日消外会議 19(4):803∼ 805,1986年 特集 1 消化器外科 と糖尿病 一静脈栄養 は耐糖能 を低下 させるか一 Ⅲ 大阪大学第 1 外科, 同 小 児外科 一 板倉 丈 夫 井 上 善 文 根 津理 郎 中 尾 量 保 卒 Ⅲ 川島 康 生 福 井 雄 一Ⅲ 松 尾 吉 庸 八 木 誠 ・ Ⅲ 中 窪田 昭 男 鎌 田 振 吉 高 木 洋 治 岡 田 正 GERERAL SURGERY AND SURGICAL DttABETES DOES TPN MAKES THD PATIttNTS DRABETICP Takeo ITAKURA,Yoshihulni INOUE,Rttchiroh NEZU, Yasunaru KAWASHHMA,Yoshinobu MATUO中 Akio KUBOTA中 ,Shinkichi KAMATAち and Akira OKADA中 ,MakOto YAGIホ , Yoji TAKAGI中 The First Department of Surgery and the Department of Pediatric Surgery中, Osaka University,School of Medicine 索引用語 :外科糖尿,高 血糖,静 脈栄養 は じ3めに 例 に対 し 近年手術適応 の拡大 とともに p00r risk症 て も手術 が積極的 に施行 されるようにな り,手 術前後 における栄養管理 の重要性 が著 しく増加 している。 こ の点 よ り静脈栄養 (以下 IVHと 略す)は 現在不可欠 の 手段 として広 く用 い られている. 本輸液法 ではグル コースがカロリー源 として大量に 用 い られているが,本 輸液 の施行 によ り高血糖 とな り インス リンが必要 となる症例が多 いが, これが本輸液 の施行に基づ くものか否 かについて臨床症例を対象 に して,以 下 の 3項 目に分け,検 討 した。 ① インス リン非使用下でいかなる症例が高血糖を 示すのか。 ② いかなる症例にインス リン使用され るのか。 ③ IVH施 行により耐糖能は低下するのか。 対象ならびに方法 対象.症 例 は昭和48年10月より当科で IVHを 施行 した症例より,検 討①では,イ ンス リン非使用の方針 ※第26回日消外総会 シンポ I!消 化器外科 と糖尿病 <1985年11月12日受理>別 刷請求先 !板倉 丈 夫 〒553 大 阪市福島区福島 1-1-50 大 阪大学医学 部第 1外 科 の もとにて管理 した98例よりの手術後 2週 間以内の症 例を除 いた31例を,検 討② ではインス リン使用基準 を 決定後 に施行 した217例を対象 とした。インス リン使用 基準 としては血糖値 が200mg/dl以 上を示 した場合 と した,検 討③ では11例の安定期症例を対象 とした。安 定期症例 は検討期間 において術後 2週 間以内の ものを 除外 し,感 染症,出 血,循 環不全 な ど,生 体 の栄養代 謝系 に何 らかの影響 を与 える と思われ る因子 を有 さ ず,か つ,基 礎疾患 として糖尿病,肝 疾患な どを有 さ ない ものを選 んだ。 IVH施 行方法 IVHは 当教室 において一定基準 に従 い行 ったが', 輸液内容 としては表 1の ごとき,糖 電術質,ア ミノ酸 混合液を維持液 として用い, これに ビタ ミン類,微 量 元素を混 じた。1日 当 り投与 量 は40∼50m1/k宮とし と, ブ 結 果 ンス ン でいかなる症例が高血 リ 非使用下 検討① イ 糖を示す のか。 31症例 の IVH施 行後 1週 間 の最高血糖値 を病態別 に分類 したのが表 2で ある. 汎発性腹膜炎 を ともなった症例では 6例 中 6例 全例 消化器外科 と糖尿病 76(804) 日消外会議 19巻 表 3 高 力Fリ ー輸液時の高血糖出現例の臨床分析イ ンシュリン使用症例 表 1 維 持液 trvt>r-L^+7i/rl' 合併 困子 定例 数 4 5 4 お血穂虚観(%) 23 (42%) i5 (42%) 20 (59%) │ │ ( 6 1 % ) 3 (75%) 3 (100%) 3 ■度外電及粛岳 2 (100%) │ (,00%) 8 5 潰Ⅲ佳夫出糞増悪期 1 ステロイド剤使用働 2 nEq 8 1 hEo 3 重定肝い書 “ I 腎不 全 確最 豪 軸 的 6E! 一 25 循 環 不 全 (含脱水) 4 3 mEq 6 3 d€. I = 3 的 “ 軸 h mE! nE! 一 〇 6 5 3 2 M 的 3 mEq l5 5 3 ︲ 鼓 的 軸 nEt 37 感染遼 。 E 7 3 h 3 16 遠行意 上配の 園子tt球 しないもの (安定期室硯) 構症 例 数 0 217例 (28%) (0%) 67例 (3'%) 表 2 高 カロ リー輸液中の血糖値 (1∼ 7日 ) 膜 局 所 図 l ZIR1/zBS(5min) 定例勢 由4を 建,強 合併 園 子 庫 究 交 一 症 高 カロ リー韓液旋行前 と施行中 との比破 ― ― ― 増 減 士 ―― 胃 臓 管 出 血 に 酸 奏 血 建 舟'性 大B増 類打 遺 行 お 安 定 期 室 硯 81 4号 ,6 が200mg/dl以 上 の高血糖 を示 した。次 いで咽頭炎 な どの局所炎症を ともなった ものでは 4例 中 2例 に,胃 腸管出血 2例 中 2例 に,次 いで,低 酸素血症,膵 部分 切除後症例,潰 瘍性大腸炎増悪期 の症例にも高血糖が 見 られた。 