﹁ルーラルフェスタ﹂ 。山口県が全国に先駆けてはじ めた、農産物直売所や朝市を国道など路線で結び、広 域で一斉に行う連携イベントである。平成七年に、地 域の女性たちの活動を盛り上げようとはじまった。当 初、県主導でスタートしたフェスタも今は住民主導と なり、今年で二一年目。その一つ﹁ルーラル315・ 山口県阿武町 山口県周南市 「ルーラルフェスタ」 20年 376フェスタ﹂︵周 南市・山口市・阿武 町 で 十 一 月 七、八 日 開 催 ︶ へ 向 か っ た。 国道三一五号と 三七六号沿いの一七 ﹁これ丸ごと活動資金ですよ。地域の備品や共同ト イレの維持費など。人件費はなし。みんなボランティ アです。餅米は荒れていた田んぼを使って、会で作っ ているから儲けが出る。餅米で一町。でも今年は、三 反がイノシシにやられたなあ﹂ 他にも米やカレー、かも鍋なども用意し、二日間で 八〇万円の売り上げを見込む。また、平成二十五年に オープンした中須北営農組合・菓子加工販売所﹁里の はな﹂自慢の酒粕パウンドケーキなども並び、加工所 の時給を上げていきたいと意気込む。みんな笑顔、笑 顔、笑顔。中須の熱気に後ろ髪を引かれつつ、瀬戸内 の と日本海を結ぶ国道三一五号を北上した。 か んと耕作も管理もしてくれていて。だから、見に来て 整備前は荒れていたのですが、一〇年経った今もきち ﹁事業の際、田んぼにならない山際のカーブした土 地を環境保全型でビオトープにしてもらったんです。 田泰久さんはこの現場に通った一人だ。 入っている。今回案内をしてくれた県農村整備課、半 は 平 成 十 七 ∼ 二 十 三 年、 県 営 中 山 間 総 合 整 備 事 業 が 赤に黄色にと、山の木々が紅葉を迎えるなか、島根 県境の大潮地区へ。目指した﹁大潮田舎の店﹂の周辺 ﹁大潮田舎の店﹂︵周南市鹿野大潮地区︶へ オープニングイベントに訪れていた村岡嗣政山 口県知事も飛び入りで餅をつき、女性陣に声か け。棚田清流の会の佐伯会長によると、一俵 分の餅をつくのに、蒸す、つく、まるめるという 作業で、15人の人手がいるとか 箇所が会場だ。国道 沿いには統一のピン ク の 幟 が は た め き、 お客を招いていた。 しゅう な ん とか。こうしたイベントを年に七回こなすという。 の餅をつく。餅だけで二五万円ほどの売り上げになる がメンバーだ。このルーラルフェスタの二日間で四俵 章さんが話す。会は平成 棚田清流の会会長の佐伯伴 十三年に発足。中須北地区四集落、約八〇戸約二百人 ともあき ﹁地域づくりの活動資金を生み出すため、餅つきを するようになったんです﹂ 品である。 手際がいい。棚田清流の会の餅は、好評かつ定番の一 と石臼で餅がつかれ、女性陣がくるくると丸めている。 ﹁棚田清流の会﹂ 。テントの下では、湯気が上がり、杵 中でも多くのテントを占めていたのが、中須北地区の が鼻をつく。十数ほどの地域グループの出店がずらり。 オープニングイベント会場の周南市中須地区総合運 動場へ足を踏み入れた。豚の丸焼きの香ばしいにおい ﹁中須ふれあいフェスタ﹂︵周南市中須地区︶ へ 主催は 「ルーラル315・376フェスタ推進協議会」 。 「周南市中須ふれあいフェスタ」は総合グラウ ンドが会場 忘 れられた大 地 の 物 語 を 求めて (山口県周南市・阿武町) 取材協力・山口県農村整備課 ライター 石井 里津子 39 土地改良 292号 2016.1 ● は励まされて。私の癒やしの場です﹂ 昭和後半から地域づくりに力を入れてきた大潮地区。 現在は七集落、約九〇余りの全戸で結成する﹁大潮の 里をまもる会﹂が活動の中心だ。その核となっている のが﹁大潮田舎の店﹂ 。 平成元年、国道の整備が進み、それを機に無人の百 円市場のテントを設けたのがはじまり。その後、トタ ン作りの有人店舗にしたものの、平成三年の台風で吹 き飛んでしまった。そこで、みんなで材料を出し合い、 土台を打ち建て直した。