1. フォーカスライト コンファレンスから 8 題

JAMR 旅行流通速報 Vol. 404 号
平成 21 年 12 月 7 日
1. フォーカスライト コンファレンスから 8 題
11 月 17 日から 20 日まで 3 日間フロリダ州オーランドで開催された PhoCusWright
Conference から幾つかの話題をレポートします。
(1)エクスペディアの欧州シェアー拡大努力
Expedia は、欧州では、二次的都市の少ないインベントリーと効率性に劣るマーケティ
ングで Priceline よりも出遅れている。
欧州に於けるシェアー挽回のために (1)
Venere との統合、(2) エージェンシー・モデル(コミッション・モデル)の展開、(3) 組
織の変更を実施している。 Priceline は、Booking.com を通じて欧州の小規模都市で
より多くのホテルを抱えている。 そして他の誰もが販売していないその他の都市の小
さな需要にも目を向けている。 Venere とエージェンシー・モデルでもって、Expedia
はインベントリーのベースを作り上げることを目論んでいる。 そして、国レベルの古
い販売組織をグローバルのブランド組織に変更し、Priceline のごとくの宣伝戦略を追
求することができるようにするだろう。 それには、あと 2 四半期はかかるだろう。
ホテルのオキュパンシーが 60%以下にとどまる限り、Expedia は魅力ある好条件のイ
ンベントリーへ継続してアクセスできるだろう。 そして、メディア事業からの収入増
と相俟って、Expedia の不況に対する反周期的な業績向上が期待されている。
(2)GDS の上場計画
Orbitz と Travelocity の所有者である Travelport と Sabre が上場を計画している。 そ
して OTA をスピンアウトさせるかも知れない。 業界は、Expedia か Priceline が買
収するかもしれないと騒いでいる。 Priceline は、国際戦略と経営スタイルから言っ
てその可能性は薄い。 Expedia は歴史的に M&A により積極的だ。 Expedia は、コ
ンソリデーションは起きないだろうが GDS の上場の可能性は強いと言っている。 上
場が実現しても、市場は低マージンのエアー販売主流の事業に大きな反応を示さないだ
ろう。
Amadeus と Travelport は、既に証券取引委員会に上場目論見書(S-1)を提
出している。
(3)アマデウスの新検索エンジン
PhoCusWright Conference で、Amadeus がレジャー旅行用の新検索ツール“Affinity
Shopper”を発表した。 新しく開発された新検索技術 Extreme Search により、今ま
で主流な「From ~ To ~」の検索を、
「Where would you like to go ?」、
「What preference
do you have ?」
、
「What is your budget ?」の質問に即した検索に切り替える。 Affinity
Shopper(プリファレンスベース旅行検索とも言われる)を開発した Amadeus IT
Group は、30 の企業のその他のイノベーションを押さえて見事 PhoCusWright の The
Travel Innovation Summit Winner となった。 このツールは、ますます旅行計画段
階からオンライン検索を開始しているユーザーに、使い勝手の良い機能と、そして楽し
みを提供するだろう。
(4)ロッジングセクター オキュパンシー回復なるか
ロッジング セクターのオキュパンシーが、60%以下に低下している。 向こう 4 年間
はこの回復が期待できないかも知れない。 依然として供給が(客室)が増加している
からだ。 過去の供給増のトレンドが繰り返されるとすると、オキュパンシーの短期間
の回復は望み薄となる。
(5)OTA の不況期の反周期的な好業績
オンライン旅行会社(OTA)は、在庫を積みましたホテルから魅力あるインベントリー
の提供を受けている。 Priceline は欧州ホテルのオンライン販売市場を席巻し、販売
を +50%も増加させている。 Expedia は、+30%近くも販売増を達成し、ホテルのオ
キュパンシー低下にうまくつけ込んでいる。
Orbitz は、倒産寸前から立ち直り最近
$100m の資金を調達してバランスシートの補強に成功した。 そして遂にホテル販売
に本腰を入れられる体制を整えた。 上場 OTA 企業は、2001 年〜2003 年の景気低迷
時の時と同じように皆うまくやっている。 今後 6 ヶ月〜12 ヶ月間は、好業績を維持
するだろう。
(6)グーグルの脅威
上場している OTA 3 社(Expedia, Orbitz, Priceline)は皆 Google(或は Troogle=Google
+ Travel)を恐れている。 73%の旅行者が、予約の前に 10 回〜12 回も検索しまくる
ので、OTA 大手の Google 依存は減るどころか増加する一方だ。 Google は、旅行の
ようなバーチカル検索には進出しないと言っている。 しかし、オンライン旅行販売に
関係する 地図、写真、ビデオ、“local modules”の機能を継続して強化して、旅行の
分野から年間 $2bn のリード・ジェネレーション収入を上げている。
(7)トリップアドバイザーの躍進
Google が旅行検索のスタートポイントとすると、TripAdvisor は旅行検索の 2 番目の
クリックとなる。 既に北米内でシェアーを席巻した TripAdvisor は、過去 2 年間海外
市場での展開に努力している。 2009 年では、収入 $300m、営業利益 $200m を見込
んでいる。 昨年には、TripAdvisor Media Group が Kuxun を買収して中国進出を強
