編集機

●編集機
編集機の基本的な操作は周知の通りだが操作において編集機はどのような動作
をしているのかを考察しよう。
編集機の操作というのは簡単に言えば家庭用ビデオデッキ2台をリモコンで制
御してダビングを行う行為のプロフェッショナル版である。プロフェッショナ
ル版というだけあってその制御は繊細で正確なものになっている。繊細な指令
により正確に動作するためにはいくつかの準備がテープにも必要になってくる。
生テープには編集ができないのはその制御のベースとなる信号がないためで逆
に何かしらのベースがあればそのベース信号によって制御ができるのである。
再生側も収録側もタイマーカウント(以後TM)もしくはタイムコード(以後
TC)によって収録開始点(以後IN点)と収録終了点(以後OUT点)を決
定しダビング行為を行います。そのIN・OUT点はいずれもテープに書き込
まれる訳ではなく編集機側が記憶しそのポイントを頭出しする指令と収録させ
る指令、終了させる指令をデッキに送りる。
再生側及び収録側の同期をとる為にプリロールが設定されその設定秒前から再
生してIN点がきた時点で収録指令を出すのである。
アッセンブル編集
アッセンブル編集とはIN点で収録側に再生側のすべての信号を収録する編集
方法で収録側の信号が最低限IN点まで存在していれば編集できる。
これはIN点からは再生側の信号を基準に作業が進むからで単純に頭から連続
につなぐ場合は十分事足りる。
アッセンブルの場合はOUT点が無効なので収録テープの編集枠後に必要な映
像がある場合は避ける方が賢明。OUT点ではロックがはずれカットアウトし
ないので数秒間映像が乱れてしまう。
インサート編集
インサート編集とはIN点から再生側の映像・音声信号のうち任意の信号を収
録側の信号に上書きしていく編集方法で収録側の信号は最低限収録終了点まで
連続して存在していなければならない。したがって収録ベースがアッセンブル
編集で行われTCが不連続の場合はTMにて編集することになる。
データ編集
編集素材ロールが多数ある場合に通常通りの編集作業をするとロールの掛け替
えだけでかなりの時間と労力を費やす事になる。TOCやECSで作業をする
場合、他番組との兼ね合いや編集後のロールの映像品位の向上のために該当ロ
ール毎に必要カットを必要な部分にだけ編集行為をするためのデータを制作す
る編集行為。
まず、素材ロールをデータ編集用に民生用のβやVHSなどにロールIDとロ
ール内のTCを加えた状態でコピーする。DVEなどの加工が必要な部分は前
もって加工をして加工後のロールを素材ロールのひとつとして考える。そうし
てコピーや編集をして一応の番組と同様の編集がなされた民生用テープからカ
ット毎のロールIDとTCのデータを読みとりECSの編集機にてかけたロー
ル毎に必要な部分をマスターテープにインサート編集をしていく。データ編集
の基本的な作業はまずデータのマスターになるテープは音を基本に制作する。
その後映像インサート用のデータテープの作成をする。インサート用のテープ
の映像インサート必要箇所にデータをインサートする。ECSでは通常データ
とインサート用のデータを読みとり通常データ編集後にインサートデータの通
常と違うデータ部分をインサートする。インサートに必要なロールはこの時改
めてデッキに乗せる。
デッキの設定
TCとTM
TCとTMの切り替えはカウンター表示の左側にあるスイッチにて変更する。
編集機側でも変更ができるがその場合デッキ側の表示は元のままなのでTMで
使用の場合不具合が起きる場合があるのでどちらも変更するのが最良だ。TM
のデフォルト値はテープを挿入した段階で0になる。ダイレクトRECもしく
はアッセンブル編集の際のTCの設定はデッキの内部設定により違ってくる。
TC設定
デッキのフロントパネルを開くと設定ボードが見える。そこにいくつかのディ
ップスイッチが存在する。
TC CONTROL:TCのデータ信号を外部から受けるか内部で発生させ
るかを選択するスイッチです。編集素材受けデッキが多数ある場合はTBC
(タイムベースコレクター)から発生するTCを受けるようにするとキャプシ
ョンはひとつで済みデッキ間のテープ変更も容易である。また編集前の準備と
してマスターテープを制作する場合にはコントロールを内部にして任意のTC
を入力する。
RecRun FreeRun:任意のTCを収録した時だけ走らせるのがれ
RecRunでマスターテープを作成する場合に便利である。アッセンブル編
集または収録後にそのテープに対してインサート編集をする場合にTCが連続
しているのでTMに切り替える事無く作業ができる。
FreeRunはTBCが無い場合にリアルタイムに合わせて時間を走らせて
