」の携帯版の開発を進めている。新 規サービスは、アンドロイド(Android)OSの最新版を搭載するスマート フォン向けで、ユーザーが会話しながら同時通訳できる。サービスは当面、 1 スペイン語と英語しかサポートしておらず、早口又は方言は正確に訳せな いという限界があるが、今後、対応言語を徐々に増やすしていく計画だ。 ユーザーが、アプリケーションを起動して会話モードを選択し、マイクに 向かって英語(あるいはスペイン語)を話すと、訳文が発音される仕組み となっている。 【1月13日 Information Week】 ・ 米司法省は、グーグルのITAソフトウェア買収が独禁法に抵触するとして、 同社を提訴する構えだ。グーグルは2010年7月、ITAを7億ドルで買収す る計画を発表していた。その後、司法省が調べた結果、オンライン航空券 販売市場で圧倒的なシェアを持つITAをグーグルが買収することによって、 市場の競争原理が損なわれる危険性が高いと判断。グーグルに対して、買 収に関する各種資料の提出を求めていた。しかし、関係筋によると、グー グル側が当局の要求に応えていないため、訴訟に発展する可能性が高まっ たという。ITAはオンライン航空券の検索や価格の比較技術を提供してい るが、顧客にはオービッツ(Orbitz)やカヤック(Kayak)、マイクロソフ トのビング(Bing)といった大手が含まれている。 ただし、訴訟に発展したとしても、司法省が勝訴する可能性は尐ないと いう見方もある。判事は通常、異なる業種の企業合併に対して、独禁法 に抵触しないと判断するだろうというのが理由だ。 【1月13日 Washington Post】 ・ グーグルのエリック・シュミット(Eric Schmidt)最高経営責任者(CEO) は、4月4日付けで退任する意向を明らかにした。後任には、同社創業者 の一人であるラリー・ペイジ(Larry Page)社長(37)が昇格する。ペイジ 氏はシュミットCEOがグーグルへ入る前にCEOを務めていた。シュミット CEOは今後、取締役会長として他社との業務提携や政府関連業務などの対 外交渉に携わっていく。また、サーゲイ・ブリン(Sergey Brin)社長は、 製品開発業務に専念していく。【1月20日 LA Times】 ・ グーグルの2010年 10~12月期決算は、四半期ベースで過去最高の増収増 益を記録した。オンライン検索結果に連動する広告およびディスプレイ型 広告が好調だったのに加えて、新サービスの携帯およびディスプレイ広告 分野が業績を伸ばしたのが奏功した。【1月20日 Google 】 (2)アップル ・ 米携帯電話会社最大手のベライゾン・ワイヤレス(Verizon Wireless)は、 iフォン4(iPhone 4)を2月10日から発売する。販売価格は、AT&Tと同 じく、2年契約の場合に16ギガバイト(GB)が199.99ドル、32GBが299.99 ドルとなる見通し。既存のベライゾン加入者は2月3日から優先的に予約 ができる。 ベライゾンは1台あたりおよそ400ドルの助成金(小売価格が卸売価格よ り低い場合、差額を電話会社が負担する仕組み)を支払う見込み。年内 の販売台数予測に関して、金融サービスUBSのアナリストは、年内の販売 台数を1300万台と予測している。 2 一方、ベライゾン・iフォンの登場を受けて、アンドロイド対応携帯電話 機の、機能向上と価格引き下げが進むとみられている。実際AT&Tは、モ トローラ・モビリティ(Motorola Mobility)やサムスン、HTC製のアン ドロイド搭載13機種を投入する計画を明らかにしている。 【1月12日 Businessweek、13日 Investor’s Business Daily】 ・ アップルの2010年10~12月期決算は、大幅な増収増益となった。iフォン 4とiパッドの販売が世界市場で好調だったのが牽引した。販売台数の内 訳は、パソコンのマックが413万台となったほか、iフォンが1624万台、i パッドが733万台と販売数を好調に伸ばした。一方、iポッドは7%減の 1945万台にとどまった。【1月18日 Apple】 ・ アップルの「アップ・ストア(App Store)」でのダウンロード件数が、累 計で100億件に達したと発表した。記念すべき100億件目となったのは、英 国在住のゲイル・デイビス(Gail Davis)さんで、ダウンロードしたのは ゲームのペーパー・ギルダー(Paper Glider)だった。アップルは先に、 100億件目のダウンロードに当たる利用者に対して1万ドル相当のiチュ ーンズ・ギフト・カードを進呈すると発表していた。