化した。(既に DaoDao を所有している。)
そして航空便メタサーチを立ち上げ、
SmarterTravel 経由のディールを実施し、バケーション・レンタル事業の拡大にも努力
している。
(8)新興企業の流動性
新陽市場が収縮しているので、今後 6 ヶ月間〜12 ヶ月間は、特に新興企業にとって流
動性確保が問題となるだろう。
資金調達力に乏しい企業は、運転資金の確保に窮し
て倒産するかもしれない。 HomeAway, ITA Software, Kayak などの企業は、GDS 大
手が試みているように上場して資金を調達できるだろうか? これらの 3 社は、市場の
通用する革新的なテクノロジーを保有している。 HomeAway は、Ad キャンペーンを
伴ったバケーション・レンタルの分野で認知されつつある。 ITA は、新 GDS 開発で
一歩リードし追加的検索の革新的技術 Needle を開発している。 Kayak は、オフライ
ンのキャンペーンでブランド作りに努力し、予約手数料廃止による減収をホテル販売の
拡大で相殺することを試み、トランザクションのプロセスの奥深い投資を行っている。
■
wsj.com, 12/04/2009
2. Huge Cruise Ships Prepare for Launch but Face Uncertain
Waters
世界最大クルーズ船就航、されど波高し
Royal Caribbean Cruises の世界最大クルーズ船 Oasis of the Seas 号(225,000 屯、建
造費$1.4bn)が、12 月 5 日、カリブ 7 日間の処女クルーズに 5,400 人ほどの船客を乗
せて出航する。
このクルーズ船は、通常のクルーズ船よりも 三分の一も大きく、海
面上 20 階建てでサッカーグラウンド 4 面の広さを持つ。 そして、小売店 13、プール
21、レストラン 24 を備え、複数階の船室や 90m の長さを持つウオーター滑り台など
のアメニティーを持つ。 このメガクルーズ船が、需要減少の不景気を吹き飛ばしてく
れるものと期待されている。 Royal Caribbean(世界第2位のクルーズ企業)は、Oasis
の他にも来年後半に就航させる同じサイズの Allure of the Sea を発注している。
しかし、Oasis を始めこれから就航してくるメガシップには、冷たい向かい風が吹いて
いる。 クルーズ企業各社は、今年、需要減少に直面し料金を▲15%も値下げした。 ク
ルーズ企業は、依然として利益を計上しているが、これは燃油費の値下げによるもので
マージンは大幅に低下している。
世界最大のクルーズ企業 Carnival Corp.は、ショッピングモールのような Oasis of the
Seas は大き過ぎると言っている。 Carnival は、同じサイズのメガクルーズ船の建造
を試みたが低いマージンのために見合わせた。 その代わりに 3,650 人乗りの Carnival
Dream 号(13 万屯)を 9 月に就航させた。 そして同サイズの姉妹船(建造費 $750m)
を今週発注したと発表した。 第3位の NCL Corp の Norwegian Cruise Line は、
4,200
人乗りの Norwegian Epic 号(15 万屯、建造費$1.2bn)を来年夏に就航させるが、同
じサイズの姉妹船の発注を昨年取り消した。 大型クルーズ船の就航で、クルーズ供給
は 2010 年に +8%、2011 年に +5%増加すると予想されている。
(CLIA)
Royal Caribbean は、新造船の就航は発注してから約 3 年がかかり就航後 30 年間のラ
イフサイクルとなるので、悪い時や良い時の周期的景気波動を経験せざるを得ないと言
っている。 そして Oasis の長期的な採算性維持に自信をのぞかせている。 事実 Oasis
の予約は好調で、ライバル企業の小型クルーズの料金よりも二桁プラスのプレミアムが
付けられている。 処女クルーズの料金は、149 平方フィートの interior stateroom の
$1,649(ダブル・オキュパンシー)でから 1524 平方フィートの Royal Loft Suite(843
平方フィートのバルコニー付き)で $16,659 する。
Oasis of the Seas は、500 台近くのスロットマシンやゲームテーブルを備えたカジノ、
ブロードウエー流のプロダクションのための 1,380 席の劇場、200 台近くの機械を有し
たトレーニングルーム、12m の高さのロッククライミング壁、アイススケートリンク、
12,00 本の植栽があるセントラルパークと呼ばれている公園を含む 7 つの地区を用意し
ている。 まるでクルーズ業界がラスベガスのリゾートになっているみたいだ。
■
3. アメリカン航空、日航に 11 億ドル資本投下 提案
11 月 30 日(月)〜12 月 6 日(日)の間の海外主要紙が伝えた日航関連ニュースは以
下の通りです。
・wsj.com, 12/01/2009
US-Japan Aviation Pact ready By Year-End
– American Airlines Exec
日米航空協定改定交渉 年内妥結
・FT.com, 12/03/2009
AA 航空幹部
American Airlines steps up efforts to woo JAL
AA 航空、日航支援 11 億ドルに増加
・channelnewsasia.com, 12/03/2009
American Airlines, Partners offer US$1.1bn to JAL
AA 航空と提携航空会社、日航に 11 億ドル支援
・wsj.com, 12/03/2009
American, Partners Willing to Invest $1.1bn in JAL
