中東ビジネス関連法セミナー

AMERELLER
中東ビジネス関連法セミナー
日本企業のための法務・実務ガイド(2016年版)
2016年8月28日(日)@ドバイ
2016年8月29日(月)@ドバイ(英語)
2016年8月30日(火)@アブダビ
Christopher Gunson
クリストファー・ガンソン
+971.50.554.6205
[email protected]
Amereller
アマレラー法律事務所 ドバイ・オフィス
Baghdad | Basra | Berlin | Cairo | Damascus | Dubai | Erbil | Munich | Ras Al Khaimah | Tehran | Tripoli
Pillsbury Winthrop Shaw Pittman LLP
www.amereller.com
本日のプレゼンテーションの内容
第一部:取引編(15:00~16:15)
第二部:事業編(16:30~18:00)
 中東とは?
 外資制限・事業形態
 中東諸国の法制度
 直接投資・合弁事業
 代理店保護法
 規制コンプライアンス
(競争法、消費者保護法、
個人情報・データ保護、通信、
金融、医療、食品など)
 商取引における注意点
(契約締結、破産法、
債権回収、書類交渉、
担保設定、税制など)
 紛争解決
2 | 中東ビジネス関連法セミナー
 労働法
 生活関連法
A M E R E L L E R
当事務所の紹介①
 アマレラー法律事務所は1999年に設
立された、数少ない中東地域系法律
事務所である。
 ミュンヘン、カイロ、バグダッド、ドバ
イ、テヘラン事務所を中心に、ベルリ
ン、ダマスカス、トリポリ、エルビル、
バスラ、ラス・アル=カイマにも事務
所があり、その他ほぼ全ての中東諸
国に提携事務所がある。
 中東ビジネス法を専門とする約70人
の弁護士が所属しており、英語、アラ
ビア語、ファルシ語、クルド語、フラン
ス語など中東で使用される言語によ
る対応が可能。
3 | 中東ビジネス関連法セミナー
アマレラー事務所
A M E R E L L E R
当事務所の紹介② 中東における日系企業の案件数
知的財産権
仲裁・訴訟 38件
リビア
9件
南ア、9件
ナイジェリア、11件
42件
ケニア
モロッコ
7件
8件
その他
57件
イエメン、12件
インド、15件
レバノン、16件
ドバイ
170件
パキスタン、17件
規制
117件
代理店関係・
商取引
389件
労務
131件
ヨルダン、23件
アブダビ
61件
トルコ、 24件
エジプト 27件
その他の首長国
24件
イラク、28件
直接投資・
事業設立
133件
その他GCC諸国
(カタール、クウェート、
オマーン、バーレーン)
120件
※=過去5年間、約170社の日系企業の約850件
4 | 中東ビジネス関連法セミナー
UAE全国
90件
サウジ・アラビア
121件
A M E R E L L E R
中東とは?①
5 | 中東ビジネス関連法セミナー
A M E R E L L E R
中東とは?①
 中東・北アフリカ(イスラエルを除く)18カ国は、法規制が似ている
一方、経済体制は異なる。
 産油国 対 非産油国
 人口の多い国 対 人口の少ない国
 君主制国家 対 共和制国家
Tunisia
チュニジア
Morocco
モロッコ
Algeria
アルジェリア
Turkey
トルコ
Lebanon
レバノン
Jordan
ヨルダン
Syria
シリア
Iraq
イラク
Iran
イラン
Bahrain
Libya
リビア
Egypt
エジプト
バーレーン
Kuwait
Qatar
クウェート
カタール
Saudi Arabia
サウジアラビア
Oman
オマーン
UAE
アラブ首長国連邦
Yemen
イエメン
6 | 中東ビジネス関連法セミナー
A M E R E L L E R
中東とは?② 石油・天然ガス
 最大の産油国はサウジアラビア、次にイラン、イラク、クウェート、UAE
(アブダビ)とアルジェリア。オマーンとリビアも輸出している。
 近年、カタールはLNGの形態で天然ガスを大量に輸出する国として重要。
¥
0.05
0.5
0.05 ▼
0.3
0.02 ▼
3.3 ▲
2.5
0.03
0.8
m
m
1.4▼
12.2
0.4 ▼
47.3
0.5 ▼
4.5
143
2.6
101
7 | 中東ビジネス関連法セミナー
26.8
0.1
9.7 ▲
264
1日平均の産出量(単位:ミリオンバレル)(2014年)
石油の確認埋蔵量 (単位:ビリオンバレル)(2014年)
3.1 ▼
151
0.05 ▼ 1.5 ▲
0.1 ▼
2.7
2.8
97.8
0.9▲
5.6
Gulf Cooperation Council (GCC)
湾岸協力会議所
A M E R E L L E R
中東とは?③ 人口
 エジプト、トルコ、イランは人口が多い。
 人口がやや多い国は、モロッコ、アルジェリア、シリア、イラク、サウジ
アラビア、イエメン。
 8カ国は、人口が一千万人以下。
77
11
4
33
23
36
78
6
40
3
6
1
88
2
31
単位:百万人(2014年)
8 | 中東ビジネス関連法セミナー
9
4
25
A M E R E L L E R
中東とは?④ 統治制度
 20世紀における革命による独立(アルジェリア、チュニジア、レバノ
ン)または君主制度の崩壊(トルコ、リビヤ、エジプト、イラク、シリ
ア、イエメン、イラン)。
 GCC6カ国、ヨルダン、モロッコは王家が存続している。
(1922)
(1956)
(1949)
(1943)
(1962)
(1969)
(1958)
(1979)
(1953)
▲ = 君主国
▲ = 共和国(革命年度)
9 | 中東ビジネス関連法セミナー
(1967/1970)
A M E R E L L E R
中東とは?⑤ アラブの春の影響
 アラブの春
 2011年1月にチュニジアにおけるデモを発端に周辺地域に
拡大し、抗議活動はカタールとUAEを除く国にて起きた。
 共和国が最も不安定になった一方で、君主国は体制に
対する支持が増した。
▲ = 抗議活動後政権崩壊・内戦
▲ = 抗議活動後政権崩壊
▲ = 内戦、政権崩壊の可能性有り
10 | 中東ビジネス関連法セミナー
A M E R E L L E R
中東諸国の法制度①
 アラブ諸国の多くは、エジプトを発祥としたシャリーア(後述)の影響を受け
た大陸法(シビルロー)制度を採用している。例外は以下のとおり。
 独自のシャリーア法制度:基本的な成文法のないサウジアラビア、基
本的な成文法のあるイラン
 シャリーアの影響を排除した大陸法制度:トルコ
 シャリーアの影響を受けた英国法制度:スーダン、パキスタン
Tunisia
チュニジア
Morocco
モロッコ
Algeria
アルジェリア
Turkey
トルコ
Lebanon
レバノン
Jordan
ヨルダン
Syria
シリア
Iraq
イラク
Iran
イラン
Bahrain
Libya
リビア
Egypt
エジプト
バーレーン
Kuwait
Qatar
クウェート
カタール
Saudi Arabia
サウジアラビア
Oman
オマーン
UAE
アラブ首長国連邦
Yemen
イエメン
11 | 中東ビジネス関連法セミナー
A M E R E L L E R
中東諸国の法制度② GCC諸国
 湾岸協力会議(GCC)は、 1981年に
安全保障上の連携を主目的として設
立され、 6カ国が加盟した。
 近年は、安全保障問題だけでなく、以
下のような、共通の法制度が増えて
いる。

通信規制(1983年)

道路交通(1989年)

特許制度(1992年)

司法協力(1996年)

経済協力・関税協定(2002年)

GCC国民が他のGCC諸国に投資・居
住することへの制限の撤廃(2008年)

付加価値税(Value-Added Tax 、
VAT)(2018年)(予定)
12 | 中東ビジネス関連法セミナー
Kuwait
クウェート
Bahrain
バーレーン
Qatar
カタール
Saudi Arabia
UAE
サウジアラビア
アラブ首長国連邦
Oman
オマーン
A M E R E L L E R
中東諸国の法制度③ 成文法がない時代から
 休戦諸国(現在のUAE)は、19世紀初頭に英
国の保護領となった。コーラン等に基づくイス
ラム法および首長の口頭での命令による支
配が行われていた。
 20世紀前半、英国は、スーダンのアラブ族書
記官を各首長国に派遣し、首長の命令を記
録させた。この記録が初の成文法となった。
 1950年代に、英国の指導の下に警察隊と独
立した裁判所が設立された。
 1971年の英国からの独立と同時に憲法が制
定され、絶対君主制の6首長国によりアラブ
首長国連邦(UAE)が樹立された。(数ヶ月後
にラウス・アル=ハイマが加入し、現在の7首
長国となった。)
13 | 中東ビジネス関連法セミナー
1960年のアブダビ
A M E R E L L E R
中東諸国の法制度④ UAE現代法の制定
UAEの成立後、以下の連邦の現代法が制定された。
















1972年:
1980年:
1981年:
1984年:
1985年:
1987年:
1992年:
1993年:
1999年:
2000年:
2002年:
2003年:
2006年:
2007年:
2012年:
2015年:
イスラエル・ボイコット法、省庁権限法
労働法、中央銀行法
商事代理法、海洋商事法
(旧)会社法、保険会社及び代理店法
民事取引法(民法)、イスラム銀行法
刑法
民事訴訟法、証拠法、刑事訴訟法
商事取引法(商法)
環境保護法
証券取引所法
マネーロンダリング禁止法
通信法
電子取引法、消費者保護法
(新)通関法、保険庁設立法
競争法、サイバー犯罪防止法
(新)会社法、反差別法
1980年のアブダビ
破産法、担保設定法、仲裁法、行政手続法等は、特に制定されていない。
14 | 中東ビジネス関連法セミナー
A M E R E L L E R
中東諸国の法制度⑤ 首長国による相違点
 各首長国独自の法律・法令の制定が認められている。また、各省庁の法律の
適用方法にも差異がみられる。
 大きな相違点:
 石油・天然ガスセクターに関する法制度
 土地・不動産の所有
 賃貸契約書の登録と更新
 政府契約の入札手続き・調達方法・締結要件
 フリーゾーンの役割
 関税実務
 工事設計
 公務員の職務・義務
 消費者保護
 環境保護
 衛生・食品安全規制
 医師免許
 各首長国独自の機関:交通・運輸等
15 | 中東ビジネス関連法セミナー
A M E R E L L E R
中東諸国の法制度⑥ シャリーア(イスラム法)の影響
 UAEを含むアラブ諸国の多くで、シャリーアは「主要な法源」とされる。
但し、多くの国では、直接の適用範囲・対象は、家族法、相続法(イスラム
教徒のみ)および刑法の一部(全員)に限られる。
 シャリーアは、コーラン等の教義に基づく原則であり、以下を含む:
 不確定性(賭博)禁止
 経済的権利の平等
 利子の禁止
 シャリーアがビジネスに与える影響には、以下のような例がある。
 オプション契約が行使できない可能性(賭博/不確実性の禁止)
 延滞利息の支払い(利子の禁止)
 ビジネスの相続(シャリーアは遺言を認めない)
 種類株式の禁止(経済的権利平等の原則)
 イスラム金融は、シャリーアに則っている金融手法。
但し、法令でイスラム金融のスキームの使用は義務付けていない。
16 | 中東ビジネス関連法セミナー
A M E R E L L E R
中東諸国の法制度⑦ サウジアラビアの法制度
 UAEの法制度は、他のMENA諸国と類似した点が多い一方、
サウジアラビアは、立法と司法の面で、非常に独特な法規制をもつ。
□ 1996年制定の基本法により、「コーラン」が憲法とされている。
□ 日常的に執行されている規定のほとんどは明文化されていない。
(たとえば女性の運転禁止。)
□ 民法・商法が制定されていない。
(MENA諸国ではサウジアラビアのみ。)
□ 裁判官は、第一にイスラム教の学者であり、厳密には法律の専門
家ではないため、シャリーアを優先させた判断をすることが多い。
□ したがって、基本的なルール(例:消滅時効の期間、契約締結の
方法等)と解釈が統一されておらず不明確である。
17 | 中東ビジネス関連法セミナー
A M E R E L L E R
中東諸国の法制度⑧ 共通の問題点
多面的に不確実性は大きい
 行政の裁量権が広範囲(行政の権力を制限する法令がない)。
 法令の規定の曖昧さ、法令と実務の乖離、判例の非拘束性。
 「できない」と言いたくない、「問題ない」と言いたい文化。
 情報の不透明性

噂が多い社会。

公式発表が少なく、政策がわかりにくい。(新聞を媒体とした発表)
不確実性が及ぼす影響
 常に情報の正確性を確認する必要あり。
 議論・交渉する余地が多い。
注意:中東と日本の共通点は、商取引において人間関係を重視する信頼社会でであ
る一方、日本文化の細かさと中東文化のいい加減さの間のギャップは大きい。
18 | 中東ビジネス関連法セミナー
A M E R E L L E R
代理店保護法① 概要

多くの中東諸国には「商事代理法、Commercial Agency Law」(代理店保
護法)がある。

以下のとおり、自国の代理店の多面的な保護が典型的な特徴。
1.
2.
3.
4.
5.

