特集:金融業のコンプライアンスを支えるIT 特集記事 3 オペレーショナルリスク管理,事務効率化により 理想的な収益向上を目指すソリューションQualityGym® シリーズ 内部統制の実現,事務の効率化,オペレーショナ の管理の高度化 ルリスク※1(以下,オペリスクと略記) など,昨今の金融機関の経営課題は多様化していま す。 当社の QualityGym®シリーズは,これらの課題 にいち早く応えるべく,お客様と一体となって開発して きたオペリスク管理ソリューションです。 本稿では, QualityGymが解決するお客様の課題と,その解決 方法についてご紹介します。 オペリスク管理における金融機関の課題 新BIS規制(2006年度)やJ-SOX 法 (2008年度) の施行 に見られるとおり,金融業界ではオペリスク管理や内部統制 の高度化が求められています。従来から金融機関では,イ ンシデント (事務事故や顧客からの苦情) が発生すると,報 告書を収集し,原因分析や対応策を検討する試みなどが実 施されていますが,実効的なオペリスク管理を達成するため には,下記のような問題点の解消が課題となります。 融資 タスク 受付 本人確認 オペレーション 起票・記帳 顧客操作 印鑑照合 照合・確認 預金者確認 検印 審査 役席承認 稟議・協議 契約 外国為替 工程分類 受付 受付 取引の入力 取引の入力 取引の入力 取引の確認 取引の確認 取引の確認 取引の承認 取引の承認 取引の承認 取引の承認 契約 当座預金 事務管理情報を一元管理 ●リスク管理 ・内部損失情報 ・外部損失情報 ・損失シナリオ ・潜在リスク評価情報 (RCSA) ●規定管理 ・事務規定 ・事務取扱要領 ・マニュアル ・書式集 ・法令集 ・記入例 ・通達 ・FAQ etc 貯蓄預金 科目 (商品) 取引 内国為替 預金 普通預金 「東芝ソリューション テクニカルニュース」2009年秋季号 Vol.19 業務 解約 8 問題点 1の解決策として,当社ではQualityGymの顕在 ® リスク管理製品「事務品質アラーム インシデント登録」を 提供しています。WEB 画面から報告書形式でインシデント 情報をサーバへ登録するシステムであり,お客様の課題を 解決するため,下記のような機能を搭載しています。 事務品質アラームでは,発生したインシデント情報を体 系的かつ網羅的に収集するため,業務プロセスをマトリクス 状に定義した「業務構造」を採用しています( 図 1)。事務 事故情報,顧客からの苦情,システム障害などのオペリスク 事象を,業務構造をベースとして蓄積し,一括で管理するこ とを可能にします。当社では,これまでの導入実績をもとに 整備された業務構造を,標準テンプレートとしてご提供する ことが可能です。この標準テンプレートをお客様それぞれの 要件に合わせて調整いただくことで,従来は高負荷であった 業務の構造化を容易にします。 新規 ③問題点 3 潜在的なリスクの管理 オペリスク管理では,顕在化したリスクだけでなく,潜在 的なリスクを未然に防ぐための管理も求められます。潜在的 なリスクの抽出方法や網羅性,抽出されたリスクおよびそれ インシデントデータの収集 出金 ②問題点 2 収集したデータの分析 インシデントが発生した根本的な原因を特定するために は,収集したデータの分析が不可欠ですが, 「データは収 集したものの,肝心の分析ができず有効に活用できない」 といった事例が多く見られます。有効な分析ができなければ, 改善策は個々のインシデントに対する対処療法的なものにと どまってしまいます。 に対するコントロールへの評価の妥当性が課題となります。 入金 ①問題点 1 顕在化したリスク情報の収集 オペリスク管理の第一歩として,どの業務プロセスで,ど の程度の規模の事故が,どのくらいの頻度で起きているのか といった,業務全体でのオペリスク事象の発生状況を把握 できる,網羅的で体系的なデータの収集が必須となります。 しかし従来の報告書の形式では,主観的な記述や報告者ご とに記載内容がばらつくことより,統一されたレベルのデー タを収集できず,全体像の把握が難しくなります。その結果, 事故報告と内部損失の整合性を確保するための集計や管理 にも,ある程度の専門的な業務知識や経験が必要になり, 多大な作業負荷を要しています。 篠原 大典 小高 聡 図1 プロセスをマトリクス化した業務構造を採用 金 融 機 関 の 業 務 を体 系 的 に 構 造 化して 管 理 するために, ® QualityGym が採用している業務分類の仕組みです。 インシデントデータの分析 問題点 2の解決方法として,収集したインシデントデータ を分析する製品「事務品質アラーム インシデント分析」を 提供しています。 「事務品質アラーム インシデント登録」に より蓄積されたデータと,ホストなどから取得した事務量デー タとを連携させて自動分析し,結果を定型帳票として出力す る機能を標準で搭載しています。リスクの高いプロセスを検 出する際の指標となる重要リスク指標(Key Risk Indicator) も,標準的な64 種類をパッケージとして準備しており,分 析結果のモニタリングに利用することができます。また,非 定型の独自分析を行いたい場合,操作の容易なフリー ※2 OLAP 分析により自由な切り口で分析することも可能です。 