1級技術師資格認定試験・総論(PDFファイル)

平成17年度
一級実験動物技術師認定試験
(一
総
般)
論(問
題)
試験時間:10時00分~12時00分
解答は解答用紙の該当欄の○を鉛筆で黒く塗りつぶして下さい。
○をはみ出したり塗りつぶし方が不十分にならないよう注意して下さい。
平成17年11月27日
(社)日本実験動物協会
総
論
(問
題)
それぞれの設問について、該当するものを選び、解答用紙の該当欄の○を鉛筆で黒く塗り
つぶして下さい。
〔問
題〕
1.3R が提唱された著書は、下記のうちどれか。
1)The Principles of Experimental Animal Technique
2)The Experimental Technique of Humane Principles
3)The Principles of Humane Experimental Technique
4)The Humane Techniques of Experimental Principles
2.W. M. S. Russell の専門分野は、下記のうちどれか。
1)微生物学
2)動物学
3)哲学
4)心理学
3.実験動物の well-being とは何か。
1)実験を優先した環境の改善
2)動物実験施設の管理体制、設備、動物福祉への配慮
3)実験動物の人道的な取り扱い
4)できる限り平穏に過ごせるような状態
4.下記のうち、医学・生命科学研究の健全な発展のために動物実験を擁護し、実験動物
の人道的な取り扱いや動物実験の適正な実施に向けた改善、普及活動を行っている団体
はどれか。
1)SHAC
2)PETA
3)JAVA
4)RDS
5.下記の法律ならびにガイドラインが定められた年代として、正しいのはどれか。
1)Cruelty to Animals Act (英国):1966
2)Animals(Scientific Procedures)Act(英国):1876
3)Guide for the Care and Use of Laboratory Animals, 7 ed, (米国):1996
4)Animal Welfare Act (米国):1986
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6.安楽死について、正しい記述はどれか。
1)個体の死を実験のエンドポイントとすることが望ましい。
2)安楽死の判断は、実験継続の必要性と動物の苦痛を考慮して、研究者自身が自己の
責任において判断しなければならない。
3)安楽死は、「動物の処分方法に関する法律」に定める手順に従って行わなければな
らない。
4)実験動物は実験に伴い病死する場合がほとんどであり、安楽死で生涯を閉じること
は稀である。
7.遺伝子組換え動物の扱いについて定められた法律の正式な名称は、下記のうちどれか。
1)遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律
2)遺伝子組換え生物等の利用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律
3)遺伝子組換え生物等の使用等の規制による動物の多様性の確保に関する法律
4)遺伝子組換え動物等の利用等の規制による動物の多様性の確保に関する法律
8.動物の輸入に関して、正しい記述はどれか。
1)ネコでは狂犬病、レプトスピラが検疫の対象となる。
2)サルでは狂犬病が検疫の対象となる。
3)マウスやラットの検疫制度は国により異なるが、通関時や受け入れ施設において、
獣医師による健康証明書(health certificate)の添付を求められることが多い。
4)サル類の航空機輸送は、国際航空輸送協会(IATA)の規定により禁止されている。
9.実験動物以外の動物を実験のために入手する際の留意点として、正しいのはどれか。
1)イヌは狂犬病予防法に基づく予防接種や、市町村への登録が必要である。
2)野生由来のニホンザルは、自然保護法に基づく飼養許可が必要である。
3)家畜では家畜伝染病予防法に基づく予防接種や、都道府県を越える際の移動制限が
ある。
4)外国産のサル類では、ラムサール条約に基づく輸入証明書を確認する必要がある。
10.動物実験の倫理的カテゴリーを提示している米国の団体は、下記のうちどれか。
1)SCAW
2)ILAR
3)IACUC
4)UFAW
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11.動物の愛護及び管理に関する法律 2 条(基本原則)の条文として、正しいのはどれ
か。
1)動物が命あるものであることにかんがみ、万人は、動物をみだりに殺し、傷つけ、
又は苦しめることのないようにするのみでなく、人と動物の共生に配慮しつつ、その
習性を考慮して適正に取り扱うようにしなければならない。
2)動物が命あるものであることにかんがみ、何人も、動物をみだりに殺し、傷つけ、
又は苦しめることのないようにするのみでなく、自然と動物の共生に配慮しつつ、そ
の習性を考慮して適正に取り扱うようにしなければならない。
3)動物が命あるものであることにかんがみ、何人も、動物をみだりに殺し、傷つけ、
又は苦しめることのないようにするのみでなく、人と動物の共生に配慮しつつ、その
習性を考慮して適正に取り扱うようにしなければならない。
4)動物が命あるものであることにかんがみ、何人も、動物を殺し、傷つけ、又は苦し
めることのないようにするのみでなく、人と動物の共生に配慮しつつ、その習性を考
慮して適正に取り扱うようにしなければならない。
12.細胞の直径は、一般的に下記のうちどれか。
1)0.1~0.3μmくらいである。
2)1.0~3.0μmくらいである。
3)0.5~3.0μmくらいである。
4)5~30μmくらいである。
13.細胞におけるタンパク質の合成と分泌について、正しい記述はどれか。
1)遺伝子の情報は、タンパク質の構成単位である塩基の配列として翻訳され、そのタ
ンパク質が細胞の活動を制御する。
2)核の中のRNAが遺伝子の本体である。
3)遺伝子の情報はメッセンジャーRNA(tRNA)に転写され、核の中でtRNAの一部の塩
基が除去された後、tRNAは細胞質に送られる。
4)細胞質のリボソームでは、mRNAの塩基配列に基づいて、アミノ酸を順次結合させ、
タンパク質が合成される。
14.細胞分裂について、正しい記述はどれか。
1)有糸分裂の際には、核膜は消えて、細胞質の中に含まれているDNAとヒストンが集
まって染色体を作る。
2)有糸分裂の前に、DNAが複製され染色体の数は4倍となる。
3)精子と卵子(配偶子)は、それぞれ親と同じ数の染色体を持っている。
4)精子や卵子を作るためには、染色体を半分にする減数分裂が行われる。
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15.神経組織について、正しい記述はどれか。