代理業・販売業は国民のみが行うことができる。
代理店登録制度があり、管轄機関に代理店の登録をする。
代理店が登録されると、法定独占権も付与されることがある。
解約(更新拒絶を含む)から代理店を保護し、補償請求権を与える。
紛争解決は現地司法機関の専属的管轄。
後述のとおり、商事代理店法は、「商事代理店契約」だけでなく、ほとんど
の中長期の商取引(ディストリビューター、ディーラー、フランチャイズ等)
契約に適用される。
19 | 中東ビジネス関連法セミナー
A M E R E L L E R
代理店保護法② 中東各国
 「典型的な特徴」とはいえ、国により異なる法規制があることに注意。
 代理店に対し、戦略的にアプローチする必要性あり。
▲ = より制限的
▲ = 制限的
▲ = 原則として自由契約
20 | 中東ビジネス関連法セミナー
A M E R E L L E R
代理店保護法③ 代理店の(不)必要性
中東諸国の一般的特徴として、法令と実務が乖離していることが挙げられる。

商事代理法の原則では、外国法人の代理で商品販売業を営むことができ
るのは自国民のみ。UAE商事代理店法には、以下のように規定されてい
る。

「商事代理の活動は、UAE国民およびUAE資本100%法人に制限され
る。」(第2条)

「商事代理の活動は、登録されている代理人によってのみなされる。」
(第3条)

実際は、 UAE資本100%でない法人も販売店・代理店として活動している。
また、UAE資本100%であっても、登録されていない代理店も多い。

外資系企業が現地法人を設立し、独自に販売する事例も多い。
21 | 中東ビジネス関連法セミナー
A M E R E L L E R
代理店保護法④ 代理店登録制度と独占権
 多くの中東諸国には、代理店の登録制度が存在する。一旦代理店登録
がなされると、その代理店に独占権があるとみなされる場合が多い。(契
約上の合意の有無にかかわらず。)
 登録代理店は、①他社による輸入に対してはコミッション請求権があり、
②独占的に輸入する権利も有する。
 代理店による商事代理店の登録を防ぐこと。(登録時には、委託者である
外国企業の同意が必要な場合が多いため、同意する旨の署名をしな
い。)
 代理店に独占権を与えない場合は、非独占的取引である旨を契約に明
記すること。
契約上独占
契約上非独占
登録代理店
独占権あり
独占権あり
登録されていない代理店
独占権あり
独占権なし
22 | 中東ビジネス関連法セミナー
A M E R E L L E R
代理店保護法⑤ 代理店契約書登録の実務
UAE経済省により発行された
商事代理登録証明書
 登録内容:
 商事代理人の法人名
 外国委託者名(メーカーに限らず、商社・販



売者も登録可)
ブランド名(英文も可)
商品名、型番等
対象地域(UAE全域または首長国ごと)
 代理店が独占権を有する範囲は、登録証明書
に明示されるため、ブランド名と商品名の特定
は非常に重要。
 2006年の法改正により、商社・販売者間の契約
を登録するには、製造者の明示的な承認が必
要。
 UAE経済省のサイトで登録状況の検索が可能。
23 | 中東ビジネス関連法セミナー
A M E R E L L E R
代理店保護法⑥ 代理店解約(更新拒絶)に対する保護
 「正当な理由」がない限り、現地の登録代理店の解約および更新拒絶は認
められていない。「正当な理由」の定義は明らかでないが、客観的に「正当
な理由」があっても、裁判所により補償請求権が却下されることはあまりな
い。
 なお、契約期間満了の場合でも、委託者側から契約更新を拒絶することは、
解約と同様にみなされることに注意。
 戦略的なアプローチ:
 解約事由を契約上に明記する。(例:最低販売目標の未達成、販売区
域の違反等)
 代理店に独占権を与えない。(非独占的代理店の利用により上記リス
クを大幅に軽減できるため。)
 解約の際は、なぜ解約するのかを証明する「記録」を作成する。
24 | 中東ビジネス関連法セミナー
A M E R E L L E R
代理店保護法⑦ 代理店との紛争解決
 紛争解決の手続は、所定の政府機関においての代理店登録の有無に
より異なる。


代理店が未登録の場合、原則として自由に紛争解決機関(国際仲裁
等)を定めることが可能。
代理店が登録済の場合、現地機関を通じての紛争解決手続が必要。
 UAE・サウジアラビアでは、まずは現地機関(UAE経済省、サウジ商工
産業省)による裁定を経る必要がある。
 現地機関の調停で和解に至らない場合は、現地裁判所での裁判となる。
25 | 中東ビジネス関連法セミナー
A M E R E L L E R
代理店保護法⑧ 対象契約
商事代理法は、多くの契約体制に適用する可能性がある(登録次第)
Agency Agreement
Distributorship / Dealer Agreement
外国企業
外国企業
(リスク/収益)
Franchise Agreement
外国企業
ライセンス
日本
ノウハウ等
中東諸国
エージェント
ディストリビューター
$
(リスク/収益)
$ エンドバイヤー
26 | 中東ビジネス関連法セミナー
フランチャイズ
$ 加盟者
(リスク/収益)
エンドバイヤー
A M E R E L L E R
代理店保護法⑨ 近年の法改正
近年、大きな法制度の改正がなされた。
 サウジ・アラビア:2015年3月の商工省の省令により、登録の義務化が発
表されたにもかかわらず、現時点(2016年半ば)では大きな変更はみられ
ない。
 オマーン:2015年7月の法改正により、登録による法定独占権が排除され
た。また、契約が期間満了になって更新されない場合、代理店による法定
補償請求権も排除された。(不当解約により補償請求権は存続。)
 エジプト:2016年1月の省令により、多くの特定商品の製造先の登録が、輸
入のために必要とされた。
 クウェート:2016年4月の法改正により、登録代理店の輸入独占権が明示
的に排除された。また、登録されていない代理店は、商事代理法上の保
護・権利がないことが記載された。(商工省の詳則は未発表につき、実務
は不明。)
 カタール:2016年4月の法改正により、登録代理店の輸入独占権が排除さ
れた。
27 | 中東ビジネス関連法セミナー
A M E R E L L E R
代理店保護法⑩ 取引形態ーB2G




政府系企業に商品を販売する場合、代理店の登録義務が実務上課せられ
ることが多い。(特にアブダビ、サウジアラビア、カタールの国営石油企業へ
の販売。)
各政府系企業は、独自のベンダー登録手続を定めており、登録された代理
店のみがベンダー登録を行うことができる。
代理店契約の内容により、他の取引に支障をきたす場合があるため、契約
は慎重に作成する必要がある。
他社へ材料等を直接販売することを禁じられた、EPCコントラクターに商品
を直接販売したところ、代理店にコミッションを請求された等の例がある。
外国企業
材料、パーツ
代理店
多くの商品、アフターサービスが必要と
なる商品の販売、入札への参加
EPCコントラクター
28 | 中東ビジネス関連法セミナー
政府系企業
法令上、代理店選任は必須ではないた
め、契約による合意次第
A M E R E L L E R
代理店保護法⑪ 取引形態ーB2B


比較的規制が少ない取引形態。

代理店登録は必須ではない。政府系企業と異なり、民間企業が現地代理
店を通じた取引を求めるケースは少ない。
国外からの現地企業への直接販売が許可されている。外国法人が現地支
店を通じて、販売契約等をアレンジする例も多い。
国外からの直接販売が禁
止されていない。
外国企業
代理店(登録済み)
現地企業
販売会社
(登録されていない)
29 | 中東ビジネス関連法セミナー
A M E R E L L E R
代理店保護法⑫ 取引形態ーB2C

消費者に対する商品販売にも商事代理店法が適用されるが、代理店登録
は必須ではない。商業ライセンスの事業目的に「販売業務」と記載されてい
れば、原則として、商品・サービスを有償で提供することができる。

例外的に登録が必要なケース:医療品等、一定の種類の商品販売をするに
は、代理店登録が義務づけられている。
 その他、外国資本が入る企業は、業務内容が制限されることがある。
 外国法人の支店による販売業務は認められていない。
エンドユーザー
外国企業
代理店(登録済み)
販売会社
販売会社
エンドユーザー
エンドユーザー
エンドユーザー
30 | 中東ビジネス関連法セミナー
A M E R E L L E R
代理店保護法⑬ 積極的な戦略の一例:代理店間の競争
商品または販売区域によって代理
店を使い分け、代理店間の競争を
促す。
 商品ごとに違う代理店を使うこ
と。(例:UAEで、GM社はGMC
とキャデラックという自社の別ブラン
ドにそれぞれ別の代理店を使っ
ている。)
 販売区域ごとに違う代理店を使
うこと。(例:シボレーはアブダビ、
シャルジャー、ドバイで異なる代
理店を使っている。)
31 | 中東ビジネス関連法セミナー
シャルジャー首長国・北部
アブダビ首長国
ドバイ首長国
A M E R E L L E R
代理店保護法⑭ 防御的な戦略の一例:親会社の保証
グループ親会社・持株会社
外国企業
代理店契約における
競合商品を販売しない義務
代理店
(グループ会社)
契約書の規定は、契約の当事者のみを拘束する。
グループ関連会社
その他グループ会社
(親会社、関連会社)
は拘束されない。
 グループの子会社と契約する場合は、親会社・株主の「保証」または
「契約の精神を守る義務」を要求すべき。
32 | 中東ビジネス関連法セミナー
A M E R E L L E R
代理店保護法⑮ 解約戦略の一例:代理権取得
事業売却型代理権取得
新規代理店契約
外国企業
既存代理店契約の解約
代理店法人格継続型代理権所得
新規代理店
新規パートナー
事業売却
登録譲渡
既存代理店
出資
外国企業
出資
既存代理店
 代理権の取得、あるいは既存代理店の事業を新代理店に対して売却す
ることは、代理店解約と新規代理店選任の戦略の一つである。既存代理
店に直接出資したり、新規代理店と合弁事業を立ち上げる事例もある。
 場合によっては、事業売却の条件として代理店契約を解約し、登録を抹
消または譲渡することに合意させることも可能。
 いずれにしても解約によって補償金を支払うのであれば、効果的な新規
代理店選任方法のひとつ。また、解約交渉は、主に新規代理店に任せば
よい。
33 | 中東ビジネス関連法セミナー
A M E R E L L E R
代理店保護法⑯ 代理店選任時・契約作成上の注意点
 代理店について調査する。(デューディリジェンス)
 関連法令について学ぶ。
 契約は注意深く作成する。
 独占的代理か、非独占的代理か
 登録は必要かどうか、登録させるかどうか
 期間満了、契約の更新方法
 明示的な解約事由
 秘密情報、知的財産の取り扱い
 準拠法・紛争解決
 書面による記録の作成と保管を忘れずに。
34 | 中東ビジネス関連法セミナー
A M E R E L L E R
代理店保護法⑰ 代理店契約の解約方法
 まずは、新しい代理店を見つけること。
 次に、既存の代理店との法的関係について全面的に検討すること。



