第2章 - 埼玉東部消防組合消防局

第2章
消防を取り巻く環境
第2章 消防を取り巻く環境
全国的な消防行政の環境変化
第1 緊急消防援助隊の充実強化
わが国では、地震、風水害、火山噴火、雪害など種々の災害が発生し、多数の尊い命と
貴重な財産が失われ、加えて南海トラフ地震や首都直下型地震が懸念されています。
このため、緊急消防援助隊の編成及び施設の整備等に係る基本的な事項に関する計画を
変更し、震災等大規模災害対策の推進、消防広域応援体制の充実強化を図るとしています。
緊急消防援助隊体制の変更ポイント
○ 緊急消防援助隊の登録目標隊数の見直し
東日本大震災を上回る被害が想定される南海トラフ地震等に備え、大規模かつ迅速
な部隊投入のための体制整備が不可欠なことから、平成30年度末までの登録目標隊数
をおおむね6,000隊規模に大幅増隊。
○ 特殊災害対策に特化した、精鋭部隊として「ドラゴンハイパー・コマンドユニット
(エネルギー・産業基盤災害即応部隊)」を新設
国土強靱化の観点から、石油コンビナート等エネルギー・産業基盤の被災に備え、
特殊災害の対応に特化した精鋭部隊を新設。
○ 緊急消防援助隊活動の機能強化
緊急に先遣出動し迅速な初動対応を行う統合機動部隊及び緊急消防援助隊の通信を
確保する通信支援隊を新設するとともに、機動力の強化、後方支援体制の強化を図る
ため高度な車両及び資機材を全国に配備。
※ 当組合には埼玉県で唯一VSATシステムが国から無償貸与されています。
(VSAT=Very Small Aperture Terminal:通信衛星を介する双方向通信システム
で、平成24年度に旧久喜地区消防組合が国から無償貸与されたもの。)
大規模災害時は、通信手段の確保が重要なことから、VSATシステムを活用し、
被災地消防本部はもとより、県又は国等と直接無線交信をしたり、FAXや画像伝送
をするシステムです。
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第2章
消防を取り巻く環境
※ 平成27年度に津波・大規模風水害対策車両(津波や大規模風水害による冠水地域に
おいて機動的な人命救助を行うため、水陸両用バギーやボート等を積載した特殊車
両)が国から無償貸与されました。
この車両は当組合を含めて貸与時に全国で17台、関東では茨城県日立市消防本部と
神奈川県平塚市消防本部に配備されています。
主に海に面した地域に配備されており、内陸部では岩手県北上地区消防組合と当消
防組合のみとなっています。
第2 消防力の整備指針等の改正
消防を取り巻く社会経済情勢の変化を踏まえ、今後とも、住民の生命、身体及び財産を
守る責務を全うするためには、消防力の充実強化を着実に図っていく必要があるという観
点から、次に掲げる事項が必要とされています。
(1)各種の災害に的確に対応できるよう警防戦術及び資機材の高度化等の警防体制の
充実強化
(2)建築物の大規模化・複雑化等に伴う予防業務の高度化・専門化に対応するための
予防体制の充実強化
(3)高齢社会の進展等に伴う救急出動の増加や救急業務の高度化に対応するための救
急体制の充実強化
(4)複雑・多様化する災害における人命救助を的確に実施するための救助体制の充実
強化
(5)武力攻撃事態等における国民の保護のための措置の実施体制の充実強化等の推
進
そのため、平成 26 年 10 月に、「消防力の整備指針(平成 12 年消防庁告示第 1 号)」
及び「消防水利の基準(昭和 39 年消防庁告示第 7 号)」が改正されました。
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第2章
消防を取り巻く環境
消防力の整備指針改正ポイント
○ 人口に基づく救急自動車の配置基準を見直し、増強配備することとしたこと(第13
条)
○ 大規模災害時に備え、人口規模に応じた台数の非常用車両を地域の実情に応じて配
置することを明記したこと(第17条)
○ 大規模災害時に消防庁舎の機能確保が困難となった場合に備え、代替施設を活用し
て当該機能を確保する計画を事前に策定することを明記したこと(第23条)
○ 管轄人口30万以上に係る通信員の配置基準を見直すとともに、通信指令体制等を勘
案して総数を増減させることができることとしたこと(第31条)
