成瀬正樹:スーパー・ギタリスト・ファイル ギターを演奏する人なら誰でも憧れるスーパー・ギタリスト。彼らがスーパーである所以は、その華麗なるテク ニックだけではありません。ギター本体やアンプ・セッティング、そしてエフェクターなどによって作られるギ ター・サウンドそのものが魅力的であるからこそスーパーなのです。Reason 4 にはそうしたギター・サウンド をシミュレートするためのギアが豊富にそろっています。本セミナーでは、スーパー・ギタリストたちのサウン ド・メイクをアナライズしつつ、それを Propellerhead の Reason 4 によって再現することを試みてみましょ う。 第 6 回:デレク・アンド・ドミノス(エリック・クラプトン) ( 2009 年 3 月 2 日 ) 「いとしのレイラ」 スーパー・ギタリストのサウンドをアナライズし、シミュレートにチャレンジする本コーナー。今回は、先ごろジェフ・ ベックとの夢の競演を日本で果たし、話題を振りまいたエリック・クラプトン! 取り上げる曲は、デレク・アンド・ド ミノス時代に発表され、その後もクラプトン・ライブでの大定番となった「いとしのレイラ」です。ギターの神様の大有 名曲ということで、この曲についてアナライズをするのは畏れ多かったりもしますが、だからと言って参考にしないのは もったいない!(それくらい素晴らしいってことで)リスペクトしつつチャレンジしてしまいましょう♪ この曲でのサ ウンド・メイクは、セクションによってきめ細かに施された、という感じではないので、全体を通してと言えるのですが、 特に、あの印象的なイントロ部のサウンドをイメージしていきましょう。 ■クリーム時代の反動? レイドバック・サウンド まずは原曲のサウンドのアナライズです。ギブソンの SG をフル 10 にしたマーシャルの JTM45 につなぎ、ファット& ロング・サステインなトーンで弾きまくっていたクリーム時代とはまるで真逆となるのが、この時代のクラプトン・サウ ンド。トレブリーでサステインもかなり控えめ(敢えてそのように設定されていたハズ)。アメリカ南部の音楽に魅了され、 サウンド指向もレイドバックしていた頃です。 ギターは“ブラウニー”と呼ばれる、1956 年製2トーン・サンバーストのフェンダー・ストラトキャスター。ピックア ップはセンター&リアのハーフトーンを選択(ライブではセンター使用が多い?)。ブリッジはベタ付けで、リア側ハーフ トーン独特のウォームかつトレブリーなサウンドが最大限引き出されています。アンプはフェンダーの小型チューブ・ア ンプのチャンプ。このアンプをフルボリュームで鳴らしていたようなのです。そのサウンドは、小型アンプなので低域は かなり少なめ、ただし、中域は十分で、フルアップされたチューブ・アンプ独自の倍音成分が高域と程よく絡み合ってい ます。これで、クラプトン側のサウンド・メイクは以上! あとは、マイクで音を拾い、ミキサー側でプレート・リバーブが施されています。ただし、アルバムで聴かれるサウンド、 という意味ではこのリバーブ処理の影響は大! マイルドなプレート・リバーブを加えることは、音を似せる上でのひと つの大事なポイントと言えるでしょう。 あと、今回シミュレートしていませんが、本アルバムで無視ができないのがゲストのデュアン・オールマン。使用ギター はおそらく、ギブソンのレスポール・ゴールド・トップ。1957 年型ハムバッカーを付けていて、リア・ピックアップを 使用しているかと。これも恐らくなのですが、アンプはフェンダー(ごめんなさい、機種名は不明)。クラプトンとは対照 的な、サステイン成分十分なファットなサウンドで、こちらもやはり要チェックでしょう。 ■歪みエフェクターをブースター的に活用! さあ、シミュレートです。今回もまずは NN-XT(サンプラー)を立ち上げて基本となるギター・サウンド探しから。スト ラト・サウンドを探すと、トレモロなど、エフェクターの掛かったサウンドなどいろいろと見つかります。なかでも比較 的素直なトーンを持つ“Strat Edge”を選択。しかしこのサウンドは、その名の通り若干エッジが立っているし、軽く歪 み感も加味したいところ。なので、歪みモノのマルチ的存在である SCREAM 4 を立ち上げて、基本サウンドを出してい る NN-XT の後ろにつなぎます。