関心・意欲・態度の評価について 横浜国立大学教授であった中村祐治先生に「関心・意欲・態度」の評価について研修会で 講義をしていただきました。中村先生からは「関心・意欲・態度」を一時的に表出した行動 や態度(提出物のチェック,忘れ物の回数,私語の有無,授業態度,挙手の回数)で評価す るのでなく,生徒がワークシートに記載することで,育った姿(育てた姿)を記載内容から 読み取る評価方法を紹介していただきました。 詳しくは 開隆堂出版株式会社 編著者 中村祐治他 3 名 『これならできる 授業が変わる 評価の実際 「関心・意欲・態度」を育てる授業』 をご覧ください。 関心・意欲・態度の評価 関心 (生活や技術に関する関心,材料・情報に対する関心) 意欲 (自ら進んで学習【調べ・表示・考え・操作】などをしようとしている意欲) 態度 (技術を生活で活用する態度,生活を充実向上するために実践していく態度) 関心・意欲・態度の性格 ①見えにくい ②個人差がある ③学習意欲の喚起につながる ④学習成果を生かす実践力につながる ⑤積み重ねが必要で学力醸成に時間がかかる(指導により形成され育つ学力) 関心・意欲・態度は見えにくい 見えないものだが,大切な評価の観点,学習活動で育てる観点 Ⅰ内面を見とるのは困難だから表出したもので読みとる Ⅱ関心・意欲・態度を分けてみる Ⅲ授業単位でなく,長いスパンでみる Ⅰ 内面を見とるのは困難だから表出したもので読みとる 関心・意欲・態度の読み取り 「 関 心 ・ 意 欲 ・ 態 度 」 は ,「 知 識 ・ 理 解 」,「 技 能 」,「 工 夫 創 造 」 に か か わ る 技能,知識,理解 学習活動 再生・復元 みなし 意欲付け(外発的) 関心・意欲・態度 (内発的) 工夫し創造 学習活動 変 容 個人内評価 選択・生み出し みなし 意欲付け(外発的) 関心・意欲・態度 (内発的) 変 容 個人内評価 「 関心・意欲・態度」他の観点での「みなし」 規準表の表現から 関 考えようとする 工夫し創造 各観点の 心 しようと ・ した行動 意 調べようとする 知識・理解 に表れた 欲 成果を ・ みおなし 態 操作,処理,実践 度 しようとする 技 能 規準で設 定 取り組んでいる Ⅱ 関心・意欲・態度を分けてみる 関心・意欲・態度を分離したら 醸成する力 関 心 技術そのものに関する関心 エネルギー・ 材 料 ・ 情 報 モラル等 に 関 す る 関 心 意 欲 学習を推進するエネルギー 自ら進んで学習,意欲的に活用・調べ・ 表示・考え・操作 態 度 技術を活用する態度 生活を改善する実践的な態度 一時的な力 授業への関心 提出物・宿題 授業参加への意欲 発言や挙手の回数 授業を受ける態度 忘れ物・私語・遅刻 学力として育成された関心・意欲・態度の読み取り 学習活動の流れ 導入 授業過程 まとめ 関心(技術と生活) 気づき 変 容 醸成されていく変容の読みとり 意 欲 実践での技能,知識・理解での「みなし」 意欲として見なせる行動パターンの読みとり 態 度 学習過程すべての学習場面で少しずつ徐々に醸成されていく 終末時点または過程後の読みとり Ⅲ 授業単位でなく,長いスパンでみる 授業での読みとりと変容の違い 学習活動の流れ 導入 展開 C C C C B B C B B 各授業時間ごとに 評 まとめ B A A 価 A B 評価資料を得て平均する C A A 変容をみとり評価する Bと評価するか,Aと評価するか どう捉えるか→長いスパンで学習変容を読みとる 少ない評価資料で済む長いスパンで評価する (授業本来のねらいの達成や支援活動に集中するため) 関心・意欲・態度の読みとり 記載内容の変容の読みとりの視点 関心・意欲・態度 情意的記載 記載内容の質 記載内容の量 ノートの記載内容の変容からのみとり ・表現内容の量的な変化 ・表現内容の質的な変化 広がり 深化や発展 メリットとデメリット等の比較 具体例を出す。 他の内容との連動 ・次課題の具体的な目標 ・記載内容の量 記載量が増える ~な感じだった ~できた,~できる ~したら~になった (やり方,名前など)がわかった ・記載内容の質 具体的な記述 気づき・発見 原因・理由・しくみ(~だから 技術の必要性/目的 うまくいく/失敗する) ~のために 学習以外への広がり 生活との結びつき 比較した内容 比べて~だった,違いがある,いろいろある 生じた疑問 なぜだろう?どうしてだろう? ・情意的変容の記載 前向き・積極的 もっと,やってみたい,~したい,まだ 生活で,使ってる 以前の自分と比較して 興味を持った,すごい,びっくり,おどろいた がんばって,好きになった 一文が「しかし,だけど」前は,前より,以前は,最初は,初めは につながる分になる ~だったけど,~になった 平面的が深みを増す 4観点の性格とは? 