総 論 - 日本実験動物技術者協会

平成17年度
実験動物高度技術者養成研修
修了試験
総
論
試験時間:13時00分∼15時00分
解答は解答用紙の該当欄の○を鉛筆で黒く塗りつぶして下さい。
○をはみ出したり塗りつぶし方が不十分にならないよう注意して下さい。
平成17年
9月23日
(社)日本実験動物協会
総
論
それぞれの設問について、該当するものを選び、解答用紙の該当欄の○を鉛筆で黒
く塗りつぶして下さい。
〔問
題〕
1.我が国における実験動物の使用状況に関して、正しい記述はどれか。
1)実験動物の使用数の半数以上は大学や研究機関の基礎研究に使用され、医薬品
等の安全性試験等に使用されるものは少ない。
2)実験動物の使用数は、1970 年代までは変化が少なかったが、以後、次第に増加
している。
3)実験用に使用されるウサギやブタは、未だに産業家畜からの転用が多い。
4)実験動物を使用数の多い順に並べると、マウス、ラット、モルモット、ウサギ
の順になる。
2.実験動物や動物実験の歴史に関して、正しい記述はどれか。
1)ダーウィンは、
「実験医学序説」を著し、生体に様々な実験処置を加えてその反
応を見ることにより、生理機能を明らかにする方法を体系化した。
2)コッホは、病原微生物であることの条件として「コッホの 3 原則」を提唱し、
動物実験が不可欠であることを示した。
3)ジャクソン研究所のドナルドソンらは、生理学、栄養学、内分泌学、行動学等
の分野でマウスを多用し、アルビノマウスの系統化を進めた。
4)ウィスター研究所のキャッスルやリトルは、遺伝学の研究のために、多数の近
交系ラットを樹立した。
3.実験動物に関する団体に関して、正しい記述はどれか。
1)
(社)日本実験動物学会は、文部科学省の所轄する公益法人で、事業の 1 つとし
て、動物実験施設の査察、認定を行っている。
2)(社)実験動物福祉協会は、環境省の所轄する公益法人で、事業の 1 つとして、
動物実験施設の査察、認定を行っている。
3)
(社)日本実験動物協会は、農林水産省の所轄する公益法人で、事業の 1 つとし
て、実験動物技術師の教育認定を行っている。
4)国際実験動物連合(International Council for Laboratory Animal Science:
ICLAS)は、世界各国の実験動物学会の連合体で、動物実験に関する国際指針を制
定している。
1
4.実験動物や動物実験に関する法規制に関して、正しい記述はどれか。
1)日本では、
「動物の愛護及び管理に関する法律」と、これに基づく「実験動物の
飼養及び保管等に関する基準」が適用される。
2)イギリスやドイツ等欧州各国では、動物福祉法「Animal Welfare Act」に基づ
き、研究機関が委員会を設置し、ガイドラインに準拠した動物実験計画を審査、
許可する方法がとられている。
3)アメリカでは動物(科学的処置)法「Animals(Scientific Procedures) Act」
に基づき動物実験が行われ、動物実験を行う個人の免許、動物実験施設の認可と
査察、実験計画の審査、委員会や指針の制定義務がこの法律に規定されている。
4)動物実験に関する国際条約として「ヘルシンキ宣言」があり、日本もこれを批
准している。
5.平成 17 年に改正された「動物の愛護及び管理に関する法律」において、動物実験
に関わる改正事項は以下のどれか。
1)動物を科学上の利用に供する場合の理念として Russell & Burch の 3Rが示さ
れ、使用数の削減と代替法の検討の配慮が追加された。
2)都道府県知事への動物実験施設の届出が義務づけられた。
3)動物実験を行う機関において、委員会の設置と実験計画の審査が義務づけられ
た。
4)動物実験に関わる事項での改正はされなかった。
6.動物福祉や倫理的な動物実験に関係の深い用語の組み合わせとして、最も適当な
ものはどれか。
1)ヘルシンキ宣言
・
インフォームドコンセント
・
AAALAC
2)SPF
・
well-being
・
演出型の決定
3)アニマルライト
・
ワシントン条約
・
cost-benefit 分析
4)5freedom
・
Russell & Burch の 3R
・
環境エンリッチメント
7.Russell と Burch による演出型の決定に関連する記述で、正しいのはどれか。
1)動物は、両親から受け継いだ遺伝子型を持ち、これに発生環境が影響して演出
型が形成され、さらにその演出型に近隣環境が影響して表現型が形成される。
2)動物実験は、実験処置による演出型の変化つまり反応を読みとるのであり、一
定の演出型を持つ動物に一定の実験処置を加えれば、再現性の高い実験結果が期
待出来る。
3)体重や一般生理値等の数量的な形質は環境因子の影響を受けにくく、環境因子
が変化しても演出型の変化は少ない。
4)均一な演出型が得られたことを確認するために、実験動物の品質検査が行わ
れ、実験目的に関わらず遺伝的モニタリングと微生物モニタリングは必須である。
2
8.各種実験動物の入手や飼育に関連して、留意すべき法規制等の組み合わせとし
て、正しいのはどれか。
1)ネコ→ワシントン条約による輸入届出
2)カニクイザル、アカゲザル、ニホンザル→外来生物規制法による飼育施設の届
出
3)げっ歯類動物→感染症予防法に基づく輸入届出と飼育施設の届出
4)遺伝子組換え動物→カルタヘナ法及び関連省令等に基づく、譲渡等における情
報提供
9.実験動物の馴化に関する記述で、正しいのはどれか。
1)マウスやラットは、馴化を省略して出来るだけ早く使用すべきである。
2)イヌ、ネコ、サル類では、馴化によりヒトと動物間で信頼関係ができる場合が
あるが、これは動物実験を行う上では不適切である。
3)産業動物や野生動物等、実験動物以外の動物を実験用に転用する場合、馴化を
省略して、出来るだけ早く使用すべきである。
4)導入した実験動物を馴化することは、輸送による生理的な影響を除く目的の
他、動物を新たな環境に適応させるために必須である。
10.動物実験の終了時に配慮すべき事項として、正しいのはどれか。
1)安楽死の条件として、動物の苦痛や不安が少ないこと、ゆっくりと時間をかけ
