KOBAKANニュース 2015 年 8 月 18 日 VOL.73 株式会社アプレイザル総研 大阪市北区西天満 1-10-16 TEL:06-6315-5111 FAX:06-6315-5125 http://www.erea-office.com 文書:小林 穂積 この KOBAKAN ニュースは、㈱アプレイザル総研・小林穂積とお名刺交換、ご縁を頂いた方にお送りしています。 1.信託銀、不動産で稼ぐ 信託銀行が不動産部門に力を入れている。みずほ信託銀行や三井住友信託銀行は不動産を専門に扱う新たな部 署を設置し、企業や海外勢の取り込みを目指す。不動産売買は過去最高だったリーマン・ショック前並みに盛り 上がっています。三菱UFJ信託銀行は不動産投資の好調で信託銀単体の仲介件数が 5 年で倍増しました。不動 産部門が新たな収益源になりつつあります。 三井住友信託は貸しビルを持つ企業にテナントを紹介する部署を新設しました。三井住友トラスト・ホールデ ィングスの北村邦太郎社長は「市場部門の減益を不動産部門などで取り返す」と期待しています。 みずほ信託が新設したのは、外国人専門の不動産営業部門です。日銀の金 融緩和による金利の低下と円安を追い風に、海外投資家の不動産買いが目立 っているためです。 三菱UFJ信託は不動産の有効活用を促す提案営業を強化し、仲介件数を さらに増やす方針です。 信託機能をもつりそな銀行が狙うのは国内の個人です。同行の 2015 年 3 月 期の不動産部門の収益は前の期比 1.5 倍に膨らんだが、9 割は個人向け。不動 産営業部門を増員し銀行の始点に集まる不動産の売買情報の収集を通じ、同 部門の一段の拡大を目指す。 「企業や投資家に限られていた不動産取引が、少 しずつ個人にも広がってきた」 (担当者)という。 信託大手 4 行の 15 年 3 月期の不動産関連の収益は合計 1095 億円と、2 年 前に比べ 3 割増加しました。大手金融機関グループで利ザヤの縮小が目立つ 中、不動産関連事業の存在感が高まっています。 みずほ信託系の都市未来総合研究所によると、14 年の不動産売買取引額は 全体で 5 兆 2890 億円。過去最高の 07 年度とほぼ同規模の取引が成立した計 算です。平山重雄主席研究員は「円安と金融緩和が追い風となった」と指摘する。 税制改正も追い風です。15 年 1 月の相続税引き上げを受けて「節税目的の取引が活発になった」 (大手信託銀の 不動産営業担当者)といいます。 国税庁が発表した 15 年の路線価をみると、東京・銀座の上昇率が前年比 14%と 7 年ぶりの高水準。好調な不 動産取引を反映して地価の上昇も続いています。ただ日銀が今年 4 月の金融システムリポートで「不動産関連の 指標の 1 つが過熟を示した」と指摘。不動産投資信託(REIT)の総合的な値動きを示す東証REIT指数が 今年の高値から 200 ポイントほど安値水準にあるなど、先行き不透明な部分もあります。 (2015.8.10 日本経済新聞) 2.堺東駅前ビル来秋着工 堺市などが南海線堺東駅前(堺市)で計画している再開発ビルが 2016 年秋をめどに着工する見通しとなりま した。地権者や竹中工務店などでつくる再開発事業会社が総事業費約 147 億円を投じて 24 階建の再開発ビルを 建設、20 年春のオープンを目指します。地権者間の権利調整の遅れなどで足踏みしていた建て替え事業がようや く動き始めます。 再開発地区の総面積は 7 千平方メートル。新しいビル(地上 24 階地下 2 階)の敷地面積は 3700 平方メートル で、延べ床面積は 4 万 6 千平方メートル。地価 1 階~地上 3 階に食品スーパーなどの商業施設やオフィスが入居 し、4 階以上は分譲マンション(約 320 戸)になります。 市は 13 年春に市街地再開発事業として都市計画決定しており、約 28 億円の補助金を出す方針です。 1 新ビルの 2~3 階の一部は堺市が使用し、2 階には図書サービスコーナー(約 50 平方メートル)を開設します。 市民がスマートフォンなどで予約した市立図書館の本を借りたり、返却したりできます。 「年間約 10 万人の利用 を見込んでいる」 (竹山修身市長)という。 現在の「ジョルノビル」は 8 階建てで、1981 年に完成。01 年に核テナントのダイエーが閉店。11 年にスーパ ーなども撤退し、約 9 割が空き店舗となっていました。 