同賞品は、ギルダー さんの手に渡った。同ストアのダウンロード件数は、2010年1月の時点で 30億件であり、その後1年で70億件に達したことになる。 【1月22日 USA Today】 (3)Amazon.com ・ Amazon.comは、同社のコンピュータ・システムを使ってウェブサイトやア プリケーションを管理する新規サービス「エラスティック・ビーンストー ク(Elastic Beanstalk)」を開始した。同サービスは、顧客のコンピュー タ管理を簡略化するのが目的で、技術的な知識が不要なのが特徴だ。従来 Amazon.comのクラウドサービスを利用するためには、コンピューティング インフラを制御する専用のコードを作成する必要があった。 【1月19日 Bloomberg】 ・ Amazon.com は、欧州で家庭娯楽レンタルサービスを提供するラブフィル ム(Lovefilm)の残り株式を購入し、完全子会社化する。Amazon.com は すでに、ラブフィルムの株式 42%を保有していたが、今回残りの株式を 総額3億 12 万ドルで購入する。ラブフィルムは、オンライン DVD および ゲーム・レンタル・サービスを提供。また、ネット経由で映画やテレビの ストリーミング配信サービスを提供している。同社は現在、英国、ドイツ、 スウェーデン、ノルウェー、デンマークで事業を展開している。Amazon.com は、ラブフィルムを傘下に収めることによって、ネットフリックスが欧州 市場へ進出するのに対抗する考えだ。【1 月 20 日 Yahoo News】 (4)マイクロソフト ・ マイクロソフトは、同社製携帯電話用OS「ウィンドウズ・フォン7」を搭 載した携帯電話機の販売台数が、発売以来6週間で150万台を超えたと発 表した。BGCパートナーズのアナリストは、2011年の同OS対応機種の販売 3 台数が約2500万台になると予測している。 【12月21日 Reuters】 ・ マイクロソフトは、ARMホールディングスが設計したプロセッサ向けのウ ィンドウズOSを発表した。これまで、“ウィンテル”と呼ばれるほど、イ ンテルと強力な関係を築いてきた同社が競合のARM向けにOSを提供するこ とは、インテルが携帯機器市場で苦戦を強いられている証拠との指摘もあ る。【1月6日 WSJ】 ・ マイクロソフトは、テレビとネットを接続できるセットトップ・ボックス (STB)システム「マクロソフトTV」を国際消費者電子製品見本市(CES) で披露した。製品は、以前発表したウィンドウズ・メディア・センター (Windows Media Center)を踏襲するもので、「ウィンドウズ・エンベデ ィッド・スタンダード7(Windows Embedded Standard 7)」をベースにし ている。価格は200ドル以下になる見込み。また同会場では、レノボやゲ ートウェイなど数社が、マイクロソフトTVを搭載したSTBを披露した。 【1月7日 Seattle Times】 ・ マイクロソフトは、同社が開発したビデオゲーム機「Xボックス」用動作 感知技術「キネクト(Kinect)」をウィンドウズPCとテレビ向けに採用し ていく。CESの会場でスティーブ・バルマー最高経営責任者(CEO)が明ら かにした。 マイクロソフトは今後、キネクト技術をウィンドウズに応用していく。 また、同社は、台湾のパソコン製造大手アスース(ASUS)とも提携し、 キネクト技術を組み込んだ新たなテレビ・プラットフォームの開発も進 めている。具体的には、キネクトが採用するイスラエル新興企業プライ ム・センス(Prime Sense)製動作感知チップをアスースにライセンス供 与。ASUSは同チップをセットトップ・ボックス(STB)「WAVI Xtion」に 組み込んでいく。これにより、ユーザーは、手を簡単に動かすだけで、 テレビ画面に表示されたメニューを自在に操作できる。 【1 月 10 日 Information Week】 ・ マイクロソフトは、クラウド型CRM(顧客関係管理)サービス「ダイナミ ックスCRMオンライン」を発表した。世界40市場に提供していく。また、 Salesforce.comとオラクルのCRM on Demandなど競合他社からの乗換えの 支援を行う。たとえば、2011年6月30日までに登録した顧客企業に対して は、ユーザー、1人あたり月額34ドル(初年限定)で提供。また、6月30 日までに他社のサービスから移行する顧客には、ユーザー1人につき最大 200ドルの移行コストを負担する。 同社は、マイクロソフトのビジネス向け各種アプリケーションと組み合 わせによって、競合製品との差別化を図って行く考えだ。 