米国 IT 業界の動向 2013 年 6 月

米国 IT 業界の動向 2013 年 6 月
JETRO/IPA New York
1.主要IT企業動向
(1)グーグル
・ 調査会社451リサーチによれば、グーグルが開発中のグーグル・グラス(Google
Glass)は消費者向け技術とみなされているが、手を使わずに操作できることから
業務用に応用される見込みだ。
グーグル・グラスはアンドロイド(Android)OSで動作するため、アンドロイド搭載の
スマートフォンやタブレット向けの管理ツールを容易に移行できるというのも業務用
に使う理由となっている。
すでにそうした動きもあり、たとえば、クラウド・ベースのモバイル機器管理プラット
フォーム「MaaS360」を開発するファイバーリンク(Fiberlink)は、グーグル・グラス
をすでにサポートしている。同社の技術を使うと、ITシステム管理者が会社のモバ
イル機器を監視および管理できる。たとえば、従業員がスマートフォン紛失した場
合、IT担当者が所在地を突き止め、グーグル・グラスの仮想スクリーンで従業員
に知らせるか、社用データを遠隔削除するといった具合。
【5月24日 Computeworld】
・ グーグルは、同社の楽曲配信サービス「グーグル・プレー・ミュージック・オール・ア
クセス」をiOS機器のユーザー向けにも提供していく。対応するアプリケーションは1
ヶ月以内にiTunesアップ・ストアでの提供を開始する。
同社のアンドロイド、クローム 、アップス部門の上級副社長、サンダー・ピカイ
(Sundar Pichai)氏がハイテク会議「the D: All Things Digital」で明らかにした。
【5月31日Ars Techinica】
・ グーグルは、衛星を利用したナビゲーション・サービスを提供するイスラエルの新
興企業ウェイズ(Waze)を総額13億ドルで買収する。
創設して4年目の同社は、すでにベンチャー・キャピタルやクアルコムから総額
6,700万ドルを調達。クラウド基盤をベースに、利用者からの情報を加味した道路交
通情報を提供している。現在、同社のサービスを利用するユーザーの数は、4,700
万人に達している。同社の買収には、フェィスブックも関心を持ち別途交渉を進めて
いた経緯がある。
【6月11日 Reuters】
・ グーグルは、オレゴン州ダレスにある施設内に新設計のデータ・センターを新設す
る。新しいデータ・センターの面積は16万4,000平方フィートで、高さは75~80フィ
ート。同社にはめずらしい2階建てとなっている。ダレス・キャンパスにはすでに1階
立てのデータ・センターが2007年から2棟建てられている。今回2階建てにした理由
1
としては、設置できるサーバ台数を増やすことのほかに、電線や光ファイバー・ケー
ブルの敷設を簡素化してコスト削減を図るという狙いもある。
同データ・センターは、グーグルが2013年に大々的に計画しているデータ・センター
拡張戦略の一環となる。グーグルは、2013年だけで既存データ・センターの拡張に
総額20億ドルを費やす方針だ。
【6月10日 Data Center Knowledge 】
・ 連邦政府機関の国家安全保障局(NSA)が一般市民の携帯電話やネット情報を監
視していた問題について、グーグルが関与していたことが明らかになった。同社は、
政府へのデータ提供を求める裁判所命令に応じる形でファイル・トランスファー・プ
ロトコール(FTP)を使ってデータを開示していたことを明らかにしている。
それに先立ち、ワシントン・ポスト紙と英ガーディアン紙は、グーグルを含む米ネット
技術系企業が政府に対し、特別措置として自社ネットワークへのアクセスを認め、そ
れによって情報収集がなされていたと指摘していた。しかし、実際には、FTPという
従来の簡単な方法が使用されていたことになる。
その経緯に関して、グーグルのクリス・ゲイサー広報担当は、政府が同社に対し、シ
ステムへの直接アクセスを求めてきたことを認めたうえで、同社がそれを拒絶し、代
わりにFTPを採用したと説明した。
【6月12日 WSJ】
(2)アップル
・ アップルとマイクロソフトは、一部の製品について価格を引き下げている。次世代機
種の投入に向けて在庫処分を促進する考えだ。同社は5月末に教育機関向けの
特別割引価格を発表した。割引プログラムでは、幼稚園から12年生までの学童を
持つ親をはじめ、先生や大学関係者、学生を対象に13インチ型ラップトップ「マック
ブック・プロ」を200ドル安の999ドルで販売する。同社はさらに、ハイエンド機種の
マックブック・プロ(8GB)も同様に割り引き1,299ドルで販売する。
【6月3日 Computerworld】
・ サムスンが2011年に、アップルが4件の特許を侵害しているとして米国際貿易委
員会(ITC)に提訴していた件で、ITCはアップルが韓国サムスン電子の特許1件を
侵害したと認定。アップルの一部製品について米国への輸入禁止を命じた。輸入
禁止の対象は、AT&T向けのiPhone4とiPad2。今回の判決を不服としたアップル
は、上訴する方針。
輸入禁止 の対象は旧世代のiPhoneおよびiPadであるため、アップルの業績にさ
ほどの打撃を与えることはない。しかし、そのうちの旧世代iPhone4は、米国内で
AT&Tおよびベライゾンが2年契約を結んだ加入者に対して無料で提供していること
から、いまだ根強い人気があり多少の減収を強いられることになるとみられている。
