える・あい - 全国学校図書館協議会

郡山市学校図書館協議会だより
える・あい
Library. Information
平成28年1月発行 No.4
<巻頭言>
気軽に読書を part 2
顔 写
真
郡山市中学校教育研究会 会長 栁沼 正志
昨年も「気軽に読書を」という題で巻頭言を書かせていただきました。今年は part 2 ということで
お読みいただければと思います。
読書の話になるとよく引用されるものに全国学校図書館協議会と某新聞社が行う「学校読書調査」が
あります。今年で第61回という膨大なデータなのですが、今年度は「どんなことにどのくらい時間を
使っているか」、
「わからないことを何で調べるか」、
「調べた内容が正しいかどうか確かめているか」、
「どんなマンガを読むか」、「マンガの本を読んでどんなことがあったか」等について調査したという
ことです。
それによると2015年5月1か月の平均読書冊数は、小学生11.2冊、中学生4.0冊、高校生
1.5冊になっています。また5月1か月に読んだ本が0冊の児童生徒を「不読者」と呼んでいるのだ
そうですが、その割合は小学生4.8%、中学生13.4%、高校生は51.9%となっています。こ
の数だけを見ると上の学校に進めば進むほど不読者の数も増え、高校生の半数近くは一ヶ月に1冊も本
を読んでいないことになります。
数字だけみればかなりショッキングな数字です。このような傾向に危機感を覚え、読書指導に関する
法律や審議会の答申が相次いで行われました。教育現場においても子どもに読書をさせる様々な取り組
みがされているところです。
子どもの読書は言葉を学び、感性を磨き、表現力を高め、創造力を豊かにするなど、人生をより深く
生きる力を身に付けていくためには不可欠なものである一方、急激なメディアの多様化、それに伴う情
報の氾濫、生活様式の変化などにより活字離れや読書離れがマスコミ等にもとり上げられました。ただ
ここで気をつけなければならないのは、数字だけが一人歩きしていないかということです。危機感だけ
をヒステリックに募らせないで、ちょっと立ち止まって考えてみましょう。ほんとうに上の学校に行く
にしたがって本が嫌いになるのでしょうか。
確かに高校生の「不読者」は半数を超えているようですが、別の調査によれば高校生の「本が嫌いで
ある」「本は読みたくない」の傾向は大人が思うほど危機的ではないのです。むしろ、「本が好きであ
る」
「本を読みたい」といった項目の傾向は意外に強いのです。ではなぜ本から遠ざかるのかといえば、
「忙しさ」や「電子書籍」などが理由となっています。それはそのまま大人の読書傾向にも当てはまり
ます。大人だって、データ上はそんなに本を読んでいないのです。大切なのは、大人自身が目新しさや
流行に捕らわれることなく、子どもになぜ読書が必要なのかまず認識することではないかと思います。
そして子どもの成長にしたがって読書に親しんでいける環境をつくることです。大人も子どもも、みん
なが気軽に読書ができる家庭や地域、学校・・・読書環境を連携しながら作っていきましょう。
<提 言>
「新しい学校の図書館」
「桃栗3年柿8年・・・」
郡山市学校図書館協議会副会長 佐久間郁文
郡山市学校図書館協議会副会長 木村 隆
平成30年4月開校を目指し、
西田の小中一
貫校開校の準備が進んでいます。
これまでにな
い新しい学校づくりが提案され、
気持ちが引き
締まる思いがします。と同時に、校舎平面図な
ど施設の青写真を目にし、西田の丘に広がる新
たな校舎全景を想像するなどの楽しみもあり
ます。
以前、勤務したある学校でPCと図書室が仕
切りのない一室で隣り合わせになっていたた
め、調べ学習をする際に、情報を集めたりまと
めたりするのにたいへん使い勝手が良かった
ことを思い出しました。
インターネットの良さ
もさることながら、
本を読みながらキーボード
で入力する子どもたちの姿を見るにつけ、
本と
PCの関係性の良さを再確認したものです。
文部科学省の図書館整備指針である
「みんな
で使おう!学校図書館」で「学校図書館は、子