1)ニューロンは、木のように枝分かれした多数の軸索突起と、遠くの標的まで伸びる
1本の長い樹状突起を持つ。
2)軸索を伝わる信号の本体は、細胞膜の興奮、すなわち局所的な電気の流れである。
3)ニューロンも含めて細胞は、細胞の中にナトリウムイオン(Na + )を多く含み、ま
たマイナスの電荷を持つ。
4)細胞外液は、カリウムイオン(K + )を多く含んでいる。
16.骨・軟骨の形状と構造について、正しい記述はどれか。
1)骨を作る骨組織は、骨の表層では隙間の多い海綿質になっており、内部では密で強
固な緻密質になっている。
2)関節面や骨端の成長線の部分は硬骨組織からなる。硬骨組織は軟骨細胞とその間を
埋める軟骨基質からなる。
3)関節軟骨は終生残るが、骨端軟骨は成長期の終わりとともに消失し、その後に骨端
線という緻密質に似た構造を示す部分を残す。
4)髄腔に含まれる骨髄組織は、若い間は造血を行う黄色骨髄であるが、加齢とともに
赤色骨髄という脂肪組織に置き換わる。
17.筋肉の種類と機能について、正しい記述はどれか。
1)骨格筋は、弛緩することによって骨と骨を接近(運動)させる。
2)骨格筋を支配する運動神経の軸索は、目標の筋の中に入ると枝分かれして、その終
末部が筋線維の中央付近に付着し、シナプスを形成する。
3)神経の刺激がシナプスに伝わってくると、シナプス小胞に蓄えられたコリンエステ
ラーゼが、神経筋接合部のすきまの中に放出される。
4)筋の収縮に必要なエネルギーは、筋線維の細胞質にあるグルコース分解によって得
られる。
18.汗腺の発達について、正しい記述はどれか。
1)ウマはあまり汗をかかない。
2)イヌは汗腺がよく発達している。
3)マウス、ラットは体部に唾液を塗りつけて、その蒸発熱により体熱放散をはかる。
4)ニワトリではパンティングと呼ばれる深呼吸により、体熱放散をはかる。
19.カエル、イモリ等の両生類における皮膚呼吸の全呼吸量に対する割合は、下記のう
ちどれか。
1)3~5%
2)13~15%
3)30~50%
4)60~70%
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20.呼吸におけるガス交換の仕組みについて、正しい記述はどれか。
1)ヘモグロビン(Hb)とO 2 の結合の程度は、温度や酸素分圧(P 0 2 )の条件が一定であ
れば、二酸化炭素分圧(P CO 2 )に依存して直線状のO 2 飽和曲線(酸素解離曲線)を描
く性質がある。
2)P 0 2 がある程度以上になると、ヘモグロビン(Hb)のほとんどがO 2 と結合し、逆にP 0 2
が低くなると、極めて効率よくO 2 を遊離する。
3)血液中に取り込まれたO 2 の多くは、血液中の炭酸脱水素酵素の働きにより、水と反
応して炭酸を生成し、さらに水素イオンと炭酸イオンに解離する。
4)ヒトの場合、肺胞内空気および肺動脈血中の酸素分圧(Po 2 )はそれぞれ40mmHgと
100mmHgであるから、O 2 ガスは肺胞気から血液中へと拡散する。
21.心臓(完全心)の構造と機能について、正しい記述はどれか。
1)心臓の左側は、全身からの血液を受け取り肺動脈に向かって拍出し、右側は肺から
の血液を受け取り大動脈に向かって拍出する。
2)心臓が1回の拍動で大動脈に送り出す血液の量を1回拍出量と呼び、これに1分間の
拍動数(心拍数)を乗じて得られる分時拍出量は、心臓のポンプ機能を表す重要な指
標となる。
3)一般に、体の大きい動物ほど1回拍出量は少ないが、安静時心拍数は少ない。
4)通常、心拍数は運動、摂食、精神状態等種々の条件により変動し、その減少に伴っ
て分時拍出量も増える。
22.心臓の活動について、正しい記述はどれか。
1)体表面に電極をあて、心臓の拍動に伴う電気的現象を機械的に増幅し、心臓の電気
的な活動を記録したものが心音図である。
2)心音図では心臓病、特に弁の異常等を検出することができる。
3)心室が収縮した時期の内圧を、拡張期血圧(最小血圧)という。
4)心室が弛緩した時期の内圧を、収縮期血圧(最大血圧)という。
23.血管の収縮に関する記述として、正しいのはどれか。
1)運動神経の刺激が、血管平滑筋の収縮を調節する。
2)運動をすると、副交感神経の興奮が高まる。
3)交感神経の終末から放出される伝達物質はノルアドレナリンで、α受容体を刺激し
て平滑筋細胞を弛緩させる。
4)筋肉と心臓の冠状動脈等は、交感神経の刺激によってβ受容体が刺激され、平滑筋
が緩んで血管が拡張する。
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24.血液の循環について、正しい記述はどれか。
1)左心から肺を通って右心に戻る肺循環には、左心から全身に向かう体循環とほぼ同
量の血液が流れる。
2)肺内では、体循環のように細動脈の収縮により血液分布が決まるのではなく、重力
の影響により決まる。
3)右心不全で肺の毛細血管圧が増すと、肺の特に下部に水腫を起こし、呼吸機能に重
大な障害を起こす。
4)左右の冠状動脈は肺動脈弁のすぐ下の大動脈起始部から起こり、心房と心室の境界
に沿って心臓を取り巻くように走る。
25.血液の体内循環について、正しい記述はどれか。
1)脳に血液を送る動脈は、左右の外頚動脈と椎骨動脈である。
2)脳の組織はほとんどブドウ糖だけをエネルギー源とし、かつその貯蔵もごくわずか
なので、安定した血流を受けることが脳の機能維持にとって不可欠である。
3)運動や様々なストレスによって血圧が変動すると、脳の血流量を一定に保つことが
できなくなり、例外なく脳の血管系に支障が起こる。
4)肝臓も含め、腹部内臓の毛細血管を通った血液は、いったん門脈に集められ肝臓に
流入する。
26.血液中の血漿成分について、正しい記述はどれか。
1)1%ほどの固形物が溶けているが、その大部分はタンパク質である。
2)約0.09%の電解質や、糖、脂質等が溶けている。
3)血漿タンパク質の約1/3はアルブミンである。
4)アルブミンは分子量約69,000である。
27.白血球について、正しい記述はどれか。
1)顆粒球は白血球の中の約80%を占める。
2)顆粒球の大部分は好酸球である。
3)好中球は細菌感染のある部位に集まって、細菌を貪食して顆粒の中の酵素で細菌の
脂質を分解する。
4)細菌を処理した好中球は死滅するが、それが集まったものが膿である。
28.精巣に関する記述として、正しいのはどれか。
1)精巣は2種類の細胞からなる。
2)精細管の壁には、精子のもとになる精細胞と、それを支えるライディッヒ細胞があ
る。
3)精細胞は絶えず分裂して、その一部が精子になっていく。
4)精細管の間には、テストステロンを分泌するセルトリ細胞がある。
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29.嗅覚について、正しい記述はどれか。
1)ヒトや霊長類では、大脳における嗅球の占める割合は極めて大きい。
