2005 年 3 月 14 日(月)―2005 年 3 月 18 日(金) 総括 「ゆっくり円高―(Too Shy to Sell DlYen)」 需給「いつまでもあると思うな、親と相場と紙コップ」 テクニカル 「足湯だけからずっぽりつかりたいへ」 当局 & ID為替「皆に宝くじはあたらない」(2 部構成) 横浜湘南便り 「横浜事件」 ドル円 102-105 ユーロ円 138-141 FX湘南IG (FSIG) 代表 野村雅道 (事務所 田園、ベイサイド、伊豆稲取) 中京大学講師 日経インデックス(2000 年=100) 3 月 11 日東京引け 前回 3月 9 日からの変 化 円 95.7 やや強し ドル 89.1 若干弱し ユーロ 127.0 強し ドルインデックス IN NYBOT 81.42 若干弱し CRB 318.61 強し 日経平均ドルベース 3 月 11 日東 京引け 114.49 IMM円投機筋 3 月 1 日−9786(前週比-2663) 1. (今週の予定) 14(月)日 GDP2 次速報、国際収支、証券投資状況、鉱工業生産確報、米 サン フランシスコ連銀総裁講演、 15(火)日 日銀政策決定会合、独 ZEW景況指数、米 グリーンスパン議長議会 証言、小売売上、企業在庫、NY連銀景況指数、証券投資収支(重要かな?) 16(水)日 日銀政策決定会合、日銀総裁会見、日銀金融経済月報、月例経済報 告、米 鉱工業生産、住宅着工、設備稼働率、4Q経常収支 17(木) ユーロ圏 CPI、ECB理事会、米 景気先行指数、フィラデルフィア連銀景 況指数 18(金) 独 PPI、米 ミシガン大消費者信頼感指数 (来週の予定) ――物価週間↓―― 21(月)春分の日 22(火)米 FOMC、PPI 23(水)独 IFO景況指数、ユーロ圏経常収支、米 CPI 24(木)日 第三次産業活動指数、独 CPI、米 新規住宅販売、耐久財受注 25(金)日 企業向け価格指数 2.総括 「ゆっくり円高―(Too Shy to Sell DlYen)」 大方の見方が円安に傾いていたが、なかなか簡単ではないようだ。 (また読売新聞には伊藤教授のドル暴落説も上げられていた。ただ思うのはドルが 暴落すれば困るのは米国なのだろうか。勝手にエクスチチェンジしている国ではな いか。) 刹那的、浅薄な為替市場には似つかわしくないが基軸通貨の構造問題が議論さ れて始めた。それはアジア諸国に蔓延るとも言えるドル外貨準備の資産配分見直し だ。もちろんドルの余剰をもつのは中央銀行だけではなく、輸出業者や投資家、 我々個人も同様だ。 世界経済がグローバル化しているのに、ある一つの国の通貨だけを取引に使い、 その他の国はローカル通貨で換金のリスクがあれば問題が生じるだろう。それは日 本国の各都道府県が別々の通貨を持ち、介入をやったり、貿易不均衡を改善しよう としていたら、それこそ混乱が起こる。喜ぶのは為替ディーラーのみだ。 固定すれば良いものを自ら変動相場制にして動けば動いたらで相場は安定すべ きと言い、居もしない投機筋を犯人に仕立て上げる各国当局の矛盾。介入で外貨 準備を増加することだけを目標にしてきた当局、公共事業のような介入、実は借金 まみれで借金を返そうとすればドルが暴落するので動けない。為替差損が出る。欧 米先進国などは外貨準備の用語どおり、必要最小限の外準しかない。まだ議論さ れ始めただけでもましだろう。これも一つのドルが上昇できない理由だ。 さて現実に戻り今週はさらに年度末に近づき、ただでさえ動かない東京市場がより 閑散となっている。決算予想をぶらせぬためにも取引が手控えられるのは当然だが、 決算が 12 月の外資系にはそれは当てはまらない。いまこそ腕に自信のある外銀は 活発に売買してはどうだろう。 105 円が恋しくなった輸出業者と若干の年度末への円転でゆっくりと円高が進もう。 「ゆっくり」と言ったのは、やはり 103、102 と新しい円高値にはシャイな日本人は積極 的には取り組めない。慣らしの時間が必要だ。漸く 105 円の壁を突破したのだが、ゆ っくりと、ゆっくりと今までのペースで日本人らしく次は 104 円の壁に取り組めばよい。 