どもたちの確かな学力や豊かな人間性を育む
施設です。」とうたわれています。読書センタ
ー・学習センター・情報センター機能に加え、
学校図書館の資料と人材の充実を図り機能を
十分に生かすことにより、言語活動、読書活動
等の充実を通じ教員の指導力を向上させる
「教
員サポート機能」、子どもたちが生き生きとし
た学校生活を送り、また、悩みを抱える子ども
のための「心の居場所」、放課後や長期休業時
等の「居場所」、家庭や地域の読書文化を醸成
する「地域の拠点」など様々な分野で学校図書
館は期待されています。
新しい学校の図書館はどんなふうになって
いくのか、とても興味があります。わくわくす
る魅力あるスペース、使い勝手の良さ、気軽に
訪れることができるあたたかな雰囲気、大人も
子どもも興味がわく蔵書等々、期待で胸がふく
らみます。開校はまだ先のことですが、夢の広
がる図書館づくりをはじめ、
地域とともに歩む
学校づくりの基礎固めに協力していければ、と
思う今日この頃です。
歴史小説が好きでいろいろな作品を楽しん
できた。高校時代に夢中になった司馬遼太郎か
ら始まり、海音寺潮五郎、池波正太郎、白石一
郎、戸部新十郎、綱淵謙錠、南條範夫、中村彰
彦、童門冬二・・・。しかし、今旬といえばやは
り3年前に「蜩ノ記」で直木賞を受賞した作家
の葉室麟であろう。表題の「・・・」の後に続
く言葉が氏の作品名になっている
『柚子の花咲
く』(朝日文庫出版)である。桃栗3年柿8年の
後に続く言葉が「柚子は9年で花が咲く」であ
ることを私は知らなかった。話のあらすじは、
江戸時代中期の村塾(藩校は武士の子弟の学舎
であったが、百姓や町人が学ぶ郷学としての村
塾があった。岡山藩主名君の誉れ高い池田光政
の閑谷学校が有名) が舞台である。主人公は
22歳の青年武士筒井恭平。
少年時代に薫陶を
受けた恩師の梶与五郎の死因に疑問を抱き、命
をかけて恩師の疑念を晴らす物語である。
話は
ミステリー小説のごとく謎解きを含みながら、
子弟と恩師に集う人物達の揺るぎない愛の宿
命や運命のあやなす無情さを伝える。また、全
編を通して首尾一貫語られることは、
恩師与五
郎と主人公恭平の命をかけた結びつきの深さ
である。解説の江上剛氏は、これは、「人」をじ
っくりと育てない現代教育に対するアンチテ
ーゼであり、題名の「柚子の花咲く」の言葉に
象徴される教育の意義を深く考えさせられる
と結んでいる。作中にこんな場面がある。主人
公の恭平は勉強がやや苦手でよく間違えた。そ
んな時、恩師与五郎は「孔子も過ちを改むるに
憚ることなかれ、人は間違うものなのだ。間違
うことは恥ずかしいことではない。間違えたら
やり直して進め。」と励ます。葉室氏の小説の
魅力はなんといっても主人公の生き方である。
それは全ての小説につながっている。
まっすぐ
で無骨で不器用である。
そして何より人を愛す
ることに真っ正直な人物像が描かれる。登場人
物の男女に限らず全てに当てはまる。
本編の最
後に人を教え導くことの意義を知らされる結
末に心が晴れ晴れとするのは私だけではない
と思う。
歴史小説に興味のある方は是非一読を。
<随 想>
「「クリスマスによせて」
安子島小学校 教諭 松阪 真子
「サンタクロースはいるのでしょうか」という150年も前の古い薄い一冊の本があります。この本
は、ニューヨーク・サンという新聞社の記者が一人の幼い女の子の「サンタクロースはいるのでしょう
か」という素朴な疑問に真摯に答えている本です。「目に見えないもの」でも「ある」と信じる心の大
切さを真剣に説いています。「目に見えるもの」しか信じない人は「うたぐりや」の心がしみこんでい
ると記者は言います。記者は、目に見えない世界を知る鍵は、「信頼と想像力と詩と愛とロマンスだ
け。」「それらだけが目に見えない世界をおおいかくしているカーテンをいっときひきのけて、まくの
むこうの、たとえようもなくうつくしく、かがやかしいものを、みせてくれるのです。」と書いていま
す。「目に見えないもの」の中にこそ、大切な美しいものがありサンタクロースもそこにいるのです。
