1 米国 IT 業界動向 2010 年 8 月 JETRO/IPA New York 1.主要 IT

米国 IT 業界動向 2010 年 8 月
JETRO/IPA
New York
1.主要 IT 企業動向
(1)グーグル
・ グーグルがロサンゼルス市警に提供する予定の電子メール・システムの導
入が遅れている。同市警の責任者によると、現時点でサービスがセキュリ
ティ基準を満たしていないのが原因だという。同契約は、グーグルがマイ
クロソフと入札で争い、落札した案件。契約金額は7億2500万ドルで、6
月30日までに約2万人の市警職員を対象に電子メール・システムを納入す
る予定だった。今回の遅延に伴い、グーグルでは旧システムの運営費を尐
なくとも11月まで負担する。
同市とグーグルの契約はほかの自治体の関心を集めているだけに、今回
の遅れがグーグルの売り込みに影響を与える可能性もありそうだ。
【7 月 24 日 LA Times】
・ グーグルは、米国政府機関向けクラウド・コンピューティング・サービス
「Google Apps for Government」を発表した。米政府の安全基準を満たし
た最初のクラウド・サービスとなっている。サービスでは、一般向けサー
ビスとは別に設置したサーバを介して、電子メールや文章処理などを含む
各種サービスを省庁機関に提供する。政府機関は、サーバを大量に導入し、
各種ソフトやアプリケーションのライセンス料を払う必要がない。
オバマ政権は現在、年間760億ドルに上るコンピュータおよびソフト費用
を減じるために、クラウド・サービスへの移行を進めている。
【7月28日 WSJ】
・ グーグルは、オンライン・ゲーム開発スライド(Slide)を2億2800万ドル
で買収した。スライドは、ソーシャル・ネットワーク・サービス(SNS)
大手フェイスブック(Facebook)へゲームを提供している。グーグルは自
社独自のSNS「グーグル・ミー(Google Me)」の立ち上げを計画している
とも言われており、同サービスで使えるオンライン・ゲームの開発にスラ
イド のノウハウを利用していくとみられている。【 8月4日 Business
Insider】
・ グーグルは、各テレビ局に対してグーグルTV(Google TV)への協力を要
請しているが、局側は協力に対して消極的だ。グーグルTVの進出によって
自身の利権が侵食されるという懸念が理由となっている。
グーグルTVは、専用ソフトをネット対応テレビに搭載し、さらにセット
トップ・ボックス(STB)を通じて、ウェブの閲覧とネット検索、番組専
門検索をテレビで提供するというもの。対応するテレビはソニーが、STB
はロジテック・インターナショナルが開発し、2010年秋にも市場投入さ
れる見込み。
1
テレビ局側は、自局のウェブサイトでも番組を配信しており、グーグル
TVによって“共食い”状態になることを懸念。その事態を避けるために、
特定の機器やサービスに番組を提供しないことも検討している。
さらに、一部のテレビ局からは、番組を提供することによってグーグル
からどのような利益が還元されるのかを明確にすることを求める声もあ
がっている。【8月19日 WSJ】
・ HTCは、クローム(Chrome)OSを搭載したタブレット機種を2010年11月の
ブラック・フライデー(感謝祭明けの金曜日、恒例の割引セールデー)に
出荷する見通しだ。HTC製タブレットは、マルチタッチ・ディスプレイに、
2ギガバイト(GB)のRAM、32GBのストレージを搭載する。販売は、ベラ
イゾン・ワイヤレスを通して行う。
グーグルはクロームでアップルのiパッドへ対抗していく考えだ。しかし、
J・ゴールド・アソシエイツのアナリスト、ジャック・ゴールド氏によ
ると、クロームがiパッドのOSに比べてプログラミングの拡張性で务るほ
か、ダウンロードできるアプリケーションが存在しないため、iパッドに
対抗するのは難しいという見方を示した。【8月18日 Computer World】
・ グーグルは、アンドロイド最新版(3.0)を搭載したタブレット機種の販
促を目的に、モトローラおよびベライゾン・ワイヤレスと提携した。アン
ドロイド3.0で走る最初のタブレット機器をモトローラが開発し、ベライ
ゾンがその販売を担当する計画だ。製品は3社の共同ブランドとして販売
される。
モトローラによるアンドロイド3.0搭載タブレットは、2010年末には大量
生産に 入り 、 2011 年 中に 200 万台 を売 り 上げる 見込 みだ 。【 8 月 21日
TechZone 360】
(2)アップル
・ アップルは、同社製スマートフォンの最新版「iフォン4」を7月30日から
17ヵ国で発売を開始した。同社は今後、9月までに販売国を88ヵ国に拡大
していく方針だ。ただし、7月後半に発売を予定していた白いiフォン4に
ついては、発売を延期した。現在、予約受付を開始しているものの、正確
