平成22年度 経済産業省委託事業 平成22年度 アジア人財資金構想 共通カリキュラムマネージメントセンター事業 報告書 平成23年3月 財団法人 海外技術者研修協会 本書は、財団法人海外技術者研修協会が経済産業省より平成22年度受託事業として委 託を受け実施した「平成22年度アジア人財資金構想共通カリキュラムマネージメントセ ンター事業」の報告書です。 目次 はじめに .............................................................................................................................. 1 第1章 事業概要 1 事業項目一覧.......................................................................................................... 2 2 実施体制................................................................................................................. 3 3 事業の実施期間...................................................................................................... 5 第2章 開発した教材等に係る講師トレーニング事業 1 講師研修................................................................................................................. 6 2 巡回訪問による実施支援 ....................................................................................16 第3章 教材等の効果検証及び改善事業 1 カリキュラム・教材の管理と一般化 ..................................................................22 2 評価ツールの運用効果の検証 .............................................................................26 3 修了留学生追跡調査............................................................................................36 第4章 自立化支援事業 1 自立化チェックリスト ........................................................................................68 第5章 その他の事業 1 委員会の設置.......................................................................................................70 2 他機関との連携・補完関係の強化......................................................................71 3 報告書の作成.......................................................................................................71 第6章 事業評価と今後の提言 1 事業評価..............................................................................................................72 2 今後の提言 ..........................................................................................................91 添付資料 自立化チェックリスト はじめに 経済産業省及び文部科学省が共同で平成19年度より実施している「アジア人財資 金構想」事業は本年で4年目となる。この事業では、アジア諸国をはじめとする海外 の優秀な学生を日本へ留学生として迎え、大学・大学院在学中に、日本企業で活かせ る高度な能力の育成を行っている。卒業後、彼らは、日本社会を拠点にして、グロー バル人材、ブリッジ人材として活躍することが期待されている。現在、本事業に参加 する留学生は、全国の大学に所属し、就職活動から入社後に必要とされる知識・スキ ル・マインドを習得するために、大学・企業等からなるコンソーシアムにて研修を受 けている。 本報告書は、当協会が実施した「アジア人財資金構想共通カリキュラムマネージメ ントセンター事業」の平成22年度事業についてまとめたものである。当協会はカリ キュラムマネージメントセンターとして、各地のコンソーシアムを通じて留学生に対 する研修の支援を行っている。本報告書では、今年度行った講師研修による人材育成 事業、教材一般化、評価実施状況、修了生追跡調査、事業評価またそれらの結果を踏 まえた事業全体に関する提案についてまとめた。 近年の経済状況から大学生の就職内定率が過去最低の数値を記録しているが、その 一方で外国人留学生に向けられる企業からの期待は年々高まってきている。真の高度 人材を本事業から日本社会に輩出してきた功績は大きく、各機関からの期待も感じて いるところである。 なお、本事業の実施には、コンソーシアムの方々、また運営委員会委員の協力が欠 かせない。日ごろより多大なる協力を頂いている皆様に敬意を表し、改めてここでお 礼を申し上げたい。本報告書が、本事業の自立化に向けた取り組みに役立つこと、ま た今後の留学生支援事業の一助になり、国際社会に貢献していくことを切に願ってい る。 平成23年3月 財団法人海外技術者研修協会 1 第1章 事業概要 AOTSは、平成22年度「アジア人財資金構想共通カリキュラムマネージメントセン ター事業」(以下、本事業)の「共通カリキュラムマネージメントセンター」 (以下、本セ ンター)として、全国のコンソーシアムで実施されるビジネス日本語・日本ビジネス研修の 支援を行った。平成22年度は、事業開始後4年目であり、アジア人財資金構想(以下、 アジア人財事業)全体をPDCAサイクルでとらえたときに、 「A(アクション)」フェー ズとなる。 今年度の事業では、引き続き各コンソーシアムの研修の支援を行うとともに、次年度以 降、各コンソーシアムにおいてビジネス日本語・日本ビジネス研修を自立的に実施できる ように支援を行った。本報告書では本センターが1年間取り組んできた本事業の内容と成 果・課題について報告する。 第1章では本事業の事業項目一覧とその各概要、実施体制、各事業項目の実施時期につ いて報告する。 1.事業項目一覧 1.1 開発した教材等に関わる講師トレーニング事業 (1)講師研修 全国で展開される研修事例等の分析・検討・意見交換を通して、自立化後の研修を牽 引していく中核的人材(コーディネーター)を育成する目的で、集合型講師研修を2 回、地域型講師研修を5回実施した。 (2)巡回訪問による研修支援 研修現場の現状と課題を把握し現場のニーズに応じたサポートを行うこと、また自立 化に向けた各管理法人の取り組み状況を把握し自立化を支援することを目的に、全国 の研修現場を訪問した。 計47回実施(高度専門事業24、高度実践事業17、経済産業局6) 1.2 教材等の効果検証及び改善事業 (1)カリキュラム・教材の管理と一般化 本事業において過年度に開発したカリキュラム・教材を今年度も各管理法人に配信し た。また、事業成果を普及することが重要であるとの観点から、アジア人財事業関係 者に限らず広く一般の人々も開発教材が利用できるように、著作権関連の整備、教材 の改訂作業を行った。一部の教材については一般公開するに至った。 2 (2)評価ツールの運用効果の検証 本事業参加学生の能力伸長の検証のため、BJT個別テストを今年度も2回実施した。 また評価ツール(日本語力チェックリスト、社会人基礎力チェックリスト)の使用状況 についても実態把握を行った。 (3)修了留学生追跡調査 本事業の取り組みの効果検証の為、修了留学生に対し、アンケート調査、インタビュ ー調査を実施した。アンケート調査は244名から回答を得た。インタビューは計9 回、計19名に対して実施した。 1.3 自立化支援事業 上記1.1および1.2の取り組みが、全て自立化支援にあたるが、これら以外にも、 本センターに蓄積されているノウハウを分析・整理し、自立化に必要とされる参照指 標として自立化チェックリストを作成した。 1.4 その他の事業 (1)委員会の設置 有識者5名による「共通カリキュラムマネージメント委員会」を編成し、本事業によ る成果の普及と事業評価のために専門的見地に基づく助言を得た。 (2)事業評価 本事業の4年間を総括すること目的として事業評価を実施した。 (3)他機関との連携・補完関係の強化 (4)報告書の作成 2.実施体制 2.1 プロジェクト担当者 統括責任者 理事・AOTS日本語教育センター長 春原 憲一郎 経理責任者 片岡 吉道 事業担当 AOTS日本語教育センターグループ長 小柴 基弘 AOTS日本語教育センター調査役 飯塚 達雄 AOTS日本語教育センター上席日本語専門職 神吉 宇一 AOTS日本語教育センター 常川 早希子 AOTS日本語教育センター 杉山 充 AOTS日本語教育センター 原田 容子 AOTS日本語教育センター 神作 英香 3 2.2 実施体制図 共通カリキュラム マネージメント 委員会 AOTS 【統括責任者】 理事・AOTS日本語教育センター センター長 春原 憲一郎 【経理責任者】 出納長 片岡 吉道 【事業担当】 AOTS日本語教育センター グループ長 小柴 基弘 調査役 飯塚 達雄 上席日本語専門職 神吉 宇一 グループ員 常川 早希子 杉山 充 原田 容子 神作 英香 (財)日本漢字能力検定協会 BJT個別テスト (ビジネス日本語能力テスト) 提供協力 4 3.事業の実施期間 (1)事業実施期間:平成22年4月1日から平成23年3月31日まで (2)事業実施日程: 平成22年 4月 5月 6月 7月 8月 1)集合型研修 (コーディネー ター研修) 平成23年 9月 10月 ▲ ▲ ▲ 11月 12月 1月 ▲ ▲ 2月 3月 ▲ ▲ (1)開発し た教材等 に係る講師 2)地域型研修 トレーニン (講師研修) グ事業 3)巡回訪問によ る個別具体事 例の情報発信 1)カリキュラム・ 教材の管理と 一般化 (2)教材等 の効果検 証及び改 善事業 2)データベース を活用した評価 ツールの運用 効果の検証 12/4-12/19 BJT個別試験 7/17-8/1 BJT個別試験 検証作業 3)修了留学生 追跡調査 インタビュー アンケート 1)(1)及び(2)の 取り組みを通し た自立化支援 (4)その他 分析・考察 随時実施 (3)自立化 支援事業 2)マネージメン トセンター業務 の分析・整理を 通した自立化 支援 1)委員会設置 公開 一般化準備作業 (著作権整備・校訂等) 自立化チェックリスト 事業評価 ▲ ▲ 2)他機関との連 携・補完関係の 強化 随時実施 3)報告書の作 成 5 ▲ 第2章 開発した教材等に係る講師トレーニング事業 本章では、ビジネス日本語研修および日本ビジネス研修の講師を主な対象とした講師研 修および巡回訪問による研修支援事業について報告する。 1.講師研修 1.1 概要 (1)目的 今年度の講師研修は、アジア人財事業の自立化後に、継続的にビジネス日本語研修・ 日本ビジネス研修を各地域で実施できるように、地域の中核的人材の育成を目的とした。 中核的人材の具体的な人物像は、大学や地域の独自性、学生の特性等に応じた研修を柔 軟に設計し、自立化後も継続的に研修の運用と改善を遂行できるコースコーディネータ ーを想定した。 研修の形態は、集合型(東京・大阪)と地域型に分けて実施した。集合型研修では各 コンソーシアムの共通課題として、自立化へのイメージ作りと動機付けおよび研修の実 践例を共有し各現場の課題を解決するためのヒントを得る場と位置づけた。 一方、地域型は、実施会場を地方におき、各現場の多様性・個別性への対応として現 場からのニーズに応じた研修を提供した。 (2)対象者 講師研修の実施にあたっては、以下の者を主な対象者として設定した。 集合型:全国のアジア人財事業における研修コーディネーターおよびコース管理に関 わる講師 地域型:講師研修実施地域におけるアジア人財事業のビジネス日本語・日本ビジネス 研修の講師および将来類似する研修を担当する可能性のある講師 留学生の就職支援に関係する大学関係者 1.2 研修の内容 (1)集合型講師研修 テーマ:研修の自立化と研修事例の共有 日時・場所: 東京会場:平成22年8月5日(木)~6日(金) AOTS東京研修センター(東京・足立区) 大阪会場:平成22年8月24日(火)~25日(水) 6 AOTS関西研修センター(大阪・住吉区) ※東京と大阪でほぼ同一内容で実施 内容: ・研修の自立化に向けた参照指標および自立的に研修を実施するための PDCA サイ クルに関する講義 ・研修事例の共有を通じたビジネス日本語教育の課題とその解決方法に関する講義 と演習 ・ケースメソッドを応用した問題解決に関する講義と演習 講師:5名 武井 直紀(東京工業大学留学生センター) 池田 玲子(東京海洋大学海洋科学部海洋政策文化学科) 関 かおる(神田外語キャリアカレッジ)※東京会場のみ 栗原 由加(京都大学国際交流センター)※大阪会場のみ 神吉 宇一(AOTS日本語教育センター) 参加者: 東京会場:12名 大阪会場:30名 全国のアジア人財事業におけるビジネス日本語・日本ビジネス研修のコーディネー ターおよびコース管理に関わる講師 実施報告: ・次年度以降の研修実施体制の構築について課題を明確にし、対応が必要な項目に ついてチェックリストを使いながら整理した。 ・全国で実施されている研修事例を共有し、グループによる事例分析と討論を通じ て、研修現場で抱える課題について問題点を把握し、解決の道筋を立てる活動を 行った。 ・留学生が就職後に直面する課題に対応できるように、ビジネススクールで活用さ れているケースメソッドの手法の概要を学んだ上で、参加者自らが討論を通じた 問題解決手法を体験し、どのように各自の研修現場に活かすかを検討した。 参加者の感想・成果: ・研修の自立化に関する研修内容については、 「将来を見据えた上で自立化ステップ を考えるきっかけとなった」 「チェックリストは参考になった」という声があった。 ・研修事例の共有については、 「自分が実践したい内容と合致していたので参考にな った」 「紹介された授業実践が目からうろこだった。講師の取り組みに感銘を受け た」など、具体的な取り組み例が今後の授業実践や研修設計の上で参考になった という感想が多かった。 ・ケースメソッドの問題解決演習については、ケースメソッドの有効性を認める参 加者が多く、今後、ケースメッソッドの活用を検討したいとの声が多かった。特 7 に、インターンシップや就職活動など、教室外との活動と連携した形で実施して みたいという意見があり、各研修現場で蓄積した経験を授業の中で活用する手法 を提供することができたと考えられる。 事後アンケートの結果:参加者の満足度 =東京会場:回答者9名 =大阪会場:回答者26名 (人) 20 18 16 14 12 10 14 11 8 6 4 2 4 4 大変満足 やや満足 0 1 0 0 どち らでもない 1 やや不満 0 不満 (2)地域型講師研修 地域型講師研修では、巡回訪問で得たニーズに基づき、自立化を支援できる研修テー マを各地域の管理法人と相談しながら設定した。実施にあたっては主に当該地区の管理 法人と共催し、企画段階から連携することにより、地域の多様性に沿った研修プログラ ムを提供することができた。また、アジア人財関係者以外で今後留学生に対するビジネ ス日本語研修・日本ビジネス研修に関心のある講師や、大学の留学生支援の事務関係者 も参加者し、本事業の成果普及に貢献した。 地域型研修実施一覧(計5回) 研修テーマ 1)プロジェクトベース型授業の設計 実施日 平成22年 と講師の役割について 2)著作権と教材について 実施地 参加者 石川県金沢市 18名 宮城県仙台市 11名 石川県金沢市 20名 福岡県北九州市 22名 香川県高松市 17名 9月2日 平成22年 9月24日 3)留学生に対するビジネス日本語研 修の実際と課題 4)留学生へのビジネス日本語教育に 対する産業界のニーズと授業設計 5)社会で求められる力について -社会人基礎力という視点から- 平成22年 10月23日 平成22年 12月11日 平成23年 1月22日 8 1)プロジェクトベース型授業の設計と講師の役割について 日時・場所: 平成22年9月2日(木) ・リファーレ(石川県金沢市) 共催組織: 財団法人石川県産業創出支援機構、金沢大学大学院自然科学研究科 金沢大学留学生センター、財団法人石川県国際交流協会 内容: ・共通教材「東アジア進出企業の海外戦略」を例にした講師の授業実践紹介 ・同教材に関する開発経緯とねらいについての解説 ・プロジェクトベースラーニングで講師に求められる役割に関する説明 ・同教材を題材とした活動案を参加者同士で検討するワークショップ 講師:1名 山本富美子(武蔵野大学文学部大学院言語文化研究科) 参加者: 18名 北陸地区の高度専門事業実施コンソーシアムを中心としたビジネス日本語・日本ビ ジネス研修の講師および関係者 実施報告: ・高度産業人材育成におけるビジネス日本語研修では、専門性の高い多岐に渡るテ ーマを授業で扱う機会が多いため、日本語講師がどのように授業を組み立てたら よいかについて、教師の心構えと役割について共通教材「東アジア進出企業の海 外戦略」を例にして講義を行った。 ・また、ワークショップでは、同教材の第1回目の授業について、どのような授業 の進め方が望ましいか、グループごとに議論および発表を行い、各自のアイデア を共有すると共に、講師による個別指導を行った。 参加者の感想・成果 参加者からは、 「教室内を社会的な実践活動の場とみなして、教師と学生に役割を与 えることや、社内研修の場と設定するなど、現場の講師にとって実践的な授業の工 夫のヒントを得ることができた」という意見があった。高度産業人材育成という観 点から、既に学習者は自ら学ぶ力を備えているものと考え、学習するのは学習者で あり、教師はそれを促進する役割であるという教育理念を実践例を交えて分かりや すく説明された。現場の講師たちは自らの授業実践を内省し、教師の役割について 考え直すきっかけとなった。 9 事後アンケートの結果:参加者の満足度(回答者15名) (人) 10 8 6 4 9 2 4 2 0 大変満足 やや満足 どち らでもない 0 やや不満 0 不満 2)著作権と教材について 日時・場所: 平成22年9月24日(金)国際アカデミーランゲージスクール(宮城県仙台市) 内容: ・国庫事業で開発した教材の継続的な使用に関して著作権利用に関する留意点 ・インストラクショナルデザインを援用した日本語教材の分析および開発に関する 説明 ・各コンソーシアムで開発した教材や研修プログラムの紹介と共有 山形大 e-learning教材/東北大 e-learning教材 会津大の教材開発状況/テンプスタッフのプログラム概要 講師:2名 岡本薫 (政策研究大学院大学) 柴原智代(国際交流基金日本語国際センター) 参加者: 11名 東北地区コンソーシアムにおけるビジネス日本語・日本ビジネス研修の講師および 関係者 実施報告: ・著作権に関しては、著作権の基礎的知識から、教育使用に関する著作権法の例外 適用の実例に関する説明、また、公的資金によるプロジェクトで教材を開発し使 用する際に留意すべき事項として教材の著作者と管理組織の間で契約書を結ぶこ との重要性に関して、実例を交えながら講義を行った。 ・教材開発に関しては、インストラクショナルデザインに基づいた教材開発のプロ セスや現在使用している教材の評価方法について、講師の実体験に基づいて講義 を行った。 ・開発教材の紹介と共有では、開発した教材を中心に、各コンソーシアム同士の情 10 報交換の場とし、次年度以降の効果的な取組へと繋げるために情報の共有とネッ トワークを構築できるようにした。 参加者の感想・成果 参加者からは著作権の概要・留意事項がコンパクトによくわかり、とても参考にな ったという声が多かった。東北地域では、地域の特性に即した教材を自主的に開発 しているコンソーシアムがあり、本事業で開発した教材をどのように自立化後に活 用し、どう継続的に改善していくかについて、重要な示唆を得ることができる研修 となった。 事後アンケートの結果:参加者の満足度(回答者7名) (人) 7 6 5 4 3 2 4 1 3 0 大変満足 やや満足 0 どちらでもない 0 やや不満 0 不満 3)留学生に対するビジネス日本語研修の実際と課題 日時・場所: 平成22年10月23日(土) リファーレ(石川県金沢市) 共催組織: 社団法人中部産業連盟 内容: ・アジア人財事業におけるビジネス日本語教育の取り組み紹介 ・中部地方高度実践事業のビジネス日本語教育プログラムの紹介 ・高度実践事業金沢クラスの授業見学 ・アジア人財事業参加留学生による体験談共有 ・全体意見交換 講師:2名 柳川友美(I.C.NAGOYA) 神吉宇一(AOTS日本語教育センター) 参加者: 20名 北陸地区高度実践事業コンソーシアムにおけるビジネス日本語・日本ビジネス研修 の講師および参加大学の関係者 11 実施報告: ・現在行っているビジネス日本語教育を議論の題材として、北陸地区の高度実践事 業における内定後教育を一層強化するとともに、来るべき自立化に備えて、これ まで取り組んできた研修プログラム内容を総括し、関係者の円滑な協力体制の構 築に寄与することを目的として研修を実施した。 ・参加者は高度専門事業および高度実践事業の関係者だけでなく、周辺の大学や経 済団体からも参加があった。 ・授業見学会では、金沢クラスにおいて実際に学生が授業で討論を行っている場を 見学し、その後に、授業の到達目標や実施方法など具体的な議論を参加者間で行 った。 ・既に本事業を修了し企業に勤務している修了留学生を招き、研修で役立っている ことやさらに強化すべき点、また就職後に直面する課題について話してもらい、 研修設計のヒントを得る機会とした。 参加者の感想・成果: 参加者からは、 「他の教育機関の講師の人たちと情報交換出来たのはもちろんだが、 日本語教育に関わっていない人の意見を聞くことで、新たな視点から問題点につい て考えることができてよかった」 「授業見学会でディスカッションの仕方が勉強にな った」 「修了留学生の意見を参考にして日本語の表現や論点整理などを指導したい」 といった意見があった。 高度専門・高度実践の枠や日本語教育の枠を越えた多様な参加者同士で意見交換を 行ったこと、また、授業見学を通して普段の実践を内省したことで、参加者各自が 問題点の整理と自立化後の研修設計に関するヒントを得ることができた。 事後アンケートの結果:参加者の満足度(回答者13名) (人) 7 6 5 4 3 7 6 2 1 0 大変満足 やや満足 0 どちらでもない 12 0 やや不満 0 不満 4)留学生へのビジネス日本語教育に対する産業界のニーズと授業設計 日時・場所: 平成22年12月11日(土)北九州産業学術推進機構(福岡県北九州市) 共催組織: 財団法人北九州産業学術推進機構 内容: ・九州経済産業局が実施した留学生等海外高度人材活用方策調査の結果報告 ・トヨタ自動車九州株式会社における外国人人材活用の紹介 ・留学生へのビジネス日本語教育に対する産業界のニーズと授業設計について講義 とワークショップ 講師:4名 植木健一郎(九州経済産業局国際部投資交流促進課) 安永尚哉 (トヨタ自動車九州株式会社人財開発部人財開発室) 近藤彩 (政策研究大学院大学) 神吉宇一 (AOTS日本語教育センター) 参加者: 22名 九州地区高度専門事業コンソーシアムにおけるビジネス日本語・日本ビジネス研修 の講師および参加大学の関係者 実施報告: ・留学生等海外高度人材活用方策調査の結果報告では、九州地区における産業界の 留学生に対する期待や採用状況について紹介した。 ・トヨタ自動車九州における外国人人財の活用の紹介では、同社で活躍する元留学 生の社内での様子や就職後の困難点、また同社の人財育成の現状について説明し た。 ・これら二つを踏まえて、ビジネス日本語研修において、産業界や企業のニーズを どのように研修設計や授業の実践に応用するか、能力記述文やケースメソッドの 概念・手法を取り入れて参加者同士で検討した。 参加者の感想、成果 参加者からは、 「産業界の外国人留学生に対する考えが分かった」 「留学生の採用状 況の動向を踏まえて、学生の動機付けにつなげたい」 「授業計画の際に能力記述文を 応用したい」といった感想があった。産業界の現状やニーズを踏まえた研修設計を 行う上で、能力記述文やケースメソッドの活用という具体的な手法について体験を 通して学ぶことができたものと考えられる。 13 事後アンケートの結果:参加者の満足度(回答者18名) (人) 14 12 10 8 6 12 4 6 2 0 大変満足 やや満足 0 どち らでも 0 やや不満 0 不満 5)社会で求められる力について-社会人基礎力という視点から- 日時・場所: 平成23年1月22日(土) 香川大学(香川県高松市) 共催組織: 香川大学インターナショナルオフィス 内容: ・社会人基礎力を育成するための授業に関する解説 ・社会で求められる力の育成を目指した英文読解の体験授業 ・社会で求められる力の育成を図る日本語学習デザインをテーマにしたワークショ ップ ・社会人として求められる能力を育成するための学習のデザインについて参加者同 士の意見交換 講師:1名 今村楯夫(東京女子大学現代教養学部) 参加者: 17名 四国地区コンソーシアムにおけるビジネス日本語・日本ビジネス研修の講師および 関係者 実施報告: ・社会人基礎力を育成するための授業に関する講義では、講義・作業・討論・発表 を組み合わせる工夫や、授業毎に小レポートを課すことの教育効果について、授 業展開の方法について説明した。 ・これらについて「オレゴン小史の英語読解」の体験授業を通じて理解を深めた。 ・ワークショップでは「日本人の職業観と自身のキャリアパスを考える」という授 業のデザインについて雑誌記事を題材としてペアワークやグループ討論の課題を 14 参加者同士で検討した。 ・意見交換では、一日の研修内容を踏まえて社会人基礎力養成のための実践的な活動 について、参加者自身の実践経験に基づいて議論を行った。 