この本は、私の家では、私の父が私と姉に、主人と私が息子と娘に「お父さん、お母さん、サンタク
ロースって、本当にいるの?」と聞かれると手渡してきた本です。ある時期になると必ず持つこの疑問
に、代々受け継がれて、答えてくれた本なのです。そして、これからずっと先に息子や娘たちが親にな
る日が来て、その子どもが同じ疑問を持つ日が来たら、またその子どもの疑問に答えてくれることと思
います。一冊の本が長い間の時間を超えて同じ疑問に答え続ける、そんな本に出会えたことに感謝する
とともに、この大新聞社の記者がひとりの幼い子どもに真剣に答えるその姿勢に感動すらします。こん
な大人がたくさんいれば、子どもたちは、もっともっとたくさんのことを知り、学び、考えるようにな
るのではないかと思います。
この本が今なお語り継がれ、『永遠のベストセラー』と言われる訳がよくわかります。人の心に訴え
かける言葉と書いた人の真摯な姿は、何年たっても決して色あせることはないのでしょう。クリスマス
が来るたびに私は、この本のことを思い出し、温かい気持ちになります。このような本にみなさんが
出会えることを願って、「メリークリスマス!」
「読書の記憶」
郡山第六中学校 教諭 伊藤 由紀
本が好きだ。しかし、読書量はお粗末なもので、最近は特に、読むのにエネルギーが必要な大作や、
難解な学術書などには手が伸びない。読書には体力と気力が必要なのだ。そういえば、5年前のあの震
災のあと、しばらくは、全く本を読む気持ちになれなかった。目と頭さえ一応しっかりしていれば「い
つでも読書日和」と思っていたけれど、心のパワーが落ちている時は、本と語らうこともできないのだ
と知った。その後、本が恋しいと思えるようになったときには、ほっとしたものだ。そういえば、80
代に差し掛かったわが老父は、買いためた本をながめ、悦に入っている。「そのうち読む」が口癖だが、
読書の意欲があるうちは、安心である。
ところで、先日、同僚と記憶に残る一番古い本の話題になった。ン十年前に遡り、記憶を辿る。美術
の先生のお気に入りは挿絵の美しい絵本だし、英語の先生の思い出の本は欧米の物語、社会の先生は歴
史好きのおばあさまの本を覚えていると言っていた。幼い頃の読書体験はその後の人生に某かの影響を
与えるのだろう。私の場合は、子ども向けの雑誌の物語のページで見た「ちびくろさんぼ」である。虎
がバターになる、そんなことありえないと思いつつ、その発想にわくわくした。それと、曾祖父の本棚
に並んだ旧字体の明治の作家達の本である。開いても読めないしわからないけれど、幼心には文豪達が
曾祖父の知人友人のように思えてきて、作家の名前は幾人も覚えたものだ。
さて、我が家の子どもたちである。幼い頃、よく本を読んでやったが、覚えているかと尋ねると、息
子は熟考の末「ゴジラ」と答えた。寝付きが悪い子で、毎晩4、5冊も読んでやったのに、エリック・
カールも五味太郎もきむらゆういちも覚えていない。自分で求めた「ゴジラ」は思い入れが深いという
ことなのだろう。一方、寝付きがよくて、布団に入れば5秒で寝息を立てた娘にはおやすみ絵本タイム
はほとんどなかった。娘はその後も読書に興味を示さず、母の後悔は大きい。と、我が身を振り返れば、
一応本好きに育ててくれた老親に感謝である。帰省したら、幼い頃読んでくれた本を尋ねてみようか。
『私の学校図書館紹介』
栃山神小学校 学校司書 上野 清美
本校は、郡山市郊外の東側に位置し、まわりを緑豊かな自
然に囲まれた静かな場所にあります。
全校の児童数が37人の小規模な学校です。
1年生から6年生まで学年関係なくみんな仲良しです。
図書館は2階にある3・4年生の複式教室と共有していま
す。入り口を入って右側に児童の学習机が配置され、左側後
方が図書室としての機能を果たしています。授業中の調べ学
習やグループでの話し合いに活用したり、休み時間に好きな
本を読んだりするテーブルコーナーもあります。調べ学習の
本は多目的ホールに置いてあります。
毎週水曜日の8時20分~40分に朝の読書タイムを行っています。また、お昼休みに図書委員会の