な発売日については年末としか明らかにしていない。販売開始が遅れる理
由として、製造が当初予想していたより難しい点が挙げられている。
【7月26日 The Street】
・ アップルのモバイル広告サービス「iアド」は、7月1日から提携企業17社
を抱えて始動したが、その後広告クライアントが集まらずに苦戦を強いら
れている。7月の時点で、広告キャンペーンを実施した企業は、ユニリー
バ(Unilever)と日産自動車の2社のみ。また、8月に入ってからも、シ
ティグループとウォルト・ディズニー、J.C.ペニーのみとなっている。広
告業界関係者によると、伸び悩みは、iアドの広告作成に関するアップル
の厳しい規制が原因となっている。各種規定に準拠したモバイル広告を完
成させるには、新システムの習得から作成まで約8週間~10週間を要する
2
からだ。すでに、尐なくとも1社が、手続きの複雑さを理由にiアド広告の
作成をあきらめているという。このまま行けば、アプリケーション開発者
が離れるという懸念もある。【8月18日 WSJ】
・ 電 話 会 社 大 手 の ベ ラ イ ゾ ン ・ コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン ズ ( Verizon
Communications)は、iパッド向けにテレビ放送を配信していく。対象と
なるのは、ベライゾンの光ファイバー通信網を使ったファイオス(FiOS)
TVの加入者。
ベライゾンは、ファイオス加入者が最大5つの機器を使ってマルチメデ
ィア・コンテンツにアクセスできるサービスを2010年第4四半期から提
供する計画で、iパッドへのテレビ番組配信も同サービスの一環となる。
【8月20日 Bloomberg】
(3)Amazon.com
・ Amazon.comが発表した4~6月期決算は増収増益となった。電子書籍(e
ブック)リーダー「キンドル(Kindle)」ほか、アマゾンWebサービス、小
売りといずれも好調だったことが奏功した。
【7月24日 Amazon.com】
・ Amazon.comは、キンドルの新製品を世界約140ヵ国・地域を対象に8月27
日から発売を開始する。新製品の画面サイズは、現行機種と同じ6インチ
だが、軽量となっている。製品は、グレーと白色の2種類で、価格はWi-Fi
版139ドル、3G+Wi-Fi版189ドルであり、前者は無線LAN対応ブックリー
ダーの中では最廉価となっている。さらに、画質やページをめくるスピー
ドを向上させたほか、最大3500冊分のデータをダウンロードできるのが特
徴。【7月28日 WSJ】
(4)マイクロソフト
・ マイクロソフトの4~6月期決算は増収増益となった。ウィンドウズ7の
売り上げが好調だったのに加えて、オフィスでも若干の増収を記録した。
さらに、同社が積極的に開拓している企業向けクラウド・コンピューティ
ング・サービス事業も寄与したという。【7月24日 Microsoft】
・ マイクロソフトは、携帯機器向けプロセッサを開発するARMホールティン
グス(ARM Holdings)とライセンス契約を結んだ。同社は具体的な契約内
容などを明らかにしていない。ARMとはすでに、過去13年間にわたりソフ
トと端末分野で協業してきた経緯がある。【7月27日 IBD】
・ マイクロソフトは、カナダのブルー・ライン・イノベーションズ(Blue Line
Innovations)と家庭用エネルギー管理ソフト「ホーム(Hohm)」のハード
ウェア開発で提携した。ブルー社は、ホーム向け機器を開発する初の企業
となる。ブルー社は、センサーと通信機能、ディスプレイを備えた「パワ
ーコスト・モニタ(PowerCost Monitor)」を、今年初めから99ドルで販売
してきた。今回の提携により、ホームと互換性のあるパワーコスト・モニ
タとWi-Fiキットを249ドルで販売していく。製品は、フライズ(Fry’s)、
Amazon.com、マイクロソフトで販売していく。
3
マイクロソフトのエネルギー管理および家庭自動化事業部門の責任者トロ
イ・バターベリー氏によると、すでに、スマート・メーターの代替品とし
てパワーコスト・モニタの提供を検討している電力会社もあるという。
【7 月 29 日 Earth2Tech】
・ マイクロソフトは、同社の検索エンジン「ビング(Bing)」の比較購買サイ
ト「ビング・ショッピング」に出店する小売業者からの手数料を撤廃して
いく。同社は公式に発表を行っていないが、複数の業者がすでに決定事項
として確認済みだ。マイクロソフとは現在、ヤフーと検索事業の統合を進
めているが、その中でグーグルへの対抗策として今回の方針を決定した模
様。今後は、グーグルと同様、サイト上の広告から収入を得ていく。今回
の決定に対して、一部ではビングの競争力が高まると見る向きもある。
調査会社コムスコアによると、価格比較サイトの首位はグーグルで、ビン