参加者の感想・成果: 参加者からは、 「今までにない考え方・授業展開の方法を学んだ」 「体験授業で担当 講師の参加者に対する対応の仕方が参考になった」 「社会人基礎力の内容の大切さを 改めて認識した」という感想があった。参加者はすでに理念的なことは十分に理解 しているようであり、具体的な学習指導の幅を広げることを求めているようであっ た。多様な実践例の積み重ねと教育方法の整理を、現場講師たち自身が進めていく 上で、今回の研修がその土台としての役割になったと考えられる。 事後アンケートの結果:参加者の満足度(回答者11名) (人) 10 8 6 4 2 7 4 0 大変満足 やや満足 0 どちらでも 0 やや不満 0 不満 1.3 講師研修の成果と課題 アジア人財事業は4年目となり、また1期生・2期生の修了生を輩出し、各コンソー シアムにおいて研修の実績、成功の経験、実施上の課題や問題点が蓄積されている。こ うした状況に基づき、集合型講師研修では特に研修事例の共有を図ること、そして留学 生の就職活動や就職後の課題をケースとして教材化することに焦点を当て、参加者が自 立的に研修プログラムの改善に役立てられるような講師研修を行うことができた。また、 地域型講師研修では、各管理法人と密接に連絡を取り合って、地域のニーズに即した研 修内容を提供することができた。全7回の講師研修を通じて、全国の研修現場が抱える 個別の課題を解決するための一助となることができた。 アジア人財事業を通じて、現場の講師たちは試行錯誤を重ねながらも留学生に対する ビジネス日本語・日本ビジネス研修に関する豊富な経験知を有している。今年度の地域 型講師研修の参加者は、アジア人財事業関係者を中心としながらも、高度実践事業の参 加大学、留学生の就職支援に興味を持つ研修会場周辺の大学関係者、また産業界の関係 者にも積極的に講師研修の参加の周知を行った。今後は、アジア人財事業の枠を超えて、 引き続き、成果を普及することが必要である。 15 2.巡回訪問による実施支援 2.1 目的 巡回訪問では、以下の2点を目的として全国各地のコンソーシアムで行なわれている研 修現場を直接訪ね、研修や参加学生の様子、講師及び関係者との意見交換を行なった。 ・研修の質的向上:研修実施体制や研修実施上の課題の把握およびアドバイス ・自立化支援 :自立化への取り組み状況の把握および情報の交換と共有 2.2 巡回訪問の内容 (1)研修の質的向上 1)研修実施状況の確認 各コンソーシアムの研修実施状況について以下の項目の確認を行った。 講師体制、研修時間数、目標設定、使用教材、学習評価の実施状況 学生の出席状況、就職活動の状況 研修上の課題となっている事柄については、他のコンソーシアムの事例を紹介したり ビジネス日本語教育の観点から個別にアドバイスを行ったりした。また、講師研修に おけるテーマ設定や研修内容に反映させる問題の解決を図った。 2)研修事例の共有 ・昨年度、本センターが作成した『日本ビジネス・ビジネス日本語研修事例集』を紹介 し、各研修現場が他のコンソーシアムの実践例を共有し、自立的に研修上の課題を解 決するために参考するように促した。 ・昨年度高度専門案件として採択された大学に対しては、研修体制・研修計画構築に対 し、先行して実施しているコンソーシアムの研修事例や課題を紹介することを通して 円滑な研修運営が行えるように支援を行った。 3)授業見学とフィードバック 訪問の際は、できる限り授業見学を行い、授業見学後は以下の観点から授業担当講師 やコーディネーターへフィードバックし、研修内容の質的改善に役立てるように促し た。 -就職活動や就職後に必要とされる能力を意識した研修設計になっているか -インターンシップや就職活動など学生が教室の外で体験する事柄と研修内容が 関係付けられているか -単に日本語という言語を学習するだけはなく、社会人基礎力養成を視野に入れ た活動が実践できているか 4)評価ツールの活用促進 本センターから提供している評価ツール(社会人基礎力チェックリスト・日本語力チ 16 ェックリスト)について、十分に活用できていない現場については、「研修の目的や 能力開発の目標を学生自身が認識すること」や「研修を通じて具体的に何ができるよ うになったか・自身がどう変わったかを可視化すること」の重要性について改めて説 明を行い、研修プログラムの改善に役立てるように促した。 (2)自立化支援 1)管理法人主催のセミナー等への参加を通じた支援 各コンソーシアムが実施するセミナー、講師研修会、プロジェクト委員会等に出席し、 コンソーシアムの自立化に向けた個別のアドバイスを行った。主な内容を以下に記す。 -本事業で蓄積した研修事例を紹介し共有することによる成果の普及 -本センターが過年度に開発した共通教材や共通カリキュラムの開発プロセスを 公開・解説することによる自立的な研修プログラム設計の支援 -アジア人財事業におけるビジネス日本語研修の成果と課題を総括することによ り今後必要とされる研修プログラムの方向性に関するアドバイス -修了留学生追跡調査の結果を報告することを通じて、企業で実際に必要とされ る能力や産業界のニーズを十分にふまえた研修設計・授業実践に向けたアドバ イス 2)自立化状況の把握 各コンソーシアムが次年度以降の自立化に向けてどのような取り組みを行っている かヒアリングを行った。ヒアリングの結果を以下にまとめる。 ①ビジネス日本語・日本ビジネス研修の継続に向けた全体的な傾向 ・管理法人ごとに自立化に向けた取り組み状況や意識に温度差がある ・アジア人財事業における各研修プログラムをパッケージ「ビジネス日本語/日本 ビジネス/インターンシップ/就職支援/産学連携専門教育(高度専門の場合) 」 として継続実施する意向を示すコンソーシアムは極少数であり、ビジネス日本 語・日本ビジネスをその他のプログラムと切り離して存続させようとするところ が多い ②事業種別の傾向 <高度専門事業> ・カリキュラム、教材、授業実施形式(プロジェクト型)、研修目標(就職支援)な どのノウハウを残し、活用することを模索している ・アジア人財事業の実施を契機にビジネス日本語を大学の共通科目に確立するため に準備しているところが多い(大学のリソース活用) 17 ・大学のリソースを活用する場合、次のケースに分けることができる -講師も含めて引き続き大学内の組織が継続して実施を予定するケース -大学外の組織に委託していた実施部分を学内組織に所属する講師を活用して 実施を予定するケース -新たに日本語教育を企画運営する組織を立ち上げて当該科目を強化する予定 のケース ・さらに、受講者の範囲については、次のケースに分けることができる -範囲の拡大を予定しているケース(研究科全体/全学の学生対象) -参加希望者に日本語力の条件付け(上級/超上級レベルのみ)を予定するケ ース ・ビジネス日本語・日本ビジネス研修を次年度以降継続しない意向であるところ、ま たは未定とする管理法人もある <高度実践事業> ・大学単位で研修を実施している管理法人では、本事業に限って実施してきたビジ ネス日本語の授業を当該大学における正規科目として単位化し継続しようとする 動きがある(大学リソースの活用) ・留学生を対象とした就職支援セミナー(就職活動のノウハウ、面接・エントリー 対策)の実施を検討している管理法人もあるが、経営的な観点から研修実施の人 員体制や予算確保に苦慮するところが多い(管理法人の事業として) ・アジア人財事業を継承する受け皿として、地方自治体や関係諸団体と連携し事業 化するために、ビジネス日本語研修等のパイロットプログラムを実施する取り組 みがある(別組織の事業) ・ビジネス日本語・日本ビジネス研修を次年度以降継続しない意向であるところ、ま たは未定とする管理法人もある 18 ③各管理法人の意向ヒアリングのまとめ (情報はヒアリング時点によるものであり年度末時点で状況が変わっている可能性が ある) 意向 実施体制 A-1:大学のリソース活用 高度専門 A:継続する 管理法人数 16 A-2:大学以外の管理法人の事業として 1 A-3:管理法人から外部へ委託 1 A-4:別組織の事業として - (法人数 :23) 高度実践 B:継続しない 1 C:未定 4 A:継続する A-1:大学のリソース活用 2 A-2:管理法人の事業として 4 A-3:管理法人から外部へ委託 1 A-4:別組織の事業として 3 (法人数 :13) B:継続しない 1 C:未定 2 19 2.3 巡回訪問先一覧 高 度 専 門 留 学 生 支 援 事 業 高 度 実 践 留 学 生 支 援 事 業 経 済 産 業 局 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 1 2 3 4 5 6 7 8 訪問先 北海道大学 東北大学 山形大学 会津大学 千葉大学 東京工業大学 立教大学 東京大学 東京農工大学 東京工科大学 東海大学 群馬大学 北陸先端科学技術大学院大学 金沢大学 名古屋工業大学 大阪大学 京都大学 立命館大学 広島大学 香川大学 九州大学 立命館アジア太平洋大学 北九州産業学術推進機構 計 北海道 東北 関東 中部 京都 大阪 兵庫 広島 広島 岡山 四国 九州 沖縄 回数 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 2 訪問日 1/31 5/12 7/16 7/5 7/15 12/22 11/11 10/7 7/23 7/16 5/17 11/2 7/27 7/28 12/3 2/21 2/9 2/2 7/1 10/18, 19 6/24 6/23 6/4, 11/26 24 札幌商工会議所 テンプスタッフカメイ WIL 中部産業連盟 KYOの海外人材活動推進協議会 関西生産性本部 兵庫国際交流会館 中国地域ニュービジネス協議会 ひろしま産業振興機構 岡山中小企業団体中央会 四国生産性本部 麻生塾 琉球大学 計 1 1 2 2 1 1 1 1 1 1 2 2 1 1/31 7/4 5/18, 12/6 8/13, 2/10 7/29 2/10 12/7 7/1 7/2 12/15 9/14, 9/30 6/3, 10/29 12/1 17 北海道経済産業局 東北経済産業局 中部経済産業局 中国経済産業局 四国経済産業局 近畿経済産業局 九州経済産業局 沖縄経済産業局 1 1/31 1 1 1 8/13 7/2 9/30 1 1 6/24 12/1 計 6 総計 47 20 2.4 巡回訪問の成果と課題 巡回訪問においても、既に各研修現場が蓄積した研修事例や問題解決のプロセスを共 有することに努めると同時に、本センターが共通カリキュラム・共通教材を開発し提供 したプロセスを整理・公開することで、各地域で自立的に研修プログラムの PDCA を回し ていけるような支援を行うことができた。 次年度以降の自立化への取り組み状況については、巡回訪問を通して管理法人間での 情報共有を図り、地域・コンソーシアム内の講師や教材リソース活用等、横のつながり を構築することに努めた。しかしながら、本センターがプログラム全体のうち研修に関 する支援のみを担っているため、各管理法人の経営的・組織的な問題については、本セ ンター事業範囲を越えた部分として最後まで課題として残ったと言える。 21 第3章 教材等の効果検証及び改善事業 本章では、本事業で開発したカリキュラムおよび教材の一般化、各管理法人に提供して いる評価ツールの運用実績、また、アジア人財事業を修了した留学生に対して実施した追 跡調査について報告する。 1.カリキュラム・教材の管理と一般化 1.1 共通カリキュラム・共通教材の配信 本事業で過年度に開発した共通カリキュラムおよび共通教材を、本年度も引き続き本 センターのホームページ上で公開し、各管理法人にはIDとパスワードを発行し管理し た。 1.2 共通教材の一般化 現在、共通教材についてはアジア人財事業関係者にのみ使用を限定している。本セン ターでは、これらの教材をアジア人財事業終了後、広く一般で使用可能にすることが成 果の普及の観点から望ましいと考えた。そこで、 「一般化作業」して、共通教材を一般に 広く公開するための準備等を行った。 (1)一般化対象教材の選定 成果の普及の観点からは18種類ある全ての教材を公開することが望ましい。しかし、 平成19年の教材開発からすでに4年が経過しており、引用部分などに現在の社会状況 と合致しないものもあるなど見直しが必要であった。また、今後継続的に公開するにあ たっては、引用著作物の継続利用が重要な条件になる。そこで、一般化にあたっては、 以下2点の選定理由で教材を選定した。 ・ 「活動冊子」および「リソース集」に、他の著作物からの引用が少ないもの ・引用された著作物に今後著作権利用料金が発生しないもの 一般化する教材 A-1、A-2、A-3、A-4、D-1、D-2 計6種類 22 共通教材一覧 共通教材(公開中) 一般化対象教材 18種類 6種類 フェーズ タイトル A: A-1 就活へ!はじめの一歩 就職活動を知る A-2 業界・企業研究入門 ~就職に向けて A-3 つかめ!面接のコツ ~ A-4 就職活動ワークブック B-1 キャリアプラン プロジェクト B: B-2 インターンシップ プロジェクト 日本と自国の違 B-3 知的財産権プロジェクト いを知る B-4 仕事と家族プロジェクト B-5 社会的起業 C-1 自立支援による地域振興の試み C-2 男女共同参画の推進 C: 企業・会社を知る C-3 D: 仕事を知る ~企業活動シミ ュレーション~ エコツアーの企画 東アジアの進出企業の海外戦略 C-5 IT コース:企業の情報化活動研究入門 D-2 D-3 D-4 ○ 地域おこしエコイベント、 C-4 D-1 一般化対象教材 自国を売り込むツアー企画プロジェク ト(旅行観光業) 団塊世代向け商品企画プロジェクト ○ (貿易業) 環境に優しい製品の開発プロジェクト (製造業) コンビニ新規店舗企画プロジェクト (流通業) ※A-4を除き、教材は「活動冊子」 「講師用手引き」「リソース集」の3点セットか らなる 23 (2)教材一般化のための著作権の整備および教材の改訂 教材を一般化するにあたり著作権に関する整備および改訂作業をした。主な事項は以 下の通りである。 1)教材に関する著作権の集約 教材の一般化にあたり、著作権の管理を明確にする必要があった。そこで、一般化す る教材については著作権を教材作成者からAOTSに集約する旨の契約を教材作成者 と締結した。これにより一般化の対象となった教材の著作権はAOTSに帰属するこ ととなった。 2)引用資料の使用・転載に関する許諾状況の見直し 教材の引用資料(外部著作物)に関する許諾についは、その著作権管理者から以下の条 件で承諾を得ていた。 ・共通教材はアジア人財事業の関係者のみが使用すること ・使用の期限は平成23年度末までであること このため、一般化対象の教材については、教材の使用者および使用期限を限定しない形 で、改めて許諾申請を行い承諾を得た。 3)改訂作業 一般化対象教材を継続的に使用するために、引用部分を見直し、現在の時代情勢にそ ぐわない資料については更新するなどの改訂をした。また、変更に伴って生じた教材の 本文上の表現の一部を見直し、修正を行った。 (3)一般化対象教材の公開方法 AOTSのホームページ上でダウンロードできるようにした。 公開教材:計6種(16冊)※前掲の通り URL :http://www.aots.or.jp/jp/jltc/kyozai.html 公開時期:平成23年3月より 使用制限:定めない 公開方法:PDF ファイル、無償ダウンロード なお、一般化対象教材以外の教材については、平成24年3月31日までアジア人財 事業関係者に限定し、これまでと同様の方法で配信する。 24 (4) 「A-4 就職活動ワークブック」の翻訳版作成 共通教材は研修において講師や他の留学生と一緒に使用することを前提しているが、 一般化対象教材に含まれる「A-4 就職活動ワークブック」については、留学生の自習 用教材として、日本独特の就職活動を留学生が一人で学習し理解できる内容となってい る。そこで、より多くの留学生に対して日本企業への就職を支援することを目的として、 「A-4 就職活動ワークブック」の翻訳版を作成した。 翻訳版は以下の6言語で作成した。翻訳版についてもその他の一般化対象教材と同様に ホームページ上に公開しダウンロードできるようにした。 ①英語、②中国語、③韓国語、④タイ語、⑤ベトナム語、⑥インドネシア語 (5)教材一般化に関する広報パンフレットの作成 一般化した教材を広く周知し、使用を促進するために教材紹介のパンフレットを作成 し、関係諸機関に送付した。このパンフレットについてもホームページ上で公開しダウ ンロードできるようにした。 25 2.評価ツールの運用効果の検証 本センターでは、各コンソーシアムが実施するビジネス日本語・日本ビジネス研修の教 育効果を測定するための評価ツールとして、 「BJT個別テスト」「日本語力チェックリス ト」 「社会人基礎力チェックリスト」を各研修現場に提供している。本章では、BJT個別 テストの実施結果および「日本語力チェックリスト」「社会人基礎力チェックリスト」の実 施状況を報告する。 2.1 BJT個別テスト (1)実施概要 「BJTビジネス日本語能力テスト」(以下、通常のBJT)は、さまざまなビジネス 場面での日本語によるコミュニケーション能力を客観的に測定・評価する試験として、 財団法人日本漢字能力検定協会が実施している。アジア人財事業において本センターが 各コンソーシアムに提供している「BJT個別テスト」は、通常のBJTで2時間要す るものを大学のカリキュラムに合わせて1時間30分で実施可能なように簡縮化したも のである。総得点は通常のBJTと同様に800点満点のままとし、テスト結果および その診断については、通常のBJTと同様にJ1+~J5の6段階の指標を得ることが出 来るように設計されている。BJT個別テストは、平成19年度よりアジア人財事業に おいて実施しており、今年度も財団法人日本漢字能力検定協会の協力を得て実施した。 (2)実施要領 BJT個別テストの実施要領は以下の通りである。 ①対象 :アジア人財事業の留学生全員 ②実施場所:各コンソーシアムにおける研修実施会場 ③実施期間:実施期間は本センターが全国一律に年2回設定 1回目(前期) 7月17日~ 8月 1日 2回目(後期)12月 4日~12月19日 受験日は各管理法人の希望に応じて、上記期間内にそれぞれ1日設定 ④受験回数:対象の学生はアジア人財事業の研修を受講している2年間で(予備教育 期間を除く)、初期(開始時)と最終(修了時)の2回受験する 初期(開始時): アジア人財事業の研修(予備教育を除く)の開始後か ら最も近い試験実施期間に受験 最終(修了時): 留学生本人の大学・大学院卒業またはアジア人財事業 のプログラム修了時期に最も近い試験実施期間に受験 ⑤申し込み:各管理法人が受験者数および試験実施日を記載した申込書を本センター 26 へ送付 ⑥結果通知: 試験実施後約1ヶ月以内に受験者個人別の「結果通知書」および「各管 理法人別の受験者点数一覧」を管理法人向けに送付 (3)BJT個別テスト実施結果 1)BJT個別テスト実施結果(全受験者) 今年度、初期値の対象試験を受けた学生は176名、最終値の対象試験を受けた留 学生は385名、合計561名がBJT個別テストを受験した。受験者の属性別の結 果概要は以下の通りである。 BJT個別テスト結果概要 種別 受験者属性 受験人数 平成21年度生 A 初期 平成22年度生 計 最終 平均点 最低点 最高点 標準偏差 64 397.3 256 641 88.4 112 428.6 196 625 94.6 176 平成20年度生 115 476.6 276 758 89.9 平成21年度生 B 270 569.6 318 712 148.1 計 385 総計 561 受験者属性 平成21年度生A 平成22年度に研修を開始し平成23年度以降に研修を修了す る予定の学生 ※予備教育参加等の関係でコンソーシアムへの所属が平成21 年度のため平成21年度生Aとした 平成22年度生 平成22年度に研修を開始し平成23年度以降に研修を修了す る予定の学生 平成20年度生 平成20年度に研修を開始し平成22年度に研修を修了する学 生 平成21年度生B 平成21年度に研修を開始し平成22年度に研修を修了する学 生 27 B JT 個 別 テス ト 実 施 結 果 平均点 800 758.0 700 641.0 最高点 712.0 625.0 569.6 600 476.6 500 428.6 397.3 400 300 最低点 318.0 276.0 256.0 196.0 200 100 0 平成21年度生A・初期 平成22年度生・初期 平成20年度生・最終 平成21年度生B・最終 BJT個別テスト結果概要 B J T 個 別 テ ス ト 初 期 値 点 数 分 布 ( 割 合 ) 平成21年度生A初期 n=64 平成22年度生初期 n=112 20.0% 18.0% 16.0% 14.0% 12.0% 10.0% 8.0% 6.0% 4.0% 2.0% 0~ 1 7 1 75 6~ 2 0 2 00 1~ 2 2 2 25 6~ 2 5 2 50 1~ 2 7 2 75 6~ 3 0 3 00 1~ 3 2 3 25 6~ 3 5 3 50 1~ 3 7 3 75 6~ 4 0 4 00 1~ 4 2 4 25 6~ 4 5 4 50 1~ 4 7 4 75 6~ 5 0 5 00 1~ 5 2 5 25 6~ 5 5 5 50 1~ 5 7 5 75 6~ 6 0 6 00 1~ 6 2 6 25 6~ 6 5 6 50 1~ 6 7 6 75 6~ 7 0 7 00 1~ 7 2 7 25 6~ 7 5 7 50 1~ 77 5 0.0% BJT個別テスト平成21年度生A・平成22年度生初期点数分布 平成21年度生Aと平成22年度生の初期値をみると平成21年度生Aの平均点は、 397.3点(J3レベル)、平成22年度生の平均点は428.6点(J2レベル)で あった。点数分布のグラフをみても平成22年度生の方が平成21年度生Aよりも点数 の高い人が多いことが分かる。 28 B J T 個 別 テ ス ト 最 終 値 点 数 分 布 ( 割 合 ) 平成20年度生最終 n=115 平成21年度生B最終 n=270 20.0% 18.0% 16.0% 14.0% 12.0% 10.0% 8.0% 6.0% 4.0% 2.0% 0~ 17 5 17 6~ 20 0 20 1~ 22 5 22 6~ 25 0 25 1~ 27 5 27 6~ 30 0 30 1~ 32 5 32 6~ 35 0 35 1~ 37 5 37 6~ 40 0 40 1~ 42 5 42 6~ 45 0 45 1~ 47 5 47 6~ 50 0 50 1~ 52 5 52 6~ 55 0 55 1~ 57 5 57 6~ 60 0 60 1~ 62 5 0.0% BJT個別テスト平成20年度生・平成21年度生B最終点数分布 平成20年度生と平成21年度生Bの最終値をみると、平成20年度生の平均点は、 476.6点(J2レベル)、平成21年度生Bの平均点は569.6点(J1レベル) であった。点数分布のグラフをみても平成21年度生Bの方が分布のピークがより高い 点数に位置していることが分かる。 29 2)初期値と最終値の比較 今年度の試験で最終値を受験した平成20年度生と平成21年度生Bについては、本 センターが所有する過年度に実施した初期値のデータと照合し、テスト結果のレベル推 移(J1+~J5の6段階)について調べた。 <平成20年度生> 平 成 20年 度 生 レ ベ ル 別 推 移 ( n = 1 1 2 ) 100% 1.8% J 1+ 8.0% 8.0% 90% J1 15.2% J1+(600~800) 80% 70% 38.4% 60% J1(530~599) J2 J2(420~529) 51.8% 50% J3(320~419) 40% 26.8% J4(200~319) 30% J3 J5(200以下) 20% 23.2% 10% 0% 22.3% J4 1.8% 初期値 2.7% 最終値 J5 0.0% BJT個別テストレベル別推移(平成20年度生) 平成20年度生のレベル別推移について、J1+~J2をみると初期値ではその割合が全 体の約半数(48.2%)だが、最終値では4分の3(75%)へと増加している。J1+ の割合は約4倍(1.8%→8.0%) 、J1の割合は約2倍(8%→15.2%)に増え ている。一方で、J3~J5の推移を見ると、初期値ではその割合が全体の約半数(51. 8%)を占めていたが、最終値では4分1(25%)へと半減している。J3については 26.8%から22.3%へ減少、J4については10分の1(23.2%→2.7%) に減少し、J5については0%となっている。これらのことから、平成20年度生の初期 と最終を比較するとJ3~J5レベルの学生が減り、J1+~J2レベルの学生が増えてい ることがわかる。 30 <平成21年度生B> 平 成 21年 度 生 B レ ベ ル 別 推 移 ( n = 2 6 6 ) 100% 4.5% J 1+ 90% 13.2% J1 5.9% 20.2% 80% J1+(600~800) 70% J1(530~599) 60% J2(420~529) 51.5% 50% J2 J3(320~419) 57.4% 40% J4(200~319) 30% J5(200以下) 20% 24.1% J3 10% 16.2% 6.4% 0% 初期値 0.4% J4 J5 0.0% 最終値 0.4% BJT個別テストレベル別推移(平成21年度生B) 平成21年度生Bのレベル別推移について、J1+~J2を見ると初期値ではその割合が 全体の約7割(69.2%)であるのに対し、最終値では8割以上(83.5%)に増加 している。(J1+:4.5%→5.9%、J1:13.2%→20.2%、J2:51. 5%→57.4%)。一方で、J3~J5の推移を見ると、初期値では約3割(30.5%) を占めているのに対し、最終値では2割以下(16.6%)に減少している(J3:24. 1%→16.2%、J4:6.4%→0.4%、J5:0.4%→0%) 。これらのことか ら、平成21年度生Bについても初期と最終を比較するとJ3~J5レベルの学生が減り、 J1+~J2レベルの学生が増えていることがわかる。 31 (4)BJT個別テスト実施の成果と課題 アジア人財事業の研修2年間のうち、留学生は大学での通常授業、日常生活、アルバ イト、自主的な学習など様々な日本語学習機会に接していることが想定される。したが って、必ずしもアジア人財の2年間の研修がもたらした効果であると断定することは難 しいが、平成20年度生および平成21年度生Bのレベル別推移を見る限り、アジア人 財での研修が留学生のビジネス日本語力の向上に寄与していることが推察される。 BJT個別テストは、アジア人財事業に参加している留学生の日本語能力の伸びを唯 一定量的に記述できるツールである。この試験によって測定できる能力には当然ながら 限界はあるが、研修を受ける留学生の日本語力について全体の傾向を把握するという点 で、使用した意義は大きかった。また、各地で多様な各研修現場においても留学生の学 習進捗度合いや教育効果の測定を行う上で積極的に活用されてきた。 