米国 IT 業界動向 2011 年 3 月

米国 IT 業界動向 2011 年 3 月
JETRO/IPA New York
1.主要 IT 企業動向
(1)グーグル
・ グーグルは、検索エンジンのアルゴリズムに大幅な変更を加えた。コンテ
ンツの質が悪いウェブサイトを検索結果からできる限り排除するのが狙い
だ。グーグルによると、アルゴリズムの変更によって検索結果全体の約12%
に影響が出るとみられている。
ネット業界では、特定の分野あるいは用語に対する検索結果に登場するこ
とを狙いとして安価かつ大量にコンテンツを作成して掲載する「コンテン
ト・ファーム(content farm)」、あるいは外部サイトのコンテンツ引用によ
りサイトを構成する「スクレイパー・ファーム(scraper farm)」と呼ばれ
る行為が問題となっている。こうしたサイトのコンテンツは、大量生産さ
れただけで質的には非常に悪い。そして、これらのサイトが検索結果の上
位に出てくることによって、検索エンジンに対する信頼感が薄れてしまう。
【2月24日 Search Engine Site】
・ グーグルは、3Dの生物モデルを提供するザイゴート・メディア・グルー
プ(Zygote Media Group)の3D人体解剖モデルを、自社のオンライン・サ
ービス「グーグル・ボディ」とそのアンドロイド版に採用する。ザイゴート
の人体モデルは回転のほか、ズーム、組織の表示・非表示の切り替えが可能。
ユーザーが人体の内部構造を理解しやすくなっているのが特徴だ。
【3月6日 Bloomberg】
・ 調査会社ホワイト・ストラタス(White Stratus)が従業員250人以上の米
国企業2000社以上を対象に調べたところ、クラウドサービスであるグーグ
ル・アップス(Google Apps)を利用している企業は7%を占めた。業界別
にみると教育分野が約25%と最も多く、次いで公益事業業界(10.4%)、不
動産業界(9.1%)、プロフェッショナル・サービス業界(9.1%)となって
いる。ストラタスは普及の要因として、「格安の使用料」「高い信頼性」「革
新的な新機能」を挙げている。
一方、金融(5.4%)や医療(4.2%)分野のようにグーグル・アップスの採
用に対して抵抗感を持つ業界もある。また、企業規模でグーグル・アップ
スの採用状況をみると、大企業ほどその採用に慎重である。たとえば、従
業員が1万人以上の企業では、採用している割合はわずか5.5%だった。
【3月3日 Online PR Media】
・ グーグルは、2011年も引き続き企業買収を積極的に進める方針だ。同社は
2010年、計48社を買収した。買収の対象となるのは、新技術や才能を抱え
1
る中小規模の新興企業だ。
ただし、グーグルは企業買収によって事業を増やしてきたため、独占禁止
法に抵触する危険をはらんでいる。
【3月5日 WSJ】
・ 米調査会社コムスコアによると、2010年11月-2011年1月における米国ス
マートフォン市場では、アンドロイド搭載携帯電話機のシェアが31.2%を
獲得してトップとなった。一方、前年同期に前年同期に首位だったリサー
チ・イン・モーション(RIM)は5.4ポイント低下して30.4%の2位に転落
している。3位はiOS(アップル)で24.7%、4位がウィンドウズ搭載電話
機で8.0%となっている。同期における米国のスマートフォン利用者の数は
6580万人だった。
【3月7日 ComScore】
・ グ ー グ ル の ベ ン チ ャ ー 投 資 部 門 グ ー グ ル ・ ベ ン チ ャ ー ズ ( Google
Ventures ) は 、 新 興 企 業 の ク ー ル プ ラ ネ ッ ト バ イ オ フ ュ ー ル ズ
(CoolPlanetBioFuels)へ投資した。投資金額は明らかにしていない。クー
ルプラネットバイオフュールズは、ゼネラル・エレクトリック(GE)、NRG
エネルギー、コノコフィリップスが参加する投資グループのエネルギー・テ
クノロジー・ベンチャーズ(Energy Technology Ventures)からも出資を受
けたばかり。
同社が開発するのは、食料に関係しないバイオマスをエネルギーに変換す
る技術。もともと石油精製の過程で重油を分解するために開発された技術
だという。
【3月17日 GigaOM】
(2)アップル
・ 企業の間でiパッドがさらに普及している。アップルは、すでにフォーチ
ュン100企業の80%がiパッドを利用していると発表している。同社はそれ
に伴い、企業向け販促部隊を強化している。
2010年におけるiパッド販売台数は約1400万台だった。今年は、その数が