オプションとして,改善が必要なプロセスに対して改善計画 を策定し,定着するまでフォローする機能も提供しています。 QualityGymは,顕在,潜在両面からのオペリスク管理 ※4 のPDCAサイクル により,統合的なオペリスク管理を実現 します (図 2) 。 営業店から経営層までをとおして,それぞれの利用者が 必要とする機能を適切に提供し,業務プロセスにおける オペリスク管理の高度化と事務の効率化を同時に実現します (図 3) 。 QualityGym® オペリスク DB 規定管理 DB 事務品質アラーム® インシデント登録 /インシデント分析 /改善計画 MetroCube® RCSA管理エディション /規定管理エディション 潜在的なリスクの管理 ® QualityGymの潜在リスク管理製品「MetroCube 」で ※3 は,問題点 3の潜在的なオペリスク管理のためにRCSA と呼ばれる手法を採用しています。RCSAとはRisk and Control Self Assessment(リスク管理自己評価)の略称 で,想定される損失シナリオから,リスクの想定損失規模の 算出と,それに対する現状のコントロール要因 (リスク低減 要因) の洗い出しを行い,想定損失規模とコントロールの達 成度を比較して評価することで,潜在的なリスクを数値化し てアウトプットする手法です。 本製品では, 業務構造に基づき, リスク管理の対象となる業務プロセスにおいて,網羅的に RCSAを実施できる仕組みを提供します。外部事故データ および内部インシデントデータを取り込み,想定損失規模を 算出する根拠とすることも可能です。 RCSAを実施した結果,残存リスク値の高いプロセスに ついては是正策を策定し,担当部署に改善を促すとともに, 本システムで実施状況を管理します。また,業務構造上で 規定を管理する機能も提供しており,規定の改訂によるコン トロールの強化や,リスクの低減といった連携を図ることも 可能です。 営業店 本部 各業務所管部門 ・インシデント登録 ・インシデント登録承認 ・RCSA実施 ・RCSA閲覧 ・規定改訂 ・規定閲覧 経営層 各統括部門 ・インシデント登録管理 ・インシデント分析 ・改善計画策定 ・RCSA実施管理 ・規定改訂管理 ・モニタリング ® 図 3 QualityGym 導入イメージ ® QualityGym を導入した場合の,運用のイメージを説明します。 【特許】 本文に記載の技術は,特許出願中です。 【注釈】 ※1 :事務事故や不正行為などにより損失を被るリスク。 ※2 :蓄積したデータを様々な角度から多次元的に解析するシステム。 詳しくは本誌「社会動向」を参照。 直接データを操作し,対話的に試行錯誤しつつ分析を行うことが 可能。 ※3 :Risk and Control Self Assessment,リスク管理におけるコント ※4 :事業活動におけるPlan(計画),Do(実施),Check(監視), ロール(内部統制)の有効性を主観的に評価する手法。 Action(改善)の継続的改善サイクル。 QualityGym® 事務品質アラーム ® 顕在化したリスク管理の PDCAサイクル (Plan-Do-Check-Act) ・インシデント登録 (内部事故情報の収集) ・インシデント分析 (収集したデータの分析) ・改善計画 (事故原因に対する改善策策定) ・業務環境及び内部統制要因の反映 ・実際のオペリスク損失との比較・検証 MetroCube /RCSAエディション ® インシデントのデータとして蓄積すべき項目は,あらかじめ 設定された選択肢から選択する方式になっており,報告者 によらない均一なレベルのデータ収集および報告書の入力 にかかる作業負荷の軽減を実現します。更に,報告書を目 的の部署まで迅速に報告するワークフロー機能を搭載してお り,承認や回覧もすべてオンライン,かつペーパーレスで行 うことが可能です。また,データ集計機能により,管理部署 は業務におけるインシデントの発生状況を容易に把握するこ とが可能です。 QualityGym 導入の効果 RCSA 潜在的なリスク管理のPDCAサイクル (Plan-Do-Check-Act) ・RCSA (リスク&コントロール自己評価) ・計量化シナリオの作成 ・外部損失データの登録 MetroCube®/規定管理エディション 業務構造を用いたプロセスベースの規定管理 ・リスク管理と連動した文書管理 ・業務フローによる平易な規定表現 ・通達と連携した改訂履歴管理 ・書式集などの関連文書も一括管理 ® 図 2 QualityGym の全体像 ® QualityGym を構成する各パッケージの機能と,パッケージ同 士の関係を説明します。 Profile 篠原 大典 Shinohara Daisuke 金融ソリューション事業部 QualityGymプロジェクト QualityGym® 導 入プロジェクトのマネージメントおよび MetroCube® 標準版の開発に従事。 小高 聡 Odaka Satoshi 金融ソリューション事業部 QualityGymプロジェクト 主任 QualityGym® シリーズ全般の商品企画,マーケティング および特定プロジェクトのマネージメントに従事。 「東芝ソリューション テクニカルニュース」2009年秋季号 Vol.19 9
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