【1 月 17 日 Computer World】 (5)インテル ・ インテルは、次世代コア(Core)プロセッサに搭載するセキュリティ機能 「インサイダー(Insider)」を発表した。インサイダーは、フル高精細(HD 4 =1080p)動画コンテンツのストリーミング配信に際して、違法コピーを 防ぐ機能を持つ。具体的には、コンテンツ提供側が暗号化したHD映像を配 信できるようにする。映画会社のようなコンテンツ製作会社はこれまで、 違法コピーを懸念してHD動画の配信に消極的だった。しかし、インサイダ ーが普及することによって、今後、HD動画のオンライン配信が普及する可 能性が高まった。4プロセッサ版コアは1月から、2プロセッサ版は2月 から市場に投入される。 同社のコアは、32ナノメートル加工技術を採用している。また、コアに は、動画変換用コーデック「クイック・シンク・ビデオ(Quick Think Video)」ほか、テレビとの無線データ通信用技術「WiDi」の改良版など が搭載されている。クイック・シンク・ビデオは、携帯電話機で撮影し た5分間の動画をわずか18秒でパソコン用動画に変換できる。これは、 1時間のビデオを4分で変換できる計算になる。 【1 月 3 日 Computer World】 ・ インテルの投資会社、インテル・キャピタルは、ブレイマー・エネルギー (Braemar Energy)と共同で、グリッドネット(送電線ネットワーク)向 け管理ソフトを開発する新興企業バリディティ・エネルギー(Viridity Energy)へ投資する。両社の出資額は明らかにされていない。 バリディティのソフトは、電力価格や再生可能エネルギーの発電状況、 蓄電状況に応じて電力負荷を調整できるのが特徴。同社はこれまで独シ ーメンスとも提携している。【1月10日 GigaOM】 ・ インテルは、グラフィック・チップ(GPU)メーカー最大手エヌビディア (Nvidia)と向こう6年間にわたる特許相互利用(クロスライセンス)契 約を結んだ。両社はこれまで特許をめぐり訴訟合戦を展開していた。しか し、今回、インテルがエヌビディアに対し、5年間に総額15億ドルの特許 使用料を支払うことで和解した。 新契約下では、インテルは、エヌビディアが保有する全ての特許を使用 できる。一方のエヌビディアは、インテルの特許を継続して使用できる ものの、x86技術が対象外となっている。【1月11日 WSJ】 ・ インテルの2010年10~12月期決算は、収益ともに過去最高となった。新興 国のパソコンや大規模コンピュータの需要増が牽引した。一方、2010年度 の売り上げは収益ともに過去最高を記録。前年比24.2%増の436億2300万 ドル、純利益が251.8%増の116億7200万ドルに達した。【1月15日Intel】 (6)IBM ・ IBMは、韓国サムスン電子と20ナノメートル(nm)線幅加工を使った、半 導体製造法を共同開発していく。合意の下、サムスンの技術者が、IBMの アルバニー・リサーチ・センター(ニューヨーク州アルバニー)に出向し、 半導体の基礎技術ほか、パッケージングやインターコネクション関連技術 を共同開発していく。これにより、基幹ネットワークからスマートフォン まで幅広い分野に対応できる半導体製品の開発を目指す。20nm技術が実用 化される時期は明らかになっていないもの、2013年以降になるとみられて 5 いる。【1月12日 PC Magazine】 ・ IBMの2010年10~12月期決算は、堅調な増収増益となった。部門別に売り 上げの成長率をみると、ソフト部門が7%増となったほか、ハードウェア を扱うシステム部門も21%増と好調な結果となった。また、グローバル・ サービスが2%増だった。売り上げの成長率を地域別にみると、新興成長 国(BRICsなど)で19%増(為替変動調整前)となったほか、アジアおよ び太平洋が14%増、米州が9%増となった。一方、欧州と中東、アフリカ では2%減だった。 一方、2010年通年決算は、売上高が前年比4.3%増の998億7000万ドル、 純利益が10.5%増の148億3300万ドルを記録した。 【1 月 18 日 IBM】 ・ IBMは、ビジネス分析(BA)事業の売上高を2010年の94億ドルから2015年 までに160億ドルに増やす意向を示した。サミュエル・J・パルミサーノ (Samuel J. Palmisano)最高経営責任者(CEO)が発表した。 IBMでは、2010年の第2および第3四半期における売り上げの成長率が、 前年同期比で2%〜3%にとどまった。