2)ヒト以外の動物では嗅球の発達が悪く、動物の嗅覚はヒトよりもはるかに鈍感であ
る。
3)イヌの匂い物質に対する閾値は、ヒトに比べ100~1,000万倍も低い(感度が低い)。
4)嗅覚は、1つの匂いに対して短時間で順応し感じなくなるが、その場合でも他の匂
いは感じる。
30.副腎に関して、正しい記述はどれか。
1)中心側の皮質は、ステロイドホルモンを分泌する。
2)外側の髄質は、カテコールアミンを分泌する。
3)グルココルチコイドは、電解質代謝に影響を及ぼすホルモンである。
4)カテコールアミンのうち、ドーパミンは中枢神経の伝達物質として使われ、ノルア
ドレナリンは中枢神経および交感神経の伝達物質である。
31.遺伝子間の距離について、正しい記述はどれか。
1)遺伝子間の距離は、(組換え型個体数/観察総数)÷100 で求められる。
2)2 遺伝子間で組換え個体が全く得られない場合は 100cM である。
3)連鎖していない場合の組換え率は、50/100=50cM と計算される。
4)組換え率の最高値は 100cM と考え、一般に組換え値は 0cM から 100cM の間となる。
32.量的形質に関する遺伝率に関して、正しい記述はどれか。
1)遺伝率は 0~10.0 の間にある。
2)1.0 に近ければ近いほど、遺伝性である可能性が低い。
3)体重については 0.25~0.35 と計算されている。
4)産子数については 0.30~0.40 と計算されている。
33.リコンビナント近交系について、正しい記述はどれか。
1)4 種類の近交系を交配し F 2 を作り、F 2 個体の雌と雄をランダムに組み合わせて近交
系を作る。
2)連鎖分析(linkage analysis)理論に基づき、質的形質や量的形質を支配する遺伝
子について染色体を決定するために使われる。
3)代表的な RI 系統として、CXB(C57BL/6 を雌親、BALB/c を雄親として作出)がある。
4)近交系間の交配によりできるだけ少ない近交系を作出し、近交系群として維持する。
これを RI(Recombinant Inbred)と呼ぶ。
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34.クローズドコロニーに関して、正しい記述はどれか。
1)一般に、クローズドコロニーでは遺伝的に均質性が高い。
2)現在の遺伝子頻度を後代にわたってよく保つためには、完全な無作為交配を避ける
必要がある。
3)1 つのクローズドコロニー集団がいくつかの小集団に分かれることは、小集団ごと
に遺伝的均質性が高まるので、クローズドコロニーとしては都合がよい。
4)コロニーの維持のためには、毎代雌・雄とも 25 頭、計 50 頭、あるいはそれ以上で
構成されることが望まれる。
35.疾患モデル動物について、正しい記述はどれか。
1)Y 染色体に存在する mdx 遺伝子を持つマウスはヒトの Duchenne 型筋ジストロフィー
モデルとして知られている。
2)やせ型糖尿病を発症する NOD/Shi マウスは、ヒトⅡ型糖尿病モデルとして知られて
いる。
3)疾患モデルは、ヒトの疾患と同じ病態を示す病気の動物である。
4)ヌードマウスは移植実験によく用いられる。
36.性周期の型とその特徴について、正しい記述はどれか。
1)完全性周期型
: こ の 型 の 特 徴 は 性 周 期 が 卵 胞 期 ( follicular phase) と 黄 体 期
(luteal phase)からなることである。
2)不完全性周期型:卵胞発育、排卵が交尾刺激とは無関係に繰り返され、形成された
黄体は持続的にプロジェステロンを分泌し、長時間機能を有する。
3)交尾排卵型
:卵巣には常に成熟卵胞が存在せず、自然排卵はない。
4)交尾排卵型
:卵巣にはほぼ一定の成熟卵胞が常に存在するが、発情には至らな
い。
37.雌マウスにおける性ホルモンの動態について、正しい記述はどれか。
1)血中のエストロジェン量は、排卵日の前日の昼頃より徐々に増加し始め、排卵前日
の夕刻に最大値を示す。
2)性行動は排卵前日の夕刻より始まり、排卵日の朝まで約 3~5 時間見られる。
3)排卵前日のエストロジェンが最大になる以前に卵巣を摘出してしまうと、夕刻から
始まる性行動は消失する。
4)血中プロジェステロンの増大はエストロジェンより早く、排卵前日の午前に最大と
なる。
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38.雌の性行動の観察をする際の記述として、正しいのはどれか。
1)雌の発情の解析には、100 回のマウント数に対するロードシス回数を指標とする。
2)ロードシス商(LQ)が 100 に近いほど、その個体は強く発情していることになる。
3)雌の性行動を観察する場合、観察用ケージにあらかじめ雌を入れたあとに雄をいれ
る。
4)ロードシス商(LQ)は、(マウント数/ロードシス数)×100 により求める。
39.雄の交尾行動を観察する際の用語とその解説として、正しい組み合わせはどれか。
1)射精後挿入潜時:最初の挿入から最初の射精が起こるまでの時間
2)乗駕潜時
:一定時間内の乗駕回数
3)挿入潜時
:同居開始から最初の挿入が起こるまでの時間
4)射精潜時
:射精から次の交尾シリーズの最初の挿入までの時間
40.胎盤に関して、正しい記述はどれか。
1)妊娠期間中の胎子の呼吸、栄養の供給および排泄を担う重要な器官である。
2)IgM は胎盤を通過することができる。
3)IgG は胎盤を通過することができる。
4)胎盤には、性腺刺激ホルモンやプロラクチン等のペプチドホルモンの合成・分泌機
能はない。
41.着床のパターンについて、正しい記述はどれか。
1)食肉目は中心着床である。
2)重歯目は偏心着床である。
3)チンパンジーは壁内着床である。
4)ほとんどのげっ歯目は中心着床である。
42.受精卵の着床について、正しい記述はどれか。
1)受精卵を免疫による拒否反応から回避させているのは early pregnancy factor(EPF)
である。
2)受精卵は母体の子宮にとっては異物とはみなされない。
3)EPF は子宮内膜の免疫機構に対して特異的免疫抑制物質として働く。
4)受精卵は分裂を繰り返し胚盤胞を形成していくが、子宮には着床に備えた変化は起
こらない。
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43.分娩に関して、正しい記述はどれか。
1)妊娠末期になると、胎子の副腎髄質からグルココルチコイドが分泌され、これが胎
盤に作用してプロジェステロンの分泌を抑制し、同時にエストロジェンの分泌を促進
し、プロスタグランジンの生合成を促進する。
2)エストロジェンは子宮の運動性を増強し、オキシトシンに対する感受性を高める。
3)オキシトシンに対する感受性が極限に達した状態で、生殖道に対して胎子による拡
張刺激が加わると、神経内分泌反射によって下垂体後葉からゴナドトロピンが放出さ