て死に至らしめること、ヒトに対する危険性がないことがあげられる。
2)腫瘍移植実験や発癌実験では、腫瘍の大きさが体重の 30%を超えたり、腫瘍内
部の融解が始まったら、実験を終了して安楽死させるべきである。
3)実験のエンドポイントの判断基準として、全身状態の悪化や著明な体重減少(2
∼3 日で 20%以上の体重減少)等が示されているが、一律に判定することは困難
であり、頻繁な観察により苦痛や死の徴候を見逃さない工夫が重要である。
4)実験動物といえども、出来る限り終生飼育に努めるべきである。
11.ホメオスタシスに関する記述として、正しいのはどれか。
1)生物が発育成長し、新たな個体を産んで増殖し、刺激に反応し環境に適応して
生命を維持しようとすること。
2)細胞が、細胞自身の生命を維持したり、他の細胞の役に立ったりするために、
様々な活動を行うこと。
3)細胞が ATP のエネルギーを利用して、細胞内環境を一定に維持すること。
4)生物が外的及び内的諸変化の中におかれながら、形態的状態、生理的状態を安
定な範囲内に保ち、個体としての生存を維持する性質。
3
12.細胞小器官の名称と機能の組み合わせとして、正しいのはどれか。
細胞小器官
機
能
1)
リボソーム
細胞内に取り込んだ物質を消化する
2)
ゴルジ装置
遺伝情報を基にタンパク質を合成する
3)
ミトコンドリア
細胞のエネルギー源となるアデノシン三リン酸を作る
4)
リソソーム
タンパク質に糖を付加して、分泌のための処理を行う
13.次の記述のうち、正しいのはどれか。
1)細胞外に比べ、細胞内にはカリウムイオン(K+ )が多く、ナトリウムイオン
(Na+ )は少ない。
2)細胞外に比べ、細胞内にはカルシウムイオン(Ca2+ )が多く、カリウムイオン
(K + )は少ない。
3)カリウムチャネル(K チャネル)によって、細胞外から細胞内にカリウムイオ
ン(K +)が取り込まれる。
4)細胞内に比べ、細胞外の電位はマイナス(−)になっている。
14.筋に関する記述として、正しいのはどれか。
1)骨格筋は随意筋である。
2)心筋は随意筋である。
3)平滑筋は心臓の筋で、随意筋である。
4)横紋筋は血管の壁を作る筋肉であり、随意筋である。
15.下記のうち、鎖骨のない動物はどれか。
1)マウス
2)ラット
3)イヌ
4)サル類
16.哺乳類の頚椎数として、正しいのは下記のうちどれか。
1)5 個
2)6 個
3)7 個
4)8 個
4
17.下記の記述のうち、正しいのはどれか。
1)骨髄組織は、若い間は造血を行う黄色骨髄である。
2)加齢とともに、骨髄組織は赤色骨髄という脂肪組織に置き換わる。
3)皮膚は、表面を被う表皮という上皮組織と、真皮と皮下組織という 2 層の結合
組織から出来ている。
4)一般に動物の汗腺は、四肢の足蹠に、毛包と無関係に開口するアポクリン汗腺
と、体表の有毛部に毛包と一致して、皮膚表面に開口するエクリン汗腺の 2 種類
がある。
18.空気と血液との間におけるガス交換のしくみとして、正しいのはどれか。
1)酸素(O 2 )は、肺循環の過程で、肺胞を取り巻く毛細血管を流れる血液中に取
り込まれ、体循環を介して各組織細胞まで運搬される。
2)肺胞内の空気と血液との間におけるガス交換は、濃度勾配に応じて、物質が濃
度の高いところから低いところへ移動する、いわゆる逆浸透現象に基づいて行わ
れる。
3)血液中に取り込まれたO 2 の大部分は白血球中のヘモグロビン(Hb)と結合し、
Hb・O 2の形で運搬される。
4)HbとO 2 の結合の程度は、温度やPo2 の条件が一定であれば、Po 2 に依存して直線的
なO 2 飽和曲線(酸素解離曲線)を描く性質がある。
19.心筋細胞について、正しい記述はどれか。
1)心筋細胞は、規則的に収縮する性質を持っているが、外からの刺激が不可欠で
ある。
2)心筋細胞は、互いにギャップ結合という構造により機能的につながれ、電気的
な収縮刺激を速やかに隣の細胞に伝えて行くので、心筋は不統一に収縮すること
が出来る。
3)心臓が効率よく働くためには、心臓全体がまとまって収縮し、しかも心房の収
縮と心室の収縮が同時に行われなければならない。
4)心臓には、自ら周期的に興奮を発生し、それを心臓全体に伝える刺激伝導系が
備わっている。
5
20.血液凝固と線維素溶解(線溶)について、正しい記述はどれか。
1)傷害を受けた内皮細胞や血小板は、トロンボプラスチンという物質を放出し、
それが引き金となって、血液中のフィブリノーゲンが糸状のフィブリン(線維素)
に変化し、それによって血液の凝固が始まる。
2)内因系の血液凝固では、正の電荷を帯びた異物の表面に第Ⅶ因子が吸着されて
活性化し、これが引き金となって次々と反応が起こり、トロンビンを活性化して
プロトロンビンにする。
3)外因系の血液凝固では、組織液中のトロンボプラスチンと第ⅩⅡ因子の働きで
反応が始まり、グロブリンが生じる。
4)線溶を起こすプラスミノーゲンは、血液中のプラスミンが活性化されたもので
ある。
21.動物と歯の換性について、正しい組み合わせはどれか。
動物名
歯の換性
1)
マウス
一換性歯
2)
ウサギ
不換性歯
3)
ヘビ
多換性歯
4)
サル
互換性歯
22.下記の記述のうち、正しいのはどれか。
1)膵臓の外分泌部は島状に点在するので、膵島と呼ばれる。
2)膵島からは、血糖レベルを下降させるインスリン及び上昇させるグルカゴンが
分泌される。
3)膵臓の外分泌部は空腸に開口している。
4)膵島からは、血糖レベルを下降させるバゾプレッシンと、上昇させるオキシト
シンが分泌される。
23.下記の記述のうち、正しいのはどれか。
1)受精卵の発生が進むと、胚の中に外胚葉、中胚葉、内胚葉、上胚葉という 4 種
類の細胞集団が区別されるようになる。
2)外胚葉からは主に骨格、筋、血管等が生じる。
3)内胚葉からは主に消化管とその付属器が生じる。
4)中胚葉からは主に体表の上皮と神経系が生じる。
6
24.交感神経が興奮した時にみられる主な作用について、正しい組み合わせはどれ
か。
臓
器
作
用
1)
瞳
孔
縮
小
2)
心拍数
減
少
3)
気管支
収
縮
4)
消化管
運動抑制
25.ホルモンとその主な作用の組み合わせとして、正しいのはどれか。
