Nozomi ウソ

白川望生 「ウソ」 「ウソ」は川崎洋作の詩です。川崎(1930−2004)は詩人でもあり、放送
作家でもあります。彼は数々の名作を残しつつ、七十四歳で惜しまれつつも 他界しました。彼の詩は「ウソ」の様に年配の方でも子供でも楽しめる、面
白く独創的で有名です。 この詩で一番大切なのは、最後の連に隠されているメッセージです。
「冗談のようなホントがあり涙ながらのウソがあってなにがホントでどれが
ウソやら」とある様に、世の中はウソばかりで何が本当で何がウソなのか分
からないと伝えています。「冗談のようなホントがあり涙ながらのウソがあ
る」は人生には、数えきれないほどの残酷な悲劇や皮肉な出来事があり、何
を信じるべきなのか分からない事があると川崎は考えています。 「ウソという鳥がいます。ウソではありません、ホントです。ホントとい
う鳥はいませんが」と最初の連ではウソという鳥がいる事を伝え、 冗談をふ
くませて読者の興味をそそっています。二番目の連では「ウソをつくとエン
マさまにしたを抜かれるなんてウソ、まっかなウソ」とまた「ウソ」と繰り
返しています。三番目の連では「ウソのつかない人はいないというのはホン
トであり、ホントだというのはえてしてウソであり」とウソをつかない人は
いなく、ホントだというのもウソである事を強調しています。四番目の連で
は冗談みたいなホントがあり、涙ながらのウソがあり、何を信じていいのか
全く分からない事を伝えています。
最後の連まで「ウソ」という言葉を反復させて、世間はウソばかりという
ことを強調しています。それを伝えた後に、 最後の連で本当な事もあると伝
えてトーンを変えることによりもっとメッセージを強調しています。「そこ
で私はいつも水をすくう形に両手のひらを重ねそっと息を吹きかけるのです。
この暖かさだけはウソではないと自分でうなずくために。」この連では自分
の息と真実の暖かさを描いています。息を自分の手にそっと吹きかけると、
優しい暖かさが感じられる様に、真実も暖かく優しいです。ただ、その息の
暖かさは周りが寒くないと暖かくは感じられないので、真実も周りがウソば
かりではないと暖かさが感じられません。また、川崎は「息を自分の手に」
と告げている様に、真実は自分の手で確かめないと分からないのです。人生
の中にはウソを使わなくてはいけない時もあり、従って、人間はウソをつく
事を心に刻んで一日一日人生を歩んでいかなければいけないと表しています。
「ウソではないと自分でうなずくために」と最後の文を途中で終わらせてメ
ッセージを強調し、読者に想像させる事になります。 世間はウソばかりで醜いかもしれません。詩でも書いていた様に、ウソを
つかない人はいません。けれども最後の連で書いてある様に暖かい、幸せな
本当の事もあり、それを信じて生きていかないといけません。