れ、これによって子宮が強く収縮し陣痛が起こる。
4)プロスタグランジン自体には子宮収縮作用はない。
44.マウスの着床および胎子の発生について、正しい記述はどれか。
1)受精後 2.5 日目の着床前後で、原始内胚葉の形成を開始する。
2)受精後 4 日目では卵筒胚となりライヘルト膜を形成し、さらに外胚葉性胎盤円錐が
母体血液で満たされるようになる。
3)受精後 7~8 日目(原条期胚~体節期胚)では羊膜、尿膜、および神経管、さらに
は前腸および後腸ポケットの形成がなされる。
4)受精後 9.5 日目(体節期後期)では前腎が形成される。
45.マウスの着床後の胎子の発生について、正しい記述はどれか。
1)受精後 9 日目後期では体節が 11~19 に分かれ、臓側卵黄に血流が見られるように
なり、肺原基の発生、膵突起および卵黄管の閉鎖が起こる。
2)受精後 12 日目では、レンズ窩および中腎細管の形成が始まる。
3)12 日目での体節は 44~48 に分かれ、膵原基、心房中隔および共通心室の形成、レ
ンズ胞の遊離が見られる。
4)12 日目では、動脈幹の分割と舌、胸腺、上皮小体の原器が発生する。
46.受精後のマウスの胎子の発生について、正しい記述はどれか
1)12 日目には大動脈路と肺動脈路が分かれ、排泄腔の分割と中のつまったレンズが観
察される。
2)13 日目では心室中隔の閉鎖と網膜神経細胞の発生、尿生殖洞への尿道開口が見られ
る。
3)15 日目では肺胞管が形成され、網様体が明瞭になる。
4)19 日目では出産に至り、体の大きさは 23~27mm に達している。
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47.動物の食性について、正しい記述はどれか。
1)肉食性の動物においては、胃の消化酵素の働きがほとんどないため、胃および腸は
小さく簡単な構造になっている
2)肉食性の動物は頑強な顎骨と鋭い歯を持つ動物である。また、強力な消化力を有す
る腸液によって、食物のほとんど全てが消化される。
3)草食性の動物は、臼歯の発達がよく消化器が体長よりも短いのが特徴である。
4)草食性の動物は、腸内微生物が産生する繊維質分解酵素によって食物を消化し、吸
収する。
48.栄養素について、正しい記述はどれか。
1)保全素とは、それが欠けると栄養が保てず他の栄養素では代用できないものをいい、
タンパク質、糖質、脂質がこれに属する。
2)熱量素とはエネルギー源としての役割をするもので、タンパク質、無機塩類、ビタ
ミンがこれに含まれる。
3)熱量素が体内で酸化燃焼して発生する熱量を、カロリーという。
4)タンパク質および糖質は、体内でそれぞれ 1g が酸化燃焼して、約 9kcaℓのエネルギ
ーを発生する。
49.ビタミンに関する記述として、正しいのはどれか。
1)微量で動物の栄養を支配し、正常な生理機能を調節して完全な物質代謝を行わせる
無機化合物である。
2)原則として動物体内では合成されないといわれているが、一部のものは腸内微生物
により合成される。
3)水溶性ビタミンは肝臓に貯えられる。
4)脂溶性ビタミンは体内に貯蔵されず、過剰な場合は尿中に排泄される。
50.飼料 6 成分について、正しい記述はどれか。
1)飼料を粉砕して一定量計量し、205~210℃に加熱乾燥した前後の重量差と、元の重
量との割合を水分量としている。
2)飼料中の窒素含有量を測定し、これに 7.25 を乗じた値を粗タンパク質量としてい
る。
3)通常は、粉砕した飼料をエーテルに浸して溶出した物質の量を、粗脂肪量としてい
る。
4)飼料を 150℃以上に加熱して灰にした残分を粗灰分とする。
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51.室内消毒に用いる消毒剤の最終濃度として、正しいのはどれか。
1)次亜塩素酸ナトリウム(10~20ppm)
2)塩化ベンゼトニウム(0.5~1.0%)
3)塩化ベンザルコニウム(0.05~0.1%)
4)塩化アルキルジアミノエチルグリシン(0.5~1.0%)
52.飼育室のホルマリン燻蒸について、正しい記述はどれか。
1)ホルマリンすなわちホルムアルデヒドは、強いタンパク変性作用で消毒効果を示
す。
2)作業時の皮膚、粘膜に対する刺激は少ない。
3)作業者の安全と周辺環境への漏出防止対策を十分検討し、適切な施設、設備が整わ
ない場合はホルマリン燻蒸を行うべきではない。
4)燻蒸後は、そのままホルムアルデヒドガスを大気に放出してよい。
53.燻蒸の作業手順について、正しい記述はどれか。
1)消毒薬に次いで水を噴霧して室内を洗うのは、微生物が汚れの被膜をかぶっている
とホルムアルデヒドの効果が減弱するためである。
2)ホルムアルデヒドガス発生装置は、パラホルムアルデヒド顆粒を過熱してホルムア
ルデヒドガスを発生させる装置で、加熱スイッチを入れた 1 分後に加熱が始まりガス
が発生する。
3)約 6,000~10,000ppm のガス濃度を 6~8 時間維持した後、ガス分解装置を遠隔操作
で運転する。
4)ホルムアルデヒドガスの分解は、水酸化ナトリウムで中和する装置や、酸化触媒で
炭酸ガスと水蒸気に分解する装置等が開発されている。
54.隔離に必要な条件として、正しい記述はどれか。
1)検疫室は一般の飼育室に対して陽圧に維持し、給・排気口には高性能フィルターを
装着する。
2)検疫室にはホルマリン燻蒸や、薬剤による消毒および水洗が可能な構造が必要であ
る。
3)排気ダクトには、ダンパーをつけて空気の流通を遮断できるようにして、室外への
病原体拡散を防止する必要があるが、給気ダクトにはダンパーが不要である。
4)検疫中の動物の飼育管理は少数の専任技術者が担当するか、1 日の作業の最初に行
うようにする。
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55.消毒薬を用いた消毒法の一般的な注意点として、正しい記述はどれか。
1)消毒薬が殺菌効果を示すには、微生物との適切な接触時間が必要であり、必ずしも
速効的ではない。殺菌のための時間は微生物の抵抗性と消毒薬の種類により異なるが、
一般的に 1 分以上必要とされている。
2)有機物が混入すると、消毒薬の殺菌効果は減弱する。
3)消毒薬の作用は一種の物理的反応であり、温度の高い方が殺菌力は強い。通常は 18
℃以上で使用する。
4)消毒薬の中で生息できる微生物はいない。
56.人道的エンドポイントについて、正しい記述はどれか。
1)1800 年頃から、人道的エンドポイントという概念が動物実験に取り入れられるよう
になった。
2)動物実験には、医薬品の安全性試験、病原微生物の感染実験、腫瘍学の実験、ワク
チンの力価検定試験のように、動物の実験死が避けられないものがある。
3)動物の死をもって実験終了と判断するのは、動物福祉に反するという意見があり、
この考え方が発展してエンドポイントという概念が生まれたが、苦痛軽減方法の 1 つ
とは位置付けられていない。