ホルモン
作
用
1)
プロラクチン
胃酸を分泌させる
2)
バソプレシン
乳汁を分泌させる
3)
レニン
血圧を上昇させる
4)
ガストリン
尿量減少
26.下図はヌクレオチド配列とアミノ酸の関係を示したものである。図中の 2 に相
当するアミノ酸は下記のうちどれか。
1)バリン
2)ロイシン
3)スレオニン
4)プロリン
27.染色体に関する記述として、正しいのはどれか。
1)細胞質に存在しており、常染色体と性染色体からなる。
2)マウスの染色体数は 46 本である。
3)ラットの染色体数は 42 本である。
4)雌と雄の違いは常染色体にあり、雌は XX、雄は XY と表記する。
7
28.下図は、アルビノ遺伝子を例に挙げてメンデルの法則を説明したものである。
F1 及び F 2 でわかる適切な遺伝の法則名の組み合わせはどれか。
C /C
親
c/c
有色
1)①優性の法則
②分離の法則
2)①独立の法則
②優性の法則
3)①分離の法則
②独立の法則
4)①優性の法則
②独立の法則
アルビノ
C
c
配偶子
受精
仔 (F 1 )
①
C / c 優劣の法則
C /c
有色
C
有色
c
C
c
配偶子
受精
仔 (F 2 )
C /C
C /c
有色
c/C
②
c/c 分離の法則
アルビノ
29.各近交系の説明として、正しい記述はどれか。
近交系の分類
1)
近交系
近交系の説明
近交系は兄妹交配、あるいは親子交配を 20 代繰り返して
確立される。または、それら以外に近親交配に相当する交
配を行い、計算上 F=0.96 以上になれば近交系とみなされ
る。
2)
リコンビナント
2 種類の近交系を交配し、F 1 を作り、F 1 個体の雌と雄をラ
近交系
ンダムに組み合わせて近交系を作る。出来るだけ多くの近
交系を作出して、近交系群として維持する。
3)
コンジェニック系
興味のある遺伝子が、ある系統で発見されたとして、その
遺伝子を他の近交系の遺伝背景に移した場合に、遺伝子発
現がどうなるかを研究するために作出する。
4)
分離型近交系
隔世ごとの世代で、ある遺伝子座で対立遺伝子が分離する
ような交配を続ける。同じ遺伝背景で、異なる対立遺伝子
の発現を調べるために計画的に作出される。
30.クローズドコロニーの遺伝的背景に関する説明として、正しい記述はどれか。
1)同じ系統名を有するコロニーでも、染色体数が異なる場合がある。
2)同一生産者の同一系統でも、入手時期によって異なることがある。
3)同一生産者の同一系統でも、生産する飼育技術者によって異なることがある。
4)子宮切断術によって系統を SPF 化しても、その前後で遺伝子構成が変化するこ
とはない。
8
31.疾患モデル動物と病態の組み合わせとして、正しいのはどれか。
疾患モデル動物
病
態
1)
dy マウス
ヒトのデュシェンヌ型筋ジストロフィー
2)
mdx マウス
常染色体性筋ジストロフィー
3)
tremor ラット
脳梗塞
4)
NC マウス
アトピー性皮膚炎
32.疾患モデル動物と病態の組み合わせとして、正しいのはどれか。
疾患モデル動物
病
態
1)
NOD マウス
Ⅱ型糖尿病
2)
NZB,NZBWF1 マウス
全身性エリテマトーデス
3)
SHRSP ラット
自発的強直性痙攣
4)
SER ラット
高血圧・脳卒中
33.遺伝的モニタリングの目的に関する下記の記述について、括弧内に該当する用
語の組み合わせとして正しいのはどれか。
「近交系の(A)は、その系統が本来持つ遺伝子型(ゲノム構成)を大きく変化さ
せ、その系統が本来示すべき種々の特性(免疫応答性、自然発がん率、薬物に対す
る反応性等)が失われる。
(B)によって強く規定される(C)は、
(D)とほぼ同義で
あると言ってよく、
(A)によって(D)が損なわれる。遺伝的モニタリングの本来の
目的は、マウス、ラットの(E)が(A)もなく、正しく維持・生産されていること
を(F)に確認し、その(G)を保証することである。」
1)A:遺伝的汚染
B:環境要因
E:クローズドコロニー
2)A:遺伝的汚染
3)A:遺伝的汚染
B:飼育要因
B:育種要因
E:コロニー
D:個体の品質
G:種の遺伝的品質
C:コロニーの特性
F:不定期
D 系統の品質
G:系統の遺伝的品質
C:個体差
F:定期的
D:種の品質
G:高度の商品価値
C:系統の特性
F:定期的
E:近交系
4)A:遺伝的汚染
F:不定期
B:遺伝的要因
E:近交系
C:種の特性
D:コロニーの品質
G:育種繁殖上の品質
34.実験動物の遺伝的モニタリングにおける、標識遺伝子を選択するための条件と
して 4E が提唱されている。exact, efficient, economic に加えて、もう 1 つの E
は下記のうちどれか。
1)evidence
2)effect
3)encourage
4)easy
9
35.性の決定と分化に関する下記の説明のうち、正しいのはどれか。
1)正常な発生過程の胎生期において、sry遺伝子を持つ個体では、その発現が生殖巣原基
器を卵巣へ誘導し、sry遺伝子を持たない個体は精巣へと発育する。
2)哺乳類においては、Y染色体上にあるsryという遺伝子が、未分化の生殖腺を精巣に分化
するように誘導し、その個体が雄になるように方向づけている。
3)妊娠5日齢で既に、精巣原器の中で細胞の配置換えが起こり、ひも状の索構造が現れる
ので、卵巣・精巣原基が形態的に判別可能となる。
4)胎生期にはウォルフ管とミューラー管のいずれかが備わっており、雌ではウォルフ管が
発達し、卵管、子宮、膣等の生殖器へと分化して行く。
36.精子形成に関する下記の説明のうち、正しいのはどれか。
1)性成熟に達した精巣を輪切りにすると、各精細管の断面に、同心円状に支持細胞である
ライディッヒ細胞を中心として、精巣の外側に向かって精子が形成されて行く。
2)精粗細胞から有糸分裂による1回の減数分裂と、第1次精母細胞から第2次精母細胞を経
て、精子細胞までの1回の成熟分裂がある。
3)精細管で作られた精子は精細管腔に集まり、続いて精巣上体へ送られ、精巣上体頭部、
体部、尾部を通過する間に成熟する。
4)精子の頭部は動物種によって特異的な形体はしておらず、頭部の大部分は細胞のミトコ