4370万台に、さらに2003年には6330万台に伸びる見通しだ。その中でも期
待がかかるのが、販売部門での導入だ。たとえば、メルセデス・ベンツでは
各ディーラーにiパッドを配布し、車の展示場所に販売員がいながらにして、
消費者の信用調査や車の詳細情報表示、ローン試算など各種計算ができるよ
うにしている。
【2月28日 USA Today】
・ アップルは、iパッド2の発売を開始した。同製品は初日だけで30万台以
上、週末だけで計100万台以上を売り上げた。アップル・ストアーとベスト・
バイに加え、大規模小売チェーンでも販売できるようにしたのが売り上げ増
に繋がった。iパッドは、アップルが独自に開発したプロセッサ「A5」を
搭載し、画像処理速度が初代iパッドに比べて最大9倍向上している。画面
の大きさは、約10インチと前機種と変わらないが、厚さは3割強減らし9ミ
リ弱となっているほか、重量も約590グラムと1割強軽量化した。ストレー
2
ジ容量は16、32、64ギガバイトの3種類で、価格は499ドルから。
調査会社IDCは、iパッド2が2011年におけるタブレット世界市場の70~
80%を占めると予想している。
【3月2日 Apple、3月21日 WSJ】
・ 独SAPは、3500台のiパッドを、世界各国にいる自社のデベロッパや幹
部に支給し、ビジネス・インテリジェンス(BI)関連のアプリケーションや
クラウド・システムの開発を強化している。開発の中心となるのが、同社の
BIソフト「ビジネスオブジェクツ(BusinessObjects)」。これをタブレット
機種に対応させることによって市場開拓を狙う。
【3 月 9 日 Computer World】
・ ア ップルは、Amazon.comを商標侵害でカリフォルニア州北部の連邦地裁
に提訴した。Amazon.comが使用する「アップストア(Appstore)」が同社
の使用する「アップ・ストア(App Store)」に類似しているというのが理由。
アップルは、その使用停止を求めている。
アップルは2008年7月、「アップ・ストア」という語句を商標登録済み。た
だし、その言葉自体が一般名詞であり概念を示すものであるから商標として
登録するのは不当だとして、これまでにもマイクロソフトほか各社から反対
の声があがっていた。
【3月22日WSJ】
(3)Amazon.com
・ Amazon.comは、米国外では世界で5ヵ所目となるデータ・センターを東
京に開設した。アジア太平洋地域におけるアマゾン・ウェブ・サービシズ
(Amazon Web Services、AWS)の販促戦略拠点にする考えだ。日本企業
をはじめ、日本に支社を置く多国籍企業向けに、日本語対応のクラウド・サ
ービスを従量課金制で提供していく。アジアではシンガポールに続き2ヵ所
目のデータ・センターとなる。
Amazon.comによると、アジア向けAWSの企業顧客として、三井物産やク
ックパッド、オリンパス、スーモ、グミ、ジンガなどが導入を検討してい
る。また、日本市場における販促提携先として、アクセンチュアやビジネ
ス・アーキテクツ、CSK、日立ソリューションズ、野村総研など大手と提
携することが決まっている。
【3月2日 Redmond Channel Partner】
・ オンラインDVDレンタル大手ネットフリックス(Netflix)は、Amazon.com
が提供するクラウド・サービスを採用した。ネットフリックスは2008年8
月、データベースの破損をきっかけに一時的にDVD送付システムが機能停止
に陥ったことがある。その結果、ネットフリックスは、同社ウェブサイトに
関連するすべてのソフトをクラウド環境に移管することを決めていた。ソフ
ト開発のサンドバイン(Sandvine)によると、米国の午後8時から10時ま
での間、ネットフリックスが加入世帯に流す動画の総容量は、米国内の広帯
域通信データ転送総量の約20%を占めており、サービス提供の保障が重要な
課題となっていた。
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ネットフリックスのユーザー数は昨年から倍増の2000万人に達しており、
その80%がAmazon.comのクラウドで処理されることとなる。2014年まで
には全員分についてクラウドへの移行を完了する予定。
【3月21日 Investor’s Business Daily】
(4)マイクロソフト
・ マイクロソフトは、クラウド・コンピューティングをベースにした医療関
連サービスをアテナヘルス(Athenahealth)に提供する。病院や医師、患者
間のコミュニケーション環境の改善が目的だ。提携により、アテナヘルスの
