レフェリーニュース 『Forza R !』04(`04.07発行)

HYOGO
FA
がんばれ
REFEREE
Forza!
NEWS
兵庫県サッカー協会審判委員会
広報部
レフェリー
R
№4
2004.7
将来を考える
兵庫県サッカー協会
委員長
審判委員会
柳澤和也
2001年12月天皇杯準決勝は神戸ウイングスタジアムで行われました。私にとっ
ては国際副審としてのラストゲームです。大きな問題もなくゲームが終了し審判控え室
に戻ろうとしたとき、一人の紳士が温かい笑顔で花束を差し出し「長年にわたり国際副
審ご苦労さん…」と労いのお言葉をかけていただきました。高橋審判委員長です。感激
で言葉も出なかったことを覚えています。その後、恒例の関西在住の1級審判員OBと
現役の皆さんとの忘年会をJR神戸駅周辺で行いました。その席で高橋審判委員長から
次の兵庫県の審判委員長を柳澤にとのお言葉がありました。当時はまだまだ自分の審判
技術の向上等で頭がいっぱいでこのような大役は無理と考えておりました。あれから3
年の歳月が過ぎ兵庫県協会審判委員会のメンバー、関西協会審判委員会強化部員、日本
協会審判委員会フットサル委員として少しずつ審判委員会のことを勉強させていただ
きました。その間、機会があるごとに高橋審判委員長、藤田副委員長と「兵庫県協会審
判委員会を良くする」をテーマに議論もさせていただきました。ここ数年審判関係の動
向はモットラム氏が専任のチーフインストラクターとしての指導体制になり、Jリーグ
はプロのレフリーが生まれ、審判員のレベルに応じたカテゴリー制が導入されました。
また審判員・インストラクターの登録制度も施行されようとしています。このように大
きな変革の時期にさしかかっています。
この時期に今一番必要なことは、兵庫県協会審判委員会の中心である都市委員長、各
種委員長からのご意見を反映すること・反映できる体制であることだと思います。その
ためには兵庫県協会審判委員会の各部間の情報伝達が重要な要素となり、柳澤の仕事は
そのパイプ役と考えています。審判委員会のメンバーはもとより多方面の皆様が色々な
切り口からご意見を頂き、方向性をひとつにし、同じ目的意識で10年、20年先の兵
庫県審判のあり方を考慮に入れた活動が求められていると考えます。皆様も職業を持た
れた上での活動になるわけですが今後ともご指導、ご協力よろしくお願いします。
1
トップレフェリーを目指して!
【第 57 回近畿高等学校サッカー選手権大会
参加報告】
兵庫県サッカー協会
松井健太郎
深山 晃生
山道健一郎
私達 3 人はこのたび奈良県で開催された、近畿高等学校サッカー選手権大会(以下「近畿高校」
という)に参加させていただきました。大会期間は 6 月 26 日から 3 日間ですが、私達平成 17 年
度 1 級候補の研修は、その大会の 2 日間(26 日∼27 日)で行われました。この大会期間、快晴に
なることなく、曇り空が続き、時折雨のふる天候でした。暑さというより、蒸し暑さとの戦いとな
りました。
体力測定について
今回の近畿高校における体力テストは、6 月 26 日の9時から奈良県橿原公苑陸上競技場におい
て実施されました。内容は 12 分間走、200m走、50m走です。但し数時間後に試合があるというこ
とで 12 分間走については 2,800m以上という基準が設けられました。
私達 3 人が平成 17 年度の 1 級候補に推薦していただいた理由の一つに、
「 どんなときでも 12 分
間走で 3,000m以上走ることができる」ということがあります。2,800mという基準を設定されはし
ましたが、私達 3 人は 3,000mを走りました。200m、50mに関しても同じく、力を温存することは
あまり考えず走りました。その結果 200mは 27 秒台、50 mは 6 秒台後半で走りきりました。
初日全体研修について
各会場ごとの反省事項及び、問題シーンを全員で討議
(橿原公苑陸上、御所市民運動公園会場はビデオ撮影実施、ビデオを使っての討議)
<橿原市運動公園多目的グラウンド>