AA 航空と提携航空会社、日航に 11 億ドル出資用意
・nytimes.com, 12/03/2009 American, Partners Offer $1.1B to Japan Airlines
AA 航空と提携航空会社、日本航空に 11 億ドル支援
・channelnewsasia.com, 12/04/2009
US, Japan to hold open skies talks Monday
日米当局 12 月7日よりオープンスカイの交渉再開
・wsj.com, 12/04/2009
American Rises Stakes in JAL Battle
AA 航空 日航争奪戦で新提案
・nytimes.com, 12/04/2009 AA Hopes Bid Will Sway Japanese Carrier
AA 航空、日航引き止めに懸命
・nytimes.com, 12/05/2009 JAL to Get ¥700bn Loan Guarantee
日航に政府保証債 7,000 億円
以上のニュースの概要を以下にまとめた:
AA は、12 月 3 日、日航に対する資本投下を $1.1bn(約 1,000 億円)に増加すると発
表した。 $1.1bn の大半は米プライベート・エクイティー企業大手 TPG が出資するこ
とになるだろう。
この額は、DL が先にオファーした額 $1.02bn(資本投下 $500m
+その他の金融支援ないし収入保証など)を上回る。 アジア最大の航空会社の争奪戦
が激化している。 現在日米間で交渉が行われているオープンスカイ協定が合意される
と、太平洋路線における日米航空会社間提携に競争法適用除外(ATI)を適用する途が
開かれ、日航との提携は米企業にとって更に価値が増加すると見られている。 既にス
ター・アライアンス加盟の UA と CO と全日空の 3 社は、ATI を申請すると言っている。
AA と DL の両社は、東京でそれぞれ記者会見を持ち、概略次のように語っている。
AA:
この記者会見には、CFO Tom Horton とロビイストの元運輸長官 Norman
Mineta が出席した。 Horton は、「$1.1bn の出資に加え、この提携強化により今後
10 年間で$700m の増収を日航にもたらすだろう」、
「ATI を取得すれば更に年間 $100m
の増収が期待できるだろう」、
「日航が DL と提携した場合は、最初の 2 年間で▲$500m
の収入機会の逸失が発生するだろう」と語った。
Mineta は、
「JL+DL の ATI は、提携後の旅客シェアーが日米間路線で 60%を超えるた
め競争法上の観点から認められないだろう」、
「今まで米国は、同一路線の接続ハブ空港
間を運行する 2 社提携に ATI を認めたことがない」と語った。
DL:
CEO Anderson とロビイストとして元運輸次官の Jeffrey Shane が出席した。
Anderson は、
「先に提案した $1.02bn の支援を増額する用意がある」
、
「場合によって
は第三者の投資家達を招き入れることを検討したい」と語った。 Shane は、スター・
アライアンスの米独間シェアーが 70%であることを引き合いに出して、JL+DL は競争
法上の問題は発生しないだろうと言っている。
Center for Asia Pacific Aviation(SYD 本社、アジア最大の航空コンサルタント、航空
経営研究所が日本総代理店)の会長 Peter Harbison は、
「日航のアジア路線は、米企業
にとって確かに魅力あるターゲットであるが、同社の大きなリストラ経費を考慮するな
らば、現実は米企業が夢中になって追い求めるほど魅力的ではないかも知れない」と語
っている。
一方、日本政府は経営再建中の日航への金融機関の融資に対し、7,000 億円程度の政府
保証を付けることを検討していると日経新聞が伝えている。 日本政府は、2009 年度
の第 2 次補正予算に必要な措置を盛り込む。
■
4. 【企業年金についてのオピニオンⅡ】(株)航空経営研究所
破綻の引き金を引くことは避けたい
(株)航空経営研究所 所長 赤井奉久氏が、日本航空企業年金に付いての意見を発表し
た。 「事態の深刻さを真剣に受け止めるとともに、OBとして破綻の引き金をひくこ
とは避けたい!」と呼びかけている。 全文は、www.aviatn.com を参照下さい。 ■
5. 其の他のニュース
旅行流通・TD
(1) ネスト(米コンソーシア)、サービス手数料のガイドブック発行
Network of Entrepreneurs Selling Travel(Nest)が、在宅旅行会社の会員向けガイド
ブック“The How, When, and Why of Service Fees”を発行した。 Nest は、この他
に Cruiseexpress と呼ばれるクルーズ予約の独自のツールを立ち上げた。 また 2010
年の DM キャンペーン Lifestyle Marketing プログラムで、年間 8 つのニッチ市場のメ
ーリングを提供する。 8 つとは、ロマンス旅行、家族の楽しみ、ゴルフとスパ、豪華
旅行、ソフト・アドベンチャー/文化旅行、活力あるベビーブマー旅行、クルーズ世界
航海、添乗員付き旅行。(travelweekly.com, 11/30/2009)
Consortium/Cooperative
Location
Volume
Vacations.com
5,100
N/A
Travelsaver
3,000
$15bn+
eTravCo
1,000
3.3bn
IT Group
914
1.25bn
Ensemble
900
N/A
Virtuoso
627
5.1bn
Nest
550
250m+
325
3.5bn
Signature
Network
Travel
Cruise Shoppers
225
