第1章 少年スポーツ 少年スポーツ活動 スポーツ活動の 活動の育成意義 Ⅰ スポーツ活動 スポーツ活動の 活動の現状 健康で心豊かに生活することは国民全体の願いです。そして、それを支えるのがスポー ツです。国民のほとんどはスポーツを「する」 「支える(運営・指導)」 「見る(観戦・応援) 」 「読む(新聞・雑誌)」 「着る(ファッション)」などの活動でスポーツに関与しており、日 本の経済発展にも大きく貢献しています。中でも「するスポーツ」は生涯スポーツとして、 大まかに3つの方法で実践されています。健康や体力の維持・向上を直接の目標としてウ ォーキングやジョギングなどをしたり、学校や職場、地域の仲間と同好会を組織し、趣味 (レクリエーション)として楽しんだり、プロスポーツを頂点に部活動として競技スポー ツを楽しんでいます。 競技スポーツはオリンピックのルールを基に学校期に応じてルールが決められ、公式試 合においてはそのルールが適用されます。勝つためには選手をそのルールに早く適応でき るよう育成することが目標となります。一方、健康・体力の維持・向上、趣味としてのス ポーツは、行う人それぞれの体力・技能に応じて独自にルールが簡易化され、レクリエー ション的に楽しまれています。 運動欲求は人間の本能ないし衝動として子どもに現れます。運動遊びは自由で、その中 に独自の緊張・歓び・面白さを持っており、子どもたちはそれを求めて自発的・主体的に 精一杯活動します。ルールや約束も技能に応じて変化・発展させていきます。子どもの自 由時間の大半は戸外での運動遊びに費やされてきました。しかし、子どもを取り巻く生活 環境の変化により、戸外での遊び時間が30年前の子どもと比較して約1時間減少してい ます。そして、運動を好む子どもと好まない子どもの二極化や体力の低下傾向があること、 子どもの世界にもストレスが蔓延していることが問題となっています。 スポーツの価値と文化を継承していくためには、このような子どもの現状を把握し、こ れからの少年スポーツの育成のあり方を検討する必要があるでしょう。 Ⅱ スポーツの スポーツの価値 スポーツそれぞれには独自の文化(技術やルールなど)があり、独特の楽しさを持って います。スポーツを楽しむことでストレスを解消し、体力・技能・社会性・精神力を向上 させることができます。また、その活動の中で自己実現を図ることもできます。 1 スポーツの スポーツの楽しさ 子どもから見たスポーツの魅力は、個人対個人・集団対集団で競争し、その過程の競 り合い(緊張感)の楽しさや勝つ喜び(競争型) 、記録やフォームを達成する楽しさ(達 成型)、刻一刻と変化する自然を克服する楽しさ(克服型) 、虚構の世界や自己の心情を 表現する楽しさ(模倣変身型)などに分類されます。 また、子どもは「①精一杯運動できる。②技能が向上する。③仲間と仲良くできる。 ④新しい発見がある。」といったスポーツ活動を望んでいます。 子どもはスポーツの楽しさや喜びを体育の授業や地域の遊びで体験し、自己の興味・ 1 関心に基づいて、より広く・深い楽しさを求めて入会(入部)してきます。しかし、 「友 だちがいるから」 「親に健康に良いからと言われて」などの動機で入会してくる子どもも います。これら様々な子どもの関心・欲求を調整し、子どものレベルに応じたスポーツ の楽しさを体験させ、運動大好き人間に育てることが望まれます。 数多くの楽しさ体験はスポーツを継続することにつながりますが、その楽しさを味わ うまでに払われた努力や苦痛が大き過ぎればスポーツ活動の継続は望めません。それゆ え、子どもの欲求を大切にし、子どもの体力・技能に応じた合理的で効果的な学習が展 開される必要があります。 2 健康や 健康や体力の 体力の向上 適度な運動は健康や体力の向上に大きく貢献します。とくに発育期における子どもの 健常な発達に欠かせないものです。 人は立っているだけでも筋力を使います。歩くだけでも心臓や肺を活発に働かせます。 走ったり,跳んだりなどの全身的運動では呼吸が苦しくなるほどの刺激を身体に与えま す。さらに,このような苦しさを克服することで精神的にもたくましくなります。体力 は下の表のように分類されており,スポーツを楽しむことによってこれらの能力が高ま ります。 また、身体・運動能力の発達している子どもは情緒的に安定し、積極的で社交性に富 み肯定的自己概念を形成し、学校生活の中でリーダーに選ばれやすいといわれています。 体力の 体力の分類 形態 体格 姿勢 筋力 行動体力 敏捷性・スピード 機能 平衡性・協応性 持久性 身体的要素 柔軟性 構造 ・・・・・器官・組織の構造 温度調節 防衛体力 機能 体力 免疫 適応 意志 行動体力 ・・・・・・・・ 判断 意欲 精神的要素 防衛体力 ・・・・・・・・・・・ 精神的ストレスに対する抵抗力 (猪飼、1969) 2 3 心理的・ 心理的・社会的効果 子どもは形の異なる動きや変化・発展した動きへ挑戦していきます(新規を求める欲 求、自己試しの欲求) 。また、競争することで自己の卓越性を求めて努力します(承認の 欲求) 。その中で、自分だけでなく仲間を理解することもできます(スポーツの親和性) 。 また、自己に課題を与えて、それに挑戦し、自分自身を開発する(自己開発の欲求)こ とに喜びを感じる(自己実現)ことができます。 スポーツを実践して楽しむだけでなく、自己を選手や監督に投射(模倣)させて、心 理的駆け引きを楽しんだり、ファインプレーに感激したり、勝利をあたかも自分が手に したように感じて喜ぶなど、仲間を応援して楽しむこともできます。 用具の準備・片付け、自己の運動結果の情報を得るためにも仲間の存在は欠かせませ ん。クラブの仲間だけでなく、相手チームも大会運営者も自己を高めるための協力者で す。自己の役割を果たすという責任感を持つことで仲間に認められ、親友という仲間を 得ることができます。また、練習や試合の中で主体的に「目標を持つ→目標に沿って活 動する→自己評価する」ことで大人からの独立心・自律心・自制心などが育成され、社 会に必要な生活習慣を育成することができます。 クラブ内での試合は、子どもの技能に応じてルールを簡易化してクラブ員全員が楽し むことができます。 その中で、 協力する態度や仲間を思いやる心を学ぶことができます。 一方、 公式試合は正式ルールで開催され、 審判や観衆によって客観的な評価を受けます。 そのため「正々堂々と最善を尽くす。ルールを守る。勝敗にこだわらない。 」といったス ポ— ツマンシップが要求され、人格形成に役立ちます。 【参考文献】 ・竹之下休蔵、 プレイ・スポーツ・体育論 (大修館書店) ・高田 典衛、 体育授業入門 (大修館書店) ・松田 岩男、 体育心理学、現代保健体育学大系4 (大修館書店) 3
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