グは9位にとどまっている。【8月14日 IBD】
(5)インテル
・ インテルは、コンピュータ間のデータ転送速度を画期的に高速化する技術
「光インターコネクト(optical interconnect)」の試作品を開発した。同
技術を使えば、コンピュータ内部あるいはコンピュータ間のデータ転送速度
を毎秒50ギガビットに引き上げられる。これは、高精細(HD)映画を1秒で
転送できることを意味する。さらに、銅線を利用した場合に比べ、データ転
送距離が伸びるという。インテルは、今後、同技術をチップに搭載する一方
で、転送速度を最大で毎秒1テラビットに引き上げていく。
同社はまた、外部ストレージ機器、携帯通信端末、そしてディスプレイを、
100メートル離れたパソコンと接続する光インターコネクト技術「ライト・
ピーク(Light Peak)」の開発も進めていく。同技術は、USBの代替技術と
して期待されており、最大で毎秒10Gbのデータ転送を目指す。
【7 月 28 日 Computer World】
・ インテルは、米連邦取引委員会(FTC)とプロセッサの独占禁止法違反をめ
ぐる訴訟で和解した。FTCは和解案として、インテルに対して、
(i)製品の
単独供給先との排他的な取引条件を結ぶことの禁止(ii)競争を阻害する目
的での技術改良の禁止 などを提示。これらの条件をインテルが受け入れた
恰好だ。なお、今回の和解によって同社に制裁金は科されない。
【8月4日 Daily Tech】
・ インテルは、テキサス・インスツルメンツ(TI)のケーブル・モデム・チッ
プ事業を買収する。これにより、これまで不得意だったスマートフォンやモ
デム、セットトップ・ボックス(STB)、各種電子製品向けのチップ事業を強
化しARMに対抗していく考え。買収金額などの詳細は明らかにしていない。
【8 月 18 日 Internet News】
・ インテルは、セキュリティ・ソフト大手マカフィー(McAfee)を約76億8000
万ドルで買収する。今後、安全性の要求が高まる中、同社はセキュリティ技
術の確保が必要不可欠と判断した模様。
マカフィーの2009年の売上高は約19億ドルで、従業員は6088人。最近は携
4
帯電話向けセキュリティ会社を買収し、同事業へ進出していた。
【8 月 19 日 WSJ】
(6)IBM
・ IBMは、メインフレームの新製品「zエンタープライズ(zEnterprise)」を発
表した。従来機種「システムz10(System z10)」に比べて、消費電力が同等
ながら演算処理速度が40~60%高速となっている。また、仮想化ソフトを標
準装備するのも特徴だ。IBMによると、運営コストは、前機種に比べて40%
安いほか、ほとんどのLinuxシステムより60%安いという。基本価格は100
万ドルで、最高水準のシステムを揃えるなら4000万ドルかかる。
【7月23日 Forbes】
・ IBMと医療保険会社エトナ(Aetna)の子会社アクティブヘルス・マネジメン
ト(ActiveHealth Managemnet)は、医療診断支援システム「コラボレイテ
ィブ・ケア・ソリューション(Collaborative Care Solution)」を発表した。
同システムは、クラウド・コンピューティング技術をベースにしており、
電子医療記録(EMR: Electronic Medical Record)に保存された患者情報
を分析し、治療の進み具合や投薬効果の情報を更新する。さらに、医師に
対して最善の治療方法を示唆したり、患者が自身の医療データを閲覧する
ことも可能だ。新システムは、連邦政府が推進する電子健康情報が満たす
べき基準meaningful useに準拠する。また、既存のEMRとも互換性があり、
さまざまな医療機関が保有する患者の電子医療情報から重要情報を抽出す
ることも可能だ。同システムの価格は、医師一人あたり月額で最高1000ド
ル程度になる。【8月7日 Computer World】
(7)ヒューレット・パッカード(HP)
・ HPは、オラクルのOS「ソラリス(Solaris)」、
「エンタープライズLinux」、そ
して仮想システム「オラクルVM」を、自社のx86サーバに対応するOS製品と
して認定して再版していく。
これに伴い、HPのx86系サーバを使っている顧客企業は、オラクルのプレ
ミア・サポート(Premier Support)契約に有料で加入できる。一方、デル
もオラクルと同様の契約を結んでいる。【7月31日 IDG News】
・ HP のマーク・ハード最高経営責任者(CEO)は、、元契約社員に対するセク
ハラ疑惑が理由で辞任した。暫定 CEO には、キャシー・レスジャック最高財
務責任者(CFO)を起用する。HP 側は調査を行い、最終的に違反はなかった
と結論した。しかし、同氏に関しては、経費の不正請求疑惑も浮上しており、
最終的に自ら引責辞任を決めた模様。
2005 年4月に就任したハード氏は、大胆なリストラを断行する一方で、ク