建て替えに合わせ、市は堺東駅の歩道を広げるほか、駅からの歩行者用デッキを延長して横断歩道を渡らずに 繁華街や市役所前広場と行き来できるようにする予定です。(2015.7.31 日本経済新聞) 3.Jフロント、大丸心斎橋店建て替え! Jフロントリテイリングは7月 24 日、傘下の大丸松坂屋百貨店の旗艦店、大丸心斎橋店(大阪市)の本館を 建て替えると正式発表しました。南館もインバウンド(訪日外国人)対応の店舗に改装します。大阪は増床や新 店開業で一時は 3 年間で百貨店の総店舗面積が 2 割以上も増えた激戦区。建て替えが懸案になっていた老舗店舗 がついに動き、競争に拍車がかかります。 心斎橋店の本館の営業は 12 月 30 日に終え、 年明けに解体工事に入る。新たな本館は 2019 年開業の見通しです。 北館と南館は営業を続けます。建て替え費用は本館で 300 億円前後、南館の改装などを含め 400 億円前後に達す る可能性があります。 大阪市中心部は大規模な百貨店が集まる「激戦区」です。JR大阪駅周辺では 11 年に大丸梅田店、12 年に阪 急うめだ本店が増床。関西国際空港への鉄道路線の玄関口にあたる難波では 11 年に高島屋大阪店(大阪市)が増 床、その近くでは 14 年 3 月にあべのハルカス近鉄本店も全面開業しました。 11 年 3 月末に 61 万平方メートルだった市内百貨店の総店舗面積は 14 年 3 月末には 75 万平方メートルまで拡 大しました。そのなかで、あべのハルカス近鉄本店の初年度売上高が計画を大幅に下回り、11 年に大阪駅周辺地 区に乗り込んだ三越伊勢丹ホールディングスが約 3 年で事実上撤退に追い込まれるなど、消耗戦になっています。 大丸心斎橋店の売上高は大丸松坂屋百貨店で 3 番目の 845 億円(15 年 2 月期)。著名建築家のウィリアム・ヴ ォーリズが設計し 1933 年に完成した同店は老朽化し、情報化(IT)対応などの問題からかねて建て替え案が 浮上していました。 激戦区で生き残りを託すのが、本館・北館を常連客向け、南館を訪日客向けとすみ分ける二兎を追う戦略です。 南館には高級腕時計や美術品など訪日客に人気のあるブランドや商品の売り場を集めます。免税品の販売拠点 と位置付け、近隣の商店街と共同の一括免税カウンターも設けます。心斎橋では免税品の売上高が店全体の 4 割 を超す日もあるほどです。 「インバウンド拡大の流れをうまくとらえている」 。ライバル百貨店の関係者も南館の 活用策をこう評価します。 歴史的価値を持ち、保存要望も高かった外壁を利用しながら建て替えるが、一から建てるのに比べ「コストが かなり上積みされる」 (Jフロント幹部) 。昔ながらのイメージを残すことが集客策になるとの判断です。もっと も若い世代を引き込むには新鮮さも必要。それが新旧同居する建て替え方になった面もあります。 心斎橋店は当面、本館抜きでの戦いを強いられます。ライバルにとっては「大丸心斎橋店を利用してきた富裕 層や訪日客を取り込む好機」 (大阪市内の百貨店幹部)。同店の顧客の多い地域にチラシを重点配布する策を練る など隙を狙っています。 (2015.7.25 日本経済新聞) 4.不動産は、金融緩和が続く限り、暴落はない!! 八十年代に起きたバブルと、00年代のミニバブルでは、バブ ルの質が全く違うのです。ただし、バブル崩壊の理由は共通して います。 それは「急激な金融引き締め」です。最初のバブルのときは、 九〇年から二年近く続いた不動産向け融資の総量規制が、不動産 価格を暴落させる引き金になりました。 ミニバブルの崩壊も急激な金融引き締めがその背景にありまし た。そこで何が起こったのでしょう。図5「首都圏新築・中古マ ンション価格指数」を見ると、新築マンションは 11 年末ごろまで 2 下落傾向を続けています。ところが、中古マンションは 09 年 7 月 以降反転しているのです。 じつは、この引き締めにより、不動産デベロッパーへお金がま わらず、新築マンションの供給はそれまでの三分の一ほどに急激 に減りました。一般的な住宅ローン(フラット 35)には団体信用 生命保険がついているのでローリスクですし、セカンドマーケッ トもあるので、買いたい人はそれまで通り融資を受けられます。 ここで新築物件と購入者のギャップが生じました。マンション 購入希望者は、自分の欲しい新築物件が供給されないため、中古 市場で物件を求めるしかなくなったのです。そこで中古の需給が タイトになり、価格が上昇したというわけです。 いずれにせよ、不動産価格は金融政策に左右される運命にあり ます。