授産施設のためのソーシャルデザイン開発に関する研究

様式第2号
平成23年度
地 域 貢 献 特 別 研 究 費 実 績 報 告 書
平成24年
申
請
者
調査研究課題
学科名
代
表
調査研究実績
の概要○○○
地域貢献への
反映を踏まえ
て記述のこと
職 名
教 授
氏 名
森下 眞行
印
授産施設のためのソーシャルデザイン開発に関する研究
氏
調査研究組織
デザイン工学科
3月30日
分
担
者
名
森下 眞行
山下 明美
上田 篤嗣
所属・職
専門分野
役割分担
デザイン学部
デザイン工学科・教授
デザイン学部
造形デザイン学科・教
授デザイン学部
デザイン工学科・助教
プロダクトデ
ザイン
グラフィック
デザイン
ブランドデザ
イン
研究統括リーダー(デザイ
ンマネジメント)
研究コアリーダー、
(製品化アイデア)
研究コアリーダー、
(ブランディング)
【研究概要】
本研究では、ソーシャルビジネス事業「授産施設の自主製品の製造・販売事業」につい
て焦点をあて、実在する製造元「社団法人あすなろ福祉会」および販売先「直島福武美術
館財団」を研究対象としてスタートした。開始早々、製造側「社団法人あすなろ福祉会」
の授産事業としての商品開発中断という経営方針転換により、本年度は販売先「直島福武
美術館財団」が運営する犬島アートプロジェクト「精錬所」ミュージアムグッズの商品企
画提案まで結びつけることを目標に、犬島の地域資源を中心に調査研究を実施した。
【研究実績】
1)文献調査:平成23年6月11日(土)~8月4日(木)
研究チームは、本研究内容の教育効果を期待して、卒業研究及びゼミナールを履修する
学生(県外出身者)をメンバーとして組み入れ、県及び大学図書館の犬島に関する資料
の文献調査を行い、犬島の地理・歴史・文化を学ぶ機会にした。
・調査メンバー:森下眞行、山下明美、上田篤嗣他学生6名
・調査内容:犬島は良質な花崗岩の産地として知られ、大阪城や岡山城などの石垣に利
用されるなど、採石が盛んに行われていた。約100年前には銅の精錬として繁栄し、
最盛期には約5000人が生活していたが、価格暴落により精錬所は閉鎖され、現在は
50人あまりの過疎の島となった。
2)市場調査:平成23年9月6日(火)東京インターナショナルギフトショー2011
・調査メンバー:森下眞行、山下明美
・調査内容:直島福武美術館財団が運営するギフトショップにふさわしい地域資源を活
用したストーリー性、テーマ性のある提案を行うため、ギフトショーでの商品アイデア
を情報収集し、10月現地調査を含めて年度末に総合的なまとめを行うこととした。ギ
フトショーでは、ミュージアムグッズコーナー以外に研究テーマとの関連性の高い「人
と環境に配慮したPeaceful Lifeフェア」や「伝統とモダンの日本ブランド~モダンジャ
パニーズスタイルフェア」のコーナーもあり今後の商品提案を行う上で大変参考になっ
た。
次頁に続く
調査研究実績
の概要○○○
地域貢献への
反映を踏まえ
て記述のこと
成果資料目録
3)現地調査:平成23年10月15日(土)~平成23年10月16日(日)
・調査概要:10月15日(土) ①ベネッセアートサイト直島/犬島アートプロジ
ェクト「精錬所」「家プロジェクト」、犬島自然の家(宿泊)、10月16(日)①
犬島再発見の会 会長 在本桂子氏、②ベネッセアートサイト直島/地中美術館、③
ベネッセアートサイト直島/ベネッセハウス
・調査メンバー:森下眞行、山下明美、上田篤嗣他学生6名
・調査内容:2008年4月、財団法人直島福武美術館財団が精錬所跡地を犬島アー
トプロジェクトとして運営し、毎年多くの人が犬島を訪れている。それに伴い宝伝港
には駐車場が設置され、車を利用して訪れる観光客にとっては便利となった一方で、
岡山から公共交通機関を利用する観光客にとっては、バス便の少なさや乗り継ぎの不
便さなど、未改善の問題点が多く残っている。1987年に浄化センターが設置され
下水処理問題は改善されたが、医療体制は週1回のみの診療しかなく、高齢者の多い
犬島にとって死活問題である。また島内にはコンビニやスーパーがないため、キャン
プ場及び宿泊施設を利用する人は食料を本土で購入し持ち込まなければならない。島
の地域資源は花崗岩採掘と銅精錬所の跡地といった歴史的産業遺産しかなく、犬島の
ギフトショップでも、精錬所跡のスラブを再利用した砂時計以外は島外で製造された
ものが販売されている。地産地消的な発想ではない、島の歴史や文化を踏まえたスト
ーリー性、テーマ性のあるギフト商品のアイデアが必要であると位置づけた。
4)聞き取り調査:平成23年12月16日(金)
・調査先:ノートルダム清心女子大学人間生活学部生活環境学研究室 上田恭嗣教授
・調査チーム:森下眞行、山下明美、上田篤嗣他学生5名
・調査概要:上田教授は岡山建築士会のメンバーとして、昭和60年代の犬島振興計
画調査に関わった人物で20年以上犬島を見続け、多くの知識を持っている。そのた
め、研究チームとしては犬島の分野や歴史を踏まえた商品提案を考える上で、犬島研
究の専門家である上田教授から過去の調査内容を聞き取り、参考とすることにした。
・調査内容:昭和61年、岡山市はこの犬島を歴史的産業遺産を利用したアドベンチ
ャー・アイランドとして活気ある島にすべく、社団法人岡山県建築士会に調査を委託
した。岡山県建築士会が行った犬島振興整備計画調査によると、当時の犬島は岡山か
らのアクセスが悪く、犬島と本土をつなぐ連絡船乗り場(宝伝)近辺に駐車場もない
状況であった。島内に於いても、下水処理、ゴミ処理施設が不十分であり、緊急時の
医療体制が整っていない状況であったと記されている。計画では野外体験が出来る施
設として原始居住が建設される予定だったが、バブル崩壊に伴い計画は中断された。
将来は、宝伝港への宿泊施設の建設や観光だけで犬島を訪れるのではなく、都会で働
く人たちが気分転換できる島として活用できるよう再検討することを考えている。今
回のインタビューにて、上田教授が平成24年度の福武学術文化振興財団補助金によ
る犬島再調査を実施するため、本研究の継続と協力を要請された。
【まとめ】
本年度の特別研究では、犬島に関する文献・現地・インタビュー調査に主な時間を費や
してしまい、具体的な商品提案まで至っていない。今後の研究課題としては、地産地消的
な商品開発視点だけでなく、犬島という限界集落での地域活性化という視点から、現実的
な提案に結び付けてゆく必要性がある。今回、犬島を調査する中で、犬島には特別な時間
が流れていることを研究メンバーは実感した。便利な生活に慣れてしまったが我々には多
少不便に感じる部分もあったが、逆に仲間との共有する時間やコミュニケーションが多い
事に気づいた。犬島の魅力(地域資源)は、「スローライフへの回帰」であり、アート作
品や島の環境から感じる現代社会のライフスタイルを見直すメッセージ性の高さが、最大
の地域資源であると考える。また、島の環境(岡山市立犬島自然の家含め)は次世代教育
の場として期待できることから、ターゲットを子どもに設定し、モノではなく心を満たす
ライフスタイルを考えてもらうきっかけ作りを狙っていきたい。
1.地域貢献特別研究概要集(ホームページ資料)
2.特別研究ノート(卒業研究資料として)