育休終了から 1 年以内は原則違法

事務所通信 6 月号
育休終了から 1 年以内は原則違法
厚生労働省は 3 月、
「妊娠・出産・育児休業等を契機とする不利益取り扱いに係
るQ&A」を公表しました。
妊娠した女性社員が降格処分を受けた事案に対して昨年最高裁で初めて判断が
示されたことを受けて、厚生労働省は今年 1 月、妊娠等を理由とした不利益取
り扱いについて新たな解釈通達を出しました。
新通達では、妊娠等と不利益な取り扱いの時期が接近していれば、一部の例外
を除き、妊娠等を理由に不利益な取り扱いが行われたと判断すると示していま
す。
妊娠等を理由とした不利益取り扱いは違法
労働者側に因果関係の証明責任あり
新通達
妊娠等を契機とした不利益取り扱いは違法
時間的に近接しているかどうかで判断
事業者側に例外に該当することの証明責任あり
基準(抜粋)
・妊娠等の事由の終了から 1 年以内なら違法
・1 年を超えていても、定期的におこなわれる人事異動などでは事由の終了後、
最初のタイミングで降格などが行われた場合は違法
基準(抜粋)
経営状況を理由とする場合、債務超過や累積赤字など経営に関するデータを求
める
本人の能力不足などを理由とする場合、妊娠等の報告前に問題を指摘し、改善
の機会を与えていたか、同じようなケースで他の労働者にどのように対応した
かを調べる。
例外①
業務上の必要性から支障があるためやむを得ない場合で、
その必要性の内容や程度が法の趣旨に実質的に反しないものと認められるほ
どに、不利益取り扱いにより受ける影響の内容や程度を上回ると認められる特
段の事情が存在するとき
基準(抜粋)
直接的な影響だけでなく、間接的な影響(降格に伴う減給など)も説明したか。
書面など労働者が理解しやすい形で明確に説明したか。
例外②
契機とした事由またはその取扱いにより受ける有利な影響が存在し、かつ、労
働者がその取扱いに同意している場合で、
有利な影響の内容や程度がその取扱いによる不利な影響の内容や程度を上回
り、事業主から適切に説明がなされる等、一般的な労働者であれば同意するよ
うな合理的な理由が客観的に存在するとき
基準(抜粋)
直接的な影響だけでなく、間接的な影響(降格に伴う減給など)も説明したか。
書面など労働者が理解しやすい形で明確に説明したか。
特集 1 介護経験のある労働者に調査
仕事と介護の両立に本当に有効な制度は?
高齢化社会の進展にともない、家族の介護と仕事の両立が困難になり退職して
しまう人が年々増えています。今後、社内で重要なポジションにいる働き盛り
の社員が次々と介護のため退職する事態も予想され、仕事と介護の両立支援は
企業にとって待ったなしの課題と言えます。どうすれば両立が可能となるの
か?どのようなニーズがあるのか?実際に仕事をしながら介護をした経験の
ある労働者を対象におこなわれた調査結果をヒントに、自社の両立支援制度を
見直してみましょう。
労働政策研究・研修機構が 1 月 23 日、「仕事と介護の両立に関する調査」結
果速報を公表しました。これは、同居および別居の家族・親族を介護している
男女 20~59 歳 2,000 名を対象におこなわれた調査です。
介護休業制度に
介護離職の抑制効果あり
家族を介護する労働者を保護する制度として代表的なものは介護休業制度で
す。
今回の調査では、勤務先に介護休業制度がある場合※や実際に介護休業を取得
した経験がある場合は、離職や転職の割合が大幅に低くなるという結果がでま
した。
※ 会社に介護休業制度が整備されていなくても介護休業は法律ですべての事
業所に義務付けられています。
介護休業の利用者は非常に少ないため、これまで介護休業の効果を示すデータ
はありませんでしたが、今回の調査により介護休業制度に介護離職を抑制する
効果がありそうだということがわかりました。
3 か月は十分?足りない?
法定の介護休業制度は 3 か月(93 日)です。介護は先が見えず、長い場合は
10 年以上に及ぶこともありますが、介護休業は育児休業に比べて非常に短い
期間となっています。
会社によっては法定を超える制度を設けており半年や 1 年以上の介護休業が
取れるところもあります。また現在、介護休業期間を延長するよう法改正も検
討されているところです。
介護経験にある人たちから見て、この 3 か月という期間は十分だったのでしょ
うか?それとも足りなかったのでしょうか?
