「北方ジャーナル」掲載記事

Medical Report
泌尿器科疾患の治療拠点として札幌の手稲区をカバーする医療法人社
団伸孝会 ていね泌尿器科(鈴木伸和理事長)。さる6月1日、同クリニッ
クの分院となる「ていね駅前泌尿器科」
( 砂押研一院長)がJR手稲駅前
にオープンした。近年、増え続けている外来患者のニーズに応え、混
雑緩和を図ると同時に利便性を高めることが大きな狙いだ。同駅南口
に隣接する複合ビル「手稲駅前プラザ南」の医療モール「メディカルスク
エア手稲」で診療を開始したサテライトクリニックでは本院と患者情報
を共有。ドクター同士が連携して治療に万全を期していく体制となっ
ている。アクセス環境が良好な「ていね駅前泌尿器科」を立ち上げた伸
孝会の取り組みをレポートする。
外来部門の混雑緩和を図り
利便性を高めるサテライト
JR手稲駅南口から徒歩1分とい
う好条件で、アクセス環境が抜群な
「手稲駅前プラザ南ビル」。医療法人
社団伸孝会が開設し、6月初日から
診療が始まっているサテライトクリ
ニック「ていね駅前泌尿器科」は、同
ビ ル の 医 療 モ ー ル「 メ デ ィ カ ル ス ク
近年は砂押医師の入職を得て医師3
長 が 勃 起 障 害( E D )治 療 に も 対 応。
本性機能学会評議員である鈴木理事
前立腺肥大症や尿管結石、膀胱炎
といった泌尿器科疾患はもちろん日
言うまでもない。
者にとって大きな朗報となったのは、
時間がかかっていた手稲駅周辺の患
オープンがこれまで本院に通うのに
器 科 」の 開 設。 今 回 の サ テ ラ イ ト の
に大きくなっています。この責任を
を担う当クリニックの役割は相対的
器分野のプライマリケア(初期診療)
にシフトしていく中で、地域で泌尿
検査、手術や入院、透析治療を担う
来のほかCTなどを駆使した高度な
検査がメイン。本院は従来どおり外
「基本的に当院は外来対応と簡単な
本院と「ていね駅前泌尿器科」の連
携はどうか。
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エア手稲」2階にある。
院 長 を 務 め る の は 2009 年 に
「ていね泌尿器科」に入職し、副院長
)だ。
を務めていた若手のホープ砂押研一
医師(
「私が本院に採用されてから6年が
経ちますが、近年は手稲渓仁会病院
などからの紹介が加わるなど、年を
追う毎に患者さんの増加を実感して
いました。この中で鈴木理事長と竹
田孝一院長、私の3人で外来診療に
当たっていたわけですが、スペース
的な限界もあり、どうしても待ち時
間が長くなってしまっていた。高齢
化に伴い年配の患者さんが多くなっ
ている事情のなかでクルマ利用以外
の方々に不便をおかけしている状況
も改善する必要がありました」(砂押
院長)
そんな折りにJR手稲駅前に医療
モールができるという話が持ち込ま
れ、鈴木理事長が今回のサテライト
の開設を決断したというわけだ。
床の有床診療
1997年に鈴木理事長が竹田医
師とタッグを組んでオープンした
「ていね泌尿器科」は
人体制となりマンパワーの充実を
果たすために増え続ける患者さんの
ことになります。この中で重要なの
ム医療の実践です」(砂押院長)
需要や利便性を考えて外来部門を分
事長)
この観点に立って今回、取り組ま
は、患者さんの情報の共有化とチー
患 者 目 線 に よ る「 て い ね 駅 前 泌 尿
散させることにしたのです」(鈴木理
手狭さが課題になっていた。
地での増築が困難なことから施設の
図ったが、診察室が2つしかなく現
患者増に 対応し利便性を高めた
外来専門 「ていね駅前泌尿器科」
患者の情報を共有して
今後もチーム医療を実践
透析治療に当たってきた。
クとして、外来をはじめ手術や入院、
所ながら手稲区唯一の専門クリニッ
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「拠点病院が難度の高い疾患の治療
「ていね駅前泌尿器科」
の院長に就任し意欲を見せる砂押医師
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ていね泌尿器科が J R手稲駅前に
サテライトクリニックをオープン
Medical Report
れたのが両クリニックにおける情報
の オ ン ラ イ ン 化 だ。 以 前、 本 院 に
通 っ て い た 患 者 が「 て い ね 駅 前 泌 尿
器 科 」に 移 っ て も、 本 人 の そ れ ま で
のカルテを診察室のパソコン上で確
認できるようになっている。「ていね