その後、倉庫を改造して加工 所も建設。平成十四年には、国の事業を活用して現在 の立派な建物を構えることができた。 そして、ほ場の整備を契機に大豆栽培にも取り組み、 大豆加工も手がけるように。朝三時から仕込む﹁せせ らぎ豆腐﹂ ﹁豆腐ババロア﹂は今や地区の看板商品だ。 瀬戸内側の周南市徳山や下松市からも多くの人が国道 を上ってくる。そんななかから﹁大潮ファンクラブ﹂ もできた。その発起人でもある男性は、年間二五〇日 まるやま も徳山から大潮に通い、川縁の竹藪の伐採、大潮のシ ンボル円山の登山道作りなど大潮のために労を惜しま ない。 あ ハード整備をきっかけに、状況を柔軟に受けとめ、 地域づくりを確実に進めてきた大潮。柔らかな空気が 武町へ急いだ。 ぶ ちょう 漂う。そんな居心地の良さを後にし、さらに北へ、阿 菓子など加工品は三〇種にも及ぶ。もはや地域に欠か せない存在だ。そして、平成二十六年七月からはじめ た魚の販売が大人気。阿武町は日本海に面し、魚のお いしい町でもある。朝、取れたての魚を漁港に出向き 取りに行く。国道沿いの地の利で片道三〇∼四〇分。 お客さんも魚の到着を待ち、まるで争奪戦とか。ルー ラルフェスタでも心憎い仕掛けがあった。 ﹁今回、福の里の直売所で買い物をしてくれた人に 抽選券を渡したんですよ。四五八番まで出ました。こ れ、魚セットが五名に当たる福引き。漁協に頼んでセッ トを用意してね。ものすごく盛り上がりました。二日 のりよし 目も五本。他の会場でやってないことをやりたくてね﹂ 良さんは陽気に語る。魚の抽選会の 組合長の市河憲 ほか、メインイベントの餅まきも一日目に二俵、翌日 も二俵で計四俵と大盤振る舞いだ。 ﹁自分たちで作っている餅米だし、そこまで負担は ないですよ。今後は、山口の有名日本酒の酒米もここ で作っているので、入手しづらい酒だけれど、その酒 の原材料を作っている福の里だからこそ、その酒がな んとか手に入る、そんな直売所にできたらいいなあと 思っていますよ﹂ 一次産業が六次産業に発展し、地域の拠点となり、 新たな挑戦の場へ変わるさまが二〇年続くルーラル フェスタから見えてきた。地域は今日も、早朝から女 性たちが活気づいていることだろう。 ※ ﹁福の里直売所﹂の運営主体 ﹁福の里直売所運営協議会﹂ 農事組合法人「福の里」事務所に 隣接する「福の里直売所」 。ここ阿 武町福賀は 5 集落あり、県営ほ場 整備事業第 1 号の地域 (昭和44 ∼ 50年、面積185ha) 。農事組合法人 の誕生は、水源である長沢ため池 の改修がきっかけ。断水のため大 豆転作に地区で取り組み、平成15 年、農事組合法人「福の里」設立。 写真中央男性が市河憲良組合長。 女性部の中野 逸子 部長は右から 2 人目。福の里直売所は、水・土・ 日・祝祭日開店 ﹁福の里ふれあいフェスタ﹂︵阿武町福賀地区︶へ 阿武町福賀地区の農事組合法 最後に立ち寄ったのは、 ︵※︶ 。 人福の里が運営にかかわっている﹁福の里直売所﹂ ● 土地改良 292号 2016.1 40 ﹁一〇年前、ここを作ったとき、直売所がこんなに 活動拠点になるとは思わなかった﹂ 女性部部長の中野逸子さんが言う。平成十八年に建 てた直売所には加工場もあり、おこわやお寿司、焼き : 大潮地区の32haが、平成17 年からの県営中山間総合整 備事業で整備。写真は整備 された山際のビオトープ。 農道の左手にほ場が広がる 周南市大潮地区、 「大潮田 舎の店」の前で。 「大潮の 里をまもる会」会長の石川 光生(みつお)さん(写真 右) 、市川三幸(みつゆき) さんが物腰柔らかく迎えて くれ た。 大 潮 田 舎 の 店 は 週末のみ開店。イベントは ルーラルフェスタ以外に、 6 月にホタル祭り、 7 月は 夏の体験学習、 9 月は彼岸 花祭りで賑わう
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