パイパー・ジェフリー(Piper Jaffray)によると、2013年第1四半期(1月~3月)に
2
おけるアップルの売上高のうち、判決の対象となった旧世代のiPhone4は8%を占
めた。
【6月4日 WSJ】
・ アップルは、無料のネット・ラジオ・サービス「iTunesラジオ」を今秋から米国で開始
する。サンフランシスコで開催した技術者向け年次会合(WWDC)で披露した。
新サービスは、すでに存在するネット・ラジオ配信サービス「パンドラ(Pandora)」
に似ている。ユーザーがネット上に「ラジオ局」を開設し、入力した情報に基づいて
楽曲を配信できる仕組みだ。利用料金は無料で、広告収入で運営していく。また、
年間24.99ドルを払えば、広告なしのサービスも選択できる。
アップルはまた、マックブック・エアーの新機種を発表した。同製品は、インテル製
プロセッサ「ハズウェル(Haswell)」の第4世代を採用。同プロセッサはコア・プロ
セッサ「アイビー・ブリッジ(Ivy Bridge)」搭載することで画像処理能力を2倍に引
き上げたほか、バッテリ持続時間を50%向上させている。
アップルはまた、携帯機器向け最新OS「iOS7」を発表した。新機能としては、ロッ
クされた状態でスクリーン上にコントロール・センターを呼び出したり、基本設定を
行うことができるようになった。そのほか、全てのサードパーティー製アプリケーシ
ョンの間でマルチタスキング作業を行う際のバッテリ消費量を改善している。
【6月10日 TechCrunch、PCMagazie】
・ アップルは、米国内においてiPhone5の購入者を対象に旧式モデルの下取りサー
ビスを開始する。それにより、iPhone5の販促を図っていく。下取りした製品は、同
社で再整備した上で、新興国で格安で販売していく。
すでに、AT&T を含む米携帯電話会社は、ブライトスター(Brightstar)と提携して、同
様の下取りサービスを実施。たとえば、AT&T では iPhone4S を最大 200 ドルで下
取りしている。
【6月6日 Bloomberg】
・ アップルは、iPhone 5Sと廉価版を2013年9月にも発売する模様。 iPhone5Sは本
体がアルミ製で、指紋認証機能が導入される。一方の廉価版はプラスチック製で、
筐体色が5~6色用意される見込みだ。また、画面サイズはともに、現行機種の
「5」と同じ4インチ。
廉価版に関しては、価格を99ドルにすることが検討されているが、今のところ価格や
導入時期は確定していない。
5Sと廉価版の液晶パネルは、シャープとジャパンディスプレイ、LGディスプレイの3
社が供給。一方、生産に関しては、5Sの生産を台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業が
託し、廉価版の生産を台湾のペガトロンが請け負う。アップルはさらに、画面サイズ
が5.7インチのiPhoneを2014年に発売することも検討している。
【6月13日 Reuters】
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(3)Amazon.com
・ Amazon.comは、娯楽番組シリーズを独自に製作する方針を打ち出した。自社の
動画配信サービス「プライム・インスタント・ビデオ」サービスを通じて年内から来年
初めにかけて配信する予定。同社は2013年に14の番組を試験的に製作し、それ
らの中から視聴者の評価を基にして5つの番組を選定した。それらには、政治コメ
ディ番組「アルファ・ハウス」などが含まれる。
同社の有料会員サービス「アマゾン・プライム」の登録者は、無料で視聴できる。
【5月27日 Businessweek】
・ Amazon.comは、密かに開発を進めてきたオンライン食品販売サービス「アマゾン
フレッシュ(AmazonFresh)」を本格的に展開する。関係筋が明らかにした。
Amazon.com は、本社のあるシアトルで5年にわたり食品販売事業を試験的に展
開。生鮮食品を自社トラックで配送してきた。本格的な展開にともない、同社はロサ
ンゼルスで事業を開始。アマゾン・プライムの会員は、無料トライアルの後自動的に
有料会員「プライム・フレッシュ」にアップグレードされる。同サービスの年会費は 299
ドル。アップグレードには、年間 79 ドルのプライム・メンバー会費も含まれる。
ロサンゼルスのサービスでは、生鮮食品のほか、パン、生活用品、美容・健康品な
ど幅広く取り揃え、35 ドル以上購入すると無料で配送してくれる。また、地元で人気
のレストランからの配達も受け付け、朝 10 時までに注文すると夕食時に配達してく
れる仕組みだ。
年内にはサンフランシスコで開始するほか、来年に20カ所で展開していく計画。
【6月10日 PC Magazine 】
(4)フェイスブック
・ フェイスブックは、米国外で同社初となるデータ・センターをスウェーデンのルレオに
解説した。
新設したデータ・センターは、寒冷な気候を利用して冷却コストを抑える一方、で、サ
ーバ廃熱をオフィス部分の暖房に使用する。また、消費する電力のすべてを水力発
電で賄う。それにより、予備電源を70%以上削減できる見込みだ。
同施設はほとんどがフェイスブック自前の設計仕様「オープン・コンピュート・プロジ
ェクト」に基づいて造られており、電力使用効率(PUE)が非常に高いのが特徴とな
っている。
【6月12日 GigaOM】
(5)マイクロソフト