調査では、法定を超える「3 か月超」の介護休業期間が勤務先で認められてい
ても、法定期間の「3 か月」の勤務先とくらべて離職や転職の割合はそれほど
変わりませんでした。
希望する介護休業期間をたずねてところ、「わからない」と答えた人が 47.8%
と最も多く、次いで「93 日以内」つまり法定通り 3 か月以内を希望した人が
15.1%でした。
分割して取得したい
法定の介護休業は、原則 1 回しか取得できない点が利用しづらいと指摘されて
おり、法改正の検討事項として分割取得を可能にする案も出ています。
この点について今回の調査では、勤務先で介護休業を分割取得できた場合は、
できなかった場合にくらべてわずかに離職や転職の割合が低くなるという結
果がでました。
分割できる期間の長さの希望については、
「わからない」が 37.2%と最も多く、
ついで「3~4 日程度を複数回」が 26.9%でした。
介護休業期間を延ばすことよりも、短い期間で複数回の休みを取得できる方が、
労働者のニーズにかなっているといえるでしょう。
2 週間以内が最多
介護のために 1 週間を超えて連続して仕事を休んだ経験がある人の割合は、介
護開始時に正社員だった人のうち 15.1%でした。認知症による見守りが必要な
場合や、介護の準備・手続きを担当した場合、介護サービス料を利用できなく
なった場合はその割合が高く、介護取得経験割合も高くなっています。
しかし、1 週間を超えて休む場合でも、その日数は「2 週間以内」だった人が
最も多く、75.0%でした。
法定を上回る 3 か月超の介護休業制度は安心材料にはなるものの、実際に利用
されるのは 1~2 週間がほとんどということでしょう。
<法定の制度>
※それぞれ対象外となる労働者あり
介護休業
対象家族 1 人につき原則 1 回、93 日。
介護休暇
対象家族 1 人につき年 5 回、2 人以上の場合は年
10 日の休暇。1 人単位で取得できる。
介護のための
残業時間の制限
請求により、月 24 時間、年 150 時間を超える残業
を制限。
介護のための
深夜業の制限
請求により、深夜労働を制限。
介護のための
短時間勤務
介護休業と合わせて 93 日以内。
<給付>
介護休業給付
休業前賃金の 40%相当額を最大 3 か月分支給。
<法定の制度にプラスαするなら>
介護休業制度の拡充
分割して取得できるようにする、賃金を一部保障す
るなど
※法定を超える休業や賃金保障が多い場合は介護休業給
付が支給されないことがあります。
残業免除・
休日労働免除
法定の残業制限ではなく残業免除
積立年休
利用しないまま 2 年たち権利が消滅した年休を、介
護目的に限って積み立て利用できるようにする。
フレックス
タイム制度
自分で時間を調節できるので介護の都合に合わせ
て働きやすい。
在宅勤務制度
見守りが必要な介護に有効。通勤時間を介護に当て
ることも可能。
所得補償の有無で変わるか
法定の介護休業は有給で与えることまでは求めておらず無給でもかまいませ
ん。※
しかし、会社によっては有給の介護休業制度を設けているところもあります。
調査では、介護休業中「所得補償なし」と「一部保障」では離転職割合に差が
あり、「所得補償なし」の場合に転職割合が高くなることがわかりました。し
かし、「全額補償」と「一部保障」では離転職割合にほとんど差がありません
でした。
介護休業を取得しなかった理由
勤務先で介護休業を取得しなかった人が、その理由として最も多く上げている
のは「普段の休日や休暇で対処できた」(37.4%)です。しかし、離職者に限
定して見ると、
「勤務先に制度がなかった」が 37.9%と最も多くなっています。
「職場に取得者がいなかった」の割合も相対的に高くなっています。
所定外労働の免除が効果あり
法律では、介護休業以外に、介護のための短時間勤務制度や所定外労働の制限、
深夜業の制限などを定めています。
介護休業制度がある勤務先において、介護のための短時間勤務制度がある所と
ない所では離職や転職割合におおきな差はありませんでした。
しかし、勤務先に残業や休日労働を免除する制度がある場合の離転職率が
8.1%なのに対して免除制度がない場合では 20.9%と、約 13 ポイントの差が生
じていました。
残業や休日労働の免除制度には介護離職の抑制効果があると言えるでしょう。
介護休業を取得しなかった理由
(介護開始時正規雇用)
グラフ タイトル
職場に取得者がいなかった
家族の支援やサービスで対処できた
勤務先に制度がなかった
普段の休日や休暇で対処できた
0
系列4
ブルー(系列 1)
離職
オレンジ(系列 2)
グレー(系列 3)
黄色
(系列 4)
転職
継続
全体
0.5
1
系列 3
1.5
系列 2
2
系列 1
2.5
3
3.5
4
4.5
特集 2 対象者は?
