第1章 名詞 - 現代ポーランド語文法

名詞
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第1章 名詞
Ⅰ 総説
1.名詞の定義とその種類
人及び動物・事物の存在やある観念を表す語を名詞という。
名詞はその名詞自体の持つ意味とその名詞の語形とにより、いろいろな種類
に分けられる。
1)意味による分類:
① 具象名詞 と抽象名詞
具象名詞とは, 人・動物・物体のように現実に存在し、われわれが知覚でき
ると考えられるものを表わす名詞である。この中には、ある動作や動作の結果
のような形態的には存在しないが感知できるもの、空想的なもので現実に存在
しなくてもわれわれの頭脳の中で具体的な存在物として描き出すことができる
ものも含まれる。
firma 会社 gazeta 新聞 książka 書籍
抽象名詞とは,われわれの知覚では感知できないもので、単に観念上におい
てのみ存在するものを表わす名詞である。つまり、属性・現象・思想・状態な
どを表わす名詞であるといえよう。
piękno 美しさ、inteligencja 知性、niepókoj 不安
② 普通名詞と固有名詞
普通名詞とは,ある生物や事物を表わすとともに、それと同じ種類のすべて
のものをも共通して表わす名詞である。つまり、ある生物・事物・観念などが
属している種類の共通概念を表わす名詞といえよう。
固有名詞とは,ある特定の人名・地名のように, ほかの人間・ほかの土地と
区別してその固有性を表わす名詞である。固有名詞は普通は大文字で書き始め
ることにより、普通名詞と区別される。
Warszawa ワルシャワ、Australia オーストラリア、Angela Merkel アンゲ
ラ・メルケル
③ 個別名詞と集合名詞
個別名詞とは個々の人間・動物・事物を表わす普通名詞である。それに対し
て、語形は単数形であっても同じ種類に属するものの全体や個々の生物・事物
の集合を表わすのが集合名詞である。
集合名詞はそれ自体の持つ意味からさらに2つに区別することができる。す
なわち、その名詞だけで集合体を形成する個々の構成員(物)を示すことのでき
る集合名詞と、単に漠然と多数・多量の集合体を表わすだけでその構成員(物)
を示すためには名詞をつけて補足説明をしなければならない集合名詞に区別さ
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れるのである。
ア、それ自体で構成員(物)を示すことができる集合名詞.
wojsko 軍隊 stado 羊の群れ
fauna 特定地域の生息動物 szafa 個人の全衣装
イ、それ自体では構成員(物)を示すことができない集合名詞.
mnóstwo 多数 tuzin ダース tłum 群集
setka 百にもおよぶ数 tysiąc 千にもおよぶ数
④ 可算名詞と不可算名詞
可算名詞とは個数を数えることができるものを表す名詞を言い、不可算名詞
とは固体をなしておらず従ってその個数を数えることできないものを表す名詞
を言う。一般に具象名詞のうちの物質名詞と抽象名詞が不可算名詞である。
可算名詞の例:książka 本 dom 家 stół テーブル
不可算名詞の例:woda 水 mięso 肉 pokój 平和
2)形態による分類:
① 単一名詞と合成名詞
単一の概念を1語で表わす名詞を単一名詞と呼ぶのに対して,意味を異にす
る2つ以上の単語が結合して1つの新しい意味を作り出すような名詞を合成名
詞と呼ぶ。合成名詞には成り立ちにより以下のようなものがある。(例を挙げ
る=平成24年10月21日午後1時)
ア、名詞+名詞で作られているもの językoznawca 言語学者
イ、名詞+形容詞または形容詞+名詞で作られているもの szybkościomierz ス
ピードメーター
ウ、前置詞+名詞で作られているもの podomka 女性用部屋着 bezład 混沌
エ、副詞+名詞で作られているもの 下着 戦後など
オ、動詞+名詞で作られているもの お守り(幸運を運ぶ)
カ、動詞+動詞で作られているもの 往来
② 原形名詞と派生名詞
派生名詞とは、あるもとになる名詞つまり原形名詞から派生した名詞をいう。
派生名詞はそのもとになる名詞の語根に接尾辞や接頭辞をつけて作られる。
praca 仕事 → wspólpraca 共同制作、tettorysta テロリスト →
antyterrorysta 反テロリスト、sekretarz 長官 → podsekretarz 事務次官
③ 変意名詞
名詞の語尾にある特定の接尾辞をつけることによって,その名詞に特別の意
味を与えることがある。このような接尾辞をつけられた名詞を変意名詞という。
変意名詞を作る接尾辞には、拡大接尾辞( -cho, isko)、縮小接尾辞( -ek 等)、
愛称接尾辞、軽蔑接尾辞、等がある。
2.名詞の機能
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名詞の機能は、文の主語を示したり、斜格で文の補語を示すことである。ま
た、通常、補語として直接補語を対格で表し、間接補語を与格で表し、述語と
して造格でもって主語の役割を定義付けする。また、二つ以上の名詞を並べて
その関係を格によって示す。
ポーランド語の名詞は7つの格を有し、格に応じて変化形を有する。
3.名詞の構造
名詞は語幹と語尾で成り立つ。例えば、gazeta 新聞、の場合、語幹が gazetであり、語尾が -a である。lotnisko 飛行場、の場合、語幹が lotnisk- であ
り、語尾が -o である。語幹がその名詞の基本となり、それに語尾が付加され
て格を演出するのである。語幹となるものは無数にあるが、語尾となるものは
限られている。-a, -i, -y, -owi, -om, -e, -ie, -owie, -ów 等である。
Ⅱ 名詞の性
1.名詞には男性名詞、中性名詞、女性名詞の3つがあるのはロシア語と同じである。
名詞の性が必要なのは、それに関係する形容詞、形容分詞、代名詞、数詞、動詞の過
去形等が名詞の性によって形が異なってくるからである。この点もロシア語と同じであ
る。
ロシア語において名詞の性を規定するものは2つのグループに分かれた。すなわち、
文法上の性と自然の性である。この点はポーランド語でも同様である。文法上の性は名
詞の語尾によって決定されるものであるし、自然の性は人間あるいは動物の性によって
決定されるものである。これらの点もロシア語と同じである。そして、文法上の性と自
然の性はかなり共通している場合が多いが、そうでない場合もある程度見られるのもロ
シア語と同じである。
1)文法上の性
名詞の単数主格形の語尾で決められるのが原則である。例えば、主格が子音字に終わ
るもの(すなわち語尾がないもの)は、ロシア語の場合、男性名詞であり、ポーランド
語の場合も男性名詞が通常である。ただ、主格が子音字で終わっても女性名詞の場合が
ある(例:twarz「顔」、noc「夜」)。もっとも、女性名詞となる場合は語幹が硬化子
音か軟子音で終わるのが原則である。ロシア語の女性名詞で -ь で終わるものがあり、
これと類似しているのである。
① 男性名詞
ロシア語の場合、語尾がなく語幹だけで終わるものが通常は男性名詞であったが、こ
の点も同じである。
sklep 店 czas 時間 kot 猫 chleb パン syn 息子
nóż ナイフ wiersz 詩 deszcz 雨
kraj 国 pókoj 部屋
gość 客 przechodzień 通行人
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② 女性名詞
ロシア語の場合、語尾が母音となるものは、語幹が硬子音のもの、軟子音のものがあ
り、さらに語幹だけで終わり語の最後に軟音記号が付いて子音で終わるものがあった。
この点でもポーランド語は同様である。
zima 冬 gazeta 新聞 broda あごひげ żona 妻
ziemia 地球 ciocia 叔母 koszula シャツ
nić 糸 kość 骨 łódź ボート gęś ガチョウ wieś 村 więź ひも sól 塩 twarz 顔
③ 中性名詞
ロシア語の場合、語尾が母音を取り、-о か -е になる。ポーランド語でも同様である。
piwo ビール mięso 肉 biuro オフィス lotnisko 飛行場 studio スタジオ
pole 畑 miejsce 場所 morze 海
2)自然の性に基づく名詞
ロシア語において主格語尾が а か я であるにもかかわらず、男性名詞であるものが
あったが、これらは人間の男性を表すものであった。この点についてもポーランド語に
当てはまる。
① 主格が -a で終わる場合は、ロシア語では基本的には女性名詞であったが、この点は
ポーランド語でも同じである。また、-я で終わる場合も女性名詞であった。ポーランド
語において я に相当するものは -ia である。これも通常は女性名詞である。
-a で終わる場合で注意すべきは、男性名詞とも女性名詞ともなる場合があることであ
る。この点は、ロシア語と同様であり、人間を表す場合で、対象が男性であれば男性名
詞に、女性であれば女性名詞になるのである。例えば、ciapa 愚か者、の場合、それが
男性であれば男性名詞に、女性であれば女性名詞になるのである。
しかし、もっと複雑なのは主格が -a で終わる場合でも常に男性名詞になる場合があ
るということである。例えば、meżczyna 男、kolega 仲間、sędzia 裁判官、artysta 芸
術家、等は -a で終わるが、男性名詞である。そして、注意すべきは変化において、 -a
で終わる女性名詞と同じ変化をする場合と子音で終わる男性名詞と類似した変化をす
る場合があるということである(詳細は後述)。
② 主格が -o で終わる場合は、前述したように中性名詞が原則である。しかし、一部男
性名詞であるものがある。人名や家人を親しみを込めて言う表現の場合に用いられる。
もちろん自然の性として男性を表す。
dziadzio おじいさん、Stanisła Moniuszko スタニスワフ・モニューシュコ(ポーラ
ンドの作曲家)、Stasio スターシオ(ポーランドの歌手の愛称)
③ 主格が -y で終わる場合や、-i で終わる場合もあるが、これらは形容詞変化の男性名
詞となる。自然の性として男性を表す。
bufetowy バーテンダー、bliźni 隣人(女性であっても、男性名詞となる。)
④ 主格が -i で終わる場合で、女性名詞となるものもある。これは自然の性としての女
性を表す。
pani (女性を指して)~様、bogini 女神
3)自然の性と文法上の性との関係
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① 人間の場合
ア、実際は男性なのに女性名詞である例:特に見当たらない。
イ、男性も含まれるにもかかわらず女性名詞が代表形である例:osoba
ウ、実際は女性なのに男性や中性名詞である例:babsztyl 鬼婆、kopiuch ふしだらな女
エ、女性も含まれるにもかかわらず男性名詞が代表形である例:
technik 技術者、rybak 猟師、polityk 政治家
オ、実際の性は度外視され中性名詞が代表形である例:dziecko 子供
② 動物の場合
ア、動物名詞の中には、男性名詞だけとか、または女性名詞だけしか有しないものがあ
る(すなわち、片方だけで両方の性を表すもの)。このような場合には、その動物の雌
雄を指すわけではない。
男性名詞だけを持つもの:sokół 鷹、pająk 蜘蛛、skorpion さそり
女性名詞だけを持つもの:wrona カラス、żmija まむし、mucha ハエ、małpa 猿、
jaskółka つばめ
イ、一方、雌雄を意識する場合や、雌雄の意味が大きい動物の場合にはそれぞれの形が
ある。byk 雄牛、krowa 雌牛
kogut 雄鶏、kura 雌鶏
ogier 雄馬、klacz 雌馬
2.各名詞の特徴
以下においては男性名詞、女性名詞、中性名詞のそれぞれの特徴と例を述べる。
1)男性名詞
ロシア語の男性名詞においては活動体と不活動体を分ける必要があった。それは、変
化が異なっていたからであり、特に対格において異なりが見られた。ポーランド語の男
性名詞も一応そのような区別があると言えるが、さらに複雑なのは複数形において、そ
れらのみならず男性人間形を区別する必要があることである。すなわち、単数ではロシ
ア語のように生のある名詞(ロシア語の活動体に相当)、無生名詞(ロシア語の不活動
体に相当)で区別すればよいが、複数においては男性人間形、男性人間形以外の有生名
詞、無生名詞を区別する必要があるのである。従って、男性名詞には男性人間形名詞、
有生名詞、無生名詞の3種類あることになる。
① 男性人間形名詞
ア、硬子音で終わる場合
syn 息子 Arab アラブ人 kiep 愚か者 sąsiad 隣人 brat 兄弟
druch ボーイスカウト amioł 天使 arbiter アルバイター
szejk(イスラム教の指導者)wróg 敵
イ、硬化子音で終わる場合
listonosz 郵便配達員 mąż 夫 lekarz 医師 młodzieniec 若者 zamachowiec 暗殺者
widz 観客 kowal かじ屋 koniec 終わり ksiądz 司祭
ウ、軟子音で終わる場合
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gość 客 przechodzień 通行人 gołąb 鳩 karp 鯉 paw クジャク łokieć 肘 łabędź 白
鳥 ryś オオヤマネコ gwóźdź 爪 hotel ホテル koń 馬 kraj 国 wuj 叔父
エ、語尾 -a で終わる場合 artysta 芸術家 następca 後継者 eminencija 重要人物
satelita 従者 parlamentarzysta 国会議員 pracodawca 雇用者
オ、語尾 -i で終わる場合(形容詞変化が多い)bliźni 隣人
カ、語尾 -y で終わる場合 biegły 専門家
キ、語尾 -o で終わる場合 mikado 天皇 chłopisko やつ・野郎(拡大辞の一部となる)
ク、語尾 -ę で終わる場合 książę 王子
② 有生名詞
ア、語幹が硬子音で終わる場合 lew ライオン gad 爬虫類 giez アブ科のハエ pies 犬
orzeł 鷲 wągier 頭の黒い鳥(スズガモ等)ptak 鳥 szczeniak 子犬
イ、語幹が硬化子音で終わる場合 węgorz ウナギ wąż 蛇 rydz ウマバエの幼虫
ウ、語幹が軟子音で終わる場合 kozodój ヨタカ gołąb 鳩 karp 鯉 paw クジャク
③ 無生名詞
ア、語幹が硬子音で終わる場合 bęben ドラム film 映画 problem 問題 chleb パン
sklep 店
szczaw ギシギシ(植物の一種)rząd 政府 but 靴 obraz 絵 nos 鼻 artykuł 記事
ser チーズ bank 銀行 pociąg 列車 dach 屋根
イ、語幹が硬化子音で終わる場合 wiersz 詩 nóż ナイフ deszcz 雨 talerz 皿 koc 毛布
rydz キノコ pieniądz お金 wódz リーダー płaszcz コート hotel ホテル
ウ、語幹が軟子音で終わる場合
kraj 国 maj 5月 dziegieć タール tytoń タバコ
エ、単数主格語尾が -y で終わる場合 luty 2月(但し、形容詞変化名詞である)
2)中性名詞
中性名詞の単数主格の語尾は -o か -e が通常であるが、それ以外に -ę となる場合と
-um となる場合がある。
① 語尾が-o の場合 piwo ビール mięso 肉 biuro オフィス lotnisko 飛行場
studio スタジオ 等多数ある。
また、拡大辞は -isko や -ysko という接尾辞を取るが、これらのほとんどは中性名詞
である。
psisko 大型犬 dziewcznisko 大柄な女
また、縮小辞は -ątko という接尾辞を取るが、これらも中性名詞となる。
słoniątko 象の子供 dziewczątko 少女
② 語尾が -e で終わる場合 pole 畑、miejsce 場所、morze 海、等多数ある。
③ 語尾が -ę で終わる場合 imię 苗字 zwierzę 動物 plemię 部族 szczenię 子犬
kocię 子猫
④ 語尾が -um で終わる場合 centrum 町の中心地 muzeum 博物館
technikum 技術学校 panoptikum 蝋人形館
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3)女性名詞
① 女性名の単数主格の語尾は -a であることが多い。
-a で終わる女性名詞の例: lampa ランプ osoba 人 głowa 頭 zima 冬 żona 妻
apteka 薬局 noga 足
② 子音で終わる場合も見られる。
その場合にほとんどは語幹が硬化子音か軟子音に終わ
る場合である。そして、注意すべきは、単数主格では硬子音に終わるように見えるが、
語幹が軟子音の場合である。それは単数主格が -b, -p, -w, -m で終わる場合である。そ
の例は、głąb 深さ、brew 眉、chorągiew 旗、krew 血、rzeodkiew ダイコン、marchew
ニンジン、warząchew クッキングスプーン、等である。これらは単数主格が硬子音で
終わるものと同じであるが、それ以外の格は軟子音と同じ変化を示すものである。従っ
て、単数主格の -b, -p, -w, -m は実際には -bj, -pj, -wj, -mj であると言える。
※ 語幹が硬化子音、軟子音で終わる場合は男性名詞にも見られるので、当該名詞が男性
名詞であるのか、女性名詞であるのかの区別は難しい所がある。その区別は以下のよう
に従うべきであろう。この点、ロシア語においても ь で終わる場合が難しかったのと同
様である。
ア、まず、-dz と -j で終わる場合は、すべて男性名詞である。
イ、それ以外は下記のものがそれぞれの代表的なものである。
女性名詞の例: nić 糸 kość 骨 łódź ボート gęś ガチョウ wieś 村 więź ひも
sól 塩 myśl 考え jesień 秋 kolej 鉄道 noc 夜 rzecz 物 twarz 顔 mysz ネズミ
wesz シラミ podróż 旅行 krawędź 縁
男性名詞の例:hotel ホテル klucz 鍵 bagaż 荷物 karp 鯉 gołąp 鳩 paw クジャク
łokieć 肘 łabędź 白鳥 ryś オオヤマネコ gość 客 gwóźdź 爪 cel 目的 kufel カ
モ marzyciel 空想家 dzień 日 koń 馬 kraj 国 plac 四角 koc 毛布 koniec 終わり
rydz サフラン płaszcz コート deszcz 雨 lekarz 医師 talerz 皿 grosz 貨幣の単
位 listonosz 郵便配達員 nóż ナイフ wąż 蛇 teść 義理の父
上述したことから分かるように、女性名詞の方が少ないので、女性名詞を覚えるべきで
ある。
※ 尚、-ość で終わる名詞で形容詞から派生したものはいずれも女性名詞となる。ロシ
ア語で -ость で終わる名詞が女性名詞であったのと類似している。これらはいずれも抽
象名詞である。
miłość 愛(miły 愛らしい、から)liczebność 数(liczebny 数の、から)nowość 新
鮮さ( nowy 新しい、から)młodość 若さ(młody 若い、から) jakość 質( jaki ~
のような、から) radość 喜び( rad うれしい、から) starość 老齢期(stary 年取っ
た、から) szybkosć 速度(szybki 速い、から)złość 怒り( zły 有害な、から)
gość 客、は形容詞派生のものではないので、男性名詞である。
kość 骨、は形容詞派生のものではないが、女性名詞である。
3.二つ以上の性を持つ名詞
名詞の中には二つ以上の性を有する名詞がある。その際、意味のみならず語尾が同じ
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名詞と、意味は同じであるが、語尾が異なる名詞がある。
1)意味のみならず語尾も同じ名詞
これは語尾によって次の3種類に分けることができる。
① -a の場合
単数は女性名詞のように変化する。しかし、複数では性に応じた変化をする。そして、
単数においては関係する形容詞、代名詞などは、男性を表す場合には男性形に、女性を
表す場合には女性形になる。複数においては関係する形容詞、代名詞などは、男性を表
す場合には男性人間形を、女性を表す場合には非男性人間形になる。しかし、男性であ
っても軽蔑するような時は関係する形容詞、代名詞等は女性形や非男性人間形が使われ
る。例えば、gapa まぬけ・馬鹿、pokraka 醜い姿、sierota 孤児、等である。
ten gapa そのまぬけ、の変化は以下のごとくである。
男性を表す場合
単数
ten gapa
主格
tego gapy
生格
temu gapie
与格
tego papę
対格
tym gapą
造格
tym gapie
前置格
gapo
呼格
複数
ci gapy
tych gapów
tym gapom
tych gapów
tymi gapami
tych gapach
gapy
女性を表す場合と軽蔑的な場合
単数
複数
ta gapa
te gapy
主格
tej gapy
tych gap
生格
tej gapie
tym gapom
与格
tę gapę
te gapy
対格
tą gapą
tymi gapami
造格
tej gapie
tych gapach
前置格
gapo
gapy
呼格
② -o の場合
これは中性名詞のように変化する。そうであれば、中性名詞扱いとすれば良いのであ
るが、関係する形容詞、代名詞等は表すものが男性か女性かによって異なってくるので、
二つ以上の性を持つ名詞の範疇に入るのである。これらは軽蔑的な語が多く、語の終わ