・ マイクロソフトは、一部の製品について価格を引き下げることで、次世代機種の投
入に向けた在庫処分を促進する。
具体的には、同社のタブレット「サーフェス(Surface)RT」購入者を対象に、キーボ
4
ード付カバー「タッチ・カバー」(一般的なキーボードの超薄型のような種類)あるいは
「タイプ・カバー」(触れるだけでタイプできる種類)を無料提供する。タッチ・カバーを
個別に購入した場合の小売価格は約120ドル。一方のタイプ・カバーは約130ドルと
なっている。
無料提供期間は5月31日から6月30日まで。対象となる国は、北米ほか、英国、ドイ
ツ、フランス、オランダで、対象機種は、32ギガバイト(GB)版(米小売価格は499ド
ル)と64GB版(米小売価格は599ドル)の2種類。
マイクロソフトはさらに、6月3日~6日にかけてニューオリンズで開催された見本市
「北米テックエド(TechEd North America)2013」の参加者向けにサーフェス本体の
値引きも実施した。会場では、64GBのサーフェスRTがタッチ・カバー付き99ドルで、
また128GBのサーフェス・プロを399ドル(小売価格は999ドル)が販売された。
テックソーツ(Tech-Thoughts)のアナリスト、サミア・シン氏によると、それらの割引
価格は、製造コストを大きく下回る格安水準になるという。テックソーツは、サーフェ
スRTの製造コストは300ドル以上、サーフェス・プロのそれは600ドル以上と見積も
られている。
【6月3日 Computerworld】
・ マイクロソフトは、6月3日~6日にかけて開発された開発者向け年次会議「北米テ
ックエド(TechEd North America)で、クラウドOS製品と関連技術の新機能を披露
した。
その中で、同社はクラウド・プラットフォームの「ウィンドウズ・アジュール(Windows
Azure)」について、仮想マシンの使用を「分」単位で課金していく方針を明らかにし
ている。一方、競合サービス「アマゾン・ウェブ・サービシズ(Amazon Web
Services)」は「時間」単位で課金している。同社は、課金を分単位に細分化すること
でコスト管理の柔軟性を顧客に与えると同時に、クラウド利用の経済的利点を向上
させていく。
マイクロソフトによると、フォーチュン500企業の約半数がアジュールを使っており、1
日1,000件超のペースで新規契約を結んでいるという。
そのほか、ハイブリッド・クラウド向けの大企業向け中核ITソリューション「サーバ
2012 R2(Server 2012 R2)」「システム・センター2012 R2(System Center 2012
R2)」「SQLサーバ/2014(SQL Server 2014)」の開発状況が紹介された。6月後
半にプレビュー・リリースを発表する予定。これらの製品では、顧客のデータ・センタ
ーやサービス事業者のデータ・センター、そしてウィンドウズ・アジュール間の境界を
取り払う機能を可能にする。
また、ウィンドウズ(Windows)8.1については、ネットワーク機能やセキュリティ機能
が向上された。セキュリティ機能ではたとえば、端末から企業データを安全に削除す
る遠隔データ削除に対応する。
マイクロソフトはそれと同時に、インサイクル・ソフトウェア(InCycle Software)のイン
リリース・ビジネス・ユニット(InRelease Business Unit)を買収する計画も明らかに
5
している。同社は、「.NET」および「ウィンドウズ・サーバ(Windows Server)」向けの
主要リリース管理ソリューションを提供している。
【6月4日 Data Center Knowledge】
・ マイクロソフトは、今夏より米家電チェーン大手のベスト・バイの米店舗内に合計
500所の専用売り場「ウィンドウズ・ストア」を設置する。またカナダでも同様に100
店舗を出店する計画だ。
ウィンドウズ・ストアでは、ウィンドウズを搭載したパソコンやタブレット、携帯電話、X
ボックスのほかソフトを展示し、来店したお客が見て試せるようにする。広さは1ヵ所
あたり約139~204平方メートル。
【6月13日 PC Magazine 】
(6)インテル
・ インテル、デルおよびレボリューション・アナリティクス(Revolution Analytics)の3社は、
大容量データ(ビッグデータ)の解析拠点となる「ビッグ・データ・イノベーション・セン
ター」をシンガポールに共同開設した。
データ解析の人材育成に加え、アジア市場向けに提供するソリューション開発のサ
ポート、3社の顧客向けに大規模データを活用した事業の試験運転などを行っていく。
センターは、デルがすでに同国に設置しているデル・ソリューション・センター内に設
置する。センターでは、インテル製プロセッサ「ジーオン(Xeon)E5」を搭載したサー
バほか、レボリューション製分析ソフト「エンタープライズR」などが利用されている。
【6月4日 ZDNet】
(7)IBM
・ IBM は 、 ク ラ ウ ド ・ サ ー ビ ス 会 社 ソ フ ト レ イ ヤ ー ・ テ ク ノ ロ ジ ー ズ ( SoftLayer
Technologies )を買収する。同社はまた、これを機にクラウド・サービス部門を新設
して事業を拡大する計画だ。買収金額は明らかにしていないが、20 億ドル規模と
みられている。
ダラスを拠点とするソフトレイヤーは、米国をはじめ、アジアや欧州にある13のデー