報酬になるもの
/ ならないものは?
算定基礎届の提出時期になります
毎年 7 月は「算定基礎届」の提出時期です。社会保険は被保険者が会社から受
ける給与等(報酬)を等級区分にあてはめて「標準報酬月額」を決定し、保険
料や給付額の計算をおこないます。実際に貰っている報酬と、すでに決定され
ている標準報酬月額がかけ離れないように、毎年 1 回、標準報酬月額の見直し
が実施されます。この手続きを「定時決定」といい、その提出を「算定基礎届」
といいます。大切な手続きですから、ポイントを確認しておきましょう。
入社手続きを忘れていませんか?
算定基礎届の対象となるのは、その年の 7 月 1 日現在の被保険者です。ただし、
次のいずれかに該当する人は除かれます。
算定基礎の対象にならない人
①6 月 1 日から 7 月 1 日までの間に被保険者となった人
②4 月、5 月、6 月のいずれかに昇給などで固定的賃金が変動し、7 月、8 月、9
月のいずれかの月に「月額変更届」を提出する人
③7 月、8 月、9 月いずれかの月に「産前産後休業終了時報酬月額変更届」また
は「育児休業等終了時報酬月額変更届」を提出する人
入社・退社の手続きを忘れている社員がいないかどうか、また、4~6 月の間に
昇給や通勤手当の変更などをした人がいないかどうか、確認しておきましょう。
報酬の計算
算定基礎届では、4~6 月に被保険者に支払った報酬を届け出ます。
この 3 か月の報酬の平均を、一定の幅で区切った等級にあてはめて、新しい標
準報酬月額が決定されます。たとえば、3 か月の報酬の平均が 23 万円以上 25 万
円未満の人の標準報酬は「24 万円」となります。この額をもとに保険料や給付
額が計算されます。
17 日未満の月は除く
原則 3 か月の報酬の平均ですが、報酬の支払いの基礎となった日数(「支払い基
礎日数」といいます)が 17 日未満のつきについては、平均額の計算から除くこ
とになっています。
月給制の場合は、出勤日数に関係なく報酬の支払い対象期間の歴日数が「支払
い基礎日数」となります。ただし、月給制でも欠勤日数分だけ報酬が減額され
ている場合は、賃金規定等に基づいて会社が定めた日数から欠勤日数を差し引
いた日数がその月の「支払い基礎日数」となります。
4~6 月すべての月の支払い基礎日数が 17 日未満の場合は、標準報酬月額は従前
と同じとなります。ただし、この場合でも届け出は必要です。
また、パートタイマーについては特別な取扱いがあります。(Q&A参照)
金銭以外で支給する場合は?
