第33回の解答・解説

《シリーズ》もしもセンターの問題が東大
仕様で出題されたら(8)
【解答】
のですが、まさか日体大が総合優勝するとは思いも
問1
シベリアでは地下に永久凍土が広がるため、
よりませんでした。日体大は昨年度に総合 19 位と
熱が地面に伝わって傾かないように高床式住居
いう不甲斐ない成績を取ってしまい、監督・選手一
となっているが、遊牧民族が多い中央アジアでは
同、心を入れ替えたそうです。就寝時間をきっちり
ユルトと呼ばれる移動式テントがみられる。(83
守り、食事も残さず食べ、キャプテンも3年生が担
字)
うようになりました。4年生は、
「俺たちの学年から
サンクトペテルブルクは北大西洋海流と偏西
キャプテンを出してください!」と監督に直談判し
風の影響で年較差の比較的小さな冷帯湿潤気候
たそうですが、監督は「俺についてこられない者は
だが、オイミャコンは大陸東部で年較差が大きく
辞めてもらって構わない」と厳しい対応をしました。
冬季には非常に乾燥する冷帯冬季少雨気候とな
結局、退部する4年生はいなかったそうです。やは
っている。(89 字)
り、何かを成し遂げるためには、何かを犠牲にしな
問2
険しい山地地形を避けた低地、主に東ヨーロ
ければならないのだと思います。テレビを見ている
ッパ平原に分布しているが、鉄道沿線・河川付近
時間、友だちとしゃべりすぎている時間、そのよう
にも分布している。旧ソ連の政策によってロシア
な無駄な時間を投げ打って、日体大の選手たちのよ
人の移住が行われたカザフスタン北部にも分布
うに心を入れ替えて、入試までしっかり勉強を続け
している。(90 字)
てください!
問3
問4
A地域は鉄鉱石や石炭の豊富な資源とドニエ
それでは解説に入りましょう。
プル川の水運を利用し鉄鋼業などが発達してい
問1
るが、B地域はタイガを背景とした木材加工や豊
シベリアでは永久凍土が広がっているので、
富な水力資源を利用してアルミニウム産業も発
冬の暖房の熱で永久凍土が溶けてしまうと建物
達している。(90 字)
が傾いてしまうため、建物は高床式にして熱を伝
ソ連崩壊後の経済危機でロシアの消費需要が
わりにくくさせています。高床式の住居は熱帯地
激減したため、対ロシア輸出額が少なく、日本の
域でも通気性を良くするために発達しています。
輸入超過となっていたが、2000 年代の資源価格
一方、中央アジアでは遊牧が主流なので、水や草
高騰に伴いロシアの経済成長率が上昇し、所得水
を求めて家畜を移動させ、移動式テント(ユルト)
準が高まるなかで、日本からの乗用車輸出が伸び
で生活しています。移動式テントは、中国ではパ
たために輸出超過となった。(120 字)
オ、モンゴルではゲルと呼ばれます。
問5
問2
サンクトペテルブルクはDf(冷帯湿潤気候)
ですが、ヨーロッパの西側に位置しているので、
【解説】
新年あけましておめでとうございます!入試まで
西岸気候の特徴を述べておけばいいでしょう。年
残り少ない日々になりましたが、受験生の方はもう
較差が小さいので、夏季の気温は高すぎず、冬季
少しよろしくお願いします。別に受験が終わってか
の気温は低すぎず、といった気候になります。オ
らでもこのサイトをご愛顧してくださっても構いま
イミャコンは世界の寒極とも呼ばれている都市で、
せんけどね(笑)。
北半球最寒の気温を計測したことが有名です。付
近はDw(冷帯冬季少雨気候)に属しているため、
1月1・2・3日は私の大好きな日々です。1日
冬季は寒冷・乾燥という特徴になります。
にはニューイヤー駅伝、2・3日には箱根駅伝があ
問3
るからです。毎年、箱根駅伝の順位予想をしている
1
スラブ系の民族は、基本的には東ヨーロッパ
平原の低地に分布しています。ベラルーシ・ウク
問4
この問題は典型問題ですね。A地域はドニエ
ライナ・ロシア西部などが該当します。ただ、東
プル川が流れている地域なのでドニエプル工業