契約は何を規定しているのか?
現地の法規制は何を規定しているのか?
既存の代理店は商事代理の登録をしているのか?
 解約する決断をした場合、なぜ解約するのか証明する「記録」を作成
すること。
 紛争回避するために解約条件について和解を交渉すること。
 紛争回避できなかった場合のリスクもある。(例:ビジネスが一時停止
する可能性、コミッションを二重に支払う可能性があることに留意。)
35 | 中東ビジネス関連法セミナー
A M E R E L L E R
代理店保護法⑱ 解約戦略
 基本ルール
 相手の文化を理解すること。
 関連法規制の知識を得ること。
 早めに弁護士にご相談を。
 解約理由を書面により通知し、経過を記録すること。
 なぜ解約するのか証明する「記録」を作成すること。
 解約条件について積極的に交渉すること。(在庫買取、一定の補
償)
 マナー面での注意
 勇気を持って話し合うこと。相手の経営者の目を見て、口頭ではっき
り伝えることも重要。
 あくまでも礼儀正しく。中東、湾岸アラブ諸国文化は、誇り高い文化
のため、侮辱しないことは重要。
 相手が事実を認識・受容するプロセスを考慮する。嘆きの5段階
( “Five stages of loss and grief” )
36 | 中東ビジネス関連法セミナー
A M E R E L L E R
商取引における注意点① 交渉の特徴
 現地法人であっても、従業員の出身国は多様で、アラビア語を解さない場
合も多い。(UAE国民と会う機会が少ない。)
 交渉の際、以下の特色を示す可能性がある。
 実務に精通していない:長い契約書および基本的な法概念に不慣れ
 感情的:契約上負担すべきリスクに関する交渉において不合理に振る
舞い、妥協したがらない
 プライド:実際の商業的な力関係にかかわらず、対等なパートナーとし
て扱われることを期待する
 決定権の帰属が不明:(外国人)経営者は、外観的には決定権を有す
るように見えるものの、実際には事業主の同意を得なければ、決定権
を行使できない
 繰り返しになるが、中東社会は、英米の契約社会よりも日本の信頼社会
に近いため、交渉により詳細を詰めて文書化することが難しい。
37 | 中東ビジネス関連法セミナー
A M E R E L L E R
商取引における注意点② 契約書の交渉
 契約交渉のアプローチは、交渉相手の立場によっても異なる。
 社内営業担当者:契約を理解していなく、多くのコメントは、議論にもな
らない瑣末な内容で、解決策の提案が難しい。
 現地弁護士との交渉: 国際的取引の経験が豊富な場合はスムーズに
進むこともあるが、論点がかみ合わないケースではかえって負担が大
きい。
 国際弁護士との交渉:比較的交渉は早く進みかつ合理的。(論点が一
致しているため、同じレベルでの議論が可能。)
 比較的シンプルな契約書の交渉でも、何ヶ月も引き延ばされることは珍しく
ない。当事務所の経験では、代理店契約についての交渉を開始してから
契約締結するまで、平均9ヶ月ほどかかる。(2年以上かかった例もある。)
 準拠法と紛争解決に関する交渉(後述)
38 | 中東ビジネス関連法セミナー
A M E R E L L E R
商取引における注意点③ 契約の締結方法
 通常の商取引において、相手のコマーシャル・ライセンスの写しを貰って、相手の
代表者を確認する商慣習がある。
 裁判所が「暗黙の権限」(Implied Authority)を認めることもあるが、特に大きな契
約の場合は、契約の署名者の委任状、そして署名証明書を確認することが多い。
(特に当局は、パスポートと同じ署名を求める場合が多い。)
 レターヘッドの添付も、実務上の暗黙の了解事項として、当局および多くの商取引
上必要とされる。
 2006年に制定されたUAEの電子取引法により、電子通信による
契約(あるいは署名済みの契約をPDFでメールにて送付する方
法)が有効となった。実際の裁判では、単なる複写版ではなく、当
該契約書が電子送信されたことの立証も必要となる。
 商慣習上、社印(スタンプ)もよく使われており、それがあれば「暗
黙の権限」が認められる可能性が高まる。しかし、スタンプによる
契約の締結は必ずしも有効というわけでもなく、印鑑登録証明書
のような制度もない。
39 | 中東ビジネス関連法セミナー
A M E R E L L E R
商取引における注意点④ 債権回収の実務
 アラブ湾岸社会は日本に近い信頼社会で、人間関係を重視するが、
債務に対する考え方は日本とかなり違う。
 請求に対する支払いは、支払期日からかなり後になされることが多く、し
つこく催促することは関係を悪化させるおそれがある。
 短期の未払いの場合には、弁護士からの督促状を出す前の段階で、支
払いの遅れについて相手を後ろめたい気持ちにさせることも1つの方法で
ある。「アラブ社会では、罪悪感が起きるまで支払わない」という話もある。
 シャリーアにおいて金利は禁止されているが、法定金利は認められてい
る。UAEの場合、通常9%とされる。
 サウジは金利を禁止しているため、「金利」は課されないが、「罰金」や「逸
失利益」という名称なら可能。
40 | 中東ビジネス関連法セミナー
A M E R E L L E R
商取引における注意点⑤ 破産法体制と実務
 1993年制定の商法上に、商人の破産に関する簡単な規定があり、個人
や個人事業の破産に限り適用される。また、刑法上の責任も一部問われ
る。
 破産法がないとはいえ、破産自体がないわけではない。
破産法がない結果:


担保を設定し対抗要件を満たしていても、第三者に対して権利を主
張・行使できないおそれがある。破産手続に入る場合は、事前対策や
自己救済措置が重要。
破産会社の清算人は、破産財団に属する資産をコントロールできない。
 破産法による救済がないため、破産申立をする前に、債権者は、被害届
を出して取締役の刑事責任を追及し、逮捕を求めるケースが多い。
 数年にわたり破産法の法案が検討されていると報じられているが、法案
は公表されていない。
41 | 中東ビジネス関連法セミナー
A M E R E L L E R
商取引における注意点⑥ 破産事件の事例

近年、大型破産事件が増加しており、ほとんどの場合銀行と政府が中心となって債権
者による倒産企業の再生・事業売却・経営主導権取得を行っている。










Galadari Brothers (2006年):ドバイ財閥の倒産、ドバイ王室により救済された。
Forsyth Partners (2007年):イギリス系ファンド、DIFCにおける初めての破産。
Al Ghosaibi (2009年~2015年):サウジ財閥による中東最大の倒産。
Dubai World, Nakheel (2009年):事実上の倒産となったものの、債権者との交渉によ
り事業の継続を達成。
Damas (2011年):銀行を中心に資産売却と再生が行われた。事業主は撤退。
Al Jaber (2011年~2014年):アブダビ財閥で、銀行の債権者を中心に再生が達成。
Dubai Drydocks (2012年):Dubai World子会社。特例によって、DIFCの破産法体制が
適用され、再生を達成。
OW Bunkerのドバイ子会社(2014年):多国籍企業のドバイ子会社の破産。
Atlas Jewelry (2015年):宝石販売を事業とするインド系ドバイ会社が倒産。
その他報道されていない案件も多い。債権者と債務者の間の返済合意により和解する
こともあるが、多くの場合は事業主が実務上撤退して、債権者・新株主(新事業主)によ
り経営陣が選任され、債権者が一定の権限を持つようになる。
42 | 中東ビジネス関連法セミナー
A M E R E L L E R
商取引における注意点⑦ 不動産・動産における担保設定
 一応、UAE民法上に動産の担保に関す
る規定はあるが、実務上、対抗要件、第
三者担保の設定要件を満たすことができ
ない。
 不動産、自動車、船舶には担保の登録制
度があり、担保の設定は比較的簡単で、
債権の執行も可能。
 法人株式への担保設定は、例外的に可
能。
UAE自動車登録証明書の
担保設定の欄
 担保設定が難しいため、日付未記入の小
切手が担保の代わりとしてよく使用される。
 小切手が不渡りとなった場合、振出人個人に刑事責任が問われ、即時に
拘束されることがあるため、「身体的担保」になる。
 また、単なる「保証書」としての誓約書もよく使われている。
43 | 中東ビジネス関連法セミナー
A M E R E L L E R
商取引における注意点⑧ 税制
 油価の下落によって、GCC諸国の財政が
厳しくなり、IMFの提案に基づいて2018年1
月1日から、GCC共通の付加価値税
(Value-Added Tax 、VAT)が制定されると
報じられている。(本資料作成時点では、法
律や詳細は公表されていない。)
国
法人税
UAE
0%
クウェート
15%
カタール
10%
 法人税は、以前から国別に制定されている
(図を参照)。
オマーン
12%
サウジアラビア
20%
 石油開発・金融セクターには、一般法人税
より高い税制が適用される。
バーレーン
0%
 UAEの全ての首長国は税法を制定してい
るが、実際の適用は、石油開発セクターや
銀行に限られている。
44 | 中東ビジネス関連法セミナー
A M E R E L L E R
商取引における注意点⑨ 書類の海外認証と公証役場
 中東で会社設立、株式移転、その他裁判所への契約提出が必要な場合、
必ずその国の公証役場による認証が必要となる。
 公証役場による認証を受けるための要件は大変厳
しく、日々変更がある。