一方で、依然として通常のBJTそのものについて、産業界・社会における認知度が 十分であるとは言い難い。この点は巡回訪問の際にもコンソーシアム関係者からも意見 が出されている。留学生に対するBJTの有用性と運用に関するさらなる周知が改めて 課題となっていると言える。 32 2.2 「日本語力チェックリスト」「社会人基礎力チェックリスト」の実施状況 本センターでは各管理法人において研修の定性的な評価を実施できるように、以下のツ ールを提供している。 ・日本語力チェックリスト ・社会人基礎力チェックリスト ※翻訳版あり ・ポートフォリオ このうち「日本語力チェックリスト」と「社会人基礎力チェックリスト」については研 修の目標設定、学生に対する学習支援、研修プログラムの改善に関して極めて有効なツー ルである。本センターでは、当該のチェックリストを適宜カスタマイズするなどして評価 実施を推奨している。また、実施時期と実施回数については、2年間で初期、中間、最終 の3回程度実施することを推奨している。 (1) 「日本語力チェックリスト」「社会人基礎力チェックリスト」の実施状況と活用 実施報告書への主な記載事項 ・実施日/実施場所/実施人数について ・使用したチェックリストについて -本センターから配信されたものか -配信されたものを改変したものか -独自に作成したものか ・学生のチェックリストに対する全体的な傾向 ・チェックリストの実施結果を各研修現場でどのように活用しているか ・チェックリストの活用に関して今後どのように改善していくか 報告書提出結果 高度専門事業実施管理法人 23法人のうち17 高度実践事業実施管理法人 13法人のうち13 33 1)使用した評価ツール 高度実践(n = 13) 高度専門(n = 17) 独自作成, 1 独自作成 1 改変版 1 改変版, 2 配信され たツー ル 11 配信され たツー ル, 14 使用した評価ツールについては、本センターが配信しているものをそのまま使用し ているところがほとんどであった。独自に作成したツールを使用しているところにつ いては、アジア人財事業とは別に大学で以前から使用している評価ツールを使用して いるというものであった。 2)実施回数について(2年間) 1 1 8回 7回 6回 5回 4回 高度実践 高度専門 2 5 3回 6 7 7 2回 1回 1 0 1 2 3 4 5 6 7 8 2年間のうち、日本語力チェックリストおよび社会人基礎力チェックリストを実施し た回数については、2回もしくは3回実施しているところがほとんどである。実施のタ イミングとしては多くの現場で2年間の研修の中で「初期・最終」もしくは「初期・中 間・最終」の組み合わせで実施している。8回実施しているところは1年間に前期2回、 34 後期2回の計4回を実施しているためである。また、初期と最終はBJT個別テストの 実施時期と同時に行っているところが多い。 3)結果の全体的な傾向 日本語力チェックリスト・社会人基礎力チェックリストの実施結果の全体的な傾向に ついては、研修開始時と終了時の変化、インターンシップや就職活動の影響と考えられ る能力の変容、講師の評価と学生の自己評価との一致や、4技能や評価項目間の差に関 して報告が挙げられた。 4)結果の活用について 日本語力チェックリスト・社会人基礎力チェックリストの結果を研修現場でどのように 活用しているかについては、学生自身が現在の習熟度を確認したり、実施後の目標設定 へ利用しているケースや、能力開発のポイントに関する意識化に活用している。 また、講師側は学生の弱点を把握、カリキュラム内容の妥当性の検証に使用している。 5)今後のチェックリストの活用について 自立化後にどのように定性的な評価を行うかについては、 「本センターが配信している ツールを使用する予定」というところだけでなく、 「さらに細かいレベル設定を行うため に独自に改変や開発を行う予定」、「アジア人財事業で日本語力チェックリスト・社会人 基礎力チェックリストの妥当性を認識したのでアジア人財以外の日本語授業でも活用を 検討したい」という意見も見られた。 (2) 「日本語力チェックリスト」「社会人基礎力チェックリスト」の成果と課題 日本語力チェックリストと社会人基礎力チェックリストはあくまで研修を受ける留学 生自身の日本語能力や社会人基礎力に対する気づきや意識化を図り、研修の成果や自ら の課題を顕在化させるためのツールである。また、担当講師やコースコーディネーター にとっては研修プログラムの進捗把握や改善への活用の一助となるものである。今年度 の実施報告書からは各研修現場において本チェックリストを有効に活用している様子が 浮かび上がってきた。一方で、本チェックリストの結果に関する解釈の仕方や、分かり やすい使用方法に関するアイデアを求める声も依然として存在する。研修の設計・実施 と評価は一体となるものである。今後は各研修現場で蓄積したデータに基づき、より効 果的な評価ツールの利用方法やチェック項目の改良を継続的に行っていくことが望まれ る。 35 3.修了留学生追跡調査 3.1 調査の概要 (1)調査の目的 アジア人財事業のビジネス日本語研修や日本ビジネス研修が就職活動や就職後の業務 にどう役立っているのかという効果の検証、および修了生の日本企業における就労状況 を把握するために、アジア人財事業を修了した元留学生に対する追跡調査を実施した。 目的・ビジネス日本語・日本ビジネス研修が就職活動支援にどう役立っているか ・ビジネス日本語・日本ビジネス研修が就職後の仕事にどう役立っているか ・企業への就職後の就労状況はどのようなものか (2)実施概要 ①対象者: アジア人財事業修了生(1期生=社会人2年目/2期生=社会人1年目) ②方法と調査数: アンケート調査 調査数244 (発送数1,030、回収率23.7%) インタビュー調査 調査数19 ※アジア人財事業修了者数 約1,120名(平成22年9月時点) ③実施時期:平成22年12月~平成23年2月 (3)調査結果のまとめ 調査を通して明らかになったビジネス日本語研修・日本ビジネス研修の成果(就職活 動支援および就職後の仕事にどう役立っているか)と課題、また、修了留学生の就労状 況について、特筆すべき点を以下にまとめた。 ①ビジネス日本語研修・日本ビジネス研修について <研修の成果と考えられるもの> ・ビジネス日本語研修・日本ビジネス研修の有効性を認識する人が圧倒的に多い ・特に就職活動場面で効果を発揮していることが窺われる ・具体的には日本の就職活動の特殊性としてのスケジュール、自己分析、採用試験(エ ントリーシート、面接)対策に役立ったという人が多い ・就職後については非対面コミュニケーション場面(メール・電話)に対する研修効果 が高いと認識する人が多い ・アジア人財事業で研修を受けたことが他の新入社員と比較して、入社時のアドバンテ ージとなっているという例もあった ・体験を通じた学習をデザインすることの有効性を指摘する人が見られた 36 ・具体的には、プロジェクト型学習によるビジネスに必要な日本語運用力の養成やシミ ュレーションを通して他者からの指摘や自らの気づきを促す手法の有効性を示唆する 意見があった <研修の課題と考えられるもの> ・研修カリキュラムについて学生の就職活動のスケジュールに十分配慮する必要性を指 摘する人が多い ・研修の目的・目標を明示的に示して学生が納得して参加できる手順が必要であること が示唆された ・日本人学生との接触を研修プログラムに取り入れる必要性が示唆された ②企業への就職後の就労状況について ・日本語や人間関係に大きな問題が生じていないと認識している人が大多数 ・仕事内容にやりがいを感じ、今のところ順調だと認識している人が多い ・日本語に関しては議事録作成などの「書く場面」に困難を感じている人が多い ・日本語によるコミュニケーションは当初困難を感じたが次第に解消されていく傾向が ある ・元留学生の社内での処遇や活用方法について企業側に改善や不満を強く訴える人がい た ・新卒で入社した会社を1年未満で退職し、転職や起業したという事例があった ・今後のキャリアプランについては、スキルを身につけて、いつかは他の国へ移動・転 職・起業を希望する人が多く、一箇所に留まらない流動性を求める傾向があった 以下に調査結果の詳細と考察について、アンケートとインタビューに分けて報告する。 37 3.2 アンケート調査 (1)実施概要 ①期間:平成22年12月1日~平成23年1月10日 ②方法:管理法人を通じてアジア人財事業修了留学生に紙または WEB によるアンケート 調査の協力依頼をした 紙およびWEBでの設問項目は同一内容である アンケートの設問項目は全て日本語により記載した 実施に際しては本センターと株式会社クオリティ・オブ・ライフが共同で行っ た ③対象者: 回答者数 発送数 回収率 高度専門 119 216 55.1% 高度実践 125 814 15.4% 合計 244 1,030 23.7% ④アンケート回収の内訳: 紙 WEB 高度専門 10 109 高度実践 35 90 合計 45 199 (2)回答者の属性 ①性別 ②年齢 (n=244) 無回答, 1.6% (n=244) 無回答 2% 20~24 歳, 13.5% 35歳以上 3% 女性, 42.2% 男性, 56.1% 30~34歳 21% 38 25~29歳 60% ③出身国・地域 (n=244) 71% 中国 8% ベトナム 4% 韓国 3% インドネシア 台湾 2% インド 2% マレーシア 2% タイ 2% モンゴル 2% 4% その他 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% ④日本語学習歴(学校や教室) (n=244) 1年未満 1% 6% 1年~2年未満 23% 2年~3年未満 14% 3年~4年未満 12% 4年~5年未満 5年以上 41% 5% 無回答 0% 5% 10% 15% 20% 25% 30% 35% 40% 45% ⑤日本在住歴 (n=244) 1年未満 1.6% 0.4% 1年~2年未満 2年~3年未満 15.6% 3年~4年未満 15.2% 10.2% 4年~5年未満 52.9% 5年以上 4.1% 無回答 0% 10% 20% 30% 39 40% 50% 60% ⑥最終学歴 (n=244) 文系学部 20.9% 理系学部 6.6% 14.8% 文系修士 45.1% 理系修士 文系博士 1.2% 理系博士 9.4% 2.0% 無回答 0% 5% 10% 15% 20% 25% ⑦就労状況 (n=244) 無回答 社会人経歴 2.9% 無職/学生 21.3% 非正規雇用 2% 自営業・会 社経営 1.6% 正規雇用 72% ⑧社会人経歴(※アジア人財事業修了後) (n=181) 無回答, 13.8% それ以外, 2.2% 社会人2年 目, 24.9% 社会人1年 目, 59.1% 40 30% 35% 40% 45% 50% ⑨業種 (n=181) 製造業 34.8% ソフトウェア開発業 18.2% 運輸・情報通信業 7.7% 電気・ガス業 6.6% 商業(小売業・卸売業) 6.6% 旅行・ホテル業 4.4% 教育 3.9% 建設業 3.3% 2.8% 金融・保険業 飲食店業 2.2% 農林水産業 1.7% 1.1% 不動産業 鉱業 0.6% 0% 5% 10% 15% 20% 25% 30% 35% 40% ⑩職種 (n=181) 専門技術(設計・SE等) 44.8% 19.3% 通訳 18.2% 企画・開発 16.6% 営業 9.9% 調査・研究 6.1% マーケティング 5.5% 教育・研修 人事 2.8% 経理・会計 2.8% 総務・庶務 2.8% 広報・宣伝 2.8% 1.1% 秘書 法務 0.0% 11.6% その他 1.7% 無回答 0% 5% 10% 15% 20% 41 25% 30% 35% 40% 45% 50% ⑪会社の規模 (n=181) 5000人以上 28% 無回答 3% 9人以下 3% 10~49人 10% 50~99人 8% 100~299 人 12% 1000~ 4999人 22% 300~999 人 14% 42 (3)調査結果 1)就職活動へ役立ったか (n=242) 就職活動への役立ち度 1.7 0.4 0.8 ビジネス日本語教育 66.1 26.4 4.5 3.3 0.0 0.8 63.2 日本ビジネス教育 0% 10% 20% 30% 27.3 40% 50% 60% 70% 役立った やや役立った どち らともいえない あまり役立たなかった 役立たなかった 無回答 5.4 80% 90% 100% 参加したプログラムが就職活動に役立ったかという問いに対しビジネス日本語教育お よび日本ビジネス教育について、「役立った」と「やや役立った」という回答を合わせる とそれぞれ92.5%、90.5%となっている。一方で、 「あまり役立たなかった」と 「役立たなかった」を合わせると、それぞれ、2.1%、3.3%であり、就職活動へ の役立ち度が高いと認識していることが分かる。 2)就職活動で役立った場面 就職活動で役立った場面 (n=202) 自己分析 81.7 エントリー シー トの作成 80.7 個人面接 79.2 業界/企業の研究 53.5 49.0 集団面接 筆記試験・WEBテスト 30.7 申込み企業の選定 29.7 会社訪問のスケジュー ル調整 17.3 その他 1.5 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% どのような場面で役立ったかという問いについては、「自己分析」 「エントリーシート 作成」 「個人面接」の3つについては約80%と上位にある。続いて、 「業界/企業研究」 「集団面談」が50%前後となっている。いずれも日本での一般的な就職活動を行う上 で、必須となる項目で役立っていることが窺える。 43 3)現在の業務に役立っているか 現在の業務への役立ち度 (n=242) 2.1 0.8 ビ ジネス日本語教育 54.5 21.9 6.2 14.5 役立っている やや役立っている どち らともいえない あまり役立っていない 役立たっていない 無回答 2.5 0.4 47.9 日本ビ ジネス教育 0% 10% 20% 27.3 30% 40% 50% 60% 7.4 70% 14.5 80% 90% 100% 現在の業務に役立っているかどうかについて、ビジネス日本語教育および日本ビジネ ス教育それぞれ「役立っている」と「やや役立っている」を合わせると、76.4%、 75.2%となっている。前述の「就職活動への役立ち度」が90%台に対して、若干 低い結果となっている。 就職活動への役立ち度と現在の業務への役立ち度を比較すると、現在の業務よりも就 職活動に役立っていると認識している修了生が多いことがわかる。 4)現在の業務で役立っている場面 現在の業務で役立っている場面 (n=151) 76.2 メー ルのやりとり 電話応対 65.6 50.3 打合せや会議 47.7 同僚との会話 46.4 上司との会話や社内の飲み会、接待 44.4 プレゼンテー ション 文書や資料の作成(企画書・仕様書・契約書など) 39.7 37.7 文書や資料の理解(企画書・仕様書・契約書など) 32.5 商談 1.3 その他 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 現在の業務のどのような場面で役立っているかについては、メールのやりとり(76. 2%)が最も高く、次に電話対応(65.6%)と続く。また、打合せや会議(50. 3%) 、同僚との会話(47.7%) 、飲み会や接待(46.4%) 、プレゼンテーション (44.4%)についても40%~50%が役立っていると回答している。メールや電 話対応といったビジネス場面独特の非対面コミュニケーション場面において研修の効果 を認める人が多いと言える。 44 5)現在の自分の日本語力に対する自己評価 現在の自分の日本語力について「聞く・話す・読む・書く」という四技能別に自己評 価してもらった。回答者の合計と社会人経歴別に社会人1年目と社会人2年目に分けて 分析した。 聞く力<社会人経歴別> 19.3 合 計 (n=152) 57.5 16.6 5.5 0.0 1.1 17.8 社会人1年目 (n=107) 57.9 18.7 4.7 0.0 0.9 22.2 社会人2年目 (n=45) 64.4 6.7 十分 ほぼ十分 どちらともいえない やや不十分 不十分 無回答 6.7 0.0 0.0 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 理 解 系 読む力<社会人経歴別> 22.1 合 計 (n=152) 53.6 17.7 3.9 1.7 19.6 社会人1年目 (n=107) 56.1 19.6 1.9 1.9 社会人2年目 31.1 48.9 13.3 2.2 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 0.9 十分 ほぼ十分 どちらともいえない やや不十分 不十分 無回答 4.4 (n=45) 0% 1.1 90% 0.0 100% 話す 力<社会人経歴別> 合 計 14.4 49.2 20.4 14.9 (n=152) 0.0 1.1 10.3 社会人1年目 (n=107) 54.2 19.6 15.0 0.0 0.9 20.0 社会人2年目 46.7 17.8 十分 ほぼ十分 どちらともいえない やや不十分 不十分 無回答 15.6 0.0 0.0 (n=45) 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 産 出 系 書く力<社会人経歴別> 9.4 合 計 (n=152) 38.1 28.7 18.8 3.3 8.4 社会人1年目 40.2 29.0 17.8 (n=107) 3.7 社会人2年目 11.1 40.0 24.4 0.0 10% 20% 30% 40% 50% 60% 45 0.9 22.2 (n=45) 0% 1.7 70% 80% 90% 2.2 100% 十分 ほぼ十分 どちらともいえない やや不十分 不十分 無回答 まず、合計の値について技能別に見ると、「十分」・「ほぼ十分」を合わせた割合は、「聞 く力」 (76.8%) 、 「読む力」 (75.7%) 、 「話す力」 (63.6%) 、 「書く力」 (47. 5%)となっており、聞く・読むという理解系では、75%以上の人が日本語の問題点を 抱えていないと認識している。また、「話す力」についても、6割以上の人は大きな問題が ないと答えているが、約15%の人は「やや不十分」と回答している。さらに、 「書く力」 については、「やや不十分」・ 「不十分」を合わせた割合が22.1%いる。 次に、社会人経歴別にみると、各技能で、社会人1年目より2年目の方が、「十分」・ 「ほ ぼ十分」を合わせた割合が多いことが分かる。しかしながら、 「書く力」を見ると、 「十分」・ 「ほぼ十分」の割合の増加幅が他の技能に比べて少ない。さらに、「やや不十分」との回答 が1年目より2年目に増加している。以上のことから、 「話す力」「聞く力」 「読む力」につ いては、社会人としての経験を経ることにより向上している実感が持てていることがわか る。しかし、書く技能に関しては、1年程度では伸びがそれをど実感できないということ と、2年目のほうが書くことに苦労する業務内容が増えるのではないかということが推察 される。 46 6)仕事の進め方の理解について 仕事の進め方の理解 (n=181) 6.6 1.1 34.8 自分の仕事をどうやって進めるかの理解 54.1 3.3 0.0 2.8 0.6 38.7 上司が指示す るときに使う日本語の理解 54.1 3.9 0.0 1.1 1.1 38.1 上司が指示している内容の理解 56.4 よくわかる ほぼわかる どちらともいえない あまりわからない わからない 無回答 3.3 0.0 0% 20% 40% 60% 80% 100% 仕事の進め方の理解についてたずねたところ、「よく分かる」 ・ 「ほぼ分かる」と回答し た人が自分の仕事をどうやって進めるかの理解は88.2%、上司が指示する時の日本 語の理解は92.8%、上司が指示している内容の理解は94.5%となっており、大 きな問題が生じるケースが少ないことが分かる。また、 「あまりわからない」・「わからな い」と回答している人は、1%前後でごく少数に留まった。グラフには示していないが、 社会人経歴別に分析したところ社会人1年目・2年目共にほぼ同様の傾向が見られた。 7)職場での人間関係について 職場の人間関係<社会人経歴別> 38.7 合 計 (n=152) 43.1 11.6 2.2 0.0 33.6 社会人1年目 (n=107) 42.1 15.9 2.8 0.0 40.0 社会人2年目 4.4 55.6 5.6 問題ない ほぼ問題ない どちらともいえない やや問題がある 問題がある 無回答 2.22.2 0.0 0.0 (n=45) 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 現在の職場における人間関係についてどう感じているかについても社会人経歴別に分 析した。合計を見ると「問題ない」 (38.7%) 「ほぼ問題ない」(43.1%)という 回答が多く、8割以上の人が職場の人間関係上、大きな問題を抱えていないと認識して いる。社会人経歴別に見ると、社会人1年目よりも2年目の方が「ほぼ問題ない」の割 合が大幅に増加しており(42.1%→55.6%)、社会人2年目の「問題ない」 「ほ ぼ問題ない」を合わせると95%以上となっている。全体として人間関係に問題がない と認識している人の割合が多いが、2年目についてはさらにこの傾向が強くなると言え 47 る。 8)企業に入ってからの研修について 企業に入ってからの研修 (n=181) 79.0 新入社員研修がある か 18.2 2.8 はい いいえ 無回答 10.5 外国人社員用の日本語研修がある か 0% 86.7 10% 20% 30% 40% 50% 2.8 60% 70% 80% 90% 100% 企業に入ってからの研修については、新入社員研修が「ある」と答えた人が約80%、 一方で、外国人社員用の日本語研修が「ある」と答えた人は約10%(19名)であっ た。新入社員研修はあるが、外国人社員用の日本語に特化した研修は実施するケースが 少ないことが窺える。 外国人社員用の日本語研修が「ある」と回答した19名が所属する会社の規模につい ては、以下の表の通りである。全体として会社の規模に関わらず回答者が分布している ことが分かる。 外国人社員用の日本語研修が「ある」と回答した人(19名)の会社規模 会社の規模 回答者数 9人以下 2 10~49人 1 50~99人 2 100~299人 0 300~999人 4 1000~4999人 1 5000人以上 9 48 9)企業での日本語研修の内容について 日本語研修の内容 (n=19) 16 ビ ジネス場面の会話 ビ ジネスマナー (挨拶・電話応対・名刺交換等) 13 8 Eメー ルや報告書等の書き方 8 専門用語 7 プレゼン テー ション の仕方 5 日本のビ ジネス文化 異文化間コミュニケー ション 3 4 日本語能力試験対策 1 BJT対策 3 その他 0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 次に、前の設問で入社後に外国人社員用の日本語研修を受けたと回答した19名にど のような日本語研修をしたのかを質問した。その結果、ビジネス場面の会話と回答した 人が16名と圧倒的に多かった。また、13名がビジネスマナー(挨拶・電話応対・名 刺交換等)の研修を受けたと答えている。外国人社員向けの日本語研修内容としては、 ビジネス場面の会話とビジネスマナーを実施しているケースが多いと考えられる。 また、日本語能力試験対策(4名) 、BJT対策(1名)のように試験対策を行ってい る企業も存在していることが分かった。 49 10)仕事上求められる行動<言語に関すること> 仕事上求められる行動<言語に関係すること> 求められる・計 1.仕事上の専門的な資料の内容を読み取る 0.6 2.仕事上の通信・連絡文・メールを読んで意味を理解する 0.0 3.仕事上のプレゼンテーションの内容を理解する 理解系 89.5 5.5 84.0 8.3 7.2 76.8 10.5 76.8 4.4 13.3 87.8 0.6 5.5 85.6 7.仕事上の問題点をわかりやすく説明する 1.7 8.相手に手順ややり方を説明する 2.2 6.6 84.5 7.7 73.5 7.2 9.仕事に関係するプレゼンテーション をする 10.仕事上の話題について顧客に詳しく話す 産出系 12.2 8.3 11.相手の意見や考えについて代案を提示する 71.8 13.8 71.8 6.6 14.9 52.5 22.1 19.9 12.社内で会議の司会進行をする 13.問い合わせや伝言のメモを作成する 3.9 14.報告書を作成する 81.8 8.3 81.2 6.1 7.2 15.書かれてある 内容を要約して文書にまとめる 77.3 5.0 12.2 16.議事録を作成する 12.2 64.1 17.1 61.9 14.9 17.7 17.企画書や提案書を作成する 18.日本語と母語の通訳・翻訳をする 19.それ以外の言語間で通訳・翻訳をする 12.7 10% 64.6 18.8 11.0 0% (n=181) 90.1 4.専門外の資料を読む 6.自分の考えや意見を正確に表現する どちらともいえない 5.5 2.2 5.仕事上の抽象的な話を理解する 求められない・計 20% 55.2 26.5 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% ※求められる・計 =「求められる」+「ときどき求められる」 求められない・計=「まったく求められない」+「あまり求められない」 50 仕事をする上でどのような行動が求められるかを聞いた。<言語に関すること>の質 問項目は本センターがアジア人財事業におけるビジネス日本語・日本ビジネス研修の評 価ツールとして作成した「日本語力チェックリスト」の項目とも一部重なる。19の項 目のうち、17の項目において60%以上の人が求められると回答している。 言語技能別に見ると、理解系(読む・聞く)の行動に関しては、 「仕事上の専門的な資 料」(90.1%) 「仕事上の通信・連絡文・メール」(89.5%)が約9割の人が読み 取って理解することを求められると回答している。専門資料や連絡用の文面を読み取っ て理解することが求められることが多いことがわかる。 一方、産出系(話す・書く)の行動に関しては、 「自分の考えや意見を正確に表現する」 (87.8%) 、 「仕事上の問題点をわかりやすく説明する」 (85.6%)、 「相手に手順 ややり方を説明する」(84.5%)といった、説明を要する行動が求められることが多 いことが分かる。また、 「問い合わせや伝言のメモを作成」 (81.8%) 「報告書を作成」 (81.2%)という書く行動についても求められている。 