タ・センターを通じて世界最大規模のホスティング・サービスを提供している。同社の
顧客は現在、2万1,000人に達している。
IBMは現在、クラウド・サービスで世界トップ・クラスの地位にあり、2015年に同サー
ビスで70億ドルの売り上げを目指している。
【6月4日 WSJ】
(8)シスコシステムズ
・ シスコは、ネットワークに接続された機器の電力を管理するソフト開発会社の ジュ
ールエックス(JouleX)を1億700万ドルで買収する。
ドイツのミュンヘンで設立されたジュールエックスのソフトは、企業内ネットワークとIT
6
システムが消費するエネルギーを測定して管理できる。同社によると、顧客の電力
コストを最大60%削減した実績もあるという。ジュールエックスは、過去11四半期連
続の増収を記録。同社の顧客には、シスコのほか、BMWやソニー、コカ・コーラ、エ
クイファックス、ネスレ・ウォーターといった多数の大企業が名を連ねている。
シスコは今後、ジュールエックスをインダストリー・ソリューションズ事業部門に組み
込み、シスコのエネルギー管理システム「エネルギーワイズ(EnergyWise )」に統
合する見通し。
【5月29日 Greentech Media】
・ シスコは、デジタル・ビデオ記録機器(DVR)を開発するティーボ(TiVo)に対して、
セットトップ・ボックス(STB)技術に関する特許侵害賠償金とライセンス料として計2
億9,400万ドルを支払う。その見返りとして、同社はティーボのDVR技術特許を恒
久的に使用できる。グーグルもティーボへの支払いに対して合意しており、結果的
にティーボは総額4億9,000万ドルを受け取る。グーグルの場合は、同社が2012年
5月に買収完了したモトローラ・モビリティが関連特許に抵触していたことで賠償責
任を負わされた格好となった。ただし、グーグルはその後、モトローラ・モビリティの
STB事業部門をアリス・グループ(Arris Group)に売却していることからアリス社も
一部負担する模様。
【6月7日 Computerworld】
2.情報端末(スマートフォン、タブレット、家電等)とクラウドコンピューティング
様々な周辺機器が開発されることによって携帯電話機の進化速度が早まっている
(1)ダッシュボードに携帯電話やタブレットの機能を内蔵した「スマート・カー」が規制当局
と自動車業界の間に新たな摩擦を生み出している。
米道路交通安全局(NHTSA)は携帯電話でのテキスト・メッセージングやソーシャル・
メディアのような機能の利用について、自動車が停止している時だけに限るべきだと主
張し、規制の強化を検討している。NHTSAはその根拠として、運転中の携帯電話利
用によって引き起こされた事故で年間3,300人が死亡している事実を挙げている。
それに対し、ゼネラル・モーターズ(GM)やフォード・モーター、クライスラーが加盟する
業界団体の自動車製造業連盟は、たとえ、使用を禁止したとしても運転者は必要に応
じて使うため、結果的に一層危険な事態を招くだけだ、と反発している。
【5月27日 Financial Times 】
(2)イリノイ大学の研究チームは、iPhoneを携帯分光高度計にするアプリケーションを開
発した。ユーザーは、アプリケーション使って有害物質や細菌を検出すると同時に電
話機のGPSデータなどを組み合わせることによって活用方法を拡大できる。
アプリケーションは、ソフトと携帯電話機に装着する装置から成る。装置自体は、
7
iPhoneを固定するためのもので、電話機に搭載されたカメラとプロセッサを使って検出
する仕組みだ。研究者によると有害物質やタンパク質、バクテリア、ウイルス、その他
の分子などの検出が可能で、その精度は実験室で使用する5万ドル相当の分光光度
計に匹敵するという。
また、イリノイ大学の別の研究班では、スマートフォンを使って水質汚染を調べる装置
「モボセンス(MoboSens)」も開発している。
モバイル検知技術の最大の特徴は、地理情報と併せることによって、状況の地図化が
容易になる点。たとえば、災害が発生した直後にアイフォーンを持った科学者が現場
に出て、どの地域が有害物質の影響を最も受けているかといった情報をリアルタイム
で収集できる。
【5月30日 GigaOM】
(3)デル(Dell)は、タブレットとラップトップのハイブリッド機種「XPS11」を2013年末まで
に発売する計画だ。
XPS11は、11.6インチ型でウィンドウズ 8(Windows 8)を搭載。高精細(HD)ディスプ
レイのほか、逆方向に折りたためるキーボードを備えている。
デルはまた、引き続きマイクロソフトのウィンドウズOSを搭載したモバイル端末に特化
していく方針を示した。一方で、マイクロソフトは今年の2月に、デルに20億ドルを出資
する案を提示しており、デルもウィンドウズ路線を強化していく事になる。
【6月3日 WSJ】
(4)2013年2月〜4月までにおけるマイクロソフトのウィンドウズ・フォン8搭載機種の米
国内市場シェアは前年同期の3.8%から5.6%へ拡大した。米調査会社カンター・ワー
ルドパネル(Kantar Worldpanel)が報告した。
同社の調べによると、シェアで は引き続きグーグル製アンドロイドの搭載機種が首位
となっており、前年同期の50.3%から51.7%に拡大している。次いで2位はアップル製
iOS搭載機種でこちらも39.1%から41.4%に拡大している。その一方でシェアを落とし
ているのが、カナダのブラックベリーで、5.3%からわずか0.7%まで縮小した。