りが -sko あるいは -ło となる。
biedaczysko 無一文者 chamidło 不作法者
chamidło の変化は
単数
複数
主格
chamidło
chamidła
生格
chamidła
chamideł
与格
chamidłu
chamidłom
対格
chamidło
chamidła
造格
chamidłem
chamidłami
前置格
chamidłe
chamidłach
呼格
chamidło
chamidła
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③ 子音で終わる場合
変化は男性名詞と同じである。複数形の変化はたとえそれが女性を表す場合であって
も男性人間形の変化のそれに従う。従って、関係する形容詞、代名詞等は常に単数は男
性形によって、複数は男性人間形によって表されるのが原則である(例外は下記のエの
後者)。そして、複数の変化においては生格=対格となる(例外は下記のエの後者)。
これらの例は以下のごとくである。
ア、語幹の最後が -fil や -log となる場合 bibliofil 書籍愛好家 biolog 生物学者
イ、語幹の最後が -ewicz や -owicz となる場合 dorobkiewicz 成り上がり者
autostopowicz ヒッチハイカー
ウ、語幹の最後が -ec や -owiec となる場合の多くのもの
tubylec 土着民 fachowiec 専門家
※ しかし、-ec や -owiec となっても、男性だけを表し、女性を表す場合には別の単
語があるものがある。例えば、mieszkaniec 住人、は男性の場合であり、女性の場合
は mieszkanka というもので表すのである。
エ、それ以外の子音で終わる場合には2つを区別することができる。すなわち、一つは
上の3つ(ア、イ、ウ)と同じく複数の場合に関係する形容詞、代名詞等が男性人間
形変化に従うものと、他の一つは複数の場合に関係する形容詞、代名詞等が非男性人
間形変化に従うものである。
前者の例には、gość 客、pielgrym 巡礼者、przechodzień 通行人、等がある。
後者の例には、cham 不作法者、pajac あやつり人形、milczek 口数の少ない人、等
がある。
尚、複数形が2つあるものもある。その場合には、関係する形容詞、代名詞等はそ
れぞれに従う。
例えば、chuligan フーリガン、には chuligani と chuligany の2つがある。「こ
れらのフーリガンが」、と言う場合、男性の場合は ci chuligani、女性の場合は te
chuligany となる。
2)性が異なり、また、綴り字が少し異なる名詞
① 意味が同じ名詞
fałd(男性名詞)と fałda(女性名詞)衣服などの折り目・しわ
rodzynek(男性名詞)と rodzynka(女性名詞)干しぶどう
② 意味が異なる名詞 これは別の単語であると考えるべきであろう。
portier 門番(男性名詞) portiera ドアのカーテン(女性名詞)
sztab 棒(男性名詞) sztaba 竿(女性名詞)
3)尚、綴りが同じであるが、性が異なり、異なる意味を持つ名詞もあるが、これはそ
れぞれ別の単語であり、たまたま綴りが同じと考えるべきであろう。例えば、głąb は男
性名詞の場合には、「木の切り株」、の意味であり、女性名詞の場合には、「深さ」、
の意味である。また、boa は男性名詞の場合には、「蛇のボア」、を意味し、中性名詞
の場合には、「羽毛」、を意味する。また、żołądź は男性名詞の場合には、「ドングリ」、
を意味し、女性名詞の場合には「陰茎亀頭」を意味する(時に女性器の陰核亀頭を意味
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する場合もある。)。
4.男性名詞から派生した女性名詞
ロシア語において職業や、動物の雄雌等において原則としては職業名は男性名詞であ
り、また、動物のおいて雄は男性名詞で、雌は女性名詞である。そして、職業で女性を
表す場合は、男性名詞に接尾辞を付加したり、多少変化させたりして女性名詞を創出し
た。また、動物の雌を表す場合も同様に接尾辞を付加したり、多少変化させたりして雌
を表す名詞を創出した。同じことはポーランド語においても見られる。それらは通常は
接尾辞で区別する。例えば、労働者の場合、男性は pracownik で、女性の労働者は
pracownica である。ジャーナリストの場合は男性は dziennikarz 女性は dziennikarka
である。
その他の主なものは以下のごとくである。
1)職業名が男性名詞であり、-k で終わる名詞の場合は、通常は終わりが -ca や -czka
となる。
kierownik マネージャー → kierkowniczka 女マネージャー、pracownik 労働者 →
pracownica 女性労働者、urzędnik 公務員 → urzędniczka 女性の公務員、naczelnik
部局長 → naczelniczka 女性の部局長、prawnik 法律家 → prawniczka 女性の法律
家、robotnik 労働者 → robotnica 女性の労働者
※ しかし、対応の女性名詞を持たない名詞もある。
polityk 政治家、は男性でも女性でも使われるが、男性名詞である。その他の例には、
rybak 漁民、technik 技術者、がある。
2)職業名や社会的地位を表すものが男性名詞であり、-k 以外で終わる名詞の場合は、
語の終わりが -ka や -arka となるのが通常である。
cudzoziemiec 外国人 → cudzoziemka 女性の外国人、student 男子学生 →
studentka 女子学生 、piekarz パン製造業者 → piekarka(女性の)パン製造業者 、
lekarz 医師 → lekarka 女医、kucharz 料理人 → kucharka (女性の)料理人、
przyjaciel 友人 → przyjaciółka 女友達、piosenkarz 歌手 → piosenkarka 女性歌手、
policjant 警官 → policjantka 女性警官、nauczyciel 教師 → nauczycielka 女性教師、
dziennikarz ジャーナリスト → dziennikarka 女性のジャーナリスト、farmaceuta
薬 剤 師 → farmaceutka 女 性 薬 剤 師 、 parlamentarzysta 国 会 議 員 →
parlamentarzystka 女性国会議員
しかし、対応の女性名詞を持たない名詞もある。
kupiec 商人、は男性でも女性でも使われるが、男性名詞である。その他の例には、
chłop 農民、inżynier 技師、profesor 教授、architekt 建築家
3)動物の場合 ただ、この場合は別の単語になることが多い。一方では、男性名詞で
雄雌を代表する場合もかなりある。
ア、雄雌で区別する場合
królik (雄)家ウサギ → królica(雌)家ウサギ、samiec 雄一般 → samica 雌一般、
byk 雄牛 → krowa 雌牛、ogier 雄馬 → klacz 雌馬、knur 雄豚 → maciora 雌豚、
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kogut 雄鶏 → kura 雌鶏
イ、男性名詞で雄雌を代表する場合
słoń 象、tygrys 虎、lampart ヒョウ、wilk 狼、lis きつね、kot 猫、pies 犬
ウ、女性名詞で雌雄を代表する場合
małpa さる、żyrafa きりん、kozica シャモア、zebra しまうま
4)① 民族名の場合は、やはり男性名詞が主体で、それから女性名詞が派生することが
多いが、通常は語尾が -ka となる。男性を表す場合の語尾は様々である。最初の文字
が大文字であることに注意すべきである。
Polak ポーランド人 → Polka、Niemiec ドイツ人 → Niemka、Włoch イタリア人
→ Włoszka、 Amerykanin アメリカ人 → Amerykanka、Holender オランダ人 →
Holenderka、
Grek ギリシア人 → Greczynka、
Hiszpan スペイン人 → Hiszpanka、
Francuz フランス人 → Francuzka、Rosjanin → Rosjanka、Hindus インド人 →
Hinduska、Chińczyk 中国人 → Chinka、Turek トルコ人 → Turczynka、
Japończyk 日本人 → Japonka、Kanadyjczyk カナダ人 → Kanadyjka
② 市民を表す場合でも女性の場合には語尾が -ka となるのであるが、この場合は最
初の文字が小文字である。
rzymianin ローマ市民 → ryzmianka 、nowojorczyk ニューヨーク市民 →
nowojorczanka、paryżanin パリ市民 → paryżanka、berlińczyk ベルリン市民 →
berlinianka、londyńczyk ロンドン市民 → londynka
5)家族関係を表す名詞では、女性形は語の最後が-owa/-ewna で終わるものが多いが、
-ka で終わるものもある。
brat 兄 → bratowa 義理の姉、król 王 → królowa 女王、syn 息子 → synowa 息
子の妻、teść 舅 → teściowa 姑、krewny 親族(男)→ krewna 親族(女)、wdowiec
男やもめ → wdowa やもめ、kuzyn 従兄弟 → kuzynka 従姉妹、wnuk 孫息子 →
wnuczka 孫娘、szwagier 義理の兄弟 → szwagierka 義理の姉妹
6)男性名詞から派生した女性名詞で語尾が -yni で終わるものもある。もっとも、語
幹が k , g で終わる男性名詞の場合には、-ini で終わる。
gospodarz 家主 → gospodyni (女性の)家主、 dozorca 警備員 → dozorczyni(女
性の)警備員、następca 後継者 → następczyni(女性の)後継者、obrońca 弁護士
→ obrończyni (女性の)弁護士、wychowawca 担任教師 → wychowawczyni (女
性の)担任教師、znawca 専門家 → znawczyni (女性の)専門家 członek メンバー
→ członkini(語幹が -k で終わる)
7)女性形を持たない名詞の場合には、pani を付加することにより女性を表す。
profesor 教授 女性の教授を表す場合は pani profesor となる。
8)女性の苗字も男性名詞から派生した女性名詞の一種といえる。ただ、これは今日で
は徐々に廃れている。20世紀初頭までは女性の苗字は男性の苗字から派生していたが、
今日では必ずしもそうならず、そのまま夫の苗字や父の苗字と同じことが多い。しかし、
まだ、残存していることもあり、そのような場合は、父や夫の苗字の語尾等を変更する
ことによって作られる。そのような場合には、以下のものがある。
12
名詞
① 男性の苗字で -ski, -cki, -dzki で終わるもの(すなわち夫や父の苗字が形容詞の形態
を取っている場合)はその妻や娘などを表す場合にはそれぞれ -ska, -cka, -dzka となり、
こ れ ら は 形 容 詞 変 化 を す る 。 Napieralski → Napieralska 、 Komorowski →
Komorowsla、Jarocki → Jarocka、Zawadzki → Zawadzka
② 男性の苗字で子音で終わるものや -o で終わるものは、その妻は -owa となり、娘は
-ówna となって終わる。
Nowak の妻の苗字は Nowakowa となり、娘の苗字は Nowakówna となる。
Mazur の妻の苗字は Mazurowa となり、娘の苗字は Mazurówna となる。
注意すべきは、 -owa となるものは、形容詞変化をするが、-ówna となるものは女性
名詞変化をするということである。
③ まれであるが、男性の苗字で -a で終わるものがある。このような苗字の妻の苗字は
-ina となり、娘の苗字は -anka となる。例えば、Skora の妻の苗字は Skorina、娘
の苗字は Skoranka となる。そして、いずれも変化は女性名詞変化である。
9)形容詞変化の男性名詞の場合には、女性名詞は形容詞の女性形となる。
oskarżony 被告、に対して女性の被告は oskarżona、osadzyony 囚人、に対して女性
の囚人は osadzyona である。
5.略語の性
略語の性は原則として、最後の略語によって決せられるのが原則である。例えば、
NATO は Organizacja Paktu Pólnocnego Atlantyku 北大西洋条約機構、の略である
が、-O であることを反映して中性名詞扱いをされるのが普通である。それ故、NATO
postanowiło wysłać okręty wojenne do wybrzeży Somalii. NATOはソマリア沿岸へ
軍艦を派遣することを決定した、となり、postanowiło と過去単数中性形が使われてい
るのである。また、ONZ の場合は、Organizacja Narodów Zchedonocznych の略であ
るが、-Z であることを反映して男性名詞扱いとなる。また、ACTA w Europie jest
martwa. ACTAはヨーロッパでは死んでいる、
となり、
ACTA は Anti-Counterfeiting
Trade Agreement の略であるが、 -A であることを反映して女性名詞扱いとなるので
ある。
もっとも、中心的な名詞を基準にして決せられる場合もある。NATO、ONZ とも中
心的な名詞である Organizacja が女性名詞であるので、
女性名詞扱いとなることもある。
また、略語には上述した文字のみではなく、音節を捉えて略語とする場合もある。例
えば、Polska Farmacja ポーランド製薬企業、の場合、Plofa と略する場合もある。こ
のような場合には、これが一種の名詞として扱われ、-a で終わるので女性名詞のように
変化するのである。
6.外来語の性
外来語は不変化であるのが原則であり、その名詞の性はポーランド語で関係する名詞
に準じると一応言える。例えば、pepsi は cola コーラ(女性名詞)と関係するので女
性名詞となる。また、grizzly 熊、はポーランド語の niedźwiedź 熊(男性名詞)と関
名詞
13
係するので、男性名詞となるのである。
もっとも、外来語であっても主格の語尾が典型的なものである場合にはそれに準ずる
ことが多いし、これらの名詞は変化するのが通常である。例えば、metro 地下鉄、は語
尾が -o であるので、中性名詞であり、中性名詞で語尾が -o と同じように変化する。ま
た、kawiarnia カフェ、は語尾が -a であるので、女性名詞であり、-nia で終わる女性
名詞のように変化する。
7.みなし名詞
ロシア語において本来名詞でないものが文中で名詞のように取り扱われる場合には、
中性名詞扱いとなったが、このことはポーランド語でも当てはまる。
Jego <nie> mi nie się podobało. 彼の「ノー」は私には気に入らなかった。
On nie może wymawiać polskie <sz>. 彼はポーランド語の sz を発音することがで
きない。
Ⅲ 名詞の数
1.ロシア語において通常の名詞には単数形と複数形があるのであるが、中には単数形
しかない名詞や、複数形しかない名詞がある。この点、ポーランド語においても同様で
ある。
尚、スラブ語の起源である共通スラブ語時代には単数・複数以外に双数というものが
あったが、双数はスロヴェニア語とソルブ語に残されているだけであり、ポーランド語
では複数に帰着している。例えば、uszy 耳、oczy 眼、である。
2.単数形しかない名詞
これには集合名詞、物質名詞、抽象名詞、固有名詞がある。
1)集合名詞 数えられる物を示す名詞の中に、個々の物として捉えず、集合的あるい
は物質的に捉える場合に単数形しかない名詞となる。しかし、個々の物として捉える場
合には複数形となる。(下記4.参照)
młodzież 青年 publiczność 観衆 ubranie 衣服 obuwie 履き物 garderoba 持ち衣
装
2)物質名詞 物質名詞のうち、幾らかのものが、単数形しかなく、すべてではないこ
とに注意すべきである。この点もロシア語と同様である。
stal 鉄 cukier 砂糖 ryż 米 mięso 肉 woda 水
3)抽象名詞 形容詞や動詞から派生するものの、幾らかのものが単数形しかない。
czytanie 読書 wolność 自由 komunizm 共産主義 uwaga 注意 młodość 若さ
zadłużenie 債務 bezpieczeństwo 安全
4)固有名詞 苗字、名前、通称、川の名前、本のタイトル等
これらは例を挙げないが、当然であろう。
5)月の名称、東西南北等
14
名詞
maj 5月 lipiec 7月 zachód 西 południe 南
※ 尚、ロシア語ではある種の野菜、穀物、苺類等もまた、単数形しかない名詞であった
が、ポーランド語においてはこれらは複数形も見られる。例えば、картофель ジャガ
イモ、の場合、ロシア語では単数形しかないが、それを表すポーランド語の kartofel は
複数形も見られるのである。例:młode kartofele 新しいジャガイモ
3.複数形しかない名詞
1)通常は2つかそれ以上の部分からなる物を表す名詞は複数形しかない。
sanie そり okulary 眼鏡 usta 口唇 drzwi ドア(尚、drzwo 木、と区別せよ)
nożyczki はさみ schody 階段 skrzypce バイオリン spodnie ズボン rajstopy タイ
ツ organy 器官 kajdany 手錠 plecy 背中 grabie 熊手 manatki 所持品
2)しかし、意味的には明らかに単数であるが、複数形を取る名詞がある。それらには、
nosze ストレッチャー peryferie 郊外 wakacje 休暇 ferie 休暇 wczasy 休暇
nudności 嘔気
3)それ以外に地理的名称とか、グループ間の関係、時の概念についても複数形しかな
い名詞がある。
rodzice 両親 urodziny 誕生日 bliźwnięta 双子 państwo 夫婦 wujostwo 叔父と叔
母(ただ、最後の2者については異論があり、集合名詞扱いとして単数とする考えもあ
る。)
ポーランドの都市の名前には複数形のものがある。
Kielce キエルツェ Puławy プワヴィ、等
4)複数形しかない名詞はその変化によって男性名詞類似の、女性名詞類似の、中性名
詞の類似の、の3つに分けられる。複数形においては形容詞、代名詞等において男性人
間形、非男性人間形で変化形が異なるので、これらを区別する必要がある。それによっ
て関係する形容詞、代名詞等の変化形が異なるからである。このことは、ロシア語にお
いては関係する形容詞や代名詞等で複数形と関連するものは1種類しかないのと異な
る所である。
複数形において変化の違いは主として複数生格形に表れる。
例えば、
finanse
財政、は男性名詞類似であり、その複数生格形は finansów となる。一方、spodnie ズ
ボンは女性名詞類似であり、その複数生格形は spodni となる。さらに、usta 口、唇、
は中性名詞類似であり、その複数生格形は ust となる。それぞれの例は以下のごとくで
ある。
① 男性名詞類似の複数形しかない名詞(→ の後は複数生格形を示す。)
bary 肩 → barów、ciuchy ぼろ服 → ciuchów、cugle 手綱 → cuglów、dzieje 歴史 →
dziejów、kleszcze やっとこ(ペンチ)→ kleszczy、kuluary 廊下 → kuluarów、organy
パイプオルガン → organów、okulary 眼鏡 → okularów、plecy 肩 → pleców、wczasy
休日 → wczasów、Balkany バルカン諸国 → Balkanów、schody 階段 → schodów
② 女性名詞類似の複数形しかない名詞
drzwi ドア → drzwi、ferie 休暇 → ferii、nożyczki はさみ → nożyczek、skrzypce バ
名詞
15
イオリン → skrzypiec、urodziny 誕生日 → urodzin、wakacje 休暇 → wakacji
町の名前で -ce で終わる場合も、このタイプに属する。
Chojnice ポーランドの北にある都市 → Chojnic、Dębice ポーランドの南西にある村の
名前 → Dębic、
Kielce ポーランドの南の方にある都市 → Kielc、
Katowice → Katowic、
Siedlce → Siedlec 等
その他、都市の名前や山脈、国等でこのタイプのものがある。
Ateny アテネ → Aten、Alpy アルプス山脈 → Alp、Filipiny フィリピン → Filipin、
Niemcy ドイツ → Niemiec、Włochy イタリア → Włoch、Węgry ハンガリー →
Węgier、Chiny 中国 → Chin、Czechy チェコ → Czech、Indie インド → Indii
③ 中性名詞類似の複数形しかない名詞
wrota 門 → wrót、usta 口 → ust、gusła 魔法 → guseł
ラテン語から由来する名詞で複数主格形の終わりが -ia となるものもこれに含まれる。
studia 研究 → studiów、genitalia 生殖器 → genitaliów
※ ラテン語由来のものは複数生格語尾が -ów となっているので男性名詞類似と考えら
