ニュージーランド投資環境

Bancorp Wealth Management
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億万長者がどのようにして巨万の富を築いたのか知っていますか?-彼は最初の一
歩を踏み出すことから始めたのです!
第 4 回目の本稿ではニュージーランドの貯蓄や投資環境について、日本と比較しな
がらお話しを進めさせていただきます。
日本におけるインフレ
日本の物価上昇率は実質的にこの 10 年(またはそれ以上)マイナスとなっていました
が、現政府はこの状況を打開しようとしており実際 2013 年にプラスに転じています。
9 月期の消費者物価指数(CPI)は 1.004%でした。一方東京三菱 UFJ 銀行の(他の銀行も
ほぼ同様ですが)1 年定期預金は 0.025%です。あなたが 100 万円を預金した場合一年
後に受け取る金額は 1,000,250 円です(もちろん税引き前)。しかしインフレの影響を
勘案すると一年前に 100 万円で買えた商品は 1 年後に 1,010,040 円となっている計算
になります。インフレ率が定期預金金利を上回る状況ではあなたの貯蓄の実質的価
値は年々減少していくこととなります。
ニュージーランドのインフレ
ニュージーランドの状況はこれとはかなり異なっています。より理想的な形と言え
るかもしれません。NZ の 2013 年 9 月期 CPI は 1.40%でした。しかし一般銀行の 1 年
定期は年利 3.80%、ノンバンクの提供する定期預金は年利 5.00%となっています1。
銀行の定期に 1 万 NZ ドルを預金した場合、一年後の受取総額は 10,380 ドルです。
またインフレ率をかけると今 1 万ドルの価値がある商品は 1 年後には 10,140 ドルと
なっているでしょう。この場合銀行の定期に預けるだけで物価上昇分を上回る利益
を得ることが出来ます。利息合計 380 ドルからインフレ分 140 ドルを差し引いた
240 ドルが実質的なプラス部分です。元本に組み入れてさらに再投資するもよし、
臨時収入として消費するのもいいでしょう。
NZ 非居住者に対する課税は利息額の 2%でそれ以外の源泉徴収課税や国内税はあり
ません。税引き後の利息額は 372.40 ドルとなり、依然としてインフレ率を 2.5 倍以
上上回ります。
ニュージーランド経済が発展する結果として物価が上昇しインフレが起こりますが、
それとともに金利も上昇するため、インフレを上回る金利水準が保たれています。
ニュージーランドの高齢者(年金受給者)は元本を取り崩すことなく安全性の高い預金
で運用し、税引き後の利息で物価上昇分を上回る収入を得ています。
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過去 10 年以上同様の傾向が続いておりニュージーランドの底堅い成長は今後も継続
すると見られています。
不動産市場
金利が高いニュージーランドでは借入れコストも高く、資金需要が低いと思われま
すか?実際はそうでもありません。例えば現在変動型住宅ローン金利は 5.75%です。
これは欧州、米国、日本、英国など政府が金融緩和により経済を刺激しようとして
いる国と比較すると非常に高いように思われます。しかしながらニュージーランド
の平均住宅価格は前年度比+7.6%となっており、移民の流入超で人口が増えている
こととクライストチャーチ地震の復興建設が進んでいることから住宅需要が増加し
ています。
加えて賃貸収入から諸経費を除いた住宅投資利回りは平均 4.5%から 5.0%となってお
り、外国人投資家の住宅用不動産投資はますます活発化しています。
ニュージーランドにおける住宅用不動産投資はインフレーションならびに金利上昇
と歩調を合わせて進行しています。
バンコープは現在ニュージーランド初の大規模住宅投資ファンドの組成に携わって
います。このファンドの特徴のひとつに住宅用不動産開発を行うと同時に可能な限
り長期の貸出を行うことが挙げられます。
ニュージーランドの住宅用不動産市場で賃貸業は常に一定の地位を得ており実際過
去 20 年間物価上昇を上回る成長を続けてきました。オークランド地域の賃料の中央
値は 20 年前から平均で 120%上昇しており年に直すと毎年 6.0%の成長です。過去の
実績は将来の保証とはなりませんがニュージーランドでは人口が増加しており住宅
市場において需要が供給を上回る状況は今後しばらく続きそうです。
企業業績
インフレと金利がプラスの値を示している国では負債コストが嵩み企業の業績が伸
び悩むのではないかと考える人もいるでしょう。しかしニュージーランドの主要輸
出産品である乳製品の国際価格は堅調で今後も順調に推移すると考えられています。
乳製品は、ニュージーランドから輸出される第一次産品のおよそ 30%を占めていま
す。
加えて失業率が順調に低下しており 2013 年第 3 四半期は 6.2%となりました(前期は
6.40%)。国内のエコノミストは 2014 年末までに 5.0%まで低下すると予想しています。
この数字を米国の 7.20%や英国の 7.70%と比較してみてください。ニュージーランド
の企業マインドは上昇しておりそれに伴って雇用市場も活性化しています。
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全体として NZ の GDP 成長率は 3.0%程度となる予定です。ニュージーランド準備銀
行(RBNZ)の役割は一過性の成長を実現することではなく、国の持続可能な成長を継
続させることにあります。
株式市場
企業業績は株式市場を通じてより視覚的に捉えることが出来ます。ニュージーラン
ド証券取引所のトップ 50 インデックス(NZX50)は過去 1 年で約 20%、過去 2 年で約
30%上昇しました。この数字は企業業績とマーケットセンチメントの結果を反映し
ています。我々が NZ 市場のファンドマネージャーを担当する日本の上場投資信託
「新西蘭ファンド」は設定開始以来 3 年で+35%の成績を残しています。我々はこの
素晴らしいパフォーマンスについて単なる短期の売買差益やチャート分析の結果に
よるものではなく、NZ 上場企業の実際の業績回復が大きく寄与していると考えてい
ます。
ニュージーランド証券取引所に上場している企業の多くは(他の市場と異なり)配当に
重点を置いています。上場企業の大多数が毎期配当を行うため NZX50 は配当と株価
の値上がり分を加味した利回りによって計算されます。NZX50 の平均配当金利回り
は現在 4.36%となっています2。配当金利回りだけでみてもニュージーランドの物価
上昇率を上回る収入となります。
終わりに
もし今後日本で持続可能な物価上昇が起こるならば、日本の株式、銀行預金、企業
業績は今以上に向上しなければならないでしょう。もしもそれが叶わない場合日本
の投資家には、ほとんどの投資で日本と比較した際に物価上昇以上のリターンが期
待できるニュージーランドへ移住することをお奨めします。またはもっとシンプル
な方法として日本に留まりつつ資産分散の一貫としてニュージーランドへ投資され
るのがよいでしょう。
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Bloomberg/NZSE50/FG
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