ンドリアに相当する。
37.卵子形成に関する下記の説明のうち、正しいのはどれか。
1)卵子は胎生期にすでに一定の卵原細胞として保有され、出生時にそれぞれの種に固有の
数を持って生まれてくる。
2)春機発動期には視床下部―卵巣のフィードバック機構が作動して、周期的に発育が起こ
り、卵胞から成熟した卵子は排卵される。
3)卵原細胞の中で卵子形成が全うされ、その多くが卵巣から排卵される。
4)性成熟後の動物においては、卵巣からのFSHとLHが分泌されると、卵子の成熟と排卵が
引き起こされる。
38.性周期に関する下記の説明のうち、正しいのはどれか。
1)完全性周期の特徴は、性周期が卵胞期のみからなることである。
2)不完性周期では、形成された黄体は持続的にプロジェステロンを分泌せず、短時間で機
能を消失する。
3) 不完全性周期動物である、マウス、ラット、モルモット等では通常4∼5日間隔で排卵が
起こる。
4)交尾排卵動物にはイヌ型とウサギ型があり、後者は周期的に発情する。
10
39.性行動に関する説明として、正しいのはどれか。
1)性行動は、視床下部から分泌される性ステロイドホルモンによって調節されている。
2)卵巣摘出は発情を消失させ、性行動が全く見られなくするが、その雌に卵巣ホルモンを
投与すると再び発情し、雄を許容する。
3)ラットの性行動は、排卵日の朝から夕刻まで5∼7時間見られる。
4)ラット及びハムスター類の雄では一般的に、1匹の発情雌に対し1回のみの交尾行動が行
われる。
40.受精に関する下記の説明のうち、正しいのはどれか。
1)排卵直後の卵子は薄い栄養膜細胞に包まれているので、精子はこの細胞の間を通過し、
透明帯の表面に達する。この間に精子の尾部には先体反応が起こる。
2)精子は、先体反応とともに頭部からヒアルロニダーゼ等の酵素を放出し、卵を囲む障害
物を溶かしながら、卵へ侵入する。
3)精子が卵子の細胞質内へ入ると、侵入した部分から表層粒が崩壊し、その内容物が囲卵
腔に放出される。これに伴い、卵管透明帯の性質が変化し、以後の精子の侵入を促進する
ようになる。
4)精子侵入後、第2成熟分裂の中期から後期を経て、終期へと進み、第1極体が放出される。
この時期は後核期と呼ばれる。
41.受精卵と着床に関する説明として、正しいのはどれか。
1)受精卵は、子宮壁に着床するまでは、卵管内及び子宮内を浮遊しながら分裂を繰り返し
発育する。これら受精卵の発生過程は動物種によって特異的である。
2)受精卵であっても母体の子宮にとっては異物とみなされるため、着床の時期には脳下垂
体からEPF(Early Pregnancy Factor)が産生され、受精卵を特異的免疫による拒否反応
から回避させている。
3)着床のパターンはヒト、チンパンジーでは中心着床であるが、ほとんどのげっ歯目では
壁内着床である。
4)免疫グロブリンIgGは分子量が大きいので、胎盤を通過することは出来ないが、分子量
の小さいIgMは胎盤を通じて胎子へ移行することが出来る。
42.分娩に関して、正しい説明はどれか。
1)妊娠期間は動物種によって大きく異なるが、その長さは動物の体躯の大きさと比例す
る。
2)妊娠期間は、マウスは15∼18日、シリアンハムスターは18∼21日、モルモットは28∼34
日、ウサギは60∼70日である。
3)妊娠末期になると母体の副腎髄質からグルココルチコイドが分泌され、これが胎盤に作
用してオキシトシンの分泌を抑制するとともに、プロスタグランジンの生合成も抑制する。
4)オキシトシンに対する感受性が極限に達した状態で、生殖道に対して胎子による拡張刺
激が加わると、神経内分泌反射によって下垂体後葉からオキシトシンが放出され、これに
よって子宮が強く収縮し陣痛が起こる。
11
43.飼料成分の品質管理上、管理基準値の表現で「∼以上」と下限値で表現される
項目はどれか。
1)水分
2)粗タンパク質
3)粗灰分
4)粗繊維
44.下記のうち、熱量素と保全素の両方に含まれるのはどれか。
1)糖質
2)脂質
3)タンパク質
4)ビタミン
45.動物の食性と実験動物の組み合わせとして、正しいのはどれか。
食
性
動
物
1)
雑食性
ネコ
2)
肉食性
スナネズミ
3)
草食性
モルモット
4)
雑食性
イヌ
46.下記のうち、正しい記述はどれか。
1)インスリンはグリコーゲンからグルコースの分解を、アドレナリンは、グルコ
ースからグリコーゲンの合成を促進するように作用している。
2)リノール酸、アラキドン酸は n-6 系列の不飽和脂肪酸である。
3)1kcal は 4.18kj であり、脂質が生体内で発生する熱量は 1g あたり約 4Kcal で
ある。
4)BSE 予防対策で、国の指定する条件に適合した構造を持つ製造工場以外での使
用が禁止となったタンパク質原料は魚粉である。
47.タンパク質に関する説明として、正しいのはどれか。
1)動物の体を構成しているタンパク質は 20 種あまりのアミノ酸から出来ている低
分子化合物である。
2)約 10 種のアミノ酸は動物体内では合成出来ないか、合成量が少ないため飼料か
ら摂取しなければならない。
3)アミノ酸は炭素、水素、酸素、窒素及び燐から出来ている。
4)必須アミノ酸が多く含まれている動物性タンパク質は、植物性タンパク質に比
べ栄養価が高いと言われるが、飼料中タンパク質の栄養価は、必須アミノ酸の含
有量だけでなく、可溶性タンパク質の値によっても異なる。
12
48.下記のうち、必須アミノ酸だけの組み合わせはどれか。
1)アルギニン
・
スレオニン
・
イソロイシン
2)リジン
・
バリン
・
アデニン
3)ロイシン
・
グアニン
・
ヒスチジン
4)シトシン
・
メチオニン
・
フェニルアラニン
49.下記のうち、正しい記述はどれか。
1)糖質は食物や飼料の栄養成分の大部分を占め、一般成分(飼料 7 成分)の値で
言うと、炭水化物、含水炭素、可溶性無窒素物がほぼ該当する。
2)体内に摂取されたタンパク質は、そのほとんどがエネルギー源として消費さ
れ、一部が血糖やグリコーゲン等動物体の成分として蓄積される。
3)グルコースやマンノースは少糖類であり、ラクトースは単糖類に分類される。
4)水に溶けにくいスターチやデキストリンは多糖類と呼んでいる。