アラビア語による記載が必須。英訳がある場合、
認定翻訳者によるスタンプを得ることが必要。
署名権者のパスポート、エミレーツID提示
会社代表者の場合、署名権の授与を証する委
任状およびそのアラビア語訳
会社のコマーシャル・ライセンス
商標関連の公証の場合、商標登録証明書
 海外で発行される書類は、発行国の公証役場・外務省・在発行国大使館
の認証を経て、更に現地の認証(外務省、法務省、中央銀行等)とアラビア
語訳の添付が必要となる場合が多い。
45 | 中東ビジネス関連法セミナー
A M E R E L L E R
紛争解決① ドバイ裁判所での訴訟
 ドバイでは、連邦裁判所のシステムを採用
しておらず、ドバイ独自の裁判所システムが
設けられている。
 第一審裁判所の中に、民事、商事、刑事、
労働、人事訴訟、不動産の各裁判所があり、
上級に控訴裁判所、最高裁判所がある。
 裁判は原則として公開されているが、裁判
手続・判決記録は公表されていない。
 ドバイ裁判所の手続きは迅速で、短期間に
措置を講じないと、欠席判決となる可能性
は高い。一方、シャルジャやアブダビの裁判
所での裁判手続きは非常に遅い。また、ア
ブダビでの裁判費用は、近年急増している。
46 | 中東ビジネス関連法セミナー
A M E R E L L E R
紛争解決② ドバイ国際金融センター
 ドバイ国際金融センター(DIFC)は、2004年
のUAE連邦法に基づき設立された。独立し
た法域であり、幾つかのコモン・ロー形式の
法令が制定されている。
 DIFCは独自の裁判所を設置しており、ドバ
イ裁判所から独立した制度を有する。英国・
シンガポール等のコモン・ロー諸国の裁判官
により、英国法を中心に適用されている。
 LCIAとの合弁事業である、DIFC-LCIA国際
仲裁機関も設置されている。
47 | 中東ビジネス関連法セミナー
A M E R E L L E R
紛争解決③ DIFC裁判所の国際合意書
近年、DIFC裁判所は、判決の執行と認証に関し、複数の裁判所と合意・協
定を結んでいる。
 2009年: ドバイ公証役場、ドバイ裁判所
 2010年: ヨルダン法務省、UAE法務省、ラス=アル=カイマ裁判所
 2013年: イギリス商業裁判所女王座部
ニューサウスウェールズ州の最高裁判所(オーストラリア)
 2014年: オーストラリア連邦最高裁判所
ケニア高等裁判所
 2015年: シンガポール最高裁判所、ニューヨーク州南部連邦裁判所
カザフスタン最高裁判所、韓国最高裁判所
また、 2016年にDIFC裁判所の最上位機関である控訴裁判所の判決によ
り、上記国での判決をDIFC裁判所にて認証し、ドバイ裁判所で執行するこ
とが認められた。(※)
※:DNB Bank ASA v. (1) Gulf Eyadah Corporation (2) Gulf Navigation Holdings PJSC
48 | 中東ビジネス関連法セミナー
A M E R E L L E R
紛争解決④ 国際仲裁条約を承認するニューヨーク条約
 イエメン、イラク、リビアを除く中東・北アフリカ諸国は「国際仲裁判断の承
認及び執行に関する条約」(ニューヨーク条約)の加盟国になっている。
 ニューヨーク条約の加盟国において国際仲裁の判断を得れば、ニューヨ
ーク条約の加盟国の裁判所において執行できるとされる。
ニューヨーク条約の加盟国
49 | 中東ビジネス関連法セミナー
A M E R E L L E R
紛争解決⑤ 中東地域の仲裁・判決を承認するリヤド協定
 「アラブ連盟加盟国間における司法共助に関する協定」(リヤド協定)と呼
ばれる。
 裁判所の判決や国際仲裁の判断を執行する方法・手続が不明なため、
事前に執行可能かを検討することが重要。リヤド協定加盟国において仲
裁の判断および裁判の判決を得れば、リヤド協定の加盟国の裁判所に
おいて執行できるとされている。
リヤド協定の加盟国
50 | 中東ビジネス関連法セミナー
A M E R E L L E R
紛争解決⑥ GCC司法協力協定
 その他、GCC6ヶ国間での判決と仲裁判断の相互執行を認める
「GCC加盟国間における外国裁判所への嘱託書と司法通知の執行に関
する協定」(GCC司法協力協定)もある。
GCC司法協力協定の加盟国(GCC諸国)
51 | 中東ビジネス関連法セミナー
A M E R E L L E R
紛争解決⑦ ワシントン条約
 イラン、イラク、リビアを除く中東諸国は、1966年の「国家と他の国家の国
民との間の投資紛争の解決に関する条約」(ICSID 条約またはワシント
ン条約) の加盟国になっている。
 ワシントン条約に基づいて、投資紛争解決国際センター(ICSID) に対し
て国家に対する損害賠償を請求することができる。
ワシントン条約の加盟国
52 | 中東ビジネス関連法セミナー
A M E R E L L E R
紛争解決⑧ 中東における国際仲裁機関
BDCR-AAA – Bahrain Chamber
for Dispute Resolution
GCC Commercial Arbitration
Centre, Bahrain
International Arbitration and
Conciliation Centre, Qatar
53 | 中東ビジネス関連法セミナー
Dubai International
Arbitration Centre (DIAC)
Dubai International Financial
Centre (DIFC-LCIA)
Istanbul Chamber of
Commerce Arbitration Centre
Cairo Regional Centre for
International Commercial
Arbitration (CRCICA)
Abu Dhabi Commercial
Conciliation and Arbitration
Centre (ADCCAC)
Saudi Centre for Commercial
Arbitration (2015)
A M E R E L L E R
紛争解決⑨ 実務上の問題
 サウジアラビアでは、裁判をせずに仲裁判断を執行した例は見られて
いない。そのため、国際条約が批准されているものの、実際の国際仲
裁判断の執行は難しいと考えられている。
 2012年に仲裁法が承認され、新しく商業仲裁センターも設立された。
前向きな進展であるが、実際に仲裁判断が執行されるかは不明。
 内閣委員会(サウジ最高諮問機関)未承認の、サウジ国営企業による
仲裁契約の締結は無効とされる。
 その他中東・北アフリカ諸国での注意点:サウジと同様に、国際条約
の批准国であっても、仲裁判断が執行される保証はない。
54 | 中東ビジネス関連法セミナー
A M E R E L L E R
紛争解決⑩ 契約の交渉:準拠法の規定
 準拠法の規定:英国やNY州法、判例に拘束力があるコモンローの法域
が理想的。用語の定義や解釈にも一定の基準がある。 (例:「合理的」と
は?「過失」とは?「最大限の努力」と「合理的な努力」の違いは?)
 ただ実際は、愛国心により、自国法を準拠法とすべく交渉する例がよく見
られる。
 新興市場諸国の契約当事者は、かつて帝国主義に支配された歴史から、
外国法を準拠法とすることに抵抗感がある場合がある。
 UAE法が準拠法の場合:実際は、想像するほど大問題ではない。
 契約書上の準拠法にかかわらず、業務が行われる国・地域の法規制
(代理店保護の規定)に従う必要があるため。
 多くの場合、現地法に準拠する上で大きな問題となるのは「不確定
性」(例:「合理的な行動」が定義されていない)であり、それ以外の大
きなリスクにさらされるとは考えにくい。
55 | 中東ビジネス関連法セミナー
A M E R E L L E R
紛争解決⑪ 契約の交渉:紛争解決の規定
 紛争解決条項:準拠法と同様、あまりよく理解されていない。
紛争が発生した場合、どこを紛争執行地とするか?
 契約相手の出身国はどのような国際条約を批准しているか?
 契約相手の資産・債権はどの国ににあるか?
 準拠法と同様に、「愛国心」に基づき交渉が行われることが多い。
 中東地域で使用される契約の紛争解決地を中東地域外の裁判所(日本
の裁判所、 NY州、ワシントンDC、ロンドンの裁判所)とすることは、多くの
点で望ましくない。
 国際条約による執行が可能なため、多くの場合、国際仲裁での紛争解決
条項を規定することが好ましい。
56 | 中東ビジネス関連法セミナー
A M E R E L L E R
紛争解決⑫ 交渉シミュレーション①
 よくあるケース:
As a Japanese company, we propose:
日本企業である私共は、以下を提案したい。
Governing Law: England
準拠法:英国法
Dispute Resolution: SIAC Arbitration in Singapore
紛争解決機関:シンガポール(SIAC)
NO!
Governing Law: UAE
準拠法:アラブ首長国連邦
Dispute Resolution: Abu Dhabi Courts
紛争解決機関:アブダビ裁判所
 このような時は、どう交渉すればいいのだろう?
57 | 中東ビジネス関連法セミナー
A M E R E L L E R
紛争解決⑬ 交渉シミュレーション②
中立的な準拠法が望ましい。当社は、日本企業なので、
英国法はどうか。
A neutral governing law is ideal – we’re from Japan,
not the UK.
現地の法律に従わなければならないので、こ
の契約も現地法で。
But you must follow local law, so this
contract should be under local law.
契約義務から逃げるためではなく、法解釈の
一定性が高いので、この準拠法を指定したい。
Governing law does not let us escape our
obligations. It is for interpretation.
妥協案:

英国法を準用するDIFC法を準拠法とする。

または以下のような但し書きを加え、安心させる:“Notwithstanding the
governing law of this agreement, the parties will adhere to the requirements of UAE law.”
58 | 中東ビジネス関連法セミナー
A M E R E L L E R
紛争解決⑭ 交渉シミュレーション③
海外の紛争解決機関が望ましい。当社は、日本企業で
あり、シンガポール企業ではない。
An overseas forum to hear any dispute is ideal. We’re
from Japan, not Singapore.
国内商事案件に関する外国機関の判断は、
信用できない。
But we don’t trust a foreign forum to rule
for domestic commercial matters.
国際仲裁は中立であり、UAE国籍の仲裁人
も選ぶことも可能である。
International arbitration is neutral and can
include UAE arbitrators.
妥協案:

DIFCにおけるDIFC-LCIA国際仲裁

(アブダビのADCCAC、ドバイのDIACは、相対的に望ましくない。)
59 | 中東ビジネス関連法セミナー
A M E R E L L E R
紛争解決⑮ 交渉シミュレーション④
 成功例:DIFC準拠法、DIFC-LCIA国際仲裁
 妥協例:UAE準拠法、 DIFC-LCIA国際仲裁
 あまり好ましくない例:英国法準拠法、アブダビ裁判所
 なぜ?
新興国の裁判官がどのように英国法等
の外国法を解釈するか、予測が困難。
他方、(準拠法がどの国のものであれ)国
際仲裁人が合理的判断をすると予測でき
るため。
つまり、準拠法より、紛争解決地の選択のほうがより重要!
60 | 中東ビジネス関連法セミナー
A M E R E L L E R
61 | 中東ビジネス関連法セミナー
A M E R E L L E R
外資制限・事業形態① GCC諸国における外資制限
UAE
クウェート
カタール
49%まで(注:フリーゾーンの場合は100%)
49%まで(注:投資ライセンスの場合は100%可能)
原則として49%まで(注:一部セクターでは100%が許され
ている)
オマーン
原則として70%まで(100%までが検討されている。)
サウジアラビア 原則、総合投資庁(SAGIA)の許可を取得次第、100%
(注:一部セクターに制限があり、また、が常に必要)
バーレーン
原則100%(注:一部セクターに対しては制限がある。)
 なお、GCC加盟国投資協定に基づき、GCC加盟国民は、他のGCC加盟
国内においても、法人の完全保有(100%) が可能とされている。
 ただし、かかる特例は、GCC加盟国民のみの場合に限定される。従っ
て、UAEでは、株主にGCC加盟国以外の国民・法人が含まれる場合に
は上記の特例は適用されず、UAE国民による51%以上の株式保有が
義務付けられている。
62 | 中東ビジネス関連法セミナー
A M E R E L L E R
外資制限・事業形態② 暗黙の外資制限
法令と規則および行政の決定により、多くの外資制限がある。
ネガティブ・リスト※
通信
工業・設計
販売業務
保険・金融
サウジ・アラビア外資制限
外資参入禁止・国民独占業務(SAGIA規則により)
65%まで
75%まで(プロフェショナル法人法により)
75%まで(プロフェショナル法人法により)
75%まで
不動産仲介
人材派遣
物流
保険
金融業務
UAE外資制限
外資参入禁止・国民独占業務(市庁の決定により)
外資参入禁止・国民独占業務(労働法により)
特別の例外を得ない限り国民独占業務
25%まで(連邦保険庁の決定により)
40%まで(中央銀行の規則により)
※メディア、広告、印刷、人材派遣、石油開発、軍事関係、陸上運送など
63 | 中東ビジネス関連法セミナー
A M E R E L L E R
外資制限・事業形態③ その他外資制限
イラク
100%(2003年に49%から緩和された)
エジプト
100% (注:一部セクターに制限があり、総合投資庁(GAFI)
の許可が必要)
トルコ
100% (注:一部セクターに制限がある)
ヨルダン
ほとんどのセクターにおいては49%または50%まで
レバノン
原則100%
シリア
100%(2009年に49%から緩和された)
イラン
原則100%
イエメン
100%(2009年に49%から緩和された)
リビア
原則65%まで(特別な許可があれば、100%まで)
チュニジア
原則50%まで(特別な許可があれば、50%以上)
アルジェリア
49%まで
モロッコ
原則100%
64 | 中東ビジネス関連法セミナー
A M E R E L L E R
外資制限・事業形態④ よくみられる事業形態
中東各国の会社法は若干異なるが、UAEでよくみ
られる事業形態は中東全域で使用されている。

Establishment (Est.):国民の登録されている
個人事業。原則国民の氏名と商業活動は社名
になる。法人格がない。(国民本人が主体)

