平成 28 年 8 月 29 日 No.550 相続税の誤りやすい事例について 平成 27 年 1 月 1 日以後に開始した相続から相続税の基礎控除額が大きく引き下げらました。そのため、相続税の申告件数は 相当数増加することが予想されます。相続財産が自宅不動産と一定の金融資産だけであっても相続税の申告義務が生じるようなケ ースでは、相続人自らが相続税の申告を行うことも考えられます。 そこで、国税庁のホームページでは、相続税の申告書作成時の誤りやすい事例集(平成 28 年分用)を公表し、注意を喚起して います。そこで、そのうちから 4 つの事例について紹介することとします。 事例 1. 私(国税信二郎)は、兄(国税信一郎)の死亡に伴い、妹(税務幸子)とともに兄の財産を相続しました。 なお、兄の法定相続人は、私と妹の2人です。 【誤】 私と妹は、兄の法定相続人であるので、2割加算の対象とはならないと考え、第1表の「⑪相続税額の2割加算が行われ る場合の加算金額」欄は記入しませんでした。 【正】 兄弟姉妹は、被相続人の二親等の血族であり、一親等の血族に該当しないため、2割加算の対象となります。 したがって、第4表を作成の上、第1表の「⑪相続税額の2割加算が行われる場合の加算金額」欄に第4表で計算した相続 税額の加算金額を記入します。 事例 2. 私(国税花子)は、夫(国税太郎)の死亡を保険事故として、平成 28 年7月 11 日に△△生命から死亡保険金 1,400 万円を受け取りました。 また、当該保険契約について、夫が支払った前納保険料 150 万円を併せて受け取りました。 【誤】 第9表の生命保険の受取金額に 1,400 万円と記入しました。 また、前納保険料の払戻金額(150 万円)は保険金ではないことから、第9表に記入した受取金額 1,400 万円には含め ず、第 11 表に記入しました。 【正】 みなし相続財産とされる保険金には、保険金ととともに払戻しを受ける前納保険料も含まれるので、第9表の受取金額に は前納保険料を加算した金額(1,550 万円)を記入します。 (保険金) (前納保険料の払戻金) 1,400 万円 + 150 万円 = 1,550 万円 事例 3. 相続人である私(国税二郎)は、父(国税太郎)の死亡後、父の所得税の準確定申告書を提出し、所得税の還付金(25 万円)を受け取りました。 【誤】 所得税の準確定申告に係る還付金は、父が亡くなった後に相続人である私が手続をとって支払を受けたものであることか ら、相続財産ではないと考え、第 11 表に記入しませんでした。 【正】 所得税の準確定申告に係る還付金は、被相続人(父)に帰属する財産であり、相続財産に該当するため、第 11 表に記入 します。 (注)1 後期高齢者医療保険料や介護保険料の還付金なども相続財産に該当します。 2 被相続人の所得税の準確定申告で納付することとなる所得税は、相続財産の価額から差し引くことができる債務となり ます。 事例 4. 私(国税花子)は、夫(国税一郎)の死亡に伴い、夫の財産(土地・建物)を相続しました。自宅である土地・建物は5 年前に購入したもので、住宅ローンの残高は相続開始日現在で 800 万円ありました。 なお、住宅ローンの残高は、団体信用生命保険契約により、後日、返済が免除されました。 【誤】 第 13 表の債務の明細に、相続開始日現在の住宅ローン残高 800 万円を記入しました。 【正】 団体信用生命保険契約により返済が免除される住宅ローンは、相続人が支払う必要のない債務ですので、第 13 表には記 入しません。 以上のほか、養子縁組が行われている場合の取扱い、名義預金の判定、生命保険契約に関する権利などの課税関係が事例で 紹介されています。 (担当:山本 和義)
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