ホスト社会沖縄と日系人・外国人

ホスト社会沖縄と日系人・外国人
―多文化化から多文化共生への可能性―
琉球大学
鈴木規之
1.目的
本研究の目的は、これまで日本国内におけるディアスポラとして論じられてきた沖縄社会が、日
系人・外国人といった海外出身の住民や異文化を持つ住民を内包するホスト社会としての立ち位置
も兼ねるようになった現在、沖縄県内におけるディアスポラと言える彼らをどのように認識し、関
わっているのかを検証することにある。沖縄社会は多文化化が進行しているにもかかわらず、異文
化を持った人々がそのハビトゥスを表出しにくいのが現状であり、沖縄の人々も外国人・日系人を
同じ地域の住民としてまなざし、共に暮らしている存在とは認識していないように思われる。本研
究では、多文化化がどのように進行しているのかを明らかにするとともに、彼ら異文化を持った
人々とどのように共生していく可能性があるのかを実証的に明らかにする。
2.方法
そこで、本研究では、平成 13~15 年度文部科学省科学研究費基盤研究(c) (2)『沖縄県における
ディアスポラのライフコース―ホスト社会との関係性をめぐって―』および、シンポジウムとワー
クショップ「沖縄社会と日系人・外国人・アメラジアン―新たな出会いとつながりをめざして―」
で得られた成果をふまえ、ホスト社会である沖縄県の住民が、日系人・外国人といった自社会内の
ディアスポラに対してどのように認識し、まなざしているかについての調査分析を行う。
2002 年度の調査では、沖縄の外国人、日系人の現状があまりにも多様であること、沖縄社会に入
り込みにくい実態があること、自治体のサービスやサポートシステムの利用が難しく、多言語でさ
らに充実させていく必要があることが明らかになった。また、シンポジウムでは、外国人、日系人
の当事者の方々から、仕事を求める際のあまりにも高すぎる言語の壁や自治体サービスへの不満、
多様性を認めないホスト社会沖縄への不満が生の声で寄せられた。また、コメンテーターからは、
ホスト社会沖縄の側の調査の必要性や、多文化主義の導入の必要性が指摘された。
2009 年度の調査は、沖縄県浦添市を対象地として、成人男女(20-69 歳)の住民の中から選挙
人名簿を使用した層化二段階無作為抽出によって 1100 人を抽出し、調査員による配布留め置き回
収法によって 452 人の有効回答(回収率 41.1%)を得た。関連団体へのインタビュー調査も行った。
3.結果
対象者は、地域の国際化や多文化化に一定の肯定感を持っているが、米軍人は拒否する傾向がある。
また、多文化化を肯定する意識がある一方で実際に外国人や日系人と関っている者は少なく、外国人住
民の抱える問題やサポートに対しては関心が薄いため、多文化共生の可能性については楽観視できない。
4.結論
沖縄の現状を鑑みると、「多文化化」「多エスニック化」は進行しているものの、異なる文化や文化的
背景を持つ他者に対して、「イチャリバチョーデー」だと沖縄の人々が思っているほど優しくはない。
外国人・日系人に優しい街をつくる可能性を見出すことができれば、多文化共生への道が開けてくると
考える。
文献
安藤由美・鈴木規之・野入直美編著[2007],『沖縄社会と日系人・外国人・アメラジアン―新たな
出会いとつながりをめざして―』
,クバプロ.