80m
Mast Vacation Partners
180
700m
(2)ホッグロビンソン上半期決算 減益 46%、下期に期待
法人旅行管理会社 Hogg Robinson の上半期決算が▲46%減益の 3.3m ポンドとなった。
この決算には 2.3m ポンドのリストラ経費が含まれる。 収入は▲9%減の 155.3m ポン
ドとなった。 Hogg Robinson は、底を打ったとは言えないが、シティーの幹部のビ
ジネスクラス利用やハイエンドのホテル予約が増加し始めている良い兆候が伺えると
言っている。 下期には業績が上向くだろうと期待している。(FT.com, 11/29/2009)
(3)トーマスクック、不況にも拘わらず増収増益
Thomas Cook が、9 月 30 日に終了した年度で増収(+6%)と増益(+46%)を達成し
た。
2007 年の Thomas Cook と MyTravel の合併、TUI と First Choice の合併、XL Leisure
(英)の倒産などによるホリデー パッケージの供給減が、この好決算に貢献した。 配
当 7p/株を実施する予定。
年度の合計配当は 10.75p となり +10%の増配となる。
CEO, Manny Fortenla-Novoa は、「予約状況は最近回復している」、「但し現在の景気
の状況が継続すれば、予約がますます遅くなっているので運転資金に困った企業の倒産
が継続するだろう」と語っている。(FT.com, 11/30/2009)
(単位:英ポ
ンド)
Oct’08-Sep’09
前年同期
9.27bn
+6%
税前利益
56.1m
23.7m
調整後税前利益
308.2m
税引後利益
15.8m
収
入
特別費用除去後
10.8m
(4)チューイ、損失縮小
欧州最大の旅行グループ Tui Travel Plc.の 2009 年度が、損失▲25m ポンドに前年同期
の▲270.7m ポンドから損失幅を大幅に改善した。 これは需給調整の成果だと言って
いる。 2009/10 年度の予約は活発だと言っている。 Tui は、ボーイングに発注して
いる航空機×23 機中 10 機を取消した。(FT.com, 12/01/2009)
(単位:英ポンド)
Oct’08-Sep’09
前年同期
13.86bn
-0%
税前利益
-52m
-267m
Underlying
366m
+15%
-25m
-270.7m
収
入
リストラ コスト等除去後
profit
税引後利益
(5)台湾、中国本土からの訪問者による観光収入 期待はずれ
今年 48 万人(昨年比約 5 倍)が中国本土から台湾を訪問する。 そして 169 億台湾ド
ル($528m)を消費するだろう。 これは台湾観光当局の当初予想額 300 億台湾ドル
を下回る。
台湾は、今年 7 月より中国本土からツーリストのクオータを日間 3,000
人に増加している。(channelnewsasia.com, 12/03/2009)
(6)アマデウス、欧州ツアオペ向け管理ツール立ち上げ
Amadeus が、欧州ツアオペ向けの管理ツーツ Contour を開発した。 このツールは、
在庫管理、パッケジング、予約、バックオフィスのオペレーションを合理化する。 こ
のテクノロジーは、Fourth Dimension Software 社(SFO)と共同開発されたもので、
遅れている欧州のツアオペの機械化促進に貢献する。 Amadeus Leisure Group の一
部である TravelTainment は、Contour の展開を通じて同社のその他のテクノロジー、
— 例えば顧客の嗜好(ビーチ旅行などの)に従ってサプライヤーを検索できる Bistro
Portal や、顧客のバケーション予約に対する個人的な Web サイト TripPage — のマー
ケティングに役立てる。(travelweekly.com, 12/03/2009)
空
運
【総合】
(1)IATA オープンスカイ原則に 7 ヶ国政府が合意
IATA が開催したモントリオールの会議で、二国間航空協定を乗り越えてより自由化さ
れた航空協定を作るための原則に欧州連合と米国を含む 7 ヶ国政府が署名した。 この
合意は、何らの拘束力を持たないが、少なくとも理論的には航空自由化に向けて一歩前
進に貢献したと IATA は言っている。 IATA のこの原則は、航空会社の自由な市場ア
クセスと外資の導入の自由化を求めている。 そして、航空会社の市場の実勢に対応し
た運賃設定を可能にすることを各国政府に求めている。 会議参加国は、EU と米国に
加えてチリ、マレーシア、シンガポール、パナマ、スイス、ア首連。 同様の IATA 主
催の会議が、昨年イスタンブールで開催されている。(travelweekly.com, 11/30/2009)
【米州】
(1)コンチネンタル航空、機内販売で現金取扱止める
CO が、機内販売ではクレジットカードかデビットカードしか取扱わないこととした。
AA は既に 6 月から現金の取扱を中止している。 免税品販売には現金が使用可能。
Southwest は、9 月より同様の措置を実施する。(wsj.com, 11/30/2009)
(2) リジョナル航空会社の安全性が問題になっている
米国の過去 8 回の死亡発生重大事故の内 7 回がリジョナル航空会社で発生している。
メインライン航空会社は、コスト削減強化のために地方のフィーダー路線をリジョナル
航空にドンドン肩代わりさせている。
この結果、リジョナル航空は 2008 年には米国内線の便数の半分を運航し、四分の一の
航空旅客を輸送するまでに拡大した。 2001 年の旅客数 8,200 万人が、1 億 5,900 万
人に倍近くも増加した。 最近の重大事故発生が契機となって、リジョナル航空会社の
安全性が見直されつつある。
或るリジョナル航空会社は、飛行経験 400 時間に満た