時には西洋人が一気に落とそうが無視しよう。彼らは投機なので買ったら売る、売っ たら買うでもとに戻る。我々のような買いきり、売りきりではない。 また為替に興味のなかった人も漸く為替マージン取引の宣伝効果もあり、いかに 日本では低利運用しかできないと悟り、為替だけでもなく、海外の商品の興味を持 ち出したのであろう。その高金利通貨買い円売りもその「ゆっくり円高」を支援してい る。しかし原油高騰での輸入増と同じくト−タルで考えれば貿易黒字の趨勢を変え るものでないことを忘れてはいけない。 3.需給 「いつまでもあると思うな、親と相場と紙コップ」 3 月 10 日の出来高が 125 億ドルあった。104 円台でかつ小動きの日であったのに 出来高が満員御礼とも言える 100 億ドルを超えたのは意外だ。前日に 104 円 70 銭 から 103 円 65 銭までドルが急落していたので、漸く腰の重いかつ当面の新規円高 値にはシャイになる日本人も 103 円を見たことで戻りの 104 円には動意を見せたの であろう。いつでもドルが売れると思っていた 105 円台が次第に遠くなってきた。 「いつまでもあると思うな親と相場と紙コップ」というのが私のいたニューヨークのディ ーリングルームに貼ってあった。紙コップというのは以前の課長がコーヒーが好きな ので「入れろ」と命令された時にすぐに出さなければならなかったそうだ。紙コップが ないような粗相は許されない。課長の機嫌を損なうことはやってはいけないという掟 であった。常に部下は紙コップを買い置きする。相場もいつでも 105 円で売れると思 っていてはいけない。あっという間に在庫がなくなる。 4 テクニカル 「足湯だけからずっぽりつかりたいへ」 ドル円一目均衡表ではまだ雲の上に位置するが 3 日連続ローソク足の下ヒゲが雲 に入っている。絵を見れば足湯につかっているようだ。しかし今週末あたりからは雲 が上がるので 104 からみが続けば自然にどっぷりと雲につかりすぐにも雲の下になり ドルが売られやすくなるだろう。 移動平均線は 21 日が下向きになってからドル円の底堅さも弱まってきた。IMMの 投機ポジションは前々週(3 月 1 日付け)に 1 万 8 千枚の大幅買戻しをした後、先週 (3 月 8 日付け)は若干売ったようで決定的なドル円の下げとはまだなっていない。5 日、21 日線は 90 日線を下にブレークする動きを示そう。 敢えて言えば 2 月 10 日のあの長い上ヒゲからの下降トレンドをサポートするポイン トは輸出業者にも魅力的な 105 円となってくる。 欧州通貨というか他の主要いやマイナー通貨とも異なり本格的なドル下げにはなっ ていないドル円だが、サイコロジカル的に言えば、10 日間のローソク足を取れば陰 陽五分五分が六分四分でドルが若干弱くなってきた。 5.リスク 「長引くイラク、パレスチナ、日中問題」 北朝鮮暴発(北朝鮮開国?)、テロ激化東京へ、イラン、地震、ビンラディン現る、 日本物格上げ、米国物格下げ、貿易戦争(FTA)、米軍イラク撤退 6.当局 & ID為替 「皆に宝くじはあたらない」(2 部構成) 1) (世間でも日本の外貨準備が焦点となってきたようだ。) そもそも外貨準備とは 1960 年代の日本のように貿易赤字国、対外債務国に必要で あり、今の日本にはまったく必要のないものだ。必要のないもので買って損までする のは政府、特殊法人の温泉などの無駄な施設と同じだ。温泉ならまだ癒されるが米 国債は何の癒しにもならず、米国人にさえも感謝もされていない。 ドルが上昇したときの介入資金にするなどと希望的な観測をするのは、土地は永 遠に上昇するとか、人口が増え続けると思って計画した社会保障プランと同じだ。 最後は破滅しよう。 円売り介入では輸出業者にメリットとなったが、輸入業者や国民は海外の商品を 高値で買うハメになった。ただ日本人は「無告の民」なので不満は言わないだけで 介入に正当性があるわけでもない。 介入会計といわゆる本来の意味する外貨準備は切り離すべきだろう。