50.飼料のコバルト 60 ガンマ線照射滅菌に関する記述として、正しいのはどれか。
1)高圧蒸気滅菌に比べると、栄養素の損耗や嗜好性の変化が多い。
2)どのような形状の飼料でも滅菌することが可能である。
3)コストが低い。
4)完全滅菌には 3∼5KGy 照射が一般的である。
51.下記のうち、正しい記述はどれか。
1)各栄養素由来のカロリー量の飼料中総カロリーに対する割合のことを、カロリ
ー比と言う。
2)ビタミン D はトコフェロールとも言い、α型が最も効力が高い。
3)一般成分の粗繊維は食物繊維と同義である。
4)3KGy は 3Mrad である。
52.下記のうち、正しい記述はどれか。
1)固型飼料の水分は通常 17∼18%であるが、高温・高湿の環境下で保管状態が悪
い場合等は 20%以上となり、カビの発生が起こることがある。
2)精製飼料は 0∼4℃の低温保管が望ましい。
3)粉末飼料は固型飼料より吸湿性が低いため、使用期限は 5∼6 ヵ月と長めに設
定されるべきである。
4)対照群と試験群の飼料摂取量を同一にするための給餌方法を、ペアフィーディ
ングという。
13
53.実験動物に現れる異常所見(病気の徴候)に関して、正しいのはどれか。
1)動作が不活発で、ヒトに対する反応が鈍くなったら病気を疑う必要がある。
2)鼻音や脇腹の動きは、マウスの消化器病を発見するための重要な観察点であ
る。
3)嘔吐は、マウス・ラット・モルモット等のげっ歯類でよく見られる異常であ
る。
4)マウスやラットの被毛は、異常動物を発見するための重要な観察点であるが、
尾は健康状態が悪化しても外観上の変化は不明瞭である。
54.実験動物の病気に関して、正しい記述はどれか。
1)動物に感染する微生物は、全て病原体である。
2)実験動物においては、遺伝的要因により発生する異常個体は排除すべきであ
る。
3)マウス・ラットともに乳腺腫瘍の発生は多く、特に老齢動物に頻発するが、系
統による発生率に違いは見られない。
4)幼若動物は感染症に対する抵抗性が弱いので、症状が顕著に現れ死亡率も高い
ことが多い。
55.実験動物の病気の原因に関して、間違っている記述はどれか。
1)実験動物に病気を引き起こす原因は、遺伝的要因と微生物感染のみである。
2)高血圧症ラットや糖尿病マウス等は、遺伝的な異常に、飼料・環境等の要因が
加わって発現する場合がある。
3)モルモットはビタミン C の体内合成が出来ないため、その欠乏により全身の出
血、発育不良、流産、下痢、死亡等が起こる。
4)アンモニアガス濃度の上昇や湿度異常により、感染症に対する抵抗力が低下す
ることがある。
56.病原体に関して、間違っている記述はどれか。
1)カテゴリーA に含まれる病原体は、人獣共通感染症を引き起こす微生物であ
る。
2)マイコプラズは、細胞壁を持たない細菌である。
3)ウイルスは生きた細胞がないと増殖出来ない。
4)カビ(糸状菌)は核膜を持つ真核生物であり、菌糸のみで増殖する。
57.感染様式及び感染経路に関して、正しい記述はどれか。
1)感染動物と直接接触することにより起こる感染を、直接感染という。
2)直接感染とは、病原体が付着したものやヒトを介して広がる様式である。
3)間接感染を媒介するものとして、糞便、飼料・飲水、ケージ・床敷、昆虫、ヒ
ト、実験器具や動物組織等があげられる。
4)感染経路としては、経口、経鼻と経皮だけが知られている。
14
58.下表はマウスの感染症についてまとめたものである。正しい組み合わせはどれ
か。
病
1)
2)
名
症
マウス肝炎
緑膿菌病
状
病
変
幼弱マウスの下痢、成熟マウスは不顕
まれに肝臓の黄灰
性、ヌードマウスでは消耗病
色巣状壊死
背を丸めた姿勢、削痩、過呼吸、眼や
肺、肝臓、腎臓等に
に、皮膚膿瘍、関節炎、下痢
膿瘍、皮下膿瘍、腸
の出血・潰瘍
3)
ネズミコリネ菌
下痢、急性死
肺の肝変化、中耳炎
平衡障害、結膜炎、皮下膿瘍
中耳炎、腎・肺膿瘍
病
4)
ティザー病
59.動物種ごとの感染症の組み合わせとして、正しいのはどれか。
動物種
1)
2)
3)
4)
モルモット
病
名
唾液腺涙腺炎
症
状
病
変
食べこぼし、頚部浮腫、 唾 液 腺 、 涙 腺 の 炎
赤い鼻汁と涙、結膜炎
症・浮腫・壊死
ハムスター
ウエットテイ
淡黄色水様下痢、肛門周
回腸末端の肥厚と漿
類
ル
囲や尾の汚れ、死亡
膜出血
ウサギ
溶血連鎖球菌
頚部リンパ節腫脹、眼や
頚部リンパ節膿瘍、
病
に、膿性鼻汁、死亡
肺・肝・脾臓に膿瘍
パスツレラ病
くしゃみ、水様性∼膿性
副鼻腔蓄膿、肺の肝
鼻汁、眼やに
変化、中・内耳炎
ラット
60.下表は人獣共通感染症の動物群別重要度分類を示したものである。B に入るの
は下記のうちどれか。
対策を必
動物群
要とする
動物
Ⅰ
霊長類
(ヒトを除く)
感染症の重要性
高い
やや高い
中
やや低い
A
B
C
D
1)エボラ出血熱
2)マールブルグ病
3)B ウイルス病
4)デング熱
15
低い
糞線虫病
ジアルジア病
61.感染症の予防対策に関して、正しい記述はどれか。
1)建物に関しては、ヒトと動物の作業動線が厳守され、クリーンエリアとダーテ
ィーエリアが明確に区別出来ていれば、清潔な器材と汚物の動きが多少交差して
も全く問題ない。
2)導入にあたり、感染動物を導入しないことが大原則である。
3)導入時は検収のみ行い、1 週間ぐらい経過してから検疫検査や微生物モニタリ
ングを実施し、施設の微生物学的な状態に変化がないことを確認する。
4)SPF 動物のみを導入している施設では、微生物モニタリングを行う必要はな
い。
62.検収、検疫に関して、正しい記述はどれか。
1)検疫とは、導入される動物の種類、数等を書類と照合し、誤りがないことを確
認する作業である。
2)検収は、動物の健康状態を観察、検査することにより異常動物を摘発し、施設
内への病原体の侵入を防止することが目的である。
3)マウス・ラット等 SPF 動物には、微生物検査書が添付されているので、書類審
査で飼育室内へ導入することもある。
4)感染がないことを証明する微生物検査書が添付された動物の検収であれば、検
収後に検収室を消毒する必要はない。
63.