外国法人の支店:国民代理人
(通称「スポンサー」)が必要。

有限責任会社(LLC、WLL):最もよく利用さ
れている事業形態。

株式会社(PSC、JSC):銀行、保険会社、第三
者のための投資業務、上場企業、IPP法人、政
府系企業はPSCでなければならない。

フリーゾーン法人(FZE、FZCO、FZ-LLC、
FZC等または支店)
65 | 中東ビジネス関連法セミナー
A M E R E L L E R
外資制限・事業形態⑤ 事業運営・ガバナンス
 Establishment:通常1人のマネジャーにより運営されているが、関連法令が
ないため、オーナーからの委任状の内容確認が重要。
 外国法人の支店:通常1人のマネジャーにより経営されているが、関連法令
がないため、親会社からの委任状の内容確認が重要。
 有限責任会社(LLC、WLL):1人以上のマネジャーにより経営されている。
定款上の規定により役員会の設置が可能であるが、事例は少ない。
 株式会社(PSC、JSC):UAEでは、唯一国民の経営参加の要件があり、会
長と取締役会の過半数はUAE国民でなければならない。(多くの場合、「社
長」は外国人。)近年、ガバナンスに関する規定は会社法や証券取引所の
規則により厳しくなっている。
 フリーゾーン法人(FZE、FZCO、FZ-LLC、FZC等または支店):原則1人
のマネジャー/ディレクターにより経営されるが、規則上2人以上や書記官
(Secretary)が必要とされる場合がある。多くのフリーゾーンで、規則と実務
の不一致がみられる。
66 | 中東ビジネス関連法セミナー
A M E R E L L E R
外資制限・事業形態⑥ 商業ライセンス
 法人の設立手続のほか、商業活動の内容が記載されている「商業ライセン
ス」の取得も必要となる。
 商業ライセンスの種類は以下のとおり。
 コマーシャル・ライセンス:販売、一般的な商業活動
 サービス・ライセンス:サービス業
 コントラクティング・ライセンス:工事・保守業務
 プロフェショナル・ライセンス:医療、設計、法律事務所、広告代理業
 インダストリアル・ライセンス:製造業、その他産業
 観光ライセンス:観光関連業務
 同じ法人が複数のライセンスを取得できるが、それぞれ事務所・営業所が必
要。(中東諸国はペーパー・カンパニーを認めないため、事務所・営業所毎で
賃貸借契約書を締結し、登録している事業内容と実際の商業活動の一致し
ていることが要件。)
 商業ライセンス証明書は会社登記証明書・登記簿にあたる。
67 | 中東ビジネス関連法セミナー
A M E R E L L E R
外資制限・事業形態⑦ UAE新会社法(2015年)
 審議に10年以上費やした後、2015年4月付で新会社法が公布された。しかし、
日本企業をはじめとした多国籍企業が期待していたような大きな改正はなかっ
た。
 多国籍企業の期待にもかかわらず、改正されなかった点
 外資制限の緩和(国民が過半数の株式を保有する要件は変わらず。)
 UAE国民の事業パートナー(株主または国民代理人)が、事業運営に非協
力的な場合の対応策
 取締役会等に関する規定
 フリーゾーン法人の当該フリーゾーン地区外での商業活動
 主な改正点は、UAE資本の会社にとって有利なもの
 UAE資本の民間大型グループ企業は、持株会社(Holding Company)の設
立が正式に認められ、上場の要件も緩和された。
 LLCの株式への担保設定が可能となった。(ただし、対抗要件の設定方法
は不明。)
 LLCのマネジャー(代表者)は、株主の承諾がなければ、競合会社を所有・
経営できない。同様に個人事業を所有することも、株主の承認なしには不
可。UAE法における初の信認義務。
68 | 中東ビジネス関連法セミナー
A M E R E L L E R
外資制限・事業形態⑧ 外国法人の支店とスポンサー
 UAEをはじめとして、外国会社の支店(駐在員事務所を含む)は必ず
「国民代理人」(※スポンサー)を選任しなければならない。
 国民代理人は、政府機関に対して会社を代表することが主な役割。
 国民代理人に関するデュー・ディリジェンス(調査)と契約の作成を注意
深く行う必要がある。国民代理人は商事代理人法により保護されない
が、国民代理人の同意がないと解任は難しく、紛争が発生した場合、
支店・駐在員事務所の運営が滞るおそれがある。
 明文化されていないルールも多い。例えば、アブダビ政府系企業と契
約を結ぶ場合、スポンサーがUAE国民であってもアブダビ出身者でな
い場合は、却下されることが多い。
※:「スポンサー」は、成文法がない時代から使用されている商慣習上の用語だが、複数の意味がある。
例えば①支店の国民代理人、②雇用主またはビザの発行の保証人、③販売店や代理店等の意味を
持つ。
69 | 中東ビジネス関連法セミナー
A M E R E L L E R
外資制限・事業形態⑨ 駐在員事務所
 駐在員事務所は、コマー
シャル・ライセンス上では外
国会社の支店になるが、事
業目的の欄に「駐在員事務
所」と記載されている。
 一定のフリーゾーンは、駐在
員事務所という別種の現地
法人を認める。
 新会社法により、駐在員事
務所による「商業行為」は、
罰金の対象となる。
70 | 中東ビジネス関連法セミナー
A M E R E L L E R
外資制限・事業形態⑩ ドバイのフリーゾーンの歴史
1973年のドバイ
1990年のドバイ
 ジェベル・アリ港は中東で最大かつ世界で最大の人工の港を作るという野心
的なインフラ・プロジェクトであった。
 1970年代を通じて工事が行われ、1979年に完成されて、経済政策として、
1980年にフリーゾーン(非関税地区)として設立された(ジェベル・アリ・フリー
ゾーン、JAFZ)。
 1985年に、フリーゾーン庁(JAFZ Authority、JAFZ)が設立されて、JAFZはド
バイ支庁の管轄から排除され、JAFZAは唯一の管轄当局となった。
71 | 中東ビジネス関連法セミナー
A M E R E L L E R
外資制限・事業形態⑪ ドバイのフリーゾーンの発展
 実際には1980年代あたりから、外国人投資家によってJAFZ内に倉庫や
事務所が所有される例が見られたが、1992年に JAFZA規則により、
UAE会社法に基づく外資制限を免除する目的での「free zone
establishment」(FZE)という法人の設立が許可された。
 1996年にはドバイ空港フリーゾーンが設置され、同様のFZEの設立が
可能となった。
 1998年UAE会社法の改正により、外資比率の制限がフリーゾーンでは
適用外となり、外国資本100%の「free zone company」(FZCO)の設立が
認められた。
 その後ドバイに30箇所余りのフリーゾーンが設置され、現在はテクノロ
ジー、ヘルスケア等の事業目的に応じた特別フリーゾーンがある。
72 | 中東ビジネス関連法セミナー
A M E R E L L E R
外資制限・事業形態⑫ ドバイのフリーゾーン地図
 「フリーゾーンの地図って、ありますか?」
 (どう探してもありませんでした。)
 従って、当事務所が作成しました。
A M E R E L L E R
外資制限・事業形態⑬ アブダビのフリーゾーン
 近年、アブダビ首長国でもフリーゾーン設置を推進している。但し、現時
点ではドバイのフリーゾーンに比べ目的が限定されており、発展段階に
あるといえる。
 アブダビの主なフリーゾーン


