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地理と日本史との関連を重視した授業モデル
~学習指導要領 地理B 2内容(1)様々な地図と地理的技能 ア 地理情報と地図 授業モデル
地図と世界観の変遷
授業のねらいと日本史との連携のポイント
○授業のねらい
古代から江戸時代まで用いられた行基図を通して,図が作成された頃の律令国家の支配領域を理解する
とともに,江戸時代までの人々の世界観をとらえさせる。次に律令体制下に編成された古代行政区分図を
資料として,中央と周辺の現在と過去の違いや,現在まで息づく旧国名の伝統を理解させる。授業のまと
めとして,江戸時代の後半,科学的実測に基づく日本地図が作成されるに至った歴史的背景を生徒に理解
させ,地図を作成する意義を考察させる。
○日本史との連携のポイント
「行基図」の描画上の特徴や古代行政区分の特徴を導入に,律令政府の東北地方への拡大過程を地図上
から確認させる。また,
「大日本沿海輿地全図(伊能図)
」を紹介するにあたり,江戸幕府が測量事業を許
可し積極的に援助することになった背景を,いわゆる鎖国体制下におけるロシアを代表とする外国船の来
航という国際関係の視点から生徒に理解させる。
多面的・多角的な考察を促す指導に向けた工夫
「天竺図」を資料として取り上げることで,近世以前の日本人の持っていた世界観の一端を生徒に紹介す
る。また,ヨーロッパ中世に作成された「TOマップ」と「天竺図」を比較,考察することによって,近世
以前ではヨーロッパも日本も宗教的色彩の強い世界観が人々に形成されていたことにも着目させる。
授業モデル作成にあたって想定した学校の学力レベル及びクラス
想定した学校の学力レベル:基礎学力を確実に定着させ,中堅大学への進学を目指す学校
想定した学年・クラス:1年○組(男子20名,女子20名)
4月,第2回目の地理授業として設定した。地理授業に向ける意欲は高いが中学校で学習した地理・歴史
分野の理解度,知識定着は完全ではない。
授業モデルを含む単元の授業計画
(地理情報と地図 6時間)
(1)地図と世界観の変遷(2時間) 本時…2時間中の2時間目
(2)地図の種類とその利用(2時間)
(3)地理情報の地図化(2時間)
授業モデルにおける評価規準
関心・意欲・態度
地図に対して関心と課
題意識を持ち,地図情報
を意欲的に追究し,捉え
ようとする。
思考・判断・表現
古代・中世の地図に表わ
された世界観や近世以降
の地図作成の意義を適切
に表現することができ
る。
資料活用の技能
古い時代に作成された
地図を現代の地図と比較
対比してその特徴を読み
取ったり,地理的・歴史
的事象を地図化すること
ができる。
知識・理解
古代に作成された行政
区分の知識を身につける
とともに,科学的測量に
基づく地図が作成される
に至った歴史的背景を理
解する。
授業の展開
学習活動(発問・指示・板書など)
予想される反応
導
入
5
分
(1)日本地図としての行基図(資料①)
※行基図と現代の日本地図を比較してみよう
・丸みを帯びた輪郭
・北海道の欠落
・東北地方の省略
・近畿地方が中心の街道配置 等
展
開
35
分
(2)近世前期までの国土観
※現在の日本地図に対して東北地方以北が簡
略なのは何故か?
○中央政府の東北地方に向けた進出過程を地
図中に作図する。
(資料②)
・多賀城,胆沢城
・出羽国の設置
・蝦夷・征夷大将軍 等
(3)旧国名と行政区分
○古代行政区分図を提示し,現在の行政区分と
の違いを読み取る。(資料③)
ア 古代における地方区分
・畿内・七道
イ 旧国名の名称に見られる規則性
・上・(中)・下,前・後,近江・遠江 等
ウ 現在に生き続ける旧国名
・武蔵用水,阿波踊り 等
(4)「天竺図」の世界観(資料④)
※天竺図は何を表したものか?