○ 特定防火対象物に係る予防要員を増員し、予防業務の執行体制を強化したこと(第
32条)
消防水利の基準改正ポイント
○ 「最少限度」という表現を改め、「市町村の消防に必要な水利の基準を定めるも
の」としたこと(第1条)
○ 耐震性を有する消防水利を地域の実情に応じて計画的に配置することについて明記
したこと(第4条)
第3 災害情報通信の高度化
近年の少子高齢化、生活様式の多様化、地球温暖化などの影響により、予測しがたい災
害や事故の発生が相次いで発生しており、地震や集中豪雨などの自然災害の発生も全国各
地で危惧され、消防を取り巻く環境はますます厳しさを増しています。
これらの災害はもとより、さまざまなニーズ、状況、環境に合わせた柔軟な対応をする
ためには、正確な情報把握と迅速な指令伝達は必須であります。
また、国においては中国、四国、東海、関東及び東北地方などで局地的な短時間の非常
に激しい雨により記録的な大雨となった平成 20 年 8 月末豪雨以降、従来の固定電話だけ
ではなく携帯電話やIP電話からの 119 番通報者の位置情報通知システムや短時間に集中
する 119 番通報を迅速的確に受付処理できる指令システムの導入を推進しています。
現在の高機能消防指令センターは、消防救急デジタル無線の整備と消防の広域化に伴い、
平成 25 年 4 月 1 日に設立した埼玉東部消防組合として加須・久喜・幸手・白岡・杉戸消
防署でそれぞれ運用していた指令課、通信指令室を統合し、平成 27 年 1 月 16 日から、消
防局指令課、高機能消防指令センター(Ⅲ型指令台を導入)として運用を開始いたしまし
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第2章
消防を取り巻く環境
た。
なお、デジタル無線を整備したことから、災害に関する個人(被災者)情報が保たれる
など秘匿性が格段に向上しています。
平成 27 年 1 月 16 日から運用開始された高機能消防指令センター
第4 医療機関との連携の推進
救急救命士が行う特定行為の範囲について、平成 25 年 8 月に「救急救命士の業務のあ
り方等に関する検討会報告書」により、必要な講習・実習を修了する等の諸条件を満たし
た救急救命士は、心肺機能停止前の重度傷病者に対する静脈路確保及び輸液、血糖測定並
びに低血糖発作症例へのブドウ糖溶液の投与をすることが認められるようになりました。
また、救急搬送において傷病者を受け入れる医療機関が決まらないという、受入医療機
関の選定困難事案が社会問題化していますが、一方では医療技術の進歩により、発症初期
に実施すると効果的な医療技術が発達していることを鑑み、傷病者の予後の観点から、消
防機関と医療機関とが連携し、救急搬送における医療機関選定から医療機関における医療
の提供までの一連の行為をいかに円滑に実施するかが重要とされています。
救急搬送における課題は、住民の安全・安心に関わる問題であることから、消防機関と
医療機関が連携して、円滑な救急搬送体制を構築する必要があります。
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第2章
消防を取り巻く環境
医療提供体制については、埼玉県が
策定する医療計画に基づき二次医療圏
を中心に整備され、救急業務に関する
諸問題は県メディカルコントロール協
議会或いは地域メディカルコントロー
ル協議会での協議を踏まえ、管内医療
機関との連携をより一層推進すること
が必要とされています。
第5 救助体制の強化
平成 16 年 10 月に発生した新潟中越地震、平成 17 年 4 月に発生したJR西日本福知山
線列車事故等の大規模災害により、救助体制を強化する必要性が高まり、「救助隊の編成、
装備及び配置の基準を定める省令」
、「救助活動に関する基準」が改正され、平成 19 年 10
月から施行されました。
これにより、従来の救助隊、特別救助隊に加え、高度救助隊及び特別高度救助隊が創設
され、これにより特別高度救助隊は東京都及び政令市 21 消防機関で 34 隊、高度救助隊は
86 消防機関で 89 隊が設置されています。
埼玉県内では、特別高度救助隊がさいたま市に 2 隊、高度救助隊が川越地区消防局、川
口市消防局、埼玉西部消防局、埼玉県央広域消防本部、越谷市消防本部、埼玉県南西部消