51 11)仕事上求められる行動<社会人基礎力に関すること> 仕事上求められる行動<社会人基礎力に関すること> 求められる・計 前に踏み出す力 75.1 5.5 1.7 考えぬく力 4.仕事上の問題点を分析して発見する 0.6 5.問題解決の計画を立てる 0.6 6.企画立案を行うために今までにないアイディアを出す 16.0 87.8 7.2 91.7 4.4 87.3 8.8 75.7 4.4 チームで働く力 7.自分の意見をわかりやすく伝える 0.6 8.相手の意見をよくきく 0.0 9.仕事をうまく進めるために相手のやり方に合わせる 0.6 10.チームで仕事をする時の自分の役割を理解する 0.0 11.上司からの指示を守る 0.6 12.適切な方法でストレス解消を行う 16.6 88.4 7.7 91.2 5.5 89.5 6.6 91.2 5.0 91.2 5.0 74.6 1.7 0% (n=181) 6.6 2.仕事をするために周囲の人をうまく動かす 3.仕事の目標を設定し、それを達成する どちらともいえない 89.0 1.1 1.自分から仕事を見つけて積極的に動く 求められない・計 19.3 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% ※求められる・計 =「求められる」+「ときどき求められる」 求められない・計=「まったく求められない」+「あまり求められない」 求められる行動については、社会人基礎力に関することについても質問した。これら の12項目は、先述の日本語力チェックリストと同様に、本センターが開発した「社会 人基礎力チェックリスト」の項目と重なる。 回答結果を見ると、12項目のうち9項目で求められると回答した人が87%を越え た。一方で、「仕事をするために周囲の人をうまく動かす」(75.1%) 「企画立案のた めに今までに無いアイデアを出す」 (75.7%) 「適切な方法でストレス解消を行う」 (7 4.6%)は70%台にとどまった。「周囲を動かす」と「アイデアを出す」はそれぞれ 「求められない」も5.5%、4.4%と比較的高い回答となった。このことから、入 社1年目・2年目の社会人としては、リーダー的な役割や独創的なアイデアの提案が求 められる割合が少ないことがわかる。 52 12)留学生が会社/団体で気持ちよく働き、十分に能力を発揮するために、就職まで に行ったほうがいいこと(自由記述) 日本語コミュニケー ション力の習得 34.4% 16.7% インター ンシップの実施 15.6% 日本文化・日本人の考え方理解 13.3% 自己分析 11.1% 日本人との接触機会を増やす 7.8% 日本企業文化理解 業界企業研究 4.4% 専門知識の習得 4.4% 3.3% ビジネスマナーの習得 企業人との接触を増やす 2.2% 就職試験対策 2.2% 14.4% その他 ( n=90 ) 0% 5% 10% 15% 20% 25% 30% 35% 40% 自由記述欄に記入があった90名の記述内容についてまとめると、日本語コミュニケ ーション力の習得についての記述が最も多く34.4%となった。インターンシップへ の参加(16.7%) 、日本文化・日本人の考え方理解(15.6%)、自己分析(13. 3%)についても多くの人が回答している。 これらの回答をみると、ビジネス日本語・日本ビジネス研修の中で扱った研修項目と 重なりがあると言える。言い換えれば、研修においてさらに強化を望む項目群と解釈す ることもできる。 特徴的なのは「日本人との接触機会を増やす」と回答した人が約11%(10名)い たことだ。代表的な記述内容は以下の通り。 ◇日本人学生とコミュニケーションをとり日本人の考え方を理解し、自分の外国人としての価値や特徴 を把握できるようにしたほうがいい ◇サークルなど日本人の学生たちの日常の一面を見られるイベントに参加したほうがいい ◇できるだけ、日本人の学生と話したり、遊んだりしたほうが良い ◇留学生同士だけではなく、日本人学生とのコミュニケーションをする機会を増すべき ◇同国の友達を作るよりもたくさん日本人の友達を作って、日本文化を理解した方がいい 留学生と日本人学生との接触機会については、今後の研修設計を考えるうえで一つの 課題になると考えられる。 53 3.3 インタビュー調査 (1) 実施概要 ①期間 :平成22年12月~平成23年 2 月 ②対象者:19名 ③場所 :東京6回、大阪1回、香川1回、北海道1回 ④方法 :グループインタビューおよび個別インタビュー グループインタビュー: 参加者 :修了留学生2~4名・インタビュー実施者2~4名 AOTS と株式会社クオリティ・オブ・ライフによる共同実施 回数・時間:6 回・1 回 3 時間程度 個別インタビュー: 参加者 :修了留学生 1 名・AOTS 担当者 1~2 名 回数・時間:3 回・1 回 2 時間程度 ※いずれも修了留学生の卒業大学、管理法人、所属企業関係者は同席しなかっ た。話した内容については個人が特定されない形で結果をまとめる旨を伝え、 できるだけ本音で話してもらえるようにリラックスした雰囲気を心がけた。 ⑤主なインタビュー項目: ・アジア人財事業のプログラムが就職活動にどのように役立ったか ・就職活動の支援のために、どのような点を改善したほうがいいか ・アジア人財事業のプログラムで現在の業務にどのように役立っているか ・就職後の業務のために、どのような点を改善したほうがいいか ・プロジェクト型学習はどのように役立っているか ・仕事のやりがいについて ・就職後の課題について ・今後のキャリアプランについて (2)回答者の属性: 出身国: 中国14名、インドネシア2名、韓国1名 その他2名(※) 参加したアジア人財プ 高度実践11名、高度専門8名 ログラム: 主な業種: 製造、建設、卸売、観光、コンサルタント、会計、IT 職種: 開発6名、営業3名、設計3名、SE 3名、 生産管理2名、経理1名 社会人経歴: 2年目10名、1年目8名、在学中1名 ※個人が特定されるのを避けるためにアジア人財事業の中で非常に少数の出身国の 人は「その他」に分類した。 54 (3)調査結果 1)就職活動にどのように役に立ったか 就職活動を振り返ってもらったところ①就職活動の流れの理解、②エントリーシート 作成、③面接対策、④業界・企業研究という4つの項目について役立ったと答える人が 多かった。 <①就職活動の流れの理解/②エントリーシート作成/③面接対策> ◇就職の流れと仕組みが分かるようになった。中国でも就職したことがあるが、就職の仕組みは全然 異なる。 (G さん) ◇日本企業の就職活動の流れを教えてもらったことが良かった。 (F さん) ◇エントリーシートを書いて、面接があり、面接にもグループディスカッションがあるなど、そうい う手順を知ることができた。アジア人財がなければ知る機会がなかったと思う。 (P さん) ◇自己分析、エントリーシートの書き方(日本語のチェック)、面接のシミュレーションを通して、 自信を持つことができた。 (F さん) ◇外国で自己 PR することは本当に緊張することでうまく話せない。自己 PR の仕方について何度も 練習を重ねて、みんなの前で話すことに慣れ、本番の時は多少緊張するものの、心構えができたの が本当に良かった。 (G さん) ◇面接での外国人向けの定番質問への対応ができるようになった。 (J さん) ◇エントリーシートの添削、グループディスカッションの練習、面接練習が役立った。 (M さん) <④業界・企業研究> ◇自己分析と業界分析を通して、日本の様々な会社を知ることができた。留学生は名前を知っている会 社だけに応募しがち。 (F さん) 2)就職活動の支援のためにどのような点を改善したほうがよいか 就職活動の支援のためにどのような点を改善したほうがよいか聞いたところ、①研修 の内容と②研修のスケジュールに関して多くの意見が挙げられた。 まず、①研修の内容については、(1)面接指導・(2)業界・企業研究についてもさらに 強化したほうがよいという感想を述べた人が多い。一般的な業界企業研究にとどまらず、 日本企業が求める人材像や留学生を採用する理由について理解することの必要性や、企 業側にも留学生のことを理解してもらう場を作る必要性を訴える声もあった。 <①研修内容 (1)面接指導> ◇基礎知識だけでなく、面接の就職支援を更に強化してほしい。 (A さん) ◇個人面接の練習はあったがグループ面接やグループディスカッションについても十分に指導を行っ て欲しかった。 (Rさん) ◇面接練習はしたが,もっと頻繁にしてほしかった。1 回やってみて振り返って,もう 1 回やるチャン スがあるとよくなると思う。 (Sさん) 55 <①研修内容 (2)業界・企業研究> ◇とても役だったが、留学生は日本企業の名前だけで応募してしまうので、業界や企業について細かく 教えたほうがよい。 (Fさん) ◇早い段階で業界講座をしてほしかった。業界についてみんなよく知らなかったので,どのような業界 に就職していいか漠然としていた。結局,自分たちで業界地図のようなものを買って勉強した。(S さん) ◇企業研究の具体的な方針についてもっと教えて欲しかった。 (J さん) ◇日本企業が求める留学生の人材像を留学生自身が理解できるようにしたほうよい。なぜ留学生を募集 して、何のために使うのか。それを留学生が理解できれば自己アピールに役立つ。 (Hさん) ◇企業の人も研修の現場にやってきて、留学生が何を考えているのか知って欲しい。留学生の強みが言 語だけではないということを、企業側に知ってもらえれば、留学生の採用に失敗がなくなるのではな いか。お互いに平等な立場で、採用などを気にしないで企業の人と話す機会が必要だ。 (Hさん) ②研修スケジュールについては、就職活動の時期との重なり、一日に実施する研修時間 の長さ、研修頻度の多さについて改善を求める声が多く、スケジュール上の問題について 強い不満を述べる人もいた。具体的に、就職活動期間中は、週1回のペースの実施はエン トリーシートや面接の準備の関係で参加自体が難しいため、週2回程度の頻度がよいとい う意見もあった。 <②研修スケジュール> ◇就活とカリキュラムの実施時期を調整したほうがいい。 (Dさん) ◇研修スケジュールは就活時期を考慮してほしい。地方の学生がしばらく上京し、就職活動を行う際は どうしても研修に参加できなくなるから。 (K さん) ◇一日の授業を半日半日ずつに分けてほしい。週1回、朝から夕方まで長時間にわたって授業を行って も効率的ではない。 (P さん) ◇授業の回数は週1回ではなく2週間に1回がよい。 (G さん) 56 3)現在の業務にどのように役立っているか 就職後の現在の業務にどのように役に立っているのかに関する意見をまとめると次の 3点に集約できる。 ①日本語を使った行動場面 ②企業文化理解 ③入社時のアドバンテージ ①日本語を使った行動場面としては(1)メール作成、(2)電話対応、(3)プレゼンテーショ ンスキル、(4)敬語を挙げる人が多かった。 メール作成と電話対応についてはアンケート調査でも多くの人が「役立った場面」とし て回答しており、非対人コミュニケーション場面として研修の効果が高いことが窺える。 <①日本語を使った行動場面 (1)メール作成> ◇メールの書き方はアジア人財の時に教えていただいていたので、ある程度は先輩から指示がなくても できるようになっていました。当然、最初は自分が作ったメールを一回先輩に送ってチェックしても らったが間違っていたところは少なかった。 (C さん) ◇アジア人財で講師の人とメールで連絡する際も、普段から「お世話になっております」などの表現を 使ったのが今でも役に立っている。 (Fさん) ◇メールの書き方で宛先(会社名や役職名を記載すること)やメールの構成を教えてもらったのが役立 っている。 (Gさん) ◇メールの日本人的な表現として「お手数ですが・・・」などクッション言葉などを学んでいたのが役 立っている。 (J さん) <①日本語を使った行動場面 (2)電話対応> ◇ペアになりお客と事務員の役割で電話対応の練習をした。電話の取った時の挨拶の仕方などは授業で 勉強したことがあったで役に立っている。 (F さん) ◇電話対応のシミュレーションで練習したことがが就職してからも今でも役立っている。 (Jさん) ◇電話応対の仕方が役に立っている。 (Oさん) <①日本語を使った行動場面 (3)プレゼンテーションスキル> ◇プレゼンのやり方を学んだことで、会社に入ってからもプレゼン資料を作るときに学んだことを思い だす。 (C さん) ◇会社に入ってからプレゼンをする機会がある。アジア人財で発表の仕方、姿勢、表現などを学んだの で、どのようにうまく自分の意志を伝えるかといった能力を鍛えることができた。 (P さん) 57 <①日本語を使った行動場面 (4)敬語> ◇敬語の使い方を学んだので入社後も役に立っている。きれいな日本語を使っていますね、と日本人社 員から言われることがある。 (P さん) ◇敬語を学んだのがよかった。とにかく敬語ができればいいと思う。授業でも飲み会でもすべて敬語で 話すのがいいと思う。 (S さん) ◇社外の人や課長などの上司との話し方が役立っている。 (K さん) ②日本の企業文化について事前に理解していたことで入社後に仕事をスムーズに行う上 で役立ったと回答する人も多かった。 <②日本の企業文化> ◇日本のビジネス文化に関する研修内容は今でも役に立っている。 (A さん) ◇日本の会社文化の理解をしていたのがよかった。外国人に対する印象、コミュニケーションの考え方、 丁寧な表現を一通り教えてもらいハズレがないレベルを学べたこと。 (J さん) ◇日本の企業文化への理解。就職した先が伝統的な日本的経営の仕方なので、年功序列や終身雇用を知 っていてよかった。また、お客さんを大切にするという考え方も知っていてよかった。 (Pさん) ◇日本企業文化の知識として、研修で DVD を見たのがよかった。日本企業がイメージできて,入社後 もカルチャーショックはなかった。 (S さん) 研修の成果としてアジア人財事業で研修を受けたことが他の新入社員と比較した際に、 ③入社時のアドバンテージになっていると考えられる発言もあった。アジア人財事業での 研修の経験が、社内における周りからのプラス評価や業務遂行の上での自信につながって いる様が窺われた。 <③入社時のアドバンテージ> ◇新入社員研修制度があり、同期の日本人は東京に行って研修受けた。私はアジア人財のプログラムで 基本的な電話の受け方やメールの書き方、接客方法を身に着けていたので、新入社員研修を免除され た。 (P さん) ◇アジア人財事業でビジネス上の基本的なコミュニケーション能力を身につけられたので、社外の人と の折衝にも失礼がなく行えることが上司にも評価され、責任のある仕事を任せられている。もし基本 的なコミュニケーション力が身についていなければ技術的な仕事しか任されなかったと思う。 (J さ ん) ◇入社後の新入社員研修で、敬語の試験があった。アジア人財で行った内容とほとんど同じだったので 自分は 100%答えられたが、他の日本人社員は半分しかできなかった。みんなが驚いて「○○くん、 すごいなあ」と認められ、評価が高まったたこともあり同期と仲良くなれた。 (K さん) 58 4)就職後の業務のためにどのような点を改善したほうがよいか 就職後の仕事をスムーズに行うために研修のどのような点を改善したほうがよいか尋 ねた。この質問については様々な意見が寄せられた。主要な内容は以下の通りである。 <研修の改善に関する意見> ◇文化背景の理解・・・メールの書き方など、なぜそのように書くのか、ビジネス日本語だけではなく、 日本のビジネス文化の背景まで扱ったほうがよい(F さん) ◇敬語使用の習熟・・・敬語の使い方を勉強したのは良かったが、社内での普通の会話では敬語は使っ ていない。転換スイッチがなかなか難しい。同僚から「敬語はやめて」と言わ れたこともある。使う場面の違いなどについて詳しく教えてもらいたかった。 (Gさん) ◇ビジネス文書作成・・ビジネス文書の書き方を文書の種類ごとに教えてほしかった。 (P さん) ◇口頭試験の実施・・・仕事をすると口頭でのコミュニケーション能力が求められる。研修では日本語 の口頭試験をやったほうがいいと思う。 (Rさん) ◇自己分析 ・・・一番大事なのは,自分が何をやりたいのか、何に向いているのかをしっかり固 めたほうがいい。 (Eさん) ◇社会制度の知識・・・就職してから確定申告が必要な状況になったが書類が全く分からない。個人に 関わることなので会社の人も教えてくれない。親にも聞けない。 結婚して妻が妊娠しているが、育児給付金などどのように申請すればよいか分 からない。様々な控除についてもよくわからない。仕事のことだけではなく生 活面についても教えてもらえたらよかった。 (P さん) 5)プロジェクト型学習はどのように役立っているか 本センターではアジア人財事業において初年度よりプロジェクト型学習の実施を各研 修現場に提案してきた。修了留学生に対して、プロジェクト型学習について、就職後の 仕事に役立っているかという観点から意見を求めた。 <プロジェクト型学習について ①肯定的な意見> ◇4 人グループとなり何度もプロジェクトを行った。いろいろな資料を調べたり、まとめたりする能力 を身につけられた。働き始めてから、いろいろな文書を読むが、余計なところを読まないで要点をす ぐにみつける読み方が役立っている。 (P さん) ◇プロジェクト型でやった話し合い活動は今でもディスカッションのときなどに役に立っている。(R さん) ◇自国のツアー企画を作成するプロジェクトを実施した。プレゼンテーションを実施することはよい経 験であると思う。 (F さん) ◇自分の国の観光案内について、調査、資料準備、プレゼン、質問のやり取りを行うものだった。全体 的に好評だった。特に学部の学生はそのような機会が少なかったから好評であった。 (J さん) 59 <プロジェクト型学習について ②改善を求める意見> ◇内容的に本当は役立つものであっても、就職活動の本当に忙しい時期に重なると行く意欲がなくな る。宿題が与えられても、する余裕もない。なぜあの忙しい時期にしなければいけないのか理解でき なかった。 (G さん) ◇就職活動の忙しい時期と重なり、「面倒くさい」と思っていた。内定をもらった後にすればよいので はないか。 (F さん) ◇こうした活動はあってもよいが、この活動が就職に役立つのか疑問だった。活動を通して何を身につ けさせるのか、目的性を強くしたほうがよい。 (H さん) 肯定的な意見を見ると、日本語を使った資料収集、大量の文書の読解、ディスカッショ ンスキル、プレゼンテーションスキルといったビジネス場面で求められる言語能力の養成 に効果があったことを窺わせる。 一方で、改善を求める意見では、プロジェクト型学習の性質上、活動が1回で完結しな いケースが多く、就職活動の忙しい時期と重なり参加意欲の減退につながったという指摘 が挙げられた。これは共通カリキュラムマネージメントセンターが開発した教材が1テー マ 15 回の授業で構成されるという大規模なプロジェクトを想定していたことも要因のひと つとして考えられる。また、活動の目的を学生が十分に理解することの必要性を挙げる意 見もあった。活動そのものを否定するというよりも、活動の実施のタイミングへの配慮や、 活動の目的や意義について学生が納得して参加できるように丁寧な手順を踏むことが必要 であることが考えられる。 60 6)その他アジア人財事業の研修に関する意見 ①効果的な研修手法 就職活動や就職後の業務を見据えた研修に関して、その研修手法についても意見が挙 げられた。特に、面接指導やエントリー指導において、模擬面接(シミュレーション) や他者からの指摘や「気づき」を喚起する方法が効果的だという指摘があり、今後の研 修設計や授業の方法を改善する上で示唆的な意見であると考えられる。 <効果的な研修手法について> ◇面接対策はシミュレーションを通して面接の流れや質問に対する対応方法などを理解することがで きてとても役に立った。 (F さん) ◇面接をビデオで取って、振り返る授業が役立った。 (J さん) ◇面接練習をビデオに撮って、みんなで見ながら、いろいろと改善していったのがよかった。自分の口 癖にも気づいた。 (Qさん) ◇みんなの前で自分の書いたエントリーシートを発表して他の留学生からも指摘してもらった。こうし た練習を通して、自分の考えを整理して、具体的な内容を入れながら、自分の考えが伝わる文章が書 けるようになった。 (H さん) ②研修担当の講師について お世話になって本当に感謝しているという意見が大半であったが、一部の人から講師 の質に関わる部分で改善を求める意見が挙げられた。 <研修担当の講師について> ◇先生は、普通の、ただ日本語の先生。日本での会社経験があまりない。僕は会社で受けた社会人マナ ーの方がよほど会社に近いかなと思っています。 (D さん) (I さん) ◇先生のレベルをもっとあげてほしい。日本語の謙譲語と尊敬語を聞いたらわからなかった。 61 8)修了留学生の就労状況の概況 今回の調査協力者19名がアジア人財プログラム終了後にどのような状況にあるかに ついては、次の3つのパターンに類型化できた。 パターン A:就職した勤務先での満足度が高く継続して順調に働いている(15名) 入社後の仕事内容にやりがいを感じ、先輩や同僚を含め周囲の社員とも溶け込んで就 職した会社で順調に働いている人 パターン B:入社後の処遇に強い不満を抱いている(3名) ・自分の能力が十分に発揮されていない、また、留学生としての強みを会社が十分に 理解できていないという不満を強く抱いているが、継続して勤務している人(1名) ・大学卒業後に入社した会社での処遇への不満から1年以内で退社し、転職または起 業した人。なお、再就職先の状況に満足している(2名) パターン C:その他(2名) ・新入研修中であり特に問題が生じていないという人(1名) ・学部生として就職活動をして内定も得たが、さらに専門性を高めるために大学院に 進学した人(1名) 9)仕事のやりがいについて 現在の仕事にどのようなやりがいや面白さを感じているかについて聞いたところ、主 に①仕事内容に関することと②外国語能力を活かすことにやりがいを感じているという 意見に分かれた。インタビューの中では、まず最初に①仕事内容に関することを挙げる ケースが多く、新商品の開発、技術の習得、プロジェクトの成功、裁量権を与えられて 業務を遂行する、といった仕事の成功や付加価値を生み出すことに「自分」が関わった ことで達成感を感じるという人が多かった。 <仕事のやりがい ①仕事内容に関すること> ◇一人のエンジニアとして、会社のソフト開発の環境と自分が学んできたものが同じで、即戦力として 活躍できていること。 (B さん) ◇自分で企画したプロジェクトが成功したときにやりがいを感じる。 (G さん) ◇自分が作ったプログラムが、製品として出されるときにやりがいを感じる。 (K さん) ◇ソフトウェア開発で日本の方が技術が進んでいるのでそうした技術が学べること。 (J さん) ◇自分ひとりに担当を任され、任務遂行できたとき。 (M さん) ◇すぐれた改良品を開発できたとき。 (Q さん) ◇自分の立てた生産計画と販売実績が重なった時にやりがいを感じる。 (S さん) ②外国語能力を活かすことについては、日本語以外の言語能力を仕事に活かすことや 母国に関係のある仕事を行うことをやりがいと感じるという意見があった。これらは元 62 留学生特有のやりがいや強みとして認識していると考えられる。 <仕事のやりがい ②外国語能力を活かす> ◇海外への営業に自分の多言語能力が役に立っていること。 (B さん) ◇自分の話せる言語を使って海外の取引先と納期の調整をして問題が解決できるのが面白い。 (F さん) ◇自分がこの会社に入って、中国語を使って海外の取引先と直接連絡ができるようになった。その結果、 仕事がスムーズに迅速に進むようになった。中国とのつながりがあることがやりがいだと感じてい る。 (P さん) なお、外国人として特別な強みを感じていないという意見もあったので紹介する。 <仕事のやりがい ③外国人として特別な強みは感じていない> ◇海外に関わる仕事をしている時に自分の外国人としての強みを感じる時はあるが、基本的に日本人と 同様に働いているので、それほど外国人としての強みを感じることはない。 (A さん) ◇中国人だから何かに秀でていることがあるとは思わない。 (Q さん) 10)就職後の課題 就職後にどのような苦労・困難・戸惑いがあるか質問したところ、主に①仕事内容に 関すること、②入社後の処遇について、③企業文化、④日本語に関すること、⑤日本事 情の知識に関することについて意見があった。 ①仕事内容に関することとしては、専門知識や技術的なレベルに関する困難点を挙げ る意見が多くの人から出された。新入社員であれば誰でもが遭遇するであろう「よくあ る」困難点であることが窺われた。これらの問題点については、指導員・先輩・上司か ら教えてもらったり、あるいは自分で調べたりマニュアルを作ることで問題を解決し、 「なんとかしている」「なんとかなっている」というケースが多かった。 <就職後の課題 ①仕事内容に関すること> (O さん) ◇技術職は経験が重要なので、まだ経験が少なく専門的な仕事することに苦労している。 ◇自分の専門分野とは異なる仕事をしなければならないときに苦労している。 (R さん) ◇パソコン上のシステムの使い方に苦労している。マニュアルがないため、隣の人に聞いたりしている が、自分でもマニュアルを作っている。 (F さん) ◇自分が分からないことがある時は、社内で話をしている時でも、すぐにパソコンで調べて、理解して から話を進める。 (G さん) ②入社後の処遇については、「会社が何を自分に期待しているのか分からない」「何の ために自分が雇用されたのか分からない」といった声があった。日本人と同じ条件で処 遇されているのに、 「外国人だから」通訳や翻訳を必要以上に強いられているという不満 を述べる意見もあった。また、就職した会社で自分の「ビジョン」と異なる仕事をする 63 ことになり、退職して起業した事例もあった。企業側が元留学生の能力を十分に活かし ていないのではないか、留学生の能力は外国語だけではないと強く訴える人もいた。 <就職後の課題 ②入社後の処遇> ◇自分がなぜ現在の職場に配属されるのか、よくわからないし、業務目標を設定する際にも僕に何を期 待しているのか、上司からはっきりとは言われてない。 (D さん) ◇会社が自分を雇用した理由がよく分からない。「日本人と同じ」と言われるのに、自分の業務以外に も英訳をさせられる機会が多い。外国人は翻訳や通訳の仕事をしなければいけないという感じがある が、不公平さを感じる。だったら給料を増やしてほしい。わざわざ自分の国から離れて遠くの日本で 仕事をするのか、そういう私たちの思いを受け取ってくれていない気がする。 (F さん) <ある元留学生の事例 -新卒で就職した会社を辞めて起業したケース-> ・私は母国の経験や日本文化を吸収して両方の経験を活かして、母国と日本の円滑な貿易関係を築く仕事 をするのが夢だった。 ・就職した会社で私は翻訳者として機械のように使われ将来性が見えなかった。石の上にも 3 年という が、私はその 3 年が無駄になり、3 年後には今の情熱が消えてしまうと思った。 (1年以内に退職した) ・留学生の強みは言語だけではない。違う視点で見ること、柔軟性、両国の文化の違いからくる豊かな発 想などがある。そうした強みを日本企業がうまく活かさないと、留学生は自分の存在感を感じない。 ・今は友人と立ち上げた小さな会社にいる。リスクはあるが、後悔はない。今の方が無限な可能性や自分 成長が感じられるので、自分らしいと思う。 ③企業文化については飲み会の多さ、報告・連絡・相談の徹底、年賀状を出す慣例な ど、どちらかと言えば、各企業の独自の文化に起因すると考えられる事柄が挙げられた。 <就職後の課題 ③企業文化に関すること> ◇最初の 3 か月は仕事が終わった後に本当に毎日飲みに行った。日本の文化の一つだと思う。終電にな らないと絶対に終わらない。自分の体のために 4 ヶ月目から徐々に断るようにした。 (C さん) ◇社内で使用している雑巾を捨てようとしたら、「捨てないで、報告しなさい」と言われた。どうして こんなに細かいことまで報告する必要があるのか、どう行動したら分からない時がある。 (G さん ◇1 年目に会社の人たちから年賀状が届き驚いた。自分だけ出していなかったので年が明けてから急い で出した。2 年目からは早めに年賀状を出すようにした。 (P さん) ④日本語に関する困難について挙げられた意見をまとめると、(1)口頭コミュニケー ション上の問題、(2)書くことに関する問題に分けることができた。 (1)口頭コミュニケーション上の問題は自分の言いたいことがうまく伝えられないこ とや周りの話していることについていけないといった点が挙げられた。これらの問題点 については周りのサポートや自分が仕事内容を理解することを通じて問題が次第に解消 されていったという傾向があるようだ。その一方で、自分の日本語が上達するにつれて 64 さらに周りの人が「ネイティブ」と同様の日本語を使うことで苦労するという点を指摘 する人もいた。なお、日本語によるミスコミュニケーションにより業務に致命的な問題 が生じたという意見はなかった。 <就職後の課題 ④日本語に関する困難 (1)口頭コミュニケーション上の問題> ◇言葉の壁。仕事で自分の言いたいことを思うように表現できなくてつらい思いをしたことがある。言 葉の使い方について「この場面では使わない方がよい」と日本人社員から注意を受けることがよくあ る。 (G さん) ◇入社直後、先輩や上司と日本語でうまくコミュニケーションがとれず自信をなくしたことがあった。 2 年目の夏くらいからは自分の担当業務をよく理解できるようになり、他部門の人とも接してサポー トがあり、一人ではないんだと感じるようになってきた。それからはコミュニケーション上の問題が 減ってきた。 (F さん) ◇当初は説明されていることで意味が分からなくて困っていたが、現在は、周りの話し方や業界用語に も慣れ、特に問題ないと感じている。 (B さん) ◇自分の日本語がうまくなるにつれて、「ひっくるめてやりましょう」、「ソフトにのっける」など周り がさらに難しいネイティブの日本語を使うようになり苦労している。 (J さん) (2)書くことに関する問題としては、議事録の作成を挙げる人が多かった。理由として は話されている内容の専門性、聞き慣れない専門用語、また文法上の問題点などが指摘 された。聴解力や専門知識が求められること、スピードや内容をコントロールできない 状況など複合的な要因が難しさの背景にあると考えられる。また、メール文については 特殊なものや待遇レベルが高まる上司に対するメールに困難を感じているという人がい た。なお、日本語に関して「読むこと」に問題点を感じているという意見が全く聞かれ なかったことは興味深い。 <就職後の課題 ④日本語に関する困難 (2)書くことに関する問題> ◇話している時には問題はないが、文章を書くと依然日本語としておかしな部分が残っていると思う。 (A さん) (J さん) ◇全く知らない内容の話の議事録は苦労する。省略語や業界用語などの理解が難しい。 ◇議事録の作成に苦労している。話し合われた内容と異なっていたり文法的な間違いを上司から指導さ れている。 (F さん) ◇通常の連絡程度の文書は問題ないが、特殊な文章を作るときにぜんぜんうまくできない。お詫びをす るときのメールや上司に送るメールなどはどういう言葉使いをすればいいのか分からない。 (C さん) ⑤日本事情に関することについては、業務に関する事柄ではなく、インフォーマルな 場面で、日本人なら誰でも知っている食べ物の名前や、同年代の人達が幼少時に親しん だ漫画やアニメのことを知らなかった、という意見があった。業務遂行に大きな影響は 65 生じないものの、外国人に起こりやすい事柄であると考えられる。 <就職後の課題 ⑤日本事情> ◇話の中で「カツサンド」という言葉が出てきて自分だけ知らず「カツサンドを知らないの?」と笑わ れ不愉快な思いをしたことがある。日本人が常識だと思っていることを知らないことがよくある。 (G さん) ◇飲み会の時の話題についていけないことがある。子供の時に見た漫画やアニメの話とか、出てくるキ ャラクターの話になると全く分からない。 (Q さん) ◇同僚と話していて、漫画の話など、日本人にしかわからない話題が出てきたときは困る。 (S さん) 11)今後のキャリアプラン 今後のキャリアプランについては、現在所属している企業にどのくらい勤めるつもり か、自分のやりたい仕事が今の会社で実現できそうかについて質問した。これらの発言 をまとめると、以下の 3 点の類型化できる。 ①しばらく今のまま働いて、いつかは転職、起業、勤務地の変更を希望 ②今の会社ではやりたいことが実現できそうにない ③できる限り今の会社で働きたい ①しばらく今のまま働いて、いつかは転職、起業、勤務地の変更を希望する人は、で きるだけ専門的スキルを身につけて、将来的には、学んだスキルを活かして他の仕事を したいという人、経験を活かして起業したいという人、また、母国や第三国を含めて日 本以外で働きたいという人がいた。いずれも共通するのは、現状の仕事内容にやりがい や意義を見出しているが、職務内容や勤務地に流動性を望む声であった。また、 「しばら く」の具体的な期間として 10 年を挙げる人が多く、中には採用面接の際に 10 年したら 母国に帰ると明言したという人もいた。 <キャリアプラン ①しばらく今のまま働いて、いつかは転職、起業、勤務地の変更を希望> ◇現在勤務中の会社で知るべきことを知り尽くしたら母国へ帰って、今と異なる仕事をしたい。一生同 じ仕事をしていても面白いとは思わない。 (A さん) ◇10 年ぐらいで帰国できればいい。母国にも生産拠点があるので,帰国する際はそこで働きたいと会 社には伝えている。 (R さん) ◇大きなことをやりたい。自分の力でどれくらい会社の業績が伸ばせるのかチャレンジしたい。いつか は第三国で働きたい。 (S さん) ◇今は専門の勉強を一生懸命やっている。いずれ第三国、外国の工場で働けたらおもしろい。 (Q さん) (P ◇この会社では 10 年くらいは働きたい。将来は日本的な経営の考えを母国に持ち帰り起業したい。 さん) ◇今は一流のエンジニアになることを目指している。最低 10 年くらいは日本で働きたい。(Kさん) ◇現在携わっているプロジェクトを通して様々な分野の勉強した後に、その中から一つでもチャンスが 66 つかめたら、起業したいと思っている。 (G さん) ◇3 年後は一人でモノを設計できるエンジニアに、5 年後はプロジェクトの主要メンバーに、10 年後は 博士の勉強を行い、日本、中国以外の海外で働きたい。 (L さん) ②今の会社ではやりたいことが実現できそうにないと答えた人は、少数派であったが、 会社の事業展開が自分の希望と合わず転職も視野に入れて考えているという人や、仕事 内容の希望が実現できそうになく半ば諦め気味の人もいた。 <キャリアプラン ②今の会社ではやりたいことが実現できそうにない> ◇組織改編により、入社当時から環境が大きく変わりソフト開発研究ができる状態ではなくなった。キ ャリアプランが実現できそうにないので、ソフト開発ができる日本の会社に転職するという可能性は ある。 (J さん) ◇毎日メールや電話ばかりなので、実際に海外に出てグローバルに働きたい。希望を出しているが、会 社では「まだ 2 年目なので君はまだ早い」 「もうちょっと勉強してから」と言われており、実現する のが難しそうだ。 (F さん) ③できる限り今の会社で働きたいと答えた人も少数派であった。現状の仕事に大変満 足しておりできるだけ日本にいて今の仕事を続けたいという意見があった。 <キャリアプラン ③できる限り今の会社で働きたい> ◇日本に居続けられる間は居続けたい。将来的にどうなるか見通しはないが、現段階では、帰国の予定 はない。 (B さん) その他の興味深い意見として、「どこで働くかは関係の無い」という人や、「就職前か ら起業を計画」している人もいた。 <ある元留学生の事例-「どこで働くかは関係ない」という意見-> ※新卒で就職した会社を 1 年未満で退職し友人と会社を立ち上げた人 会社ができたばかりなので、本格的に事業を始めて、中国に進出してビジネスを立ち上げたい。長期 的には、アジア圏、英語圏に進出していきたい。私にとって母国に帰ると帰らないのは一緒。ビジネ スを始めれば両方を移動することになるので、どこで働くかは関係ない。 <ある元留学生の事例-「就職前から起業を計画」という意見-> ※アジア人財修了後に専門性を身につけるために大学院へ進学し現在は数社から内定を得ている人 学部のときは卒業したらすぐ帰るつもりだったが中国も就職が厳しいので日本で就職したほうがい いと思い進学した。いまはできれば日本で就職して、5 年ぐらい働いて、母国に帰り、自分の会社を 立ち上げたいと思っている。 67 第4章 自立化支援事業 1.自立化チェックリスト 本センターは平成19年度より巡回訪問を中心として、各研修現場の状況を把握してき た。留学生のための大規模なビジネス日本語・日本ビジネス研修事業は、前例がなかった こともあり、当初は各研修現場でも何をどのように行っていけばよいか、ずいぶんと苦労 し、この4年間試行錯誤を繰り返してきた。研修現場は、多様性と独自性に満ちており、 唯一の「解」は存在しないが、今までの取り組みから、留学生に対するビジネス日本語・ 日本ビジネス研修事業を行う上で、いくつか踏まえておくべき点がリスト化できる。ここ で提示する自立化チェックリストは、そのような項目を列挙したものである。現在事業を 行っている現場が今後継続的に事業実施する際に必要となる項目を振り返って見直したり、 新規に留学生の就職支援を実施しようとするところで必要となる項目を洗い出したりする 際の参考としてもらうために、本チェックリストを作成した。現場の多様性ゆえに、本チ ェックリストの項目を網羅することがそのまま良好な事業実施に直結しない場合もあるが、 参照枠として提示するものである。 1.1 チェックリストの構成 (1)分類 チェックリストは、8つの「分類」と73の個別のチェック項目からなっている。A ~FまでとGの一部は、主として研修カリキュラムを考える計画段階で一度考慮してお く内容を想定している。またGの一部とH、Iはコース途中や終了時に特に考慮し、以 後のコース改善へとつなげていくことを想定した内容になっている。コース設計から終 了・改善して次のコース設計という大きなPDCAサイクルを意識したものである。た だし、個別の各項目がPDCAのどこに対応するかは、各現場の実情によって異なる。 (2)チェック項目と優先度 チェック項目は、研修のカリキュラムを考える際に必須と思われる項目に絞って列挙 した。それぞれの項目に優先度をつけており、「☆☆☆が」もっとも優先度が高いと思わ れる項目である。優先度の高低はアジア人財事業の4年の取り組みを通して、当初より 多くの地域で取り組まれていたものを「☆☆☆」とし、コース運営が軌道に乗った時点 で取り組まれ始めたものを☆としているが、中には、取り組みを通して重要度が再認識 されたものもあり、そのようなものも優先度を高くしている。項目を選択している段階 で必須のものに絞っているため、☆が一つの項目であってもかなり優先度は高いもので ある。 68 (3)参考情報 参考情報は、アジア人財事業の取り組みやその関連でまとめられている情報を中心に URLを掲載した。URLはいずれも平成23年3月時点のものである。本センターが 提供している情報も多い。特にアジア人財事業で当初想定したコース設計についてや、 アジア人財事業の実際の取り組みを事例として収集してまとめたものについては「分類 F」欄の参考情報に掲載している。ここにある「共通カリキュラム」や「事例集」が具 体的な取り組みの参考になる。 なお、実際のコース運営については、明文化できない事柄が重要であることはもちろ んである。アジア人財事業を実施した各実施団体は、そのような経験値を豊富に有して いる。個別具体的な事柄については、各地域実施団体をはじめ、本センターやプロジェ クトサポートセンター等に個別に問い合わせられたい。 1.2 チェックリストが想定する対象者と使い方 本チェックリストは、アジア人財事業の 4 年間の取り組みを踏まえて、留学生に対す るビジネス日本語教育の設計・実施・改善の参考にしてもらうために作成した。 アジア人財事業の全国的な取り組みを見ていると、大学レベルの日本語教育では、コ ースコーディネーターと講師が明確に分けられている場合もあるし、コーディネーター が講師も兼ねている場合もある。そこで、本チェックリストは、コースコーディネータ ーが考えなければならないことを中心としたが、一部は講師として考えなければならな い点も含んでいる。 チェック項目については、現場の個別性や独自性によって異なる場合がある。すべて の個別性を網羅することはできないので、一般的に共通しそうな項目を列挙している。 実際の活用場面では、本チェックリストの項目を網羅することよりも、参照枠として、 個別の現場の事情を改善するための使い方を工夫してほしい。 事業計画を立てる際や、事業の取り組みを振り返る際に、本チェックリストの項目を 参考されたい。また、各現場で必要とされることを適宜追加して、それぞれ独自のチェ ックリストを作り上げていくことが、すなわち事業の自立化につながっていくと思われ る。そういった意味で、本チェックリストは最終形ではなく、これからの発展を期待す る暫定版として提示している。 1.3 チェックリスト 添付資料として巻末にチェックリストを掲載する。 69 第5章 その他の事業 1.委員会の設置 有識者による「共通カリキュラムマネージメント委員会」を設置し、事業運営に関する 専門的な助言・提言を得て各事業項目の実施を行った。委員会は初期、中間、終了時の計 3度開催した。 今年度は各コンソーシアムが次年度以降、自立的に研修プログラムを継続実施していく ことが求められている状況から、委員会においては「教材の一般化」 、「自立化チェックリ スト」、 「本センターの事業評価」を中心的な議題として扱った。なお、委員は後述する事 業評価も実施した。 ①委員名簿 (五十音順) 伊東 祐郎 国立大学法人 東京外国語大学留学生日本語教育センター 教授 小平 達也 株式会社ジェイエーエス 代表取締役社長 武井 直紀 国立大学法人 東京工業大学留学生センター 教授 山本 弘子 株式会社 ケー・エー・アイ カイ日本語スクール 代表 横田 雅弘 学校法人 明治大学国際日本学部 教授 ②実施概要 日時 主な議事 第 平成22年6月14日 ・事業計画について 1 14:00~16:00 ・教材の普及と一般化について ・自立化支援について 回 ・講師研修について 第 平成22年11月19日 ・教材一般化の進捗 2 9:30~12:00 ・自立化状況の報告 ・自立化チェックリストの進捗 回 ・事業評価について 第 平成23年2月24日 ・修了留学生追跡調査報告 3 17:00~20:00 ・自立化チェックリストについて 回 ・事業評価結果について 70 2.他機関との連携・補完関係の強化 事業の運営については、プロジェクトサポートセンターとこれまでと同様に業務上の 連携、情報交換を頻繁に行い円滑な事業運営に努めた。 修了留学生追跡調査については、「アジア人財資金構想事業の効果検証に関する調査」 (以下、満足度調査)を実施する株式会社クオリティー・オブ・ライフと企画段階から 協力して行った。これは、満足度調査の一部に修了留学生を対象とした部分があるため であり、今回この2つの調査を共同実施することで、調査の協力依頼に関する連絡窓口 を一本化し、調査協力者の負担を軽減することができた。結果的に昨年度よりも多くの 調査協力者を得ることにもつながった。 講師研修においては、管理法人、またコンソーシアム所属企業、地域との連携をこれ まで以上に行うことができた。具体的には、地域型講師研修における管理法人との共催 実施、コンソーシアム企業による講義実施、経済産業局担当者による講義実施などに成 果として現れた。特に、地域型講師研修を管理法人と共催したことは講師研修のノウハ ウ共有にもつながり、各地域における講師育成の基盤作りに一定の役割を果たしたと言 える。 3.報告書の作成 本事業の事業実績と結果について取りまとめ報告書を作成した。 71 第6章 事業評価と今後の提言 1.事業評価 (1)事業評価の趣旨 平成19年度より今年度(平成22年度)までAOTSが実施した4年間の本事業の 内容に関し評価を実施した。 (2)事業評価の目的 4年間の本センター事業を振り返り総括することで、本センター事業の成果や課題を 整理し、今後の関連事業実施の際に参照できるようにするために事業評価を実施した。 (3)事業評価の方法 1)評価対象期間 平成19年6月1日~平成23年1月31日 2)事業評価の実施者と構成 事業評価は、巡回訪問記録や過去のアンケート調査の結果に基づきコンソーシアム 関係者から意見を集約した「事業関係者評価」 、本センターによる「自己評価」、本事 業の委員による「委員評価」に分けて実施、記述した。 3)事業評価の方法 ①評価対象となる事業項目 評価を実施するにあたり、本事業の事業項目を次の 4 つに分類し、それぞれ年度ご とに目標/目的、実績、成果、課題・改善案について本センター事務局が記述した(評 価資料1-1~1-4参照)。本事業の目標/目的については、経済産業省の本事業公 募要領の記述を参照した。 1 教材開発と改善 2 講師トレーニング 3 成果に対する評価と効果検証 4 自立化支援 ②「事業関係者評価」について 「事業関係者評価」は次の 3 点を記述した。 a.定性的評価 ・・・巡回訪問時にコンソーシアム関係者から得たコメント 72 b.定量的評価1・・・平成20年度に各管理法人に向けて実施した使用教材アン ケートや、各年度に実施した講師研修の参加者の事後アン ケートの結果 c.定量的評価2・・・経済産業省委託事業「アジア人財資金構想事業の効果検証 に関する調査」 (満足度調査)のうち本センター事業に対す る管理法人からの評価結果 ※なお、今回の事業評価のために管理法人等にヒアリングやアンケートは実施し ていない。 ③「自己評価」および「委員評価」について 「自己評価」および「委員評価」は、各事業項目について4つの評価指標(妥当性、 有効性、効率性、プロセス)を設定し、以下の手順で評価を行った。 a.各項目に関し、4つの評価指標により点数をつける。 指標 内容 配点 ① 妥当性 事業趣旨や目標に照らした実績の適切度合 25点 ② 有効性 目標達成度合、受益者や社会に裨益されている度合い 25点 ③ 効率性 参加者数・実施者数・規模の適切度合 25点 ④ プロセス 関係者(経済産業省・管理法人関係者・専門家等)と 25点 のコミュニケーション、調整 b.各評価指標の合計点により、各事業項目についてA~Eの5段階評定をつける。 評定 評定 合計点数 A 大いに評価できる 100-90点 B かなり評価できる 89-70点 C 評価できる 69-50点 D あまり評価できない 49-30点 E 評価できない 30点未満 c. 「委員評価」では委員による定性的な評価として事業全体に関して専門的な見地 からのコメントの提出を求め本報告書に掲載した。 (評価資料3参照) (4)事業評価の結果 1) 「事業関係者評価」の結果について 評価資料1-1)~1-4)における「事業関係者評価」の欄に記載した。 73 2) 「自己評価」 「委員評価」の結果について 事業項目 自己評価 委員評価 (委員5名の平均値) 1 教材開発と改善 B(70点) B(76点) 2 講師トレーニング A(90点) B(85点) 3 成果に対する評価と効果検証 C(60点) C(67点) 4 自立化支援 B(80点) B(74点) 実施評価理由、内容については、次頁以降参照。 評価資料1-1)教材開発と改善 評価資料1-2)講師トレーニング 評価資料1-3)成果に対する評価と効果検証 評価資料1-4)自立化支援 評価資料2 自己評価 評価資料3 委員評価 評価資料4-1)伊東委員コメント 評価資料4-2)小平委員コメント 評価資料4-3)武井委員コメント 評価資料4-4)山本委員コメント 評価資料4-5)横田委員コメント 74 評価資料1-1)教材開発と改善 実施事業内容 目標/目的 (公募要領より) 項目 実績 ●各コンソーシアムが利用出来る共用の 教材・授業カリキュラムを開発し、各コン ソーシアムに供給する。留学生に対して 本教材等を使用した教育を行うことで、産 業界に必要とされる人材を育成することを 目的とする。 H 19 ●共通教材の開発 15テー マ(1テーマにつき 4種類 (活動冊子、リソース集、講 師用手引き、語彙リスト)) (A-1,2,3、B-1,2,3,4、C1,2,3,4、D-1,2,3,4) ●評価ツールの開発(BJT ●1年授業を行った結果、教材等につい 個別テスト、日本語Can Do て改善すべき点があれば、翌年度に反映 Statements、社会人基礎力 する。産業界のニーズにマッチした教育を チェックリスト、ポートフォリ 行うため、適切な評価と、開発教材等の オ) ●Webサイト構築 改善を行う。 ※項目「3.成果に対する評価と効果検証の項目と重複するため、本 項目該当箇所に下線をひいた 成果 (主にAOTS報告書より) 課題・改善案 (主にAOTS報告書より) ・留学生の企業内活動へのソフトランディングを可能とするビジネ ・教材の扱っているテーマや内容が陳腐化していくことが想定さ ス日本語やビジネス文化・知識、社会人としての行動能力が学 れる 習できる統合型の研修カリキュラムとそれに対応する教材を開 ・実施条件による、現場でのカスタマイズ作業が必要 発した ・平成18年度の調査を踏まえ、「ビジネス日本語能力の養成」、 「ビジネス文化・知識の理解」、「社会人としての行動能力の養 成」を内包した幅広いコミュニケーション能力の実現をめざすた めに、PBL(Project based Learning)形式で統合的に養成するこ とを可能とする教材を開発した(類を見ない大規模なPBLカリ キュラム) ・留学生の語学レベルが教材に達していない留学生の場合、語 学的手当てが別途必要となる ・PBL教材を扱い、教えることができる教師の養成が必要 ・モデルカリキュラムがどう現場のカリキュラム設計に活用された かという定量的な効果検証が十分に行えていない ・カリキュラム・教材だけでなく研修効果を多角的に検証できる評 価ツール(Can do Statements、BJT個別テスト)を開発した ・評価ツールの使用の意義が十分に伝わっていない ・就職に向けた訓練から企業活動の疑似体験までを日本語を通 じて経験、実践するというカリキュラムを作成した ●平成19年度事業において開発された 教材を留学生に対して使用し教育を行う ことで、産業界に必要とされる人材を育成 することを目的とし、必要に応じて本教材 の更なる開発を行う。 1 教材開発と改善 H 20 ●授業を行った結果、教材等について改 善すべき点があれば翌年度に反映する。 産業界のニーズにマッチした教育を行うた め、各コンソーシアムが実施する日本語 研修、ビジネス研修の適切な評価と、開 発教材等の改善を行う ※項目「3.成果に対する評価と効果検証の項目と重複するため、本 項目該当箇所に下線をひいた ●2年間のカリキュラムモデ ル4種類を作成(72時間、 123時間、192時間、276時 間) ●共通教材改訂 15テーマ ・研修現場の巡回訪問により収集した情報を元に、各現場で、留 学生の研究活動や就職活動に配慮したカリキュラムが作成でき (A-1,2,3、B-1,2,3,4、Cるように、4種類のカリキュラムモデルを作成した。 1,2,3,4、D-1,2,3,5) ●共通教材開発(追加) 2 ・前年度作成教材については資料を更新が必要との判断から引 用元HPリンク先チェック・貼りなおし、参考資料の最新版への差 テーマ(B-5,C-5) し替えといった改訂作業を行った。 ●評価ツール 社会人基礎 ・新規開発した「社会的起業」・「ITコース」の2つの共通教材につ 力チェックリストの6言語 翻訳(英語、中国語、韓国 いては、想定時間数と想定日本語力については現場からの指摘 を反映させた。 語、タイ語、インドネシア 想定時間数の短縮(90分×15回 → 10回) 語、ベトナム語) 想定日本語レベルの引き下げ(日能試1級以上→2級程度) ●Webサイトでの公開 ●共通教材の改訂 1テー マ(C-5) ●共通教材の開発 1テー マ(A-4) ●Webサイトでの公開 ●授業を行った結果、教材等について改 ●『日本ビジネス・ビジネス 善すべき点があれば、翌年度に反映す 日本語研修 事例集』作 成、公開 る。 ●作成した教材を留学生に対して使用し 教育を行うことで、産業界に必要とされる 人材を育成することを目的とし、必要に応 じて本教材の更なる開発を行う。 ・研修現場の実態を考慮し、PBLによる包括的能力の育成を推 ・カリキュラムモデルは、全ての現場の多様性には対応しておら 奨しつつ、ビジネススキルや個別の日本語スキルの伸張を目的 ず、次年度以降もモデルの適切性について現場で検証が必要 とした研修を取り入れるよう各コンソーシアムの実施支援を行っ た ・研修現場ではAOTS提供の教材だけでなく、独自のリソースや ・各現場で段階的に研修体制を構築しており、新たな研修モデル ツールを使用し効果的な研修や実施体制を構築しているため、 となる支援ツールを開発する必要性は相対的に低下 開発は求められる最小限のものに留めた ・共通教材C-5「ITコース」については、ITに関する十分な知識が ない日本語教師でも教材の内容を理解し教室活動を円滑に行え るように、情報管理やITに関する解説を充実させると同時、活動 や課題に対する解答例を増やす改訂作業を行った。 ・学生が就職活動の基礎的な知識を事前に自習できるように共 通教材A-4「就職活動ワークブック」を開発し、集合型研修をより 効果的・効率的に実施できるようにした。 H 21 ・現場の講師6名を委員とする研修事例検討部会を設立し、全国 で行われている事例の収集・検討・整理を行い、研修事例集を作 成した。 ●産業界のニーズにマッチした教育を行 うため、各コンソーシアムが実施する日本 語研修、ビジネス研修の適切な評価と、 開発教材等の効果検証及び改善を行う。 ●共通教材の一般公開 6 ・教材で使用する資料について、本事業終了後も引き続き使用 ・当初から提示したカリキュラム全体(特にPBL形式の研修)に ついて、総括としての評価、考察、改訂ができていない テーマ(A-1,2,3,4、D-1,2)の できるように更新を行った ための改訂、著作権上の課 題処理作業等 ・広く一般に公開可能な教材となるように、執筆者とAOTSとの間 の著作権上の整備を行った ※項目「3.成果に対する評価と効果検証の項目と重複するため、本 項目該当箇所に下線をひいた H 22 75 評価資料1-1)教材開発と改善(つづき) 事業関係者評価 定性的評価 (巡回訪問時の訪問記録より(ランダム)) 項目 定量的評価1 (管理法人関係者に実施したアンケートより) 定量的評価2 (「アジア人財資金構想事業の効果検証に関 する調査」 経済産業省委託業者実施より) 使用教材アンケート調査(2009/2/17-2009/2/28) 高度専門 回答率 80.9%(17/21法人) 高度実践 回答率 85.7%(12/14法人) ※アンケート回答法人 合計29法人 ※実践四国、中国については個別に回答をしているため実際の 管理法人数より多い 共通カリキュラムマネジメント事業に対する満足度(計34法人) ■日本語研修の教材開発に関するに満足度 満足・やや満足 41.2% どちらともいえない35.3% やや不満・不満 20.6% 無回答2.9% ●共通教材をメインに使用しているクラスがある。 専門 7法人 実践 11法人 計18法人(62%)) ●独自教材をメインに使用しているクラスがある。 専門 3法人 実践 2法人 計5法人(2%)) ●市販教材をメインにしているクラスがある。 専門 13法人 実践 3法人 計16法人(55%) ※一管理法人に対し、クラス数が複数あり、使用教材が異なる 場合があるため、総数は100%ではない ■ビジネス研修の教材開発に関するに満足度 満足・やや満足 29.4% どちらともいえない44.1% やや不満・不満 20.6% 無回答5.9% 【共通教材について】 ・教材が想定する学生の日本語レベルに合わない学生が少なか らず存在する(日本語レベルの低いクラスで使用できない) ・講師が教材を十分に使いこなす教授能力を持ち合わせていな い場合がある ・教材が想定する学習スタイルと学生の学習スタイルが合致しな い場合がある ・教材のテーマと学生の専門分野が合致しないことがある H 19 【共通教材の使用状況】 ・共通教材は、上級クラスで、いくつか使用する予定 ・現場の状況に合わせてカスタマイズして使用する予定 ・共通教材をベースに適宜補足教材を使用する予定 ・大学、語学学校独自で開発した教材を使うため共通教材は使 わない ・市販の中級レベルの教材を使うため共通教材は使わない 【評価ツールについて】 ・Can-Doは項目が少なすぎて十分に活用できない。日本社会で ビジネス場面に対応できるようCan-Doの項目も増やすべき ・ポートフォリオは学生が就活をするときの資料として活用したい 1 教材開発と改善 H 20 H 21 【共通教材について】 ・改訂が必要ではないか ・カリキュラムや教材のカスタマイズについて、情報交換ができる ような状況を作ってほしい ・就職内定後の研修内容をどうしていくかが現場の課題となって いるが、共通教材ではこの点について十分に考慮されていない のではないか 【共通教材の使用状況】 ・中級クラスは市販教材を使用し、上級ビジネス日本語クラスは 共通教材を使用 ・再委託先日本語学校の教材を使用しているため、共通教材は 使用していない ・独自教材でPBL型授業を実施しているが、共通教材は使用して いない ・市販教材や独自開発した教材を使用しているため、共通教材 は使用していない 【カリキュラム開発の状況】 ・共通カリキュラムを参考にした上で独自カリキュラムを策定して いる ・前年度の経験を踏まえたカリキュラムを開発した 【その他】 ・共通教材ではPBL形式の研修を想定しているが、日本語講師 だけでキャリア開発や就職活動に関する内容を扱うのは困難 ●共通教材を使用しているクラスのレベルについて。 専門 上級 10法人 中級 3法人 初級 0法人 実践 上級 5法人 中級 3法人 初級 0法人 ●市販教材を使用しているクラスのレベルについて。 専門 上級 3法人 中級 9法人 初級 4法人 実践 上級 3法人 中級 2法人 初級 0法人 共通カリキュラムマネジメント事業に対する満足度(計43法人) ■日本語研修の教材開発に関するに満足度 満足・やや満足 23.3% どちらともいえない55.8% やや不満・不満 16.3% 無回答4.7% 【共通教材について】 ・共通教材では1テーマが15回編成だが、それだけ時間を確保で きない 【共通教材の使用状況】 ・基本的に共通教材を使用している ・カリキュラムの一部で共通教材を使用している ・様々な教材を併用している(市販教材、共通教材改変、独自開 発) ・委託日本語学校作成の教材を使用しているため共通教材は使 用していない 【研修実施状況】 ・共通教材を使用していないがPBL形式の研修を実践している ・生教材を積極的に活用した授業を実施 ・学生のレポートを教材化した 【評価ツールについて】 ・学生から自己評価をすることに対してあまり評価が高くない ・細かい専門的な内容を含めたCan-Doに変更し実施している が、なかなか難しい。 ■ビジネス研修の教材開発に関するに満足度 満足・やや満足 16.3% どちらともいえない62.8% やや不満・不満 16.3% 無回答4.7% 【その他】 ・キャリア専門家と日本語講師で協働授業を実施している ・日本人学生をTAとして参加させている ・日本語力が低い学生については補講を実施している ・渡日前に海外で事前日本語教育を実施している 調査中 ※平成23年1月31日時点 【共通教材の使用状況】 ・一部使用しており、また研修設計の参考にしているので次年度 以降も継続して利用可能な形態にしてほしい。 ・共通カリキュラムでは時間が足りないので、エッセンスのみ取り 出し利用。 ・プロジェクトの専門分野に関するテーマが含まれていないた め、使用していないが、授業での目標設定の目安として参考にし ている H 22 ・以前は使用していたが、海外リクルートが始まり学生の日本語 レベルが低くなったため現在は使用していない ・共通教材は以前使用していたが、現在は生教材のみを使用し ている。ただし、PBLや、グループワークを強く意識した授業を 行っている 76 評価資料1-2) 講師トレーニング 実施事業内容 目標/目的 (公募要領より) 項目 成果 (主にAOTS報告書より) 課題・改善案 (主にAOTS報告書より) 【講師トレーニング】 ・従来の日本語教育とは異なるPBLを中心としたカリキュラ ムで求められる指導を各コンソーシアムの研修管理者、研 修担当者向けに行った ・共通カリキュラム・教材の指導法に関する実務的な講師研 修を実施し、研修の円滑化を促した ・開発教材の具体的な指導法について伝達できた 【講師トレーニング】 ・コンソーシアム全体の運営管理に関わる立場の担当者等 に関しては要望にマッチする研修といえなかった ・一斉研修ではなく、受講者の対象を絞るなどし、多様な管 理法人内での立場、学生の属性等状況に合致する研修を 実施する必要がある ・AOTSからの一方的な情報伝達だけでなく、情報交換を行 うような事例を共有する場を提供する必要がある 実績 ●開発した教材等を使用する各コンソー●集合型講師研修 2回実 施 参加者 計76名 ●巡回訪問 計83回 (専門31、実践41、経済産 業局11) 【巡回訪問】 ・コンソーシアムの日本ビジネス・ビジネス日本語研修につ 【巡回訪問】 いて専門的アドバイス及び、初年度における現状把握を行う ・巡回訪問で知りえた情報を、研修現場に十分に還元できて いない ため、巡回訪問を積極的に行った ・巡回訪問により研修実施のパターン化が可能となり、本事 業の実態を把握することができた ・全国的に共通する問題点(2年次の出席率低下)も把握で きた H 19 ●開発した教材等を使用する各コン ソーシアムの教員に対して、適切な授 業を行えるよう指導・助言等を行いま す。 ●集合型講師研修 1回 参加者 計67名 ●地域型講師研修 5回 参加者 計180名 ●巡回訪問 計100回 (専門48、実践36、経済産 業局16) ・研修内容を共有し、相互に啓発できるよう研修事例の紹介 ・巡回訪問により把握した問題点のうちで全体に共通するも や、情報共有も意識的に研修に取り入れた(ネットワーク構 のに関しては、経済産業省、プロジェクトサポートセンター等 関係者を含め検討していく必要がある 築) ・地域のニーズや、研修形態特性に応じた地域型研修会に ・就活後の二年目研修について、引き続き研修内容が課題 となっている 重点を置いて実施した ・地域的に集合研修に参加が難しい講師も参加できるように なった ・モデル授業とし、開発したIT教材に関する日本語講師とIT 専門家の協働のPBL授業を公開した 2 講師トレーニング H 20 ・カリキュラムに評価を結びつけるという考え方が3年経った 時点でも困難な問題であるという認識から講師研修のテー マとして評価を取り上げたが、今後も引き続き取り組みが必 ・テーマに応じて、対象者(管理法人内での立場、役割)を限 要とされる事項である 定した集合研修を実施した ・共通教材「ITコース」をテーマとした研修は参加人数も少な ・地域型講師研修については現場の日本語講師を中心に く、現場のニーズを十分に把握したテーマとはいえなかった 行ったが、自立化後も見据え、自立化後に担当する可能性 と思われる のある人も周辺的な対象者として参加を可能とした ●開発した教材等を使用する各コン ソーシアムの教員に対して、適切な授 業を行えるよう指導・助言等を行いま す。 ●集合型講師研修 3回 参加者 計29名 ●地域型講師研修 3回 参加者 計41名 ●巡回訪問 計54回 (専門29、実践21、経済産 業局4) ・講師研修を通じ、コンソーシアム間の情報共有、意見交 換、情報共有ができるように図った ●日本語研修やビジネス研修用に開 発した教材等を使用する各コンソーシ アムの教員に対して、適切な授業を行 えるよう指導・助言等を行います。 ●集合型講師研修 2回 参加者 計41名 ●地域型講師研修 5回 参加者 計85名 ●巡回訪問 計45回 (専門24、実践15、経済産 業局6) ・集合型講師研修では、これまでにマネージメントセンターで ・日程の都合や地理的要因で研修に参加できなかった講師 蓄積した研修事例を取り上げ、現場の課題を自立的に解決 に対するフォローが十分とは言いがたい できるようにした ・また、研修現場で蓄積した経験を題材としたケーススタディ の手法を紹介した ・地域型講師研修では、巡回訪問で得たニーズに基づき、 自立化を支援できる研修テーマを設定した ・また、主に当該地区の管理法人と共催し、企画と運営を共 同で実施することで地域の多様性に沿った形で実施するこ とができた ・アジア人財関係者以外の今後留学生に対するビジネス日 本語教育に関心のある講師も参加し、アジア人財事業の成 果普及に貢献した H 21 H 22 77 評価資料1-2) 講師トレーニング(つづき) 事業関係者評価 定性的評価 (巡回訪問時の訪問記録より(ランダム)) 項目 定量的評価1 (管理法人関係者に実施したアンケートより) (十分なコメントがないため記述なし) ※アンケート項目が記述式のみの為、数値化不可 ・東京以外でも講師研修を実施して欲しい 2箇所のみアンケート調査を実施 定量的評価2 (「アジア人財資金構想事業の効果検証に関 する調査」経済産業省委託業者実施より) H 19 内容に関する満足度(満足、やや満足) 57.0% 時間に関する満足度(適切) 83.0% ■ビジネス研修講師のトレーニングに関する満足度 満足・やや満足 23.5% どちらともいえない 58.8% やや不満・不満 14.7% 無回答2.9% 講師トレーニング H 20 2 共通カリキュラムマネジメント事業に対する満足度(計34法 人) ■日本語研修講師のトレーニングに関する満足度 満足・やや満足 32.4% どちらともいえない47.1% やや不満・不満 17.6% 無回答2.9% ・地方の場合、地理的な制約で研修の機会が少なく、また移 3箇所のみ(集合型研修のみ)アンケート調査を実施 動も大変なので東京、大阪以外の場所でも講師研修をぜひ 行ってほしい 内容に関する満足度(満足、やや満足) 76.7% 時間に関する満足度(適切) 96.0% 共通カリキュラムマネジメント事業に対する満足度(計43法 人) ■日本語研修講師のトレーニングに関する満足度 満足・やや満足 25.6% どちらともいえない67.4% やや不満・不満 2.3% 無回答4.7% ■ビジネス研修講師のトレーニングに関する満足度 満足・やや満足 16.3% どちらともいえない 74.4% やや不満・不満 2.3% 無回答7% H 21 ・参加できなかった講師研修の資料を送って欲しい 6箇所(全件)アンケート調査を実施 ・講師研修はより参加しやすい時期を検討して欲しい 内容に関する満足度(満足、やや満足) 97.7% ・他のコンソーシアムの現場で行われている研修に関して、 まとまったプレゼンが聞きたい 時間に関する満足度(適切) 71.8% H 22 78 調査中 ※平成23年1月31日時点 評価資料1-3) 成果に対する評価と効果検証 実施事業内容 目標/目的 (公募要領より) 項目 実績 成果 (主にAOTS報告書より) ●産業界のニーズにマッチした教育を行うた ●BJT個別テスト実施(初 ・各現場の研修スケジュールにあわせ、初期評価、中間評 め、適切な評価と、開発教材等の改善を行 期値、中間値) 価を行うためBJT個別テストを実施した う。 →受験率89.75% ※項目「1.教材開発と改善の項目と重複するため、本項目該当箇 所に下線をひいた 課題・改善案 (主にAOTS報告書より) ・研修プログラム内容とテスト結果の伸びの相関性、CDS等 の評価指標とBJT個別テストとの相関性の分析を行う必要 がある ・報告書において結果を公表した ●Can-Do Statements の回収 ・初期評価に比べ、中間評価の受験者が減っており、受験を 徹底する必要がある 【その他の評価ツール】 ・コンソーシアムによっては評価ツールの必要性が認識され ていないケースがあった。管理法人への周知の必要がある ・CDSの項目内容について学生が分かりやすいように改訂 する必要がある H 19 ●産業界のニーズにマッチした教育を行うた ●BJT個別テスト実施 め、各コンソーシアムが実施する日本語研 (初期値、中間値、最終 修、ビジネス研修の適切な評価と、開発教材 値) 等の改善を行う →受験率83.77% ※項目「1.教材開発と改善の項目と重複するため、本項目該当箇 所に下線をひいた ・1期生初期、中間、最終及び2期生初期、中間の結果を元 ・試験結果が受験者の点数一覧だけで、フィードバックツー に点数の推移をグラフ化した ルとして使いづらい ・高度専門では広い山、高度実践では高い山型となっている ・初期、中間、最終の時期が固定されていないため、受験時 ・学生の属性が分かることにより、研修内容についても、専 期にばらつきがある 門では予備教育の必要性、中長期的な継続学習、実践では 実践的な運用を通した学習を行う等 BJT個別テストの結果 ・評価ツール(日本語チェックリスト、社会人基礎力チェックリ を通じて研修の個別アドバイスができるようになった スト)に対する現場の理解を深め、有効活用を促進させるた め、評価ツールの利用に関する事例共有を促進することが ・学生のビジネス日本語力がどのように推移しているかを明 必要 らかにすることができた 3 成果に対する評価と効果検証 H 20 ●開発済み共用の教材、授業カリキュラムの ●BJT個別テスト実施(初 ・BJT個別テストは、参加留学生の能力の伸びを唯一量的 【BJT個別テスト】 運用面についての効果検証を行う。 期値、最終値 年二回時 に記述できるツールであり、日本語力に関して全体の傾向を ・未受験が若干発生しており、留学生に対する本テストの有 把握するという点で導入した意義は大きい ・受験回数の変更、結果通知書の送付等の運用の変更によ り、参加学生の学習支援、就職支援という点でも活用するこ とができた。 ●研修事例検討部会 計 ・研修現場で取り組まれている研修内容について専門家6 名による委員会を構成し、モデル化の検討を行った 6回の実施 ●『日本ビジネス・ビジネ ・現場講師が、成果の活用ができるよう事例集を作成した ス日本語研修 事例集』 【修了生追跡調査について】 作成 ●修了生追跡調査の実 ・追跡調査を通じて、本事業に参加した元留学生の就労中 の課題を把握し、研修設計改善の提案ができた 施 インタビュー調査 計3回 実施 対象10名(H21) アンケート調査 計1回 実施 回答数86名(H21) 期固定) ●産業界のニーズにマッチした教育を行うた →受験率78.25% め、各コンソーシアムが実施する日本語研 修、ビジネス研修の適切な評価と、開発教材 ●Can-Do Statements の実施についての報告 等の効果検証及び改善を行う。 H 21 ●産業界のニーズにマッチした教育を行うた ●BJT個別テスト実施(初 ・BJT個別テストの実施および分析(初期値・最終値)を通し め、各コンソーシアムが実施する日本語研 期値、最終値 年二回時 て、事業全体の効果検証ができた 修、ビジネス研修の適切な評価と、開発教材 期固定) 等の効果検証及び改善を行う。 効性と運用に関する更なる周知が必要 【修了生追跡調査】 ・サンプル数が少なく、アンケートを元に一般論を述べるの は難しい。 →受験率75.4% 【BJT個別テスト】 ・学生の学業や就職活動の都合から年々研修参加者が減 り、BJT個別テストの最終値受験者の確保が困難になる ケースがあり、受験者の全体数が落ちてしまった ●修了生追跡調査結果 (QOLと共同実施) インタビュー調査 19名 アンケート調査 244名 ・BJT個別テストだけでは、各コンソーシアムが実施する日 本語研修、ビジネス研修の適切な評価ができていたとは言 いがたい。その他の客観指標についても検討すべきであっ たか H 22 79 評価資料1-3) 成果に対する評価と効果検証(つづき) 事業関係者評価 定性的評価 (巡回訪問時の訪問記録より(ランダム)) 項目 定量的評価1 (管理法人関係者に実施したアンケートより) 定量的評価2 (「アジア人財資金構想事業の効果検証に関 する調査」経済産業省委託業者実施より) ・BJT個別テストをフィードバックできるようにしてほしい ・BJT個別テストではなく、通常のBJTが受験できるように考 えてほしい H 19 共通カリキュラムマネジメント事業に対する満足度(計34法 人) ■共通カリキュラムマネジメント事業総合的な満足度 満足・やや満足 41.2% どちらともいえない44.1% やや不満・不満 11.8% 無回答2.9% ・BJT個別テストを日本語力の著しく低い学生に受験させる ことには抵抗がある ・BJT個別テストではなく通常のBJTを評価ツールとして欲 しい ・テスト結果がエクセル表で、点数のみ届くため、学生に フィードバックできないのでBJT個別試験を受験する意義を 感じない。 (通常のBJTであれば意義はある) 3 成果に対する評価と効果検証 H 20 共通カリキュラムマネジメント事業に対する満足度(計43法 人) ■共通カリキュラムマネジメント事業総合的な満足度 満足・やや満足 30.2% どちらともいえない51.2% やや不満・不満 14.0% 無回答4.7% ・BJT個別テストを7月ではなく、本当の初期値が分かるよう もっと早く実施してほしい ・予備キットの送付数不足があった ・結果通知書の受験者全体の得点のグラフが初期、最終を 受けた学生の結果が一緒になっているので分けてほしい 【調査について】 ・他の高度専門事業で就職した留学生の日本語力や就労後 のコミュニケーション上の課題など、情報がほしい。H21修 了留学生調査のサンプル数が少ないのが気になる H 21 ・通常のBJT実施中止通達が現場の混乱を招いている ・通常のBJTそのものの認知度がまだまだ低く、受験のメ リットを学生が認識できていないケースがあった ・BJT個別テストを必ず受講しなければならないのが厳しい ・通常のBJTビジネス日本語能力テストは受講地が限られ るため、学内で受講できるBJT個別テストの形式は非常にあ りがたい 調査中 ※平成23年1月31日時点 H 22 80 評価資料1-4) 自立化支援 実施事業内容 目標/目的 (公募要領より) 項目 実績 成果 ●各コンソーシアムにおいて、日本語 ●自立化チェックリスト 研修やビジネス研修が23年度以降も 自立的に継続して実施できるよう指 導・助言等を行う。 課題・改善案 ・巡回訪問や、講師研修の機会に本事業開始時に行った共 通カリキュラム・共通教材開発のプロセスを提示し、管理法 人の自立的にカリキュラム開発支援や、自立化後の研修の プロセスとして役立ててもらうよう説明を行った ・管理法人から特に多くあげられる自立に必要な予算的な 問題(例:講師確保の為の予算)はプロジェクト全体に関わ る事項であったため、管理法人が求める対応ができなかっ たと考えられる。 4 自立化支援 ・自立化チェックリストを作成 ・集合型講師研修(8月)で、自立化チェックリスト(案)を使 い、次年度以降の研修実施について検討し、自立化の動機 付けを行った H 22 評価資料1-4) 自立化支援(つづき) 事業関係者評価 定性的評価 (巡回訪問時の訪問記録より(ランダム)) 項目 ・具体的に自立化のモデルを提示して欲しい 定量的評価1 (管理法人関係者に実施したアンケートより) - 調査中 ※平成23年1月31日時点 自立化支援 ・他のコンソーシアムの自立化の状況を教えて欲しい 4 定量的評価2 (「アジア人財資金構想事業の効果検証に関 する調査」経済産業省委託業者実施より) H 22 81 評価資料2 自己評価 自己評価 評 価 基 準 項目 合計点 - 評定 2 講師トレーニング 1 教材開発と改善 70 成果に対する評価と効果検証 自立化支援 4 ②有効性 25点(5点刻み) ③効率性 25点(5点刻み) 事業趣旨や目標に照らした 目標達成度合、受益者や社 参加者数・実施者数・規模 実績の適切度合 会に裨益されている度合い の適切度合 点 ④プロセス 25点(5点刻み) 関係者(経済産業省・管理 法人関係者・専門家等)との コミュニケーション、調整 20 点 10 点 【良い点】 【良い点】 ・各コンソーシアムが利用で ・本教材が元となり研修、教 きるようカスタマイズ可能な 材選択の目安となった 共通教材を作成した 【悪い点】 ・巡回等により現場の声を元 ・実際の使用度合いが低い 評定:B に改善も行った ・年度毎に産業界のニーズ を踏まえた改善ができてい たとは言いがたい 20 点 【良い点】 ・H19年度に半年という短い 期間で、大規模PBL教材を 作ったことは評価できる 90 20 点 【良い点】 ・講師研修を通じて学んだ知 識を教室現場で生かしても らうことはできたと感じる 20 点 【良い点】 ・講師研修には、地域や、管 理法人で中心となる講師の 参加はあった 10 点 【悪い点】 ・産業界のニーズにマッチし た教育を行うための評価とし て、BJT個別テストを設定し たのはよかったが、研修そ のものに対する評価が適切 評定:C にできていたかという面では 不十分 20 点 【良い点】 ・BJT個別テストは受験者の 利便性や、管理法人の運用 面に配慮し、適切に評価を 行えるよう運用面の改善が できたのはよかった 15 点 【良い点】 ・BJT個別テストは、全国で 実施される多様な研修現場 での効果を統一した指標で 測るツールとして効率的で あった 15 点 【良い点】 ・BJT個別テストの運用に関 しては、関係者との調整も円 滑であった 80 20 点 【良い点】 ・アジア人財参加関係者だ けでなく、はじめて本事業に 取り組む人に対する内容も 意識し作成した 20 点 【良い点】 ・報告書に掲載し、Web上 から配信することにより多く の方に裨益することができる 20 点 【良い点】 ・巡回訪問時、講師研修時 等に管理法人関係者より意 見を伺い、チェックリストの作 成に役立てた 点 25 点 【良い点】 ・開発教材だけでなく、現場 の多様なニーズ合致した テーマで講師研修を行った 評定:A 60 3 ①妥当性 25点(5点刻み) 点 点 20 点 【良い点】 ・本事業の4年間の蓄積を残 すため、自立化チェックリス トの作成を行った 20 点 【良い点】 ・H18年度の調査を元に、企 業(産業界)のニーズを捉 え、教材作業部会を構築し トップダウン式にニーズが組 ・スケジュールを考えれば規 み込まれた教材を作成する ことができた 模等は妥当かと思われる ・改善の面では、巡回、アン ケート等で個別の声をひろ えた 25 点 【良い点】 ・講師研修の企画、運営に ついては巡回訪問の機会を 有効活用し、現場のニーズ を踏まえ、コンソーシアム関 【悪い点】 係者と連携し、連絡を密に取 【改善点・その他】 ・裾野としてはまだまだ広が ・特に3年目については参加 りながら実施した 者が減少した ることができたと感じる ・経済産業局や、コンソーシ アム企業とも連携した研修を 実施した 評定:B 82 【悪い点】 ・研修評価という目標に関す る達成度に疑問が残る 評価資料3 委員評価 評 価 基 準 項目 合計点 - 評定 1 教材開発と改善 76 点 講師トレーニング 委員評定 ②有効性 25点(5点刻み) ③効率性 25点(5点刻み) 事業趣旨や目標に照らした 目標達成度合、受益者や社 参加者数・実施者数・規模 実績の適切度合 会に裨益されている度合い の適切度合 20 点 17 点 18 点 【良い点】 【良い点】 【良い点】 ・産業界のニーズにマッチした教育 ・事業終了後も教材で使用する資 ・本事業の目的を達成すべき点か を行うことを目的にコンソーシアム 料について使用できるようにしたこ らは効率性は維持されていたと評 価できる。(出来る範囲内の効率性 が実施する研修教材の開発、検証 とは評価 ・短期間で予定通りの教材が完成 としては特段問題はない) を行った ・短期間で大規模なPBL教材を開 ・現場からのニーズをくみ取り改善 したことは評価 発したことは評価 につなげる循環工程が具体的な形 【悪い点】 ・特に2年目以降の教材の利用率 で成果として表れている ・日本におけるビジネスを実践的に ・市販(コンソ独自)教材との棲み分 は落ちているが、実際には本教材 学習するためには、PBL教材のよう けや相互活用など、ニーズの多様 を参考的に利用しているケースが な形式が必要であり、その基礎とな 性に対応しうる教材開発が推進さ 多く、結果的に広範での利用がな る教材開発は妥当であり、評価で れていたならば、有効性もさらに高 された まったのではないか。 きる ・社会人基礎力等、日本語教育プ ・当初の想定・前提(時間数、レベ 【悪い点】 ログラムの従来の枠を超えた内容 ルなど)を下回るケースが相次ぎ、 ・共通教材をメインに使用している となっており、その達成のための その結果、目標レベルや成果の達 クラスは68%にとどまる。 ・上級クラスでは使用率が高まって PBL教材作成という方向性は画期 成度は低くなった ・現場の実情と、多くの教材のあり はいるが、ビジネス研修の教材開 的 ・PBL教材の妥当性はともかくとし 方がマッチしていない部分が多い。 発に関する満足度はH21でH20 評定:B て、ビジネス日本語のあり方に対し 現場でのカスタマイズを認めるにし より下落 て、インパクトを与えたことは評価 ても、レベル、内容について、改善 ・教材制作の計画についても、改善 のためにもっと踏み込んだ対処が の余地があった 行われるべきであった 【悪い点】 ・内容面、妥当性という点からは、 学生のニーズに十分に応えきれな 【その他・改善点】 ・教材そのものがまだ多様性に応 かった点が惜しい ・現場の実情に合わせた改善が行 えられるものに仕上がっていないと いう点もあるが、教材の使用につ われたかについては疑問 ・受講時間やレベル等の条件の違 いての大学等の取組姿勢がまだで きていなかったこともあると思われ いに対応しにくい。より単科モ ジュール的な教材も提供できれば る。導入の理解を浸透させる作業 が必要 良かった ・使用可能な資料(一般化)の存在 について広く知らしめて行くことが 課題 85 点 2 ①妥当性 25点(5点刻み) 22 点 【良い点】 ・研修や巡回訪問などは積極的に 実施され、開発された教材の活用 についての努力がなされた ・開発した教材を各コンソーシアム 教員が授業で利用できるようにす るという点で妥当性は高い ・4年間を通し、年度毎に実施現場 から上がった要望をもとに、講習を きめ細かく柔軟に組み立て、提供し た ・参加者の満足度も非常に高く、事 業後半は自立化に向け、周辺の人 材まで広げた講習を実施し、アジア 人財の成果の普及に努めた ・単なるトレーニングにとどまらず、 情報交換の場などとしても機能し、 評定:B ビジネス日本語のあり方について 考える、非常に重要な場を提供し ていた 【悪い点】 ・受講者ニーズを十分に反映させ た内容で構成できなかった点が悔 やまれる。 ・多様性への対応は困難だが、受 講者の受講動機・目的などを反映 させ、内容を絞り込んだものにする ことによって、内容適切度を上げら れた 21 点 18 点 【良い点】 ・講師トレーニング自体が、コミュニ ケーション場面を創出するので、受 講者への有効性については高かっ た ・巡回訪問の実施により地域の ニーズや特性を踏まえた研修を実 施しており、また年度ごとに改善が みられる ・トレーニング以外の部分、特に各 現場の交流、情報交換などとして の機能を高く評価。 ・教材のあり方についての認識を 高めた点が、非常に重要であった 【良い点】 ・参加者に減少がみられるが、それ でも地理的な制約等を踏まえると、 適切に実施された ・2回目以降、地域型にシフトし、個 別に対応した。3年目の参加者は 減少したが、4年目には倍増した ・経験のない内容についての研修 であったことを考えれば、良好で あったと言うことができる ④プロセス 25点(5点刻み) 関係者(経済産業省・管理 法人関係者・専門家等)との コミュニケーション、調整 21 点 【良い点】 ・現場のニーズの収集、コンソとの 連携、教材開発者との協働につい ては、高く評価 ・教材開発が本事業の中核をなす 一つであることから、必然的に関係 機関とのコミュニケーションが十分 に図られていた ・産業界のニーズ調査に基づく教 材作成がなされ、改善は必ずしも 十分とは言えないが、巡回時等で 拾われた情報を反映させたり、本 事業終了後も踏まえた改訂を行う などのプロセスは適切 ・多様な立場の関係者とのコミュニ ケーション、調整を意識的に行って おり評価 ・教材制作前の準備などについて は、事業全体の進行の実情と考え あわせると、それなりの妥当性が あった 【悪い点】 ・就職というゴールから逆算して作 成したモデル教材が、募集対象の 変化のため使えず、日本語教育に かける時間不足のため、目標達成 できないという、プログラム全体の 不整合を招いた ・教材改善につても一定の努力が あったが、結果として現場の声を教 材改善に役立てる際に問題が生じ た 24 点 【良い点】 ・巡回訪問を中心に研修開催など を通してコミュニケーション機会は 多々あったことが感じ取れる。年を 経ることに情報内容も整理され、コ ンソとの人間関係などもできあが り、年ごとに内容が充実していった ことが推察される ・しっかりと巡回訪問し、関係各機 関とのコミュニケーションをはかりな がら入念に実施された 【悪い点】 ・多様な立場の関係者とのコミュニ ・受講者側の参加要件(日時・会場 ケーション、調整を意識的に行って 等)にもよるが、参加者数拡大に向 おり評価できる けての取り組みが今ひとつわかり ・研修企画に当たっては、コンソー 【悪い点】 にくい シアムや各地域の経済産業局との ・目標達成という点から見れば、広 ・日本語研修講師、ビジネス研修 コミュニケーションを密に取ること 域で多様なニーズに十分に応えら 講師それぞれの満足度はH21でH で、必要な研修内容の計画実施が れたとは言えないが、対応する人 20とくらべ下がっている 行われた 員や予算を考えるとこれ以上の実 ・試行錯誤的に始めるしかなかった 施は難しい。 【改善点・その他】 ものであり、その意味ではプロセス ・トレーニング全体を示すカリキュラ ・受講できなかった者への対応に が妥当だったと考えている ム案のようなものが公開され、もっ ついて実務化できているとよい と周知されるとなおよかった ・参加できなかった講師へのフォ ローがあればなお良かった 【改善点・その他】 ・時期や場所などが合わず参加で ・新しい形での教材使用に対し講 きないという声は最後まで続いた 師自身がまだ不慣れであったと思 われる。講師トレーニングが継続さ れれば有効性は高まるであろう 83 評価資料3 委員評価(つづき) 評 価 基 準 項目 合計点 - 評定 3 成果に対する評価と効果検証 67 点 自立化支援 委員評定 ②有効性 25点(5点刻み) ③効率性 25点(5点刻み) 事業趣旨や目標に照らした 目標達成度合、受益者や社 参加者数・実施者数・規模 実績の適切度合 会に裨益されている度合い の適切度合 18 点 【良い点】 ・教育実践に対する評価ツールと その運用に関しては、事前に検討 され、また実施後も改善が試みら れるなどその取り組みは評価でき る ・学習者の学習効果測定において BJT個別テストの実施は妥当で あった ・評価として必要最小限の項目は 取り上げている 15 点 【良い点】 ・BJT個別テストは、学習者の伸び を量的に記述することのできるツー ルとして有効であり、CDSの導入な どの導入も試みとして評価できる ・産業界のニーズにマッチした教育 を行うための評価としてBJT個別 テストの設定は評価できる ・3年目からの回数や運用の変更 により、就職に向けた学生支援に 活用可能になった ・本結果の分析により、事業全体の 効果が測れた 14 点 【良い点】 ・BJT個別テストは、全国の多様な 実施の効果を統一的に把握できる ツールとしては効率的であった 【悪い点】 ・評価に対する理解不足から受験 者数が十分に確保できなかった ・評価実施団体やコンソのマネージ メントの不慣れから運用上の問題 があったことが指摘されている。 ・共通カリキュラムマネジメント事業 【悪い点】 対する満足度はH21でH20とくら ・事業主体者や受講生への対応に べ下がっている ついては試行錯誤しながらの対応 【悪い点】 ・学業や就職活動の都合により であり、適正なる対応という視点か ・各コンソの実施に関わる制約や BJT個別テストの参加者が85%か らは、その困難さは拭いきれない。 教育事情の違いから評価に対する ら75%へと、受験者総数が落ちた ・CDS等との相関分析などを通して 理解と運用について当初の予定通 ・教材、評価法ツールのあり方な ど、現場の声をもう少し幅広く、効 評定:C 妥当性そのものがより精緻に分析 り機能しなかったことが残念 されるとあらたな改善点が発見でき ・教育と成果評価については、再検 率的にくみ上げる方法があったと た 討する余地がある 考える ・研修そのものの評価がこれによっ ・研修そのものに対する評価・効果 てなれさたかは若干疑問 検証が見えづらい ・客観的外部評価としてのBJT採択 ・社会人となった学生についての調 は当時最善と思われたが、実施面 査、聞き取りの数が少ない での様々な不具合や実施母体の ・評価法、教材についての現場の 移行など不安定な要素が現場に混 意見の、プログラムへの反映のし 乱をもたらした かたについてやや不満が残る ・評価ツールについての理解、実施 が進まず、結果的に評価がBJTに 偏ることになってしまった。 ・委員選考などのあり方で、もっと 現場の実情が全体制作に反映でき る組織とならなかったかについて は、検討の余地があると思う 74 点 4 ①妥当性 25点(5点刻み) 18 点 【良い点】 ・コンソ等からの自立的な働きかけ が重要になるが、対応できるよう体 制は整えられ、適切に目標は実施 されていると思われる ・自立化チェックリストの作成は妥 当、評価できる ・自立化チェックリストを集合研修 の場で活用し、次年度以降の動機 付けが行えた ・特にビジネス日本語プログラムだ けで自立を考えることがむずかし かったが、その中では一定の役割 を果たしたと考える 17 点 【良い点】 ・実施機関の温度差による支援の 限界も踏まえて言えば、チェックリ ストは自立化を構想する上で役立 つものであろう ・今後関連する人も念頭においた 研修プログラムなどを計画し実施 する事により、自立化への動機付 けへの刺激となった ・各地の現場にとって、情報提供な どの意味では非常に重要な役割が あった ④プロセス 25点(5点刻み) 関係者(経済産業省・管理 法人関係者・専門家等)との コミュニケーション、調整 20 点 【良い点】 ・関係者とのコミュニケーションはよ くなされていたと思われる ・多様な立場の関係者とのコミュニ ケーション、調整を意識的に行って おり評価できる ・個別テスト実施に関して、関係者 とのコミュニケーションは円滑に行 われ、その結果が3年目以降に反 映された ・各現場との関係を地道に築いて 行き、そこからのフィードバックを得 ていたことを高く評価する 【悪い点】 ・教育目標とその成果に対する評 価に関して一貫性を欠いた状況が 効果の検証を難しくしている ・本事業の体質が起因していること も否定できない。さらなる検討が必 要であった ・BJT個別テストのフィードバックの 仕方等については協議して改善す る余地があった 18 点 21 点 【良い点】 【良い点】 ・ウェブ等も用いて広範な利用が可 ・適切に対応されている。これまで の実績を活かしたものになっている 能となっている ・頻繁な巡回訪問等で作成におい ての情報収集が適切になされてい 【悪い点】 ・自立化支援のためのチェックリス る ト作成をしたことは評価できるが、 ・多様な立場の関係者とのコミュニ ケーション、調整を意識的に行って 他の手法について見えない おり評価できる ・チェックリスト作成の際に、管理法 【改善点・その他】 ・自立化モデルが他のコンソ等に 人などから多くの情報を得て、それ をもとに作成した 紹介されるとよい ・直接的な支援ではないということ ・自立化支援についての明確な時 【悪い点】 から、効率についての評価は下げ 系列の計画が実際に進行していた ・自立化支援のためのチェックリス ざるを得ないが、効率をあまり重視 とは言えないが、現場現場ごとにき めの細かい対応を行ったことは、効 【悪い点】 ト作成をしたことは評価できるが、 すべきか否か悩むところ 率は悪くても、よいプロセスだった ・自立化という難題を発足当初から 他の手法について見えない じっくりと進行させていけるようなそ ・情報提供以外の直接的にどのよ 評定:B の他の指導等の工夫があるとなお うな支援があったかについては疑 良かった 問 ・自立化支援のためのチェックリス ト作成をしたことは評価できるが、 【改善点・その他】 他の手法が見えない ・有効性の検証は本事業の終了後 の成果を待つことになろう 【改善点・その他】 ・自立化は実施機関の意識や予算 ・資料不足のため評価が困難であ 状況等の影響が大きく、外部から る の支援には限界がある ・自立化については、各コンソの温 度差が大きく、妥当性はそれぞれ の目指すものにより全く異なる 84 評価資料4-1) 委員評価 委員によるコメント 国立大学法人 東京外国語大学 留学生日本語教育センター教授 伊東 祐郎 カリキュラムマネージメントセンターのミッションは、ビジネス日本語研修・日本ビジ ネス研修についての教材開発とそれらの提供、講師研修、評価・改善等を実施することで あった。その究極の目的は、各コンソーシアムにおける研修の効率的・効果的かつ円滑な 運営・実施につなげることを目的としていた。 ビジネスと日本語を融合させた教材開発は比較的新しい分野でもあり、日本語教育関係 者とビジネス業界関係者との協働は、センターにとって挑戦でもあり試行錯誤の連続であ っただろうと推察される。教材開発におけるセンターのパイオニア的取り組みは、この分 野の先駆的な試みとして高く評価できる。教材の善し悪しはそれを使用する講師や学習者 のニーズによるところが多く、多様な業種に配慮した、しかも留学生向けの教材開発は、 今後の教材作りの在り方や活用方法に一石を投じたものとして波及効果は大きい。 講師研修については、ビジネス日本語に対する理解の促進と指導力の向上が中心的な目 標であったことがうかがわれる。この点の取り組みについては、講師研修や巡回指導など を通して多面的に対応・努力されたことがうかがわれる。各コンソーシアムの要望や実状 の違いから、内容面についても柔軟に対応されていた点は評価したい。ただし、体系的な 研修の在り方とその内実が何らかの形で蓄積されることが重要で、ビジネス日本語にかか わる講師研修のモデルが示されるとよい。 授業とその評価については、改善されるべき事項が少なくない。この件については各コ ンソーシアム間での違いが大きく、その違いはおそらくカリキュラム作成とその実施に関 与する人材に起因していると思われる。センターがカリキュラム・プランの段階から積極 的な指導と助言が求められていたかもしれない。ただし、各コンソーシアムの独自性・個 別性の尊重という観点から検討すると、センターがどの程度までかかわるべきだったのか という課題は依然として残る。 自立化支援については、必要に応じての対応にならざるを得ない。各コンソーシアムの 個別の事情によるところが大きいので、積極的なかかわりはむずかしいと思われる。 アジア人財資金構想の中で、本センターが果たした役割と取り組みに対する効果は大き く、本事業にかかわった関係者にとっては、相談窓口機能として、また情報発信機能とし て大いに期待されていたことが実感できる。少なくともこれまでに蓄積されてこられた有 形無形の財産はセンターの解散(自立化)後も何らかの形で次世代に継承していただきた い。 以上 85 評価資料4-2) 委員評価 委員によるコメント 株式会社ジェイエーエス 代表取締役社長 小平 達也 先ず共通カリキュラムマネージメントセンター事業全般に関連し、絶えず変化する産業 界の環境とニーズを踏まえたうえで経済産業省・管理法人関係者・専門家等関係者との日 ごろからコミュニケーション、調整を図るというスタンスについては全項目に共通するこ ととして評価したい。 1.教材開発と改善 事業終了後も教材として使用する資料について管理法人に公開し使用できるようにし た点は評価したい。一方で、使用可能な資料の存在について広く知らしめて行くことは課 題である。単にWebで公開する以外にどのような手法で社会通用性を高めていけるの か、工夫がほしい。 2.講師トレーニング 開発した教材を各コンソーシアム教員が授業で利用できるようにするという点で妥当 性は高い。また、巡回訪問の実施により地域のニーズや特性を踏まえた研修を実施してお り、年度ごとに改善がみられている点を評価したい。一方、日本語研修講師、ビジネス研 修講師それぞれの満足度はH21にはH20とくらべ下がっている点が気になる。この理 由を抽出・把握し今後の役立ててほしい。 3.成果に対する評価と効果検証 今回の事業評価自体もそうであるが、成果に対する効果検証を自己評価、事業関係者評 価ならびに第三者評価で行っており、妥当性は高い。一方で、産業界のニーズにマッチし た教育を行うための評価としてBJT個別テストの設定は評価できるものの、研修そのも のに対する評価・効果検証が見えづらい。また、共通カリキュラムマネジメント事業に対 する満足度はH21にはH20とくらべ下がっている点が気になる。この理由を抽出・把 握し今後の役立ててほしい。 4.自立化支援 自立化支援のためのチェックリスト作成をしたことは評価できるが、他の手法について 見えないということに尽きる。 以上 86 評価資料4-3) 委員評価 委員によるコメント 国立大学法人 東京工業大学 留学生センター教授 武井 直紀 共通カリキュラムマネージメントセンターの主導したビジネス日本語について、良かった 点問題点をそれぞれ最初に掲げる。 良かった点 1 ビジネス日本語を高等教育の中でどう扱うべきか、現場に大きなインパクトを与えた。 2 多くの現場で、日本社会の中にどのように留学生を送り出すかという、新しい視点か らの試みが、意識的に行われるようになった。 3 日本社会、大学、地域社会の中に「留学生」を取り込んで行くという明確な方向性を 認識させた 4 各地の現場の情報を、足で稼ぐというかたちで集め、ある程度それを現場の間に流通 させることができたこと 問題点 1 このような幅広い問題であることに対応し,各現場が有効に利用できる評価法が提供 できたとは言えない 2 現場の実情が、入学者の日本語レベル基準の変化などにより大きく変化した時に、提 供した教材のレベル、内容を十分に適合させることができなかった 3 センターの運営に関わって、現場の実際的な諸問題を取り上げ、その運営に反映する しくみ、組織を作ることについて、十分とは言えなかった。 この事業が、大学あるいは地域の産業社会の中に、留学生の企業社会への適応、送り出 しのために、どのようなプログラムを策定していったらいいのかについて、与えたインパ クトは大きかったと思う。その点で、影響が幅広く大きいとまでは言えないが、十分に重 要な問題提起を行い、各地に新しい日本語教育の現場を作り出したこと、しかも日本語教 育に関わるものだけでなく、キャリア教育、各地の企業関係者などをまきこんで行われた ことは、非常に重要なことであった。このようなかたちで、全国的な試みが行われたのは、 これまでなかったことであろう。 その中でこのセンターは、各地を地道に足で巡り歩き、非常に貴重な情報を集めた。各 地の現場は、それぞれの問題に対し誠実に対応を行って来た。そのような試みが同時進行 で各地に起こっていた。それを拾い上げて来たのは、AOTS が担当したセンター以外には ない。ここには非常に重要な情報が集まっている。講師研修や巡回指導は、それらを流通 させ、各地の試みを広く互いに認知するための場となっていた。 87 このような新たな試みは、現場が始まる前にいろいろと想定して作ったプログラムが、 そのまま通用することはあり得ない。フィードバックや新しい情報により、また学習者の 変化、把握していなかった状況などのより、つねに修正が迫られる。また、他の同様の現 場の試みがヒントになり、内容が発展して行く。そういう過程を経なければ良いプログラ ムになることはあり得ない。 アジア人財もまさにそのような現場であった。現場からさまざまなものが生まれていた。 従来であれば、それが各地に「埋もれた」ままとなってしまうが、それを記録、保存、流 通させることが、センターの活動によって可能となった。 しかし一方で、教材は初年度に作られて、小改訂はあったものの、大きな改訂は行われ なかった。技術的にむずかしいこともあったが、各地の現場にとって、そのカスタマイズ は場合によっては非常に労力の多い、困難なものとなってしまうことも少なからずあった であろう。 PBL という方法の採用は、ビジネス日本語を「場面集」に終わらせなかったという意味 で、非常に重要な決断であったと思う。これは非常に高く評価する必要がある。 その一方で、PBL がさまざまな現実的な要請には十分答えられなかった部分もある。あ る程度の専門性のある学生が、専門の研究、論文、就職活動を抱えている状況の中で、か なりの時間を費やして専門外の調査、立案、発表を行うこと、それにモチベーションを長 期(例えば1学期間の15週間)にわたって保ち続けることは、事実上非常にむずかしい。 それに学生の日本語のレベル不適合の問題も加わる。そのような学生に、本当に何が必要 であったか、教材の改訂が必要なかったかについては、センターの運営と現場とのずれも あったのではないか。 同じ問題が評価法についても言える。非常に難しい評価内容であったことは事実である。 しかし CanDo のような主観的な評価のものを現場でどう使うのか、使ってそのデータをど う考えればいいのか、評価ツールをあたえる側からの明確な方法論の提供、またこのデー タが事業全体でどのようになっているのか、それを自分の現場のデータをどう対照させた らいいのか、必ずしも明らかではなかった。 センター事業自体は、前述のように足でかせいだ部分があり、現場との結びつきができ ていた。しかし全体の事業運営に現場の声が反映する仕組み、組織造りという面では不満 が残った。さまざまな規則などから,困難な点があったことは理解しているが、運営の意 思決定に、委員会を構成するメンバーの設定などに、特段の工夫が必要であったのではな いか。 繰り返しになるが、各地の現場を回って得たもの,試みの情報などは非常に重要なもの を含んでいる。それらが今後に生かされ、より新たな、発展性のある事業が行われること を希望する。 以上 88 評価資料4-4) 委員評価 委員によるコメント 株式会社ケー・エー・アイ カイ日本語スクール代表 山本 弘子 このアジア人財資金構想(以下、アジア人財)は、留学生関連のプロジェクトとしては、 これまでになく大規模な国家的取り組みであっただけに、現場の期待はもとより周囲の注 目度も大きいものであった。当時の経済情勢は上昇傾向にあり、多くの人材を必要とする という気運も満ち、優秀な外国人人材を活用することへの期待も膨らんでいた。その後起 きた金融危機や政権交替、果ては事業仕分けに至る憂き目を見る事になりはしたが、それ まで留学後は帰国し母国の繁栄に寄与すべきという日本の受入れ態度の大幅変更を内外に 示す契機となったのは間違いない。日本語教育、大学/大学院、人材派遣業者、企業など、 これまで学生が時系列で通過していた機関をつなぎ、恊働させたことにより、従来のよう なばらばらな状態では起こりえなかった<新しい流れ>が定着しつつあるのも事実であ る。 アジア人財は、こうした全体の流れだけでなく、ビジネス日本語教育の内容にも大きな 影響を及ぼしつつある。先日、日本語教育学会のビジネス日本語研究会主催の実践報告会 において、6つのビジネス日本語の実践事例発表が行われた。そこで発表された内容の全 てが、この共通カリキュラムマネージメントセンターにおける教材開発が柱とした「日本 語力」と「社会人基礎力」を教育対象としたものであった。アジア人財以前のビジネス日 本語と言えば、現職者を対象としたいわゆるオフィス会話が中心であり、機能/場面シラ バスの練習に留まったものであり、本当に求められる現場のニーズを満たしたものとは言 えなかった。そこに、PBL による仕事に求められる日本語+社会人基礎力の養成を全面的 に打ち出した本教材開発の影響は多大なものがあったと言えるだろう。 一方、評価については BJT の漢字能力検定協会への移行や中止など、不安定な要素が強 く、現場が戸惑う状況が重なったこと、また評価ツールについての理解が進まず、教材開 発の重要なポイントでもあった自己評価やポートフォリオの十分な活用がされなかったこ となど、狙い通りに機能したと言えない。この点においては、今後各コンソーシアムにお いて課題化され改善が進むことが期待される。 最後に、研修実施にあたり、多くの現場で日本語学校や日本語学校の講師が研修に当た った(あるいは研修全般を引き受けていた)にも関わらず、下請けとして全く学校名が出 ないケースや、大学に人材が流れたケース等があった。こうしたことが結果的に、現場に 予算が流れていないという批判を生む事にもつながったと思われる。これについては大学 が本来全てを担うべきという考えをむしろ改め、外部機関との連携という選択肢を持つこ とが、よりよい留学生受入れから支援につながると思われる。 89 以上 評価資料4-5) 委員評価 委員によるコメント 学校法人 明治大学 国際日本学部教授 横田 雅弘 全体として、大学や地域関係機関とよくコミュニケーションをとりながら、大学等への ビジネス日本語研修等の浸透を図るチャレンジングな課題にしっかりと取組んだと高く評 価できる。 成果として、PBL のテキストを用いた新しい教育方法の導入が十分に定着したとは言え ないことや 大学等へのパッケージ(産学連携専門教育、インターンシップ、就職支援、ビジ ネス日本語、日本ビジネス教育)としての継続が必ずしもなされないということはあるが、 これまでの大学の意識からすれば、今回の試みがまず最初の変化の礎を築いたと言ってよ い。真剣に取組む大学や企業等の意識があれば、今回の AOTS の成果は十分に有効活用で きるレベルにある。 特に、教材の開発とそれを用いた各種研修と巡回訪問は非常に積極的かつ意欲的に実施 され、大学教員等の意識を目覚めさせる効果があった。この機会に、もう少し具体的に大 学と産業界の連携の取組が実現するようにと願いたい。そのためには、このような実践が 今後も継続され、さらなる改善と定着が実現するところまで言ってほしいと願う。せっか くの礎がここで終了してしまうのはなんとも惜しいことである。次のステップを見据えて、 あらたな支援方策が是非とも必要であると思われる。 以上 90 2.今後の提言 本節では、本報告書の各章で言及した平成22年度の事業まとめを踏まえた上で、本セ ンターが4年間取り組んだアジア人財事業の社会的な成果と課題という、幅広い観点から まとめる。 2.1 ビジネス日本語教育の社会的展開という点での本事業の成果 平成19年度の事業開始当時、留学生に対する就職支援・ビジネス日本語教育・日本ビ ジネス教育等(以下、便宜的にビジネス日本語教育とするが、以後のビジネス日本語教育 という言葉は、日本ビジネス教育も含んだものである)の先行事例はほとんどなかった。 4年間を経た現在、留学生に対する就職支援・ビジネス日本語教育への注目度は大幅に高 まり、関連書籍や実践例も激増した。本事業は、このようなビジネス日本語教育を取り巻 く環境変化をけん引したということで、社会的に非常に大きな意味を持つものであった。 その主たる成果として三つのものがあげられる。一つ目は、いわゆる「語学」を超え「ビ ジネス日本語教育」と「日本ビジネス教育」を統合した、包括的な活動型ビジネス日本語 教育の展開、二つ目は、先行事例の蓄積と共有、三つ目は関係者間のネットワーク構築で ある。 