Masdar:2006年設立。再生可能エネルギー関連企業中心。



KIZAD:2012年設立の大規模工業団地。
Twofour54:2008年設立。メディア・エンターテイメント関連の大企業
中心。
Abu Dhabi Airport Free Zone:2012年開業。
Abu Dhabi Global Marketplace:2013年に計画が発表された金融
フリーゾーン。2015年に規則が公表され、事業登記申請の受理が開
始。
74 | 中東ビジネス関連法セミナー
A M E R E L L E R
外資制限・事業形態⑭ フリーゾーン法人の短所
 フリーゾーン法人は、登録フリーゾーン内に限り、商業活動をすることが
許可されている。フリーゾーン外での商業活動は、原則として禁止されて
いる。
 「商業活動」の定義ははっきり定められていない
が、以下の活動は明らかに商業活動にあたる。
 販売行為
 工事
 商品の設置、維持作業
 物流、輸送
JAFZフリーゾーン関税門
 一方、マーケティング活動や展示会への参加、代理店名義による商業行
為、会議への参加などは、労働法に違反しない限り問題ないとされてい
る。
 フリーゾーン法人は、商品をフリーゾーンからUAE本土に「輸入」すること
ができない。(実務上、輸入する資格がないとされる。)
75 | 中東ビジネス関連法セミナー
A M E R E L L E R
外資制限・事業形態⑮ フリーゾーンと産業都市
外資制限
関税
管轄当局
フリーゾーン
海外製品扱い
各フリーゾーンの規
定による(原則制限な
し)
該当フリーゾーン庁
“One Stop Shop”
産業都市(※)
各国の規定による
GCC製品扱い
該当都市の行政機関
“One Stop Shop”
本土
各国の規定による
GCC製品扱い
各国の行政機関
“One Stop Shop”ではない
※=Industrial City of Abu Dhabi (ICAD)、Jubail Industrial City、Ras Laffan Industrial Cityなど
76 | 中東ビジネス関連法セミナー
A M E R E L L E R
直接投資・合弁事業① UAEのLLCにおける最大の支配
49%
1. 株式の保有及び議決権の行使
外資による株式保有率の上限は厳格に49%
とされる。
2. 会社の経営
マネジャー全員を選任することが可能。
単独の
マネジャー
・・・または複数の
マネジャー役員会
3. 配当権
一般的に、外国会社は80%または85%までの
利益配当を受け取ることができる国が多い
(UAEやカタール)。
77 | 中東ビジネス関連法セミナー
A M E R E L L E R
直接投資・合弁事業② 外国企業による投資ストラクチャー
 株式保有:過半数の株式保有が認められないため、過半数の議決権
を持つことができない。
 要注意点(例えば覚書や議決権の行使を委任する委任状を通じて)
過半数の株式を保有した場合、刑事責任が問われる 。(※)
 対処法としては、会社関連書類で規定することにより、少数株主に拒
否権を与える方法がある。
株主間契約(合弁事業契約)及び会社定款
49%
「株主総会は、52%以上の株式を持つ株主が出席
しなければ、開催できない。
「株主総会のすべての決議は、52%以上の株式を
持つ株主の同意がなければ、決定できない。」
※ = 少なくともUAE、カタール、サウジアラビアでは適用される。
78 | 中東ビジネス関連法セミナー
A M E R E L L E R
直接投資・合弁事業③ 経営陣の構成
 経営陣の構成:外国企業により、取締役会の全役員を選任することが
認められている。日本企業を含む合弁事業で、よくみられる役員構成
は以下のとおり。(旧会社法の5名までのマネジャーの制限は、新会社
法により解除された。)
 株式の49%を保有している日本企業が、ゼネラル・マネジャーを含
む、マネジャー3名を選任。
 株式の51%を保有している現地企業が、マネジャー2名を選任。
マネジャーの過半数の同意
で決定できる事項
(日本企業のみの同意で可)
ゼネラル・マネジャーが、
単独で決定できる事項
(日本企業のみの同意で
可)
79 | 中東ビジネス関連法セミナー
GM
株主間契約(合弁事業契約)
及び会社定款
マネジャーの4人または
全員同意で決定する事項
(両者の同意要・現地企
業が拒否権をもつ)
A M E R E L L E R
直接投資・合弁事業④ M&Aのタイムライン
締結
商談
秘密保持契約書と基本合意書(MOU)
・
・
・
・
効
力
終
了
大枠の合意内容(原則、拘束力なし)
交渉専属権
秘密保持
デューデリジェンスのための情報・書類開示
デューデリジェンス
・ 法務デューデリ
・ ファイナンシャル・デューデリ
・ バリュエーション
締結
契約作成と交渉
株式売買契約書
・
・
・
・
表明保証
の存続
投資対象
価格と支払い方法
前提条件とクロージング
表明保証
契約作成と交渉
締結
株主間契約書(Shareholders’ Agreement)
・
・
・
・
・
80 | 中東ビジネス関連法セミナー
株式
前提条件
移転
(Conditions
Precedent)
を満たした
(Share Purchase Agreement)
クロージング
効
力
終
了
効力発生
経営主導間(株主総会、取締役会、社長)
非競合
デッドロック解消
合弁事業の解消方法・買取請求件等
資金調達・増資手続
A M E R E L L E R
直接投資・合弁事業⑤ デューデリジェンス
デューデリジェンスは常に重要だが、中東において、重要な法的瑕疵(未更
新の契約書、未登録の所有権、失効したライセンス)が見つかる事例は多
い。その場合、投資の中止、価格の調整、または、投資実行前に売主による
大幅な整備を要求するという選択がある。
通常のM&Aデューデリジェンス
会社構成
主な契約書における権利義務
規制コンプライアンス
知的財産権関係・IT関係
訴訟、申立て
グループ内関係
ファイナンス関係
雇用・年金債務
税務
不動産
環境
厚生関係
保険
81 | 中東ビジネス関連法セミナー
UAEを含む新興国における
M&Aデューデリジェンス
当局の承認が必要かどうか
主なる債務
資産に法的瑕疵がないこと・事業の
価格の確認
A M E R E L L E R
直接投資・合弁事業⑥ 理論上の売付・買取請求権
営利上の問題が解決できず、合弁事業からの撤退という決断をせざるを
得ない場合、理論上では 以下の選択肢がある。
PUT
合弁事業会社
Put $$
CALL
合弁事業会社
1.売付請求権(Put):一方の株主が他方の株
主に対して、その株式を売却するよう要求する
権利を有すること。
2.買取請求権(Call):一方の株主が他方の
株主に対して、その株式を買い取るよう要求す
る権利を有すること。
3.交渉に基づく合弁事業の再編集・解消
4.解散 (Dissolution):会社を解散および清算
すること。
Call $$
82 | 中東ビジネス関連法セミナー
A M E R E L L E R
直接投資・合弁事業⑦ 中東における売付・買取請求権
 外資規制があれば、選択肢は非常に限られる。
PUT
UAE LLC
Put $$
 外国投資家による売付請求権の行使は制限さ
れていないため、保有株式を売却し投資から撤
退することが可能。
 但し、外資比率に上限がある国では、買取請求
権の行使は難しいのが実情。
 シャリーアに反すると判断された場合、執行でき
ないおそれがあることに注意。
CALL
UAE LLC
Call $$
83 | 中東ビジネス関連法セミナー
 また、実際に株式移転手続をするためには、公
証役場にて、株主全員が株主名簿を含む改定
定款に署名をしなければならない。実際に取引
相手の協力が得られない場合、裁判所・仲裁機
関にによる執行命令により手続を行う。
A M E R E L L E R
直接投資・合弁事業⑧ 合弁事業の解消・撤退の代替案
既存のパートナーを
新しい現地パート
ナーに変える権利を
有する買付請求権。
外国投資に関する
法的規制の変更が
生じた場合に行使
可能な買付請求権。
最も安全のは解散
する(および関連す
る契約を解約する)
ことのできる確固と
した売付請求権を保
持することである。
UAE LLC
UAE LLC
UAE LLC
Call $$
Call $$
選択権の行使により指名
84 | 中東ビジネス関連法セミナー
外資制限緩和
Put $$
解散請求権
A M E R E L L E R
直接投資・合弁事業⑨ 株式移転
買主が個人の場合、パスポートと本人の
参加のみで取得することができる。
 中東諸国のLLCおよびフリーゾーン法人の株
式譲渡手続は困難である。
買主が会社の場合、
・ 定款
・ 会社登記証明書・登記簿謄本
・ 取締役会議決証明書
・ 会社代表者への委任状
・ LLCのマネジャーへの委任状
 原則、会社定款に含まれる株主名簿および
定款のその他改定も必要となる。
 法人登記局(経済省、フリーゾーン庁など)に
必要書類を提出し、許可を得た後、新しいコ
マーシャル・ライセンスの発行を受ける。
海外企業の場合は、すべての書類は所
定の認証手続を経て、UAE大使館での
領事認証のうえ、UAEに送付後にUAE
外務省の認証と認定アラビア語訳の作
成が必要。
LLC・フリーゾーン法人
・株主全員により、現地の公証役場にて
定款内の株主名簿の改訂版の認証を
受ける。
・株主1人が参加しないだけで、認証が
受けられず、譲渡手続が完了しない。
売主側の株主と買主側の株
主の間の株式売買契約書
買主
85 | 中東ビジネス関連法セミナー
売主
・その他、株主間契約書の締結も重要。
A M E R E L L E R
直接投資・合弁事業⑩ シャリーア死亡時のリスク
UAE LLC
UAE LLC
 シャリーアでは遺言を認めていない。そ
のため、シャリーア裁判所が、各イスラム
教徒の死亡後にその財産相続人を決定
するが、相続人が確定されるまでに数年
かかることも珍しくない。
 個人が株主の場合、その死亡後、全ての
株主の同意事項(例:株式譲渡、定款の
変更等)を決定することが一時的に不可
能になる。そのため、会社運営に支障を
きたす場合がある。
 法人を合弁事業のパートナー(株主)とす
ることにより、このリスクを軽減することが
できる。
86 | 中東ビジネス関連法セミナー
A M E R E L L E R
直接投資・合弁事業⑪ 知的財産保護の戦略
 知的財産を保護するためには、自社の知的財産を把握し、自社名義
で速やかに必要な届出・登録を行うことが重要。
 合弁事業あるいは他人が株式を有する会社を通じて登録するべきで
はない。
 中東における知的財産保護および救済は限定的である。
 合弁事業解消の際、外国投資家が提供した技術を未許可で現地の事
業パートナーが取得する事例がある。
 戦略的な選択肢:
 自らですべての商標・特許その他知的財産を登録すること。
 登録制のないトレード・シークレットの保護対策。
87 | 中東ビジネス関連法セミナー
A M E R E L L E R
規制コンプライアンス① 概要
 近年、中東諸国の法制度が次々と改正され、多くの規制が強化されて
いる。特に、以下の分野は課題とされている。
 輸入規格・基準
 継続する米国イラン制裁
 競争法・独禁法
 消費者保護法
 個人情報・データ保護
 汚職・贈収賄防止
 通信規制
 金融・マネーロンダリング
 医療・製薬品
 食品輸入・ハラル認証
88 | 中東ビジネス関連法セミナー
A M E R E L L E R
規制コンプライアンス② 行政当局との付き合い
 行政当局との付き合いは難しい
 公表されている規則が少なく、担当者によって申
請要件やルールが異なることがある。
 事前の書面通知なしにいきなり手続が変更され
ることがよくある。
ドバイ、
バーレーン
 当局から参考資料や証拠書類の提出を指示さ
れた場合、指示された書類以外のものを提出し
オマーン、
ないこと。担当者が書類内容を理解しない場合、
アブダビ、
更に説明が要請されるか、却下される可能性が UAE連邦、モロッコ
高い。
チュニジア、カタール、
トルコ、レバノン、
 アラビア語の重要性。
ヨルダン、クウェート
 期限・約束を守らない。
サウジ・アラビア、エジプト、
 ただし、少なくともGCC諸国においては賄賂
イラン、イラク
その他の中東諸国
や汚職の問題は稀であり、この点において
は先進国の水準に近いといえる。
89 | 中東ビジネス関連法セミナー
対応が
やや協力的
対応が
非協力的
A M E R E L L E R
規制コンプライアンス③ 輸入規格・基準
 Gulf Standardization Organization(GSO)
は、2002年に設立されたGCC諸国及びイ
エメンの標準化機関である。
 近年、特にUAE とサウジアラビアにおい
て、自国内の標準化機関で独自の規格
を設定する権限を強めている。
 輸入時の審査が厳格になってきているこ
とに伴い、製造業者は販売契約において、
「通関手続等に関しては輸入業者が責任
を負う」旨を明記しておくことが重要となっ
てきている。
90 | 中東ビジネス関連法セミナー
A M E R E L L E R
規制コンプライアンス④ イラン制裁の継続
 2016年1月から、米国やEUの二次的制裁(Secondary sanctions)をはじめ
とする制裁が解除された一方、米国の一次的制裁(Primary Sanctions)は
続いており、一部の二次的制裁も継続している。
 日本企業がイランと取引する際の重要事項:
 米ドルで取引しないこと。
 米国民および米国子会社を一切取引に関与させないこと。
 Specially Designated Nationals(SDN)あるいはイラン軍との関係があ
ると判明した者とは取引しないことを確認すること。
 米国法上の罰則は、1件当たりUS$250,000えとされ、さらに刑事責任も問
われることがある。また、SDNと取引する業者は、SDNとみなされるリスク
がある。
 取引銀行は、事前通知なく、イランからの送金を拒否するリスクが大きい。
 結論として、イラン・ビジネスは米国法上のイラン制裁規定を遵守した上
で取引するべきである。
91 | 中東ビジネス関連法セミナー
A M E R E L L E R
規制コンプライアンス⑤ 競争法・独禁法
国
UAE
クウェート
カタール
オマーン
サウジアラビア
バーレーン
エジプト
イラク
トルコ
イラン
ヨルダン
レバノン
競争法・独禁法
2012年競争法
2007年競争法
2006年競争法
2014年競争保護及び
独占管理法
2004年競争法
なし
2005年競争保護法
2010年競争及び
独占防止法
1994年競争法
2008年競争法
2002年競争法
なし
92 | 中東ビジネス関連法セミナー
 近年、消費者保護法と競争法・独禁
法が課題となっている。経済省また
は商工省が管轄している。
 「市場荒らし」を防ぐことが主な目的
である。
 EUや米国よりも規制は緩く、現地の
価格に対する規制が主となる。
 GCC諸国においてサウジアラビアの
規制が最も古く、一般的に(特に
M&Aに関しては)最も厳格であると
見なされている。
A M E R E L L E R
規制コンプライアンス⑥ 消費者保護法
 民主化されていない政府は、
国民の声を聞くため、主な消
費者である自国民を強く保護
する傾向が見られる。
国
UAE
クウェート
カタール
オマーン
 UAE連邦法の他、アブダビ首
長国の規制が特に厳格で、
Abu Dhabi Quality and
Conformity Council
(ADQCC)はほぼ毎週、複数
回リコールを命じている。日本
企業が対象になったケースも
ある。
93 | 中東ビジネス関連法セミナー
サウジアラビア
バーレーン
エジプト
イラク
トルコ
イラン
ヨルダン
レバノン
消費者保護法
2006年消費者保護法、
2009年アブダビ品質・適合法
2014年消費者保護法
1999年商業詐欺防止法、
2008年消費者保護法
2002年消費者保護法、
2011年消費者局設立法
2008年消費者保護協会設立法
2012年消費者保護法
2006年消費者保護法
なし
2013年消費者保護法
2009年消費者保護法
なし
2014年消費者保護法
A M E R E L L E R
規制コンプライアンス⑦ 個人情報・データ保護
 中東諸国で、包括的な個人情報保護やデータ保護に関する法律を制定し
ている国は、現時点ではないといえる。一方、プライバシーやデータ保護に
関する何らかの規定はそれぞれ存在する。
 プライバシーは憲法上で保護され、プライバシー侵害は刑法による処
罰の対象となる。
 消費者保護法や電子取引法におけるデータ保護に関する規定がある。
 通信法、銀行法、医療法ににおいて、顧客データの保護規定がある。
 また、DIFC(ドバイ)やQFC(カタール)等の金融フリーゾーンにおいて
EU基準のデータ保護法が制定されている。
 更に、カタールやバーレーンにおいて、データ保護法の法案が検討されて
いることが報じられている。
94 | 中東ビジネス関連法セミナー
A M E R E L L E R
規制コンプライアンス⑧ 汚職・贈収賄防止
 米国連邦海外腐敗行為防止法(FCPA)及び英国2010年贈収賄法は、日
本企業にも影響があり、中東ビジネスに関してもコンプライアンス体制が必
要な場合がある。
 中東諸国のほとんどの国においては、刑法や公務職務法において、賄賂
などの汚職は刑事責任が問われる。また、賄賂により政府契約を結んだこ
とが判明された場合、契約が解約される法令を制定している国があるが、
FCPAのような企業に対する特別な罰則はない。
 UAEでは、UAE連邦法のほか、アブダビとドバイにそれぞれの公務員職
務法があり、汚職禁止条項がある。ドバイは最大に厳しくて、贈与者の動
機と関係なく、公務員に対するいかなる贈与は禁止されている。
 従業員に対する指導やトレーニングおよびコンプライアンス体制の導入は
重要で、法令厳守の記録を準備して、いつでも立証できるように準備する
必要がある。
95 | 中東ビジネス関連法セミナー
A M E R E L L E R
規制コンプライアンス⑨ 通信規制
 多くの中東諸国が、近年、通信法を制定した。通信業界は、当局による強
い規制を受け、外資参入も制限されている。
 通信業界は、原則として、機器については世界基準である「電気通信機器
の基準認証制度」を採用している。
 多くの国でオンライン登録制度があり、輸入・販売業者が登録・許可手続
を行う。
 オンラインの活動(特に現地業者により独占されているVOIPによる電話)
は監視されている。
 また、近年、サイバー犯罪防止法が制定された国が多く、さらにオンライン
活動が制限・監視されている。
96 | 中東ビジネス関連法セミナー
A M E R E L L E R
規制コンプライアンス⑩ 金融・マネーロンダリング
 UAEをはじめとする多くの国では、中央銀行設立法やイスラム銀行法があ
るものの金融法などの法律はなく、中央銀行により金融業界が監視されて
いる。
 金融法に相当する法源は、主に中央銀行の規則や政令になるが、かかる
規則・政令の多くは公表されておらず、銀行に対してのみ開示されている。
 アンチ・マネー・ロンダリングが課題となっており、 「顧客確認( “know your
customer”)」によって対策を講じようとしている。
 近年、上記のような厳格な顧客確認の規則により、日本の非上場会社に
よる口座の開設・管理が難しくなっている。
 上記の規則・政令は、顧客確認についての規定に限られるため、マネー・
ロンダリング自体を阻止できていない。
97 | 中東ビジネス関連法セミナー
A M E R E L L E R
規制コンプライアンス⑪ 医療・製薬品
国により、医師免許、製薬、医療機器の管轄当局がそれぞれ異なる。基本的に
EUまたは米国の試験結果に依拠し、かかる情報を基に許可が下される。
国
医師免許
UAE
厚生省(MOH)
ドバイ:ドバイ厚生庁(DHA)
DHCC:DHCC庁
アブダビ:厚生庁アブダビ(HAAD)
UAE北部:厚生省(MOH)
厚生省(MOH)
クウェート
厚生省(MOH)
医師免許部
厚生省(MOH)
食品医製品部
厚生省(MOH)
食品医製品部
カタール
厚生省(MOPH)、
カタール医務協議会(QCHP)
厚生(MOPH)
経済省工商(MEC)
オマーン
オマーン医務局(OMSB)
厚生省(MOH)
厚生省(MOH)
サウジ・アラビア
サウジ医務委員会
(SCHS)
サウジ食品医製品庁
(SFDA)
サウジ食品医製品庁
(SFDA)
バーレーン
国立厚生規制庁(NHRA)
国立厚生規制庁(NHRA)、
厚生省(MOH)
国立厚生規制庁(NHRA)、
厚生省(MOH)
98 | 中東ビジネス関連法セミナー
製薬
医療機器
A M E R E L L E R
規制コンプライアンス⑫ 食品・ハラル認定
 食品・飲料輸入
 UAEでは、アブダビ首長国、ドバイ首長国それぞれ独自の食品安全局が
ある。
 食品・飲料を販売するには、かかる当局にその商品に関する登録をする
必要がある。
 ハラル認証
 ハラルは、シャリーア上で認められている食材・料理である。ハラル認証
制度は国によって異なる。UAEでは、ESMAがハラル認証機関として約20
団体を認可している。
 全ての肉類を輸入する際に、ハラル認証は必須だが、肉類外の食品に関
しては原則必要ない。しかし、加工食品の原材料に関し、当局から何らか
の疑義を呈された場合には、明確な回答をしなければならない。
 たとえば、原材料を加工する工場や生産ラインにおいて、一切豚肉やアル
コールが使用されていないかどうかなど、豚由来製品およびアルコール含
有の有無について当局から問い合わせを受けた際に、不明瞭または自信
のなさそうな回答をした場合には、輸入が差し止められることがある。
99 | 中東ビジネス関連法セミナー
A M E R E L L E R
UAE労働法① 法制度の概要
 1980年に公布された連邦法で、最も古いUAE法の1つ。7首長国全てで適用さ
れ、フリーゾーン内でも原則として適用され、公務員、軍関係者や家政婦には
適用されない。
 本土(フリーゾーン外)においては労働省(※)が管轄機関、各フリーゾーンで
は、各フリーゾーン庁とされている。そのため、各フリーゾーンでは、規則・
ルールの解釈が連邦法と異なるケースがある。DIFCのみが、UAE労働法か
ら独立した「雇用法」を制定している。
 比較的雇用者側に有利な規定であると言えるが、以下の点には注意すべき。
 時間外労働
 有給休暇
 労働契約の終了
 2015年に反差別法が制定され、主に宗教に基づく差別が禁止されている。
 新労働法の法案は、数年にわたり検討されている模様。
※:2016年2月にMinistry of Labour(労働省)からMinistry of Human Resources and Emiratization(人材およ
び自国民化省)に改名された。通称「労働省」は引き続き使われている。
100 | 中東ビジネス関連法セミナー
A M E R E L L E R
UAE労働法② 労働契約と就業規則
 定型の労働契約(必須)
管轄機関所定の書式を使用。給料・各種手当等の基本的事項が記載され
る。(労働ビザ申請時に必要)
 雇用主と従業員との間の労働契約(任意)
上記とは別に、以下のような労働条件を詳細に規定する契約を締結する
のが一般的。
 職務範囲・権限
 各種手当等
 就業規則(任意)
全従業員を対象とする社内規則を明記し、以下の役割を有する。
 法令上に規定のない詳細な点を規定する。
 法令で規定されている重要点を確認・周知させる。
 多文化的な職場における人事管理の方法について定める。
101 | 中東ビジネス関連法セミナー
A M E R E L L E R
UAE労働法③ 自国民雇用優遇政策(Emiratization)
 近年、GCC諸国の政府は、民間企業に自国民の雇用を増やすよう要請し
ている。特にサウジアラビアにおける自国民の雇用推進は大きな問題と
なっている。
 UAEでは、民間企業の労働力の99%以上は外国人労働者であるのが現
状。そのため、他のGCC諸国と比べると厳格ではないが、UAE政府も金融
業と石油・ガス関連事業を中心に、自国民雇用優遇政策を推進している。
 UAE国民を雇用する際に予測される問題点
 雇用主の負担が増加。(国民年金プログラムの加入、賃金増等)
 重大な規則違反等を含め、従業員に明らかな非がある場合でも解雇
が難しいことがある。
102 | 中東ビジネス関連法セミナー
A M E R E L L E R
UAE労働法④ Public Relations Officer(PRO)の役割
 UAEでは、行政機関への申請・届出業務は、一般的にPROを通じて行わ
れる。
 PROは、必ずしもUAE国民でなくてもよいが、各種政府機関が必要とする
要件に通じ、時には担当者との折衝が求められる。
 自社の従業員としてPROを置くことも可能だが、外部のPRO業務代行業者
に依頼する例もある。
 主なPROの業務
 行政機関への申請・届出
 届出文書のアラビア語翻訳のアレンジ
 各種ライセンスの更新
 警察署・大使館等に出頭する際の代理業務
103 | 中東ビジネス関連法セミナー
A M E R E L L E R
UAE労働法⑤ 就業時間と時間外勤務
 UAE労働法により、就業時間は1日8時間、1週48時間までと定められて
いる。(従来の慣習により、週6日の計算になっている。)
 一部の業種を除き、原則として、毎週金曜日を休日としなければならない。
 ラマダン中は、就業時間が1日6時間までと定められている。(DIFCでは、
イスラム教徒のみに適用される。)
 原則として時間外勤務は1日2時間までとされており、従業員は、雇用主
から2時間を超える時間外勤務を命じられた場合、拒否することができる。
 雇用主の承認に基づく時間外勤務に対しては、以下の時間外手当の支払
いが必要。
 21時までの残業: 基本給の125%
 21時~朝5時、週末・休日:基本給の150%
104 | 中東ビジネス関連法セミナー
A M E R E L L E R
UAE労働法⑥ 有給休暇
 UAE労働法により、最初の1年経過後は年30日の年次有給休暇が与えられ
ている。有給休暇の日数に週末(金・土)を含めて計算するかどうかは、明確
に規定されておらず、専門家による解釈も様々。(年22日と定める会社も多
い。)
 年1回1ヶ月間、または2年に1回2ヶ月間と、有給休暇をまとめて取得する従
業員が多い。
 雇用主は、30日の有給休暇を分割することができるが、渡航費用がかさむた
め従業員からの抵抗にあうケースも見られる。
 有給休暇を管理するには?
 就業規則に明記
 有給申請プロセスを導入
 有給休暇を消化できない場合は?有給の累積または買い取りを就業規則に
定めるべき。
105 | 中東ビジネス関連法セミナー
A M E R E L L E R
UAE労働法⑦ 出向契約
 実務上「出向契約」はよく締結・履行されているが、厳密にはUAE労働法は
出向を認める規定がない。ビザをスポンサーする雇用主以外の職場に勤務
することは罰則の対象となる。
 UAE国内またはUAE法人から他のGCC諸国(特にサウジ)の出向契約の事
例は多い一方、独特な仕組みによる「サービス契約」の作成が必要となる。
 かかるサービス契約書において、費用・コスト負担と指揮監督に関する規定
は重要。
雇用主
出向契約
出向先
出向関係
雇用関係の継続
通常の出向契約の場合
106 | 中東ビジネス関連法セミナー
雇用主
サービス契約
出向先
労働法・就労ビザ
のための所定労働契約
雇用関係の中断・一部停止
UAE・中東諸国における出向契約の場合
A M E R E L L E R
UAE労働法⑧ 労働省による立入検査と勤務先
 労働法上、法人所在地での勤務が最も重要な要件である。
 全ての従業員は自身のビザをスポンサーしている会社に勤務しなければ
ならない。労働許可証を確認するための労働監査が行われることがある。
 ビザ未取得で就労した場合、各違反につき最高AED50,000の罰金が科せ
られることがある。また、出張者も気をつけないと罰金の対象となる可能性
がある。
 本土(フリーゾーン外)の法人に勤める従業員は、別のフリーゾーンでの就
業が必要な場合、労働省からの短期労働許可(Temporary Work Permit、
TWP)の取得により合法に就業できる。
 一方、フリーゾーン法人・支店の従業員には、フリーゾーン外で就業するた
めの短期労働許可は交付されない。
107 | 中東ビジネス関連法セミナー
A M E R E L L E R
UAE労働法⑨ 退職手当の計算方法
 UAE労働法により、従業員が退職する際は、規定の退職手当を支払うこと
が定められている。(退職理由が、法令上に列記されている違反等の場合
を除く。)
 原則として、退職手当は、退職時の基本給(各種手当は含まない)に基づ
き計算される。
 UAEの労働省により、以下のような計算式のモデルが示されている。
(A x 21x B) + (A x 30 x C)
A =
B =
C =
基本給 ÷ 30 (または月給 x 12 ÷ 365 )
(基本給以外の手当を含まないことに注意)
在職年数(5年以下)
在職年数(5年を超える場合)– 5 (ただしマイナスの場合はゼロ)
 その他、未消化の有給休暇、母国への航空運賃(UAEを出国する場合)の
支払いも必要。補償金 (後述)の支払いが求められる可能性もある。
108 | 中東ビジネス関連法セミナー
A M E R E L L E R
UAE労働法⑩ 退職手当
 支給の有無、支給額は、退職理由により異なる。
•
•
退職理由
定年退職
期限ありの雇用契約で退
職事由なしの解雇
•
•
Start
Year 1
Year 2
Year 3
Year 4
Year 5
なし
(A x 21x B)
(A x 21x 5) + (A x 30 x C)
退職事由ありの解雇
事前通知なしの自主退職
なし
なし
なし
•
期限ありの雇用契約で自
主退職
なし
期間満了前の自主退職の場合はなし
(A x 21x 5) + (A x 30 x C)
•
無期限の雇用契約で事前
通知による自主退職 (※)
なし
(A x 21x B) x 1/3
(A x 21x B) x 2/3
(A x 21x 5) + (A x 30 x C)
※=退職金の減額を認められない場合あり
109 | 中東ビジネス関連法セミナー
A M E R E L L E R
UAE労働法⑪ 雇用契約の終了
 全体的に、雇用者側に有利な制度といえる。
 無期限雇用の従業員または雇用主の都合(※)による終了:30日の事
前通知でいつでも解雇可能だが、退職手当を支払う必要がある。
 また、試用期間中の自主退職または解雇は即時退職が可能。
 雇用者側からの即時解雇事由の例:秘密保持義務違反、犯罪行為、氏
名・経歴詐称、警告数回後も業績の改善がみられない等。(退職手当支
払義務なし。)
 従業員から即時退職できる事由の例:給料不払い、雇用者による暴力
行為
 不当解雇の場合、 最大給与3ヶ月分相当額の賠償が命じられる。但し雇用
期間が5年未満の場合、解雇事由を問わず、実際には1~2ヶ月分の給与
相当額の賠償にとどまるケースが多い。
110 | 中東ビジネス関連法セミナー
A M E R E L L E R
UAE労働法⑫ 戦略的解雇
 30日以前の書面による通知により、会社都合で従業員を解雇することが
可能。退職手当等は、最大基本給の3ヶ月分とされている。
 ただし、解雇・退職時の様々なトラブルを軽減するために、自己都合によ
る退職を勧告することが適したケースが多い。
 上記方法は、従業員に自主退職の選択肢を与え、その従業員の体面を保
つと同時に次の求職活動に支障が出ない。
 また、以下のトラブルを軽減できると考える。
 従業員からの正式なクレーム
 解雇された従業員による、雇用主および従業員に対するいやがらせ
111 | 中東ビジネス関連法セミナー
A M E R E L L E R
UAE労働法⑬ 労働裁判所
 従業員は裁判所に申し立てをする前に、必ず労働省またはフリーゾーン庁
の調停を経なければならない。
 また、特定の事例については、従業員が労働省の簡単なオンラインシステ
ムを通じて、申し立てをすることができる。
 かかる調停において和解が成立しない場合、従業員は裁判所に訴える資
格を得る。また、アブダビの場合は裁判の前、裁判官による調停も必要と
されている。
 労働者の権利を保護するため、従業員は無料に訴えることができる。(裁
判所の費用はない。)
 裁判所での使用言語がアラビア語であることから、通常アラビア語を解す
る従業員が申し立てをする。例外的に裁判官の決定により、労働裁判が
英語で行われることがある。
 ほとんどの場合、5~10週間で終結するが、内容の複雑さや控訴により全
体の手続が3~12ヶ月かかる場合もある。ビザのキャンセルを遅延させる
ために、裁判手続を申立てる従業員も多い。
112 | 中東ビジネス関連法セミナー
A M E R E L L E R
UAE労働法⑭ 労働関連の差止処分
 以前は、在職期間が2年未満で自主退職する従業員に対して、労働省へ
の申請により、6ヶ月間の「Labour Ban」(就労差止処分)を課すことが可
能であった。
 かかるLabour Banはフリーゾーンには適用されず、したがってフリーゾーン
に勤務する従業員には影響はない。
 2010年にLabour Banの要件が緩和され、月給がAED7,000 以上の者、ま
たは認定校の学士号以上を取得している者は対象外となった。
 また、2016年1月1日の労働省省令により、在職期間が6ヶ月以上で法定
の通知に従い自主退職する場合は、 Labour Banは適用されないことと
なった。
 しかし、雇用主に多大な損害を与えたり、犯罪行為を行った等の場合に課
せられる1年間の「Immigration Ban」(入国差止処分)は存続している。な
お、Immigration Banはフリーゾーンにも適用される。
 なお、カタールやサウジアラビアでは、雇用主の許可がなければ、出国も
できない。
113 | 中東ビジネス関連法セミナー
A M E R E L L E R
UAE労働法⑮ 湾岸地域独特の雇用問題
 湾岸地域住民の多文化社会における常識は、先進国における常識とは異
なる場合があることを念頭におく必要あり。
 よく見られる問題:
 社内・社外を問わず、同国出身者間の情報漏れが多い。
 横領と虚偽、倫理とモラル(タダ乗りとプチ横領)
 運転手の人材管理と残業管理
 セクハラ・パワハラの概念
 日本文化の細かさと中東文化のいい加減さの間で生ずる様々な誤解
なお、社内問題や横領の疑いがあれば、外部委託による社内調査が必
要な場合がある。
 健全な職場関係を維持するため、以下の対応が必要な場合がある。
 従業員に対する指導・トレーニングと評価
 一定のコミュニケーション
 調達制度の導入や監査の際の確認
114 | 中東ビジネス関連法セミナー
A M E R E L L E R
生活関連法① 日常生活と刑法
 先進国と異なる、UAE法上の主な犯罪成立要件は以下のとおり。
 婚外交渉罪
 不道徳行為美化罪(「Beautification of the Sin」:シャリーアに基づくUAE刑法