ラウド・コンピューティングといった成長分野への投資を積極的に行い、
業績を回復させた。その辣腕ぶりは、業界でも高く評価されている。
【8 月 7 日 WSJ】
・ HPは、セキュリティ・ソフト開発するフォーティファイ・ソフトウェア
(Fortify Software)を買収する。買収金額は明らかにしていない。フォー
5
ティファイは、アプリケーション・コードの中からセキュリティに関する弱
点を発見して修正する「360」というツールのほか、データ・センターの脆
弱性を分析するために顧客がバイナリー・コードをアップロードできる「フ
ォーティファイ・オン・デマンド」というサービスがある。
HPは当面、フォーティファイを独立企業として運営していく。その一方で、
将来時間をかけてHP本体のソフトウェア・アンド・ソリューション事業部
門に組み込んでいく計画。【8月18日 PC World】
・ HPの5~7月期決算は増収増益となった。新興国でのパソコン販売とクラウ
ド・サービスの需要増加が奏功したという。地域別に売り上げをみると、米
国市場外が売り上げ全体の63%を占め、そのうちBRICs(ブラジル、ロシア、
インド、中国)の合計が約21%の増収となっている。
HPはまた、四半期決算に関する電話会議の中でタブレット機種の開発計画
について明らかにした。それによると、同社は近々、マイクロソフト対応
機種を投入し、ウェブOS機種を2011年初頭に発売する計画だ。HPのタブレ
ット計画については、ウィンドウズとウェブOSの両機種が販売されるとの
見方があったが、今回の発表はそれを裏付けるものとなった。
【8月19日 HP、PC Magazine】
(8)シスコシステムズ
・ シスコの5~7月期決算は大幅な増益となった。同社の主力製品となるルー
タと交換機の販売が好調だったのが奏功した。これにより、同社は5四半期
連続の増収を記録している。一方、2010年度通年では、売上高が前年比10.9%
増の400億4000万ドルに、純利益が26.6%増の77億6700万ドルとなった。
【8月13日 Cisco】
(9)オラクル
・ 米司法省は、オラクルを契約違反で提訴した。同省の訴えによると、オラク
ルは、連邦政府機関に対してソフト購入費を過剰請求していたという。
同省がオラクルと交わした1998~2006年における契約では、オラクルが連
邦省庁機関に対して製品価格の変更を通達し、民間企業顧客に対する値引
きと同様の価格を適用する条件となっていた。しかし、オラクルはこの値
引きを省庁機関に対して適用しなかったという。訴訟の対象となっている
ソフトの価格は数億ドル規模に達するため、もし司法省が勝訴すれば、オ
ラクルは政府が被った損害額の3倍の支払いを科せられる可能性があると
いう。【8月3日 NYT】
・ オラクルは、業務用ソフト開発大手の独SAPを著作権侵害で訴えていた件で
和解した。これにより、SAPは、その責任を認めて損害賠償金を支払う。た
だし、SAP側は、賠償金額が不当に高い点を不服として、裁判所に引き下げ
を訴えていく考えだ。
同訴訟は、元SAP子会社トゥモーローナウ(TomorrowNow)がオラクル製品
を自動更新するサービスを提供した際に、オラクルの知的財産に不法アク
セスし著作権を侵害したとして、オラクルが訴えていた。【8月7日 WSJ】
6
・ オラクルは、グーグル(Google)を著作権侵害の疑いでグーグルを提訴した。
訴えによると、グーグルのアンドロイドが同社の保有するJavaに関する7つ
特許のいくつかを侵害しているという。オラクルは、アンドロイドの提供差
し止めを求めている。現在、21メーカーから約60機種におよぶアンドロイド
対応機種が発売されている。
これに対して、グーグル側はオラクルの訴えがオープンソース・コミュニ
ティに対する攻撃として、徹底抗戦の構えをみせている。【8月14日 LA
Times】
主な企業の決算報告:
企 業 名
四 半 期 売 上 高
A m a zo n .c o m
マ イ
ク
ロ ソ
フ
6 5 .6 6 億 ド
ル
前 年 同 期 比
四 半 期 純 益
4 1 .2 %
2 .0 7 億 ド
ル
前 年 同 期 比
4 5 .8 %
ト1 6 0 .3 9 億 ド
ル
2 2 .4 %
4 5 .1 8 億 ド
ル
H P
3 0 7 .2 9 億 ド
ル
1 1 .4 %
1 7 .7 3 億 ド
ル
6 .1 %
シ ス コ
1 0 8 .3 6 億 ド
ル
2 7 .0 %
1 9 .3 5 億 ド
ル
7 9 .0 %
4 8 .4 %
2.端末(PC、携帯機器、家電等)と周辺機器・ソフト
(1)軍事防衛技術開発大手レイセオン(Raytheon)は、アンドロイドを搭載
した携帯電話を活用して、戦場で敵の所在を突き止めるアプリケーションを
開発している。同アプリケーションは、無人偵察機や人工衛星から写真を撮