れるかも知れない.。しかし、これらは特殊な変化をする中性名詞であり、複数生格は通
常の男性名詞複数生格と同じ -ów であり、中性名詞類似の複数形しかない名詞と考え
て良いであろう(Ⅴ名詞変化概要3.中性名詞2)特殊形を参照。)
④ 形容詞変化の複数形しかない名詞もある。例えば、dane データ、であり、その複数
生格は danych である。
※ 国名の中には複数形のものがある。
多くの国名は単数の女性名詞で主格の語尾が -a で終わる。例えば、Rosja ロシア、
Ukraina ウクライナ、は単数の女性名詞である。また、 少数ではあるが、-e, -i, -o, -u
で終わる国名もある。それらは中性名詞である。例えば、Chile チリ、Kosowo コソ
ボ、Gwinea Bissau ギニアビサウ、Peru ペルー、Haiti ハイチ、等である(それ以
外は男性名詞である。例えば、Wietnam ベトナム、である。)。
複数の国名は以下のものがあるが、上述したものと同じく複数生格を → で示すと、
例えば、Niemcy ドイツ → Niemiec、Włochy イタリア → Włoch、Węgry ハンガ
リー → Węgier、Chiny 中国 → China、Czechy チェコ → Czech、等は女性名詞
類似の複数名詞である。また、Stany Zjednoczone アメリカ合衆国、は男性名詞類似
の複数名詞である。その生格形は Stanów Zjednoczonych、である。
従って、
Niemcy chcą kontroli na granicach. ドイツは国境線をコントロールしたい。
、
Rosja chce kontoroli na granicach. ロシアは国境線をコントロールしたい。
4.集合名詞、物質名詞、抽象名詞等の複数
1)集合名詞は、人または物のある総体をひとつのまとまったものとして示すのである
から、通常は単数である。しかし、ある具体的集団を意味し、その集団が2つ以上あれ
ば複数を用いる。
16
名詞
pokolenie 世代、は集合名詞であるが、od pokoleń 数代にわたって、と複数形になる
と集団が2つ以上となるのである。
tłum 群集、は集合名詞であるが、tłumy ludzi 人々の群(群衆)と複数形になる。
2)物質名詞としてであれば複数形はないが、具体的な物を表す意味に転じると、複数
形が用いられる場合がある。
woda 水、は物質名詞であり、複数形はないが、wody と複数になると、川や湖等に
ある具体的な水を表す。そして、wody stojące 湖沼、となる。
papier 紙、は物質名詞であり、物質名詞としては複数形はないが、具体的な一枚一枚
の紙を示す場合には、数枚の紙ということで複数はあり得る。さらに、papiery と複数
で「証明書」を表すこともある。
błoto 泥、は物質名詞であり、複数形はないが、błota と複数になると、「湿地帯」を
意味する。
3)抽象名詞の場合、単数は抽象的な概念を表すが、複数は具体的な特定の意味で用い
られるものがある。
zajęcie(単数)占拠、zajęcia(複数)授業
wybór(単数)選択、wybory(複数)選挙
dobro(単数)善・善行、dobra(複数)財産・不動産
siła(単数)力、siły(複数)権力・軍隊
władza(単数)権力 władzy(複数)官憲・当局
5.単数、複数の一般的用法
一般的には1個(ひとり)の物(者)には単数、2個(2人)以上の物(者)を表す
場合には複数を用いる。しかし、数えられれない物(こと)も存在するし、上述したよ
うに、名詞すべてが両方の形をもつわけではないし、両方の形があるが、意味と用法が
異なる名詞等も見られる。そこで、一応以下のように言える。
1)一般的複数 特定の1個を指すのではなく、ものごと一般を言う時には、複数が用
いられることが多い。
Chłopiecy lubią grać w piłkę. 男の子はサッカーをするのが好きだ。
Nauczyciel nareperuje błądy w pracach domowych uczniów. 先生は生徒の宿題の誤
りを直す。
2)代表単数 概念を一般的、総括的に示したり、物の本質を言う場合には、通常単数
を用いる。
Pies ma wyczulony węch. 犬は鋭い嗅覚を持っている。
3)共通単数 複数の物(者)に共通する同じ物を示す時は、通常単数を用いる。
Wszystkie pracowniki ubierali się w uniformie. すべての職員は制服を着ていた。
4)通常は複数形が用いられるもの
単数形も認められるし、単数形と複数形で意味の違いはないが、通常は複数形が用
いられる名詞がある。例えば、włos 毛髪、は通常は włosy と複数が用いられるが、
毛1本を表す時は単数である。また、łza 涙、は通常は łzy と複数が用いられるが、
名詞
17
涙1滴を表す時は単数である。
Ⅳ 名詞の格
1.名詞の格とは
ロシア語において、名詞の格は、主格、生格、与格、対格、造格、前置格の6つがあ
った。ポーランド語においてはそれらの6つは同じであるが、さらに呼格というのが加
わる。ただ、呼格は使用範囲が限られていて、ロシア語では主格で表されるものである。
概略的にいえば、呼びかけに用いるのであるが、愛情の念や尊敬の念をもった相手に対
して使用するのが通常である。しかし、口語では相手を侮辱する場合に使用することが
ある。いずれにしろ呼格は文中の他の要素とは直接的な関連性を有しない。呼格につい
ての詳細は後述するが、ここではポーランド語の格は7つあることを把握されたい。
それぞれの格については、疑問代名詞との関係で概略的に以下のように理解される。
呼格を除いてほぼロシア語に準じて理解すれば良いであろう。
1)主格 日本語の「誰が、何が」に対するものである。ポーランド語では kto? co? に
対するものである。
2)生格 日本語の「誰の、何の」に対するものである。ポーランド語では kogo? czego?
に対するものである。
3)与格 日本語の「誰に、何に」に対するものである。ポーランド語では komu? czemu?
に対するものである。
4)対格 日本語の「誰を、何を」に対するものである。ポーランド語では kogo? co? に
対するものである。
5)造格 日本語の「誰によって、何によって」に対するものである。ポーランド語で
は kim? czym? に対するものである。
6)前置格 日本語にはそれに相当するものはない。ポーランド語では前置詞+kim? 前
置詞+czym? に対するものである。
7)呼格 疑問代名詞と関係するものはない。
2.変化しない名詞
ポーランド語の名詞はロシア語と同じく格によって変化するのであるが、中には変化
しない名詞もある。それは外来語に多いが、中性名詞になることが多い。
1)中性名詞の場合
① 語尾が -o となるもの
stereo ステレオ euro ユーロ wideo ビデオ kakao ココア
② 語尾が -i となるもの
kombi ステーションワゴン harakiri 切腹 spaghetti スパゲッティ
③ 語尾が -u となるもの
18
名詞
menu メニュー
④ 語尾が -e となるもの
Delaware デラウェア州(アメリカ合衆国の州の一つ)
Zatoka Delaware デラウェア湾
⑤ その他
dzisiaj 今日 dziś 今日
2)女性名詞の場合
pepsi ペプシコーラ
固有名詞の場合、女性に関するものは語尾が -a 以外で終わる場合には、不変化で
ある。
例えば、Clinton の場合、
Rozmawiam z Clinton. 私はクリントンさんと話し合う(この場合のクリントンは女
性である)。
Rozmawiam z Clingonem. 私はクリントン氏と話し合う(この場合のクリントンは
男性である。)。
尚、肩書きや職業名で女性に関する場合、男性名詞と同じ名詞を使う場合には、そ
の名詞は女性を表す時には不変化となる。例えば、doktor 博士 dziekan 学部長
psycholog 心理学者 politylog 政治学者
Rozmawiam z doktor Nowak. 私はノヴァック博士(女性)と話し合う。
Rozmawiam z doktorem Nowakiem. 私はノヴァック博士(男性)と話し合う。
3)男性名詞の場合
特になし
4)頭字語の場合 頭字語とは略語の一種で複数の単語から構成される語の頭文字を取
って繋げた語を言う。これにはイニシャリズムとアクロニウムがある。前者は一文字ず
つアルファベット名で読むものであり、後者は普通の単語のように読まれるものである
(例えば、NATO)。
① 母音で終わるものは不変化である。
NATO 北大西洋条約機構、PKO 国際連合平和維持軍
② 子音で終わるものも不変化のものが多い。
ONZ (Organizacja Narodów Zjednoczonych)国際連合、
ziman wojna w ONZ 国際連合における冷戦
5)以前は不変化であったが現在は変化する名詞
kino 映画、metro 地下鉄 radio ラジオ Moroko モロッコ
従って、Histria Moroka モロッコの歴史、となる。
名詞
19
Ⅴ 名詞変化総論
1.総説
ポーランド語の名詞にはロシア語と同じく、男性名詞、中性名詞、女性名詞がある。
ロシア語においてはその変化形の特徴において男性名詞において活動体と非活動体を
区別したが、ポーランド語においてはそれに加え、男性名詞を男性人間形名詞、男性有
生名詞、男性無生名詞に分けて考えるべきである。それ故、名詞変化の特徴に言及する
場合、5つを区別して述べる。この5つを区別する理由は重要である。特に、当該名詞
を修飾する形容詞の変化形や動詞の過去形の主語になる場合の変化形において重要で
ある。
ロシア語においてはその変化の種類は岩波辞典によれば21種類を区別することが
できるが、ポーランド語においてはもっと多い。ポーランド語においては130種類程
度を数えることができる。従って、それぞれを暗記することは不可能に近い。そこで、
ある程度概略的に分類することが必要となる。それには男性、中性、女性それぞれの名
詞の基本形と派生形に分けて概観するべきである。
尚、ポーランド語において名詞の格は、主格、生格、与格、対格、造格、前置格、呼
格の7つがある。ロシア語においては呼格がなく、それ以外の6つの格があった。
名詞の変化を考える場合、名詞の主たる形は辞書に掲載されている単数主格であるの
で、それによって分けるのが合理的である。
1)男性名詞
基本形:単数主格が子音で終わる名詞
特殊形:単数主格が母音で終わる名詞
2)中性名詞
基本形:単数主格が母音で終わる名詞
特殊形:単数では全く変化しない名詞
3)女性名詞
基本形:単数主格が母音で終わる名詞
特殊形:単数主格が子音で終わる名詞
それぞれについて音声学的に語幹の終わりが硬子音か(広義の)軟子音かによって区
別することができる(硬子音、軟子音の区別については発音の項参照)。そして、(広
義の)軟子音に関してはさらに硬化子音と狭義の軟子音に分けることができる。そして、
軟口蓋音たる k, g, ch は多少異なる。ロシア語において к. г 語幹の名詞が、混合変化で
あったことと多少関係があろう。k, g, ch 自体は硬子音である。しかし、他の硬子音と
は異なった変化をする。すなわち、女性名詞では硬子音と同じように変化するのである
が、男性名詞、中性名詞では軟子音の変化に近いのである。
以下、各名詞について概要を述べる。尚、各変化形のパラダイムにおいて、'-i や '-e や
'-y はそれぞれの語尾の前の語幹子音が子音交替
(主として軟音化)
を起こすことを示す。
20
名詞
また、○はゼロ語尾を表す。
2.男性名詞
1)基本形
男性名詞は、男性人間名詞、男性有生名詞、男性無生名詞に区別するが、それぞれの
違いは生格、対格に現れる。すなわち、男性人間名詞は単数、複数とも生格と対格は同
じである。しかし、男性有生名詞は単数は生格と対格が同じであるが、複数になると対
格は主格と同じである。そして、男性無生名詞では単数、複数とも対格は主格と同じな
のである。これは単数においてはロシア語の活動体名詞に相当するのが、男性人間名詞
と男性有生名詞であるので、それと同じく生格と対格が同じであり、男性無生名詞の場
合は、ロシア語の不活動体に相当するので、対格と主格が同じになる。しかし、複数に
おいてはポーランド語の特殊性たる男性人間名詞とそれ以外の非男性人間名詞を区別
することが、それに関係する形容詞、代名詞、動詞の過去形との関係で重要であるので、
男性人間名詞は生格と対格が同じとなるが、男性有生名詞と男性無生名詞は主格と対格
が同じになるのである。
① 語幹が硬子音で終わる場合(但し、k, g 等の軟口蓋音は除く)。
ア、男性人間名詞
この場合は、単数、複数とも生格と対格が同じであり、複数主格は通常は語尾が -i で
ある。しかし、特殊な場合として複数主格が -owie となる場合と、-a となる場合があ
る。
語幹が硬子音(但し、k,g 等の軟口蓋音の場合は除く)で終わる場合の変化語尾を以
下に示す。
単数
複数
主格
-◯
‘-i
生格
-a
-ów
与格
-owi
-om
対格
-a
-ów
造格
-em
-ami
前置格
‘-e
-ach
呼格
‘-e
‘-i
上のうち、
単数前置格・呼格の '-e の ' はその前の子音が硬口蓋音化することを表し、
複数主格・呼格の '-i の ' はその前の子音が硬口蓋音化することを表す。
例:kerner ウエイター chłop 農民 student 学生 imigrant 移民 sąsiad 隣人
複数主格の語尾が -owie となるのは、syn 息子、であり、synowie となる。また、-a
となるのは、brat 兄弟、であり、その複数主格は bracia となる。
名詞
21
イ、男性有生名詞 語幹が硬子音(但し、k,g 等の軟口蓋音の場合は除く)で終わる場
合の変化を以下に示す。
この場合は、単数は生格と対格が同じであり、複数では主格と対格が同じである。
単数
複数
主格
-◯
-y/ -i
生格
-a
-ów
与格
-owi
-om
対格
-a
-y/ -i
造格
-em
-ami
前置格
‘-e
-ach
呼格
‘-e
-y/ -i
例:kozioł 山羊 lew ライオン pies 犬 kot 猫
ウ、男性無生名詞
男性名詞で最も基本的な変化はこの男性無生名詞であり、しかも、語幹が硬子音(但
し、k, g 等の軟口蓋音は除く)で終わる場合である。この場合は、単数、複数とも主
格と対格が同じである。
その変化語尾を以下に示す。
単数
複数
主格
-◯
-y/ -i
生格
-a/-u
-ów
与格
-owi
-om
対格
-◯
-y/ -i
造格
-em
-ami
前置格
‘-e
-ach
呼格
‘-e
-y/ -i
例:film フィルム ocean 大洋 mur 壁 kocioł ポット sklep 店 sposób 方法 zeszyt ノ
ート obiad 夕食 krzew 低木 nos 鼻 obraz 絵
この変化で違いが生じ、難しいのは単数生格である。単数生格については 語尾が -a
になるか、-u になるかであるが、-u となるのが多い。上の例で言えば、filmu, oceanu,
muru, sklepu, sposobu, zeszytu, obiadu, krzewu, obrazu となる。しかし、kotła(ポッ
トの単数生格)、nosa と -a となる場合もある。 また、いずれでも良い場合もある。
例えば、balon バルーン、の場合は、balonu でも balona でも良い。-u となるか -a
となるかはある程度規則性があり、詳細はⅥ 名詞変化各論1.単数生格の形の項を参照
されたい。
22
名詞
② 語幹が k, g, ch 等、軟口蓋音で終わる場合
ア、男性人間名詞
単数
複数
主格
-◯
'-y/ -i
生格
-a
-ów
与格
-owi
-om
対格
-a
-ów
造格
-em
-ami
前置格
-u
-ach
呼格
-u/ '-e
‘-y/-i
例:czytelnik 読者 biolog 生物学者 Włoch イタリア人(男性)Norweg ノルウエー人
(男性)
複数主格、呼格の語尾は '-y であるので、第一子音交替が起きる。また、綴り字の規
則が関係する。その結果、語尾は、k, g 語幹では -y に ch 語幹では -i となる。例えば、
czytelnik は czytelnicy、biolog は biolodzy 、Włoch は Włosi になる。
具体的には、czytelnik の場合、czytelnik-i となり、語尾の i の前の子音 k は第一子
音交替により c に子音交替があり、同時に i は y/ i に癒合する。そして、c の後は y
となるので、czytelnicy となるのである。biolog は biolog-i となり、語尾の i の前の
子音 g は dz に子音交替があり、同時に i は y/i に癒合する。dz の後は y が来るの
で、biolodzy となるのである。Włoch の場合、Włoch-i となり、語尾 i の前の子音 ch
は ś に子音交替があり、同時に i は y/i に癒合する。そして、ś の後は i が来るが、
śi とは書けないので、sii となるが、i が続く場合には最初の i は消去されるので、Włosi
となるのである。
イ、男性有生名詞
単数
複数
主格
-◯
-y/-i
生格
-a
-ów
与格
-owi
-om
対格
-a
-y/-i
造格
-em
-ami
前置格
-u
-ach
呼格
-u
-y/-i
例:ptak 鳥 karaluch ゴキブリ
この場合、複数主格、対格、呼格の語尾が -i となる場合は k, g 語幹であり、-y とな
る場合は -ch 語幹である。この男性有生名詞の場合、男性人間名詞と異なるのは、複数
主格、複数呼格の語尾が第一子音交替を起こす -i ではないことである。従って、この
場合は子音交替を起こすことはなく、単に語尾の -i, -y が付加されるに過ぎない。
ptak の複数主格は ptaki、karaluch の複数主格は karaluchy となる。
名詞
23
ウ、男性無生名詞
単数
複数
主格
-◯
-y/-i
生格
-u
-ów
与格
-owi
-om
対格
-◯
-y/-i
造格
-em
-ami
前置格
-u
-ach
呼格
-u
-y/-i
例:bank 銀行 rynek 市場 pociąg 列車 róg 角 dach 屋根 mech 苔 orzech クルミ
複数主格、対格、呼格の語尾が -y となる場合と、-i となる場合がある。語幹が k, g の
場合は、-i となり、語幹が ch の場合は -y となる。この場合も、男性有生名詞と同じ
く子音交替はない。従って、複数主格は bank → banki 、pociąg → posiągi であり、
dach の複数主格は dachy である。
③ 語幹が(広義の)軟子音で終わる場合
ア、男性人間名詞
単数
複数
主格
-◯
-e
生格
-a
-y/-i,-ów
与格
-owi
-om
対格
-a
-y/-i,-ów
造格
-em
-ami
前置格
-u
-ach
呼格
-u
-e
例:listonosz 郵便配達員 lekarz 医師 ojciec 父 związkowiec 労働組合員
この場合は、複数主格語尾 -e となる点が特徴である。しかも、その -e は例えば、硬
子音で終わる男性人間名詞の前置格の '-e と異なり、その前の子音に子音交替を起こさ
ない。
また、
複数生格において、
語尾が -y/ -i か -ów になるかは少し難しい問題があり、
名詞複数生格の項を参照されたい。
イ、男性有生名詞
単数
複数
主格
-◯
-e
生格
-a
-y/-i, -ów
与格
-owi
-om
対格
-a
-e
造格
-em
-ami
前置格
-u
-ach
呼格
-u
-e
例:koń 馬 karp 鯉 gołąb 鳩 paw クジャク ryś オオヤマネコ wąż 蛇
24
名詞
この場合は、単数生格語尾は対格と同じく -a となるが、複数主格は複数対格と同じ
であり、その語尾は -e となる。複数生格はアの男性人間名詞と同じく -y/ -i の場合と、
-ów の場合がある。
注意すべきは上の例で行けば、karp, gołąb, paw の場合である。単数主格をみるとい
ずれも -p, -b, -w で終わっており、語幹が硬子音で終わる場合とも考えられるからであ
る。しかし、これらの場合は、単数主格において子音で終わっているのでこのようにな
ってしまっているのである。従って、正確には語幹の最後はそれぞれ -pj, -bj, -wj であり、
軟子音であると言うべきである。
ウ、男性無生名詞
単数
複数
主格
-◯
-e
生格
-a/-u
-y/-i, -ów
与格
-owi
-om
対格
-◯
-e
造格
-em
-ami
前置格
-u
-ach
呼格
-u
-e
例:cel 目的 hotel ホテル kraj 国 korytarz 廊下 grosz グロス=ポーランドの通貨単位
nóż ナイフ koniec 終わり rydz キノコ deszcz 雨 gwóźdź 爪 łokieć 肘
このタイプは単数は主格と対格が同じであるが、複数はイの男性有生名詞と同じであ
る。
単数生格は -a か -u となる。いずれになるかは一概に言えないが、原則としては -u
である。しかし、木や果物や野菜の名前等は -a となり、道具なども -a となる。従っ
て、上の例で言えば、
celu, hotelu, kuraju, deszczu となるが、korytarza, grosza, nóża, końca, rydza,
gwoździa となる。
複数生格は、-y/-i となるか -ów となる。-ów となるのは今までのと同じであるが、
-y/-i はやや特殊である。いずれになるかは難しい問題がある。
まず、語幹が c や dz で終わるものは、その複数生格は -ów となる。上の例で言え
ば、koniec → konieców、rydz → rydzów である。
語幹が j で終わるものも、-ów となる。だから、kraj → krajów となる。しかし、l で