警告の基準について
後方からのタックルに関して以下の 3 点を各自しっかりと整理しておくことが再確認された
○ ボールを奪おうとしたが、その足が相手に接触した。 ※不用意に
○ボールに明らかに届かないのにタックルをした。 ※無謀に
○ボールを奪うために相手もろともタックルをした。 ※過剰な力で
イエローカード、レッドカードも考える
<大淀平畑運動公園>
異議への対応
主審、副審に対しての異議は絶対に無視しない。明らかに周りに聞こえる異議に対しては、イエ
ローカードが必要。これはベンチの役員にも同じことが言える。冷静に対処することが大切。
<御所市民運動公園>
試合中のペナルティーキック時の対処方法
反省事項:
キックが行われたあと、そのボールがゴールポストに跳ね返り、直接キッカーがボ
ールをシュートした。ゴールから外れたためゴールキックで再開した。
2
正解は、キッカーが跳ね返ったボールに触れた地点から相手チームの間接フリーキ
ックで再開 。ルール適用ミスは問題外、ペナルティーキックを行う前にすべてのシチ
ュエーションを頭のなかでイメージすることが大切。
<橿原公苑陸上競技場>
次のレッドカードは防げたのではないか
問題シーン:
コーナーキックからのボールをゴールキーパーが保持した後、相手競技者がゴー
ルキーパーを蹴った。その直後、ゴールキーパーの味方競技者がその相手競技者を
突き飛ばした。両者にレッドカードを示し退場を命じた。
問 題 点:
相手競技者がゴールキーパーを蹴った時、笛を吹くのが遅れた。
適切な処置:
蹴った瞬間に、最も強い笛を吹くことにより、その後の行為が防げたのではない
か。主審の笛で選手の代弁をするように。特にゴールキーパーがやられたときは非
常事態である。
山道健一郎
1 月の予備審査(体力試験・筆記試験)にはじまり、4 月・5 月の 3 試合の選考を経て、近畿高
校へ審判員として呼んでいただきました。次年度 1 級候補という立場で、ひとつの大会に審判員と
して参加するのは今回が初めてでした。
「いつも以上のことを急にやろうとしてもできないから、い
つもやっていることをいつもどおりできること」が大切で、そのために日々の生活、日々の試合が
重要であるということを、よくアドバイスしていただきます。今大会、私自身は「意識は高く持ち、
いいゲームをつくろう」という気持ちで望みました。
大会初日、体力測定を終え、最初は洛北高校対関西学院高等部の主審を割り当てていただきまし
た。その試合がはじまると、私自身「選考」という意識が強くなったためか、細かいことが非常に
気になり、私だけが空回りする結果となってしまいました。警告の基準についてもひとつの課題と
なりました。その警告が本当に必要か、防ぐことのできる警告ではないかということです。夜のミ
ーティングでも警告の基準についてはインスペクターの方からもご指導いただきました。
2 日目は私自身初日の出来が良くなかった感があり、主審の割り当てをいただけるかどうかは非
常に不安でした。しかし、草津東対琴丘の主審を割り当てていただいたときは正直うれしかったで
す。2 日目は初日と比べ、ひとつひとつの判定に自身をもって試合を進められたと思います(まだ
まだ細かいファウル等課題は多い状態ですが)。ただ、試合の中でだんだんエンジンのかかってくる
状態では決して良くない、試合開始時に 100%の状態で望まなければ意味が無いという指摘をいた
だきました。
この大会を通して、同じ目標をもった審判員と接することで、私ももっと強い気持ちを持ち、試
合中や試合の前後のコミュニケーションを大切にしなければならないことを痛感
しました。
最後になりましたが、平成 17 年度 1 級候補に推薦していただき、兵庫県サッカー協会の方々に
は大変感謝しております。今まで以上に、様々な経験をさせていただいております。また、今大会
様々な面で協力・支援してくださった奈良県サッカー協会の方々、指導していただいた関西サッカ
ー協会のインスペクターの方々に感謝いたします。ありがとうございました。
3
女性 2 級審判誕生!