4)OECD、UKCCCR、ILAR 等では、エンドポイントに関するガイドラインを制定してお
り、我が国でも GLP の実施に関して、厚生省がエンドポイントに関するガイドライン
を制定している。
57.ビニールアイソレータに関する記述として、正しいのはどれか。
1)ブロアによってアイソレータの中へ送り込まれる空気は、途中に設置されている給
気用エアフィルターで無菌化される。
2)チャンバー内の空気は、排気用エアフィルターを通して強制排気される。
3)ジャーミサイダルトラップは内外 2 つの蓋がついた小室で、ここに器材の入った滅
菌缶などを接続する。
4)ステリルロックはチャンバー内外に通じる円筒または小箱で、この中に消毒液を満
たして内外を仕切り、物品の移動は消毒薬をくぐらせて行う。
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58.感染動物実験について、正しい記述はどれか。
1)動物飼育は、陰圧アイソレータや動物飼育用安全キャビネットで行われるので、飼
育装置内部が陽圧となっていることと、排気用 HEPA フィルターの差圧チェックを忘
れてはならない。
2)ケージ交換を行う際には、作業時の粉塵発生を抑えるよう静かに行い、汚染ケージ
は汚物処理や洗浄後に高圧蒸気滅菌を行う。
3)動物の死体等も高圧蒸気滅菌が必要であるが、通常の滅菌条件(121℃、15~20 分)
で死体の深部まで加熱されるので、特別の配慮は不要である。
4)退出時には手順に沿って脱衣と手指の消毒、洗浄を行い、飼育技術者を介して病原
体が漏出しないよう注意する。
59.遺伝子改変動物の飼育に関して、正しい記述はどれか。
1)取り扱いの基本は、環境中へ遺伝子改変動物を逃亡させないことである。
2)個体識別を明瞭にし、個体管理を徹底、個体管理台帳を付けなければならない。
3)室内には、逃亡防止対策として排気口にスノコが取り付けられていたり、ドアにネ
ズミ返しや、組換え動物飼育中を示す標識が設置されていたりするので、清掃、消毒
作業等でそれらを取り外してはならない。
4)遺伝子改変動物を飼育する時は、法律に基づいて届出が必要である。
60.記録の保存と情報公開について、正しい記述はどれか。
1)動物実験に関する文書は行政文書にあたらないので、情報公開法の開示請求対象と
はならない。
2)我が国では法令や行政指導により、自主管理という建前の下に、動物実験が法的に
管理されている。
3)自主管理が適切に実施されていることを社会に示すために、請求に応じて記録類を
開示することは、請求者の言いなりになることなので社会的な理解には役に立たない。
4)飼育管理に関しても、保存の対象となる記録のリストを作成し、保存責任者、保存
場所、保存方法、保存期間をマニュアルに定め、適切に運用する必要がある。
61.動物飼育施設における災害発生時のマニュアルとして、正しい記述はどれか。
1)スタッフおよび施設利用者の安否の確認を最優先する。
2)避難が第一であるが、避難場所あるいは集合場所を定めておく必要はなく、各自が
安全な場所に避難すれば良い。
3)施設外への動物の逃亡防止をはかることが避難行動に優先する。
4)実験者は、実験中の動物を放棄して直ちに退去する。
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62.遺伝子組換え動物の飼育施設に関して、正しい記述はどれか。
1)遺伝子組換え動物の飼育や実験を行う場合、拡散防止設備を有した施設で飼育する
ことが義務づけられており、ヒトや環境へのリスクをもとに P1A~P4A の実験室(飼
育室)の基準が示されている。
2)P1A の飼育室の窓は昆虫等の侵入を防ぐ構造であり、通常の動物飼育室と同等の設
計、設備とする。当該動物種の習性に応じた逃亡防止設備、機器または器具を設置す
る必要がある。
3)P2A の飼育室は P1A に加えて、エアロゾルが生じる操作を行う場合は安全キャビネ
ットを設置し、建物外に高圧蒸気滅菌器を置く。
4)P3A は P2A に加えて、2 重扉と更衣室を備えた前室を設け、天井、床、壁は水洗、
燻蒸が可能な構造とする。区域内に自動操作できる手洗い設備を設ける。飼育室を陽
圧にした給排気設備を設けるとともに、飼育室の排気が再循環しない構造とする。
63.感染動物の飼育施設について、正しい記述はどれか。
1)米国 CDC/NIH のガイドラインでは感染動物実験の特殊性を考慮し、動物バイオセー
フティレベル(ABSL1~3)を規定している。
2)封じ込めは、実験室の作業者への感染や周辺環境への漏出を防ぐための設備であ
り、一次封じ込めから三次封じ込めに分けられる。
3)一次封じ込めは作業者や実験室環境を守ることを目的とし、微生物取り扱い技術や
安全設備・器具等がその効果を高める。
4)実験室内での操作方法、安全設備、施設の構造の基準とその組合わせにより、3 段
階のバイオセーフティレベル(BSL 1~3)が規定され、基本的な考え方は、組換え DNA
実験における封じ込めレベル(P 1~3)と同様である。
64.有害性のある物質を取り扱う施設について、正しい記述はどれか。
1)特に有害性の認められている物質は、「特例化学物質等障害予防規則」でその取り
扱いが規制されている。
2)有害性が未知の物質を扱う吸入実験、動物実験施設では、被験物質の散逸防止と実
験者、飼育管理技術者の化学物質汚染防止をはからなければならない。
3)飼育室に前室、後室を設置し陽圧制御とする。
4)陽圧方式の飼育ラックを使用し、特殊な廃棄物処理設備を設ける等、設備と管理の
両面で障害を予防しなければならない。
65.下記のうち、ヒトの作業動線として正しいのはどれか。
1)管理(事務室)→洗浄室→清浄倉庫
2)廃棄物保管庫→飼育室→検査室
3)飼育室→動物受け入れ室→洗浄室
4)廃棄物保管庫→物品受け入れ室→清浄倉庫
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66.飼育室の温度について、正しい記述はどれか。
1)環境温度は飼育方法、ケージの材質と構造、フィルタートップの使用、ケージあた
りの動物数、床敷交換の頻度、ケージ内の強制換気の有無によっては影響を受けない。
2)実験動物の発育、繁殖成績は、高温の環境では減少するが低温では増加する。
3)マウス、ラットの尾長も低温では長く高温では短くなり、臓器重量、血液および血
清生化学的性状も飼育される環境温度に影響される。
4)諸外国や我が国の動物施設の多くの温度の基準値は、23±1~2℃となっている。こ
れらの値は、12℃から 32℃までの 2℃間隔の各種温度条件でラットを飼育して、繁殖、
育成、摂餌、摂水量、臓器重量、血液性状、薬物の毒性試験等をみた実験結果からも
推察できる。
67.飼育室の粉塵について、正しい記述はどれか。
1)マウス、ラット室の粉塵は、夜間に少なく、昼間に増加する動物の行動に伴う日内
変動のリズムと関連がある。