影して、そのデータを送受信できる。写真は、車のナンバー・プレートや顔
の特徴に焦点を合わせるほどの精度を持つという。また、アプリケーション
は、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)と同じように、兵士同
士が位置を相互確認できる機能も備える。アンドロイドの利用に対してグー
グルも協力しているという。すでに、米軍の一部では試験的に導入されてい
る。
【7月23日 Reuters】
(2)企業向け携帯電話市場で圧倒的な人気を誇るリサーチ・イン・モーショ
ン(RIM)のブラックベリー(BlackBerry)が、アップルやグーグルの攻勢に
押されている。例えば、iフォンやアンドロイド対応機種へ乗り換える企業が
増えており、調査会社ガートナーの調べによると、2010年第1四半期におけ
るRIMの市場シェアは、前年同期の55%から41%まで落ち込んでいる。その一
方で、iフォンとアンドロイド機種の占有率合計は同23%から同49%まで拡大
している。アップルによると、フォーチュン100企業の8割がiフォンの導入
を進めているという。
iフォンととアンドロイド機種の普及の要因は、業務用に使える各種アプリケ
ーションの豊富さだ。これに対して、RIMでは、2010年秋に新版のOSを発表し、
アプリケーションを増やすことで対抗する考えだが、今後も苦戦を強いられ
ることになりそうだ。【7月28日 NYT】
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(3)世界各国の携帯電話会社大手らは、業界団体「ホールセール・アプリケ
ーション・コミュニティ(WAC=Wholesale Applications Community)」を結
成し、アプリケーション向けオープン・プラットフォームを構築していく。
WACは今後、サードパーティが開発したアプリケーションの審査と承認を行い、
参加企業が運営するアプリケーション・ダウンロード・サービスに配信する
計画。WACは、運営費用を賄うために小額の手数料を参加企業に課す。
同 団 体 に は 、 米 電 話 会 社 大 手 の AT&T を は じ め 、 ノ ル ウ ェ イ の テ レ ノ ア
(Telenor)ASA、中国移動通信(China Mobile)を含む計24社が参加してい
る。WACは、2011年2月までに同サービスを開始する計画。
ただし、アナリストの中には、同団体がアップルやグーグルといった既存の
確立されたサービスに対抗するのは難しいとみる者もいる。【7月29日 WSJ】
(4)業務効率の向上を狙ったモバイル・ビジネス・インテリジェンス(BI)
を導入する米企業が増えている。例えば、ビル保全システム大手ジョンソン・
コントロールズ(Johnson Controls)では、施設管理サービスの監査業務向
けにアクチュエイト社(Actuate)のBIおよび報告ツール「オープン・ソース・
エクリプス・バート(Eclipse BIRT)」を試験的に導入した。6人の地域責任
者が担当店舗に行って携帯電話機「ブラックベリー」に監査結果のデータを
入力すると、データが送信された後に集計され、パソコン上で監査対象の店
舗に関する過去の監査結果や、別店舗の監査結果との比較結果をみることが
できる。【7月30日 Computer World】
(5)無名メーカーのオーゲン(Augen)は、150ドルのアンドロイド搭載タブ
レット機種「GenTouch78」を発表した。同機種は現在、低価格小売チェーン
大手のKマートで発売されている。製品は、7インチのタッチパネル(800x480
ピクセル)を備えるほか、800メガヘルツのプロセッサ、256メガバイトのRAM、
2ギガバイトのストレージ、SD/MMCメモリー・カード・スロットを搭載する。
また、Wi-Fi接続にも対応する。
さらに、同タブレットは、720pの高精細(HD)動画を再生できるほか、PDF、
eパブ(ePub)、HTMLの各種形式に対応する。また、アプリケーション・ダウ
ン ロ ー ド ・ サ ー ビ ス の ア ン ド ロ イ ド ・ マ ー ケ ッ ト プ レ イ ス ( Android
Marketplace)にも対応する。
アンドロイド搭載タブレットとしてはこのほか、500ドルのデル・ストリーク
(Dell Streak)や、200ドルのアーコス(Archos)製ホーム・セブン・タブ
レット(Home 7 Tablet)などがある。【7月30日 Yahoo News】
(6)古くなった携帯電話機種を再販する事業が成長している。業者が、顧客
から古い携帯電話を買い取り、旧式でも気にならないユーザーへ販売する仕
組みだ。現在、再販サービスを提供する企業には、ガゼル(Gazelle)ユーリ
ニュー(YouRenew)やネクストワース(NextWorth)などがある。例えば、ガ
ゼルでは、旧式携帯機器を販売する側は、ウェブサイト上で製品や機能の状