クラウド・サービス商品「アテナクリニカルズ(AthenaClinicals)」や「ア
テナコレクタ(AthenaCollector)」と、マイクロソフトの企業向けヘルス・
インテリジェンス・プラットフォーム「マイクロソフト・アマルガ(Microsoft
Amalga)」との連携が可能となる。これにより、医療関係者間での医療情報
の安全かつ迅速な共有を実現し、各種医療サービスの改善や費用削減を目指
す。
すでに、マサチューセッツ州のステュワード・ヘルス・ケア・システムズ
(Steward Health Care Systems)とテキサス州クック小児科ヘルス・ケア・
システム(Cook Children’s Health Care System)が同サービスの採用を決
めている。
【2月22日 WSJ】
・ マイクロソフトは、携帯電話機メーカーであるノキア(Nokia)との提携
に対して、向こう5年で総額10億ドルを費やす方針だ。ノキアは自社傘下の
携帯電話機向けOSシンビアン(Symbian)からマイクロソフトのウィンド
ウズ・フォン7(Windows Phone 7)に切り替える戦略転換を発表していた。
一方のノキアは、ノキア製スマートフォンに搭載されるウィンドウズ・フォ
ン7のライセンス料金を支払うことに合意した。1台あたりのライセンス料
は明らかにされていない。
【3月9日 Bloomberg】
・ エックスボックス360(Xbox360)に装着し、体の動きでゲームを操作で
きるキネクトの世界販売台数が、発売から約4ヵ月で1000万台を超えた。
この販売記録は、消費者向け電子製品の中でも最高記録となり、ギネス記録
に認定された。
キネクトは、ユーザーの動作をカメラによって認識し、その動きと声をゲ
ーム画面に反映させる。価格は米国で約150ドルとなっている。
【3月10日 Hardwear Insight】
(5)IBM
・ IBMは、電力会社がスマート・メーターを管理するための新しいソフト・
プラットフォーム「インテリジェント・メータリング・ネットワーク・マネ
ジメント(Intelligent Metering Network Management)」を発表した。同プラ
ットフォームは、スマート・メーターからのデータを使って送電網の不具合
が起きている個所を検出したり、故障しそうな機器を事前に探知することが
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できる。また、同プラットフォームを使って、複数のメーカーのスマート・
メーターが互いに通信し、異なる電力会社間でもデータを交換できるように
なるという。
実際、メイン州の電力会社セントラル・メイン・パワー(Central Maine
Power)は、IBMの提携先でスマート・メーター技術を手がけるトリリアン
ト(Trilliant)と協力して、約62万戸の顧客に対するスマート・メーター導
入を進めている。
IBMはそのほか、アイトロン(Itron)やランディス+ギア(Landis+Gyr)、
センサス(Sensus)といった世界最大手のスマート・メーター・メーカー
ほか、トリリアント、シスコシステムズ、ジュピター・ネットワークスと
った通信機器開発大手とも提携している。
【2月28日 GigaOM】
(6)ヒューレット・パッカード(HP)
・ HPは、先に買収したストレージ・アレイ技術を開発する3PARのストレージ
技術「ユーティリティ・ストレージ」を自社のクラウド・コンピューティン
グ・システム「コンバージド・インフラストラクチャ」に統合した。ユーテ
ィリティ・ストレージは、3PARが独自に開発したハードとソフトを組み合
わせ、仮想ストレージ・システムを提供する。アプリケーションごとに容量
割り当てを自由に制御することによって、物理的な容量を超えた場合に仮想
スペースを提供する仕組みだ。
【3月1日CRN】
・ HPは、パーム(Palm)を買収したことで傘下に収めたウェブOS(webOS)
を、2012年から出荷する全パソコンに搭載する方針だ。
・ HPは今後、同社製パソコン購入者に対し、ウェブOSとウィンドウズの選択
肢を与えるとともに、アプリケーション開発業者がウェブOS対応のパソコ
ン向けおよびスマートフォン向けのアプリケーションを開発する環境を整
備していく。
【3月9日 San Jonese Mercury】
・ 仙台に事業所を置いていたHPは、東北大震災と大津波による影響により、
レーザー・プリンターの生産台数が減る可能性を明らかにした。 仙台事業
所が閉鎖したほか、取引先の部品供給業者からレーザー・ジェット・プリン
タのエンジンやトナーなどの部品が入手できない状況となっている。HP製