微生物モニタリング、感染症診断に関する記述として正しいのはどれか。
1)微生物モニタリングの検査項目は出来るだけ多い方が良い。
2)感染症を診断するためには、臨床症状の観察が大切であり、症状がなければ血
清反応等の検査を実施する必要はない。
3)全ての細菌は人工培地で分離可能であるため、培養検査は病原細菌検査には最
適な検査法である。
4)自家検査においてウイルスを分離することは、技術・設備的に難しいため、血
清学的検査が主流である。
64.免疫に関する記述として、正しいのはどれか。
1)獲得免疫とは、生体が生まれながらに持っている特定の病原体に対する自然抵
抗性のことである。
2)獲得免疫は、能動免疫と受動免疫に分けられ、受動免疫とは、微生物感染や予
防接種を受けることで獲得する免疫である。
3)免疫応答の中心となるのはリンパ球であり、T 細胞と B 細胞に分類され、末梢
血中の T 細胞はリンパ球の約 20%を占める。
4)体内に侵入した異物(抗原)は、まずマクロファージ等の抗原提示細胞に取り
込まれ処理される。
16
65.抗原と抗体に関する記述として、正しいのはどれか。
1)抗体は、抗原刺激により産生され、抗原と特異的に反応する。
2)抗体は、IgG, IgM, IgA, IgD, IgE の 5 つのサブクラスに分類され、感染防御
抗体の大部分は、IgM である。
3)通常、微生物が感染してから 2∼5 時間で血中抗体が検出される。
4)感染事故が起きた動物室において飼育されている動物からは、100%抗体が検
出される。
66.抗原抗体反応の原理と主な検査法の組み合わせとして、正しいのはどれか。
原
理
主な検査法
1)
中和反応
オクタロニー法
2)
沈降反応
ウイダール反応
3)
凝集反応
ディック反応
4)
細胞溶解反応
溶血反応
67.アレルギー反応(過敏症)に関する組み合わせとして、正しいのはどれか。
過敏症の型
反応の種類
1)
Ⅰ型過敏症
ツベルクリン反応
2)
Ⅱ型過敏症
アナフィラキシー反応
3)
Ⅲ型過敏症
免疫複合体病
4)
Ⅳ型過敏症
細胞障害反応
68.滅菌・消毒の水準と消毒薬・滅菌消毒法の組み合わせとして、正しいのはどれ
か。
滅菌・消毒の水準
代表的な消毒薬及び滅菌・消毒法
1)
高水準消毒
クロルヘキシジン
2)
中水準消毒
次亜塩素酸ナトリウム
3)
低水準消毒
グルタラール
4)
滅
菌
煮
沸
69.消毒薬の使用上の注意に関する記載に関して、正しい記述はどれか。
1)複数の消毒薬を組み合わせれば、消毒薬の抗菌スペクトルは考慮する必要はな
い。
2)塩素系消毒薬は、有機物存在下で効果が低下する。
3)対象物に消毒薬を直接噴霧あるいは浸漬することが出来れば、前洗浄は必要な
い。
4)アルコール濃度 10%以上の消毒薬は、第 4 類危険物であるので、消防法に従っ
て保存する必要がある。
17
70.感染症の検査法に関して、正しい組み合わせはどれか。
1)培養検査
―
DHL 寒天培地
―
肺パスツレラ
2)培養検査
―
盲腸内容物
―
肺マイコプラズマ
3)鏡検
―
セロファンテープ法
―
ネズミ盲腸蟯虫
4)抗体検査
―
赤血球凝集抑制反応
―
マウス肝炎ウイルス
71.遺伝子改変マウスの説明として、間違っているのはどれか。
1)トランスジェニックマウスは外来遺伝子を導入し、もともとの遺伝子の機能を
抑制した動物である。
2)ノックアウトマウスは遺伝子操作を加えた ES 細胞由来で、標的遺伝子の機能を
破壊した動物である。
3)ノックインマウスは遺伝子操作を加えた ES 細胞由来で、標的遺伝子を置き換え
た動物である。
4)クローンマウスは 2 匹以上の個体を比較した時に、遺伝的に全く同一な動物で
ある。
72.トランスジェニック動物を作製する際に、外来遺伝子を注入する部位として、
正しいのはどれか。
1)前核期受精卵の細胞質内に注入する。
2)前核期受精卵の雌性または雄性の片方の前核内に注入する。
3)前核期受精卵の雌性・雄性とも両前核内に注入する。
4)前核期受精卵の囲卵腔内に注入する。
73.ES 細胞の説明として、正しいのはどれか。
1)胚盤胞の栄養芽細胞から分離、樹立されたものである。
2)胚盤胞の内部細胞塊から分離、樹立されたものである。
3)胚盤胞の透明体から分離、樹立されたものである。
4)胚盤胞全体の細胞から樹立されたものである。
74.体外受精に供する排卵誘起した未受精卵を採取する部位はどこか。
1)卵巣嚢
2)卵管膨大部
3)卵管峡部
4)子宮
18
75.マウスの胚移植の説明で、間違っているのはどれか。
1)胚の移植を受けるレシピエント雌は、移植に先立って偽妊娠誘起処理をしてお
く必要がある。
2)移植を受けるレシピエント雌は、拒絶を避けるために移植胚の系統と同一系統
でなくてはならない。
3)2 細胞期胚の移植部位は、卵管あるいは子宮のいずれでも良い。
4)移植する胚は左右の卵管・子宮にほぼ同数とする。
76.実験動物の飼育管理について、正しいのはどれか.
1)実験動物の飼育管理と衛生管理にあたっては、作業効率を最優先して実施しな
ければならない。
2)信頼性ある実験データを得るためには、飼育環境因子について十分コントロー
ルされている必要がある。
3)動物の居住空間であるケージは、マウスの場合、習性を考慮してなるべく幅の
狭い物にすると、ラックへの収容数も増加し実験効率も上がる。
4)ケージサイズは、ILAR のガイドラインに示されたサイズを満たさなければ、国
際的に通用しないので、ガイドラインと異なるサイズを採用すべきでない。
77.次の説明のうち、正しいのはどれか.
1)給餌器の基本的構造として、①動物が飼料を食べやすいこと、②飼料が排泄物
で汚れにくいこと、③洗いやすく滅菌や消毒に耐えられることが求められ、内部
が見やすいプラスチック製のものが、これらの条件を満たしている。
2)床敷は動物と直接接する飼育器材である。動物に安らぎを与え健康維持にも役
立つ環境因子である。同時に実験データに影響を与える要因の 1 つでもあるので、
実験によってはコンタミナントの分析をするのが良い。
3)飼育架台には、清浄空気を棚の各段に一定の方向に流しつづけるラミナーフロ
ーラックや、ケージごとに給排気出来るラック等もある。特にラック内を陽圧式
にした飼育装置は感染実験施設には必須の設備である。
4)日常の飼育管理は、動物の健康と福祉だけでなく実験の成否をになう重要な作
業である。動物の観察は飼育者に任せ、実験者による観察は不要である。
19
78.次の説明のうち、正しいのはどれか.
1)動物施設の衛生管理に消毒と滅菌は重要である。消毒とは、病原微生物の病原
性を物理的、化学的手段によって無くすか、微生物量を少なくして感染の機会を減
少させることを言う。十分な消毒は、微生物を洗い流すことによって、消毒に限り
なく近づく。
2)エチレンオキシドガスは、高熱に耐えられない物の滅菌に用いられてきたが、
発がん性等人体に対して有害な特定化学物質であるので、誤操作が起こらないよ
うな管理と、年 1 回の作業環境測定が必要である。
3)滅菌済みの器材は、清浄区域内に保管することによって害虫やカビの発生を防
ぐことが出来るので、滅菌物には滅菌日を記入して「後入れ先だし」を励行する。
4)消毒液の効果は、濃度、接触時間、有機物の存在、温度、保存期間により影響
を受けるが、日常的に利用される消毒液はほとんどの病原性微生物に効果を示す。
79.次の説明のうち、正しいのはどれか.