態のほか、付属品の有無といった質問に答える。下取り価格が提示され、売
8
り手が同意すれば、送付ラベルを印刷して電話機を送る。一方、ガゼルでは、
電話を受け取った後、機能や状態を確認し、問題がなければ、小切手を送る
かペイパル(PayPal)の口座にクレジットを振り込む。【7月30日 Christian
Science Monitor】
(7)2010年上半期の米スマートフォン市場において、アンドロイド搭載携帯
電話機の購入者数が全体の27%を占め、iフォン購入者数の23%を上回った。
調査会社ニールセンが報告した。しかし、アンドロイド対応機種は複数のメ
ーカーから発売されていて、アップル1社で製造するiフォンと直接比較する
のは無理があるという指摘もある。【8月5日 LA Times】
(8)コンピュータ製造大手デル(Dell)は、同社初のタブレット型パソコン
「ストリーク(Streak)」を米国市場で発売する。製品の価格は、AT&Tのデー
タ通信サービスとの2年間契約の条件付きで299.99ドルとなっている。加入
しない場合は549.99ドル。製品は、5インチのタッチスクリーンを搭載し、
OSにはアンドロイドを採用。ネット接続には、3Gネットワークを利用する。
すでに英国市場では6月から発売済みだが、米国でどこまで消費者を魅了で
きるのか注目が集まるところ。【8月12日 WSJ】
3.消費者向けインターネット/メディア・ビジネス
(1)商品やサービスの宣伝のために低予算で実施できるオンライン・ソーシ
ャル・サービス(SNS)を利用する中小企業が増えている。中小企業向けの会
員制交流サイト(SNS)、MerchantCircle.comが報告した。
同社は、2010年4~6月の間、社員5人未満の企業約1万社を対象に調査を
実施した。その結果、「3ヵ月以内にSNSの利用を開始または継続する」と答
えた企業が半数を超えて過去最高となった。また、利用者の位置情報とSNS機
能を融合させたサービス、Foursquare.comを利用やツイッター(Twitter)を
利用する企業が増加していた。
一方、企業向けにインスタント・メッセージング(IM)サービスを提供する
HipChat.comは、ビジネスに効果が出ている企業が尐ない点を指摘している。
【7月27日 USA Today】
(2)米娯楽・メディア大手ウォルト・ディズニー(Walt Disney)は、フェイ
スブックなどにオンライン・ゲームを提供する新興企業プレイダム(Playdom)
を買収する。買収金額は約7億6300万ドルになる見込み。買収手続きは、9
月中に完了する予定。【7月27日 TechCrunch】
(3)米国のビデオゲーム・メーカーの間では、オンライン・ゲームの会員費
用を無料化する動きが進んでいる。ゲーム内で販売する仮想商品の売り上げ
を伸ばすのが目的だ。例えば、ワーナー・ブロス(Warner Bros.)は、「ダン
ジョンズ&ドラゴンズ・オンライン:エバロン・アンリミテッド(Dungeons &
9
Dragons Online: Eberron Unlimited)」の会員料(月額15ドル)を2009年に
撤廃したが、その後、利用者数と売上を伸ばしている。最近では、ソニーの
ビデオゲーム部門が、「エバークエスト2(EverQuest II)」の無料化を発表
している。例えば、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)などで
人気を博しているジンガ(Zynga)のソーシャル・ゲーム「ファームビル
(Farmville)」は、月間6000万人の利用者が、ゲームの中で作物を育てるた
めに家畜や種を購入している。ユーザー数5000万人で第2位の英Playfish社は、
ビデオゲーム最大手EA(Electronic Arts)が買収済みだ。
調査会社シンクエクイティ(ThinkEquity)によると、2010年における米国内
の仮想商品売上高は、2008年の2億7800万ドルから17億ドルに激増する見通
し。
【7月31日 WSJ】
(4)新興企業のビディオ(Vidyo)は、低価格ビデオ会議ソフトを開発した。
同社のソフトは「スケーラブル・ビデオ・コーディング(scalable video
coding)」と呼ばれるソフト技術を採用。動画データを小さくすることで、送
受信環境が务る携帯通信機器にも良質の画像を転送できるのが特徴だ。すで
にビディオはiパッドでも試験を行い、問題なく機能することを確認している。
同社のビデオ会議システムは6000ドルで、消費者市場に普及するにはまだ高
額だが、既存システムに比べると格段に安い。
また、ビディオはHPと提携を結び、HPの企業向けラップトップ製品に同ソフ
トを提供していく。HPではさらに、自社の高品位電話会議システム「ヘイロ
ー(Halo)」にも同社技術を組み込む方針だ。【8月10日 Businesweek】