ないパイロットを採用している。
メインライン航空会社の場合は 4,000 時間から
7,000 時間が要求されている。 リジョナルは、安全性強化のためにパイロットの採用
では最低飛行時間を 1,500 時間以上にした他、訓練シラバスを見直している。(wsj.com,
12/01/2009)
(3)ILFC 売却(半分)間近い
世界最大(機数ベース)の航空機リース企業 International Lease Finance Corp(航空
機 1,000 機≒$40bn 保有)の会長兼 CEO Steven Udvar-Hazy が、プライベート・エ
クイティーの投資家達とコンソーシアムを組んで AIG の子会社である ILFC の半分を
$4bn で買収する計画が持ち上がっている。
コンソーシアムに参加するのは Onex
Partners と Greenbriar とカナダ年金基金で、今週中にもビッドが実施されると予想さ
れている。 Credit Swiss が、$2bn 以上の debt facility をアレンジすると言われてい
る。 しかし、買収資金の調達が懸念されている。 ILFC は、ブックバリュー $7bn
で、負債 $30bn を抱えている。 今年 9 ヶ月間で、前年同期比 +17%増益の $1.1bn
の利益を計上している AIG の優良子会社。(wsj.com, 12/01/2009)
(4)パイロット疲労対策の新ルール
米航空安全当局が、パイロット疲労対策の新たな規則の草案を提案した。 短距離区間
の離発着を繰り返す特に早朝と深夜の勤務のリジョナル航空会社のパイロットの負担
が増している。 FAA は、1997 年に制定された全ての航空会社に適用される単一安全
基準を見直して、コミューター(リジョナル)とメインラインの航空会社を別個に取り
扱うことを検討している。 そして、現行の 1 日の最大乗務時間 8 時間を幾つかの場合
によっては 7 時間以下に、1 日の最大連続勤務時間を 9 時間以内に制限することを提案
している。 現行規則では、コミューター航空会社では 14〜15 時間の長時間となる場
合が珍しくない。
乗務や勤務時間の問題は、即航空会社の採算性とリンクするので、
新規則が決まるまでには航空会社との折衝に更に時間を要するだろう。(wsj.com,
12/01/2009)
(5)コンチネンタル、フランクフルト空港で電子搭乗券導入
CO 航空が、FRA 空港で電子搭乗券を導入した。 米国以外でペーパーレス搭乗券を導
入するのは(米国の航空会社では)CO が初めて。 搭乗旅客は、携帯電話か PDA に
2 次元のバーコードの搭乗券を電子的に格納しておくことになる。 CO の電子搭乗券
を受け付ける空港は、これで合計 35 空港となった。(travelweekly.com, 12/01/2009)
(6)ノースロップ、空中給油機商談から撤退か
12 月 2 日、Northrop Grumman Corp は国防省に対して、空軍の選定方法が大幅に変
更されない限り、空中給油機の商談(179 機 $40bn)から撤退すると表明した。 こ
のタンカー・ディールは、発注先選定に 8 年以上も時間が費やされている曰く付きの商
談。 Boeing 社とペンタゴン職員との癒着スキャンダルから、昨年の Northrop 落札*
のやり直し**とゴタゴタが続いている。 (*EADS とチームを組んで A330 型機を空
中給油機に改修する案)
(**入札方式に重大な瑕疵が存在しているとの Boeing の指摘
が認められて、入札がやり直しとなった。)
Northrop がこの商談から撤退すれば、
Boeing(B767 型機の給油機改修)の単独入札となる。 Northrop の撤退表明は、自
分に有利な入札条件を引き出すための便法とも見られている。(wsj.com, 12/01.2009)
(7)ボーイング B777 型機で改修要請
ボ社が、潜在的重大な危険をはらんでいるオーバーヒートと慢性的構造体損傷の一連の
故障*に対応するための主要部品交換を、世界で 220 機以上の B777 型機を運航してい
る航空会社に要請した。
(*スラストリバーサーの一部に使用されている複合部材で作ら
れた部品がエンジン熱でオーバーヒートを起こし、リバーサーを動かなくしてしまう事
故。)
部品交換を要請されているのはロールスロイス社製エンジンと特定タイプのス
ラストリバーサーを装備した B777 型機。 当局による改善命令も間もなく発出される
だろう。(wsj.com, 12/04/2009)
(8)FAA、次世代航空管制システムの入札開始
FAA は、12 月 4 日、次世代航空管制システムの研究開発とエンジニアリングに関わる
$7bn の契約の入札者の募集を開始した。 この入札は、5 つの契約に区別されている
が、合計すると $7bn の契約額となり、FAA 史上最高額の入札募集となる。 落札者
の決定は、2010 年夏が予定されている。(wsj.com, 12/04/2009)
(9)米 LCC 摘み取り増加
メインラインの航空会社の旅客が減少しているにも拘らず、米 LCC の 11 月の旅客輸
送実績が増加した。
Southwest では、供給を削減したにも拘らず旅客数が +12%も
増加した。 同社では、5 ヶ月連続で旅客数が増加し L/F は 63.2%から 76.5%に上昇し
た。 DL は▲7.1%と第3四半期実績の▲3.2%よりも減少した。 UA ではメインライ
ンの旅客数が▲0.6%減少した。 リジョナル便を加えると +1.8%増となる。 これは、
UA にとって今年初めてのプラス。 AA は▲0.5%減。 しかし国内線では +1.4%増を
記録した。 その他の LCC の 11 月実績は、AirTran が +11%増、jetBlue が +7.7%増
となった。(wsj.com, 12/05/2009)
【欧州】