1)ホルマリン燻蒸は、動物施設の竣工時や感染症の発生時に、あるいは定期的に
用いられている。殺菌作用は強いが皮膚、粘膜に対する刺激が強いので、燻蒸後
1 晩おいたら出来るだけ早く換気を行い、ガスを施設外に放出する。
2)オートクレーブ、EOG 滅菌器等の装置は、機械部分の点検、整備を定期的に実
施するとともに、正しく滅菌が行われているかの性能検査も欠かせない。日常作
業では、ケミカルインジケーターやバイオロジカルインジケーターで滅菌の成否
を判定出来る。
3)バリア施設で生産された動物を受け入れる際は、到着した動物を確認し、受け
入れの際の検査が行われていれば、動物を一定期間隔離して行う検疫は必要ない
が、サル類は人獣共通感染症を保有している危険性が高いので、WHO は 9 週間の
検疫を勧告している。
4)マウス・ラットは新たな環境に適応させるため、十分な観察を行うとともに頻
繁に声をかけ手厚く扱い、馴化によりヒトと動物の間に信頼関係を築くことが可
能で、実験処置に伴う動物の苦痛や不安を和らげることも出来る。
80.下記の説明のうち、正しいのはどれか
1)フェノタイピングとは、Russell と Burch が提唱したフェノタイプを遺伝子組
換え動物に用いる時に使う用語である。
2)動物実験では、実験処置による Russell と Burch が提唱したジェノタイプの変
化を読み取る。
3)フェノタイピングとは、実験処置された動物の症状を識別する時に使われる。
4)フェノタイピングという用語は、Russell と Burch が提唱したジェノタイプを
明らかにすることに近い。
20
81.次の説明のうち、正しいのはどれか.
1)人道的エンドポイントの概念は苦痛軽減の方法とは位置づけられていない。
2)動物の保定や動物を実験器具に慣れさせる訓練は、苦痛軽減の一環とはならな
い。
3)人道的エンドポイントの考え方では、動物の示す初期の臨床症状をとらえ、安
楽死するように求めている。
4)人道的エンドポイントとは、動物の死をもって実験終了するのではなく、動物
の苦痛度で実験終了を判断する考え方である。
82.次の説明のうち、正しいのはどれか.
1)動物実験においては、どんな場合にも苦痛軽減のために麻酔、鎮痛処置、鎮静
処置を施すことは必須のことである。
2)安楽死とは、
「動物の愛護及び管理に関する法律」に述べられているように、化
学的、物理的方法によって、出来る限り処分動物に苦痛を与えない方法を用いて、
当該動物を意識喪失状態にし、心肺機能を非可逆的に停止させる方法をいう。
3)無菌動物、ノトバイオート動物の飼育装置であるビニールアイソレータの動物
や、器材の搬入搬出経路となる円筒形部品をパスボックスと言う。
4)病原体を使用する施設では、動物飼育は陰圧アイソレータや動物飼育安全キャ
ビネットで行われる。飼育管理作業にあたっては、定められた着衣と保護具着用
を厳守し、動物室への出入りは人数、回数とも制限する。
83.下記の説明のうち、正しいのはどれか。
1)アイソレータは、無菌動物やノトバイオートを飼育するために使用され、チャ
ンバー内を陽圧に保つことにより微生物の侵入を防いでいる。
2)バリア方式の動物施設は、動物の環境を一定にする目的で運用され、動線、差
圧がきちんと管理されていなければならない。
3)GLP適用試験では試験データの信頼性を保証するため、バリアシステムの動物
施設でSPF動物を飼育することが義務づけられている。
4)コンベンショナル方式の動物施設は、感染防御能が低いので、SPF動物よりコン
ベンショナル動物のほうが飼育に適している。
84.下記の説明のうち、正しいのはどれか。
1)P2Aの飼育室では、室内に安全キャビネットと高圧蒸気滅菌器を備えなければな
らない。
2)バイオセーフティにかかわる指針等では、バイオセーフティレベルをP1からP4
の4段階に分けている。
3)バイオセーフティの原則として、取り扱う遺伝子ごとに「封じ込め」と「バイ
オセーフティレベルの分類」がある。
4)P1Aの飼育室では、室の入口に「組換え動物飼育中」の表示をしなければならな
い。
21
85.下記の説明のうち、正しいのはどれか。
1)日常の飼育管理として、正しい動線管理と飼育機器類の操作が行われていれば
感染症の侵入は防げるので、飼育技術者による動物の観察は、日常業務としては
必要度が低い。
2)感染実験動物室は、実験する研究者への感染と、周囲の環境への汚染漏出を防
ぐ設備を備えており、飼育技術者は実験しないので安全である。
3)感染動物実験では、動物の飼育に伴う危険を避けるために、空気の流れを制御
する各種の飼育装置が考案されている。
4)動物施設の動線は、施設の利用者が作業効率向上のため適宜変更して運用する
のが良い。
86.下記の説明のうち、正しいのはどれか。
1)遺伝子組換え動物の飼育施設では、動物の逃亡防止のため、扉に鍵をかけてお
くことが法律で義務づけられている。
2)有害性のある物質を取り扱う施設では、陰圧方式のラックを使用し、廃棄物の
処理等設備面と管理面で障害を予防しなければならない。
3)RIを用いる施設では、「労働安全衛生法」に放射線の封じ込め汚染防止等細か
い規定が定められている。
4)放射線を取り扱う動物施設では、汚染検査室を設け、定期的な微生物学的モニ
タリングをすることが必要である。
87.下記の説明のうち、正しいのはどれか。
1)環境要因は、単一要因でなく多くは複合した状態で作用するが、実験動物の飼
育環境では、影響を特定するため単一状態で考える必要がある。
2)動物施設の運営では、実験動物の環境と健康のみでなく、作業者の安全と健康
及び施設周辺の環境にも配慮することが必要である。
3)環境条件の基準値を一定にコントロール出来れば動物の反応は一定する。
4)実験動物を取り巻く環境としての飼育室内環境は、ミクロ環境と呼ばれ動物の
発育や生理機能に影響がある。
88.下記の説明のうち、正しいのはどれか。
1)GLP試験では、水・飼料・床敷の微生物や有害汚染物質の分析と頻度は、法令に
よりSOPに定めなければならない項目である。
2)気流の方向や風速は、温湿度と複合のもとで体熱放散と関係があり、風速が増
加すると摂餌量が減少する。
3)バリア施設では静圧差をつけ汚染空気の侵入を防いでいる。感染動物室やRI施
設でも、室内を陽圧にして汚染の拡散防止を行う。
4)動線の交差から、物理化学的または微生物学的汚染が起こることがあるので、
作業動線、気流等を考慮した部屋配置は必要となる。
22
89.下記の説明のうち、正しいのはどれか。
1)空中細菌測定には、一般的に落下法とエアサンプラー法が用いられ、環境モニ
タリングとして定期的に実施し記録することは、清浄環境の保証の点で意義がある。
2)ミクロ環境については、ラット・マウスでは温度20∼26℃、湿度40∼60%という
環境条件の基準値が示されている。
3)飼育室の温度は、動物の生理的変動と薬物や微生物の持つ作用特性に影響を与
えることが知られており、その基準値は23℃である。
4)自動給水配管は、飲水の水質を一定に保ち、配管内の細菌増殖を防止するため
に、数日毎に配管内をフラッシングすると良い。
90.下記の説明のうち、正しいのはどれか。
1)飼育室のアンモニア濃度の測定には、一般的にエアサンプラー法が用いられ、