報酬とは、原則「労働の対価」として受けるすべてをいいます。社宅や給食な
ど、金銭以外で支給するもの(現物給与)も含まれます。
これらは「一食当たり○○円」など都道府県ごとに一定の額が定められており、
計算された現物給与の額と金銭で支払われる報酬の額とを合わせて標準報酬月
額が決まります。
今年 4 月から現物給与のうち「食事で支払われる報酬」について、
一部の都道府県の額が改定されました。
変更のある都道府県、具体的な額は日本年金機構のホームページ
でご覧ください。
新しい標準報酬月額は 9 月分から
新しい標準報酬月額は、原則 9 月(10 月納付分)から翌年 8 月(翌年 9 月納付
分)まで適用されます。
算定基礎届の提出
4月
5月
6月
7月
8月
9月
10 月
11 月
4・5・6 の報酬を記入
新しい保険料の納付開始
新しい標準報酬月額
報酬となるもの・ならないもの
通貨で支給されるもの
報酬となるもの
・基本給(月給、週給、日給など)
・諸手当(残業手当、通勤手当、住宅手当、家族手当、役付手当、勤務地手当、
宿日直手当、勤務手当、能率手当、精勤手当、休業手当、育児休業手当、介護
休業手当、各種技術手当など)
・賞与等(年 4 回以上支給のもの)※
報酬とならないもの
・病気見舞い金、災害見舞金、慶弔費など
・大入袋、解雇予告手当、退職金、預金利子、株主配当金
・主張旅費、交際費など
・年金、恩給、健康保険の傷病手当金、労災保険の休業報償給付など
・賞与等(年 3 回以下支給のもの)
現物で支給されるもの
報酬となるもの
・食事、食券など
・社宅、独身寮など
・通勤定期券、回数券
・被服(勤務服でないもの)
・給与としての自社製品など
報酬とならないもの
・食事(本人からの徴収金額が、標準価格により算定した額の 3 分の 2 以上の
場合)
・住宅(本人からの徴収金額が、標準価格により算定した額以上の場合)
・被服(事務服、作業服等の勤務服など)
※ 年 4 回以上支給される賞与等は、7 月 1 日前 1 年間に支払われた合計額を
12 で割った 1 か月当たりの額を各月の報酬に含めます。
Q
7 月 1 日に退職した人は対象にならない?
A 算定基礎届は 7 月 1 日現在の被保険者全員について提出します。
7 月 1 日に退職した人は 7 月 2 日に資格を喪失するので、7 月 1 日時点ではまだ
被保険者です。ですから、算定基礎届の対象となります。
Q
産休・育休や長期療養で無給の人は?
A 出産・育児や病気で休職していて、4~6 月に報酬が全く支給されていない
人も届け出は必要です。報酬の平均はゼロとして提出しますが、標準報酬月額
はゼロではなく、休職開始前と同じ額で決定されます。
ただし、産前産後休業期間中や育児休業期間中は保険料の免除制度があります
ので、従前と同じ額で標準報酬月額が決定されても保険料が徴収されるわけで
はありません。
Q
パートタイマーは月 17 日未満の人が多いのですが・・・
A 時給や日給のパートタイマーの場合は、実際に出勤した日を支配基礎日数
とし、次のいずれかの方法で計算します。
①4~6 月のうち、支払基礎日数 17 日以上の月がある場合は、17 日以上の月だ
けで報酬を平均する。
②3 か月とも 17 日未満の場合は、そのうち支払基礎日数が 15 日以上ある月だ
けで報酬を平均する。
③3 か月とも 15 日未満の場合は、従前の標準報酬月額と同じ額で決定される。
Q
6 か月の定期券を支給した場合は?
A 定期券の額を 6 で割って 1 か月当たりの額を各月の報酬に含めます。賃金
台帳に記載のない定期代などは集計からもれやすいので注意してください。
Q
転勤で 4 月から定期代が上がった場合は?
A 通勤手当は固定的賃金です。4 月に固定的賃金が変動し、改定の要件を満た
した場合は 7 月に月額変更届を提出しなければなりません。この場合、
「算定基
礎届の対象にならない人」②に該当します。
Q
毎年 4~6 月に残業が多いと損をするのでは?