2)アメリカ航空宇宙局のクラス分類では、1 立方フィートの空気中に含まれる 0.1μm
以上の粉塵の累積個数、あるいは生物粒子数が示されている。
3)我が国の動物室の基準では、動物を収容していない状態でクラス 100,000 以下とさ
れている。
4)粉塵の測定には種々の方法があるが、モニタリング用としては、一定時間内に吸引
された空気中の粒子径別の個数を測定する光散乱方式微粒子濃度計法、あるいはろ紙
上に吸引捕集した粉塵から測定する重量濃度測定法がよく用いられる。
68.飼育室の臭気について、正しい記述はどれか。
1)動物施設では、臭気についてはアンモニア濃度が対象とされる。アンモニアは尿素
分解細菌の作用により、糞尿中の尿素が分解されて発生するものである。
2)アンモニアは、一般には検知管法で測定され、その基準値は 30ppm 以下とされてい
る。
3)アンモニアの高い環境で動物を飼育すると、気管および気管支粘膜に異常をきた
し、微生物の侵襲と相乗的に作用して、消化器の疾病を誘発しやすくなるといわれる。
4)通常、空調してある動物室で、床敷入りのプラスチックケージでマウスを飼育して、
週 1 回のケージ交換を行っている場合には、ケージ交換後 1 日目頃からアンモニア濃
度が増加しはじめ、2、3 日目にピークに達する 4 日ごとの鋸歯状のアンモニア濃度周
期が見られる。
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69.動物飼育施設の騒音について、正しい記述はどれか。
1)ケージ、ケージの蓋、給餌器、給水瓶等を落とした場合には、90~110dB の音を発
する。
2)ドアの開閉時には、40~60dB に達する。
3)洗浄室での作業時には 160~190dB に達する。
4)機械室は 170~190dB の騒音レベルにある。
70.個別換気方式のケージを利用する際の留意点として、正しい記述はどれか。
1)個別換気方式のケージによりケージ内環境の改善がはかられた結果、ケージ交換の
頻度が減少でき、動物の隔離状態が向上し、げっ歯類の高密度飼育が可能になる。
2)室内に排気する場合、保守状態によっては、強制換気することによってアレルゲン
をミクロ環境すなわち飼育室へ拡散する場合がある。
3)ラックが従来のものより大型で重く高くなったが、ケージは軽くコンパクトになっ
ておりラックの取り扱いに伴う作業負担、作業姿勢等取り扱い者への配慮が不要にな
った。
4)ケージ交換頻度の増加に伴い、動物の観察頻度が減少することや、ラックに付属す
る換気装置の騒音の影響等に配慮するする必要がある。
71.微生物のカテゴリー分類について、正しい記述はどれか。
カテゴリー
定
義
1)
A
清浄な飼育環境から検出されることのない微生物や寄生虫
2)
B
動物に対して致死的で伝染力の強い高度病原微生物
3)
D
動物を致死させることはないが免疫機能や消化器、呼吸器、循環器
等の機能に変調をきたし、データの読み取りを誤らせるおそれのあ
る微生物
4)
E
動物から感染したヒトが発病するおそれのある微生物
72.実験動物にあらわれる異常所見(病気の兆候)に関して、正しい記述はどれか。
1)嘔吐は、マウス・ラット・モルモット等のげっ歯類でよく見られる異常である。
2)マウスやラットの被毛は、異常動物を発見するための重要な観察点であるが、尾は
健康状態が悪化しても外観上の変化は不明瞭である。
3)幼若動物は感染症に対する抵抗性が弱いので、症状が顕著にあらわれ死亡率も高い
ことが多い。
4)マウス・ラットともに乳腺腫瘍の発生は多く、特に老齢動物に頻発するが、系統に
よる発生率に違いは見られない。
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73.実験動物の病気の原因に関して、正しい記述はどれか。
1)高血圧症ラットや糖尿病マウス等は、遺伝子の異常に飼料・環境等の要因が加わっ
て発現する場合がある。
2)実験動物に病気を引き起こす原因は、遺伝的要因と微生物感染のみである。
3)実験動物においては、遺伝的要因により発生する異常個体は排除すべきである。
4)モルモットはビタミン D の体内合成ができないため、その欠乏により全身の出血、
発育不良、流産、下痢、死亡等が起こる。
74.下記のうち、げっ歯類を介して起こる人獣共通感染症はどれか。
1)B ウイルス病
2)狂犬病
3)リンパ球性脈絡髄膜炎
4)レプトスピラ症
75.微生物モニタリング、感染症診断に関する記述として、正しいのはどれか。
1)全ての細菌は人工培地で分離可能であるため、培養検査は病原細菌検査には最適な
検査法である。
2)感染症を診断するためには、臨床症状の観察が大切であり、症状がなければ血清反
応等の検査を実施する必要はない。
3)微生物モニタリングの検査項目は、できるだけ多い方がよい。
4)自家検査においてウイルスを分離することは、技術・設備的に難しいため血清学的
検査が主流である。
76.感染症の検査法に関して、正しい組み合わせはどれか。
1)抗体検査
―
酵素抗体法
―
ティザー菌
2)培養検査
―
DHL 寒天培地
―
肺パスツレラ
3)培養検査
―
盲腸内容物
―
肺マイコプラズマ
4)抗体検査
―
赤血球凝集抑制反応
―
マウス肝炎ウイルス
77.ウイルスについて、正しい記述はどれか。
1)大きさは 1~10μm で、光学顕微鏡では見ることができない。
2)遺伝情報として DNA と RNA の両方を持つ。
3)偏性細胞内寄生体であるが、人工培地では発育できる。
4)抗生物質等の抗菌薬はウイルスには無効である。
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78.リケッチアに関する記述として、正しい記述はどれか。
1)細菌と原虫の中間に位置する微生物である。
2)好気性のグラム陽性の細菌であるが、生きた細胞の中でしか増殖できない。
3)核酸として RNA を持ち、抗生物質に感受性を示す。
4)ダニ、シラミ、ノミ等の節足動物と共存しており、節足動物を介して感染する。
79.感染症の伝播経路に関する記述として、正しい記述はどれか。
1)媒介昆虫による感染は直接感染である。
2)感染動物の糞便を介する感染は直接感染である。
3)咳やくしゃみによって感染する飛沫感染は間接感染である。
4)間接感染は病原体が付着したものや、ヒトを介して広がる様式である。
80.感染症予防対策の基本として、正しい記述はどれか。
1)飼育管理者や実験者に対しては、実験動物の感染症および人獣共通感染症などにつ
いて教育を行うとともに、必要に応じて情報の提供を行わなくてはならない。
2)定期的な健康診断を実施するとともに、感染事故が発生した時の備えとして、動物
実験が終わった後に血清を採取し、保存しておくとよい。
3)建物に対する予防対策としては、ヒト、動物、器材等の動線を考えクリーンエリア
とダーティーエリアを区別し、常に、ダーティーエリアからクリーンエリアにヒトと