【6月5日 Computerworld 】
(5)アイラ・ネットワークス(Ayla Networks)は、家電製品に簡単に統合してプラグ&プレ
イで使える低電力型のWi-Fiモジュールの開発と生産で台頭し、業界で関心を集めて
いる。
アイラの開発したモジュールは、同社のクラウド・ソフトを経由で、家電製品やその他機
器の機能を自動的に設定できる。同技術は、OEM向けに提供する。アイラの技術を搭
載した機器は、様々な通信プラットフォームを超えて相互に通信し、電気代や気象、保
守管理の必要性といった情報を伝達できるようになる。
同社の技術は、アンドロイドOSやiOS、Wi-Fi、ジグビー(ZigBee)、Linuxといった
様々なOSや規格に対応する。また、OEMのコストはハードウェア1個につき2~3ドル。
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大量のデータ処理のために複雑なアーキテクチャが必要になる場合は割高となる。同
社の収入源は主に、クラウド・アプリケーションの使用料およびデータ管理サービス
料。
【6月5日 GreenTech Media】
(6)ネットへのアクセスできる8~64歳の米国人2,400人を対象にタブレットの所有率を
調べたところ、対象者のうち44%がタブレットを所有していたことが判明し、前年の
30%から大幅に増えた。また、 18~34歳の所有率は54%に上った。調査会社フラン
ク・N・マギッド・アソシエイツの調査が報告した。
同社の報告によると、以前の調査では、タブレット市場はしばらく前まで、アップルの
iPadが圧倒的な人気を集めていたが、 今回の調査では、アンドロイドOS搭載機種が
59%を占め、アップル製タブレット(iPadとiPad Mini)のシェアにほぼ並ぶ結果となった。
双方が50%以上のシェア を記録したのは、両方の機種を所有する世帯が増えたた
め。
【6月9日 USA Today】
3.消費者向けインターネット・サービス、コンテンツサービス
ビデオゲーム機は進化を遂げているが、依然として携帯機器との激しい競争にさらされ
ている
(1)オンライン競売大手eベイ(eBay)は、実在店舗に設置した機器を利用してオンライン
購入できるシステムを実験している。同機器が販売対象としているのは、ニューヨーク
のブランド、ケイト・スペード(Kate Spade)の衣料ラインナップのケイト・スペード・サタ
デーで、閉鎖された店舗を利用してその窓に設置された横長のディスプレーは、指で
操作でき、インタラクティブ性を備えている。歩行者の購買意欲を刺激し閉店後の販
売増を狙う。ケイト・スペードでは、同機器をマンハッタン内の各店舗に設置し、6月8
日から7月7日までの1ヵ月間にわたって効果を検証していく。
【6月5日 Investor’s Business Daily】
(2)ケーブルテレビ(CATV)サービス最大手のコムキャスト(Comcast)は、家庭用エネ
ルギー管理や防犯システム関連の新規サービスを展開している。同社は現在、CATV
サービスの加入者減少に苦しんでおり、付加価値サービスを提供することで収益増を
狙う。
同社 は、防犯システムや煙探知機、室温調節器を制御する家庭用プラットフォーム
「エクスフィニティ(Xfinity)」ほか、エネルギー管理用アプリケーション「エコセイバー
(EcoSaver)」を提供している。双方を合わせることによって、たとえばリアルタイムの
気象情報などを基に室温調節器を自動調整できる。
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エコセイバーはクラウドをベースにしたサービスで、利用料は月9ドル95セント、設置コ
ストは99ドル95セント。
【6月10日 Geentech Media】
(3)ソニー・コンピュータ・エンタテインメント(SCE)は、2013年の年末商戦に発売を予定
している新型家庭用ゲーム機「プレイステーション(PS)4」を披露した。筐体の外観は
黒一色で、携帯端末やネットとの接続機能が強化されている。価格は399ドル。ただし、
PS4のオンライン・ゲームを利用するには、「A PlayStation Plus」に加入し、年間
49.99ドルを支払う必要がある。
一方のマイクロソフトも同社の新型家庭用ゲーム機「Xボックス・ワン(Xbox One)」を
披露した。価格はPS4より高めの499.99ドル。同機器は今年の11月に世界21ヵ国で
発売される。また、マイクロソフトは当面、既存のXボックス360のサポートも継続してい
く方針を明らかにしている。
【6月11日 LA Times】
4.電子商取引と企業向けITサービス
ビッグデータで人間の行動パターンを予測しようとする動きが盛んに
(1)アカマイ・テクノロジーズ(Akamai Technologies)のコンテンツ配信ネットワーク
(CDN=content delivery network)事業が予想に反して堅調となっている。
CDNサービスの価格は競争の激化によって、年々年間15~20%ずつ低下しているが、
その一方でデータ転送量が急増したことが奏功している。背景には、モバイル電子商
取引やオンライン動画の普及、ソーシャル・メディア経由のゲームや写真のダウンロー
ド増加などがある。
同社のトム・レイトン最高経営責任者(CEO)は今後について、オンライン動画の画質
が引き続き向上していることや、高精細テレビ(HDTV)番組のオンライン化やモバイル