終わるものは、-i となる。hotel → hoteli である。ただ、例外的に cel だけは、celów と
なる。c, dz 以外の語幹が硬化子音で終わる場合には、様々であり、-ów となる場合と -y
となる場合が見られる。例えば、deszcz → deszczów であるが、nóż → nóży、grosz →
groszy となる。もっとも、korytarz は korytarzy でも korytarzów でも良い。語幹が
(狭義の)軟子音で終わる場合( j を除く)は、通常は -i となる。例えば、gwóźdź →
gwoździ である。
名詞
25
2)特殊形(単数主格語尾が母音となる男性名詞)この場合は、男性人間名詞しか見ら
れず、男性有生名詞、男性無生名詞には見られない。
この場合は、単数主格語尾が -a となる場合が多いが、まれに -o となる場合がある。
単数
複数
主格
-a
‘-y/-i
生格
-y/-i
-ów
与格
‘-e
-om
対格
-ę
-ów
造格
-ą
-ami
前置格
‘-e
-ach
呼格
-o
‘-y/-i
この変化で特徴的なことは単数に関しては女性名詞と同じように変化すると言うこ
とであり、複数に関しては男性人間名詞と同じように変化すると言うことである。そし
て、語幹が硬子音で終わるか軟子音(広義)で終わるかによって2通りの変化のパター
ンがある。まず、硬子音の場合は単数与格と前置格が -e となり、軟子音の場合には単
数生格、与格、前置格が -y か -i となる。複数形は男性人間名詞と同じであることから、
硬子音の場合は原則として複数主格は -y/ -i であるが、特別な形として -owie となるも
のがある。一方、軟子音の場合は複数主格は -e となるのが原則である。この辺りの詳
細は、Ⅵ 名詞変化各論、を参照されたい。
例:kierowca 運転手 mężczyzna 男 artysta 芸術家 kolega 仲間 dowódca 司令官
一方、軟子音で終わる例は、woźnica 御者 cięśla 大工
3.中性名詞
1)基本形
ア、硬子音(k g ch を除く)+ -o で終わる場合
単数
複数
主格
-o
-a
生格
-a
-◯
与格
-u
-om
対格
-o
-a
造格
-em
-ami
前置格
‘-e
-ach
呼格
-o
-a
例:czasopismo 定期刊行物 wino ワイン biuro オフィス koło 車輪 błoto 泥 stado 群
れ
26
名詞
イ、k, g, ch + -o で終わる場合
単数
複数
主格
-o
-a
生格
-a
-◯
与格
-u
-om
対格
-o
-a
造格
-em
-ami
前置格
-u
-ach
呼格
-o
-a
上のアとの違いは単数前置格である。すなわち、この場合は -u となるのに対して,
アの場合には '-e となるのである。
例:lotnisko 空港 tango タンゴ echo 音響
k, g 語幹と ch 語幹で注意すべきは造格である。すなわち、前者の場合には
lotniskiem, tangiem と k, g が軟音化するのに対して、後者の場合には echem と軟音
化しないのである。
ウ、軟子音+ -e で終わる場合
単数
複数
主格
-e
-a
生格
-a
-◯
与格
-u
-om
対格
-e
-a
造格
-em
-ami
前置格
-u
-ach
呼格
-e
-a
例:mieszkanie アパート pole 畑 morze 海 miejsce 場所 przyjęcie レセプション
zdrowie 健康
注:単数前置格はイ( k, g 語幹)と同じであるが、ア(硬子音語幹)と異なる所であ
る。ただ、k, g 語幹とは単数造格で帰趨が異なる。それ故、ch 語幹と同じと考えて良
い。
尚、例外的に接頭辞が付いた軟子音+ -e で終わる中性名詞の場合には複数生格の語
尾が -y/ -i になることに注意すべきである。例えば、pole 畑(接頭辞なし)、の複数生
格は pól であるが、przedpole 前景(接頭辞あり)、の複数生格は przedpoli となる。
同様に wybrzeże 海岸(接頭辞あり)、の複数生格は wybrzeży、podwórze 中庭(接
頭辞あり)、の複数生格は podwórzy である。しかし、przyjęcie レセプション(接頭
辞あり)、は przyjęć と -○(ゼロ語尾)となる。
エ、単数主格が -ę で終わる場合
このタイプは特殊であり、単数主格ではなかった音節が他の格で出現するものである。
そして、単数では語幹の終わりが軟音である音節が挿入され、複数では語幹の終わりが
硬音である音節が挿入される。そして、挿入される音節の違いによって2つに分けられ
名詞
27
る。それは -eń- / -on- と -ęć/ -ęt である。尚、前者は語幹の最後が on タイプの名詞、
後者は語幹が ęt タイプの名詞とも言える。
単数
複数
主格
-ę
-a
生格
-a
-◯
与格
-u
-om
対格
-ę
-a
造格
-em
-ami
前置格
-u
-ach
呼格
-ę
-a
on タイプの例:imię 名前
ęt タイプの例:zwierzę 動物
単数
複数
単数
複数
主格 imię
imiona
主格 zwierzę
zwierzęta
生格 imienia
imion
生格 zwierzęcia
zwierząt
与格 imieniu
imionom
与格 zwierzęciu
zwierzętom
対格 imię
imiona
対格 zwierzę
zwierzęta
造格 imieniem
imionami
造格 zwierzęciem
zwierzętami
前置格 imieniu
imionach
前置格 zwierzęciu
zwierzętach
呼格 imię
imiona
呼格 zwierzę
zwierzęta
・imię と同じ変化をする例:znamię 兆候・品質証明 ramię 肩 plemię 部族 brzemię
重荷 siemię 種 strzemię 鐙(馬具)
・zwierzę と同じ変化をする例:cielę 子牛 dziecię 子供(普通は dziecko だが、文語
的表現)jagnię 子羊 kocię 子猫 prosię 子供 źrebię 子馬
※ 後者の場合は動物の子を表すことが多いが、これは男性名詞の接尾辞の一つである
-ak
(縮小辞の一つである) が付いた名詞に代わるものである。
例えば、
cielę は cielak、
dziecię は dzieciak、kocię は kociak、źrebię は źrebak 等である。
2)特殊形 この場合は、単数では全く変化せず、複数のみが変化する。そして、特徴
的なのは複数生格の語尾が -ów となるように男性名詞を借用していることである。こ
のタイプには -um タイプと -io タイプがある。それぞれの変化語尾を以下に示す。
-um
タイプ
-io
タイプ
単数
複数
単数
複数
主格
-um
-a
-io
-a
生格
-um
-ów
-io
-ów
与格
-um
-om
-io
-om
対格
-um
-a
-io
-a
造格
-um
-ami
-io
-ami
前置格
-um
-ach
-io
-ach
呼格
-um
-a
-io
-a
例:-um タイプ liceum 高校 muzeum 博物館 centrum 中心
28
名詞
-io タイプ studio スタジオ radio ラジオ patio 中庭 folio 二つ折り本
3)複数形のみが不規則となるタイプの名詞 これには oko 眼、と ucho 耳、がある。
oko
ucho
単数
複数
単数
複数
主格
oko
oczy
ucho
uszy
生格
oka
oczu
ucha
uszu
与格
oku
oczom
uchu
uszom
対格
oko
oczy
ucho
uszy
造格
okiem
oczami
uchem
uszami
前置格
oku
oczach
uchu
uszach
呼格
oko
oczy
ucho
uszy
4.女性名詞
1)単数主格語尾が -a となる女性名詞
① 単数主格が 硬子音+ -a で終わるタイプ
単数
複数
主格
-a
-y/-i
生格
-y/-i
-◯
与格
‘-e
-om
対格
-ę
-y/-i
造格
-ą
-ami
前置格
‘-e
-ach
呼格
-o
-y/-i
例:zima 冬 żona 妻 góra 山 szkoła 学校 lampa ランプ osoba 人間 gazeta 新聞
broda あごひげ apteka 薬局 noga 足 szafa 戸棚 głowa 頭 kiełbasa ソーセージ
koza 山羊 cecha 特色
語幹の終わりが k, g となる場合とそれ以外で違いが生じるのは、単数生格、複数主
格、複数対格、複数呼格である。-ka、-ga の場合には、語尾が -i となり、それ以外は -y
となる。注意すべきは単数与格と単数前置格の場合、第一子音交替があると言うことで
ある。
すなわち、
zima の単数与格と単数前置格は zimie となる。
その他、
góra → gorze 、
szkoła → szkole、lampa → lampie、osoba → osobie、gazeta → gazecie、broda →
brodzie、apteka → aptece、noga → nodze、cecha → cesze となる。
② 単数主格が(広義の)軟子音 + a で終わるタイプ
ア、母音+(広義の)軟子音+ -a で終わるタイプ
名詞
29
単数
複数
主格
-a
-e
生格
-y/-i
-◯
与格
-y/-i
-om
対格
-ę
-e
造格
-ą
-ami
前置格
-y/-i
-ach
呼格
-o
-e
例:ziemia 地球 świnia 豚 koszula シャツ zorza 夜明け susza 干ばつ plaża 浜
ostoja 土塁 ciocia 叔母 gosposia メイド tęcza 虹 szyja 頸
このタイプの女性名詞と①の単数主格が硬子音 + a で終わるタイプの名詞の違いは
単数与格及び単数前置格に表れる。すなわち、このタイプの場合は語尾が単数生格と同
じく -y/ -i に終わるのである。また、複数主格と複数対格も異なる。すなわち、硬子音 +
a の場合は -y/ -i となるが、この場合は -e となるのである。さらに、複数生格で注意
すべき点は口唇音の軟音で終わる場合である(-pi-, -bi-, -mi-)。この場合、変化語尾が
ないところでは硬音化することである。従って、ziemia 地球、の複数生格は ziem と
なる。
※ これに対し、świnia 豚、の複数生格は świń となる。
イ、子音+(広義の)軟子音+ -a で終わる場合
単数
複数
主格
-a
-e
生格
-y/-i
-y/-i
与格
-y/-i
-om
対格
-ę
-e
造格
-ą
-ami
前置格
-y/-i
-ach
呼格
-o
-e
例:kuchnia 台所 kolacja 夕食 owca 羊 rzeźnia 屠殺場 stacja 駅 pomerańcza オレ
ンジ legitymacja カード kopia コピー mumia ミイラ
このタイプの女性名詞は外来語に多い。そして、アとイの違いは、複数生格に現れる。
すなわち、アでは変化語尾がなかったが、この場合は -i となるのである。尚、上の例
で注意すべきは kopia コピー、と mumia ミイラ、である。一見すると、母音+軟子
音(すなわちア)に様に見えるが、実際は kopia の i 及び mumia の i ともに j であ
るのでこのタイプに属するのである。なぜなら、j の前の子音は s, z, c 以外は書かれな
く、
その場合には j → i となるからである
(つまり本来は kopja や mumja であるが、
p や m の後には j は書かれず、i が代用されるのである。)。
上のア、イにはそれぞれ例外が存在する。すなわち、アの場合で複数生格が -y/-i で
終わる場合と、イの場合で複数生格に変化語尾がない場合があるのである。例えば、
obroża 犬の首輪、は前者であり、tarsza 防壁、は後者である。
30
名詞
ウ、単数主格が母音+a で終わるタイプの女性名詞 この場合は上のアのタイプの女性
名詞の内、
軟子音が j であるタイプの女性名と類似した変化をする
(例えば、
szyja 頸)
。
例えば、idea の変化は以下のごとくである。もっとも、複数生格は異なっている。すな
わち、この場合は、-i と語尾が付くが、アのタイプの場合は変化語尾がないのである
( szyja の複数生格は szyj )。
単数
複数
主格
idea
idee
生格
idei
idei
与格
idei
ideom
対格
ideę
idee
造格
ideą
ideami
前置格
idei
ideach
呼格
ideo
idee
エ、さらに語幹の最後が -ns + a に終わるタイプの女性名詞も特殊である。この場合は
硬子音 + a で終わる場合なので①に該当するかのようであるが、少し異なり複数変化は
そうではなく②アのタイプと同じになることに注意すべきである。従って、例えば、
szansa チャンス、は以下のように変化する。
単数
複数
主格
szansa
szanse
生格
szansy
szans
与格
szansie
szansom
対格
szansę
szanse
造格
szansą
szansami
前置格
szansie
szansach
呼格
szanso
szanse
2)単数主格語尾が -a 以外の母音となる女性名詞
単数主格が -i で終わるタイプの女性名詞 これは以下のように変化する。
単数
複数
主格
-i
-ie
生格
-i
◯
与格
-i
-iom
対格
-ię
-ie
造格
-ią
-iami
前置格
-i
-iach
呼格
-i
-ie
例:sprzedawczyni 女店員 gospodyni 女主人 pani (女性に向かって)貴女、等があ
るが、pani は特殊で、単数対格が panią と特殊な形になる。
3)単数主格が子音で終わる女性名詞
31
名詞
このタイプは大きく分けて2種類を区別できる。複数主格が -e で終わるか、-y/ -i で
終わるかである。
主格
生格
与格
対格
造格
前置格
呼格
単数
-◯
-y/-i
-y/-i
-◯
-ą
-y/-i
-y/-i
複数
-e
-y/-i
-om
-e
-ami
-ach
-e
他の複数形
-y/-i
-y/-i
-om
-y/-i
-ami
-ach
-y/-i
複数生格が -e で終わる例:podróż 旅行 pomoc 助け・援助
複数主格が -y/-i で終わる例:brew 眉 krew 血 marchew にんじん wiadomość ニュ
ース mysz マウス
注意すべきは brew, krew である。これらの単数主格は -w という硬子音で終わるよ
うに見えるが、単数主格以外の格では軟子音のように変化する。従って、単数主格は実
際はそれぞれ brewj, krewj である。
nić 糸、kość 骨、もこの例であるが、造格が通常と異なることに注意すべきである。
すなわち、それらの造格はそれぞれ nićmi 、kośćmi となる。また、尚、pamięć 追悼・
記憶、や chęć 気持ち・やる気、は単数形しかない名詞であるので、上のタイプを区別
する意味はない。
5.形容詞変化
1)ロシア語において名詞の中には形容詞変化をするものがあったが、その点はポーラ
ンド語でも同じである。例えば、男性名詞としては、wojskowy 軍人、があるが、その
変化は、
単数
複数
主格
wojskowy
wojskowi
生格
wojskowego
wojskowych
与格
wojskowemu
wojskowym
対格
woiskowego
wojskowych
造格
woiskowym
wojskowymi
前置格
woiskowym
wojskowych
呼格
woiskowy
wojskowi
その他には、uczony 学者、がある。
32
名詞
女性名詞としては、królowa 女王、があるが、その変化は、
単数
複数
主格
królowa
królowe
生格
królowej
królowych
与格
królowej
królowym
対格
królową
królowe
造格
królową
królowymi
前置格
królowej
królowych
呼格
królowo
królowe
※ この場合は単数呼格のみが形容詞変化と異なるだけで、
あとは形容詞変化そのもので
ある。
中性名詞としては、komorne 家賃、がある。その変化は、
単数
複数
主格
komorne
komorne
生格
komornego
komornych
与格
komornemu
komornym
対格
komorne
komorne
造格
komornym
komornymi
前置格
komornym
komornych
呼格
komorne
komorne
2)もっとも、形容詞変化と共に、名詞変化もする混合変化の名詞もある。例えば、
Zakopane ザコパネ(ポーランドの南にある都市の名で保養地で有名)の変化は、
単数
主格
Zakopane
生格
Zakopanego
与格
Zakopanemu
対格
Zakopane
造格
Zakopanem
前置格
Zakopanem
呼格
Zakopane
※ 複数はなく、主格・与格が形容詞変化であり、造格・前置格が名詞変化である。主格・
対格・呼格はどちらとも取れる。
3)当該の形容詞変化の名詞が、男性変化をするのか、女性変化をするのか、中性変化
をするのかは、その名詞が男性名詞となるのか、女性名詞となるのか、中性名詞となる
のかによって決まってくる。
① まず、人間を表すものは、当該形容詞変化名詞が男性を表すのか女性を表すのかによ
って決められる。例えば、知人は znajomy か znajoma となるが、それが男性を指す
のであれば、znajomy となるし、女性を指すのであれば znajoma となる。
名詞
33
② 一方、動物や物を表す場合には、主格語尾によって決定される。例えば、luty 2月、
は語尾が -y となるので男性名詞である。komorne 家賃、は語尾が -e となるので中性
名詞である。ただ、動物や物を表す場合で女性の形容詞変化名詞である場合はほとんど
ない。
4)ポーランド語の場合はドイツ語と異なり、形容詞変化名詞とそれと関係する形容詞
では形が全く同じである(ドイツ語の場合は形容詞変化名詞でも大文字で書き始めるの
で区別が付く。)。そこで、形容詞変化名詞が述語となる場合に、その格がどうなるか
という問題がある。すなわち、述語が形容詞の場合にはその述語は主格となるが、述語
が名詞の場合にはその述語は造格で表現されるのである。形容詞変化名詞の場合は名詞
であるので、造格で表現される。主語の様相・状態を表す場合には主格で表現し、定義
として表す時は造格で表現する。
Adam jest chory. アダムは病気である。
Adam jest chorym. アダムは病人である。
5)形容詞変化名詞の例
① bagażowy 荷物運搬係 bezdomny ホームレス bezrobotny 失業者 biegły 鑑定人
czesne 授業料 ranny 負傷者 myśliwy ハンター uczony 学者 wojskowy 兵士
złoty ズウォティ(ポーランドの貨幣)woźny 用務員 niemy 聴覚障害者
niewidomy 視覚障害者
② 語尾が -owa となる形容詞変化名詞は女性名詞で元になる名詞の妻を表す場合や、
女性形を表す場合もある。
synowa 息子の妻( syn 息子、から)cesarzowa 皇后(cesarz 天皇、から)
królowa 女王( król は王)
bezdomny ホームレス(男性)bezdomna ホームレス(女性)の変化は
単数
複数
男性形
女性形
男性人間形
非男性人間形
主格
bezdomny
bezdomna
bezdomni
bezdomne
生格
bezdomnego bezdomnej
bezdomnych
bezdomnych
与格
bezdomnemu bezdomnej
bezdomnym
bezdomnym
対格
bezdomnego bezdomną
bezdomnych
bezdomne
造格
bezdomnym bezdomną
bezdomnymi
bezdomnymi
前置格
bezdomnym bezdomnej
bezdomnych
bezdomnych
呼格
bezdomny
bezdomna
bezdomni
bezdomne
尚、chorąży 下級准尉、の場合は、やや特殊で複数の主格・呼格が通常の形容詞変化
形と異なっている。
34
主格
生格
与格
対格
造格
前置格
呼格
名詞
単数
複数
男性形
男性人間形
chorąży
chorążowie
chorążego
chorążych
chorążemu
chorążym
chorążego
chorążych
chorążym
chorążymi
chorążym
chorążych
chorąży
chorążowie
6.姓名の変化
姓名も固有名詞の一種であり、ポーランド語の名詞の一つであるので、変化するのはロ
シア語と同じである。ただ、特殊な問題があるので、ここにまとめて記載する。
1)姓について
① まず、-ski や -cki は多い苗字であり、特に前者がかなり多い。その例は、Kowalski,
Wiśniewski 等であり、現大統領も Komorowski である。また、-cki には Sawicki,
Chojnacki 等がある。 これらは形容詞変化名詞となるのが通常である。
② 子音で終わる苗字の場合には、概ね男性人間名詞の変化に従うのが通常である。もっと
も、その子音は -k となる場合が多い。Nowak, Wójcik, Kowalczyk 等であり、-k 以外の
子音だと Mazur, Król, Baran 等である。そして、重要なことは複数主格が通常の男性人
間名詞変化とは異なり、語尾が -owie となることと、単数前置格が -u となることと、単
数呼格が単数主格と同じことである。従って、ポーランド人に多い苗字の Nowak の変化
