平成 27 年 11 月 8 日 平成 28 年度メディカル・カレッジ青照館(理学療法・作業療法・言語聴覚療法)学科 高校推薦入学試験A日程〈小論文〉 次の記事を読み、感想を述べなさい。あなたがセラピストとして仕事をするとき、さまざまな障害や背 景のある人々と出会うことになるはずです。そのことに関する心構えも含めて述べてください。 (800字以内) 「カチャン」。水切りかごの中で皿や茶わんがわずかに触れ合った瞬間、身がすくむ。千葉県の主婦宮本久 美子さん(33)=仮名=にとって、台所での洗い物は自分との戦いだ。 「栄養ドリンクを飲み、気持ちを奮い立 たせることもある」と話す。 小学生の頃、音楽の授業で使う笛やカスタネットの音が苦手だった。自分の五感に「他人とは違う何か」が あると気付き、中学2年の時に発達障害と診断された。 一対一での会話はできるが、数人でお茶を飲んだりすると「全員の声が入り交じり、目の前の人と何を話し ているのか分からなくなる」。就職は諦めざるを得なかった。 2011 年に結婚。車が行き交う通りや駅の雑踏を避けるため、夫婦で郊外に引っ越した。 外出時には、周囲の音を打ち消すためにヘッドホンや耳当てを着けたが、あまり効果はなかった。スーパー では、なるべくゆっくりとした BGM が流れる時間帯を狙って買い物をするようにしている。 肌に直接触れる素材にも敏感だ。綿 100%以外の服を一日中着ていると、疲れて寝込んでしまうほど。下着 のタグもチクチクして我慢できない。 発達障害の人は、視覚や聴覚など感覚過敏の特徴を持ち合わせていることが多い。文部科学省の科学研究費 で筑波大と東大は昨年 12 月、フィールドワークを実施。26 人の参加者が都心を歩きながら、気になる場所を 写真や動画で撮影した。照明、エアコンやエスカレーターなどの機械音、他人の足音…。中には「壁のポスタ ーがずれていて、落ち着かない」という人もいた。 川崎市の竹内篤さん(38)は、夜間になるべく出歩かないようにしている。駅前のドラッグストアやカラオ ケ店、パチンコ店から流れる音楽や、呼び込みの声が頭の中で響き、ネオンが目に入ると頭がクラクラして立 ちすくんでしまうからだ。いざという時のために、ペットボトルの水と向精神薬が手放せない。 10 年前にアスペルガー症候群と診断された。2年後に仕事を辞め、うつ病で入院を繰り返した。 「音や光か らは逃げられても、感じ方を変えることはできない。ならば自分自身を受け入れて、生きるしかない」 ・メモ 長崎大の岩永竜一郎准教授(作業療法学)によると、発達障害の人は自分の感覚過敏に気付かないまま生活 していることも多い。学校や職場で集中力が続かずに「我慢が足りない」「わがままだ」と誤解される一因に もなっている。市販のチェックシートなどで五感の特徴を調べることができる。 「凹凸のある私、発達障害を生きる(3)2015.5.9 熊本日日新聞夕刊より)*共同通信の配信記事
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