また進行痛症例 では耐糖能を低下 される病 態 とは報告 されていないが,高 率に高血糖を示 した。 一方 これ らを合併 していない ものでは ,10例 いずれ も 高血糖を示 さなか った。 したがって何 らかの耐糖能低下因子を有 しているも のでは高血糖 にな りやす い と思われた。 , 図 2 K値 ― 検討② 全症例217例を耐糖能 の因子 によ り分類 したのが (表 2)で ある (同一症例で重 なった もの も見 られ る).感 染症を ともなった ものでは54例と最 も多かったが,23 例42%に イ ンス リンが使用 された.続 いてカテ ヨラ ミ ン使用症例,胃 腸管出血や脱水を ともなった循環不全 例 で42%を 示 した。腎 不 全 例 で は59%を 示 した。 OGTTで 糖尿病 と診断 された ものの うち61%が 使用 された。重症肝障害,重 度外傷 および熱傷,ス テ ロイ ド剤使用症例,潰 瘍性大腸炎増悪期症例で も高率に使 用 された。進行癌症例 では28%に 使用 されていた。一 2 t %/mtn の変動 商 カロリー輸液施行前 と技行中の比較 ― 77(805) 1986塗 「4月 方 これ らを合伴 していない もの22例はいずれ もイ ンス リンは使用 されなかった。 図 3 K.W.70Y,6 肺 炎 以上 より,IVH中 に高血糖 とな リインス リンを使用 す る症例は耐糖能低下因子を合併 しているものに高率 にみ られた。 検討 3 1VHの 施行により耐糖能 は低下す るか。 耐糖能 は25gブ ドウ糖静脈内負荷試験 (IVGTT)に よ り検索 した。IVGTTを IVH施 行 2週 後 に IVHを 施行 しつつ行 い,IVH施 行前 に行 った もの と比較 し た。 グル コースの血 中か らの消失率 K値 は IVH中 では IVH前 と比べ増加 した (図 1). イ ンス リン初期分泌能 として zIR1/zBS 5min.は IVH施 行中には施行前 より有意 に増加 した (図 2). 以上 よ りIVH施 行 中 の耐糖能 は IVH施 行前 よ り 悪化せず,む しろ改善 がみ られた。 考 察 IVH施 行中に高血糖を来す症例 が多 いが,本 輸液 が のでは術後 イ ンス リンが不 必要 な場合 が あ る こ とを本 シ ンポジ ウ ムで論議 をみた通 りであ る. また ,本 輸液時施行 が潜在的 に耐糖能 を低下 させ る ため に,耐 糖能低下 因子 の合併 が容易 に高血 糖 を来 し やす い とも考 え られ るが,IVGTTを い,施 行前 と比較 した と ころ,IVH施 IVH施 行 中 に行 行中 は,K値 , 生体の耐糖能に影響 し,高 血糖を来す のか否 かを検討 した。 イ ンス リン非使用下 に高血 糖 を来 した症例 は感染 zIR1/zBS 5min.は 両者 とも施 行 前 よ り改 善 が み ら 症,胃 腸管出血な どの各種 の耐糖能低下因子を合併 し ているものが多 かった。一方 これ らを合併 していない 子 の合併 に よるもので,本 輸液 施行 に よるもので はな もの,安 定期症例では高血糖を示 さなかった。こ のよ は高 血 糖 に示 さな い こ とは うに 安 定 期 症 7 1 1 で 文 献 1)板 倉丈 夫,岡 田 正 :高 力 rリ ー ど輸液.外 科 Mook 37: 33--34, 1984 2)Gじ schuke D,Grdzingei V,Nosbaum MT et a■ Belastbarkeit des Glucosestorwechsels bei intravenosen Hyperalimentation.Schiweiz Med GOschuke2),Fidlee3),sanderson4)ら も報告 している。 は皆無であったのに インス リン使用例 は安定期pllで 対 して,各 種 の耐糖能低下因を有 した ものでは高率 に み られた。 このよ うな因子を合併 した場合 にインス リ れ,耐 糖能 は低下 していなか った、 以上 よ り静脈栄養時 の高血 糖 は各種 の耐糖能低下 因 い と考 え られ る。 Wochensch 103 t 1228--1234, 1973 ン不必要であった症例が見 られるのは症例 ごとの各因 子 の程度 の差,あ るいは耐糖能低下因子 に対す る生体 3)Fidlee SM: Glucose,insulin and growth hor・ mon interrelationships during parenterai nutri、 の対応能力 の差 であると思われ る。 例 えば肺炎に よるマ ヒ性 イ レウスのために IVHを 4)SandersOn SM,Dietel M i lnsulin response in 施行 した症例 は感染 の軽快 とともにインス リン必要量 の低下を示 した (図3). また,OGTTで 糖尿病型を示 した症例 で も軽度 の も tion.Diabetes 22 t 319, 1973 patients receiving concentrated infusion of giucose and casein‐hydrolysate for complete parenterai nutrition.Ann Surg 179 i 387-394, 1974
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