上の罪。ドバイ政府は公共政策上の理由により実質的に施行を見送っている
が、その他首長国での該当の事件は、頻繁に報じられている。)
宗教不敬罪、改宗未遂罪
侮辱罪(※)
ソーシャル・メディア上の肖像権等
公然わいせつ罪(※)
飲酒罪(アルコール免許の申請)、公衆酩酊罪
小切手不渡り罪、破産罪
 常に政策・方針(ドバイの経済成長政策と海外企業からの圧力に弱い)と
文化・モラル(保守的なイスラム社会)の乖離を念頭におく必要がある。
※=日本法上の犯罪成立要件と大きな違いが見られるもの。
115 | 中東ビジネス関連法セミナー
A M E R E L L E R
生活関連法② 刑事事件の実務
 警察官とのトラブルは、多くの国と同様、敬意をもって接することで防げ
る場合も多い。(一般的に、警察官は書類作成業務を好まないこともあ
る。)
 被害者側からの、犯罪の証明は難しい。傷害事件の場合、 まずは公立
病院に(Bur DubaiのRashid Hospital等)に行き、医師の診断書を入手
する必要がある。民間病院はこのような診断書を発行できない。
 事実・証拠が正しく記録されていないという理由で、警察官が被害届を
受理しない場合も多い。(特に暴力、詐欺等の事件でみられる。)
 横領などで被害者が会社の場合、会社代表者が親会社・株主からの
委任状を保持していないと、被害届出が受理されない事例もある。
 経験上、最もトラブルになりやすい刑事事件は侮辱罪であり、十分に気
をつける必要がある。
116 | 中東ビジネス関連法セミナー
A M E R E L L E R
生活関連法③ 刑事関連法の一覧