は、
単数
複数
主格
Nowak
Nowakowie
生格
Nowaka
Nowaków
与格
Nowakowi
Nowakom
対格
Nowaka
Nowaków
造格
Nowakiem
Nowakami
前置格
Nowaku
Nowakach
呼格
Nowak
Nowakowie
③ 男性で -a で終わる苗字の場合は、単数と複数で異なる。単数は主格と呼格が同じであ
る点は通常の女性名詞と異なるが、それ以外の格では女性名詞と同じ変化をする。一方、
複数については -a を取り除けば子音で終わる場合と同じである(上の Nowak の複数
と同じになる。)。
例えば、Duda の変化は、
名詞
35
単数
複数
主格
Duda
Dudowie
生格
Dudy
Dudów
与格
Dudzie
Dudom
対格
Dudę
Dudów
造格
Dudą
Dudami
前置格
Dudzie
Dudach
呼格
Duda
Dudowie
④ -o で終わる苗字の場合は、-a で終わる場合と同様の変化をする。
⑤ -e で終わる苗字の場合は、一般には形容詞変化をする。
⑥ -au で終わる苗字の場合は、子音で終わる場合(①)の場合と同じである。従って、前
置詞が特有で、-auu とはならないので最初の u は脱落して1つの u となる。それ故、
結局、単数主格、前置格、呼格が同じ形となる。例えば、Landau の場合の変化は、
主格
生格
与格
対格
造格
前置格
呼格
単数
Landau
Landaua
Landauowi
Landaua
Landauem
Landau
Landau
複数
Landouowie
Landauów
Landauom
Landauów
Landauami
Landauach
Landauowie
⑦ 女性の苗字は子音で終わる場合と -a 以外の母音で終わる場合は無変化である。
⑧ 女性の苗字で -a で終わる場合は、少し注意が必要である。-owa, -ska, -cka で終わる
場合には、形容詞変化名詞となる。それ以外の -a で終わる場合には主格と呼格が同じ点
を除けば、一般の女性名詞と同じ変化をする。Mazurowa の変化は、
単数
複数
主格
Mazrowa
Mazrowe
生格
Mazrowej
Mazrowych
与格
Mazrowej
Mazrowym
対格
Mazrową
Mazrowe
造格
Mazrową
Mazrowymi
前置格
Mazrowej
Mazrowych
呼格
Mazrowa
Mazrowe
Mazrówna の変化は、
36
名詞
単数
複数
主格
Mazrówna
Mazrówny
生格
Mazrówy
Mazrównien
与格
Mazrównie
Mazrównom
対格
Mazrównę
Mazrówny
造格
Mazrówną
Mazrównami
前置格
Mazrównie
Mazrównach
呼格
Mazrówna
Mazrówny
2)名前について
① 男性の場合は子音で終わる場合は、苗字で子音で終わる場合(1)の②)と原則的には
同じであるが、呼格=前置格である点が異なっている。
Jan と Daniel の変化は、
単数
複数
単数
複数
Jan
Janowie
Daniel
Danielowie
主格
主格
Jana
Janów
Daniela
Danielów
生格
生格
Janowi
Janom
Danielowi
Danielom
与格
与格
Jana
Janów
Daniela
Danielów
対格
対格
Janem
Janami
Danielem
Danielami
造格
造格
Janie
Janach
Danielu
Danielach
前置格
前置格
Janie
Janowie
Danielu
Danielowie
呼格
呼格
② 男性の名前で -y や -i で終わる名前の場合は、形容詞変化をする。ただ、注意すべき
は複数主格は-owie となることである。Alojzy と Antoni の変化は、
単数
複数
単数
複数
Alojzy
Alojzowie
Antoni
Antoniowie
主格
主格
Alojzego
Alojzych
Antoniego
Antonich
生格
生格
Alojzemu
Alojzym
Antoniemu Antonim
与格
与格
Alojzego
Alojzych
Antoniego
Antonich
対格
対格
Alojzym
Alojzymi
Antonim
Antonimi
造格
造格
Alojzym
Alojzych
Antonim
Antonich
前置格
前置格
Alojzy
Alojzowie
Antoni
Antoniowie
呼格
呼格
③ 女性の名前の場合は、子音で終わる場合と -a 以外の母音で終わる名前の場合は不変
化である。
④ 女性の名前で -a で終わるものは普通名詞と同じである。ポーランド人の女性で多い
37
名詞
名前である Anna, Maria の変化は、
単数
複数
Anna
Anny
主格
Anny
Ann
生格
Annie
Annom
与格
Annę
Anny
対格
Anną
Annami
造格
Annie
Annach
前置格
Anno
Anny
呼格
主格
生格
与格
対格
造格
前置格
呼格
単数
Maria
Marii
Marii
Marię
Marią
Marii
Mario
複数
Marie
Marii
Mariom
Marie
Mariami
Mariach
Marie
しかし、Zosia は特殊であり、通常の普通名詞とはやや異なる。
単数
複数
Zosia
Zosie
主格
Zosi
Zoś
生格
Zosi
Zosiom
与格
Zosię
Zosie
対格
Zosią
Zosiami
造格
Zosi
Zosiach
前置格
Zosiu
Zosie
呼格
単数呼格が特殊であるのと、単数生格、与格、前置格が -i が一つであるのと、複数
生格が -ś となっていることが異なっている。
38
名詞
Ⅵ 文法名詞変化各論
名詞の格変化は前述したように単数で7つの格変化、複数でも7つの格変化がある。
従って、文に表れる場合に合計14の形があることになる。そのうち、単数主格はもっ
とも基本となる形であり、辞書にも掲載されている形である。従って、各格変化を述べ
る場合にはこれを基準に述べるべきであるので、以下では単数主格以外の残りの13の
格についてそれぞれの特性を述べる。ただ、幸いなことに複数主格と複数呼格は常に同
一の形であるので複数呼格を特別に取り上げる必要はない。そこで、単数主格、複数呼
格以外の12の格の変化形の特性について述べることとする。
1.単数生格の形
単数生格の形については男性名詞、女性名詞、中性名詞で異なっている。
1)男性名詞
① 基本形
まず、男性名詞についてはロシア語は子音で終わる場合は語尾が -а となったが、ポ
ーランド語の場合、-a の場合と -u の場合がある。この場合は硬子音のみならず、硬化
子音、軟子音の場合もそうである。ロシア語の場合、語尾が й の場合、ь の場合は、
単数生格の語尾は я となったが、それとはやや異なるのである。それにポーランド語の
場合で特徴的なのは語幹の最後の子音の前が ó や ą の場合にそれぞれ o や ę のよう
に子音交替が起きると言うことである(詳細は第1部第2章参照)。 -a となるか -u と
なるかはある程度規則性がある。
ア.まず、男性人間名詞と有生名詞の場合は、原則として -a となる。
syn 息子 → syna、kot 猫 → kota、gość 客 → gościa、koń 馬 → konia、
lekarz 医師 → lekarza、dorsz 鱈 → dorsza
イ.しかし、例外的に有生名詞であっても、単数生格が -u となる場合もある。
wół 雄牛 → wołu、
ウ. 難しいのは無生名詞の場合である。 -a となる場合もあるが、-u となる場合もあ
る。原則的には -u となる場合が多いが、例外がかなり見られる。数の少ない -a の方
を把握する方が効率的なので -a を付加する場合を挙げる。
・果物や野菜類- banan バナナ → banana、kalafior カリフラワー → kalafiora、
gryb キノコ → gryba
・乗り物 nissan 日産車 → nissana
・貨幣の単位 dolar ドル → dolara
・ スポーツ名 tenis テニス → tenisa、ping-pong 卓球 → ping-ponga, hokej ホッ
ケー → hokeja
しかし、baseball 野球 → baseballu
・ ダンスの種類 walc ワルツ → walca, polonez ポロネーズ → poloneza 尚、ダン
ス自体は taniec ダンス → tańca となり、これも -a となるが、出没母音の e が
名詞
39
関わる。
・ タバコの種類 papieros タバコ → papierosa
・ 道具、容器 bat 鞭 → bata、nóż ナイフ → noża, klucz 鍵 → klucza、widelec
フォーク → widelca(出没母音の e が関わる), garnek 鍋 → garnka(出没母音
の e が関わる),talerz 皿 → talerza, ołówek 鉛筆 → ołówka, dzban 花瓶 →
dzbana,
・ 身体の部分 nos 鼻 → nosa、ząb 歯 → zęba(生格では最後が開音節になるの
でその前は ą → ę と子音交替がある。)、brzuch 腹 → brzucha、łokieć 肘 →
łokcia (出没母音の e が関わり、主格では e の前の k が軟音化する。)、palec 指
→ palca(出没母音の e が関わる)
しかし、bark 肩 → barku
・ ほとんどのポーランドの町 Gdańsk → Gdańska、Kraków → Krakowa、
Lublin → Lublina、Olsztyn → Olsztyna、Wrocław → Wrocławia、
Szczecin → Szczecina
・ 日にちの単位 wieczór 夕方 → wieczora, poranek 朝 → poranka(出没母音の e
が関わる)
・-ak, -ek, -ik, -yk で終わる名詞 これらの多くは縮小形である。但し、このような
語尾で終わっても物質名の場合は -u となる。
krzak 低木 → krzaka、zegarek 腕時計 → zegarka、stolik 小さなテーブル →
stolika、koszyk 小さなかご → koszyka
・ 機器、備品等も -a を付加する。telewisor テレビ → telewisora、karolyfer 暖
房機 → karolyfera
・ 男性名詞である月名 grudzień 12月 → grudnia、listpad 11月 → listpada、
czerwiec 6月 → czerwca
・ -ć, ń, dź, c, dz, rz, ż で終わる男性名詞で、物質を表すものや抽象名詞ではないも
のは -a となる。grzebień 櫛 → grzebienia、hamulec ブレーキ → hamulca、
pieniądz コイン → pieniądza、rydz マッシュルーム → rydza、kalendarz カ
レンダー → kalendarza、krzyż 十字 → krzyża
エ.上述したもの以外の無生名詞は -u を付加することにより、生格形を作る。
・ 抽象名詞 akt 行為 → aktu、bieg 走ること → biegu、biznes ビジネス →
bizinesu、cel 目的 → celu、ciąg 列 → ciągu、dar 贈り物 → daru、dialog 対
話 → dialogu、dług 責任 → długu、dostatek 裕福 → dostatku、opór 抵抗 →
oporu、żal 嘆き → żalu、czas 時間 → czasu、zawód 職業 → zawodu、plan 計
画 → planu
・ 集合名詞 las 森 → lasu、tłum 群衆 → tlumu、naród 国民 → narodu、sejm ポ
ーランド議会 → sejmu、urząd 政府機関 → urzędu(生格になると最後の音節は
開音節になるので ą が ę に母音交替する。)
・ 固体名、液体名、気体名 diament ダイアモンド → diamentu、miód 蜂蜜 →
miodu、cukier 砂糖 → cukru、olej 油 → oleju、azot 窒素 → azotu、tlen 酸素
40
名詞
→ tlenu、czad 一酸化炭素 → czadu、etanol エタノール → etanolu
※ しかし、węgiel 炭素は węgla となる。
・ 多くの外来語 bas バス(男性の低音部) → basu、dres ドレス → dresu、ekran
スクリーン → ekranu、element 要素 → elementu、etap 段階 → etapu、exodus
大量流出 → exodusu、teatr シアター → teatru、numer 番号 → numeru、
dramat ドラマ→ dramatu、hotel ホテル → hotelu、
※ しかし、drink 飲み物 → drinka
・ 多くの外国名 Egipt エジプト → Egiptu、Iran イラン → Iranu、Irak イラク →
Iraku、Czad チャド → Czadu
※ しかし、Izrael イスラエル → Izraela となる。
・ 多くの外国の都市、川、山名等 Londyn ロンドン → Londynu、Rzym ローマ →
Rzymu、Dunaj ドナウ川 → Dunaju、Kaukaz コーカサス山脈 → Kaukazu
※ しかし、Paryż パリ → Paryża、Berlin ベルリン → Berlina、のように -a を
付加する場合もある。
・ 動詞から派生した名詞の多くも -u となる。druk 印刷(drukować 印刷する、よ
り派生) → drucku、dźwięk 音、響き(dźwięczeć 鳴る、鳴り響く、より派生)
→ dźwięku、 wydatek 支出 (wydać 支出する、より派生)→ wydatka、majątek
所有物・財産(mieć 持つ、より派生) → majątku、wynik 結果(wynikać より
派生)→ wyniku
・ 曜日を表す名詞の内、男性名詞は4つあるが、それらは -u を付加する。月曜日、
火曜日、木曜日、金曜日である。尚、他の3つは女性名詞である。
・ 建物、施設 bar 酒場 → baru、dom 家 →domu、hotel ホテル→ hotelu、pokój
部屋 → pokoju (2音節目のó が o になることに注意)、park 公園 → parku、dach
屋根 → dachu、dół 穴 → dołu、dwór 中庭 → dworu、
・ 物質 dżem ジャム → dżemu
・ -sz で終わる男性無生名詞 fałsz 偽り → fałszu
・ rok 年 → roku
② 特殊形
これは単数主格が母音で終わる名詞である。この場合は、①の基本形とはやや異なり、
語尾が y か i となるのが原則である。
ア、硬子音 + a 場合は -y となるのが原則である。例えば、mężczyzna 男、は
mężczyzny となり、turysta 旅行者、は turysty となる。また、-k + a や -g + a は
-i となる。例えば、kolega 仲間、が kolegi となる。
イ、硬化子音 + a の場合も -y となる。例えば、kierowca 運転手、は kierowcy とな
る。
ウ、軟子音 + a の場合は -i となる。例えば、cięśla 大工、は cięśli となる。
2)中性名詞
① この場合は、原則として -a となる。この場合は主格の語尾が -o であろうが、-e で
名詞
41
あろうが、-a となるのである。ロシア語では通常、語尾が е の場合には я となるが、
ポーランド語では я に相当するものは -ia であるからである。(例:zbliżenia 接近))。
② 中性名詞には語尾が -um や -io になるものがあるが、これらの場合は単数形は全く
変化しないので、単数生格は単数主格と全く同じである。
③ それ以外の特殊なものとしては語幹が -en- タイプのものと、-ęt- タイプのものがあ
る。これらも語尾は -a となる。単数主格以外の単数形では語幹の終わりに eń あるい
は ęć という音節が挿入されるので、その点を考えれば理解できる。例えば、imię 名前、
の場合、単数主格の語幹である imi- に eń が挿入されるので、その語幹は imieni- と
なるので単数生格は imienia であり、zwierzę 動物、の場合、単数主格の語幹である
zwierz- に ęć が挿入されるので、その語幹は zwierzęci- となるので、その単数生格は
zwierzęcia となる。
前者と同じ生格を取るものには、znamię 旗 → znamienia、ramię 肩 → ramienia、
plemię 部族 → plemienia 等がある。
後者と同じ生格を取るものには、cielę 子牛 → cielęcia、jagnię 子牛 → jagnięcia、
pisklę ひよこ → pisklęcia 等がある。
3)女性名詞
この場合は-y か -i である。-y になるか -i になるかは、まず、綴り字の規則に従う。
すなわち、k, g の後は -y とは決してならないので、-ky, -gy となることはない。また、
硬化子音の後は -i とは決してならない。すなわち、cz, sz, dz, rz, ż の後は i を綴らない
のである。さらに、l の後は必ず -li となり、-ly となることはなく、また、ł の後は必
ず -ły となり、-łi となることはない。
次に、語尾などによって以下の如くになる。
① 主格が硬子音+ a で終わる場合は a を y に替える。これはロシア語において а を
ы をに替えるのと同じである。głowa 頭 → głowy
② 主格が軟子音+ a に終わる場合は a を i に替えるのが基本である。これはロシア
語において я を и に替えるのと同じである。ziemia 地球 → ziemi(本来ならziemii
となるところであるが、ii と続く場合は最初の i は脱落する。但し、artyleria 砲兵隊、
の場合は artylerii となり、ii と続く。これはこの単語が外来語=フランス語から=の
ためである。
)
、
kuchnia 台所 → kuchni、
kłotnia 争い → kłotni、
ciocia 叔母 → cioci、
gosposia お手伝い → gosposi、kula 球 → kuli、ostoja 保護者 → ostoi(母音+j + i と
続く場合は、j は消去されるので、ostoji が ostoi となる。これに対して、子音 + j +i と
続く場合で、j が c, z, s の後の場合は j は消去されない。lekcja 講義 → lekcji とな
る。)furia 怒り → furii となる(これも外来語であるので、-ii と i が二つ続く。)。
③ 硬化子音(但し、l を除く)+a の場合は、正書法の規則により硬化子音+ y とな
るのが通常であるが、-ca で終わる場合は、正書法の規則とは関係なく -cy となる。ulica
通り → ulicy
④ 主格が硬化子音(但し、l を除く)で終わる場合は -y を付加する。twarz 顔 →
twarzy、noc 夜 → nocy、rzecz 物 → rzeczy、mysz マウス → myszy、podróż 旅行 →
42
名詞
podróży、sprzedaż 販売 → sprzedaży
⑤ 主格が軟子音で終わる場合と l で終わる場合は -i を付加する。これはロシア語にお
いて語尾が ь となる場合には ь で表される軟子音に и を付加するのと同じである(も
ちろん ь は省かれる。)。sól 塩 → soli (ó が o になることに注意)、nić 糸 → nici
(本来は nicii となるところであるが、ii と続く場合は、最初の i は脱落する。)、łódź
ボート → łodzi(本来は łodzii となるところであるが、最初の i は脱落する。また、ó
→ o と母音交替がある。)、gęś ガチョウ → gęsi、więź 逮捕 → więzi、 jesień 秋 →
jesieni、kolej 鉄道 → kolei、społeczność 社会 → społeczności
⑥ 尚、-ia で終わる名詞(すなわち、②の場合)の内、dia, chia, fia, gia, kia, lia, ria, tia
で終わる名詞の生格は、-dii, -chii, -fii, -gii, -kii, -lii, -rii, -tii となり、-ii が連続する。外
来語の場合が多い。
-dia, -fia, -tia, -chia, -gia, -kia, -lia, -ria で終わる名詞の場合は本来は -dja, -fja, -tja,
-chja, -gja, -kja, -lja, -rja であるが、これらの場合、j は書けないので、いずれも i と綴
るから、このようになるのである。そして、これらの場合の生格は -dii, -fii, -tii, -chii, -gii,
-kii, -lii, -rii と、ii とi が連続するのである。
tragedia 悲劇 → tragedii、parafia 教区 → parafii、sympatia 同情 → sympatii、
rafineria 精製工場 → rafinerii、Szwajcaria スイス → Szwajcarii、religia 宗教 →
religii
2、単数与格の形
1)男性名詞の場合
生格は有生名詞、無生名詞、男性人間名詞を区別する必要があったが、単数与格の形
を考える場合、それらを区別する必要はない。
① ほとんどの男性名詞は語尾が -owi となる。この形はロシア語には全くないものであ