A 確かに、4~6 月の残業が多いと標準報酬月額が高くなり、保険料の負担も
大きくなります。7 月以降はほとんど残業がなかったとしても、基本給などの固
定的賃金が変動しなければ月額変更届による改定もおこなうことができません
ので、1 年間、保険料の負担は大きいままで「損をする」と言えるかもしれませ
ん。
そこで、このようなケースについては、過去 1 年間(年間 7 月~当年 6 月)の
平均によって標準報酬月額が決定されるという特別な取扱い(「年間平均による
保険者算定」)があります。ただし、次の 3 つの要件を満たした上で申し立ての
手続きが必要です。
①4~6 月で算定した額と過去 1 年間で算定した額に 2 等級以上の差があること
②その差が業務性質上例年発生すると見込まれること
③被保険者本人が同意していること
Q
5 月に昇給したが、
月額変更届に該当するかどうかまだわからない
A 5 月に昇給し、5~7 月の 3 か月で 2 等級以上報酬が変動する場合は、8 月
に月額変更届を提出することになるので、8 月の月額変更届予定者を除いて算定
基礎届を提出します。
しかし、算定基礎届を作成している時点では、まだ 5~7 月の報酬が確定してい
ないため、月額変更届に該当しない可能性もあります。結果的に月額変更届に
該当しなかったときは、その時点でその人の分だけ算定基礎届を追加で提出す
ることになります。
ただし、都道府県によっては 8 月、9 月に月額変更届を提出する予定の人につい
ても、先に算定基礎届を提出しておき、月額変更届に該当した場合に取消処理
をおこなう方法をとっているところがあります。
Q
70 歳以上の社員がいるときは?
A 70 歳以上の人が厚生年金の加入要件に該当する程度に勤務するときは、一
般の算定基礎届とは別に「70 歳以上被用者算定基礎届」を提出する必要があり
ます。なおこの提出が必要なのは、過去に厚生年金の加入期間があり昭和 12 年
4 月 2 日以降生まれの人に限ります。また、厚生年金の加入要件に該当する程度
の勤務とは、一般労働者の所定労働時間のおおむね 3/4 以上の勤務になります。
トッピクス
調査結果
女性の躍進効果、効果はある?
日本生産性本部は 2 月 18 日、「第 6 回コア人材としての女性社員育成に関する
調査」の結果概要を公表しました。
4 割の企業で業績向上・組織活性化
女性の活躍は組織の生産向上や業績向上につながると言われています。この点
について実際に「業績向上の要因の 1 つになっている」と答えた企業は 20.9%、
「業績向上へのつながりはみられないが、組織が活性化するなど変化がある」
とした企業は 19.7%と、合わせて約 4 割の企業で効果が現れていることがわか
りました。また「現時点では把握できないが今後期待できる」(45.2%)と合わ
せると何らかの効果を認めている企業は 8 割以上となっています。
具体的に取り組みをおこなって効果がみられたものとしては「女性社員の仕事
意識が高まる」
(46.4%)、
「優秀な人材を採用できる」
(45.0%)などグラフのよ
うな結果でした。
関心の薄い理由は
一方で、まだまだ女性の活躍推進に関心・理解の薄い経営者や管理職もいます。
関心が薄い理由は「女性社員の育成の経験がない(または少ない)」(63.5%)、
「女性に戦力としての期待が乏しい」(51.5%)、「女性の数が少ない」(49.6%)
などが多くあがりました。
数値目標背亭は 2 割弱
現在、国会に提出されている「女性活躍推進法案」では、女性の登用に向けた
数値目
標の設
定や公
表を一
定規模
以上の
企業に
義務付
けると
してい
ます。
調査で
は、
「女
性社員
の管理
職登用
に関する数値目標の設定」をおこなっている企業は 13.7%、
「女性総合職の新卒
採用に関する数値目標の設定」をおこなっている企業は 18.9%で、ともに 2 割
に満たない結果となりました。
取り組みを行っていて、効果があったか出つつあるもの(企業の割合)
外国人技能実習制度
規制強めるが優良企業には拡充も
厚生労働省と法務省は 3 月 6 日、外国人技能実習制度の適正化に関する法律を
国会に提出しました。
実習生ごとに計画を作成・認定
外国人技能実習制度は、国際貢献として開発途上国から人材を受け入れ、日本
で働きながら習得した技術や技能を本国に帰国後も活かすことで、それらの国
の発展を支援する制度です。
しかし、実際には制度の趣旨とかけ離れて、実習生を低賃金で酷使するなど安
価な労働力確保に利用しているケースが目立ち問題となっています。
今回の改正案では、こうした不正を防ぐため、技能実習制度を適正化する内容
となっています。
具体的には、実習生ごとに技能実習経計画を作成して認定を受ける制度とする
ほか、受け入れ団体(実習実施者)は届け出制、監理団体は許可制とすること
男性社員に良い意味での刺激を与える
コミュニケーションが活性化する
組織風土の変化
ワークライフ・バランスへの取り組みが進む
女性社員の離職率が低下する