購入の普及によって転送量が増え続けると期待している。
アカマイは4月に、第2四半期売上高について前年同期比13%増の3億7,300万ドルと
の予測を示している。
【5月28日 Investor’s Business Daily】
(2)Salesforce.comは、 イントラネットを構築するためのアプリケーション「カンパニー・
コミュニティーズ(Company Communities)」を2013年下半期に投入する。製品は、
携帯機器からアクセスできると同時にソーシャル・ネットワーキング機能を有したイント
ラネットの構築を可能にする。たとえば、Salesforce.comの企業向けソーシャル・ネッ
トワーキング製品「チャター(Chatter)」を、新しく開発したソフトに統合できる。カンパ
ニー・コミュニティーズの方は、航空会社バージン・アメリカや高級アパレルのバーバリ
ーなど の一部ですでに試用されている。
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Salesforce.comはすでに類似したソフト「コミュニティーズ(Communities)」を提供して
いる。しかし、コミュニティーズは、顧客や提携先と連絡するための社外向けサイトの
構築を目的としている。Salesforce.comは、デジタル・マーケティング会社の米イグザ
クトターゲット(ExactTardget)を約25億ドルで買収する。これにより、企業に対するデ
ジタル分野の営業支援サービスを強化していく考え。同社は7月までに買収手続きを
終える予定。同社は6,000社以上の企業を顧客にもち、そのなかにはギャップやナイ
キなどが名を連ねている。
【5月30日 Computerworld、6月4日 USA Today】
(3)デルは、自社製ハードウェアとオラクル製ソフトを組み合わせた新たな製品を開発す
る方針を打ち出した。
両社は今回の提携拡大によって、新製品の共同開発に注力し、2013年後半からその
販売を開始する。また、新製品に関するカスタマー・サポートの効率化も図る。
オラクルのマーク・ハード社長は今回の提携について、ITの簡略化とコスト削減を目指
すオラクルの戦略の延長にあるものだ、と強調している。
【6月4日 WSJ】
(4) ゼロックスは、eラーニング・ソフト会社ラーン・サムシンング(Learn Something)を
買収した。同社は、OA機器の製造販売からサービス業へと中核事業を移行しており、
今回の買収もそうした方針転換の一環となる。
ラーン・サムシングは、フロリダを拠点とする従業員50人の新興企業。食品店や米
薬局チェーンの85%向けに業界情報や教育プログラムを提供している。同社のサ
ービスを導入している企業では、法規制遵守コースを終了するのを目的として、同
社のeラーニング・プラットフォーム「ラーナー・コミュニティ」を使っている。
2013年第1四半期におけるゼロックスの収益は、プリンタやコピー機の需要減速に
よって同社の売り上げは2.7%減となったものの 、納税額が少なかったため10%の
増益を確保した。
【6月5日 WSJ】
(5) 業務用ソフト開発大手の独SAPは、スイスを拠点とする電子商取引(eコマース)技
術企業ハイブリス(Hybris)を買収する。買収金額は明らかにされていない。買収後、
ハイブリスは引き続き現経営陣による独立経営を維持していく。また、SAPの顧客企
業に対し、包括的なフロント・エンドのeコマース・エンジンとバック・エンド・システム(在
庫管理や販売管理、販促、ソーシャル機能)を提供する。買収手続きは2013年第3四
半期(7~9月)中に完了する見込み。
【6月5日 WSJ】
(6) 2012年におけるビジネス・インテリジェンス(BI)ソフト市場の支出額は前年の123億
ドルから6.5%増の131億ドルとなり、2011年の前年比17%増という好調成長から大
11
きく減速した。世界的不況による先行き不安を反映して成長が鈍化した。調査会社ガ
ートナーが報告した。
市場の主要ベンダー別にみると、SAPが29億ドルで首位となった。 ただし、同社の成
長率はわずかに0.6%に低迷している。
次いで、 オラクルが19.5億ドルを占めて2位となり、3位には16.2億ドルを占めたIBM
がランク入りした。後は、SAP(16億ドル)、マイクロソフト(11.9億ドル)が続いた。
【6月6日 Computerworld】
(7)電子メールやソーシャル・ネットワーク上のつながり、通話記録を含む大量のデータ
(ビッグデータ)をもとに、仕事上の人間関係を分析して、職場の人間関係や生産性向
上に役立てる試みが広まりつつある。すでに、いくつかの新興企業が、そうした機能を
盛り込んだ技術を開発し、市場に投入し始めている。
たとえば、新興企業のリレートIQ(RelateIQ)は、個人の各種デジタル・データを同僚の
データと比較し、重要事項や人物を見つけるソフトを開発している。同ソフトは、初回稼
働時に1分あたり1万件の電子メールやカレンダー・エントリーをスキャンする。電子メ
ールのコンテンツを同僚から見えないようにする設定も用意するなど、社員のプライバ
シー保護も配慮している。
一方、ボストン拠点の新興企業ソシオメトリック・ソリューションズ(Sociometric
Solutions)は、社員の挙動や会話の調子に関するデータをセンサーで収集し、社員同
士の相互関係や集会の場所などを管理職が把握できる技術を開発した。