その一方で、BA事業は両四半期 とも同14%増を達成するなど、好調な記録を残した。このため、高収益 分野へのシフトを掲げる同社としても、同分野における更なる事業強化 が必要と感じているようだ。 IBMは過去4年間にわたり、総額140億ドル以上を投入してBA分野関連企 業24社を買収してきた。たとえば、最近では、2010年11月には17億ドル でデータ・ウェアハウス企業ネティーザ(Netezza)を傘下に収めている。 IBMは現在、BA部門に8000人のコンサルタントを抱えている。 【1 月 18 日 WSJ】 (7)ヒューレット・パッカード(HP) ・ HPは、動画配信サービス大手ユーチューブ(YouTube)と提携し、新製品 の実演番組をネットで配信した。実際には、ユーチューブにある同社専用 の ホ ー ム ペ ー ジ の ラ イ ブ 番 組 「 HP e プ リ ン ト ・ ラ イ ブ 」 (youtube.com/hpeprintlive)で、同社の「eプリント」の実演映像を流 した。この映像の配信は期間限定ですでに終わっているが、現在は、eプ リントに関する短いトーク番組を放映している。また、フェイスブック (facebook.com/hphome)と携帯機器(hpeprintlive.mobi)でも同様に配 信している。 eプリントは、携帯情報端末からウェブ接続式のHP製プリンタにデータを 転送して、印刷できるのが特徴だ。【1月17日 NYT】 (8)シスコシステムズ ・ シスコは、一般家庭向け娯楽システム「ビデオスケイプ(Videoscape)」 をCESで発表した。製品は、セットトップ・ボックス(STB)をベースにし た複合機器。生中継番組や録画番組、ネット上で配信されている動画をテ レビ画面で検索できる。また、遠隔会議システム「ユミ(umi)」を使用し 6 て、テレビ画面を使った動画会議を可能にする。【1月5日 WSJ】 主な企業の決算報告: 企 業 名 グ ー グ ル ア ッ プ ル IBM イ ン テ ル 四 半 期 売 上 高 8 4 .4 億 ド 2 6 7 .4 1 億 ド 2 9 .0 2 億 ド 1 1 4 .5 7 億 ド ル ル ル ル 前 年 同 期 比 四 半 期 純 益 2 6 .5 % 2 5 .4 3 億 ド 7 0 .5 % 6 0 .0 4 億 ド 6 .6 % 5 .2 6 億 ド 8 .4 % 3 3 .8 8 億 ド 前 年 同 期 比 ル 2 8 .8 % ル 7 7 .7 % ル ル 9 .2 % 4 8 .5 % 2.端末(PC、携帯機器、家電等)と周辺機器・ソフト 今月の目玉は、国際消費者電子製品見本市(CES)である。今回、会場で注目 を集めたのはやはりタブレット。アップルのiパッドに触発されたメーカー各 社が他社との差別化を盛込んだ機種を披露した。 (1)2010年1月~11月期における衛星利用測位システム(GPS)を使った携行 型ナビゲーション専門機器(PND)の販売台数が前年同期比で9%減となった。 また、売り上げでは同比22%減となっており、人気の衰えが見え始めている。 調査会社NPDグループが報告した。最大の要因は、GPSを搭載したスマートフ ォンの普及。NPDによると、7~9月期終了時点で、米国内で売られている携 帯電話の86%がGPSを搭載しているという。 【12 月 21 日 USA Today】 (2)6日に開幕した消費者電子製品見本市(CES)では、 「スマート・テレビ」 が多く出展された。スマート・テレビは、これまでのような単純なインター ネット接続可能なTVではなく、プロセッサやOSを内蔵し、アプリケーション 追加により各種機能を実現できるのが特徴。ユーザーは、オンライン購入や ウェブサイト閲覧、天気予報や交通情報の確認などが行える。さらに、ソー シャル・ネットワーキングや写真および動画共有のアプリケーションもテレ ビで利用できるようになる。3Dテレビの売れ行きがかんばしくないメーカー 各社は、スマート・テレビの開発に注力しているようだ。 調査会社ディスプレイサーチ(DisplaySearch)によると、2010年に世界で販 売されたテレビの数は2億1000万台となった。そのうち、ネット接続に対応 する機種が21%を占めた。ディスプレイサーチは、その割合が2014年までに 50%以上になるとみている。【1月5日WSJ】 (3)フォックス・ニュースは、CESで出展された中から4つの注目製品を今年 の「ベスト・ハイテク機器」として紹介した。最初は、モトローラ(Motorola) が発表した同社初のタブレット「ズーム(Xoom)」。製品は、今年のCESで「Best of CES」にも選ばれている。