(1)エールフランス、外部専門家を招聘して特別安全監視チーム編成
AF が、外部の専門家集団を招聘して、自社の安全に関する幅広い監査を実施する特別
チームを編成することとなった。 この監査チームの編成は、昨年 6 月に起こしたブラ
ジル沖墜落事故(228 名死亡)が引き金となっている。 監査チームには、操縦室、整
備の両方の安全プログラムと、訓練とプロシージャーからインシデント解析までの幅広
い分析任務が与えられる。 チームのヘッドにはパイロットの疲労問題の権威で元ボー
イングのハイランキングのエンジニア Curt Graeber が就任する。 チームは、1 年間
かけて監査報告をまとめる。 (wsj.com, 12/03/2009)
(2)エアバス、軍用輸送機 A400M 来週 初飛行
エアバスの親会社 EADS は、2003 年 5 月に北大西洋条約機構(NATO)の 7 カ国と軍
用輸送機 A400M×180 機を 200 億ユーロ(約 3 兆円)で開発する契約を締結した。
EADS は、この契約で、2009 年に初号機をデリバリーし、開発費の増加に付いては
EADS が吸収する約束した。
しかし、開発がおよそ 3 年遅れとなり開発費が 274 億
ユーロに増加した結果、EADS は契約の見直しを NATO 7 カ国に要求している。
EADS CEO Louis Gallios は、この開発で少なくとも▲24 億ユーロの損失が発生する
と言っている。
(24 億ユーロの損失引当金を計上している。
) NATO 7 カ国(英、独、
仏、西、白、ルクセンブルグ、トルコ)は、12 月 3 日 BER で、EADS に対する契約
見直し交渉への対応を協議する。
仮に契約が破棄されるようなことが起これば、
EADS は今まで投資された開発費約 57 億ユーロの返済を余儀なくされることになる。
NATO 以外の A400M 発注国は、南ア(8 機)とマレーシア(4 機)であったが、南ア
は先月発注を取り消した。(wsj.com, 12/01, 03/2009)
(3)欧州安全監視当局、エアバス広胴機のエンジン改修を命令
European Aviation Safety Agency は、ロールスロイス社製エンジンを装備した A330
型機と A340 型機を運行している航空会社に、同型機の燃油冷却器の交換を命令した。
この命令は、2008 年 1 月にヒースロー空港で着陸直前にエンジン推力がゼロとなって
墜落した BA の B777 型機の事故(死亡者ゼロ)が引き金となっている。 この事故は、
燃料に混入した微量の水が氷結して燃油パイプを詰まらせ、エンジンへの燃料供給を遮
断したしまったことが原因と見られている。 今年 5 月には、Etihad 航空のロールス
ロイス社製エンジンを装備した A330 型機でも同様の原因で運航中にエンジンが停止
する事故が発生している。
この命令は、2011 年の 1 月までの交換完了を航空会社に
義務づけている。(wsj.com, 12.05/2009)
【アジア】
(1)中国国際航空、深圳航空の経営権掌握
中国第5位の深圳航空の筆頭株主の Li Zeyuan (65%保有している事実上のオーナー)
が、特定されていない経済犯罪で警察に取り調べられている。 Li Zeyuan の息子 Li Mo
深圳航空会長の所在が不明であるが、彼は会長職から降ろされている。 25%を保有し
ている Air China は、この機会を利用して深圳航空の保有株式を増加して以前から狙っ
ていた経営権を掌握するだろう。 深圳航空は、1992 年に設立され 200 億元の資産を
保有、
LH と米国の Mesa Air Group との合弁企業を保有している。 2008 年には 1,200
万人を輸送し、▲445m 元の損失を計上している。 Air China は、深圳を傘下に入れ
て China Eastern の上海航空買収(買収後 Eastern の上海シェアーは 50%超となる)
に対抗する。(FT.com, 12/01. 03/2009) (wsj.com, 12/03/2009)
(2)韓国政府、主要空港上場で保有株放出
韓国政府は、同国の主要国際線空港を上場して保有株を売却する。 これは、政府保有
企業の民営化政策の一環。 仁川空港は、来年下半期に上場されるだろう。 先ず 15%
を売却し、マイノリティー株式 49%の残りの 34%は外国の空港管理会社との戦略提携
の 下 で 放 出 さ れ る か 2011 年 以 降 の 新 株 発 行 時 に 売 却 さ れ る だ ろ う 。
(channelnewsasia.com, 12/03/2009)
(3)タイガー(シ)上場を計画
シンガポールの LCC Tiger Airways が、1 月に上場して $500m の資金を調達すること
を計画している。
る。
この上場計画では、会社を $1bn と査定して 51%の株式を売却す
SQ が Tiger の 49%を保有している。 上場で集める資金は、A320 型機発注の
航空機ファイナンスに充当される模様である。 Tiger は、アジアと豪州路線の 25 の
地点に乗り入れているアジアの大手 LCC。(FT.com, 12/045/2009)
(4)中国、航空機ファイナンスに登場
Boeing Capital は、信用市場の収縮で、航空機を発注した航空会社に対して 2009 年に
は $1bn のファイナンスを実施した。 ほぼ同額を 2020 年にも提供しなければならな
いだろう。 例外は中国だ。 中国では、今後 20 年間で 3,770 機($400bn)の新造機
需要が見込まれている。 これは、現在の中国が保有するフリートの 3 倍の規模に相当
する。 ボーイングは、全世界で 29,000 機($3.2tn)の新造機需要を予測している。
中国は、この 5 年間に航空機ファイナンスに $30bn を貸し付けた。 業界筋は、中国