基軸通貨と いうことで世界中の誰もが外貨と言えばドルを持っている。それも古くからで 200 円 あり、150 円、130 円と品揃えは豊富だ。ドルが上がれば誰もがハッピーだ。介入で 貯めたドルも儲かる。こんな素晴らしいことはない。100%に近い人が儲かるゲーム はない。借金で買った土地や年金など夢のプランと同様素晴らしい希望はあるが、 皆に宝くじは当らない。いち早く外貨準備は分散というよりゼロにして借金を返した ほうが良い。巨額すぎるからそれは出来ないというが、それは大きくした人がとる責 任だ。 ダイエーの借金、アルゼンチンの借金、少数による株の支配などと同様大きいが ゆえに身動きが取れないものがある。日本の借金で作った無用の介入会計だ。 考えなおすか、円のドル化しか解決方法はない。あるいは冗談だが勝負をかけて 円安目的であと 2、3 兆ドル相当の円売り介入して一気に時間外取引で売るか。でも 買い手もいないし、為替市場には時間外取引も殆どない。 2) (基軸通貨の宿命) せっかくのG−7で米国双子の赤字の改善や米国金利の上昇をうたったが、その甲 斐なく国際感覚に乏しい円を除きドルは全面安だ。これはやはりドルが飽和状況と いうことで、ドルの上昇は皆「嬉しいがもう持ってるよ、満腹だ。別バラもドルでいっぱ い。」なのである。 少々の金利引上げは関係がない。まだユーロ、オセアニア通貨などのおなかに余 裕がある通貨は金利引上げで上昇する。かつての基軸通貨ポンドもドルと同様で 長い間上昇力が鈍かった。 20 年前東京銀行でポンドディーラーをしていた時、上司が「ポンドを売りたくなった らいくらでも売っても良いよ。」 と言われた。戦前から日本の海外進出は基軸通貨 ポンド債権を増やすことで行われてきた。1 ポンド 1000 円から買い続けてきた。ポン ド資産は売るほどあった。プラザ合意以降のドル安時代もポンドは比較的安かった のは基軸通貨時代に持たれすぎの感があった。一時はソロスにも簡単に売り込まれ た。そういう状態にドルも近づきつつあるのだろう。基軸通貨の宿命だ。 7.ID為替 「皆に宝くじはあたらない」 (2 部構成) 当局の項に含めます。↑ 日経掲載原稿 http://www.nikkei-ad.com/kinyu/saizen/kawase/index.html 内需拡大−規制緩和−市場開放−小政府−財政均衡−自己責任−公明正大 50―超円高−100―円高−150−普通円−200―円安−250−超円安− 「世界一のデフレと物価高の共存が日本の弱点」「国を選ぶ時代」 FX湘南社是 「面白く正しく」 FSIG FX湘南投資グループ 代表 野村雅道 中京大学講師 (事務所 横浜田園、横浜ベイサイド、伊豆稲取) 「付録 *横浜湘南便り*」 今週は伊豆稲取にて 「横浜事件」 横浜市立中央図書館で横浜の文献を探していると出くわすのが数十冊もある横 浜事件について書かれてある資料だ。有名な事件であるようだが、教科書的にはふ さわしくないのだろう、あまり知らされてはいない。 いわゆる日本の植民地支配を民主主義的に論じた細川嘉六の論文が軍部には 共産主義的なものととられ、細川は検挙、また出版記念に参加した中央公論社など の友人も神奈川特高に逮捕され拷問を加えられ 4 人が獄死した事件である。 (神奈川特高―カナトクーは残虐さをもって恐れられた特高のなかでも際立ってい た。) 被害者と遺族は棄却されながらも再審請求を続け昨日 3 月 11 日再審開始が確定 した。治安維持法違反で有罪判決を受けた元被告 5 人(いずれも故人)について再 審公判が始まる。もちろんここで簡単に語れる事件ではないが、実に戦後 60 年にし ての再審である。 適切に迅速に処理されたニッポン放送買収問題、今だ一向に処理されない一票 の格差問題とからめ裁判の常識と迅速性をとりあげようと思ったがこの横浜事件の 重さはそれらとくらべものにならないような人権問題であったのでここで終わりとした い。ベイオフィスのすぐ側の横浜地裁で再審は始まる。
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