製品は、アンドロイドの最新版ハニーコム (Honeycomb)を搭載。ストレージ容量が32ギガバイトと大容量なのに加えて、 7 SDカード・スロットと1ギガヘルツ(GHz)のプロセッサを搭載し、HD(高精 細)動画にも対応する。発売は3月の予定。次はサムスン製発光ダイオード (LED)テレビ「8000シリーズLED TV」。高画質もさながら、画面外枠がわず か1.5インチで、見栄えも洗練されている。画面の大きさは、46、55、65イン チの3種類。いずれも、スカイプと3Dに対応する。3つ目は、セレストロン (Celestron)の高性能天体望遠鏡「スカイプロディジー130(SkyProdigy 130)」。 特徴は、カメラを使って利用者がどの方向に向いているかを自動的に検知し、 探している星を見つけ易くしている。さらに価格も700ドルと破格の安さにな っている。最後は、モトローラの新型スマートフォン「エイトリックス4G (Atrix 4G)」。同機種は、専用ドックに設置するとパソコンになるのが特徴 だ。さらに、高精細(HD)動画用ドックを使えばテレビでも再生できる。 今年のCESの来場者数は14万人以上となった。また、同会場に参加した企業の 数は、2700社にのぼる。【1月10日 Fox News】 (4)リサーチ・イン・モーション(RIM)は、人気製品であるブラックベリー・ エンタープライズ・サーバ(BlackBerry Enterprise Server=BES)のクラウ ド版を2011年末までに市場へ投入する計画だ。新BESは、RIMと提携する電話 会社や企業がサーバを直接管理できる。また、RIMに運営を任せることも可能 だ。 BESは、すでに企業からその安全性に関して信頼を得ている。従来のシステム では、ブラックベリー端末が、企業のデータ・センターに設置されているBES サーバからメッセージを受け取る仕組みとなっている。RIMによると、現在は 25万台以上のBESが稼動している。 【1月13日 Computer World】 3.消費者向けインターネット/メディア・ビジネス デジタル・コンテンツが氾濫する中、有益なコンテンツを取捨選択すること がユーザーに要求されるようになりつつある。その結果、新たなオンライン・ ビジネスが生まれつつある。 (1)金融業界のトレーダー(取引担当者)の間では、最近、様々なデジタル・ コンテンツ情報をコンピュータ・プログラムに読み込ませて、それを基に市 場動向を見るようになったという。こうした中、ブルームバーグ(Bloomberg) やトムソン・ロイター(Thomson Reuters)といった金融情報通信サービス大 手は、トレーダー向けにニュースを自動的にふるい分けるプログラムを提供 している。 ブルームバーグの場合は、記事とツイッターの投稿を監視し、情報の流れに 変化が生じると顧客(トレーダー)に通達する。たとえばIBMに関する投稿が 突然増えた時に、トレーダーに警告するといった具合だ。また、トムソン・ ロイターでは、ツイッター投稿内容を解釈するアルゴリズムを開発している テキスト分析会社レクサリティックス(Lexalytics)と提携している。また、 8 ダウ・ジョーンズ(Dow Jones)は、コロンビア大学とノートル・ダム大学と 提携し、市場動向の変化を示唆する約3700語を特定して専用辞書を作成して いる。 【12月22日 NYT】 (2)ソーシャル・ネットワーキング・サービス最大手フェイスブック (Facebook)は、2012年に新規株式公開(IPO)を実施する方針を明らかにし た。同社は、2011年中に株主数を500に増やし、2012年4月までに株式公開す る見通しだ。IPOに対して、マーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO) はこれまで消極的だったが、先日、ゴールドマン・サックスが約15億ドルの フェイスブック株の販売を引き受けることに合意したことが影響している模 様。 ゴールドマン・サックスによると、2010年1~9月期におけるフェイスブッ クの売上高は12億ドル、純利益は3億5500ドルだったが、市場価値は500億ド ルと評価された。【1月6日WSJ】 (3)米メディア大手のウォルト・ディズニーは、ネット・テレビ向けコンテ ンツ配信に関してヤフーと話し合いを進めている。計画では、ヤフーのソフ ト「ヤフー・コネクテッドTV(Yahoo Connected )」を搭載するネット・テレ ビ向けにESPNやABCコンテンツ配信用プログラム(ウィジット)を開発してい く。たとえば、ESPNのウィジットでは、短い動画やスポーツの得点情報ほか、 他の統計データを提供。