優秀な人材が採用できる
女性社員の仕事意識が高まる
30
35
40
45
としています。
また、受け入れ企業や監理団体を監視する「外国人技能実習機構」が新設され
ます。
50
同機構は技能実習計画の認定、実地検査などを行うほか、技能実習生に対する
相談・援助も行う予定です。
人権侵害行為には懲役・罰金
外国人技能実習制度については、実習生の脱走や外部との連絡を防ぐためにパ
スポートや在留カードを取り上げたり、私生活上の行動を制限するなどの人権
侵害がおこなわれているとの報告もあります。
改正案ではこうした人権侵害行為等を禁止し、罰則(懲役または罰金)規定が
設けられています。
優良受け入れ企業には拡充策も
一方で、優良な受け入れ団体や企業に対しては、最長 3 年となっている受け入
れ期間を 5 年に延ばすなど拡充策が盛り込まれました。
景気回復にともない全産業で人手不足が顕著になる中、震災復興やオリンピッ
ク開催に向けた建設工事などの現場では、人手不足の打開策として今回の改正
案が注目されています。
今国会で成立すれば改正法は平成 27 年度中に施行される見込みです。
人事労務のミニ法律教室
派遣社員を直接雇用することはできる?
Q 現在、派遣社員に勤務してもらっていますが、いい人物だったので、この
まま当社で直接雇用したいと考えています。ただ、派遣会社との契約書の中に
引き抜きを禁止する規定があります。直接雇用してはいけないのでしょうか?
A 派遣先が派遣労働者を直接雇用する場合、派遣期間終了後に雇用すること
が基本です。ただし、派遣元、派遣労働者と協議の上で派遣契約を終了し、職
業紹介により直接雇用するケースもあります。
近年、人手不足などから派遣労働者を直接雇用するケースが増えています。た
だし、他社で雇用されている人をスカウトする場合はトラブルになることもあ
るため、注意すべきポイントを確認しておきましょう。
労働者派遣の場合、派遣元、派遣先、派遣労働者による三角関係にあります。
それぞれの関係から見ていきましょう。
派遣先と派遣元
基本的に、他の会社で雇用されている人であっても、スカウトすること自体に
違法性はありません。ただし、
「あの会社はもうすぐ倒産する」などと嘘の悪評
で退職を促したり、同時に何人も引き抜くなどすれば、人材を引き抜かれた会
社から損害賠償を請求されることもあるでしょう。
労働者派遣の場合、派遣先と派遣元は契約を結んでいます。契約書には、派遣
期間の途中で派遣先が派遣労働者を直接雇用することを禁止する定めを設ける
ことが一般的です。
ただし、労働者派遣法では、派遣労働者が派遣元との雇用関係が終了した後に
派遣先が雇用することを禁ずる派遣契約を締結してはならないと定めています。
また、派遣元と派遣労働者の間でも、同様に派遣先で雇用されることを禁止す
る契約を締結してはならないとしています。ですから、派遣期間終了後であれ
ば、派遣先は自由に派遣労働者を雇用することができます。
派遣元と派遣労働者
次に派遣元と派遣労働者の関係です。派遣元と派遣労働者との雇用契約は、有
期雇用と無期雇用とがあります。
有期雇用の場合、民法により原則として労使ともに契約期間の途中で解約する
ことはできず、一方に過失があれば損害賠償の責任を負うと定められています。
期間途中で退職を願い出ても労働者に損害賠償を請求する会社はなかなかあり
ませんが、これから戦力になってもらおうとする労働者が前職の会社とトラブ
ルになることは避けたいですから、派遣元との契約が終了してから雇用するこ
とが望ましいでしょう。
なお、労働契約期間が 1 年を超えるものであれば、労働基準法により 1 年を経
過すれば労働者はいつでも退職を申し出ることができます(例外業務などがあ
ります)。
有期雇用の場合はあまりないのですが、無期雇用の場合、就業規則に競業避止
義務が定められていることがあります。競業避止義務とは、ライバル会社への
転職を一定期間禁止するものです。たとえばIT企業が派遣事業をおこなって
おり、同業であるIT企業に労働者を派遣することがあります。こうしたケー
スでは自社のノウハウなどの流出を防止するために競業避止義務を定めている
ことも多いため、このような会社の労働者を引き抜くと労働者が契約違反とな
ってしまうことがあります。
話し合いによる円満退職
どのような場合でも、労働者は会社と円満に退職するよう努めるべきです。ス
カウトする側も、労働者が会社とトラブルにならないよう退職時期などに配慮
するべきでしょう。派遣契約を中途解約して雇用したい場合などは、派遣労働
者、派遣元と十分に話し合って、紹介予定派遣に切り替えたり、派遣契約を打
ち切って職業紹介をしてもらうなどの方法もあるでしょう。つまり、派遣契約
を終了することで派遣元は派遣料金を受け取れなくなりますが、代わりに紹介
料金を支払うことで派遣元の合意を得るのです。
<労働者派遣の関係>
労働者派遣契約
派遣先
派遣元
指揮命令
関係
雇用契約
派遣労働者
正しく知ろう
労働時間
出張中の移動時間は労働時間?