防本部にそれぞれ 1 隊設置されています。
当消防組合でも救助業務の高度化、救助体制の充実強化を図るため平成 28 年 4 月に久
喜消防署に高度救助隊を設置します。
このことから高度救助隊の効果的な運用を図るため、消防大学校や消防学校等の外部教
育機関へ職員を派遣することはもとより、組合管内においても隊員を育成するための教育
を積極的に実施していく必要があります。
〇 救助隊区分
救助隊区分
救
助 隊
(省令第2条)
配置基準
人口 10 万人
未満の消防署
整備資機材等
省令別表第1に掲げる救
助器具とそれを積載でき
る車両
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隊員の資格
救助に関する専門的な
教育を受けた隊員5人以
上で編成するよう努め
る
第2章
救助隊区分
配置基準
特別救助隊
人口 10 万人
(省令第4条)
以上の消防署
中核市若しくは消
高度救助隊
防庁長官が指定す
(省令第5条)
るそれと同等規模
の消防本部
消防を取り巻く環境
整備資機材等
隊員の資格
省令別表第1及び別表第2 救助に関する専門的な
に掲げる救助器具と救助 教育を受けた隊員5人以
工作車
上で編成
省令別表第1から別表第3 救助に関する専門的か
までに掲げる救助器具と つ高度な教育を受けた
救助工作車
隊員5人以上で編成
省令別表第1から別表第3
までに掲げる救助器具と
特別高度
救
助 隊
(省令第6条)
政令指定都市
及び東京都
救助工作車及び特殊災害 救助に関する専門的か
対応自動車(地域の実情 つ高度な教育を受けた
に応じてウォーターカッ 隊員5人以上で編成
ター及び大型ブロアーを
備える)
※ 表中の「省令」とは、
「救助隊の編成、装備及び配置の基準を定める省令(昭和 61 年
自治省令第 22 号)
」をいいます。
〇救助隊が装備すべき救助器具
救
助 器
具 名
救 助 隊
特
別
高
度
特別高度
救 助 隊
救 助 隊
救 助 隊
かぎ付はしご
○
○
○
○
三連はしご
○
○
○
○
省
金属製折りたたみはしご等
○
○
○
○
令
空気式救助マット
○
○
○
○
別
救命索発射銃
○
○
○
○
表
サバイバースリング等
○
○
○
○
第
平担架
○
○
○
○
一
ロープ
○
○
○
○
カラビナ
○
○
○
○
滑車
○
○
○
○
- 13 -
第2章
救
省
令
別
表
第
一
助 器
具 名
救 助 隊
特
別
消防を取り巻く環境
高
度
特別高度
救 助 隊
救 助 隊
救 助 隊
油圧ジャッキ
○
○
○
○
油圧スプレッダー
○
○
○
○
可搬ウインチ
○
○
○
○
ワイヤロープ
○
○
○
○
マンホール救助器具
○
○
○
○
救助用簡易起重機
※
※
※
※
油圧切断機
○
○
○
○
エンジンカッター
○
○
○
○
ガス溶断器
○
○
○
○
チェーンソー
○
○
○
○
鉄線カッター
○
○
○
○
万能斧
○
○
○
○
ハンマー
○
○
○
○
携帯用コンクリート破壊器具
○
○
○
○
生物剤検知器
※
※
※
○
化学剤検知器
※
※
可燃性ガス測定器
○
○
○
○
有毒ガス測定器
※
○
○
○
酸素濃度測定器
※
○
○
○
放射線測定器
※
○
○
○
空気呼吸器
○
○
○
○
空気補充用ボンベ
※
※
※
※
革手袋
○
○
○
○
耐電手袋
○
○
○
○
安全帯
○
○
○
○
防塵メガネ
○
○
○
○
携帯警報器
○
○
○
○
防毒マスク
○
○
○
○
化学防護服
※
○
○
○
陽圧式化学防護服
※
○
○
○
耐熱服
※
※
※
※
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※
○
第2章
救
省
令
別
表
第
一
省
令
別
表
第
二
助 器
具 名
救 助 隊
特
別
消防を取り巻く環境
高
度
特別高度
救 助 隊
救 助 隊
救 助 隊
放射線防護服
※
○
○
○
簡易画像探索機
※
○
○
○
除染シャワー
※
○
○
○
除染剤散布器
※
○
○
○
潜水器具一式
※
※
※
※
流水救助器具一式
※
※
※
※
救命胴衣
※
※
※
※
水中投光器
※
※
※
※
救命浮環
※
※
※
※
浮標