品の一部は、主要部品が日本の供給業者から納品されていたほか、HPの総
収入のうち3~4%は日本事業から計上されている。HPの関東事業所は大
きな被害を受けなかった。
【3月22日 Reuters】
(7)オラクル
・ オラクルは、利用者が倉庫や販売所から供給網管理ソフトにアクセスできる
ウィンドウズ系モバイル・クライアントアプリケーション「ピープルソフ
ト・モバイル在庫管理(PeopleSoft Mobile Inventory Management)
」を発表
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した。利用者は同ソフトを使うことで、倉庫に行くことなく在庫を確認でき
るほか、倉庫で確認した実際の在庫内容をデータベースに即時反映させるこ
とができる。ただし、製品は最新のウィンドウズ・フォン7(Windows Phone
7)搭載機種では動作しないため、オラクルでは現在、最新機種でも実行可
能なバージョンを開発中。
【3月8日 PC World】
2.端末(PC、携帯機器、家電等)と周辺機器・ソフト
好調なタブレット機器の普及が、かつてデスクトップを市場から追いやった
ラップトップPCを同様に追いつめている
(1)テレビ会議システムを提供するライフサイズ(LifeSize)は、同社のテレ
ビ会議システム「ライフサイズ・ビデオ・センター」向けに携帯情報端末か
ら高精細(HD)動画を視聴できる機能を提供する。
これにより、ユーザーは、外出先からサーバに保存されている動画やテレ
ビ会議のHD映像を視聴できる。視聴にはブラウザを利用する。対応機種は、
iフォンを含むスマートフォンほか、iポッド、iパッドなど。
【2月23日 CRN】
(2)調査会社バーダンティックス(Verdantix)によると、企業向けソフト市
場ので、二酸化炭素排出量管理(炭素会計)およびエネルギー消費管理ソフ
トの需要が好調に伸びている。市場は2014年までに5億5800万ドルに成長
する見込みだ。
ソフトの販売成長の動向は、CRMやERPといった業務用ソフトが普及し始
めたころと似た販売成長を示しているという。今後は、石油およびガス業
界をはじめ、通信サービス業界や電力業界でこれらのソフト導入が加速化
する見通しだ。
【2月25日 ZD Net】
(3)調査会社ガートナーは、2011年の世界パソコン出荷台数予想をこれまで
の前年比14%増から、同10.5%増の3億8780万台に下方修正した。
ガートナーはその理由として、タブレット機器の普及により先進国を中心
ラップトップ機種の売り上げが鈍化する点を挙げている。同社はまた、2012
年のパソコン出荷予想についても、前年比15%増から14%増に下方修正し
た。
【3月3日 WSJ】
(4)携帯電話会社および電話機メーカー向けにデータ転送ソフトを販売する
シンクロノス・テクノロジーズ(Synchronoss Technologies)は、スマート
フォンの販売競争激化によって売り上げを好調に伸ばしている。同社のソフ
トは、利用者のアカウントにアクセスし、利用者の電話番号録やカレンダー、
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メモといった各種データを自動的に転送できる。最近までは、利用者が携帯
電話を買い替える際に利用されていたが、今後は、複数の携帯機器間におけ
るデータやコンテンツの同期化、あるいは複数機器から同一データへのアク
セスなどへの利用が期待されている。シンクロノスの最大口顧客はAT&Tで、
2010年には売り上げの60%をAT&Tが占めた。同社はまた、ベライゾンにも
ソフトを提供している。ベライゾンがiフォンを扱い始めたため、シンクロ
ノスの売り上げが好調に増えるとみられている。
【3 月 7 日 Investor’s Business Daily】
(5)2010年第4四半期(10~12月)の米国内薄型平面テレビ(プラズマ・テ
レビ含む)市場では、ビジオ(Vizio)が290万台販売して23.9%を占め首位
となった。2位は、韓国サムスン(21.5%)
。調査会社iサプライが発表した。
以下、LG(10.4%)
、ソニー(8.8%)、パナソニック(6.6%)、東芝(5.9%)、
三洋(4.4%)、シャープ(2.2%)の順となっている。一方、2010年通年の
販売台数では、サムスンが20.1%のシェアを確保して首位を守った。
【3月14日 iSuppli】
3.消費者向けインターネット/メディア・ビジネス
メディア企業が生き残りをかけて新たなビジネスモデルを必死に構築しよう