○「TOマップ」と対比して考察する
・共通性…宗教的世界観
・差異…キリスト教(エルサレム中心)
仏教(天竺=インド中心)
指導上の留意点
(☆日本史との連携を工夫
した部分,★は多面的・多
角的な考察を促す部分)
・行基図とは何かを理解さ
せる。
評価の観点
・現在の日本地図と比較
対比することができる。
【関心・意欲・態度】
☆行基図を出発点に,律令
国家の勢力範囲をとらえさ
せる。
・作成された頃の時代背景
から,地図に描かれた国土
観を考察させる。
・当時の律令政府の支配に
属さなかった東北地方以北
の先住民の視点からも,律
令国家の進出行動を捉えさ
せる。
・行基図の国土観が現在
と異なる理由を説明で
きる。【思考・判断】
・地理的情報を地図化す
ることができる。
【資料活用の技能】
・中央政府の東北経営の
北進過程を正しく理解
している。
【知識・理解】
・旧国名が生徒の身近な地
名用語として用いられてい
ることに気付かせる。
・古代行政区分の内容を
理解し,旧国名を現代の
生活に結びつけること
ができる。
【知識・理解】
★近世以前の日本人の世界 ・天竺図の世界観をTO
観の一端を,
「天竺図」を資 マップと対比させなが
料に考察させる。
ら適切に説明すること
・
「TOマップ」は前時で紹 ができる。
介しておく。
【思考・判断・表現】
ま
と
め
10
分
(5)科学的実測図による地図作成
※正確な日本地図はいつごろから作られるよ
うになったのか?
○科学的実測による地図が作成されるように
なった理由を考察する。
(資料⑤,⑥)
・ロシアの接近と幕府の北方探査
・伊能忠敬・間宮林蔵
・大日本沿海輿地全図 等
☆鎖国下における欧米列強
の接近と,幕府の対応策を
理解させる。
・国土観と地図の関係
や,正確な地図を作成す
る意義を表現できる。
【思考・判断・表現】
・国際関係の展開と国家(国
土)意識の発展の観点から捉
えさせる。
参考文献
資料①:行基図(拾芥抄 )
資料②:東北地方における律令政府の北進年表
→年表を基に中央政府の進出過程を東北地方の白地図に作図する。
資料③:現在の地図上にあてはめた古代行政区分図(日本史教科書,資料集等)
資料④:天竺図(国土地理院HP:古地図コレクション,神戸市立博物館HP: 名品撰)
資料⑤:18 世紀末からの欧州勢力の接近年表
資料⑥:大日本沿海輿地全図<伊能図>(国土地理院HP:古地図コレクション)
・織田武雄『地図の歴史-日本篇』講談社現代新書
地理Bワークシート
1
・
・
地図と世界観の変遷
行基図と現代の日本地図を比較してみよう
…(
・
・
)時代の僧行基が作成したといわれている。
2 現在の日本地図に対して(
)地方以北が簡略なのは何故か?
(1)奈良~平安時代初期の東北地方
…近畿地方を中心とする律令政府の統治は東北地方に及んでいない
(
)と呼ばれる人々が居住し,律令政府の進出に抵抗
東北経営に向け坂上田村麻呂を(
)に任命
(2)右の白地図に年表中の①~③の地名を書き込もう
資料②
712 年 出羽国設置
724 年 ①多賀城を築く
733 年 出羽の柵を②秋田城とする
797 年 坂上田村麻呂,征夷大将軍となる
802 年 阿弖流為降伏,鎮守府を多賀城より③胆沢城へ移転
3 古代行政区分の特徴を調べてみよう
(1)地方区分について
(2)旧国名の名称に見られる特徴(規則性)について
(3)現在に生き続ける旧国名について
4
「天竺図」は何を表したものか?
「TOマップ」との共通点
「TOマップ」との差異
5 正確な日本地図はいつごろから作られるようになったのか?
(1)年表中の(
)に国名を書き込もう
資料⑤
鎖国体制下の日本における欧米列強の接近
1792 年 (①
)ラクスマン来航(根室)
(2)幕府が正確な地図を必要とした理由を考
…通商を要求
えてみよう。
1804 年 (②
)レザノフ来航(長崎)
…通商を要求
1808 年 (③
)フェートン号事件(長崎)
・活躍した人物…
…イギリス軍艦が長崎に侵入
1811 年 (④
)ゴローニン事件(国後)
・作成された地図…
…国後島測量中のロシア軍人を幕府が捕
える
6
【まとめ】
地図と人々の持つ世界観の関係を説明してみよう。