立法の経済理論

法と経済学Ⅱ 第3部 第1章 立法の経済理論
(林田)
1.立法の理論
公益(目的)説 議員や議会は、公益を念頭において、私利私欲なく、立法作業をしてい
る.
利益集団的立法説 (経済理論説)
立法は、諸利益集団の活動の結果である
少数者(利益集団)が、多数者(一般大衆・
“声なきマジョリティ“)の犠牲において利
益を得る.
短期と長期の立法の便益
R.A.POSNER, ECONOMIC ANALYSIS OF LAW 530-34(4th Ed.1992)
問. この保護をさらに長持ちさせるにはどうしたらよいか?
2.利益集団的立法のサンプル
旧食管法、大店法、など
製造物責任(PL)法
男女雇用機会均等法(1972年)
新・旧の借地・借家に関する法律
地方の条例レベルにも →以下
3.京都市空き缶条例
環境美化を訴える市民ボランティア・グループ
嵯峨野の寺住職ら
京都市当局の取組み、対策審議会(ディポジット制の条例化)
缶飲料のメーカーや京都市内の小売業者・商工会議所などの反対運動
主婦連同支部
経済団体の反対声明
官庁・旧通産省の時期尚早論
デポジット制には反対――空きかん処理懇が意向表明
1981/10/09 日本経済新聞
京都市議会の委員会で空き缶条例案を可決するなど地方自治体で空き缶回収対策確立の
機運が高まっているが、関東地域の商工会議所や小売り、缶メーカーなど関係業界で組織
する空きかん処理問題懇談会(座長神谷一雄松久社長)
、反対表明
京都市空き缶条例の成立1981年10月9日
空き缶条例の批判:自治省
1
自治省の砂子田局長、
「空き缶条例」を批判
シリぬぐいは筋違い。1982/01/21 日本経済新聞
自治省の砂子田行政局長は二十一日開かれた全国都道府県総務部長会議の席上、各
地で進められている空きかん条例問題に触れ、
「空きかん公害対策は捨てる人を規制するの
が基本だ」と述べた。
また、
ただ条例化を進めている各団体は「捨てる人のモラルの追求では限界がある」という
認識からスタートしているほか、空きかんの再資源化も目指しており、この日の自治省側
の見解とは真っ向から対立するものとなっている。
京都市条例の結末
ある利益集団による立法が他の利益集団よって立法過程で換骨奪胎された。敗北。
→どこに問題があったといえるか?
→どのタイプの立法(条例)に該当するか?
参考文献: 京都市空き缶条例
阿部昌樹「自治体政策の形成と執行(1-3)」自治研究65巻1-3号(1989)
宮澤節生『法過程のリアリティ』104頁(1994、信山社)など
4.立法のタイプ・実例
情報が少ないので分からない点が多い。
間接的な情報がほとんど。
実際に立案・立法携わった人・議員などの話も真実かどうか曖昧・分からない。
例.児童虐待防止法(2000.5.17成立)
(1)
.きっかけ・発案
議員立法 超党派
保坂展人(社民)
、富田茂之(公明)
、太田誠一(自民)ら (いずれも当時)
行過ぎた親のしつけ ・・・> 立法の必要
主務官庁=旧厚生省
・児童福祉法(34条〔児童保護のための禁止行為〕など)+通達の活用で十分
・予算なら歓迎だが、法律(策定)は仕事が増えるだけ
(2)
.わが国の児童虐待(child abuse)
虐待に対する相談件数の増加(各児童相談所など)
児童相談所(47都道府県、13政令都市に設置)
2
2003年増員
心理学・教育学専門家、医師、社会福祉士などの児童福祉司 1,733人
児童虐待の4類型
1.身体的虐待
2.性的虐待
3.減食・長時間放置など遺棄(ネグレクト)
4.心理的外傷
児童擁護施設
民間、児童虐待防止センターなど
虐待相談件数
虐待のタイプ
被虐待者の年齢別構成
(3)
.立法の経過・動き
2000.1 衆院青少年問題特別委員会設置
5.11 委員長提案で国会に「法案」を提出
5.12 衆院通過
5.17 参院通過(全会一致)
※国会提出後、わずか1週間で成立
反対・懐疑
・懲戒権(民法822条)
「親権を行う者は、必要な範囲内で自らその子を懲戒できる」 親が子を躾けてなに
が悪い!
・懲戒権の廃止や親権の一部停止を認めることになる
・例.
「正座をしないと食事をさせない」という親
賛成への“ころび”
・児童の人権
・
「有権者にアピールする手柄になる」
・
「国政への国民の希望を少しは取り戻せた」
(4)
.立法のタイプの吟味
3
虐待事件、世論の支持
旧厚生省の官僚の抵抗を突破すればなんとかなる
議員が何らかの立法サービスに関与しているというPR効果
この立法によって、費用を負担するものは、虐待する親たち?
→彼らは政治家を動かして、
自己の行為を正当化できない。社会的に非難を受ける側。
この立法によって、利益や便益を得るのは、被虐待児たち?、議員たち、一般の(善良な)
親たちか。
費用負担する層が小さく、便益を受ける層は大きい・・・立法しやすかった。
課題
・少子化の中でなぜ虐待は減らないか?
・再婚の増加で、子連れのそれも増加する可能性がある。
・親たちのケアの方は?
5.利益集団的立法の4タイプと裁判所の立場
(1)4類型の意義
a. 利益分散・分散型
起こりにくい、公益。では民・商法・憲法は?
b. 利益分散・集中
起こりにくい。なぜ?
c. 利益集中・分散
典型的タイプ。多くの立法・規制
d. 利益集中・集中
起こりにくい。なぜ?
(2)裁判所(官)はどのような立場をとるべきか
司法は、立法の中に埋め込まれた、当該の利益集団の利益を推進・擁護すべきか?
客観的・中立と言っていて済むのか?
司法は、利益集団の利益を希釈(薄める)すべきか?
裁判官の価値・好みにならないか?裁判官による立法?
利益集団による立法の類型と解釈
法解釈とは何か:解釈論
1.テクストの優位と読者の優位
テクスト主義
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オリジル(原意)
2.機械的には判断できない
3.裁判官の価値判断・選好は入る余地がある
4.類推解釈という方法
5.先例は現在を拘束するか
6.裁判官による解釈の課題
<詳細は、別項において法解釈論に触れる予定>
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