物が流れるように配慮する必要がある。
4)実験動物については、基本的に感染した動物、あるいは感染のおそれのある動物は
導入しないようにするべきであるが、感染している動物が全て何らかの臨床症状を発
現しているとは限らないため、受け入れ後出来るだけ早く飼育室に移し、動物の観察
を厳重に行う。
81.微生物モニタリングについて、正しい記述はどれか。
1)検疫により病原微生物が検出されなかった SPF 動物では、飼育中に何らかの微生物
汚染が発生する危険性を否定できる。
2)適切な飼育管理が実施されていれば、動物は検疫時と同じ健康状態であるはずであ
り、実験者や飼育者をはじめとするヒト、飼育器材、飼料、飲料水等様々なものから
微生物汚染が発生する危険性はない。
3)飼育中の実験動物が病気のない健康な動物であることを証明するために、微生物モ
ニタリングが行われる。
4)ウサギやイヌ、ネコ等の中動物以上の実験動物でも、実際の実験に使用される動物
を対象として微生物モニタリングを行うことは好ましくなく、マウスやラット等の小
動物と同様に、微生物モニタリング用のモニター動物を対象に検査を行う必要がある。
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82.感染症の診断について、正しい記述はどれか。
1)細菌は人工培地での培養が可能なため、細菌培養用培地等を使用して病原体の分離
および同定が一般的に行われ、血清学的な検査法は一般的に用いられない。
2)ウイルス性の疾患については血清学的検査が主流となるが、PCR 等の遺伝子診断法
が用いられる場合もある。
3)寄生虫性の疾患については、内部寄生虫、外部寄生虫とも光学顕微鏡による観察が
可能であるが、一般的に血清学的検査も並行して行われる。
4)Helicobacter 属の細菌は培養が出来ないため、PCR 等の遺伝子診断法が通常用いら
れる。
83. 自然免疫と獲得免疫について、正しい記述はどれか。
1)自然免疫とは、生体が生まれながら持っているある種の病原体に対する強い自然抵
抗性のことをいう。
2)獲得免疫とは、生体が生後に獲得した免疫であり、獲得の仕方により能動免疫と受
動免疫に分けられる。
3)受動免疫とは、微生物に感染したりワクチンによる予防接種を受けたりした場合
に、生体が自ら免疫応答を起こし獲得する免疫である。
4)能動免疫とは、治療用の免疫血清やγグロブリンの投与を受けたり、胎子や乳子が
母体の抗体を胎盤や母乳を通じて受け取ったりする場合の免疫である。
84.T 細胞および B 細胞について、正しい記述はどれか。
1)血液中のリンパ球のうち、約 80%は T 細胞であり、約 20%が B 細胞である。
2)血液中のリンパ球のうち、約 20%は T 細胞であり、約 80%が B 細胞である。
3)B 細胞は抗体を産生する形質細胞に分化し、細胞性免疫を分担する。
4)T 細胞は細胞傷害性 T 細胞(キラーT 細胞)として働き、体液性免疫を分担する。
85.免疫に関する記述として、正しいのはどれか。
1)抗体に特定の物質を添加すると免疫応答が促進され得ることが知られており、抗体
刺激を強めて免疫応答を促進する物質をアジュバントという。
2)臓器移植後の移植片に対する拒絶反応等、生体にとっては好ましくない免疫応答を
抑制する薬剤を免疫抑制剤と呼び、アザチオプリンやシクロスポリン A およびプレド
ニゾロン等の副腎髄質ステロイド等がある。
3)免疫機構が種々の原因で障害されたために免疫応答が低下し、その結果感染症が繰
り返し起こり重症になり、治りにくいような一連の疾患群を免疫不全症候群という。
4)実験動物においては、続発性免疫不全動物である胸腺欠損ヌードマウスや、SCID マ
ウス等を疾患モデルとして利用する。
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86.抗原抗体反応について、正しい記述はどれか。
反応名
1)
沈降反応
特
異
性
細菌や赤血球のような粒子状の抗原と抗体を反応させると、抗原は結合
した抗体を介して凝集し、肉眼で見ることのできる凝集塊を形成する。
2)
凝集反応
肉眼では見えない水溶性の抗原と抗体を反応させると、一定の比率のと
ころで抗原と抗体が効率よく結合して、不溶性の抗原抗体複合体が生
じ、これを白く濁った沈降物として肉眼で見ることができる。
3)
中和反応
毒素、酵素、ウイルス等固有の生物活性を持つ抗原に抗体が結合すると、
それらの抗原が持っている生物活性が消失する。この抗原抗体反応を中
和反応と呼び、その抗体を中和抗体という。
4)
補体結合
抗原と抗体に補体が結合した場合、抗原が細胞でない場合は細胞溶解反
反応
応として検出することができるが、抗原が細胞の場合、補体が消費され
るだけで肉眼的な反応は見られない。このように補体が抗原抗体複合体
に結合して消費される反応を補体結合反応と呼び、これに関与する抗体
を補体結合抗体と呼ぶ。
87.アレルギーの分類として、正しいのはどれか。
反
応
名
特
異
性
1)
Ⅰ型
抗体感作 T 細胞
2)
Ⅱ型
IgM 抗体、IgG 抗体
3)
Ⅲ型
IgE 抗体
4)
Ⅳ型
IgG 抗体、IgM 抗体
88.自己免疫疾患について、正しい記述はどれか。
1)ある特定の抗原に対してだけ免疫反応が成立するような現象を、免疫寛容という。
2)一般に、胎生期や新生子期に接触した抗原は、「自己」と認識されにくく免疫寛容
が成立しにくい。
3)生体が自分の身体の構成成分に対して免疫反応を起こさないのは、自己成分に対し
て免疫寛容になっていないからと考えられている。
4)何らかの原因で自己成分が「非自己」と認識され、抗原として働くとそれに対する
抗体(自己抗体)が産生され、自己の組織が傷害されたものである。
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89.消毒薬の保管に関して、正しい記述はどれか。
1) 次亜塩素酸ナトリウムは、冷所保存(5℃以下)等が必要である。
2) 消毒用エタノール等アルコール濃度が 70%(w/w)以上の消毒薬は、消防法による第
四類危険物であるので、これに関する指定数量(400ℓ)等の法規則を守り、火気に注
意して保管する。
3)消毒用エタノール等アルコール濃度が 60%(w/w)以上の消毒薬は、消防法による第
四類危険物であるので、これに関する指定数量(40ℓ)等の法規則を守り、火気に 注
意して保管する。
4)消毒薬は化学的に不安定なものがあり、熱や直射日光を避けて保管しなければなら
ない。
90.消毒薬の抗菌スペクトルについて、正しい記述はどれか。
1)微生物の消毒薬に対する抵抗性は細菌芽胞が一番弱く、中でもバチルス属の芽胞が
最も弱い。
2)ウイルスの消毒薬抵抗性は差が大きく、一般にエンベロープの有無が消毒薬抵抗性
に影響する。
3)エンベロープのないポリオ、イヌパルボ、ウサギロタウイルス等は消毒薬抵抗性が