が今年には $5bn 市場(その 95%は国内ファイナンス)になると予想している。
Boeing Capital は、中国ではファイナンス提供の代わりに、航空機ファイナンスのこ
つを中国の金融機関に教えている。 中国銀行は、2007 年にアジアの大手航空機リー
ス企業 SALE(シンガポール)を買収し、中国企業としては初めて航空機ファイナンス
に乗り出した。 現在では、AF, CO, WN, AS を含む世界の主要航空会社向けの 40 以
上のセル&リース取引を手がけている。 過去 2 年間で、China Development Bank,
China Construction Bank Corp, Industrial and Commercial Bank of China を含む全
ての中国の主要銀行が航空機リースを開始している。 中国輸出入銀行も外国製航空機
の購入の支援を行っている。(wsj.com, 12/04/2009)
水
運
(1)
マースク方向転換、3 つの事業を優先
世界最大のコンテナ海運のオーナーが、中核事業である海運以外に、石油とガス、港湾
ターミナル、小売業の 3 つの事業に優先的に投資すると語った。 AP Moller-Maersk
CEO Nits Andersen は、不良資産の売却についても検討すると言っている。 Maersk
は、105 年の歴史で初の通期欠損計上に直面している。 小売業が優先投資に含まれて
いることにアナリスト達は驚いている。 Maersk は、Fotex と Netto スパーマーケッ
トを運営する企業の 67.7%と、2 つの百貨店の 37.7%を保有しているが、これらは売却
されると予想されていたからだ。 コンテナ海運は、今年 9 ヶ月間で▲$1.54bn の税引
後欠損を計上した。 Maersk は、現在保有している船舶供給の +20%のコンテナ船を
発注している。
この規模は、業界平均の +40%よりも控えめな発注だ。
Maersk
Tanker は、同期間に▲$193m の欠損計上であった。(石油製品タンカーでは Maersk
は、世界一のタンカー海運)(FT.com, 12/01/2009)
(2)中国造船所が $2.2bn の上場
中国最大の船舶機器メーカーChina Shipping Industry Corporation が、上海証取に上
場して 147 億元($2.2bn)の資金を調達すると 12 月 4 日発表した。 中国は、2007
年上半期に韓国を抜いて世界一の造船国となり、現在では世界の造船量の 32.4%のシェ
アーを持っている。(China Association of the National Shipbuilding Industry)
中国政府が、今年 6 月に国内の 2 つの証券取引所における上場禁止を解いてから上場ラ
ッシュが続いている。
上海と深圳のベンチマーク インデックスは、今年、それぞれ
約 78%と 123%上昇している。 上海では今年現在まで $16.3bn の上場実績を挙げ、
上場金額で世界第3位の証取となった。 深圳は $7.3bn で、中国の証券取引所は香港
証取の $27.3bn に僅かに足りない世界第2 位の上場国となってい る。 (FT.com,
12/04/2009)
陸
運 & ロジスティックス
(1)ユーロトンネル、仏貨物鉄道会社買収
英仏海峡横断トンネルの運営社 Groupe Eurotunnel が、12 月 1 日、仏貨物鉄道会社
Veolia Cargo の買収を完了したと発表した。(wsj.com, 12/01/2009)
(2)カーシェアリングが増加
マサセーッツ州ケンブリッジの Zipcar が 1999 年にカーシェアリングを始めてから 10
年以上が経過した。 今では Zipcar は、年間約$130m の収入をあげている。 米上場
レンタカー企業最大手の Hertz Global Holdings の収入は $6.86bn(2008 年)なので、
カーシェアリングは未だピーナツだ。 しかし過去 2 年間でカーシェアリングの会員は
325,000 人に 3 倍に増加し、トヨタプリウス、Mini Cooper などの燃費効率の良いフリ
ートは 6,500 台にほぼ倍増している。 カーシェアリングの年会費は約 $50、時間当
たりのレンタル料金は $8〜$15 と割安だ。 Zipcar の調査によると、カーシェアリン
グは 3,700 万人の会員により年間 $10bn の売上規模の市場になると予測されている。
Enterprise は、2007 年より WeCar ブランドでカーシェアリングに参入した。 Hertz
は、Connect by Hertz でもって全米 18 都市と LON と PAR でカーシェアリングを展
開している。(travelweekly.com, 12/03/2009)
(3)欧州連合、旅客鉄道自由化
EU は、航空自由化の 10 年後、貨物鉄道自由化の 2 年後に、来週 13 日から旅客鉄道の
第一段階の自由化を開始する。 第一段階の自由化では、国際路線のみが対象とされる。
第2段階では国内の鉄道が自由化される事になるが、その時期は決まっていない。 今
までの国際間列車は、各国の鉄道会社の協定により運営*されて来たが、自由化後は、
軌道と駅舎のスロット獲得交渉成立を条件に、単独会社が自由に列車を走らせる事が出
来るようになる。
(*ベルギー、フランス、ドイツ国鉄のジョイント・プロジェクト Thalys、
フランスとイタリアの提携 Artesia がある)
自由化は、域内の高速鉄道網の発展に貢献するだろう。 2 時間以内の鉄道は、その路
線の 90%、3 時間以内では 70%の旅客を輸送する。 これらの短距離路線の航空便は
減便もしくは運休を余儀なくされている。
自由化を受けて、伊国鉄 Trenitala は 2010 年に MIL=PAR に参入する。 2006 年に