労働基準法の中でも「労働時間」は奥の深いテーマです。知っているようで正
確には知らないこと、誤解していることも多いのではないでしょうか。
労働時間とは、就労の為に「使用者の指揮命令下におかれている」時間を言い
ます。言い換えると、
「拘束時間から休憩時間を除いた時間」ですが、実際の現
場では「これは労働時間?」と判断に迷うような時間があります。
たとえば、出張では早朝に自宅を出たり、休日のうちに現地に移動して月曜日
の朝から仕事ということがあります。
「通勤時間」と考えるにはあまりにも長い
移動時間ですね。
こうした場合、所定労働時間中に移動する時間はもちろん労働時間ですが、早
朝や夜間など、所定労働時間外に移動する時間まで労働時間になるのでしょう
か。
原則、労働時間にならない
こうした移動時間は、乗り物から降りて自由に行動できないので拘束されてい
る時間ではありますが、到着までは眠っていようが読書をしようが全く自由で
す。ですから休憩時間と同じような性質のものとみなされ、原則として労働時
間になりません。
ですが、通常より早く家をでなければならないなどの負担に配慮して、多くの
企業では日当など手当をつけています。
労働時間になるケースも
ただし、出張中の移動時間が労働時間となるケースもあります。たとえば、商
品や機材など物品を無事に運搬すること自体が出張の目的である場合や、上司
に同行し、移動中に仕事の打ち合わせをするような場合です。
事業場外のみなし労働時間制は就業規則への規定が必要
出張のように社外で仕事をする場合は、何時から何時までが休憩時間や移動時
間で、何時から何時までが労働時間なのか、正確に把握して算定することが難
しくなります。このような場合は、
「事業場外のみなし労働時間制」を適用して、
所定労働時間働いたものとみなすことができます。
ただし、上司が同行して労働時間を把握・管理できる場合などは事業場外のみ
なし労働時間制を適用できません。なお、事業場外のみなし労働時間制を適用
するには就業規則等に規定しておくことが必要です。
労務ひとこと
「ブラック企業」是正指導の段階で公表を検討
若者を大量に採用し、過酷な長時間労働やパワハラの末に使い捨てる「ブラッ
ク企業」が社会問題となっています。
安倍晋三首相は 3 月 27 日の参院予算委員会で「社会的に影響力の大きい企業が
違法な長時間労働を繰り返している場合、労働基準監督署が是正を指導した段
階で企業名を公表する必要がある」と表明しました。
具体的な方法や実施時期は、今後厚生労働省で検討していくとしています。
労働基準法等の違反があった場合、現状では、まず是正指導をおこなって、従
わない場合に書類送検、企業名の公表という流れになっています。
しかし、野党からは問題企業の企業名を早い段階で公表しないと、改善に向け
た動機づけにならないという指摘がありました。
首相は「長時間労働は過労死につながりかねない問題だ」として今までの措置
を一歩進め、法違反の防止を徹底したい考えです。
政府はブラック企業対策とともに、長時間労働の削減についても昨年より本腰
を入れて取り組んでいます。36 条協定が遵守されているか、不払い残業となっ
ていないかなど、改めて見直してみる必要があるでしょう。