としている。特に、新聞社にとってはまさに背水の陣と言えるだろう
(1)米オンライン出版各社は、低価格帯のオンライン広告枠の直接売買に取
り組んでいる。たとえば、NBC Universalは7月、自前の広告枠取引システ
ムであるユニバーサル・オーディエンス・プラットフォーム(Universal
Audience Platform)を発表。また、CBS Interactiveも、広告主が特定の時間
に入札する「リアルタイム入札(real-time bidding=RTB)」技術を活用した
システムを立ち上げている。同技術は広告主に対し、ウェブ閲覧者が使うウ
ェブ・ブラウザーのほか、IPアドレス、場所、サイト閲覧件数といった情報
を提供できる。そのほか、Weather.com、ターナー・ブロードキャスティン
グ・システムズ(Turner Broadcasting Systems)も同様のシステムを導入し
ている。
中間業者を排除することによって、ウェブ出版社は、コストを削減する一
方、消費者データの管理を強化できる。
調査会社フォレスター・リサーチのマイケル・グリーン氏によると、自前
の取り引きに移行する出版社は、広告のCPM(cost per thousand impression
=1000回あたりの料金)を現在の1ドルから最高5ドルまで引き上げるこ
とが可能という。
【2月28日 NYT】
(2)英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)は、オンライン購読者のデータを
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駆使して売り上げを飛躍的に向上させている。これは、出版社が保有する膨
大なデータを利益に結びつけた例として注目を集めている。
実際、FTの2010年売上高のうち、デジタル部門は前年の19%から24%に増
加。新聞媒体としては異例の高水準だという。FTのサイトでは、読者がオ
ンライン購読に登録すると、すべてのクリックを追跡し、読者の興味に沿
ったコンテントに関する情報を集めていく。そして、それをもとにした各
種の情報やサービスを読者に提示する仕組み。
【3 月 6 日 NYT】
(3)米紙ニューヨーク・タイムズは、オンライン・クーポン・サービスを提
供するグルーポン(Groupon)のサービスに酷似するサービス「タイムズ・
リミテッド(Times Limited)」の提供を開始した。これは、地元事業主から
の割引情報(割引券)を登録者ユーザーに電子メールで配信する。後は、消
費者にが使用した割引券の枚数に応じて事業主から斡旋料を徴収する仕組
みだ。
一方、グルーポンに類似したサービスを提供する新興企業も続出している。
たとえば、その中の1社、ライフスタ(Lifesta)は、割引券を購入しながら
使う予定がない消費者に対し、その割引券をオンライン再販する機会を提
供する。同社のシステムは、販売価格の8%と割引券1枚につき99セント
を再販側から徴収する仕組みだ。
【3 月 2 日 PCmagazine、3 月 10 日 NYT】
(4)ワーナー・ブラザーズ(WB)は、ソーシャル・ネットワーキング・サー
ビス(SNS)世界最大手フェイスブック(Facebook)と映画の配信サービ
スで提携した。提携により、フェイスブックの利用者は仮想通貨のフェイス
ブック・クレジットを使って映画賃貸料を支払い、WBが提供する映画コン
テンツを視聴できる。配信作品第一弾は人気シリーズ「バットマン」の「ダ
ーク・ナイト」。48時間の賃貸料は「30クレジット」。約3ドルに相当する。
フェイスブックはその30%を手数料としてワーナーから徴収する。
【3 月 8 日 Reuters】
4.電子商取引と企業向け IT サービス
これまで大企業向けに提供されてきたクラウド・サービスが中小企業へも浸
透しつつある。それによって、新規市場を開拓する新興企業も登場している
(1)クラウド・システムを利用したオンライン・ストレージ・サービスを提
供するBox.netが投資家の間で人気を博している。同社のサービスでは、コ
ンテンツを同社のサーバにアップロードするだけで、あらゆる電子端末から
ネット経由でコンテントにアクセスできる。個人利用者は最大5ギガバイト
(GB)の容量を無料利用できる。一方、企業向けサービスでは、コンテン
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ツ管理機能込みで利用者一人あたり年間15ドルとなっている。同社はまた、
iパッドとiフォン向けアプリケーションを刷新したほか、企業向けサービ
スのセキュリティおよびコンテンツ管理機能を追加している。