る。
sen 夢 → senowi、student 学生 → studentowi、ptak 鳥 → ptakowi
② しかし、少数の古いもので、主に単音節の男性名詞で語尾が -u となる。
pies 犬 → psu、kot 猫 → kotu、kwiat 花 → kwiatu、chłopiec 少年 → chłopcu、
chłop 農民 → chłopu、ksiądz 聖職者 → ksiądzu、lew ライオン → lwu、orzeł ワ
シ → orłu(これは難しいが、e が出没母音であり、与格では没するが、主格では発
現し、その前の r が rz に子音交替を起こすため、主格では orzeł となっているので
ある。)、 pan 紳士 → panu、świat 世界 → światu
③ 単数主格が -ca で終わる名詞は –cy となる。
kierowca 運転手 → kierowcy、sprzedawca セールスマン → sprzedawcy
④ 単数主格が -ca 以外の -a で終わる男性名詞では -e となる。
mężczyzna 男 → mężczynie、kolega 同僚 → koledze、artysta 芸術家 → artyście
尚、この場合の -e は e1 であるので、第一子音交替が起きている。
⑤ 少数であるが、与格が2種類あるものもある。
名詞
43
bez ニワトコ(植物の一種)→ bzu と bzowi、kat 暴君・独裁者 → katu と katowi、
mech コケ → mchu と mchowi、osioł ロバ → osłu と osłowi(後半の o が出没母
音であり、与格では没するが、主格では発現し、その前の s が si に子音交替を起こ
すため、主格では osioł となっているのである。)
2)中性名詞の場合
中性名詞の場合は、特別な場合(単数形がすべて同形の場合)を除いて、語尾の -o や
-e を -u に替えることである。ロシア語の場合に、常に語尾が у となることと一致す
る。ただ、次のことに注意すべきである。
① 語幹が -en- タイプの名詞はほとんどが語尾が -ieniu となる。例えば、imię 名前、
は imieniu となる。ramię 肩、は ramieniu となる。単数主格以外の単数形では語幹
の終わりに eń 音節が挿入されるので、その点を考えれば理解できるであろう。
② 語幹が -ęt タイプの名詞は -ęciu となる。例えば、zwierzę 動物、の場合、zwierzęciu
となる。単数主格以外の単数形では語幹の終わりに ęć という音節が挿入されるので、
その点を考えれば理解できるであろう。
③ -um や -o で終わる名詞は変化せず主格と同じである。
3)女性名詞の場合 この場合は前置格と全く同じである。これには例外がない。従っ
て、詳細は前置格の項を参照されたい。ただ、注意すべき点を以下に述べる。尚、ロシ
ア語の場合もほとんどは前置格と同じであるが、一部異なるものが見られる。
① 単数主格が硬子音+a で終わる場合
この場合は-a が -e となるのが原則である。しかも、その e は e1 であるので、その
前の子音に第一子音交替が起きる。例えば、góra の与格は górze となるのである(こ
の場合、語末の e の前の r が rz に交替しているのである。)。ロシア語で硬子音+а
の場合、а が е になるのと同じである。
尚、日本人の苗字の Shimomura 下村、の与格は Shimomurze となるが、これも上
の原則に当てはまっている。
② 単数主格が(広義の)軟子音+a で終わる場合
この場合は -a が -y または -i となるのが通常である。この場合、ロシア語では子音
+я に相当し、 я が е に替わったが、ポーランド語は異なるのである。そして、硬化
子音の場合は -y となり、(狭義の)軟子音の場合は -i となるのが原則である。これら
の名詞は全く単数生格と同じになる。従って、これらの名詞は単数では生格、与格、前
置格が全く同じ形になる。
tęcza 虹 → tęczy、tablica プレート → tablicy、zorza 夜明け → zorzy、kolacja 夕
食 → kolacji、świnia 豚 → świni、seria シリーズ → serii(外来語であるため、-ii と
i が重なる)interwencja 介入 → interwencji
③ 単数主格が(広義の)軟子音で終わる場合 これらもすべて単数生格と同じである。
従って、これも生格、与格、前置格が全く同じ形になる。
ア、硬化子音の場合は語尾が -y となることが多いが、-i となることもある。
44
名詞
noc 夜 → nocy、mysz マウス → myszy、podróż 旅行 → podróży、sól 塩 → soli
イ、(狭義の)軟子音で終わる場合は語尾が -i となる。
łódź ボート → łodzi、jesień 秋 → jesieni、nić 糸 → nici、kolej 鉄道 → kolei(本
来なら koleji となるところであるが、母音+j + i と続く場合は j が省略されるのであ
る。)
3.単数対格の形
1)ロシア語においては、男性名詞は活動体については生格と、不活動体については主
格と同じであった。また、中性名詞は主格と同じであり、女性名詞については特有では
あるが、ある程度簡便であった。ポーランド語においては中性名詞と女性名詞はロシア
語に準じて良いが、男性名詞はやや異なった様相を呈している。それは、男性名詞には
無生名詞、有生名詞、男性人間名詞があるからである。
2)男性名詞
① 男性人間名詞の場合
ア、原則として、生格と同じである。例えば、sąsiad 隣人、の場合、生格は sąsiada で
あり、対格も sąsiada となる。ただ、単数主格が -a で終わる男性名詞の場合は、女性
名詞のように変化するので対格の語尾は生格と異なり、通常は –ę となる。例えば、
kolega 同僚、の場合、生格は kolegi であるが、対格は kolegę となる。
Znam dobrego polskiego kolegę. 私は良いポーランドの仲間を知っている。
イ、また、形容詞変化をする男性名詞、例えば、sędzia 裁判官、の場合、sędziego と
なり、hrabia 伯爵、の場合、hrabiego となる。myśliwy 狩人、の場合は、myśliwego
となる。
ウ、-o で終わる男性人間名詞の場合、例えば maestro 巨匠、の場合は、maestra と、
-a で終わることに注意すべきである。
② 有生名詞の場合
生格と同じである。
lew ライオン → lewa、kot 猫 → kota、pies 犬 → psa
③ 無生名詞の場合
ア、原則として主格と同じである。
czas 時間 → czas、but 靴 → but、chleb パン → chleb
イ、しかし、例外として単数対格において生格形を借用して使用するものがある。この
場合は、語尾は -a となり、生格語尾が -u ではなく、-a になるものがこれに該当する。
それには以下のものがある。
・果物や野菜の場合
banan バナナ → banana、grzyb キノコ → grzba、pomidor トマト → pomidora、
kalafior カリフラワー → kalafiora、ziemniak ジャガイモ → ziemniaka
jeść banana バナナを食べる kupić grzyba キノコを買う jeść pomidora トマトを食
名詞
45
べる
・自動車の場合
nissan 日産車 → nissana、mercedes メルセデス車 → mercedesa、
kupić nissana 日産車を買う
・貨幣の単位
dolar ドル → dolara、funt ポンド → funta
mieć dolara ドルを持つ、wydać funta ポンドを使う
尚、euro ユーロ、は中性名詞でしかも不変化である。
・スポーツの種類
tenis テニス → tenisa、hokej ホッケー → hokeja、golf → golfa
grać w tenisa テニスをする grać w hokeja ホッケーをする grać w golfa ゴルフを
する
・ダンスの種類
polonez ポロネーズ → poloneza、walc ワルツ → walca
tańczyć poloneza ポロネーズを踊る tańczyć walca ワルツを踊る
・タバコの銘柄、飲み物の種類等
kapitan カピタン → kapitana、szampan シャンパン → szampana
palić kapitana カピタンを吸う pić szampana シャンパンを飲む
※ ただ、注意すべきは単数生格の語尾が -a となる男性無生名詞のすべてが、単数対格
の語尾が -a となるのではないことである。例えば、orzech くるみ、は単数生格は
orzecha となるが、単数対格は原則通り主格と同じ orzech となる。さらに問題は、単
数生格の語尾が -u となる男性無生名詞で単数対格が -a となるものがあるかという点
であるが、現在の所、そのようなものは見あたらない。
ウ、尚、部分生格の場合、対格形が生格形と同じになるとする考えもある。しかし、こ
の場合は、生格形が使われると考えれば良く、対格形が生格形と同じになると考える必
要はない。例えば、kupić chleba パンを買う、という場合、そのパンは部分を表してい
るので、生格形が用いられるのであり、対格が生格と同じになると考える必要はない。
現に、動詞として widzić 見る、が使われる場合、常に widzić chleb であり、決して
widzić chleba とはならない。また、パンを部分としてではなく、全体として扱う場合
には kupić が使われても kupić chleb となり、主格と同じ形の対格が使用されている
のである。
エ、単数主格が -a で終わる男性無生名詞の場合は、女性名詞と同じく -ę となる。これ
らは単数形では女性名詞の変化に従い、複数形では男性名詞の変化に従うのが原則だか
らである。
eminencja 卓越ぶり → eminencję、satelita 衛星 → satelitę
2)中性名詞の場合 すべて主格と同じである。これには例外はない。
3)女性名詞の場合
46
名詞
① -a で終わる女性名詞は、原則として -ę となる。それが、硬子音+a、硬化子音+a、
軟子音+a であってもである。
koza 羊 → kozę、susza 干ばつ → suszę、ziemia 地球 → ziemię
② -i で終わる女性名詞は、-ę を付加する。例えば、gospodyni 奥さん、の場合は
gospodynię となる。
その他には、wychowawczyni 女性教師、が wychowawczynię となる。
ただ、これには例外があり、pani 婦人、の場合、対格は panią となる。
③ 子音で終わる女性名詞は主格と同じである。
pamięć 記憶 → pamięć、twarz 顔 → twarz、korzyść 利益 → korzyść
④ 尚、外来語であっても -ę で終わる。
tragedia 悲劇 → tragedię、lekcja 講義 → lekcję、misja 使節 → misję
4、単数造格の形
1)男性名詞の場合
通常、男性名詞の変化を考える場合、男性人間名詞、有生名詞、無生名詞を区別して
考える必要があったが、造格に関する限りはいずれも同じ変化をするので(違いは語幹
の最後の子音によるから)それらを区別する必要はない。
① この場合は、語尾は -em となるので簡単である。従って、子音で終わる男性名詞は
単数主格に -em を付加すれば単数造格になる。ロシア語においては語尾は ом か ем
になるが、それよりも単純である。その子音が、硬子音、硬化子音、軟子音であっても
同じである。例えば、kwiat 花 → kwiatem、sąsiad 隣人 → sąsiadem、przyjaciel 友
人 → przyjacielem、deszcz 雨 → deszczem 等である。しかし、出没母音が関係する
場合や、母音交替があるのでその点の注意は必要である。例えば、osioł ロバ、の場合、
その造格形は osłem となり、2番目の o が没する。また、majster マスター、の場合、
majstrem となり、-e- が没する(この点に関しては第1部第2章音交替参照)。
そして、注意すべきは、-em の e は e4 であるので、語幹が k, g 以外の子音で終わ
る男性名詞には子音交替はないことである。
② このようにして 語幹が -k や -g で終わる名詞の場合には、単に -em を付加すれば
よいのではなく、-iem を付加する必要がある。e4 の前の k, g はそれぞれ ki, gi と軟
音化するからである。例えば、Polak ポーランド人、の場合は Polakiem になり、pociąg
列車、の場合は pociągiem になる。
③ また、-a で終わる男性名詞は、後述のように女性名詞で -a で終わるものと同じく -ą
に替える。
kaleka 不具者 → kaleką、poeta 詩人 → poetą、kolega 同僚 → kolegą、
artysta 芸術家 → artystą
2)中性名詞の場合
① 男性名詞と同じく語尾が -em となるが、語尾の -o あるいは -e に替えて、-em と
名詞
47
するのである。 ロシア語においては ом か ем になるが、それよりも単純である。
przywództwo リーダーシップ → przywódstwem、pole 畑 → polem
② ただ、注意すべきは男性名詞と同じくk や g が関係する場合である。語尾が -ko や
-go で終わる名詞の場合は、-kem や -gem とはならず、-kiem や –giem となるので
ある。これは男性名詞の場合と同じく、-em の e は e4 であり、その前の子音には k →
ki、g → gi と子音交替があるからである。
lotnisko 飛行場 → lotniskiem、tango タンゴ → tangiem
③ 難しいのは -ę で終わる名詞の場合である。このような中性名詞は単数では語幹の
終わりが軟音である音節が挿入される。そして、挿入される音節の違いによって2つに
分けられる。それは -eń- と -ęć である。そして、前者の場合、例えば、imię 名前、の
場合、imieniem となる。後者の場合は、例えば zwierzę 動物、の場合は、zwierzęciem
となる。
④ -um や -io で終わる名詞の場合は、単数は不変化であることから、-um や -io のま
まであることは言うまでもない。
3)女性名詞の場合
① 単数主格が -a で終わる場合は、 例外なく–ą になる。
ręka 手 → ręką、ulica 通り → ulicą、ciocia 叔母 → ciocią、droga 道 → drogą、
taśma テープ → taśmą
② 子音で終わる場合(主格語尾がゼロの場合=もっとも、その子音は硬化子音か軟子音
である)も語尾が -ą となる。
myśl 考え → myślą、noc 夜 → nocą、kolej 鉄道 → koleją、podróż 旅行 →
podróżą、rzecz 物 → rzeczą、pieśń 歌 → pieśnią、wieś 村 → wsią przepaść 断
崖 → przepaścią、kość 骨 → kością、jesień 秋 → jesienią
尚、krew 血、や brew 眉、等の女性名詞は語幹の最後が -wj という軟音である。従
って、単数造格では軟音に女性名詞の造格語尾である -ą が付加され、krwią, brwią と
なる。この場合、e が没しているが、その点については、第Ⅰ部第2章音交替を参照さ
れたい。
③ 主格の語尾が -i となる女性名詞も -ą を付加する。例えば、gospodyni 婦人、は
gospodynią となる。いずれにしろ語尾は -ą となる。ロシア語においては語尾が ой あ
るいは ей あるいは. ью となったが、それよりも単純である。
5,単数前置格の形
1)男性名詞の場合
男性名詞の場合、生格、対格を問題にする場合には無生名詞、有生名詞、男性人間名
詞の区別が意義を有したが、前置格を問題にする場合にはその違いはない。
男性名詞の前置格は語尾が -e か -u になる。生格については -a となるか、-u とな
るか、複雑な問題があったが、前置格の場合は比較的簡単である。語幹の最後の子音の
48
名詞
種類でほぼ決定されるからである。
① 語幹が硬子音に終わる場合は -e が原則である。ただ、そのうちでも軟口蓋音で終わ
る場合(k, g, ch など)は -u である(例:zamach 攻撃 → zamachu、wybuch 爆発 →
wybuchu、Bóg 神 → Bogu、bank 銀行 → banku)。
ア、前置格として語尾が -e となる場合は、その前の子音に第一子音交替が起きること
に注意すべきである。この場合の e は e1 であり、その関係でその前の子音に交替が生
じるのである。また、それに伴い、語幹の母音に母音交替が起きる場合もあることに注
意すべきである。
・子音交替だけが起きる例:chleb パン → chlebie、sklep 店 → sklepie、fotograf 写
真 → fotografie、staw 池 → stawie、tłum 群衆 → tłumie、plan 計画 → planie、
generał 将軍 → generale、czas 時 → czasie、raz 回 → razie、student 学生 →
studencie、papier 紙 → papierze
・子音交替と共に、母音交替も起きる例:cukier 砂糖 → cukrze(この場合、語幹の e
が没するとともに、ki が k となる。)
ogród 庭 → ogrodzie、wóz 車 → wozie、stół テーブル → stole、błąd 誤り →
błędzie、świat 世界 → swiecie、las 森 → lesie、obiad 昼食 → obiedzie、
イ、しかし、語幹が硬子音で終わっても、例外的に語尾が -u となる名詞もある。例え
ば、dom 家 → domu、syn 息子 → synu、pan あなた(男性)→ panu、等である。
② 硬化子音、軟子音で終わる場合は -u である。ロシア語の場合 е となるのが原則で
あるが、第二前置格で у となる場合があり、それに相当するのであろう。また、この場
合は子音交替はないが、母音交替が起きることがあることにも注意すべきである。
chłopiec 少年 → chłopcu、klucz 鍵 → kluczu、talerz 皿 → talerzu、cmentarz 墓
地 → cmentarzu、nóż ナイフ → nożu、koń 馬 → koniu、liść 葉 → liściu、kraj 国
→ kraju
③ 男性人間名詞で主格が -a で終わる場合は、後述の如く女性名詞で -a で終わる場合
に準じれば良い。-e となり、この e は e1 であるので、その前の子音に子音交替があ
る。例えば、tata お父さん、は tacie となる。kolega 同僚 → koledze しかし、一部、
語尾が -y となる名詞があり、それに注意が必要である。それは -ca で終わる場合であ
る。それには、kierowca 運転手 → kierowcy 、sprzedawca 店員 → sprzedawcy 等
が挙げられる。
2)中性名詞の場合
男性名詞とほぼ同じである。すなわち、最後が硬子音+o で終わる場合(但し、k , g,
ch に関する場合は除く)には -e となり、硬化子音 + e 、(狭義の)軟子音 + e の場
合は、-u となるのである。後者で多いのは動名詞に関する場合である。例えば、
o wystąpieniu 離脱について、である。また、語幹語尾が k, g, ch である場合も -u と
なる。例えば、osuwisko 地滑り、は w osuwisku 地滑りで(原因で)、となる。
尚、男性名詞と同じように子音交替と共に母音交替が起きる場合があることに注意す
べきである。例えば、miasto 町、は mieście に、ciasto ケーキ、は cieście になる。
名詞
49
また、czoło 首領 → czele となる。
特殊な中性名詞として、主格語尾が -ę となる名詞の場合には imieniu や zwierzęciu
u となる。これらは単数では語幹の終わりが軟音である音節が挿入されるからである。
そして、前者は eń が、後者は ęć が挿入されるのである。
-um や -io で終わる名詞は単数は不変化であるので、そのままである。
3)女性名詞の場合
女性名詞の前置格で特徴的なことは、与格と全く同じことである。これは例外がない。
この点はロシア語と同じである。そして、多くは子音交替があるのでその点で注意が必
要である。さらに加えて、②の場合は、与格のみならず生格とも同じことである。
① 主格が硬子音+a で終わる名詞
男性名詞と同じように -a が -e となる。ロシア語において主格語尾の а が前置格
では е となるがそれと類似している。その e は e1 であるために、通常は第一子音交
替がある。また、母音交替が起きる場合もある。
osoba 人間 → osobie、Europa ヨーロッパ → Europie、głowa 頭 → głowie、szafa
戸棚 → szafie、zima 冬 → zimie、gazeta 新聞 → gazecie、kapusta キャベツ →
kapuście、woda 水 → wodzie、gwiazda 星 → gwieździe( zd は e の前ではźdź と
子音交替があり、さらに a の後ろが z から ź に軟音化するので、a から e に母音交
替があるのである。)、prasa マスコミ → prasie、koza 山羊 → kozie、żona 妻 →