都市協会短信
姫路FA
このたび的崎睦子さんが 2 級に昇級した。女
子 1 級の樽本さん、昨年度 2 級に昇級した森さ
姫路市のNPO法人「スポーツクラブ
エス
んに続く快挙である。7 月 9 日の県審判委員会の
トレラ」が“エストレラスポーツアカデミー
席上、柳澤委員長から 2 級認定証を授与され、
2004”の一環として『サッカーレフリーアカデ
ミー』を開催する。
おさめ
激励された。また育成強化部・ 納 女子担当長か
対象は4・3 級取得を目指す中高校生・大学
らも心得等の話があった。
生・一般、選手の保護者と広い。本紙が出る頃
は第 1 回目(7/16)は終わっているが、第 2 回目
は 9/17、18:00∼レフリングテクニックについて
の講義が行なわれる。場所は姫路・琴丘高等学
校しらさぎ会館。無料。実技については随時行
なう。
連絡先
柳澤委員長より認定証
スポーツクラブ
tel/fax
を受け取る的崎さん。
エストレラ
0792−89−2552
初心を忘れず頑張ります
的崎睦子
平成 16 年 5 月 23 日、武庫川女子大Gで行なわれた実技テスト(大学女子リーグの主審、副審)を
終え、6 月に 2 級昇級を認定して頂きました。最初はただただ嬉しさとほっとした気持ちでいっぱ
いでしたが、日ごとに 2 級の重み・責任等を実感しています。指導者としてチームに割り当てがあ
るからという理由でやり始めた審判ですが、しているうちに“選手に納得できる試合をしてもらい
たい”“より良い審判になりたい”という気持ちが出てきました。
上の級を目指すうちに、兵庫国体のこと、Lリーグの審判がほとんど女性であること等を知り、
また違う目標もできました。2 級に認められたとはいえ、未熟です。学ぶことは多く、課題もたく
さんありますが、少しずつ克服し、まずは 2006 兵庫国体、そしてLリーグ、女子 1 級、最後には
Jリーグの審判!という気持ちでがんばりたいと思います。勝ったチームだけでなく、負けたチー
ムからも「ありがとう」と言ってもらえる審判を目指し、がんばります。
4
推薦図書
『秋天の陽炎』金子達仁
文春文庫
トップレフェリーとは、こんなにも冷静な“眼”を持っているものなのか!これほどま
でに誠実であるのか!驚きとともに大きな感銘をうけて本書を読み終えた。
本書はJ1昇格のかかった大分トリニ―タがモンテディオ山形と闘った 1999 年 11 月
21 日のドキュメントである。主人公は大分、山形というチームであり選手である。しかし、
重要な意味を持つこの一戦を吹いた越山賢一主審について述べられた箇所が私をとらえて
離さなかった。
われわれ審判は仮に非のうちどころのないパーフェクトなレフェリングをしたとして
も、感謝されることは少ない。それどころか、常にと言っていいほど批判のことばを浴び
せかけられる。著者はそれを「サッカーは主観のスポーツだから。」と説明する。選手には
選手の、観客には観客の主観でゲームを見ているから、勝手放題にさまざまな批判が審判
に対してなされるのだと。選手、観客と同様に審判も主観によって試合を捌いている。た
だし競技規則第一条から十七条の上に立った主観で。ここが選手、観客と異なるところだ
ろう。選手は時には違反スレスレ、スキあらば審判を欺いてでも相手選手に勝とうとする。
観客は贔屓チームに有利であれば是、不利な判定は非とする。どんなにすばらしいレフェ
リングをしたとしても勝者と敗者に分かれる限り審判は非難の対象となる。
越山主審の冷静な“眼”に驚嘆したとはじめに書いた。判定への自信とその根拠となる
事柄を理路整然と説明する越山主審にトップレフェリーの“世界”を垣間見た思いがした。
しかしそれ以上に心打たれたのは彼の審判としての良心・誠実さだった。
左足を突然襲ったトラブルと「できることなら極力とりたくなかった。」と言う 4 分のロ
スタイム。だが審判としての良心がそれを許さなかった。この誠実さが結局は越山主審を
更なる窮地に追い込むことになってしまったのだ。選手は試合の持つ意味が重要であれば
あるほど審判にナーバスになる。その目は判定そのものはもちろんだが、審判員の表情や
仕草にも向けられている。越山主審への“誤解”もゲームを余計に困難にした。そして痛
恨の“ブッキングミス”。延長戦に突入してからのレッドカードは出された側のチームにと
って選手が一人減る以上にダメージを喰らう。相手側にとっては千載一遇のチャンスをも
らったような気持ちになるに違いない。それを越山レフェリーは“ブッキングミス”とし
て取り消した。しかも4分以上も試合を止めて。ミスを隠そうとすれば隠せないことはな
かったかもしれない。しかし越山主審は彼の良心に基づいた行動をとったのだ。
「そういう
(ミスを隠そうという)気持ちがまったく芽生えなかったといったら嘘になります。でも、
どれほど不格好で下手くそに思われようとも、私はあの試合をきちんと捌きたかった。悔
いを残したくなかったんです。」
著者はあとがきにおいて「もしたった一人にしか感謝する機会を与えられないのだとし
たら、僕は迷わず越山主審の名前を挙げるだろう。彼の言葉は、サッカーのことをわかっ
たつもりになっていた僕に、まだまだ未知の分野が広がっていることを教えてくれた。彼
との出会いがなければ、僕はいまだに無知の怖さに気づかないままだったかもしれない。」
と謝辞を記している。審判への理解者がまた一人増えたことをうれしく感じた。
日本のトップレフェリーの貴重な“生の声”は草の根レフェリーにも勇気を与えてくれ
る。レフェリーとしてのあるべき姿を泥臭くも、はっきりと示してくれた。この本に出逢
えたことを幸運に思う。
※越山賢一氏は 2002 年度をもって 1 級審判を勇退されました。
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神戸市中央区八幡通 2 丁目1−10
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