※
※
※
※
救命ボート
※
※
※
※
船外機
※
※
※
※
水中スクーター
※
※
※
※
水中無線機
※
※
※
※
水中時計
※
※
※
※
水中テレビカメラ
※
※
※
※
登山器具一式
※
※
※
※
バスケット担架
※
※
※
※
投光器一式
○
○
○
○
携帯投光器
○
○
○
○
携帯拡声器
○
○
○
○
携帯無線機
○
○
○
○
応急処置用セット
○
○
○
○
車両移動器具
※
※
※
※
その他の携帯救助工具
○
○
○
○
マット型空気ジャッキ一式
―
○
○
○
大型油圧スプレッダー
―
○
○
○
救助用支柱器具
―
※
※
※
チェーンブロック
―
※
※
※
空気鋸
―
○
○
○
大型油圧切断機
―
○
○
○
空気切断機
―
○
○
○
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第2章
救
助 器
具 名
救助隊
特
消防を取り巻く環境
別
高 度
特別高度
救助隊
救助隊
救助隊
鉄筋等切断用チェーンソー
―
※
※
※
削岩機
―
○
○
○
ハンマドリル
―
○
○
○
酸素呼吸器
―
○
○
○
簡易呼吸器
―
○
○
○
省
防塵マスク
―
○
○
○
令
送排風機
―
○
○
○
別
エアラインマスク
―
※
※
※
表
耐電衣
―
○
○
○
第
耐電ズボン
―
○
○
○
二
耐電長靴
―
○
○
○
特殊ヘルメット
―
※
※
※
緩降機
―
○
○
○
ロープ登降機
―
○
○
○
救助用降下機
―
※
※
※
発電機
―
○
○
○
画像探索機
―
―
○
○
地中音響探知機
―
―
○
○
熱画像直視装置
―
―
○
○
夜間用暗視装置
―
―
○
○
地震警報器
―
―
○
○
電磁波探査装置
―
―
※
○
二酸化炭素探査装置
―
―
※
○
水中探査装置
―
―
※
○
省
令
別
表
第
三
【凡例】 ○は、装備すべき救助器具
※は、地域の実情に応じて装備する救助器具
―は、装備に該当しない救助器具
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第2章
消防を取り巻く環境
第6 住宅防火の推進
平成 16 年の消防法(昭和 23 年法律第 186 号)改正により、既存住宅を含めたすべての
住宅を対象として「住宅用防災機器」の設置が義務付けられ、各市町村の条例に基づき、
平成 23 年 6 月までに全ての市町村において施行されました。
住宅火災により死に至った原因の 7 割が「逃げ遅れ」ということから、火災により発生
する煙を感知して警報する住宅用防災機器は、早期に火災を気付かせる重要な機能を備え
ています。
しかし、平成 27 年 6 月時点の全国調査では、未だ設置していない世帯は約 2 割であり、
各市町村の火災予防条例の規定どおり設置されていない世帯は約 3 割にのぼるという結果
でした。
新築住宅に対する住宅用防災機器の設置義務化がスタートした平成 18 年以降住宅火災
件数は減少を続けているなど一定の効果が現れていることを鑑み、住宅用防災機器の重要
性を周知し、更なる普及促進に努めることとされています。
第7 違反是正の推進
防火・防災管理の業務や消防用設備等の設置維持に関し違反があり、立入検査によって
消防機関がこれを知りえた場合は、是正のための警告を発し、なお是正されない場合は、
命令を行うなど、次の措置に移行する必要があります。
しかし、命令による公示に至るまでの間、建物の危険性に関する情報が利用者に提供さ
れない状況となります。
そのため、平成 27 年 4 月には、全ての政令指定都市の消防本部において、違反対象物
に係る公表制度が実施され、管内人口が 20 万人以上の消防本部については、遅くとも平
成 29 年 3 月末までに条例等の改正を行い、公布後に十分な周知期間を確保したうえで、
遅くとも平成 30 年 4 月 1 日から実施するものとされました。
また、移行するとしても違反の覚知から命令による公示まで長期間かかる実態を踏まえ
ると、特に重大な違反に関してはその事実がその間、住民に知らされないことは安全を図
る上で避けなければなりません。
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