基準値は50ppm以下である。
2)動物種あるいは飼育方式により、アンモニア濃度を指標にして換気回数を変化
させると、省エネルギー効果が図れる。
3)飼育室のアンモニア濃度は、温湿度・換気回数一定の環境下では、収容動物数、
ケージ交換後の日数、ケージの使用方法により定期的に変化する。
4)ケージ内環境は、ミクロ環境とも言い、温度、湿度、アンモニア等のガス濃度、
塵埃等の粒子濃度はマクロ環境より低値を示している。
91.下記の説明のうち、正しいのはどれか。
1)ケージ内動物数は、動物のケージ内環境改善の目的だけでなく、動物福祉の観
点からも考慮し、動物に必要なスペースを確保すべきである。
2)休息板、止まり木、トンネル、営巣材料等動物特有の姿勢や行動を発揮させ、
動物の福祉向上を図るものを社会的エンリッチメントと言う。
3)同種動物間の体の接触によるコミュニケーション、視覚、聴覚、嗅覚によるコ
ミュニケーションを図るものを精神的エンリッチメントと言う。
4)通称ILARのガイドとは米国の「実験動物保護法」を指し、実験動物の飼育管理
と実験について述べられ、国際的に広く参考にされている。
92.下記の説明のうち、正しいのはどれか。
1)ホルマリンの使用については作業者の安全を考慮し、一定時間作用後は直ちに
屋外へ排出するのが良い。
2)日常の管理で使用する消毒薬は、病原微生物に対しての有効性を重視して選択
する。
3)動物施設の消毒に用いられるホルマリンには、強い殺菌効果が見られるので、
常に第1選択殺菌剤として選択すべきである。
4)消毒薬が殺菌効果を示すには、微生物との適切な接触時間が必要であり、必ず
しも速効的ではない。殺菌のための時間は、微生物の抵抗性と消毒薬の種類によ
り異なるが、一般的に3分以上必要とされている。
23
93.下記の説明のうち、正しいのはどれか。
1)検収・検疫の目的は、動物の健康の確認、施設に存在していない微生物の侵入
防止、人獣共通感染症からの安全確保である。
2)検疫期間は、検査期間が1つの目安になるが、多くは2週間以内である。
3)サル類は人獣共通感染症を持つので、世界保健機構(WHO)では90日以上の検疫
期間を勧告している。
4)バリア施設への物品搬入は、全て滅菌または消毒して行い、常時清浄区域内に
多量にストックしておくと安心である。
94.ラットの観察でリングテールが見られた場合、どの様な対策を講じるのが適切
か。
1)飼育室の湿度を確認し、55%になるように設定し飼育ケージを金網ケージから
床敷入りプラスチックケージに交換する。
2)飼育室の温度異常が考えられるので、室温を確認し20℃になるように設定しな
おす。
3)同じ飼育ケージ内の動物による喧嘩が原因と考えられるので、グループ飼育か
ら個別飼育に切り替える。
4)感染症が疑われるので、この個体を剖検するとともに微生物検査を実施する。
95.バリア方式で飼育すべき動物は、下記のうちどれか。
1)ノトバイオート
2)SPF動物
3)無菌動物
4)コンベンショナル動物
96.エチレンオキシド(EO)に関する説明として、正しいのはどれか。
1)EOは「特定化学物質等障害予防規則(特化則)」の特定第4類物質、特別管理物
質として規制されている。
2)特化則に定める特定第4類物質とは、慢性障害またはがん等の遅発性障害を発生
する恐れのある物質である。
3)特化則に定める特別管理物質とは、作業現場に有害性の掲示が義務づけられる
とともに、作業従事者の記録や、健康診断の記録を30年間保存することが定めら
れている物質である。
4)EO取り扱い作業場における作業環境測定を、1カ月に1回実施する必要があり、
0.1ppm の管理濃度を上回っている場合には、作業環境の改善を行わなければなら
ない。
24
97.動物実験施設における環境条件の基準値として、正しいのはどれか。
1)気
圧:SPFバリア区域では、周辺廊下よりも静圧差で150Pa高くする。
2)照
明:床上40∼85cmで150∼300ルックス。
3)塵
埃:動物を飼育していないバリア区域でクラス1,000。
4)気流速度:3∼8cm/秒。
98.遺伝子組換え動物の飼育に関して、正しい説明はどれか。
1)遺伝子組換え動物は「遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性
の確保に関する法律」により、環境中への拡散防止(逃亡防止)が義務づけられ
ている。
2)遺伝子組換え動物を飼育している飼育室の入口には「組換え動物等飼育中」と
表示しなければならないが、組換え細胞やウイルスベクターなどを接種された動
物はこの規則から除外される。
3)遺伝子組換え動物の飼育室(実験室)の基準として、P3Aでは、飼育室の窓は昆
虫等の侵入を防ぐ構造、通常の動物飼育室と同等の設計、設備、当該動物種の習
性に応じた逃亡防止設備、機器または器具の設置等が定められている。
4)遺伝子組換え動物の飼育室(実験室)の基準として、P1Aでは、エアロゾルが生
じる操作を行う場合は、安全キャビネットを設置し建物内に高圧蒸気滅菌器を設
置することが定められている。
99.下記の説明のうち、正しいのはどれか。
1)動物アレルギーの原因となるアレルゲンは、飼育室の塵埃に含まれ、実験動物
に関わる人の 11∼30%に症状が見られる。げっ歯類の尿や、上皮中のグロブリン
やその他のタンパク質が重要なアレルゲンとなっている。
2)バリア飼育施設は、オープン飼育施設と異なり様々の制約を備えた規則のもと
に管理されている。規則の遵守状況によって、その施設が SPF 施設として維持出
来るか否かが決定される。
3)SPF 動物の輸送は、フィルターつきの輸送箱やアイソレータに動物を収容して
行われる。フィルターは動物の逃亡を防止するためと輸送箱内の温度上昇を防ぐ
ために金網が用いられている。
4)飼育室に持ち込む器具、機材は、病原体を対象として消毒又は滅菌操作を加え
る。統御の対象は全ての菌であり、搬入に際してはきちんとした殺菌操作が求め
られる。
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100.下記の説明のうち、正しいのはどれか。
1)飼料をオートクレーブ滅菌すると、熱によりビタミン類やアミノ酸類の破壊や
飼料の硬化等の問題があるので、不必要な高温や長時間の滅菌をしないようにす
る。滅菌の影響の少ない方法として、エチレンオキシドガス滅菌が用いられてい
る。
2)飼育室のドアは、耐水性、耐薬性の密閉方式とする。開閉は室内を陽圧とする
部屋では外開き、陰圧とする時は内開きとすると開閉が容易である。
3)実験動物施設の空気調和機は、飼育室の温度湿度・換気量・気圧・気流及び空
気の清浄度を適切に保つことを目的としている。空調系を通して病原微生物持ち
込まれないように、一般の空調機では、一般的に紫外線殺菌灯により殺菌を行っ
ている。
4)施設の運営に当たっては、動物福祉を考慮した動物に対する必要条件を満たす
だけでなく、実験者、飼育技術者への安全と健康、作業のしやすさに十分配慮す
ることと、施設周辺の環境への配慮が重要である。
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