愛語よく廻天の力あり 水戸市立鯉淵小学校長 小堀 常雄 私共人間にとって言葉は心の要です。心が乱れますと言葉も乱れ,言葉が乱れますと心 も乱れます。 「愛語」という言葉を使って「言葉の教育」の重要性を説いた人に道元禅師が います。 むかひて愛語をきくは,おもてをよろこばしめ,こころたのしくす。むかわずして愛語 をきくは肝に銘じ魂にめいず。しるべし。愛語は愛心よりおこる。愛心は慈心を種子と せり。愛語よく廻天の力あることを学すべきなり。ただ能を賞するのみにあらず。 (直接褒め言葉や優しい言葉を聴くことは心を嬉しく楽しくさせてくれる。直接でなく, 誰かを通して褒め言葉や優しい言葉を聴くと,心に深く染み入ってくるものだ。 ・・・ 人にやさしい言葉をかけると,それは世界をも変える力をもっている.・・・) 確かに「この間の家庭訪問であなたのことについて一生懸命仕事をしていると先生が話 していましたよ」と間接的に聞きますと,褒め言葉を聴く嬉しさは倍増します。 「先生はそ んな風にみていてくれたのだ」と心が揺さぶられ,心の奥まで染み入ります。このような 褒め言葉,励まし,やさしい言葉かけには,さらに「愛語よく廻天の力あり」と言ってい ることから,世界を変える力をもっているとも述べています。 道元禅師の「愛語」とともに,次のアメリカインディアンの詩を思い出しました。 批判ばかり受けて育った子は非難ばかりします。敵意に満ちた中で育った子は誰とでも 戦います。冷やかしを受けて育った子ははにかみ屋になります。ねたみを受けて育った 子はいつも悪いことをしているような気持ちになります。心が寛大な人の中で育った子 は我慢強くなります。励ましを受けて育った子は自信をもちます。褒められる中で育っ た子はいつも感謝することを知ります。公明正大な中で育った子は正義感をもちます。 思いやりのある中で育った子は信仰心をもちます。人に認められる中で育った子は自分 を大事にします。仲間の愛の中で育った子は世界に愛を見つけます。 (アメリカインディアンの教え ドロシー・ロー・ノルト 著 加藤諦三 訳) 先日,第1学年の家庭教育学級において「ピグマリオン効果」のお話をしました。子ど もたちと接するときに期待感をもって接すれば,そのように育つという意味の効果のこと です。本校の教職員一同,朝の登校時,廊下ですれ違う時,そして,授業中,一人一人の 健やかな成長,そして,未来への期待を願い,愛語を使っていきたいと日々努力していま す。
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