弱いが、エンベロープがあるセンダイ、ハンタウイルス等は抵抗性が強い。
4)真菌の糸状菌は低水準消毒薬でも十分な効果が得られる。
91.マウスで体外受精を行う際の採卵の手順について、正しい記述はどれか。
1)採卵用雌に PMSG を 50 単位腹腔内注射し、その 48 時間後に hCG を 50 単位腹腔内注
射して過剰排卵させる。
2)hCG 投与後 24~30 時間後に、雄マウスの精巣上体尾部より精子を採取し、TYH 培地
に導入し 1 時間培養する。
3)過排卵処理をした雌マウスから卵管を摘出し、プラスチックシャーレ内のミネラル
オイル下で膨大部を切開、未受精卵の塊を TYH 培地内へ導入する。
4)前培養した精子懸濁液を、精子濃度が 10,000~20,000/μℓになるよう未受精卵の培
養液に添加し、インキュベーター内で培養する。
92.胚移植について、正しい記述はどれか。
1)卵管内移植は、精管結紮雄と交配させ、翌朝膣栓を確認した day 0 の偽妊娠雌を使
用し、前核期卵~胚盤胞までの全てのステージの移植が可能である。
2)子宮内移植は day 1 の偽妊娠雌を用い、胚盤胞の移植が可能である。
3)移植に用いるレシピエントマウスは、産子数が多く子育ての上手な系統(ICR 等)
が用いられる。
4)移植する胚の数は、移植の技術、融解胚の状態等で変わるが、新生子が 5 匹程度生
まれるようにする。
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93.受精卵移植により出産した場合の記述として、正しいのはどれか。
1)移植手術を受けたレシピエントマウスは、day 22 の早朝から午前中に出産する。
2)出産予定日の夕方を過ぎても出産しない場合は、母マウスを安楽死させ帝王切開を
行う。
3)新生子(里子)を里親につける際には、里親自身の子を別ケージに移し、里親と里
子を入れ替えた後、そのケージに里子を入れる。
4)里子には里親のにおいがつかないように注意し、里親が面倒をみることをよく確認
する。
94.精子の凍結に関して、正しい記述はどれか。
1)精子の凍結は、保存方法が簡便、液体窒素タンク内のスペースを取らない等の利点
があり、融解後の体外受精の受精率は向上する傾向がある。
2)凍結保存された精子の授精能力は、マウス系統間で差が大きく、遺伝子改変マウス
の主要な系統である C57BL/6 は特に強い。
3)授精能力が低い精子を用いた体外受精では、透明帯切開術(PZD)や卵細胞質内精
子注入法(ICSI)等により、受精率を高めることも可能である。
4)精子の採取は、成熟雄マウス(4 週齢以上)の精巣上体尾部を 1 個取り出し、R18S3
保存液 100μℓの入ったシャーレに移し、精巣上体管を細切し、シャーレを約 1 分間振
盪させ、保存液中に精子を浮遊させる。
95.クローン動物に関する記述として、正しいのはどれか。
1)1996 年に体細胞の核を未受精卵に核移植し、初めてのクローン山羊が作製された。
2)クローン動物の作製原理は、未受精卵の核を除去した後に体細胞の核を移植(核移
植)し、この胚をレシピエント雌の卵管に移植し個体に発生させるものである。
3)クローン個体では、今のところ種々の異常は報告されていない。
4)一卵性双生児は遺伝的に全く同じであり、通常の生殖により生まれるのでクローン
といえる。
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96.系統の命名規約として、正しい記述はどれか。
系
1)
統
命名規約
近交系
大文字のローマ字、または、文字と数字の組み合わせ(ただし、
数字から始める)からなる特徴のあるシンボルで表される。
(す
でに存在している系統の中でこの習慣に従わない)
2)
近交系の亜系統
オリ ジ ナル 系統 の 後ろ にス ラ ッシ ュと 亜 系統 表示 に より 表 記
するが、亜系統表示は、通常その系統が由来する研究室や個人
の記号である。
3)
リコンビナント近
2 系統の名前の 1 または 2 文字の大文字の略記号で表記する。
交系
ただし、スペースなしで雄系統を先に書き、大文字 X でつなぎ、
次に雄系統を書く。
4)
混合型近交系
2 つの親系統に由来している(一方は、遺伝子標的に使われる
ES 細胞の系統)
2 つの系統をコロン(:)で分ける
大文字
の略記号で表し、ラボコードと番号は、違った研究室で作られ
る系統を区別するために、また同じ研究室でも複数作製するよ
うな場合に使用する。
97.系統の命名規約として、正しい記述はどれか。
系
1)
統
命名規約
リコンビナントコンジェ
2 系統の略記号(大文字)で表記するが、レシピエン
ニック系統
ト系統を先に記述し、小文字の c をその後に、そして、
ドナー系統を記述する。
2)
コアイソジェニック系統
2 系統の省略記号を使って大文字で表記し、その後ろ
に F 1 をつける。(ただし、母系統を最初に記述)
3)
コンジェニック系統
3 つの部分から構成される記号で表される。ドナー系
統の省略記号とレシピエント系統の完全、または省略
記号をピリオドで表し、ハイフンと遺伝子記号を続け
る。
4)
ハイブリッド(交雑系)
2 系統の略記号(大文字)で表記するが、レシピエン
ト系統を先に記述し、小文字の c をその後に、そして、
ドナー系統を記述する。
98.遺伝子の命名規約として、正しい記述はどれか。
1)遺伝子および遺伝子座の略記号は、ローマ字とギリシャ数字を組み合わせ短い記号
で表す。
2)記号は、出版物中では常にイタリック体で表される。
3)記号の最初の文字は文字でなく、常に数字で始める。
4)最初の文字は、通常大文字で残りの文字も大文字とする。
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99.各種病原微生物のコロニー形態として、正しい記述はどれか。
細
1)
菌
肺パスツレラ
コロニー形態
5%ウマ血液寒天培地で、37℃2 日間培養後、直径 3~5mm、灰白
色あるいは淡黄色で光沢があるコロニーを形成する。
2)
気管支敗血症菌
5%ウマ血液寒天培地上で、37℃2 日間培養後、直径 1mm 前後の
扁平でα溶血(緑色溶血環)を伴うコロニーを形成する。
3)
ネズミコリネ菌
5%ウマ血液寒天培地で、37℃2 日間培養後、直径 3mm 前後の白
色のコロニーを形成する。溶血性はない。
4)
肺炎球菌
5%ウマ血液寒天培地で、37℃2 日間培養後、直径 2mm 前後の白
色で光沢がなく、乾燥したコロニーを形成する。溶血性はない。
100.各種の病原微生物のグラム染色性について、正しい記述はどれか。
細
菌
グラム染色性
1)
肺炎球菌
グラム陽性レンサ球菌
2)
ネズミコリネ菌
グラム陰性桿菌
3)
腸粘膜肥厚症菌
グラム陽性桿菌で松葉状
4)
サルモネラ
グラム陰性短桿菌
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