(5)IP電話サービス大手スカイプは、米証券取引委員会(SEC)に新規株式公
開(IPO)を申請した。通信関連技術さらなる向上に向けて最大1億ドルの調
達を目指す。同社はeベイが以前買収によって傘下に収めたものの、昨秋に資
産効率化の一環としてスピンオフされていた。【8月10日 WSJ】
(6)ヤフー、マイクロソフト(Microsoft)、動画配信サービスのフールー(Hulu)
は、視聴する動画にあわせて広告を選択できるツール「ASq」を9月から導入
する。同ツールは、仏広告会社大手パブリシス・グループ(Publicis Group)
のデジタル部門であるビバキ(VivaKi)が開発したもので、動画視聴者は3
種類以上の広告から好みのものを選択できる。
関係者が実施した調査では、広告選択肢を与えられた視聴者は、選択肢がな
い場合に比べ、広告をクリックする確率が2倍高いことが明らかになってい
る。また、グーグル傘下のユーチューブ(YouTube)もその導入を検討中だと
いう。【8月12日 SF Chronicle】
(7)ネット利用者が書き込んだ質問に対して別のユーザーが解答を提供する
オンラインQ&A(Question & Answer)サービスが注目を集めている。現在、
オンラインQ&Aサービスを提供する企業は10社以上あり、その中でも特に、
Quora(クオラ)、チャチャ(ChaCha)、サークルイット(SircleIt)、ハンチ
10
(Hunch)、そしてピアーポング(PeerPong)の5社が注目を集めている。
オンラインQ&Aサービスは、一般的な検索エンジンでは答が見つからない場合
の代替サービス「ソーシャル検索(social search)」として分類されている。
すでに大手企業や投資機関も同市場への参入を活発化させている。例えば、
グーグルは今年2月、ソーシャル検索の先駆者であるアードバーク(Ardvark)
を5000万ドルで買収した。また、その翌月には、ベンチャー・キャピタル(VC)
のベンチマーク・キャピタル(Benchmark Capital)がクオラに投資。また、
フェイスブックも自社サービスにQ&A機能「フェイスブック・クエスチョンズ
(Facebook Questions)」を追加している。
ただ、ソーシャル検索の利用者数はまだ多くないため、広告主を引きつける
ことが難しいという課題が残されている。【8月12日 Businessweek】
(8)サムスン電子(Samsung)は、自社のオンライン・アプリケーション・ス
トアを通して3D映画予告編のストリーム配信を開始する。
3Dコンテンツ配信には通常より格段に大きな帯域が必要となり、サービスの
質を維持するのが難しいとされている。このため、今のところコンテンツ配
信業者大手はサービスの提供に踏み切っていないのが現状だ。
これに対して、サムスンは、3Dストリーミングには毎秒5~7.5メガビットの
ブロードバンド接続が必要となるが、米国ブロードバンド世帯の約20%がす
でに対応済みであると指摘する。また、3D配信のもう一つの問題として、専
用メガネを使ってまで3D動画を見たいという利用者がどれほどいるかという
疑問が残されている。【8月13日 Computer World】
4.電子商取引と企業向け IT サービス
(1)携帯電話決済サービスを提供するスクエア(Square)が、米国でのサー
ビスを本格的に開始する。同社はツイッターのジャック・ドーシー最高経営
責任者(CEO)が2009年2月に設立。携帯電話を通じてクレジット・カードの
支払いを受け付けられるプラグイン機器と関連ソフトを提供する。同社はす
でにソフトを一般向けに提供しており、アップルのアップ・ストア(App Store)
とグーグルのアンドロイド・マーケット(Android Market)でダウンロード
できる。【8月5日 WSJ】
5.半導体とハードウェア技術
(1)フラッシュ・メモリ製造大手のサンディスク(SanDisk)の業績が好調に
伸びている。スマートフォンの普及が奏功したのが理由。2009年における同
社の売上高は、前年比6%増の35億7000万ドルを記録している。同社は、2009
年第2四半期前まで5四半期連続でマイナス成長が続いていたが、第3四半
期にプラス成長へ転じ、2010年第1四半期には前年同期比65%増の11億ドル
を売上げている。
同社はすでに7月、東芝と提携して5億ドルを出資し、中国でフラッシュ・
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メモリ工場の建設に着手したばかりで、2011年春に稼働を開始する予定だ。
【7月24日 IBD】
(2)メモリ技術開発のラムバス(Rambus)が同社の特許侵害を理由にエヌビ
ディア(Nvidia)を米国際貿易委員会(ITC)に訴えていた件で、ITCはラム
バスの訴えを認める判決を下した。ITCは、エヌビディアに対して関連半導体