1971年: 外交特権と領事特権法

1976年: 少年およびホームレス刑事法

1987年: 刑法

1992年: 刑事訴訟法

1992年: 刑務所管理法

2002年: マネーロンダリング禁止法

2003年: 国家保安局法

2004年: (旧)テロ犯罪防止法

2006年: 刑事事件における国際協力に関する法律

2006年: 化学兵器禁止法、人身売買撲滅法

2012年: サイバー犯罪防止法

2013年: 軍事兵器所有法、過激防止センター設立法

2014年: (新)テロ犯罪防止法
117 | 中東ビジネス関連法セミナー
A M E R E L L E R
生活関連法④ 住居賃貸借契約更新時の条件交渉
 関連法令に関する知識を得ること。ドバイには限定的に借主を保護する
法令もあるが、比較的貸主を保護するものが多い。
 管轄機関にて登録済の賃貸借契約のみに、法令上の保護が適用される。
そのため、契約更新時は、まず当該契約の登録の有無を確認すべき。
 法令と実務の乖離:2008年の法改正により、ホテルやサービス・レジ
デンスの賃貸借契約にも賃料改定時の法定上限額が適用される旨
が明記された。ただ実際には、サービス・レジデンス契約を登録する
制度がないため、この改正点は、現時点ではあまり意味を持たない。
 条件交渉の相手に関する知識を得ること。(物件所有者、管理者、セー
ルス・マネジャー等)
 冷静に焦らずに交渉することで有利になることも多い。
 限界を見極めること。
118 | 中東ビジネス関連法セミナー
A M E R E L L E R
生活関連法⑤ GCC諸国における飲酒
 サウジアラビア、クウェートおよびシャルジャ
首長国(※)は飲酒を禁止している。
 ドバイ、アブダビ、カタール、オマーンでは、
飲酒はライセンス制で、非ムスリムはライセ
ンスを申請することができる。
 バーレーン、ウム=アル=クワイン首長国と
アジュマン首長国は、ライセンス制を導入せ
ず、ほとんど自由に購入・飲酒ができる。
(ムスリムに対しても制限的ではない。)
 外食の際に飲酒ライセンスの提示を求めら
れることはまずないものの、何らかのトラブ
ルが起きた場合にライセンスを所持していな
いと刑事責任が問われる場合がある。
 なお、関連法規の内容の不確実性は大きい。
▲ = 飲酒禁止
▲ = 非ムスリムの飲酒ライセンス
▲ = 原則として自由
※=シャルジャ首長国は、二箇所にて飲酒が可能であり、空港にて購入も可。
119 | 中東ビジネス関連法セミナー
A M E R E L L E R
生活関連法⑥ 相続
 シャリーアは遺言による相続を認めないが、原則として適用はイスラム教徒に
限られるはずである。
 にもかかわらず、中東諸国の裁判所では、非イスラム教徒による遺言を正しく
認めない事例がある。
 中東諸国でも多くが法律事務所は遺言の作成・認証サービスを提供するが、
遺言の確実性・有効性が保証されるとは言えない。
 2015年にDIFCにおいて遺言登録制度が導入された。
現時点では、登録された遺言は執行されていないが、制度としては確立してい
るため、UAEで遺言を作成する場合は、DIFC登録制度を利用することが望ま
しい。http://www.difcprobate.ae
 死亡時には財産相続の他、子供の親権問題も絡む。原則父親が死亡した場
合、親権は男性の近親者(死亡者の父親、兄弟)に属し、母親が親権を得るた
めには、その近親者からの母親に対ずる委任状が必要となる。
120 | 中東ビジネス関連法セミナー
A M E R E L L E R
生活関連法⑦ ドバイの詐欺師
 近年、日本人を対象とする在ドバイの詐欺師(自称「コンサルタント」)が急増し
ている。
 被害者は、日本在住の個人投資家や未だ中東進出していない中小企業が多
いが、日本人駐在員、大手企業が被害にあった事例もある。UAE国民のパー
トナー、スポンサー(自称「シェイク」)の政治力やコネを強調することが多い。
 在ドバイの日本国総領事館、ジェトロも、今年初頭に注意喚起を発行した。
http://www.dubai.uae.emb-japan.go.jp/economic/20150217_economic_jcompany.html
 詐欺の種類は多岐にわたる。会社設立、経営代行、政府関係者との折衝など。
 一旦金銭の支払が済んでしまうと、法的救済(警察・弁護士・裁判所による)は
困難なため、損害を被る前の慎重な検討・確認が重要。
 一方、健全なコンサルタントも存在するため、様々な情報源(ジェトロ、大使館・
領事館、銀行、会計事務所、法律事務所)への評判・実績等の問い合わせも
有効。(業務妨害責任を負いかねないため、「要注意」等の警告のみにとどま
る場合が多いことに留意。)
121 | 中東ビジネス関連法セミナー
A M E R E L L E R
当事務所がお手伝いできること
 UAE、中東諸国の法制度に関するアドバイス・社内用の意見書
 代理店・パートナー候補に関する調査・デューデリジェンス
 各種契約書の作成、校正、交渉
 新事業・合弁事業の設立手続・交渉
 M&A等による直接投資
 現地法人の総務・労務
 代理店契約の解約・合弁事業からの撤退・現地法人の解散
 規制に関するコンプライアンスの説明
 アラブ諸国における裁判・調停・仲裁の解決手続担当
“An ounce of prevention is worth a pound of cure”
注意一秒、けが一生
“Look before you leap.”
転ばぬ先の杖
(早めに弁護士に相談しましょう!)
122 | 中東ビジネス関連法セミナー
A M E R E L L E R
ご静聴ありがとうございました。
Christopher Gunson
Partner
Amereller
+971.50.554.6205
[email protected]
Amereller Legal Consultants
PO Box 99706
14F One by Omniyat
Business Bay
Dubai
UAE
123 | 中東ビジネス関連法セミナー
In-House Community
Commended External Counsel
of the Year, 2016
“Chris Gunson is a rising star in the
Middle East… International clients
seek his top quality advice”
A M E R E L L E R