2015/6/23 脱水と輸液 萩原卓思 今回の内容 1、体液生理 2、体液量の評価 3、輸液製剤の種類と使い分け 4、輸液療法 1 2015/6/23 1、体液生理 体液の分布 体重の約60%が水分(体液)で、約半分が 筋肉内に存在する 2 2015/6/23 体液量調節系 体液量調整 ・抗利尿ホルモン(ADH) ・口渇 2つの調節系 は互いに独立 して機能する ・RAA系 ・NP系 ・交感神経系 2、体液量の評価 3 2015/6/23 脱水( hypovolemia) 脱水の種類と治療 Dehydration (細胞内脱水) Volume depletion (細胞外液の減少) 4 2015/6/23 体液量の評価 検査所見 □静的指標 ・平均血圧 ・中心静脈圧 ・左室拡張末期容積 ・生体電気インピーダンス □動的指標 ・下大静脈径 ・収縮期血圧変動 ・脈圧変動 ・一回心拍出量変動 ・passive leg test 動的指標は「volume負荷した時にみられる心拍出 量の変化」を推測するもので、輸液療法が有効か 見極める、より実践的な指標 5 2015/6/23 体液量評価時の注意 ・体液量を1つの指標で評価することは困難で あるため、複数の指標を使用して総合的に判 断する必要がある ・輸液による容量負荷に応じて、経時的に変化 を追い、再度評価することが重要 3、輸液製剤の種類と 使い分け 6 2015/6/23 輸液製剤の種類 ①食塩水、砂糖水で浸透圧をあわせる →生理食塩水(0.9%NaCl)、5%ブドウ糖 ②細胞外液の改良 生理食塩水 Ca,Kの添加 リンゲル液 緩衝剤の添加 乳酸リンゲル液 より生理的な緩衝剤 酢酸リンゲル液、重炭酸リンゲル液 7 2015/6/23 ③1号液~4号液の作成 生食を5%ブドウ糖で割ったもの 生理食塩水 154mEq/L 5%ブドウ糖 混合 1/2生食 77mEq/L 1号液 1/3生食 51mEq/L 2号液 1/4生食 38mEq/L 3号液 1/5生食 31mEq/L 4号液 細胞外液の使い分け □使い分けるときに考慮する項目 ・Na濃度 ・酸塩基平衡 ・K濃度 ・Ca濃度 例 下痢→○酸リンゲル液 高カルシウム血症→生理食塩水 8 2015/6/23 1号液~4号液の使い分け ・1号液→4号液になるほどNa濃度が下がる ・1号液は細胞外液よりもNa濃度が低く、Kを 含まないため、心不全や腎不全の人でも使 いやすい ・3号液は1日分の水、電解質を補充するため のもの ・1日分の必要な水分は30~40ml/kg、Naは70 ~100mEq、Kは20~40mEq 4、輸液療法 9 2015/6/23 輸液療法の種類 補 充 療 法 ( 広 義 ) ①初期輸液: 有効循環血漿量を確保し、循環動態を安 定させる ②補充輸液(狭義): 不足した体液・電解質を補充し、体液バラ ンスを正常化する ③維持輸液: 現在の体液バランスをそのまま維持する 輸液療法フローチャート 体液バランス の崩れ なし あり 循環動態 不安定 初期輸液 循環動態安定 補充輸液+維持輸液 体液バランス正常 維持輸液 10 2015/6/23 初期輸液療法 □ステップ1 脱水をvolume depletionとdehydrationに分け て考える ECF ECF ICF volume depletion ECF ICF dehydration ICF ECF:細胞外液 ICF:細胞内液 ■:体液喪失分 □ステップ2 脱水の程度は?体液欠乏量を推測する 脱水の重症度と臨床所見 重症度 体重減少 血圧 脈拍数 尿量 軽症 3% 正常 正常 減少 中等症 6% 低下 増加 乏尿 重症 9% 高度低下 高度増加 無尿 ○血漿欠乏量を推定するための概算式 血漿欠乏量(L)=体重×0.2×(測定Hct/通常Hct-1) 11 2015/6/23 □ステップ3 輸液製剤の処方 ・補充輸液+維持輸液を意識して輸液療法を 実践する ・維持輸液の基本は3号液 ・低張な3号液を漫然と投与し続けると医原性 の低ナトリウム血症を引き起こすことがある ・1日分の必要な水分は30~40ml/kg、Naは70 ~100mEq、Kは30~40mEq 症例 特に既往がない35歳男性。3日前にユッケを食べた後 から急性胃腸炎を発症し、嘔吐と下痢が続いた。自宅で 様子を見ていたが、来院当日は全身倦怠感が強く、起 立時のふらつきを認めたため救急外来を受診した。来 院時、嘔吐や下痢は治まっていたが、吐気の症状は残 り、経口摂取不良のため、輸液療法目的で入院とした。 来院時、体温は36.2℃、血圧100/50mmHg(軽度の血圧 低下)、脈拍数102/分(脈拍数軽度上昇)であった。来院 時の体重は60Kg(普段の体重は64Kg)、血液検査でHct 値は58%(通常の値は47%)、血清Na値は138mEq/Lで あった。病歴聴取により尿量が普段より少なくなっている ことが判明している 12 2015/6/23 □ステップ1 目の前の患者の脱水はvolume depletionと dehydrationのどちらか? ・急性腸炎による嘔吐、下痢の症状が前面に出 ている ・起立時のふらつき→起立性低血圧 ・高ナトリウム血症はない volume depletion □ステップ2 脱水の程度は?体液欠乏量を推測する ・血圧低下、脈拍数増加、尿量減少を認める ・6%の体重減少 ・重症度は中等症 ・血漿欠乏量=64×0.2×(58/47-1)=2.9L 約3Lの血漿欠乏量と推測できる 13 2015/6/23 □ステップ3 補充輸液+維持輸液を意識して輸液療法を実 践する ○補充輸液 下痢や嘔吐に伴うvolume depletion →生理食塩水など細胞外製剤が適当 ○維持輸液 64×30~40=1920~2560mL(約2L) 低ナトリウム血症はない →3号液が適当 補充輸液と維持輸液を総合的に考えると・・・ ・輸液製剤のNa濃度は細胞外液と3号液の 間で、1/2生理食塩水が適当 ・ 1/2生理食塩水はカリウムを含まないため、 カリウム製剤の混注が必要 ・Kは30~40mEqの補充が必要 ○輸液の処方例 KN1A500mL1本にアスパラカリウム10mEq1筒 を混注した輸液製剤を4本/日(約80mL/時) 14
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