同サービスは現在、60万件以上の企業利用口座を獲得し、フォーチュン500
社の73%が利用している。
【2月24日 TMC Net】
(3)コンピュータ・メーカー大手デル(Dell)は、クラウド・コンピューティ
ング・システム「ユニファイド・クリニカル・アーカイビング(Unified Clinical
Archiving=UCA)」を基盤とした医療業界向け新サービスを投入した。新サ
ービスは、安全な情報アクセスの簡素化をはじめ、医者や病院間の情報共有、
画像データのクラウド・ストレージ、事務方にわたる医療サービス全般の効
率化を促進していく。
北米の医療関連画像データは、年間35%以上の割合で増加しており、2014
年までに約260万テラバイトに達するとみられている。このため、データ保
存にクラウド・ストレージを活用することで、保存コストを削減できるだ
けでなく、医療サービスの質を向上できるとみられている。
デルはまた、医療業界向けITサービス大手のエムサイト(mSite)と提携し
て、医療業界システム開発大手メディテック(MEDITECH)のソフト「HCIS
(Health Care Information System )」をパース(PaaS=platform as a
service)として顧客病院に提供していく。
【2月22日 TMC Net】
(4)クラウド型ストレージ・サービスを提供する新興企業ストレージ・ガー
ディアン(Storage Guardian)が注目を集めている。同社のサービスは、大
企業向けのプライベート・クラウド・サービスを中小企業向けに提供する点
が大きな特徴だ。企業向けVAR/MSP通信網を通じてセキュリティの高いサ
ービスを提供することで、ハードの保守管理やサーバへのアプリケーション
搭載といった業務を省き、必要に応じて利用できるクラウド環境を提供でき
る。さらに、プロセッサやハードディスク、通信網の使用状況を追跡でき
る。 同製品は、マイクロソフト製「SQLサーバ2008」や「スモール・ビジ
ネス・サーバ2003/2008」、「エクスチェンジ」、「シェアポイント」、ノベル
製「グループワイズ」に対応する。
【2月25日 SF Chronicle】
(5)オンライン・クーポン配信サービス大手グルーポンの2010年売上が前年
の3300万ドルから7億6000万ドルに急増した。
【2月25日 WSJ】
(6)小売り世界最大手のウォルマート(Wal-Mart)は、顧客が商品をオンラ
インで注文した後、平均で4時間後に最寄りの店舗で受け取れるサービス
「ピック・アップ・トゥデー(Pick Up Today)」を導入した。すでに、シア
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ーズ(Sears)やノードストローム(Nordstrom)などが同様のサービスを
導入しているが、ウォルマートが同様の方式を採用することによって、業界
全体に浸透する可能性が高くなっている。
6月までに全米で開始される予定のウォルマートのサービスでは、オンラ
イン注文するとテキスト・メッセージや電子メールによって手続きの進行
具合を購入者に通達する仕組みだ。
【3月11日 NYT】
5.半導体とハードウェア技術
日本が如何に半導体・エレクトロニクス市場で重要な存在か、皮肉なことで
はあるが今回の大地震によって明らかとなった
(1)東日本太平洋沖大地震および津波の影響によって、NAND型フラッシュメ
モリーとDRAM、マイクロコントローラ、標準ロジック、液晶ディスプレイ
(LCD)パネルおよび LCD部品の価格が上昇した。DRAMエクスチェンジ
の報告によると、NAND型フラッシュメモリーのスポット価格は、3月14
日(月曜)時点ですでに20%上昇し、翌日の火曜日にはさらに3%上昇、
DRAMは月曜日に7%上昇したあと火曜日に0.2%上がった。
DRAMおよびNANDフラッシュの製造大手キングストン・テクノロージは、
「価格上昇の背景に投機的要因がある」ものの、日本以外の国でDRAMメ
ーカーの供給網が混乱する恐れが高まっていると指摘した。
そうしたなか、各社も対応に追われている。たとえば、美浦工場の操業を
停止したテキサス・インスツルメンツは、生産量の60%を別の工場に移管
している。
【3月15日 Reuters】
(2)レノボ(Lenovo)は、スウェーデンのトビー・テクノロジー(Tobii
Technology)が開発した眼球追跡カメラを筐体に搭載した世界初のラップト
ップを開発した。従来のラップトップに比べて厚みが約2倍と大きいが、ト
ビーでは、約2年後には薄型化も可能になると話している。