SCREAM 4 では、歪みの軽い“BadGETubes”のパッチを選択して[TUBE]をセレク ト、歪みは控えめ&レベルは上げ気味に設定し、 「歪ませる」というよりは、チューブによる飽和感を加えてナチュラルに 軽く歪んだかのようなサウンドを目指します。歪みエフェクターのブースター的活用ですね。さらに、SCREAM 4 のイ コライザーで、イメージしている小型アンプらしく、低域[LO]をザクっとカット。あと、トレブリーさを求めているとは いえエッジがちょっと立ち過ぎているので、高域[HI]を少しカットします。そして、ミドル[MID]を若干持ち上げ、ハーフ トーンの持つクセを演出します。また更に、SCREAM 4 の[BODY]もオンにしてレゾナンス[RESO]を加えて、サウンド 全体にリッチ感を与えます。 以上でストラト&フェンダー小型アンプによるサウンドのシミュレートの出来上がりです。イメージの基としているサウ ンドがシンプルなので、やはりシミュレートさせるエフェクターの数もシンプル! ラメーター)をいじりまくる! ただし、似せるためには各ツマミ(パ って感じです。さて、次に仕上げとして、リバーブを加えます。リバーブは、ギター・ アンプのリバーブ使用とは違うので、ギター・サウンドを一旦ミキサーに送り、ミキサーのセンド/リターンにつないだ リバーブを用いる、という手法を行います。リバーブは RV7000 の“ALL Warm Plate”を選択。 「暖かなプレート(・ リバーブ)」と、求めているモノそのものズバリな名を冠したパッチです。リバーブの量は、まずリバーブ側のレベルは目 一杯上げた状態にしておき(Dry・Wet の“Wet”側に振り切る)、ミキサーの AUX のレベルで調節するといいでしょう。 ■セッティングの確認 接続順は“ギター→ブースター(歪み)→ミキサー”で、ミキサーのセンド/リターンに「リバーブ」、つまり「NN-XT →SCREAM 4→Mixer(+RV7000)」となります。 NN-XT ストラトのサウンドである“Strat Edge”を選択。 Scream 4 DAMEGE CONTROL(歪み)は低めで 10 時辺りに設定し、MASTER(レベル)は高めで 2 時半くらいの位置に 設定。パッチは“BadGETubes”で[TUBE]を選択。イコライザーはオンにして、[LO]が-30、[MID]が+18、[HI] が-10 ほどに設定。さらに[BODY](共鳴)をオン、[TYPE]は A で、ほかの各ツマミは 12 時辺り。 RV-7000 リバーブ・タイプは“ALL Warm Plate”を選択。Decay は 80、HF Damp は 20、HI EQ は-10 くらいに設定。 DRY/WET は WET 側に振り切り、ミキサー側でリバーブの量を決める。ミキサーの RETURN は 100、AUX(セ ンドの量)は 25 くらい。 では、ここまでの接続と設定を、Reason 4のパネルで図示しておきましょう(図 1/図 2)。 図1 フロント・パネル 図2 リア・パネル ■MIDI プログラミングについて MIDI でのギターの再現の注意点はこれまでにも紹介してきましたが、その再現がリード・プレイとなると、難しさは一気 に跳ね上がります。特に、クラプトンのように歪み度が低いと、プレイ・ニュアンスがよりサウンドに反映されやすく、 ピッキングの強弱(ベロシティ)、サステインの長さ(デュレーション)などの設定が、よりシビアになるワケです。チョ ーキングにしても、素早く上げる場合、ゆっくりと持ち上げていく場合などいろいろとあるので、ベンド・データの設定 にもバリエーションが必要となります。とにかくまず、クラプトンのプレイを良く聴いて、自分が「いいな!」と思った ところに着目してください。そしてそれから、そのプレイを MIDI で再現するためにどうするのか、発音のタイミングは? ベロシティは? デュレーションは? と、1 つ 1 つの設定についてイメージしてみることです。かなり地道な作業にな ると思いますが、自分の感じるクラプトンらしさを具体的に(データに置き換えられるように)、見つけられることが一番! 例えば、チョーキングにはタメが入るとか、速く弾く時は一定のスピードではなく、徐々に加速していくところなどなど ……まずは「良く聴いて」みることから始めてみましょう!
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