側へも分布が広がっていることにも言及しなけれ
地域と言います。ウクライナの位置に当たるわけ
ばなりません。古期造山帯のウラル山脈や新期造
ですが、西側にはクリヴォイログの鉄山、東側に
山帯のシホテアリニ山脈などの険しい地形付近で
はドネツの炭田があり、鉄鋼業を中心とした様々
は分布は見られません。また、オビ川やレナ川な
な産業が発達しています。ちなみにドニエプル川
どの河川流域、そして東西の大動脈であるシベリ
には低落差発電も見られます。一方のB地域は、
ア鉄道沿線に分布していることを述べましょう。
高度 500m 程度の高原にあるバイカル湖からアン
「移住」という指定語句は、東部への開拓民の
ガラ川が急流となって流れており、そこにダムを
移住を述べるよりも、カザフスタン北部への移住
いくつか建設することで豊富な水力エネルギーを
を述べて欲しかったです。カザフスタンの民族構
得られる地域となっています。この安価な電力を
成は歴史変動に大きく左右されてきました。帝政
利用してアルミニウム産業が盛んに行われてい
ロシアの支配下に入った 19 世紀以降、ソ連時代
ます。他には、一般的な重工業や木材加工産業も
を通じてカザフスタンへはロシアなど他地域から
発達しています。
の大規模な移住が続きました。他方、1930 年代の
問5 日ロ貿易(日ソ貿易)は、1980 年代前半にピー
遊牧民の強制的定住化・農業集団化の結果、カザ
クを迎えた後、1980 年代後半のペレストロイカ期
フ人人口の多くが死亡や国外逃亡によって失われ、
と 1990 年代の混乱期に低迷を続けました。しか
旧ソ連諸国のなかでも例外的に基幹民族が全人口
し、日本の対ロシア貿易額を示した図3からわか
の半数に満たない共和国となりました。さらに
るように、2000 年代に入りロシア経済が回復を続
1930∼40 年代に諸民族の強制移住が行われた際、
けるなか、日ロ貿易高も増加を続けてきました。
いわば「流刑地」にされたカザフスタンの住民は
日ロの貿易収支は、1990 年代には市場経済への
多様化し、1950 年代、北部で行われた「処女地開
移行ショックによりロシアの消費・投資需要が激
拓」も人口の流入を促進しました。しかし 1970
減したため、日本がロシアへ輸出するべきものが
年代以降はロシア人などの流出が始まり、カザフ
なく、日本の輸入超過となっていましたが、2000
人人口が占める割合は徐々に増え、帝国書院の地
年代に入って、世界的な資源価格の高騰に伴いロ
図帳によると全体の 53.4%まで上昇しています。
シアが経済成長を始め、所得水準が高まるなかで、
主として乗用車輸出が伸びた結果、日本側の輸出
超過に転じました。ただし、グローバル金融危機
の影響により、2009 年の日本の対ロ輸出は激減し、
貿易収支は再び輸入超過に戻っています。
我が国のロシアからの輸入では、かつて 1990
年代はカニなどの魚介類が 25∼30%を占めてい
ましたが、現在ではその比率は1割程度に低下し
ています。代わって原油を中心とした鉱物性燃料
が過半数を占めるようになっています。また、
2009 年からは、サハリン2プロジェクトの稼働に
より日本への天然ガス輸出が始まりました。ロシ
2
アから我が国への輸出で石油や天然ガスの比重
が高まってきていることは、ロシアの産業構造が
石油と天然ガスを中心とした資源依存型になっ
ていることと合致しています。今後は、サハリン
での天然ガス開発の進展により、我が国への天然
ガス輸出が本格化することや、西シベリアの石油
を太平洋岸まで輸送するパイプラインが完成し、
石油輸出も増大することが予想されることから、
この体質はさらに深まることが予想されます。
ここまで読んでくださった方、お疲れ様でした。
次回はどういう問題になるかわかりませんが、ま
たお会いしましょう!
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