を搭載した一部製品の輸入を禁止するするよう命じた。
問題となっているのは、メモリとグラフィク・チップを接続するコントロー
ラに関する技術で、エヌビディアの「Gフォース(GeForce)」、「クアドロ
(Quadro)」、
「テスラ(Tesla)」、
「テグラ(Tegra)」が訴訟の対象となってい
る。ITCはまた、問題のエヌビディア製半導体搭載した製品として、ヒューレ
ット・パッカード(HP)製コンピュータの一部ほか、アスーステック・コン
ピュータ(Asustek Computer)のマザーボード、そしてバイオスター・マク
ロテック・インターナショナル(Biostar Microtech International)の製品
を挙げた。
アナリストの中には、ITCの決定により、ラムバスとのライセンス契約に応じ
る企業が今後増加し、その結果、ラムバスが今後の交渉で有利な立場になる
とみる者もいる。【7月28日 Businessweek】
(3)DRAMが2010年下半期に供給不足に陥り、パソコンの価格が上昇する恐れ
がある。調査会社iサプライ(iSuppli)が報告した。同社によると、DRAMメ
ーカーが(i)需要増に対応した生産設備を確保できない(ii)最先端技術
を導入するうえでの作業が困難 という2つの理由を挙げている。
DRAMメーカーは通常、製品の小型化と生産速度の向上を図るために、毎年、
新設備を毎年導入する必要がある。しかし、メーカーの多くは昨年、資金不
足のためにそれができなかったという。【8月12日 Computer World】
(4)新興企業のリリック・セミコンダクター(Lyric Semiconductor)は、こ
れまでの半導体では対応できなかった不確定要素の計算という機能を備えた
画期的チップの開発計画を明らかにした。リリック社の技術は、アルゴリズ
ムとチップ設計の両方を活用して、不確定要素を考慮した演算処理を実行す
る仕組み。例えば、ある消費者が60%の確率でミステリー小説を買い、30%
の確率でSF小説を買う可能性を計算し、それらの嗜好に基づいて新刊書を好
きになるかどうかの確率もはじき出すことができる。そのほか、迷惑メール
(スパムメール)の判断、クレジット・カード不正使用も判断できるように
なる。
同社は、約2000万ドルの資金を米国防総省およびほかの連邦政府機関から調
達している。しかし、チップの実用化までには、さらに数億ドルの研究費が
必要になる見込み。このため、同チップの完成を疑問視する専門家もいる。
【8月19日 NYT】
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6.政府・議会動向、通信その他
(1)航空機のWi-Fi接続サービスが普及する一方で、その人気はいま一つにと
どまっている。最大の理由はその使用料金で、さまざまなサービスに追加料
金を支払わされている旅行者の多くは、必要に迫られない限り、航空機内ネ
ット利用に4.95~12.95ドルの料金を支払う気がないという。
業界専門家によると、航空便利用者はウェブサイト閲覧を地上の無料アクセ
スポイント(ホットスポット)で行っており、機内Wi-Fi利用率は約10%程度
だという。
無料化の最大の問題は、サービスを提供する業者への支払いだ。そのため、
大企業をスポンサーにして広告費用で運営したり、航空会社が一部負担する
という案が出ている。【8月10日 AP】
(2)米国各地では、業界の期待を受け、電力会社によるスマート・グリッド
の導入が進められている。しかし、その費用を顧客に転嫁しようとする業者
と地方自治体との間で軋轢が生じている。最近ではハワイ州とメリーランド
州ボルチモアで、電力会社による導入申請を地元の規制当局が却下した。
ハワイ州の場合、ハワイアン・エレクトリック社が1億1500万ドルのスマー
ト・グリッド計画の一環として、オアフ島、マウイ島、ハワイ島の個人顧客
および商業顧客に数十万個のスマート・メーターの導入を計画していた。し
かし、同州の公益委員会はこの試験運用拡大計画の申請を却下した。メータ
ー導入にかかる費用を顧客に転嫁する計画になっていたことが申請却下の理
由。公益委員会では、利用者がメーターの導入コストを負担しない計画が提
出されないかぎり認可しないという立場を取っている。
一方、ボルチモアでは、ボルチモア・ガス・エレクトリック(BGE)のスマー
ト・グリッド導入申請をメリーランド州公益サービス委員会が6月に却下した。
同計画では、今後5年間に5億ドルを投じて全顧客に計200万個のスマート・メ
ーターを導入する予定だった。こちらも同様に顧客の負担に対する点が問題
となった。
同様の問題は今後、ほかの自治体における同様の導入計画でも引き続き浮
上するとみられている。【8月10日 Earth2Tech】
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