ABCのウィジットでは、一部の番組を提供する。 【1 月 10 日 WSJ】 (4)米司法省と米連邦通信委員会(FCC)は、ケーブル・テレビ(CATV)会社 大手コムキャスト(Comcast)によるNBCユニバーサルの経営権取得と、両社 による合弁事業立ち上げを承認した。これにともない、巨大メディア企業が 誕生する。NBCユニバーサルは、傘下にNBC(テレビ局)と映画大手ユニバー サル・ピクチャーズを抱える。CATV大手がコンテンツ製作会社を買収すると いう点に対しては、市場競争を損なうとの懸念もあった。しかし、最終的に 司法省とFCCは、条件付きで承認した格好だ。 司法省は条件の1つとして、コムキャストに対して動画配信サービス「フー ルー(Hulu)」の経営権を放棄することを要求。また、NBC(テレビ局)番組 のネット版をHulu以外の動画配信サービス事業者にも提供することを義務付 けている。【1月18日 WSJ,Reuters】 (5)米国大都市では、外食業界を中心にソーシャル・メディアを集客に利用 しようという動きが高まっている。たとえば、全米で730店を展開するレスト ラン・チェーンのバッファロー・ワイルド・ウィングス(Buffalo Wild Wings) は、位置情報サービス(LBS)を使ったSNSを提供するスカベンジャー(Scvngr) と提携し、「ホーム・コート・アドバンテージ(Home Court Advantage)」と いうキャンペーンを開始した。同キャンペーンでは、バッファロー・ウィン グ大食い競争の開催や報奨金の提供といった情報をバスケットボール・ファ 9 ンに向けに配信している。 一方、カリフォルニア州のファットバーガー(Fatburger)は、ソーシャル・ メディア・サービスのループト(Loopt)およびフォックス・テレビと提携し、 フォックスの新アニメ・シリーズ「ボブズ・バーガーズ(Bob’s Burgers)」を 宣伝している。 【1月19日 NYT】 4.電子商取引と企業向け IT サービス 歳末商戦期は前年度比で売り上げが増加し、景気が低迷する中でオンライン販 売業者にとって多尐の朗報になった。しかし、オンライン販売競争が激化する 中で、各社は新たな仕掛け作りに余念がない (1)ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)大手フェイスブック (Facebook)は、自社サイトにeコマース機能を追加するための準備を進めて いる。同社はこれまで、20社以上の小売り業者と交渉し、SNS機能をもつ小売 サイトをフェイスブック上に設置するよう促している。また、新興企業のア ルベンダ(Alvenda)の支援を受け、会員がほかの小売サイトで買い物してい る最中にでも、フェイスブック上の友人から助言や商品評価をリアルタイム で受け取れるソフトの開発を進めている。 同社は5億人の会員を持つため、ひとたびeコマース機能が加わるとeベイを 超える規模になるとの可能性が指摘されている。【12月20日Businessweek】 (2)Amazon.comやエッツィー(Etsy)などのオンライン小売業者は、フェイ スブック上におけるユーザーの行動を分析し、興味を持ちそうな商品を提案 する「ソーシャル・ショッピング(social-shopping)」サービスを開始した。 Amazon.comでは、利用者の承諾を得てフェイスブックの個人情報にアクセス し、友人が好む音楽や書籍といった情報を基に贈り物を推薦するサービスを 開始している。また、手作り商品やアンティック商品を販売するエッツィー では、フェイスブックのプロフィール情報に基づき、贈り物を推薦するサー ビスを提供し、利用者数を伸ばしている。また、eベイも昨年の11月にフェイ スブックを使った共有購入サービス「グループ・ギフツ(Group Gifts)」を 開始した。これは、ユーザーがフェイスブック経由でeベイのサイトにログイ ンすると、特定個人への贈り物の購入費用をフェイスブックの友人と分担し て共同購入できるというものだ。 2009年の年末商戦以降、オンライン小売サイト上位25社の半数以上が、自社 販売サイトにフェイスブックのプラットフォームを組み込んでいる。 【12月22日 WSJ】 http://online.wsj.com/article/0,,SB10001424052748704259704576033792763 430596,00.html (3)2010年における歳末商戦期(11月1日〜12月31日)の米オンライン小売 の売り上げは、前年比12%増となった。