設立された伊の Nuovo Transporto Viaggiatori(仏国鉄が 20%出資)は、2011 年秋に
ROM=MIL に高速列車を走らせる。(伊は、EU の自由化より一歩先を進んでおり、英
国同様に 既に国内鉄道を自由化している。) 最も主要な路線である LON=PAR 間は、
ドイツバーンを含む幾つかの鉄道会社が参入を狙っているが具体的な計画は未だ出て
きていない。 AF は、2010 年にこの区間を走る鉄道会社に投資する計画を保有してい
るがその具体化は進んでいない。(travelweekly.com, 12/04/2009)
ホテル & リゾート
(1)サウンズ・チャイナ株価、上場初日に▲10%下げ
Sands China が香港証取に上場して $2.5bn の資金を調達した。
(この上場は、今年の
世界で第 7 番目に大きな上場。 香港証取では2番目。) 11 月 30 日の取引初日の終
値は、上場価格を▲10%下回り HK$9.32 を付けた。 市場は、Sands China の大きな
負債と高いバリュエーションを嫌っている。
の流動負債を抱えている。
同社は、$3.4bn の負債残高と $1.3bn
上場時のバリュエーションは、企業価値を 2010 年の
EBITDA 利益×13.5 倍と見積もっている。 このバリュエーションは、9 月のライバ
ル企業 Wynn Macau の $1.9bn 香港証取上場時の 12.7 倍を遥かに上回る。 11 月 30
日には、$600m の社債を株式に交換したので、株式資本を +6.2%も拡大させて、既存
株主の持ち株価値をそれだけ薄めてしまった。
Las Vegas Sands は、依然として
Sands Macao の 70%を保有している。
Sands China は、11 月 27 日、銀行団より $1.75bn のプロジェクト・ファイナンスを
獲得したと発表した。 この資金は、昨年 11 月に中断したマカオのコウタイ通りに開
発中のリゾート(カジノと 6,000 室ホテル群)の建設再開に充当されるだろう。
Sands China は、マカオで Sands Macao, Plaza カジノ、Venetian Macao リゾートホ
テルを保有し 3,500 室のホテルと 1,000 台以上の賭博テーブルと 3,600 台のスロットマ
シンを運営している。 Las Vegas Sands 会長の Sheldon Adelson(76)は、マカオで
20,000 室のホテルと 160 万平方フィートの展示場と会議場のスペースと 200 万平方フ
ィートのショッピングモールと 6 つの劇場を持つカジノ付きの複合リゾートの建設を
計画している。(wsj.com, 11/27, 30/2009) (channelnewsasia.com, 11/30/2009)
(2)ハラーズ、プラネット・ハリウッド・カジノ買収
Harrah’s Entertainment が、Las Vegas の Planet Hollywood Casino を買収する。
Planet は、同社の商業用不動産担保証券で不渡りを出している。 Harrah’s は、9 月に Planet
の $870m の負債の一部 $140m を買い取っている。(購入価格は不明) Harrah’s は、Las Vegas
Strip で 6 つのカジノを運営し、Planet はそれらのカジノに隣接する好物件の購入となると
Harrah’s は言っている。(nytimes.com, 11/30/2009)
(3)シティーセンター 今週開業
MGM Mirage が建設した Las Vegas の巨大プロジェクト CityCenter が今週開業する。
(MGM Mirage は、Mirage, the Belagio, New York New York, Luxor, Mandalay Bay
を運営する Las Vegas 最大のホテルとカジノ運営業者。)
この 住居(コンド)、ホテル(6,000 室)、カジノ、展示場、会議場、劇場、小売商業
施設を備えた $8.5bn をかけたカジノ複合リゾート施設(67 エーカー)は、米国史上
最大の建設プロジェクトだ。
ショッピングモールの Crystals を、4 つのホテル*とハイライズのコンドを抱える 6 棟
のガラスのタワーが取り囲む。
(* Aria Resort & Casino/4,000 室が旗艦ホテルで、この
他に Vdara/1,495 スイート、Mandarin Oriental、Harmon Hotel が存在する。)
CityCenter は、ホテル業界が空前のブームであった 2004 年に計画されて以来、建設資
金難や提携企業の Dubai World との訴訟の問題などの苦難を乗り越えてやっと開業に
こぎ着けた。 しかし不幸にも、開業が世界的な景気低迷の時期と全く重なってしまっ
た。 Las Vegas の入り込みは、▲5%近く減少し、ホテルの ADR は▲25%も低下して
いる。 しかし、値下げの甲斐あってオキュパンシーは 90%代から 80%代の半ばまで
しか低下していない。 更に悪い事には、LAS への航空便も大幅に削減されてしまっ
ている。 MGM Mirage は、長期的なプロジェクトの運営は景気の高低の波から回避
する事はできないと言っている。 そして新しいプロジェクトは必ず新しい顧客を呼ん
で来ると期待している。 9 月の入り込みは、+4.8%増と 2008 年 5 月以来始めてプラ
スに転じた。(travelweekly.com, 12/01/2009)
その他
(1)NYC証取 航空株インデックス Nyse Arca Airline INDEX: XALが最近上昇
Nyse Arca Airline INDEX: XALが、最近の航空旅客需要の増加の兆しを反映し
て値を上げている。
(以上)