英さん、世相を斬る! 第 3 号 「おんぼらーっと、いきまっし」 記録的な暑さが続いていますが、皆さんお元気でしょうか。ひと月に一度と思って始めたコラムですが、 隔月になっています。金沢弁で、良い言葉があります。「おんぼらーっと、いきまっし」です。ゆっくり、 のんびり行き(生き)ましょう、ということです。 ところが、8 月 5 日、社会保障制度改革国民会議がとんでもない、社会保障の大削減を打ち出しました。 とても、「おんぼら-っと」どころではない事態です。 社会保障とりわけ生活保護が危機的状態ですが、日本の四季も危ないと思います。温暖化の影響でしょ うか。冬と夏が長くなり、春、秋が失われていっているような気がします。最近の梅雨は、梅雨というよ り集中豪雨で、スコ-ルのようですね。温帯から熱帯へ移っているのでしょうか。 無責任社会日本は誰の責任か 日本が「おんぼらーっと」生きられない社会になっています。熱帯日本で、連日熱中症による高齢者の 「死」が報道されています。孤独死というより姉妹、夫婦、親子複数の方が、孤立化して亡くなる。これ が、最近の餓死、凍死、そして熱中症による死亡の特徴ですが、孤独死と根っこは同じですね。 これに関するマスコミの姿勢は、相変わらず、家族、親族、地域の「見守り」「つながり」が大事だな どというものです。しかし、私は、無責任社会日本に根本原因がある、と思います。無責任なのは国や自 治体で、個人、家族、地域に責任転嫁している。とりわけ、社会保障や社会福祉制度は、貧困、病気、障 害等の「事故」から人々を守り、人々の生命、生活、健康を保障する義務がある。その義務を果たさない ため、生命が失われれば、当然に責任(行政責任、賠償責任、さらには刑事責任)が問われなければなら ないということです。これが憲法 25 条により人権として社会保障・社会福祉が保障されていることの意味 です。 ところが、行政は自分たちが精一杯やっているかどうかは棚に上げて、-もちろん、過労死するほど頑 張っている人々もいることは承知していますが-、「やれることに限りがある、後は、国民、皆さんで」 というわけで、これに人のいい日本の国民は騙されてしまう。「自分たち家族で、地域で頑張らなくちゃ」 ということになる。 日本の政府は、この意識-金沢に住んでいると、こうした意識は、国民性や民族性などではなく、一向 一揆による「百姓のもちたる国」を大虐殺で叩き潰し成立した加賀藩、そして明治維新後成立した絶対天 皇制国家の支配の仕組みによって育てられたものだと、つくづく思います-を上手に利用し、さらに社会 保障の変質を打ち出しました。 憲法 25 条はすでに改憲されている 周知のように,日本国憲法 25 条は,1項で,国民に「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を保 障し,2項で,社会保障・社会福祉の「向上・増進」についての「国の義務」を規定しています. ところが,既に,昨年(2012 年)8月の社会保障制度改革推進法は,社会保障制度改革の基本を「自助, 共助,公助」とし,国の保障義務を「公助」にすり替えました.この考え方は,恩恵から権利,そして権 利の中でも憲法で保障される最高位の人権へと発展してきた社会保障・生活保護の歴史を無視し,1874(明 治7)年の恤救規則の時代へ逆行させるものです. 憲法 25 条は,社会保障制度改革推進法により既に改悪されているのです.下位の立法による最高規範憲 法の「改憲」です.それは,安保条約・自衛隊法によって骨抜きにされ,解釈改憲によってずたずたにさ れている第9条の姿に重なります. 詳しくは、「憲法改正と人権としての社会保障」法学館憲法研究所 (http://www.jicl.jp/kaiken/backnumber/20130701.html)等をご覧ください。 人権のための「闘争」を-生存権裁判勝訴、一万人審査請求運動を 社会保障制度改革は、生活保護基準引き下げ、生活保護法改悪、そして社会保障大削減と具体化されてい ます。 憲法97条は,人権は,「人類の多年にわたる自由獲得の努力(ストラッグル=闘争)の成果」であると明 言しています.その闘いのための様々な手段、裁判、ストライキ、デモ、そして参加等を憲法は人権とし て保障しています.さらに,12条は,この権利のための闘争,人権保持のための「不断の努力」を国民の 義務とさえしているのです. ところが,自民党憲法改正草案では,この97条は完全に削除されています.権力者,支配者にとってもっ とも脅威なのが「権利のための闘争」だからでしょう. 今,憲法改悪を阻止し,人権としての社会保障・生活保護を確立するための大運動が必要です.まず,人 権の門番たる裁判所への大運動が必要です.今度の憲法違反,生活保護法違反の保護基準引き下げ,さら には憲法25条,13条違反の生活保護法改悪・社会保障大削減を阻止するためにも生存権裁判の勝利が不可 欠ですし,引き下げに対してはさらに大量の審査請求運動,提訴が必要です.さらに,朝日訴訟・堀木訴 訟を超える大裁判運動,立法闘争が展開される必要があるでしょう. 1 万人生活保護基準引き下げ審査請求運動の呼びかけ文と審査請求書を掲載しますので大いに活用して いただきたいと思います。
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