żonie、szkoła 学校 → szkole(ł が l に子音交替することに注意。)、góra 山 → górze、
apteka 薬局 → aptece、polityka → polityce、noga 足 → nodze、cecha 特徴 → cesze
② 軟子音あるいは硬化子音+a で終わる場合、硬化子音で終わる場合、軟子音で終わる
場合は、いずれも生格と同じである。従って、これらの場合は、生格、与格、前置格が
同じ形になる。例えば、stolica 首都、の場合、生格は stolicy であるので、前置格も
stolicy となる。詳しくは、生格の項を参照されたい。
6.単数呼格の形
1)呼格はロシア語には見られないものであるが、ポーランド語では見られるものであ
る。これは、話したり書いたりする時に直接に呼びかける相手に対して使われる。
Drogi Adamie! アダム様 Kochana Mamusiu! お母さん
Szanowny Panie! 拝啓(手紙で相手が男性の場合)Szanowna Pani! 拝啓(手紙で
相手が女性の場合)Ty świnio! おまえは豚だ。
2)男性名詞
① 男性名詞の場合はほとんどは単数前置格と同一である。従って、前置格と同様、子音
交替や母音交替が起こる。そして、語尾が -e となる場合は、子音交替が起きる。しか
し、-e は前置格と異なり、e2 であるので、第二子音交替が起きる点が前置格と異なっ
ている(前置格の -e は e1 であり、第一子音交替が起きる。)
50
名詞
例えば、chłop 農民、の呼格は chłopie となる(この場合、前置格と形は同じである。
p の第一子音交替、第二子音交替、第三子音交替の結果はいずれも pi となるから同じ
であるのである。
② また、単数前置格で語尾が -u となる場合(語幹が硬化子音、軟子音に終わる場合及
び軟口蓋音で終わる場合)も呼格では -u となるのが原則である。
koń 馬 → koniu、ptak 鳥 → ptaku、gość 客 → gosciu、deszcz 雨 → deszczu
③ 尚、一部の名詞はやや異なった語尾を取る。それは、-ec で終わる名詞の一部と、-a
で終わる男性人間名詞である。この場合は前置格と異なることになる。
ア、-ec で終わる名詞 この場合も第二子音交替が起きることに注意すべきである。
この名詞では語尾が -cze となるものがある。但し、この場合は男性人間名詞の場合
である。
chłopiec 少年 → chłopcze、Niemiec ドイツ人 → Niemcze、kupiec 商人 → kupcze
( しかし、男性人間名詞ではないものはたとえ -ec で終わっても、前置格と同じにな
る。czerwiec 6月 → czerwcu、koniec 終わり → końcu )
イ、 -a で終わる名詞
この名詞では語尾が -o となる。
kierowca 運転手 → kierowco、kolega 仲間 → kolego、sługa 召使い → sługo
ウ、また、Bóg 神、は Boże となるが、Bogu でも良い。
3)中性名詞の場合
これは、完全に主格と同じである。主格が -o で終わろうが、-e で終わろうが、例外
がない。要するに、中性名詞の場合は主格、対格、呼格が全く同じである。
4)女性名詞の場合
① 硬子音+a で終わる場合
語尾は -o となる。
ręka 手 → ręko、siostra 妹 → siostro
② 軟子音、硬化子音+a で終わる場合
これも語尾は -o となるのが原則である。
ziemia 土地 → ziemio、stolica 首都 → stolico
ただ、縮小語で語尾が -ia であるものは、-iu となる。
babunia おばあちゃん → babuniu、ciocia おばちゃん → ciociu
③ 硬化子音に終わる場合
語尾が -y となる。
młodzież 若者 → młodzieży、noc 夜 → nocy、twarz 顔 → twarzy
④ 軟子音に終わる場合
語尾が -i となる。
postać 形 → postaci、pieśń 歌 → pieśni
⑤ 単数主格語尾が -i となる場合は単数主格と同じである。
名詞
51
gospodyni 婦人 → gospodyni、pani (女性を指して)あなた → pani
7.複数主格の形
ポーランド語はロシア語と同じように名詞には単数と複数の区別がある。複数主格は
ロシア語と同じように複雑な問題があり、以下では男性名詞、中性名詞、女性名詞別に
言及する。
1)男性名詞の場合
男性名詞の複数形を考える場合、男性名詞の種類別に考えるのが合理的である。すな
わち、男性名詞には男性人間名詞、男性有生名詞、男性無生名詞があるが、男性人間名
詞と後2者では原則として複数形が異なる。例えば、前者では生格と対格が同じである
が、後者では主格と対格が同じである。従って、複数形を考える場合には、男性人間名
詞と後2者を分けて考えるべきである。そして、ロシア語の複数形と類似しているのは、
男性有生名詞、男性無生名詞なので今までのものと記載の順序をやや変えて、有生名
詞・無生名詞を先に記載する。
① 男性有生名詞、男性無生名詞の複数形
ア、語幹が硬子音で終わる場合 基本は語幹に y を付加することである(但し、k, g で
終わる場合は、-k+ y で -ky、 -g+ y で gy となるべきところであるが、綴り字の規則
により -ky, -gy とは書けないので、-ki, -gi とする。②のごとく語幹に i を付加するの
である。)。
sposób 方法 → sposóby、telegraf 電信 → telegrafy、telegram 電報 → telegramy 、
plan 計画 → plany、sklep 店 → sklepy、staw 池 → stawy、pies 犬 → psy、obraz
絵 → obrazy、obiad 昼食 → obiady、kot 猫 → koty、dach 屋根 → dachy
これはロシア語で ы を付加することと同じである( ы は y に相当)。
イ、語幹が軟口蓋音で終わる場合(但し、ch は除く)基本は語幹に i を付加すること
である。
ptak 鳥 → ptaki 、pociąg 列車 → pociągi
ロシア語の場合は、и を付けるが、同じである。但し、軟口蓋音であっても -ch で終
わる場合は y を付加する。例えば、dach 屋根、は dachy となる。
ウ、語幹が硬化子音・軟子音で終わる場合 この場合は基本は語幹に e を付加すること
である。
żołnierz 兵隊 → żołnierze 、plac 広場 → place、hotel ホテル →hotele、kraj 国 →
kraje、pieniądz 貨幣 → pieniądze、klucz 鍵 → klucze、grosz グロス → grosze、
garaż ガレージ → garaże、koń 馬 → konie 、liść 葉 → liście、gwóźdź 釘 →
gwoździe、łabędź 白鳥 → łabędzie、łosoś 鮭 → łososie、jedwab 絹 → jedwabie、
tułów 胴体 → tułowie、karp 鯉 → karpie
ロシア語の場合は ь に替えて、и を付けるが、多少異なっている。
エ、語尾が -a となる場合もある。この場合は、無生名詞の一部に認められる。このよ
うな名詞の中で、複数形が -y となることも認められるものがある。ただ、この場合は、
52
名詞
-a となるか、-y となるかによって意味が異なるものもある。
・-a となる場合 cud 不思議・驚き → cuda
・-a でも -y でも認められる場合で意味が異ならない場合
grunt 土地・基礎 複数形は grunta でも grunty でも良い。
gust 好み 複数形は gusta でも gusty でも良い。
・-a でも -y でも認められる場合で意味が異なる場合
akt
akta が複数形となる場合は公文書、証明書などを表すが、akty が複数形とな
る場合は行為、行動、という意味を表す。
organ organa が複数形となる場合は公共の機関、施設等を表すが、organy が複数
形となる場合は、器官を表す。
② 男性人間名詞の複数形
ア、語幹が硬子音で終わり、単数主格に語尾がない場合には、複数主格語尾は -i とな
るのが原則である。そして、この場合は最後の子音において子音交替がある。なぜなら、
この i は i1 であり、第一子音交替を起こすからである。
snob 気取りや → snobi、chłop 農民 → chłopi 、sąsiad 隣人 → sąsiadzi、student
学生 → studenci、producent 生産者 → producenci、policjant 警察官 → policjanci、
Czech チェコ人 → Czesi 、Białorusin ベラルーシ人 → Białorusini、diabeł 悪魔
→ diabli、detektyw 探偵 → detektywi、pirat 海賊 → piraci
イ、硬子音+ a で終わる場合も同じである。
mężczyzna 男 → mężczyźni、poeta 詩人 → poeci となる、patriota 愛国者 →
patrioci、となる。 astronauta 宇宙飛行士 → astronauci( t 語幹の後者の3つは
少し説明を要する。a を i に変えると、-ti となるところであるが、この場合の i は
第一子音交替を起こす。それ故、t → ć となり、-ći となる。しかし、綴り字の規則
により -cii となるが、-cii と i が続く場合には最初の i は脱落するので、-ci となる
のである。)
ウ、語幹が硬子音で終わっても、称号、職業、家族関係の用語、ある種の国民を表す場
合 -owie となる。
・家族関係の用語
mąż 夫 → mężowie、ojciec 父 → ojcowie、syn 息子 → synowie、pan ~氏 →
panowie、dziadek 祖父 → dziadkowie、dziadzio おじいちゃん → dziadziowie、
szwagier 義理の兄(弟)→ szwagrowie
これらはロシア語においてсын → сыновья となるのと類似している。
・神や威厳のある支配者を表す名詞の場合もこの語尾を取る。
bóg 神 → bogowie、car 皇帝 → carowie
・苗字の場合に、この語尾を取るものもある。
Nowak ノバック氏 → Nowakowie ノバック夫妻、Buszko ブシコ氏 → Buszkowie
ブシコ夫妻
・ある種の国民や部族の場合
Afgan アフガニスタン人 → Afganowie、Pers ペルシア人 → Persowie
名詞
53
・職業名の場合もこの語尾を取ることがある。
minister 大臣 → ministrowie、admirał 司令長官 → admirałowie
・その他
członek メンバー → członkowie、anioł 天使 → aniołowie、pasażer 乗客 →
pasażerowie、wódz 指導者 → wodzowie、uczeń 生徒 → uczeniowie 、więzień 囚
人 → więźniowie、
エ、語幹が(広義の)軟子音で終わる場合には 語尾 -e を取る。
gość 客 → goście、urwipołeć いたずら者 → urwipołcie、kniaź 王子 → kniazie、
przechodzień 通行人 → przechodnie、lekarz 医師 → lekarze、dziennikarz ジャー
ナリスト → dziennikarze、pisarz 作家 → pisarze、żołnierz 兵隊 → żołnierze、
towarzysz 仲間 → towarzysze、Łotysz ラトビア人 → Łotysze 、kustosz 守衛・園
長 → kustosze、posługacz 付添人・案内係 → posługacze、bogacz 金持ち →
bogacze、podpalacz 放火犯 → podpalacze、złodziej 窃盗 → złodzieje、gnój 嫌な
やつ → gnoje、góral 高地人 → górale、model モデル → modele、stróż 保護者・
監視人 → stróże、kibic サポーター → kibice
尚、語尾が -in となる国民を表す名詞では、単数主格の語尾の -in を取り、-ie を
付加する場合もある。例えば、Rosjanin ロシア人 → Rosjanie 、Amerykanin アメ
リカ人 → Ameriykanie、Egipcjanin エジプト人 → Egipcjanie である。
オ、語幹が k, g, r で終わる場合は複数主格語尾は -y となるのが通常である。この場合
には必ず子音交替を伴う。すなわち、k → c、g → dz、r → rz となる。注意すべきは、
語幹が k, g で終わっても、男性有生名詞、男性無生名詞とは異なることである。すな
わち、前述したように男性有生名詞、男性無生名詞の場合には複数主格語尾は -ki, -gi と
なるが、男性人間名詞の場合は子音交替があってしかも -y に終わるのである。なぜな
ら、男性有生名詞、男性無生名詞の場合の語尾 i は i3 であるが(子音交替を起こさな
い)、この場合の i は i1 であるので第一子音交替を起こす。そして、子音交代後の子
音である c , dz, rz の後は -i を書かないために、-y となるからである。
Japończyk 日本人 → Japończycy、Polak ポーランド人 → Polacy、Brytyjczyk イ
ギリス人 → Brytyjczycy、górnik 鉱夫 → górnicy、kolega 仲間 → koledzy、doktor 博
士 → doktorzy、Pakistańczyk パキスタン人 → Pakistańczycy、prawnik 弁護士 →
prawnicy、Izraelczyk イスラエル人 → Izraelczycy、napastnik 攻撃者 → napastnicy
・kolega 仲間 → koledzy、suługa 召使い → słudzy、等の場合は、単数主格に語尾 -a
が付くだけで、このオに含めて良い。
・その他に -y となる場合には、語尾が -ca となる場合や、-iec となる場合が挙げられ
る。
kierowca 運転手 → kierowcy 、łowca 狩人 → łowcy、Niemiec ドイツ人(但し、
男性)→ Niemcy 、sportowiec スポーツマン → sportowcy、chłopiec 少年 → chłopcy
カ、語尾が -a となる場合もある。
brat 兄弟 → bracia、ksiądz 神父 → księża
③ 形容詞変化をする男性名詞の複数形
54
名詞
ア、この場合は、語尾が -i となるか -y となるものが多い。
・-i となるもの。例えば、wojskowy 軍人、の場合、形容詞変化であり、この複数形は
wojskowi となる。注意を要するのは語尾の最後が -owi と通常の男性名詞の与格と同
じになることである。uczony 学者 → uczeni、の場合は o → e と母音交替もあること
に注意すべきである。その他の例としては、księgowy 簿記係、があり、この複数主格
は księgowi となる。dorosły 大人 → dorosli
・-y となるもの。例えば、chory 病人、の場合、形容詞変化であり、この複数形は chorzy
となる。służący 召使い → służący(この場合は、結局は単複同形となる。)
イ、しかし、特殊な場合として -owie となるものがある。
例えば、chorąży 下級准尉、の場合、複数主格は chorążowie となる。尚、その他の
変化形は形容詞変化と同じである。
2)中性名詞の場合
① 語幹が硬子音で終わろうが、軟子音で終わろうが、硬化子音で終わろうが、語尾が a
になる。
piwo ビール → piwa、mieszkanie 住民 → mieszkania 、pole 畑 → pola、
ロシア語で о で終わる中性名詞の複数形の語尾が а となることと同じである。また、、
ロシア語では単数主格の語尾の е の場合、複数主格の語尾は я になるが、それも同じ
である。これはポーランド語では я に相当するのは ia であるからである。
② ただ、次のことに注意が必要である。
ア、-um, -io で終わる場合 これらは特殊な変化をするが、複数主格形に関する限りは、
語尾が a となる。すなわち -um では -a となり、-io では -ia となるのである。
centrum センター → centra となり、studio スタジオ → studia となる。
イ、-ę で終わる場合、複数では語幹の終わりが硬音である音節が挿入され、それらは-on
と ęt である。前者の場合には、imię 名前 → imiona、ramię 肩 → ramiona、等があ
る。後者の場合には、cielę 子牛 → cielęta、pisklę ひよこ → pisklęta、książę 王子 →
książęta、等がある。
いずれにしろ、中性名詞の複数主格は語尾が -a となるのである。
③ もっとも形容詞変化の中性名詞だけは例外で、その複数主格は -e となる。
drugie 主コース → drugie、zielone 緑の草木 → zielone
この場合は単複同形となるのである。
3)女性名詞の場合
① 名詞変化をする女性名詞
ア、語幹が硬子音で終わる場合 基本は語尾が y になることである。
zima 冬 → zimy、mucha はえ → muchy 等。ロシア語の場合 ы になるが、それと
同じことである。
イ、ただ、語幹が軟口蓋音の k や g で終わる場合は語尾が i になる。
apteka 薬局 → apteki、droga 道 → drogi
名詞
55
ロシア語で -к や -г で終わる名詞が、-ки, -гиとなるのと同じである。
また、語幹が硬子音で終わる場合で、特殊なものとしては単数主格の終わりが -ansa
となる場合がある。この場合は、複数主格の語尾は -e となる。
szansa チャンス → szanse
ウ、語幹が硬化子音に終わる場合 語尾が e になる。
twarz 顔 → twarze、tęcza 虹 → tęcze、zorza 夜明け → zorze、
ロシア語の場合はь を и に替えるが、多少異なっている。しかし、次のものは例外
で -yとなる。
wesz しらみ → weszy、mysz マウス → myszy、rzecz 物 → rzeczy
エ、語幹が(狭義の)軟子音で終わる場合、基本は語尾が e になることである。
ziemia 地球 →ziemie、agencja 機関 → agencje
ロシア語の場合は я を и に替えるが、多少異なっている。
・単数主格語尾がゼロの場合にも、語尾が e になる。
wieś 村 → wsie 、dłoń 手掌 → dłonie
ロシア語の場合は ь を и に替えるが、多少異なっている。
・もっとも、 語尾が i となる場合もある.。それらには -ś, -ć , -ń , -dź がある。
gęś ガチョウ → gęsi、kość 骨 → kości 、nić 糸 → nici、pieśń 歌 → pieśni、
spowiedź 告白 → spowiedzi
② 形容詞変化をする女性名詞
この場合は、複数非男性人間形が使われる。
bezrobotona 女性の失業者 → bezrobotone、znajoma 知り合い → znajome
8.複数生格の形
ロシア語の名詞複数において与格、対格、造格、前置格はそれぞれ名詞の性にかかわ
らずほぼ同じであり多様性はなかったが、複数生格は多様性があった。この点、ポーラ
ンド語においても同様である。
1)男性名詞の場合
複数主格の場合は、無生名詞・有生名詞と男性人間名詞を区別する必要があったが、
複数生格を考える場合には、それらを区別する必要はない。語尾の違いは語幹の最後の
子音が影響するからであり、男性人間名詞かそうでないかは影響しないからである。
① 語幹が硬子音に終わる場合
ア、原則として -ów を付加する。これは、ロシア語において ов を付加するのと類似し
ている。
dom 家 → domów、ptak 鳥 → ptaków、list 手紙 → listów
主格の語尾がゼロであっても、a であってもこれは同じである(もっとも、後者は a
を除去するのは当然である。)。
dyplomata 外交官 → dyplomatów、ser チーズ → serów、las 森 → lasów
語幹が k や g で終わる場合、複数主格語尾は -y ではなく、-i であったが、複数生
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名詞
格語尾は -ów となる。
ptak 鳥 → ptaków、pociąg 列車 → pociągów
イ、しかし、以下の点に注意すべきである。
・ 単語の最後が -anin となる場合である。この場合、-anin の前の子音が影響する。
すなわち、それが硬子音の場合には -anów となるが、(広義の)軟子音の場合には -an
となる。このような名詞は複数形のいずれも最後の -in が削除され、前者はそれに語尾
の -ów が付くのに対して、後者は語尾なしの形になるのである。
Amerykanin アメリカ人 → Amerykanów、muzułmanin イスラム教徒 →
muzułmanów
paryżanin パリ市民 → paryżan、Rosjanin ロシア人 → Rosjan、chrześcijanin キ
リスト教徒 → chrześcijan、wegetarianin 菜食主義者 → wegetarian
・ 国名で複数形の形を取るものがあり、それらは語尾が -y となるが、それらの複数生