駅 前 泌 尿 器 科 」の 新 患 に つ い て も 同
様に本院でチェックが可能だ。
「チームワークの良さが伸孝会の特
徴だと思います。入職以来、鈴木理
事長と竹田院長に指導していただき
ながら、いつも3人でカルテや診断
画像を確認して治療方針を話し合っ
て き ま し た。 そ れ ぞ れ を 補 い 合 い、
患者さんにとって最善の対応を考え
て き た 自 負 が 私 た ち に は あ り ま す。
2つのクリニックとなったこれから
めるだけではなく、頻尿や尿意切迫
この新薬はアルファーワン遮断薬
と同様に尿道や前立腺部の緊張を緩
です」(鈴木理事長)
に取り組んでおり、症例に応じて標
あります。当院では手術にも積極的
な効果が得られない前立腺肥大症も
「 と は い え、 薬 物 療 法 だ け で は 十 分
れているという。
駅 前 泌 尿 器 科 」で は 超 音 波 検 査 や 内
視鏡検査は可能。膀胱がんや前立腺
がんで手術を受けた場合の定期的な
検診にも対応していく予定だ。当面
の間は午前中のみの診療だが、泌尿
器科関係のかかりつけのクリニック
として気軽に受診できるほか、本院
や他の病院で治療を受けた患者の予
後についてもフォローが期待できそ
うだ。
前立腺肥大症の排尿障害を
改善させる新薬治療を開始
伸孝会として取り組んでいる最近
のトピックについても触れておこう。
そのひとつがこのほど保険適応と
なった治療薬、ホスホジエステラー
することをお勧めします」(鈴木理事
長)
◆
医療法人のトップとして2つのク
リニックを統括する鈴木理事長、て
いね泌尿器科を預かる竹田院長、そ
し て 新 し い サ テ ラ イ ト「 て い ね 駅 前
泌 尿 器 科 」を 任 さ れ た 砂 押 院 長。 こ
ゼ(PDE)5阻害薬による前立腺肥
大症治療の開始である。
中高年男性に多く見られる前立腺
肥大症。その症状はトイレに行って
もなかなか尿が出ないなどの排尿障
害が基本だ。この排尿障害を改善さ
せる治療薬としてよく知られている
の が α 1( ア ル フ ァ ー ワ ン )遮 断 薬
だった。これは尿道や前立腺部の緊
張を緩めて機能的閉塞を改善させる
もので、即効性があるのが特徴だ。
「 こ れ に 対 し て P D E 5 阻 害 薬 は、
もともと勃起障害の治療薬として開
発されたもの。その後、前立腺肥大
症に伴う排尿障害とEDには共通の
発症要素があることが分かり、前立
腺肥大症の治療としてPDE5阻害
薬が応用できないか模索されてきた
経緯があります。そしてようやく我
が国で承認され、保険適応となった
まえ、伸孝会では新たな医療スタッ
フの整備にも乗り出しており、今後
はさらなるパワーアップが期待でき
そうだ。
いわゆる「おしっこの悩み」をはじ
め尿管結石、膀胱がんや前立腺がん、
さらには透析や性感染症まで泌尿器
科関連の疾患は幅広い。この中で身
近な〝かかりつけクリニック〟として
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もそういう姿勢は変わらないと思い
ます」(同)
外 来 対 応 が 中 心 と は い え「 て い ね
感 の 症 状 改 善、 骨 盤 内 血 流 の 改 善、
準的な手技である経尿道的前立腺切
一選択薬となっていくことが期待さ
前立腺の炎症や繊維化の抑制にも有
除術をはじめ先進的な各種の経尿道
のが
〝タダラフィル〟
という名の薬剤
用と言われている。このため今後は
の3名の医師によるタッグこそが伸
年近く地域医療に貢献してきた
内視鏡装置は最新器機を導入
☎ 011-686-6600
孝会の大きな強みと言える。
札幌市手稲区手稲本町1条3丁目3- 1メディカルスクエア手稲2階
的核出術も手がけています。気にな
る方は専門の医療機関へ早めに受診
ていね駅前泌尿器科
〝ていね泌尿器科〟の新たな展開に注
目していきたい。
医療法人社団 伸孝会
分院開設というハードの展開を踏
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外来対応がメインだが泌尿器関係の基本的な検
査も可能だ(写真は超音波検査装置)
患者目線でサテライトの開設を決
断した鈴木理事長
鈴木理事長とタッグを組む「ていね
泌尿器科」の竹田院長
前立腺肥大症の排尿障害に対して第
診察室では本院のカルテも即座に確認できる
通常の使用で尿量が測定出来るト
イレを完備
20 年近くにわたり地域医療に取り組んできた「ていね泌尿器科」
JR 函館本線手稲駅に隣接する手稲駅前プラザ南
「ていね駅前泌尿器科」は同ビル2階の医療モー
ルに入居する