逆の見方をすれば、金融政策の動きを注視してさえいれば、 不動産価格の動向もわかるということ。 図6「貸出態度指数と不動産価格指数」を見てください。貸出態 度指数とは、日銀短観で発表されるもので、大手不動産業向け融資 を指数化したものです。不動産価格は、これと高い相関関係にある ことがわかります。 では「今の貸出態度指数はどうか」-じつはリーマン・ショック 前の水準を超えるところまできています。不動産価格の頭打ち感も あります。となると、またもやバブル崩壊のシナリオが待っていそ うですが、そうはならないでしょう。 現在、日銀のインフレターゲットである「消費者物価の前年比上 昇率 2%」に全く届かない状況ですから、今の段階で金融緩和をや めるとは考えられません。また銀行も、それまでの頭金なしのフル ローンやオーバーローンと言ったゆるい融資実行の方式を改め、銀 行自ら査定した不動産の価値に対する融資の割合(ローン・トゥ・バリュー)を、たとえば五割、六割までに抑 えるといった形で、リスクヘッジしています。 ただし、不動産を購入する側にも注意が必要です。たとえば、西日本のある県は、この十年間で地価が四割下 がりました。五十年後には、現在価格の 8%になると予想されています。マンションの耐用年数は 47 年。最後に 取り壊す段になったとき、土地の価格が現在の一割にも満たないとすれば、その土地は守られても流通はしない でしょう。 一方、東京は最近 10 年間で地価が2%上がりました。つまり今後の資産の組替えのトレンドを考えるなら、地 方から東京へ、郊外から都心へ、土地からマンションへとなります。 (プレジデント 2015.8.31 号 p70 地価編より) 5.ニッポンの産業、リスク取り、攻めに転じよ (米コロンビア大・日本経済学研究所長ヒュー・パトリック氏に聞く) 日本は欧米以外で初めて急速に工業化し、経済大国にのし上がった。ほかの途上国と異なり、勤勉で優秀な人 的資源が豊富だったことが大きい。 遅れていたテクノロジーも米国から学べば良かった。国民は、生活水準を上げるため猛烈に働いた。企業は工 場を建てて生産すれば、国内外で売れた。石油危機の時でさえ、企業はすぐに逆境に対応し、省エネルギー化に 成功した。 世界の経済学者は日本を驚異的と見ていた。生活水準で東南アジアと変わらなかった日本が突然、台頭したの だから。経済規模が大きくなると、欧米は競争相手として警戒し始めた。その後、バブル崩壊は日本の自信を打 ち砕いた。大企業は防衛的になり、経費削減で生き残ろうとした。新しいことに挑戦しなくなった。 現在、世界で戦える企業は、トヨタのような自動車メーカーだ。国際競争に絶えずさらされ、車の開発と言う 柱となる事業に集中してきたからだ。パナソニックのように広範な分野に事業を拡張した企業は苦戦している。 3 中心事業を何にするかを検討し、成功しそうもない分野は撤退すべきだと思う。 単純な製造業はもはや賃金が高くて不利だ。だが東レのような繊維企業は高品質な製品を生産している。アッ プルのようにデザインなどで優位に立つことも可能だ。アパレルでは「イッセイミヤケ」に代表されるようなブ ランドもある。日本は独創性があり、デザインでも稼げる。 残念なのは最近の企業は変化に対応できていないことだ。経営陣は利益率を重視しているものの、欧米企業と 比べてかなり低い。投資の機会に積極的になるべきだ。外の声、つまり社外取締役の意見に耳を傾けることも欠 かせない。 企業にとってこれから重要なことは標準ではない考え方を取り入れ、リスクを取ることだ。過去には逆境もし のいだ。企業もこうしたことをやれば、競争していけるだろう。 (2015.7.25 日本経済新聞) -------------------------------------------------------------------------------------------------希望しない このニュースレターの配信を希望されないときは、お手数ですが、 当社宛に FAX またはメールにてご一報下さい。送信を中止させて頂きます。 □ (御名前 --------------------------------------------------------------------------------------------- 4 )
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