また、サンフランシスコ拠点のテンザー(tenXer)が、コンピュータ技術者向けにコード
修正や会議所要時間を追跡し、その生産性を同僚と比較するプログラムを開発したほ
か、イエスウェア(Yesware)が、電子メールが開封された件数や受信者が使っている
端末を監視し、電子メール・トラフィックに関する分析報告を作成する技術を開発して
いる。いずれも、人力では不可能なパターンの検出を実現しようというのが狙い。
たとえば、イエスウェアの場合、 オンライン決済サービスのスワイプリー(Swipely)が
資金調達ラウンドで同社の技術を活用。その結果、スワイプリーの最高経営者(CEO)
が送った電子メールをベンチャー・キャピタリストたちが開封した件数や、電子メールの
リンクがクリックされた回数を分析し、同社への関心の高さを把握できたという。
【6月12日 WSJ】
5.半導体とハードウェア技術
ハードウェアの開発コストが安くなり、市場への参入が容易になりつつある
(1)グーグル傘下のモトローラ・モビリティは、スマートフォン工場をテキサス州に建設す
る。すでにアップルやレノボ(Lenovo)が米国内での生産を開始する計画を打ち出して
おり、モトローラもそれら企業に追随する格好だ。
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米国内へ工場を建設する理由として、 安全保障上の懸念(技術流出やサイバーセキ
ュリティ懸念)が強まるなか、政治家との関係良好化を図るという狙いがあるとの指摘
もある。それに対しモトローラは、スマートフォンの新機種を設計する技術者や、それを
購入する顧客の近くに工場を持ったことによって、技術革新の促進をはじめ、在庫や
輸送のコストを抑える効果があると説明している。
同工場では、同社がグーグルに買収された後に初めて出す新機種「モト・エックス
(Moto X)」が製造される。また、製品は、生産過程の大部分が米国内となる最初のス
マートフォンとなる。
また、2013年4月にギャロップが行った調査によると、米国人の約3分の2は、米国内
生産されたIT製品に、より多くの金額を払ってもいいと考えている。
【5月29日 Washington Post】
(2)フラッシュメモリ開発大手のサンディスク(SanDisk)は、データ・センター向けフラッシ
ュ・ストレージ製品の需要を開拓している。
サンディスクは近年、自社の戦略を見直し、小売事業を売り上げの約3分の1に縮小
する代わりにデータ・センター向け市場を開拓する方針を打ち出している。
企業向け製品市場対策として、サンディスクは従来の半導体開発にとどまらず、コント
ローラやソフト分野の強化にも着手している。
また、同社はその一環として、ソフト開発のスクーナー・インフォメーション・テクノロジー
(Schooner Information Technology)とフラッシュソフト(Flashsoft)、SSD製造のプラ
イアント・テクノロジー(Pliant Technology)を買収した。
また、サンディスクによると、フラッシュメモリの価格は2010年あたりまで年間約40%
ずつ低下したが、技術的限界が理由となって今後はそれが年間15~25%程度に落ち
着く見通しだ。
【5月31日 Businessweek】
(3) 米エネルギー省の研究所でスタンフォード大学内にあるSLAC国立加速器研究所
(SLAC National Accelerator Laboratory)の研究班は、有機エレクトロニクス製品の
性能を画期的に高める新しい印刷工程を開発した。実現すれば、伝導率を従来のも
のに比べて10倍に高めることができるという。
新しい工程は、「フルーエンス(FLUENCE)」と呼ばれ、液体で結晶を加工する手法
「fluid-enhanced crystal engineering」に由来している。
有機エレクトロニクスとは、有機物を軽量薄型のプラスチック基板の上に塗布または印
刷することで、柔軟性のあるトランジスタや発光体を製作する技術。これまでに軽量か
つ低価格の太陽電池、柔軟性のあるディスプレイ、超小型センサーが開発されている
が、伝導率が低い事が課題となっている。
今回の手法では、 整然と配列した結晶体の製法を開発し、格子構造の利点を生かし
ながらも伝導率を引き上げることに成功した。さらに、有機物を融解する液体の流れを
制御することによって、インクの流れを均等化し、高速印刷時に起こりがちな失敗も解
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消した。
同研究の次なる課題は、この工程で最もよく機能する素材の組み合わせを発見するこ
とによってさらに伝導率を引き上げることだという。
【6月2日 Science Daily】
(4) 半導体受託製造大手グローバルファウンドリーズ(Globalfoundries)は、 2013年
中に45億ドルを投資して製造規模を拡大する。低価格スマートフォン向け半導体の需
要急増を見込での動きとなっている。ただし、同社は当面、既存工場の生産能力拡大
に注力していく方針だ。以前に発表しアブダビ工場の新設計画については、着工時期
を明らかにしていない。
設備拡大の対象となるのは、ニューヨークおよびドイツの既存工場。 ニューヨーク工
場については、向こう18ヵ月で生産能力を倍増し、月産6万枚のウエハーを製造してい
く。
また、今後は需要の高い先端製造技術に投資する考えで、2013年後半には20ナノメ