オンライン市場調査会社コムスコア 10 が発表した。最も売り上げの伸びが著しかったのは、配送料を無料にした12 月17日で、前年比で61%増となった。コムスコアのジアン・フルゴニ(Gian Fulgoni)会長は、「2008〜2009年の低迷から回復し、我々の予想を上回る結 果になった」と語っている。 表:2010年歳末商戦期の米オンライン売上高最終結果(単位:100万ドル) 期間 2009年 1 1 /0 1 ~ 1 2 /3 1 $29, 084 感 謝 祭 ( 1 1 /2 5 ) $318 ブ ラ ッ ク ・ フ ラ イ デ ー ( 1 1 /2 6 )$ 5 9 5 サ イ バ ー ・ マ ン デ ー ( 1 1 /2 9 ) $ 8 8 7 グ リ ー ン ・ マ ン デ ー ( 1 2 /1 3 ) $ 8 5 4 送 料 無 料 の 日 ( 1 2 /1 7 ) $586 2010年 $32, 589 $407 $648 $1, 028 $954 $942 増加率 12% 28% 9% 16% 12% 61% 【1月5日 comScore】 (4)e ベイは、先月2億ドルの現金での買収を発表した、ドイツ最大の会員制 ファッション・ショッピング・サイト「ブランズ・フォー・フレンズ(B4F)」 の買収手続きを終了した。B4F は、有名ファッション・ブランドの製品を格安 で販売。会員数は約 350 万人となっている。 また、e ベイの 2010 年 10~12 月期決算は、売上高が前年同期比 5%増の 24 億 9500 万ドル、純利益が同 59%減の5億 5900 万ドルとなった。同社売り上 げの約6割を占めるオンライン競売事業は、高額商品の取引が増加したのを 受けて売り上げが約4%増収となった。また、オンライン決済事業ペイパル も 22%増となっている。【1 月 14 日、19 日 eBay】 5.半導体とハードウェア技術 半導体業界では、スマートフォンやタブレットの普及にともない新たな再編 が起きている。ハードウェアでは、しばらく 3D テレビの動向が注目される (1)携帯電話向け半導体開発大手クアルコム(Qualcomm)は、無線LAN用チッ プを製造するアセロス・コミュニケーションズ(Atheros Communications) を現金31億ドルで買収する。スマートフォンやタブレット機器の普及で、 Wi-Fi接続やブルートゥースのニーズが高まっている。このため、クアルコム は、同分野向けチップを製造するアセロスを買収して、関連技術を補完する 考えだ。買収手続きは2011年上半期中に完了する見込み。同買収はクアルコ ムにとって過去最大となる。【1月5日 WSJ】 (2)グラフィック処理チップ開発大手エヌビディア(Nvidia)は、英ARMと戦 略提携「プロジェクト・デンバー(Project Denver)」を結んだ。提携の下、 両社は、ARMの次世代設計仕様に基づく高性能プロセッサ・コアをもとに、サ 11 ーバ、スーパーコンピュータ、デスクトップを対象にした省電力型プロセッ サを開発していく。 ARM のプロセッサは、インテル製の省電力タイプのアトム(Atom)よりもエネ ルギー効率が高いため、携帯電話で圧倒的なシェアを誇り、スマートメータ ーにも食い込んでいる。両社はさらに、今回の提携を足がかりにインテルが 市場を牛耳るデスクトップ向けプロセッサ市場でも自社製品を普及させてい く考えだ。特に、大量のサーバを使用するデータ・センターでの利用が見込 まれている。 昨年、Freescale や TI が出資する Calxeda も、ARM 設計によるサーバ用チッ プを開発すると発表している。【1 月 6 日 Greentech Media】 (3)テレビ製造大手のサムスン電子とLG電子が、3Dテレビ用メガネ技術を巡 って激しく競り合っている。テレビ・メーカー最大手のサムスンは、バッテ リ駆動型のアクティブ・シャッター(active shutter)メガネ技術を推奨し ている。一方のLGは、いわゆるパッシブ・メガネ(passive glasses)型への 移行を明らかにした。LGはその理由について、アクティブ・シャッターが、 映像のちらつきやぼけによって視聴者の健康を阻害する点を指摘している。 パッシブ・メガネは現在、3D映画を上映する際に劇場でも使われている。こ れに対して、サムスンは、ゆらぎ問題をほぼ解消できたと反論。さらに、画 像解像度がパッシブ・メガネ技術に比べて2倍以上と高く、消費電力が尐な い点を強調した。パッシブは、低価格テレビ製造のビジオ(Vizio)が採用し ている。一方、アクティブは、ソニーやパナソニックも採用している。 