JACR Monograph No. 11 5 年生存がん患者のその後の生存率 佐藤 幸雄* 1. 松田 徹 研究目標 柴田 亜希子 研究結果 2. 山形県がん登録では 10 年相対生存率を過去 「5 年以後の緩やかな下降」は部位によって 20 年間にわたって計測している。この生存率 一様ではない。胃、大腸、子宮頸等に較べて乳 曲線を眺めると、3 年ぐらいまでは急峻に下降 房、肝臓ではやや急傾斜である。また年代によ するが、おおよそ 5 年以後は緩やかな下降曲線 っても緩急に多少の差がみられる。 となっている。この緩やかな傾斜を一般コホー そこで、5 年生存を得たがん患者について、 トの生存率曲線と比較をして、次の 2 点につい 部位別、性別、罹患年代別にその後の 5 年累積 て検討を加えた。 生存率を算出し、その結果を同じ年齢構成の一 ① 両者が一致するものであれば 5 年以後の生 般コホートの期待 5 生率と比較をした。 存調査はあまり意味がないことになる。 次の表は一つの年代の罹患・5 生者のみにつ ② 一般コホートの生存率よりも低い場合は、 いての抜粋であるが、他の年代・部位のほとん その原因は 5 年以後も原がん死亡が多いこと どについても、5 生者の方が有意に低い 5 生率 によるものか、さもなければ治療後の QOL の という結果であった。 低下によるものと判断されよう。 1 0.8 0.9 0.8 0.7 乳癌 0.7 子宮頸癌 0.6 大腸癌 男女 0.5 胃癌 男女 0.4 全がん男女 89-93 0.6 84-88 79-83 0.5 74-78 肺癌 男女 0.3 肝臓癌 男女 0.2 0.4 0.1 0 0.3 1年 2年 3年 4年 5年 6年 7年 8年 9年 10年 1年 2年 3年 4年 5年 6年 7年 8年 9年 10年 図 1. 主要部位の相対生存率(1989-1993) 図 2. 10 年相対生存率の年代推移 *山形県立がん・生活習慣病センター 〒990-2292 山形市大字青柳 1800 1 JACR Monograph No. 11 5 年生存を得たがん患者のその後の生存率 結果であるが、部位別には、肝臓、乳房、肺等 が一般コホートの生存率より低い原因をみる で長期にわたって原がん死亡割合が高い結果 ために、死亡がん患者の死因を生存期間別に調 であった。この長期にわたる原がん死亡が、5 査した。1 年から 5 年以内の死亡者については 年生存を得てもその後の生存率が一般コホー 原がん死亡の割合が 90%から 60%と高いこと トのそれよりも低いことの主因とみなされる。 は予想もされよう。しかし 8 年で 36%、10 年 またこれらの結果は「10 年生存率」を計測 でも 26%の原がん死亡割合であったことは注 することの意義を示唆するものである。 目される。これらの数値は全がんをまとめての 千 14 100 12 80 10 60 他因死 8 他因死 他癌死 6 他癌死 原癌死 原癌死 40 4 20 2 1 0.8 肝臓 0.7 乳房 0.6 肺 0.5 前立腺 0.4 全部位 0.3 胃 0.2 0.1 0 1-2 2-3 9-10 図 4. 死亡がん患者の生存期間別死因 構成比 0.9 0-1 8-9 7-8 6-7 5-6 4-5 3-4 2-3 0-1 図 3. 死亡がん患者の生存期間別死因 観察実人数 1-2 0 9-10 8-9 7-8 6-7 5-6 4-5 3-4 2-3 1-2 0-1 0 3-4 4-5 5-6 6-7 図 5. 生存期間別原癌死亡の割合 2 7-8 8-9 9-10
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