同ラップトップでは、眼球の動きに応じてコンピュータを操作することが
できる。たとえば、コンピュータ画面で表示ページをスクロールしたり、
ゲームに応用して視線の先にある物体にレーザー光線を当てたりという使
い方が可能だ。
眼球追跡技術は、目に見えない赤外線光線2本を利用者の眼球に照射して、
眼球の「光」と網膜の反射をカメラ2台で追いかける仕組みだ。利用者ご
とに調整が必要となるものの、メガネをかけていても使用できる。
【3月1日 Investor’s Business Daily】
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(3)日立製作所は、米国でハードディスク・ドライブ(HDD)の製造・販売
を手掛ける完全子会社日立グローバル・ストレージ・テクノロジーズ
(HGST)をHDD世界最大手ウエスタン・デジタルに総額約43億ドルの現金
および株式交換で売却する。
【3月7日 WSJ】
(4)新興企業ブリッジラックス(Bridgelux)は、シリコンを発光ダイオード
(LED)に使う画期的な技術を開発した。同社が開発した技術では、8イン
チのシリコン・ウエハーを用い、商業利用可能水準(1ワットあたりの光量
が135ルーメン)に達するシリコン電球を初めて実現させた。商業化に向け
て生産効率を改善する必要があるが、それにはあと2~3年かかる見込み。
ただ、実現すれば、生産コストを75%削減できるという。
【3月11日 Engadget】
6.政府・議会動向、通信その他
米国のハイテク市場を牽引するスマートフォン業界の競争が一段と厳しさを
増している。AT&T と T モバイルの合併が実現すれば通信大手3社三つどもえの
戦いが始まることになる
(1)ウォール・ストリート・ジャーナルは、ベンチャー・キャピタル(VC)
の投資を受けるクリーン・テクノロジー企業の成長潜在性トップ10番付を発
表した。この番付は、ベンチャー業界調査会社ベンチャーソース
(VentureSource)が、VCから投資されたクリーン・テクノロジー業界516
社を調査して選考したもので、消費者向けの再生利用サービスを提供するリ
サイクルバンク(Recyclebank)が首位になった。2位と3位には、太陽電
池技術を開発するサニバ(Suniva)とイーソーラー(eSolar)が、以下、ミ
アソーレ(MiaSole)、オーパワー(Opower)、グレートポイント・エネルギ
ー(GreatPoint Energy)、シーマイクロ(SeaMicro)、ボストン・パワー
(Boston-Power)、ラクシム(Luxm)、サファイア・エネルギー(Sapphire
Energy)となっている。
【3月4日 WSJ】
(2)AT&Tは、ドイツテレコムAG(Deutsche Telekom AG)から、米子会社の
T-molibe USAを390億ドルで買収予定であることを明らかにした。AT&Tは
米国2位、T-mobileは4位の携帯電話会社であり、両者を合わせると1億3000
万人の加入者を抱えることとなる。これは、現在第1位のVerizon Wireless
社の加入者数の1.3倍、第3位のSprint Nextelの2倍に当たる。AT&Tは、
T-Mobileのブランドを廃止すると述べているが、ヨーロッパではドイツテレ
コムAGが引き続き利用すると予想されている。AT&Tは、米アップル社のi
フォンユーザーを中心に音声通話の品質の低さを指摘されており、ネットワ
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ークインフラをてこ入れする方法として、同じ通信方式を採用する携帯電話
会社の買収を選んだといわれている。また、この買収により、オバマ政権が
掲げるブロードバンドアクセス95%達成のため、地方における通信サービス
カバー率の向上も期待されている。
【3月21日 WSJ】
(3)ドイツテレコムAG(Deutsche Telekom AG)は、米子会社のTモバイル
USAを競合社のスプリント・ネクステル(Sprint Nextel)に売却する交渉を
始めた。ドイツテレコムAGは、モバイルUSAとスプリントの合弁会社の過
半数を所有することを希望しているという。このことから、ドイツテレコム
がTモバイルUSAとスプリントを合併させることで、ベライゾン・ワイヤレ
スとAT&Tに対抗しようと考えていることが推測できる。
身売りを持ちかけたのはドイツテレコムの方で、同交渉が合意に達しない
可能性が高いとの見方が強い。
【3月9日 WSJ】
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