おくと素材収録時にキャプションがつけやすく、収録中の総尺計算も容易であ
る。
TC以外のデッキ設定
DT設定:主に再生側での設定で編集機の再生側やDTRと接続されたデッキ
の場合も再生があり得るという点では設定が必要ある。DT設定とは再生ヘッ
ドのモード設定で3種類のモードが選択できる。なにも表示がない部分を選択
するとノーマル時以外には画面にロックのはずれたノイズが出現する。VAR
モードにするとスロー時も早送り時も画面にノイズが出現しませんが早送り速
度は2倍速ほどにしかあがらない。ノイズが出現しないと言う点では制作現場
でのスロー設定に向いているといえるがバリアブルモードでの早送り速度に難
点がある。編集機でのスロー編集時のコントロールリミットはこの場合20
0%がMAXスピードとなる。
スプリット編集
編集を行う上で例えば風景の中でコメントが始まりそこからそのコメントを話
す人の顔にオーバーラップして行くような編集が必要になることがある。つま
り、映像と音声で違うタイミングで収録開始される編集方法をスプリット編集
と呼ぶ。
通常、音声を優先する形で編集し例えの場合なら風景を必要なだけインサート
する。なぜ通常、音声を優先する形で作業をするかというと単純に音は目に見
えないからで、しかも一定の速度を持って再生しないとわかりづらいからであ
る。
しかしこの編集方法には欠点がある。ひとつは作業時間がかかること、そして
もうひとつは作業が終わるまで完成イメージがつかみにくいこと。
編集機にはスプリット機能が付いている物がある。スプリットとはストップウ
ォッチなどにある時差時間計測機能で同時刻から異なるタイミングで時間を計
測したりまたその逆の異なるタイミングから同時刻までの時間を計測する機能
である。編集作業上この異なるタイミングを制御できれば作業時間が大幅に短
縮できプレビュー時に完成イメージを把握できるのである。
編集機の設定をする時に気をつけなければいけない事は編集過程に於いて目に
見える映像を重視するが為に音声が先に始まる編集の場合、得てして音声先行
と考えがちだがスプリットという概念から考えれば先行と見た音のIN点こそ
通常IN点であり後からRECされる映像こそスプリットなのである。したが
ってこの場合の編集機設定は映像スプリットである。またその逆の映像先行の
場合も同じで使おうとしている音声のIN点ではなく先にRECされる映像こ
そ通常のIN点であり音声が後からRECされるという意味で音声スプリット
なのである。結果的に映像が先行してRECされる編集の場合に注意すべき点
は、先行する映像のタイミングよりも収録側の音声終了と再生側の音声開始の
タイミングが重視される場合に再生側の映像開始点と音声開始点の時差分を収
録側の音声終了点から引いた点にRECIN点を設定しなければならないと言
う事。編集機によってはこの差分を計算させる設定を持っているものもあるが
概念として把握をしておく必要がある。
OL(オーバーラップ)・DISS(ディゾルブ)
映像制作においてカットからカットへのつなぎをクロスフェードして切り替え
る方法がある。これはもともとミキシングにおいて使用するトラックのフェー
ダーを徐々に下げつつ次に使用するトラックのフェーダーを徐々に上げていく
クロスフェードの方法を映像に置き換えたものである。映像スイッチングの場
合、クロスフェードする二つのカットの合計レベルが一定でなければならない
ので、ミキサーで言うところのフェーダーにあたるスイッチングボタンをひと
つずつ単体で上げ下げする訳には行かない。したがって二つのカットの比率合
計を替えずに使用比率を変化させるためにスイッチングボタンの列を2列使用
し比率変化用のフェーダーを使いスイッチングする。DJが利用するディスコ
ミキサーの2つのターンテーブルを使い分けるクロスフェーダーを想像すれば
わかりやすいと思う。
このOL/DISSを編集時に使用する場合の認識は1つのカットがAロール、
もう1つのカットがBロール、そしてスイッチングアウトにあたる収録ロール
となる。始めにくるAロールのOUT点でBロールのIN点に乗り変わり、そ
の乗り変わり点を軸に合計レベルを一定としながらAロールからBロールへク
ロスフェードする。これが編集機によるOL/DISSの認識である。クロス
フェードタイムは編集機によって設定方法は異なるがA/Bロールに設定秒/
2ずつクロスするのでそれぞれ設定秒/2ずつOUT・INから1カットで足
りている必要がある。
各種設定を変更した場合は作業終了後速やかに元の設定に戻す事を心がける。
複数部署で同一機器を使う場合、各人がそれぞれ使用時に自分の設定にしてそ
の後戻す方が全体で見ると効率が良く問題点の早期発見にもつながる。これを
ゼロセットと言う。