頭脳 記憶・思考・判断 認知領域 分かる・知る・考える・判断 手足・身体 身体的 活動 知識・理解 活動 運動神経領域 道具等を使いできる 心情・気持ち 情意・推進 情意領域 思考・判断 活動 技 能 表 現 関心・意欲 心情が態度・行動に表れる 態度 ふり返りの機能 ①毎授業をふり返り,各授業での学びを確認する ②授業後との学びをふり返り集積し,集積から見えてくるものを学ぶ ③学習全体をふり返り,整理・まとめたりして,学びを再構築し,題材でねらう学力を 確認する ④最終段階で初期の学びをふり返り,自分の変容を知る ⑤学習をふり返り,次の目標を定めたり,学習成果を生活に生かす ⑥①~⑤のふり返り,次の目標を定めたり,学習成果を生活に生かす ふり返り ①~④の関係 初 ① ① ① ① ① ① ① ① ま 発 授 授 授 授 授 授 授 授 と の 業 業 業 業 業 業 業 業 め 学 ↓↑ ↓↑ ↓↑ ↓↑ ↓↑↓↑ ↓↑↓↑ の び ②集積した学び ②集積した学び 学 び ふ り 返 り ④変容で ねらいに迫る ③再構築でねらいに迫る ワークシートの記載からの評価 学 習 す る 題 材 で 関 心 を 向 け さ せ た い ” キ ー ワ ー ド ”(「 材 料 っ て 何 だ ろ う ? 」「 コ ン ピ ュ ー タ に で き る こ と 」「 工 具 」 な ど ) を 考 え , キ ー ワ ー ド に つ い て 感 じ た こ と を 「 題 材 初 発 の 感 想 」 「 授 業 後 と の 感 想 」「 題 材 終 末 の 感 想 」 の 3 種 類 の ワ ー ク シ ー ト に 記 載 さ せ ,「 題 材 初 発 の 感 想 」「 題 材 終 末 の 感 想 」 を 並 べ て 変 容 を 読 み 取 り 関 心 ・ 意 欲 ・ 態 度 」 を 評 価 す る 。 読み取りの評価基準 順 読み取りの視点 読み取りたい変容 評 量 の 減 少 ・ ○ふり返りがなく記述の量が減った 量 同等 1 の ○単語が文章になったため記載量が減少した。 (量でなく質で読み取り,変容を判断する) 段 増 量の増加 階 減 ○知識等が広がり,単語数・文書量・行数等の記載量が増加する。 C (名称の羅列,思い出し,単なる感想) 学 習 し た 内 ○気づきや思いが意識されるようになって学習内容と結び付き,知 容の記載 質 識量が拡大し,学習した内容の記載が見られる。 (「 働 き か け 」 の 言 葉 や , 授 業 で 学 習 し た 用 語 が 記 載 さ れ て い る ) 2 の 段 変 学 習 外 の 内 ○学習した内容以外にも目が向き,興味の広まりや深まりの記載が B 階 化 容の記載 見られる。 ( 学 習 し た 内 容 以 外 へ の 新 た な 気 づ き ・ 発 見 ・ 知 識 ,理 解 の 深 ま り , 学習した内容との比較,観察の様子) 知 識 等 が 気 ○知的好奇心,生活との結びつけ,新たな疑問などの記載が見られ 持ちへと移 情 る 意 る。具体的な興味や驚き・感動のように,感情について記載が見 られるようになる。 ○社会への目を向ける気持ちの芽生えや具体性を伴った感覚的な記 3 的 載が見られる。 段 な 階 内 態 度 や 行 動 ○具体的に行動しようとする態度や行動の記載が見られる。 容 へと変化 (学習成果を生活に生かそうとする態度,自分なりの価値観をもっ A の てよりよい方向へ向上使用とする態度,前向き・積極的・持続的で 有 あろうとする決意,授業への期待など) 無 概念変化 ○技術や生活あるいは技術分野や家庭分野の内容への本質に迫る概 念(考え方)の変化,社会や将来の技術や生活を大切に考えるな どの記載が見られる。 ○教科のねらいにそう個性的な進展が見られる記載が見られる。 「材料って何?」をキーワードに読み取りをした具体例 順 読み取りの視点 記述例 評 量の減少・ 量 同等 (質の変化がみられない) 1 の 段 増 量の増加 階 減 C (領域の広がりを読み取れない) 学 習 し た 内 ・木材には繊維方向がある 容の記載 質 ・合板や集成材など,いろいろな種類がある ・木材には,針葉樹と広葉樹がある 2 の ・材料には木材・金属・プラスチックがある 段 変 学 習 外 の 内 ・材料にあった工具の使い方がある 階 化 容の記載 B ・金属には繊維がない ・他にはゴム,布,ガラスなどの材料がある ・針葉樹は建築材として使われることが多い ・建物にも木材が使われている 知 識 等 が 気 ・自分の家でいろいろな木材を見つけた 持 ち へ と 移 ・通学路でいろいろな材料を見つけた 情 る ・家のリモコンにはどんな材料が使われているだろう 意 ・金属の棚の方が丈夫そうに感じる 3 的 ・木の肌ざわりは思ったよりいいな 段 な 階 内 態 度 や 行 動 ・自分でも材料を見つけにいった 容 へと変化 ・材料の形に合う工具を選ぶようになった の ・ 木 材 の 勉 強 を し た ら 100 円 シ ョ ッ プ に 行 っ て 木 の 製 品 を 買 う よ う 有 になった 無 概念変化 ・目的に合う材料を選ぶことが大切 ・その場所に適した材料を選ぶべきだ ・以前は木なんてみんな同じだと思っていたけど,合板とか集成材 とかいろいろな種類があって,それぞれ使い分けるのが大事だと 思うようになった。 A
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