格は語尾がゼロとなる。
Niemcy ドイツ → Niemc、Czechy チェコ → Czech、Węgry ハンガリー →
Węgier、Włochy イタリア → Włoch
しかし、国民を表す場合は複数生格は語尾が -ów となる。
Czech チェコ人 → Czechów(尚、複数主格は Czesi )
・ 口唇音の場合
単数主格が口唇音(b, p, f, w, m)で終わる名詞であるが、語幹が軟音(bj, pj, fj, wj, mj)
であるものは複数生格の語尾は -i となる。
karp 鯉 → karpi、paw クジャク → pawi (一方、chleb パン → chlebów )
・ mężczyzna 男、の場合は語尾がゼロとなり、mężczyn となる。
② 硬化子音に終わる場合
-ów を付加する場合と、-y を付加する場合がある。これらはきちとした法則がなく、
語幹の最後の子音別に検討する必要がある。
ア、-c や –dz で終わる場合は、原則として -ów を付加する。
koniec 終わり → końców(この場合、e は出没母音なので -ów が付加されると c の
前の e は没する。そして、ni は母音ではなく、子音の前になるので ń と綴るのであ
る。)、materac マットレス → materaców、rydz キノコ → rydzów、wódz 指導
者 → wodzów
・しかし、-c, -dz で終わっても、-y を付加する場合がある。
miesiąc 月 → miesięcy(この場合、単数主格は後に来るものが閉音節であるのでそ
の前は ą であったが、複数生格では開音節であるので、ą → ę と母音交替があり、
-ęcy となる。その他には、tysiąc 千 → tysięcy、zając 野ウサギ → zajęcy がある。)
pieniądz 硬貨 → pieniędzy(この場合も、同様にą → ę と母音交替がある。)
イ、-sz, -rz, -ż, -cz, dż で終わる場合は -ów を付加しても、-y を付加しても良いことが
多いが、徐々に -ów は廃れつつあり、現代では -y を付加することが多い。
・-sz で終わる名詞 kosz 籠 → koszy か koszów、czynsz 管理費 → czynszy か
czynszów、dorsz 鱈 → dorszy か dorszów、ratusz 市庁舎 → ratuszy か ratuszów
名詞
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grosz グロシュ(ポーランドの貨幣の単位)→ groszy、wiersz 詩 → wierszy
しかし、marsz 行進 → marszów
・ -ż で終わる名詞 bagaż 荷物 → bagaży か bagażów、garaż ガレージ → garaży
か garażów、krzyż 十字架 → krzyży か krzyżów、wąż 蛇 → węży か wężów
bandaż 包帯 → bandaży
しかし、mąż 夫 → mężów
・ -rz で終わる名詞は語尾が -y を取る名詞が多い。
lekarz 医師 → lekarzy、talerz 皿 → talerzy、kucharz 料理人 → kucharzy、
korytarz 廊下 → korytarzy
しかし、-y でも -ów でも良い名詞も少なからずある。
gospodarz 家主 → gospodarzy か gospodarzów、pisarz 作家 → pisarzy か
pisarzów
・-cz で終わる名詞
badacz 研究者 → badaczy か badaczów、działacz 活動家 → działaczy か
działaczów、słuchacz 聴取者 → słuchaczy か słuchaczów
klucz 鍵 → kluczy、brodacz ひげを生やしている人 → brodaczy
しかし、deszcz 雨 → deszczów、mecz 試合 → meczów 試合、tłuszcz 脂肪 →
tłuszczów
・-l で終わる場合は、語尾が -i となる名詞と、 ów となる名詞がある。
nauczyciel 教師 → nauczycieli、szpital 病院 → szpitali、góral 高地人 → górali
後者の例は、ból 痛み → bólów、cel 目的 → celów 等がある。しかし、-i でも -ów
でも良い名詞がある。例えば、hotel ホテル → hoteli か hotelów、alkohol アルコ
ール → alkoholi か alkoholów、
③ 軟子音に終わる場合
ア、-j で終わる場合は、語尾は -ów となる名詞が多い。
kraj 国家 → krajów、nastrój 気分 → nastrojów、zdrój 泉 → zdrojów
しかし、i となる名詞もある。
pokój 部屋 → pokoi (本来ならpokoji となるところであるが、-ji の場合、原則とし
て綴り字の規則により j は書かないので、語尾は -i となるのである。)złodziej 窃盗
→ złodziei
イ、それ以外の軟子音の場合は -i となることが多い。
gość 客 → gości(本来は gośći であるが、母音の前の ć は ci となる。そうすると
gościi となるところであるが、i が続くと最初の i は脱落するので gości となるので
ある。)、liść 葉 → liści、śmieć くず → śmieci
śledź ニシン → śledzi、gwóźdź 釘 → gwoździ、łabędź 白鳥 → łabędzi
dzień 日 → dni、kamień 石 → kamieni、koń 馬 → koni、korzeń 根 → korzeni、
mięsień 筋肉 → mięśni、ogień 火 → ogni、pień 幹 → pni、słoń 象 → słoni
しかし、語幹が-ń で終わる名詞には語尾が -ów となる名詞も少数ながらある。
uczeń 生徒 → uczniów、więzień 囚人 → więźniów
58
名詞
-ów でも -i でも良い名詞には、cień 影、styczeń 1月、がある。
cień 影 → cieni か cieniów、styczeń 1月 → styczeni か styczniów
-ś で終わる場合も -i を付加する場合と -ów を付加する場合がある。ただ、後者の方
が好まれる傾向にある。rabuś 強盗 → rabusi あるいは rabusióww
-ź で終わる名詞は -ów を取る。kniaź 領主 → kniaziów、paź 小姓 → paziów
④ -a で終わる場合は -ów となる。この場合、通常は単数の変化は女性名詞の変化に
準じ、複数の変化は男性名詞の変化に準じるからである。
kolega 同僚 → kolegów、artysta 芸術家 → artystów、znawca 専門家 → znawców
もっとも、女性名詞と同じ変化をする場合もある。その場合は、語尾はゼロとなる。
例えば、mężczyzna 男、の場合、mężczyzn となる。 kaleka 身体障害者 → kakek と
なる。
2)中性名詞の場合
① まず、語幹が硬子音に終わる場合は、単数主格の語尾は -o となり、複数生格の語尾
は、ゼロとなるのが原則である。ロシア語において語幹のみになるのと同じである。
piwo ビール → piw、miasto 町 → miast、okno 窓 → okien(この場合、出没母音
e が現れ、その結果、e の前は軟音化するため、-k- が -ki- となるのである。)、kino
映画館 → kin、pióro ペン → piór、drzewo 木 → drzew、mięso 肉 → mięs、żelazo
鉄 → żelaz
② 語幹が硬化子音や軟音に終わる名詞は、単数主格の語尾は -e となるが、複数生格の
語尾はゼロとなるのが原則である。ロシア語においては е で終わる場合は、ей となる
ので、その点異なっている。
miejsce 場所 → miejsc、pole 野原 → pól( o の後が閉音節となるため、o → ó と
母音交替がある。)、słońce 太陽 → słońc、morze 海 → mórz、zboże 穀物 → zbóż
danie 料理 → dań、podanie 申請書 → podań、zadanie 課題 → zadań、żądanie 要
求 → żądań、zajście 騒乱 → zajść、nasienie 種 → nasion(この場合は、e → o の
母音交替を含んでいる。)、ziele ハーブ → ziół(これは特殊で、l → ł への子音交
替、e → o への母音交替、さらに o → ó への母音交替を含んでいる。)
odkrycie 発見 → odkryć、pojęcie 概念 → pojęć、uczucie 感覚 → uczuć、zajęcie 仕
事 → zajęć
③ 語幹が硬化子音や軟子音に終わる名詞であっても、語尾が y か i となる名詞もある。
このような名詞は通常は、接頭辞が付いた名詞である。例えば、wybrzeże 海岸、の
場合、複数生格は wybrzeży となる。podwórze 中庭 → podwórzy、narzędzie 道具
→ narzędzi、pogotowie 準備態勢 → pogotowi
④ その他に、特殊なタイプがあり、単数主格が -um や -io で終わる名詞は、um や o
を取り、男性名詞と同じく -ów となる。
centrum 町の中心 → centrów、museum 博物館 → museów、studio スタジオ →
studiów、radio ラジオ → radiów
単数主格が軟子音+ e で終わる名詞の中にも -ów となるものがある。
名詞
59
przysłowie 諺 → przysłów となる。
語幹が -on- タイプのものや、-ęt- タイプのものも特殊である。-on- タイプの名詞
の代表的なものは imię 名前、であるが、これは imion となる。一方、-ęt- タイプの名
詞の代表的なものは zwierzę 動物、であるが、これは zwierząt となる(最後が閉音節
となるので、その前の ę は ą に母音交替がある。)。これらの場合は、語尾はゼロと
なると言える。
⑤ 不規則なもの
中性名詞の複数生格で不規則なものとしては、dziecko 子供、がある。この複数生格
は dzieci となり、上のいずれにも当てはまらない。
3)女性名詞の場合
① 硬子音+a で終わる場合
この場合は、a を取り、語尾がなく、最後は硬子音だけになる。ロシア語において硬
子音だけになるのと同じである。語幹子音の前が o の場合には、o → ó と母音交替が
あることに注意すべきである。
lampa ランプ → lamp、osoba 人間 → osób、droga 道 → dróg、szkoła 学校 →
szkół、zupa スープ → zup、góra 山 → gór、kobieta 女性 → kobiet、kawa コー
ヒー → kaw、wiza ビザ → wiz、rozmowa 会話 → rozmów
② 硬化子音+a で終わる場合
ア、この場合も、a を取り、語尾はゼロとなる。
plaża 浜 → plaż、tęcza 虹 → tęcz、susza 干ばつ → susz、róża バラ → róż、praca
仕事 → prac、jędza 魔女 → jędz、burza 嵐 → burz、szyja 頸部 → szyj、chwila
瞬間 → chwil、kula 球 → kul、niedziela 日曜日 → niedziel、koszula シャツ →
koszul
イ、しかし、-la で終わる場合はゼロ語尾以外のこともある。この場合には、語尾が -i と
なるが、規則性はなく、個々に覚えるしかない。
kontrola 監督 → kontoroli、morela 杏 → moreli
また、どちらでも良い場合もある。
centrala 中心 → centrali か central、willa 邸宅 → willi か will
③ 軟子音+ a で終わる場合 この場合は、単数主格は最後が -ia となるか、-ja とな
る。
ア、この場合も、語尾がゼロとなるのが原則である。
ciocia 叔母 → cioć、babcia お婆ちゃん → babć、 ziemia 土地 → ziem(ziemi で
はなく、
ziem であることに注意)
、
mamusia ママ → mamuś、świnia 豚 → świń、
イ、しかし、単数主格の最後が -nia となる名詞の場合は、注意が必要である。すなわ
ち、上の świnia のごとく -nia の前の音が母音である場合には、語尾はゼロである
が、子音である場合には語尾が -i となることである。従って、czereśnia サクランボ、
は czereśni となり、pisownia 正書法、は pisowni となる。uczelnia 高等教育機関、
はuczelni となる。szatnia クローク、は szatni となる。
60
名詞
ウ、もっとも、どちらでも良い名詞がある。czytelnia 閲覧室 → czytelni か czytelń、
jadalnia 食堂 → jadalni か jadalń、kawiarnia 喫茶店 → kawiarni か kawiarń
エ、さらに注意すべきは、単数主格が子音+ -nia で終わる名詞の中にはその複数生格
の語尾が -i となるか、あるいは -n (硬音)になる名詞があるということである。
kuchnia 台所 → kuchni か kuchen、suknia ワンピース → sukni か sukien
オ、外来語の場合には、特殊なものとなる。すなわち、語尾は -i となり、しかも、最
後が -ii と i が2つ重なるのである。従って、この場合は生格は単複同形となる。
tragedia 悲劇 → tragedii、chemia 化学 → chemii、histria 歴史 → historii、partia
党 → partii
カ、尚、少数であるが、-nia 以外の -ia で終わる名詞には語尾が -i となるものもある。
通常、-ia で終わる女性名詞はア、で述べたように複数生格は語尾がゼロとなる。しか
し、例外的に -ia で終わっても、-i となるのである。例えば、głębia 深み、は głębi と
なる。
キ、尚、-ja で終わる名詞の内、外来語の場合、例えば -cja, -sja, -zja で終わる名詞の場
合は、
a を i に替える。
stacja 駅 → stacji、
lekcja 講義 → lekcji、
poezja 詩 → poezji、
impresja 印象 → impresji、misja 使節 → misji、okazja 機会 → okazji、nadzieja 希
望 → nadziei(本来なら nadzieji となるところであるが、綴り字の規則により母音の
後で i の前の j は消去されるのである。)
④ 硬化子音で終わる場合は、-y を付加する。従って、この場合は単複とも同形となる。
男性名詞の場合は、選択的に -ów となるものがあったが、女性名詞の場合には常に -y
となるのである。
noc 夜 → nocy、
twarz 顔 → twarzy、
rzecz 物 → rzeczy、
mysz マウス → myszy、
podróż 旅行 → podróży、sprzedaż 販売 → sprzedaży
しかし、語幹が l で終わる名詞は、語尾が -i となる。sól 塩 → soli、szpital 病院 →
szpitali
⑤ 軟子音で終わる場合は、 -i を付加する。従って、この場合も単複とも同形となる。
łódź ボート → łodzi(この場合は、łódzii となるが、i が2つ続く場合は最初の i は
脱落し、また、ó はその後が開音節になるので、ó → o と母音交替がある。)、wieś 村
→ wsi(そのままでは wiesii となるが、i が2つ続く場合は最初の i は脱落する。そし
て、e の後が開音節になるので、出没母音である e が没し、 さらに主格の場合は e の
前は軟音化していたのが、e が没したため、軟音化が解除される結果、 wi- → w- とな
るのである。 )、część 部分 → części、jesień 秋 → jesieni、gałąź 小枝 → gałęzi、
kolej 鉄道 → kolei
⑥ 外来語で -ea, -ua で終わる女性名詞は -a が -i となる。例えば、idea アイデア →
idei、statua 彫像 → statui
※ 硬子音で終わる女性名詞はない。一見、硬子音で終わるように見えても、実は軟子音
で終わっているのである。例えば、głąb 深み、の場合、単数主格は głębj であり、複数
生格は語尾の、-i を付加し、głębi となるのである。
名詞
61
9.複数与格の形
1)男性名詞、中性名詞、女性名詞で語尾が異なることはない。常に語尾は -om とな
る。
例えば、男性名詞では、syn 息子、は synom となる。lekarz 医師、は lelarzom と
なる。koń 馬、は koniom となる。中性名詞では miasto 町、は miastom となる。pole
野原、は polom となる。女性名詞では ziemia 大地、は ziemiom となる。
2)国の名前で複数のものがあるが、それも同様である。例えば、Węgry ハンガリー、
は複数形を取る名詞であり、与格は Węgrom となる。
Unia grozi Węgrom. EU諸国はハンガリーに圧力をかける。
3)少し注意すべきは中性名詞の特殊な場合である。単数主格の語尾が -ę となる名詞
の場合である。語幹が -on- タイプのものと、-ęt- タイプのものがある。-on- タイプの
名詞の代表的なものは imię 名前、であるが、これは imionom となる。一方、-ęt- タ
イプの名詞の代表的なものは zwierzę 動物、であるが、これは zwierzętom となる。
しかし、いずれにしろ語尾が -om となる。
10.複数対格の形
1)男性名詞
男性名詞に関しては無生名詞、有生名詞については主格と同じであるが、男性人間名
詞については生格と同じである。基本的には無生名詞、男性人間名詞については単数と
同じであるが、有生名詞は異なった様相を呈している。これは複数においては修飾され
る名詞が男性人間名詞と非男性人間名詞とで異なった扱いをするのでそれに合わせた
ものである。すなわち、例えば、形容詞がこれらの名詞を修飾する場合に、その形容詞
の形は有生名詞を修飾する場合は、非男性人間形であり、非男性人間形は主格と同じだ
からである。
2)中性名詞
主格と同じである。
3)女性名詞
主格と同じである。
11.複数造格の形
1)この場合は、語尾が-ami となるのが原則である。男性名詞であろうが、中性名詞
であろうが、女性名詞であろうが、語尾は同じになる。ロシア語において ами あるい
は ями になるのと同じである。また、名詞によっては母音交替が起きることや出没母
音が関係することに注意すべきである。
62
名詞
świat 世界 → światami、wybór 選択 → wyborami(ó → o と母音交替がある。)、
pociąg 列車 → pociągami、miesiąc (暦の)月 → miesiącami、stół テーブル →
stołami、ząb 歯 → zębami( ą → ę と母音交替がある。)、gazeta 新聞 → gazetami、
mięso 肉 → mięsami、rzecz 物 → rzeczami、uczeń 生徒 → uczeniami、kamień
石 → kamieniami(母音の前に ń は書けないので、ń → ni と綴る。)
2)少し注意すべきはクレスカの付く子音で終わる名詞で1音節の場合である。例えば、
gość 客 → gośćmi 、nić 糸 → nićmi 、koń 馬 → końmi となり、単に単数主格に
-mi を付加するだけで形成される。しかし、część 部分、の場合は częściami、gwóźdź
爪、の場合は gwoździami となる様にこれは絶対的なものではない(もっとも、後者
には gwoźdźmi という形も使われる。)。
3)また、中性名詞であるが、dziecko 子供、の場合は、dziećmi となる。
尚、mieszkaniec 住民、は mieszkańcami となる。単数主格に -ami を付加すると
mieszkaniecami となるが、c の前の e は c の後に母音が付くと、脱落する。そう
すると mieszkanicami となるが、子音の前や単語の終わりの ni は ń となるので、
結局、mieszkańcami となるのである
4)さらに特殊なのは przyjaciel 友人、である。この場合は、-mi となるが、単数主格
にそのまま付加されるのではなく、przyjciółmi となる。
12.複数前置格の形
1)名詞複数前置格は、男性名詞であろうが、中性名詞であろうが、女性名詞であろう
が、語尾が -ach となるのがほとんどである。ロシア語で -ах か -ях となるのと類似
している。
hotel ホテル → hotelach、grupa グループ → grupach、gość 客 → gościach(複
数造格は gośćmi と少し変則になったが、前置格は原則通りである。)
2)ただ、わずかであるが、-ech となるのがある。それは、一部の複数形の国名である。
それには、Niemcy ドイツ → Niemczech、Węgry ハンガリー → Węgrzech、Włochy
イタリア → Włoszech 等、がある。
13.複数呼格の形
複数呼格は複数主格と全く同じであるので、呼格の変化を考える場合、単数のみで良
く、複数呼格は考慮に値しない。