【1月9日 WSJ】 (4)米半導体大手のアドバンスド・マイクロ・デバイシズ(AMD)のダーク・ マイヤー(Dirk Meyer)最高経営責任者(CEO)が辞任した。同CEOの辞任に 対して、AMDの会長でもあるブルース・クラフリン(Bruce Claflin)氏は、 マイヤー氏が困難な時期にAMDの事業を安定化させた点を高く評価する一方、 今後の成長のためにリーダシップの交替が必要だと述べている。 同社は現在、次期CEOを探しているが、後任が決まるまで暫定CEOには、トー マス・サイフェルト(Thomas Seifert)最高財務責任者(CFO)が就任する。 一方、AMDが発表した2010年 10~12月期決算は、売上高が前年同期比0.2%増 の16億5000万ドルに、純利益が3億7500万ドルとなった。 【1月10日 CNBC、20日 AMD】 (5)DRAM(Dynamic Random-Access Memory)の世界販売が2011年に大幅に縮 小し、その結果、価格も低下するとみられている。調査会社のIHS iサプライ が発表した。同社の報告によると、2011年のDRAM世界販売高は前年比12%減 の355億ドルに減尐し、価格も同45%低下する見通しだ。その要因として同社 のアナリストは、2010年の好況によって供給過多が引き起こされた事を挙げ ている。 【1月12日 WSJ】 12 6.政府・議会動向、通信その他 問題となっていたネットの中立性に関する論議が、FCC の決定によって一段落 ついたようだ。しかし、今後、通信事業者は設備投資負担を消費者に課金とい う形で転嫁する可能性がある。それが、質が悪く高額な米国のブロードバンド・ サービスをさらに悪化させる可能性がある。 (1)ベライゾン(Verizon)は、ワシントンDC上訴裁判所に、FCCがネット中立 性に関する規制権限を持たないことを確認する訴訟を起こした。同裁判所は、 昨年末に、FCCはISPのネットワークマネジメントを規制する権限がないとの 判断を示している。FCCは、これに対して何もしない、議会でネットワーク中 立性を担保するための立法をまつ、ブロードバンド・サービスを情報サービ スではなく、FCCが規制権限をもつ通信に該当することを明確にする、という 3つの選択肢がある。現在、FCCはそのいずれも採用しておらず、現行の1996 年通信法706条に基づく規制権限に基づき、ネットワーク中立性に関する事務 を行おうとしているが、同条項は昨年FCCが規制の論拠とするのに失敗してお り問題が多い。 【1月24日 Network World】 (2)グーグル(Google)、フェイスブック(Facebook)、そしてヤフー(Yahoo) の3社は、ネット・アドレス管理の運用試験計画「ワールドIPv6デイ(World IPv6 Day)」に参画する。現在、非営利の国際組織ISOC(Internet Society) では、現行のIPv4べースのネット・アドレスの空きが急激に尐なくなってい ることから、IPv6への移行を進めている。その一環として同団体は、2011年6 月8日にワールドIPv6デイを実施する計画だ。同試験では、ネット企業が同日 にIPv6対応のウェブサイトを使ってそれぞれのサービスを提供。その際に、 IPv6が正常に稼働するかなどを確認する。米行政管理局(OMB)は、連邦政府 機関に対して、公衆からのアクセスのあるサイトについてIPv6とIPv4の双方 によるアクセスを2012年秋までに可能とするよう義務付けている。 ほかに参加を表明している企業には、コンテンツ配信サービスを提供するア カマイ・テクノロジーズ(Akamai Technologies)やライムライト(Limelight Networks)などがある。【1月15日 Computer World、Yahoo! News】 (3)IDCのレポートによると、2011年のIT市場では、公益事業によるIT投資成 長率は、医療業界に次ぐ5.3%となり、全業界平均の約5%をわずかに上回る 見通しだ。産業再生法(ARRA)による資金配分を受け、スマート・グリッド 構築が進む中、この見通しは電力業界を中心とした伸びを示すものと言える。 IDCはまた、IT投資を特に後押しする要因としてスマート建物と電気自動車の 普及、北米における太陽光発電の倍増予測などを挙げている。 同分野では様々なサービスが注目されており、同市場の攻略を狙うベンダー も多い。 【1月20日 Greentech Media】 13
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