従来、ビジネス日本語教育と言えば、ホワイトカラーのいわゆる「ビジネスマン」を対 象とした場面会話教育であった。そこで想定される学習者は、すでにビジネスの経験が豊 富で、専門知識もビジネスに関する知識も持っており、語学力だけをプラスすればよいと いうような人たちである。一方で、今回の学習対象者である留学生には、日本語力はもと より、 「日本文化」および「日本企業文化」への対応を含めた、包括的な知識・スキル・対 応能力等が求められる。 そこで本センターは、事業開始にあたり、社会で求められる包括的能力を育成するため に共通カリキュラムと共通教材を提供した。具体的な学習活動としてはProject Based Learning(以下PBL)が推奨された。PBLに対しては、各研修 現場での経験が少なく、取り組みに苦労した地域も散見された。また、事業開始時には各 地の独自性や個別性が十分に把握できなかったこともあり、本センター推奨の内容・方法 が実態に合わない地域もあった。しかしながら、事業を経年的に振り返ってみると、多く の研修現場で、プロジェクト・活動型の学習が積極的に取り入れられるようになってきて おり、大学生(院生も含む、以下同)を対象としたビジネス日本語教育の方向性を形作っ たという点で、非常に大きな意味を持つ。 本センターは、特に事業開始1年目・2年目である平成19年度、20年度に、巡回訪 問という形で全国のビジネス日本語研修の現場に赴き、多くの研修を見学し関係者と意見 交換を行った。2年間で延べ200か所以上を訪問しており、巡回訪問に携わった人員は、 91 日本でもっとも多く留学生に対するビジネス日本語教育の実践例を目にしていることは間 違いない。そして、そのような蓄積から良好な案件をモデルとして抽出し、全国の関係者 に周知することに取り組んだ。平成20年度は、集合型講師研修の場で実践例の発表の機 会を設けた。また、平成21年度は各地の現場講師に集まってもらい、研修事例検討部会 を設置し、理想的な研修とは何かを経験共有した。そして、その成果として「日本ビジネ ス・ビジネス日本語研修事例集」を作成した。このような目に見える成果物以外にも、多 くの巡回訪問で培った人間関係が本センターには蓄積されており、それが、ビジネス日本 語教育関係者のネットワーキングに生かされている。このようなネットワークが活性化さ れ、外部にビジネス日本語教育を継続的に研究する研究会が設立された。また、ネットワ ークが構築されているメンバーで共同研究や学会発表が行われるようになっており、幅広 くアジア人財事業の成果が発表共有されつつある。 このように、アジア人財事業ではビジネス日本語教育に対する積極的な取り組みが推進 された。しかし、大学生に対する一般的な日本語教育の現状を見ると、ビジネス日本語教 育に興味はあるが、まだ十分な計画も実績もないというところが大半である。今後、アジ ア人財事業の取り組みと、そこで培われたネットワークが、今後取り組みを開始する各地 域の事業体に対して貢献できるはずである。 2.2 修了留学生追跡調査から見える本事業の成果と今後の課題 本事業の修了生に対する調査は、昨年度と今年度の二回実施した。二回とも修了生全数 を対象としたアンケート調査と数名を抽出したインタビュー調査を行った。第3章ですで にデータを示し、各質問項目に応じた分析と考察は行っている。ここでは、修了生調査の 結果から、本事業の成果と今後の課題を考える上で特に重要となりそうな点を抜粋して総 括的な考察を加える。 ほとんどの修了生が異口同音に役立ったと言っていたのが、就職活動に関連する支援で ある。業界研究や面接練習をもっとやってほしかったという声もあり、就職活動に直結す る支援を求めていることがよくわかる。就職活動に関連するものが評価されたのは、成果 が見えやすいという点とアジア人財事業以外で十分な支援体制ができていないことに起因 すると考えられる。象徴的な意見として、アジア人財の就職活動支援がなければ今の私は なかったといった声があった。このことは、事業の成果として評価できる一方で、日本企 業の採用行動が世界的にも特殊であるという課題を浮き彫りにしている。 2年間の調査を通して、通常の就職活動を行わず、就職を希望する会社の社長と直接交 渉し、個別のインターンシップを経て就職した修了生が2名いた。そのうちの1名が、(リ クルートスーツを着て企業訪問をするような)通常の就職活動をしてまで、日本で働こう とは思っていなかったと語っていた。これがどの程度の留学生の声を代弁しているかはわ からないが、示唆的な意見であることに変わりはない。 92 修了生の多くは、企業で業務を行う際には、特に困ったと感じていないことも明らかに なった。多くの会社では新入社員を育成するための「指導員」「メンター」が決められてお り、仕事上の問題が生じたときは、まずその人に相談できるようになっている。業務実施 上の問題は、それが解決できるように支援システムが体系化されている。むしろ、困って いるとしてあげられたのは、二点である。一点目は業務に付随するインフォーマルなやり とりで困るということである。二点目は、言語使用の多様なスタイルの使い分けに苦労す るということである。一点目の意見から、日本社会での経験が少ない学生に対して、わか らない話題が出てきたときにどう対応するかという、ある種のコミュニケーションストラ テジーの育成が必要であることが改めてわかる。また、留学生に対する教養教育の一つと して、伝統的な「日本文化」ではなく、社会人として就労している人たちの子ども時代か ら現在を概観するような、 「今の日本社会」というような科目設計も考えられる。 二点目の意見について具体的に述べると、三つの事例が出されている。一つ目は、社内 で同僚と話す際に敬語ではなく「ため口」でよいと言われるのだけれど、それができない ということ。二つ目は、自分が顧客になるときに相手の敬語が聞き取れないということ。 三つ目は、自身が総合職として経験が長く年齢が高い現場作業員に対して、強い調子で指 導しなければならないときに、どれくらいの待遇度で話せばよいかその感覚がわからない ということである。ここから、留学生(または外国人)に提供される日本語教育の本質的 な課題が浮上する。待遇表現の学習一つとっても「目上やソトに対して丁寧に振る舞う」 ということだけでは不十分なことがわかる。在住する外国人の属性や職業、能力が多様化 する現状に鑑みると、日本語教育、コミュニケーション教育において、さまざまな場面・ 状況・相手によって適切な言語スタイルを選択するにはどうするかという、高度な日本語 コミュニケーション能力の育成が求められる。特に、高度人材としての要求がある大学生 に対するビジネス日本語教育では、このような点への配慮が重要である。 2.3 今後に向けた提言 今までの取り組みを振り返り、また修了生の声を聞いた限りでは、留学生に対するビジ ネス日本語教育支援としてどのような取り組みを行うことが妥当なのか、その答えが見え つつあると言える。以下まとめとして、高度人材の卵としての大学生に対する教育につい ての提言と外国人を受け入れる日本企業に対する提言を簡単に述べる。 大学生に対する教育についてまず重要なのは、留学生教育の「脱タコ壺化」回避である。 日本に留学していながら多くの留学生が「日本人との接触」が足りないと感じているとい う現状を改善することは、ビジネス日本語教育の観点のみならず、日本への留学生の呼び 込みという点でも重要であろう。同時に、留学生と日本人学生の接触は、日本人学生側に もさまざまな好影響を与えると予想される。折しも、日本人学生の内向き志向が懸念され る中、日本国内にいながら異文化を体験するチャンスを積極的に生かすことで、広い意味 でのグローバル人材育成にもつながっていくだろう。ビジネス日本語教育を、社会に出る 93 ための基礎的なコミュニケーション教育としてとらえるのであれば、その対象者は必ずし も留学生に限られるものではなく、広く一般の日本人学生も交えた形で実施していく必要 がある。また、アジア人財事業で取り組んだように、産業界と連携して教室外の協力者を 積極的に授業に呼び込んだり、学習活動自体を教室の外に展開したりすることも重要であ る。特に後者についてはアジア人財で積極的に取り組んだことである。その蓄積を、今後 多くの非参加大学や地域の関連団体に広げていくことが重要である。日本語教育界の動向 を見ていると、ビジネス日本語教育に対する興味関心はここ1、2年で急速に高まってお り、本事業の成果普及がまさに求められている。同時に、大学や各地域でビジネス日本語 教育や留学生のキャリア教育を担える人材や、産学連携に基づいた留学生教育を推進する ことができる人材の育成が必要であろう。 企業については、本事業の取り組みを通した働きかけは必ずしも十分ではなかったが、 課題は浮き彫りになった。まずは、大学生が多大な労力を費やさなければならない現行の 採用行動を改める必要があるのではないだろうか。就職活動に費やす時間を短縮する、定 期採用以外の形を増やす、海外から直接エントリーできる等形はいろいろあるだろうが、 日本国外の状況を見据えた形に改める必要があるだろう。次に、留学生・外国人の雇用を 促進するには、今以上に彼らに求めることを明確化したり、業務内容や役割をわかりやす く説明したりする必要がある。 「なぜ雇われたかわからない」という声にこたえる必要があ るだろう。さらに、本センターがアジア人財事業の前年に行った調査でも明らかになって いるように、採用側の日本人と採用される外国人側で、日本語力に対する現状認識に差が ある。総じて、日本人側の評価が低く、外国人側が高い。外国人側は自己評価である点を 考慮する必要はあるが、日本人側の評価が、日本語の問題とそうでない問題を混在させて しまっている可能性が指摘できる。修了生が困っているとして挙げられたインフォーマル な会話の難しさという点など、顕著な例であろう。日本語はわかるが、相手が話題にして いることの背景知識がないために、十分なやりとりができないことがある。採用側は、外 国人だから日本語が弱いという見方をいったん改め、何が問題なのかを再考する必要があ る。 アジア人財事業の取り組みは修了生から非常に高く評価されている。また、4年間の取 り組みを通して、さまざまな成果があげられたと同時に、ようやく課題が整理できてきた ところである。このような段階でアジア人財事業が終了し、後継事業も未定であるという のは、政策的に大きな損失である。総額100億円以上の国庫を投じた事業の成果を意味 のあるものとして次に展開するには、個々の自立化の取り組みに依存するだけでは難しい。 今後の展開として有益だと思われることは1)本事業の幅広い成果普及、2)海外リクル ーティングから就職・就労後まで含め、アジア人財事業の参加留学生のその後について、 継続的かつ網羅的な調査・検証を行うこと、3)就労後に外国人社員が日本語をブラッシ ュアップできる機会を創出すること、4)アジア人財事業修了生のネットワークを構築し、 継続的に事例研究ができるようにすることなどが考えられる。これらの取り組みを踏まえ、 94 中長期的視点からグローバル人材の育成・活用を検討し、グローバル人材育成政策および、 外国人高度人材受入れ政策を確立していくことが求められる。 95 添付資料 自立化チェックリスト 添付資料 自立化チェックリスト 分類 A B コースコーディネーターについて 講師および研修の協力者につい て 番号 チェック項目 優先度 チェック 1 研修設計から実施・評価・改善までを任されたコーディネーターがいる ☆☆☆ 2 コーディネーターの役割が関係者間で共有されている ☆☆☆ 3 コーディネーターと講師は十分にコミュニケーションがとれる ☆☆☆ 4 コーディネーターと事業実施責任者は十分にコミュニケーションがとれる ☆☆ 5 類似の取り組みをしているコーディネーター同士で情報交換ができる ☆☆ 6 コーディネーターが自ら学び成長する機会がある ☆ 7 後継のコーディネーターを育成する仕組みがある ☆ 8 多様な外部協力者との協力関係を維持するためのコンソーシアム組織がある ☆☆☆ 9 コースの理念を講師に伝え、コーディネータと講師間で共通理解を図る仕組みがある ☆☆☆ 10 講師に求める業務が明確になっている ☆☆☆ 11 日本語教育について経験や知識のある講師がいる ☆☆☆ 12 キャリア教育について経験や知識のある講師がいる ☆☆☆ 13 企業活動の最新情報を提供できる企業人に協力を依頼できる ☆☆ 14 留学生に経験を伝えてくれる元留学生や外国人社員に協力を依頼できる ☆☆ 15 インターンシップや見学について企業や団体との継続的な協力関係がある ☆☆ 16 外国人支援について経験や知識のある講師がいる ☆☆ 17 就職支援について知識や経験がある講師がいる ☆☆ 18 異分野の講師相互で研修を見学する場がある ☆ アジア人財実績等参考情報 ビジネス日本語教育は就職活動から就労まで扱う範囲が多く、日本語講師だけですべてを担うことは現実的ではない。そこ で、コース全体を統括するコーディネーターを配置し、幅広い視点から研修を設計することが必須である。 キャリア教育におけるコーディネーターの意義や役割については、以下を参照。 キャリア教育コーディネーター育成ガイドライン(経済産業省産業人材政策室) <http://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/career-education/pdf/guideline.pdf> 産学連携によるキャリア教育への取組(経済産業省産業人材参事官室) <http://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/career-education/pdf/gaiyou.pdf> ビジネス日本語教育では、日本語教育、キャリア教育、外国人支援等多岐にわたる専門的な知識を持つ講師の確保が課題 となる。これらのことについて、一人の講師がすべてを担うことは現実的ではない。そこで、それぞれの専門家が担う範囲を 明確にした上で、有機的な協力関係を構築する必要がある。また、企業活動の最新動向を伝えることができる企業人の参画 も必須である。学習者にとっては、企業人が講師となることで、教室と社会のつながりが実感できたり、学習に対する動機づ けが高まったりする効果もある。さらに、多様な講師が相互の授業を見学する機会を作ることで、留学生に対するビジネス日 本語教育の体制整備を図っていくことが求められる。 添付資料 自立化チェックリスト C D E 19 学習者の日本語学習のニーズやレディネスを把握している ☆☆☆ 20 学習者のキャリアプランを把握している ☆☆☆ 21 学習者の初期能力と到達目標を明確化する仕組みがある ☆☆☆ 22 学習者自身が強みと弱みを理解する仕組みがある ☆☆☆ 23 学習者自身が自分の学習の進捗を管理し、自律的に目標設定している ☆☆ 24 定期的に学習者の学習進捗状況をアップデートする仕組みがある ☆☆ 25 各学習者の就職活動の情報が共有できる仕組みができている ☆☆ 26 アップデートした情報を関係者間で共有しやすい仕組みがある ☆ 27 就職活動や企業の採用傾向に関する情報が共有できる仕組みがある ☆☆☆ 28 先行事例をまとめた資料が閲覧できる ☆☆☆ 29 先行事例の情報を使いやすいように整理集約している ☆☆ 30 企業が求める人材像に関する情報が共有できる仕組みがある ☆☆ 31 参考資料が豊富にそろっている ☆ 32 参考資料を探すための情報環境が整っている ☆ 33 就職活動および就労というゴールから逆算したコース時間設定をしている ☆☆☆ 34 学習者の就職活動や研究活動に配慮した学習時期を設定している ☆☆☆ 35 短期・中期・長期それぞれの学習目標が明確である ☆☆☆ ビジネス日本語教育においては、教育内容の把握だけでなく、キャリアプランとの関係や就職活動の進捗状況など、多様な 情報を都度関係者間で共有することが必要である。特に、就職活動中は学習者の状況が日々変化していくが、その情報把 握が重要である。 アジア人財サポートセンターが次年度以降一般公開予定の「就活ノート」が参考になる。 学習者情報の収集と共有 先行事例や関連業界の情報収 集と共有 学習時期や時間数の設定 <就職支援関連サイト> マイナビ(毎日コミュニケーションズ) <http://job.mynavi.jp/> リクナビ(RECRUIT) <https://job.rikunabi.com/> 日経就職Navi2012(日経HR) <https://job.nikkei.co.jp/2012/top/> 効果的なビジネス日本語教育の内容や方法については、明確に確立されたものは少ない。そのような状況にあっても、アジ ア人財資金構想事業の取り組みが参考になる。また、今後発表される予定の日本語教育振興協会によるビジネス日本語カ リキュラムの情報や、ビジネス日本語研究会による参考文献リストも参考になる。また、関連の調査等も参考になる。 アジア人財資金構想共通カリキュラムマネージメント事業(財団法人海外技術者研修協会) <http://www.aots.or.jp/asia/r_info/index.html> 日本企業における留学生の就労に関する調査(独立行政法人労働政策研究・研修機構) <http://www.jil.go.jp/press/documents/20081208.pdf> アジア諸国における高度外国人材の就職意識と活用実態に関する調査(独立行政法人労働政策研究・研修機構) <http://www.jil.go.jp/press/documents/20101007.pdf> 外国人留学生の就職活動に関する調査結果(DISCO) <http://web.disc.co.jp/topics/foreignst_20101227.pdf> 平成21年における留学生等の日本企業等への就職状況について(法務省入国管理局) <http://www.moj.go.jp/nyuukokukanri/kouhou/nyuukokukanri07_00020.html> 企業の高度外国人材採用・活用事例(財団法人企業活力研究所) <http://www.ajinzai-sc.jp/k_jirei.html> 就職活動がピークになる1月から5月ごろ(2010年現在のピーク時期・業界によって異なる)は、各学生とも研修への参加が物 理的・心理的に難しくなる。この時期は、学生全体を対象とした研修よりも、個別の相談に応じる体制を整えたほうが効果的 である。また、学生の専門分野によって、研究活動による拘束時間が異なるため、その配慮も必要である。 添付資料 自立化チェックリスト F G シラバス・カリキュラムデザイン 学習素材や教材の準備 学習評価について 36 目的・目標とも社会人として必要とされる能力が明示されている ☆☆☆ 37 学習内容の全体像が学習者に明示されている ☆☆☆ 38 学習者の日本語レベルが考慮されている ☆☆☆ 39 学習者の就職活動スケジュールやキャリアパスが考慮されている ☆☆☆ 40 ビジネス場面で必要な知識やスキルの習得を図っている ☆☆☆ 41 個別の知識やスキルを超えた包括的能力の育成を図っている ☆☆☆ 42 外部の協力者が協力しやすい時間と曜日を把握している ☆☆ 43 包括的能力育成の手法としてプロジェクト学習やケースメソッド等を取り入れている ☆☆ 44 社会とのつながりを重視した体験的学習活動を盛り込んでいる ☆☆ 45 時事問題等を扱うための学習素材が準備されている ☆☆ 46 教材使用に関する著作物の取り扱いは法律に沿って行われている ☆☆ 47 体験活動を学習者同士で整理し、新たな課題を発見する仕組みができている ☆ 48 日本人学生と留学生が一緒に学ぶ場を意図的に設定している ☆ 49 ビジネス日本語力として何を測定・評価するか明確になっている ☆☆☆ 50 ビジネス日本語力をどのように測定・評価するか明確になっている ☆☆☆ 51 評価結果を学習者にフィードバックする仕組みができている ☆☆☆ 52 評価結果のフィードバックをもとに自律的に学習計画を立てられる仕組みができている 53 評価結果を就職活動に活用できる仕組みができている ☆☆ ☆ AOTSはアジア人財事業において、ビジネスに関連する基礎的な日本語スキルや社会人基礎力を育成することを念頭におい た「共通カリキュラム」と関連の学習素材を提供した。また、包括的能力を育成するためには学習形態としてProject Based Learningが有効だと考え、その提案も行った。類似のものとして、経済産業省が推進する社会人基礎力の事例や、ハーバー ド大学ビジネススクールや慶應義塾大学ビジネススクールで取り入れられているケースメソッド等も参考になる。 <ビジネス日本語の事例> アジア人財資金構想共通カリキュラム(財団法人海外技術者研修協会) <http://www.aots.or.jp/asia/curriculum/index.html> 日本ビジネス・ビジネス日本語研修事例集(財団法人海外技術者研修協会) <http://www.aots.or.jp/asia/r_info/pdf/h21_jireishuu.pdf> <PBL・社会人基礎力> 留学生のためのビジネス日本語シリーズ -人財-(財団法人海外技術者研修協会) <http://www.aots.or.jp/jp/jltc/kyozai.html> 平成19年度版 社会人基礎力育成・評価のためのリファレンスブック(経済産業政策局産業人材政策室) <http://www.meti.go.jp/policy/kisoryoku/h19reference.htm> 社会人基礎力育成の手引き(経済産業省) <http://www.meti.go.jp/policy/kisoryoku/ikuseinotebiki.pdf> <ケースメソッド> ケースメソッド教育(慶応義塾大学大学院経営管理研究科) <http://www.kbs.keio.ac.jp/mba/casemethod.html> ケースメソッド教育研究所 <http://www.casemethod.jp/index.html> <著作権> 著作権(文化庁) <http://www.bunka.go.jp/chosakuken/index.html> AOTSはアジア人財事業において、ビジネス日本語研修の成果を測定するための評価ツール「日本語力チェックリスト」「社会 人基礎力チェックリスト」を作成して提供した。これらの特徴は、講師評価と同時に自己評価も行い、自己の能力を客観的に 把握し、学習管理を行っていく際の参考となるようにした。また、BJTビジネス日本語能力テストも評価ツールとして提供した。 評価について・アジア人財資金構想共通カリキュラムマネージメント事業(財団法人海外技術者研修協会) <http://www.aots.or.jp/asia/curriculum/grade.html> BJTビジネス日本語能力テスト(財団法人日本漢字能力検定協会) <http://www.kanken.or.jp/bjt/> STBJ標準ビジネス日本語テスト(一般社団法人応用日本語教育協会) <http://www.ajlea.net/about_stbj/> JSST(Japanese Standard Speaking Test)(アルク) <http://tsst.alc.co.jp/jsst/index.html> 添付資料 自立化チェックリスト H I 事業実施中や実施後の 関連情報収集 事業の成果や課題の分析・評価 改善計画の立案と実施 54 アンケートなどを使って学習者の満足度や要望を聞き取る仕組みがある ☆☆☆ 55 アンケートなどを使って講師の満足度や要望を聞き取る仕組みがある ☆☆☆ 56 インターンシップ協力者や企業関係者から意見を聞き取る仕組みがある ☆☆☆ 57 修了生同士や修了生と関係者のネットワークを維持する仕組みがある ☆☆ 58 修了生の追跡調査ができる ☆☆ 59 修了生の就職先関係者への調査ができる 60 コースデザインの課題を分析する手法が共有されている ☆☆☆ 61 個別の学習活動を分析する手法が共有されている ☆☆☆ 62 学習者の希望や企業のニーズを分析する手法が共有されている ☆☆☆ 63 分析結果を解釈し適切な学習活動に設計し直す仕組みがある ☆☆ 64 多様な調査の結果を複合し、妥当な解釈を行う仕組みがある ☆☆ 65 分析や解釈の結果を共有する仕組みがある ☆☆ 66 改善計画を関係者間で共有する仕組みがある ☆☆ 67 問題を解決するための改善のポイントを適切に把握できている ☆☆ 68 すばやく改善活動を行うための仕組みがある ☆☆ 69 コースの成果を他者にわかりやすく記述する仕組みがある ☆ 70 コースの課題解決のためにFD(Faculty Development)などを活用する仕組みがある ☆ 71 関係者間で役割分担して改善活動が実施できる ☆ 72 改善活動自体をモニターする仕組みがある ☆ 73 一連の改善活動を記録して後に利用できる仕組みがある ☆ アジア人財事業においても、満足度調査や修了生追跡調査を行っており、貴重な参考資料となる。 プログラム修了生×受入企業・アジア人財資金構想(財団法人企業活力研究所) <http://www.ajinzai-sc.jp/kjirei.html> 学生の声・アジア人財資金構想(財団法人企業活力研究所) <http://www.ajinzai-sc.jp/gkoe.html> 企業の声・アジア人財資金構想(財団法人企業活力研究所) <http://www.ajinzai-sc.jp/kkoe.html> アジア人財資金構想共通カリキュラムマネージメントセンター平成21年度報告書・平成22年度報告書内に「修了留学生追跡 調査」の結果を掲載(財団法人海外技術者研修協会) <http://www.aots.or.jp/asia/r_info/pdf/h21_jigyouhoukokusho.pdf> ☆ コースや授業の改善については、アジア人財事業の取り組みを通して各現場で実施されているが、まとまった成果として形に なっているものはまだない。大学では、Faculty Development(FD)によってコース改善活動が行われるようになっており、その 取り組みは参考になる。また、Project Cycle Management(PCM)手法と呼ばれる手法で、人材育成プロジェクトの改善活動を 行う事例も参考になる。 <FDの事例> ファカルティ・ディベロップメント(FD)(Benesse教育研究開発センター) <http://benesse.jp/berd/center/open/keyword/fd.shtml> <PCMによる改善活動手法について> プロジェクト・サイクル・マネジメント(財団法人国際開発高等教育機構) <http://www.fasid.or.jp/kenshu/pcm/index.html> 平成22年度 経済産業省委託事業 平成22年度アジア人財資金構想 共通カリキュラムマネージメントセンター事業 報告書 平成23年3月 財 団 法 人 海 外 技 術 者 研 修 協 会 〒120-8534 東京都足立区千住東1丁目30-1 http://www.aots.or.jp
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