ートル技術を、2015年初期にはトライ・ゲート14ナノメートル技術を使った半導体の大
量生産を開始する予定。
【6月5日 WSJ】
(6) 2013年4月の世界半導体売上高は、前年同月比1.8%減の236億2,000万ドルとな
った。6ヵ月ぶりにマイナスとなったものの、前月比では0.6%増となっている。米半導
体工業会(SIA)が報告した。
地域別にみると、日本を除くアジア太平洋地域が3.0%増と堅調。欧州も0.4%増とな
った。一方、日本は円安の影響で19.4%の大幅減。米州も4.4%減だった。
【6月5日 SIA】
(7)シャープは、スマートフォン向け半導体大手クアルコム(Qualcomm)から、6月24日
の期日で6,000万ドルの追加出資を受ける。これにより、スマートフォンを含む次世代
の中小型パネルの共同開発を加速させる。
両社はまた、シャープの高画質および省電力の新型液晶技術「イグゾー(IGZO)」をベ
ースに、クアルコムが進めている省エネと色の再現性に優れた新型ディスプレイの開
発を共同で進めていく。
【6月10日 ZDNet】
(8) 米国では最近、ハードウェア開発を目指す起業家が増えている。背景には、スマー
トフォンの進化、3Dプリンタの普及、新しい資金調達モデルなどによりハードウェア開
発の敷居が低くなったことがある。
スマートフォン経由でネットに接続することで、独自のインターフェイスを持たずに機能
する機器の市場を生み出している。
たとえば、女性の排卵を探知する機器を開発するケンブリッジ・テンペラチャー・コンセ
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プツ(Cambridge Temperature Concepts)は、身体に装着する体温計とそれを操作
する小型装置を製造している。
また、3Dプリンタによって試作品の製作が容易かつ安価になったこと、さらにキックス
ターター(Kickstarter)のようなウェブサイトを通じて小口投資を集めるクラウドファンデ
ィングの枠組が普及したことも、起業家による機器開発を助けている。
【6月12日 WSJ】
6.政府・議会動向(通信、セキュリティ、スマートグリッドなど)
サイバー・セキュリティに対して政府が本腰を入れている
(1)全米科学財団(NSF)は、独立行政法人の情報通信研究機構(NICT)とインターネッ
トに代わる新世代通信ネットワークの共同研究開発に関する覚書(MoU)を結んだ。
日米の協力で全く新しい情報プラットフォームを構築するのが狙い。
既存のネットに関しては、安全性や機能面の問題もさながら、今後データ量が急増す
ることによる消費電力の増大が懸念されている。そこで両機関は通信インフラ技術を
推進し、国際標準を確立していく。
両組織は、光ファイバー・ネットワーク、モバイル・コンピューティング、そしてネットワー
ク設計分野などを中心に、今後4年間にわたり両国間の共同研究を戦略的に支援して
いく。
【5月30日 NSF】
(2)オバマ政権は、知財を買い集めてIT企業を相手に訴訟を起こし、多額の和解金やラ
イセン料を獲得しようという、いわゆる“パテント・トロール”行為に対する 規制強化策
を発表した。
オバマ政権は、議会に対して技術を使用する企業や消費者への訴訟を制限するよう
求めるほか、特許侵害裁判で訴えられている被告に対して、より簡単に情状酌量の余
地を与えるようにすることも求めている。
【6月6日 NY Times】
(3)米中央情報局(CIA)の元職員でコンピュータ技術者のエドワード・スノウデン氏(29)
が、米国家安全保障局(NSA)が市民の通話記録やネット上の情報をひそかに収集し
ていたことをメディアに暴露したことで、米国内が騒然としている。
NSAの情報収集活動プログラム「プリズム(Prism)」に関しては各メディアが報道して
いる事実が食い違う点もあり、その真相は全てわかっていない。たとえば、グーグルや
フェイスブック、アップルといった米IT大手がプリズムに協力したと報じられたが、直接
的なアクセスを政府に許可したことについて各社とも否定している。ただし、グーグル
は、そのかわりとしてFTPによって要求された情報について提供していたことを認めて
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いる。
一方、欧州連合(EU)ビビアン・レディング司法委員長は、プリズムに対する懸念を示
し、 米国のエリック・ホルダー司法長官との直接会談に及んだ。それに対して、ホルダ
ー司法長官は、NSAのターゲットがあくまで米国人だったことを説明。レディング司法
長官も納得した模様。
NSAがテロ対策として実施してきた個人情報収集政策には、プリズムを含む四つの秘
密プログラムがあることが明らかになった。これらのプログラムは、ネットを対象とした
「プリズム」と「マリーナ」のほか、通話対象の「ニュークリオン」と「メインウェイ」となって
いる。
プリズムとニュークリオンは電子メールの内容や通話の内容そのものを取得する。そ
の一方で、マリーナとメインウェイはネット接続履歴や通話履歴といったメタデータの収
集が主となっている。
【6 月 7 日 Businessweek、6 月 9 日 Guardian、
6 月 16 日、Washington Post、6 月 17 日 Businessweek】
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