子どもたちによる読み聞かせも行っています。12月は紙芝居「世界一大きいお話」と大型絵本「おば
けの天ぷら」の本を、上手に読んでみんなに聞かせてくれました。
本の貸し出しは、主にお昼休みに行っています。今年から月1回読書記録を配布するようにしまし
た。その結果、昨年より本を借りる児童が多くなり、お昼休みも本を借りる児童でにぎわうようになり
ました。
少しでも本に興味を持って図書室に足を運んでもらえるように、図書室の後方の掲示板に季節ごとの
掲示を作成したり、図書委員が書いた読書紹介のポスターなどを掲示したりしています。これからは、
研修会などで学習した事を参考にしていいなと思うことを、先生方と相談しながら実践していきたいと
思います。
本は、心の栄養といいます。子どもたちの心に良い本を…
少しでも読書の楽しさを知ってもらえるように…
心の一冊の本と出会えるような図書室にしていきたいと思います。
『本の楽しさを広めよう』
郡山第七中学校 学校司書 狩野 睦恵
ここ、七中の図書室は、2教室分の広さがあり書架には分類別に沢山の本が並んでいます。入口を入
ればすぐに、図書室らしい環境の整った学習センターです。校歌でも歌われている安達太良の景色が図
書室の窓から見え、柔らかな日差しの中で本を読んだり、勉強したりする静寂な図書室ならではの姿が
目に浮かぶような教室なのです。
ですが・・・生徒の皆さんは、元気よく入室し、大変リラックスして利用しています。どちらかといえ
ば、自由な会話が飛び交ってワイワイしながら本棚を見ている感じです。「図書室、いいよねー」「こ
このにおい、いい!」えっ?なんと? 意味不明な会話が時々聞こえます。でも、図書室に来てもらえ
ることが、生徒と本との出会いの時を作ります。どんなきっかけで、本を読む楽しさに出会えるかは予
測できないし、逆に、押し付けては本が嫌いになりかねないと思います。学校司書の仕事に出会えた私
は、本の素晴らしさと偉大さを毎日感じています。それは、毎日沢山のいろいろな本に囲まれている、
この環境だからこそわかったことです。図書室に足を運んでくれる生徒は、何かしらの本を見つけ、手
にとってはパラパラと読んでみたり、本棚に戻したり、借りるかどうか迷ったり・・・友だちが借りている
本を「読みたい」と言って、カウンターで返却を待って借りていくこともあります。
「活字離れ」と言われていますが、七中の学区になっているどの小学校でも、オリエンテーションの
時間を設け、学校図書館の利用の仕方、読書の手引きと工夫を凝らして丁寧に指導してくださっている
ので、ほとんどの子どもたちが「本の楽しさ」を知って、中学生になります。それは、11月頃に小学校
6年生が、学校見学で図書室に入ってきた時、目をキラキラさせてくるのですから、一目瞭然です。
「この本、小学校にもある!」「かいけつゾロリがない!」なんて言いながら、ほんの数分間の見学に
興味を持って帰って行く姿に、「4月になったら、沢山読んでちょうだい。」と心の中で叫んでいま
す。
そんな姿から、小学生、中学生は、「本は楽しい」と感じて読んでくれていると思います。それがい
つからか「読書」は「本を読まされている」という感覚になって、「活字離れ」に繋がってしまうこと
を、少しでも防げないかと。せっかく小学校で「本の楽しさ」を知らせてくれているならば、中学校で
は「広げていく」ことに目を向けてみたらいいじゃないかと考えます。私は、自分でいうのも変ですが
どちらかといえば他力本願です。生徒が図書室に来るには、図書室で「授業」をして頂くことが最速で
確実です。チャイムが鳴る前に入室した生徒は、本棚の周
りをウロウロします。友達と本を見たり、読んだりするも
のです。また、調べ学習で使用した本を借りてくれたり、
関連のある本を探したりします。本校の先生方は協力的
で、よく、図書室で授業をしてくださいます。だから、色
んな生徒が色んな本に出会えるように、良書の選書には苦
労しますが、たった1冊の本で培ってきた「本の楽しさ」
を失わせないように努力していこうと思います。前任の学
校司書の方の情熱を受け継ぎながら、誰もが利用しやすい
学校図書館を目指しています。