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<新連載>アラブ首長国連邦での出産と子育て

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JOMF NEWS LETTER
No.221 (2012.06)
<新連載>アラブ首長国連邦での出産と子育て
第 1 回 : 妊娠を知って ― 不安と戸惑い、病院、医者、健診、検査
海外出産・育児コンサルタント
Care the World 代表
ノーラ・コーリ
【 はじめに 】
アラブ首長国連邦という国はあまり一般的に知ら
れていないかもしれません。それでもアブダビ、ドバ
イと聞くと、聞いたことがあると思います。実は、こ
の 2 つの都市を中心に、4000人近い日本人が暮
らしています。しかも、毎年30%ほどの割合で増え
ています。その多くが若年層のご家族で、現地での
出産、子育てを経験しています。
ドバイ-立ち並ぶ近代的なビルの数々
今年、私はアラブ首長国連邦 (以下 UAE)のア
ブダビとドバイの二つの都市を訪問し、そこでの
日本人が経験するお産と子育てについて調べてきました。UAE はイギリスから独立し
て 40 年足らずの若い国で、アブダビとドバイは砂漠に栄えた近代的で開放的な都市と
言えるでしょう。人口のほとんどがインド、パキスタン、欧米、アフリカ諸国といった外国
人によって成り立ち、アラブ人と外国人との間には国の対応の仕方などで大きな差が
あります。さらに生活の面から言いますと、夏は日中、50 度くらいになる厳しい気候とイ
スラムの慣習が大きく影響します。
【 妊娠してからの不安と戸惑い 】
ただでさえ初めてのお産はなにかと不安です。それが海外となるとその不安は増すもの
です。二人目以降のお産でも、今度は上の子どもの世話や学校のことをどうするかという
新たな悩みがでてきます。アブダビ、ドバイの皆さんは、以下のような不安、疑問、戸惑い
が頭をよぎったといいます。
 現地の医療への信頼度、安心して無事に出産できるのだろうか、
 それぞれの病院の医療システム(予約から支払いまで)がわからない、
 ドクターやナースをはじめとする医療スタッフとうまくコミュニケーションがとれるか、
 日本人のお産に対して理解を示す信頼できるドクターに出会えるだろうか、
 妊娠からお産までの流れは日本と比べてどのように違うのか、
 厳しい暑さのもと、運動、食事など、妊娠中はどのように過ごしたらよいのか、
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No.221 (2012.06)
 病院は日本人に対してどのような受け入れ態勢ができているのだろうか、
 現地で出産した日本人とのコンタクトはとれるだろうか、
 お産に必要な準備は現地で十分調達できるのか、
 どのようなお産に対する希望を出せるのだろうか、
 産後の手伝いをどのように確保したらよいのか、など
世界どの国でも人々は出産しています。しかし、そのアプローチは意外と違うのが特徴で
す。UAE の特徴はたとえ表面は近代的で医療技術においてもたいへん進んでいるという印
象を受けますが、実際に医療サービスを利用してみると、その進んだ面に併せ持って、まだ
古い慣習、価値観の違い、さまざまな外国からのお産に対する考えが入り混じっているとい
う印象を受けました。たとえば、病院においては、入り口を入るとどこかのホテルを思わせ
る豪華さと清潔さに驚きますが、病院見学で見た最先端の医療機器が実際はフルに使い
こなせていないケースもあったりします。そのため、医療設備だけに惹かれて、その病院の
医療レベルが高いと安易に評価してはいけないという忠告でした。
ことばのチャレンジにおいては、まず、お産に関する専門用語がかかわってくること、次
にお互いに母国語ではない英語でのコミュニケーションであること、さらに現地スタッフはア
ラビックなまりの英語なので、それを理解するのが困難であることがあがってました。それ
ゆえに数々の誤解が生じていました。
このようにアブダビ、ドバイに住まわれている日本人の皆さんはいろいろな戸惑い、疑問、
不安をかかえながらも、できる限り答えを見つけ、真相をつかみ、じょじょに現地でのお産
に対して自信をつけて、出産にのぞむというアプローチをとっています。
【 どのような病院があるか 】
UAE には公立病院と私立病院があります。公立病院は医療設備も比較的最先端のもの
が整っていますし、医療費も私立と比べると安いのですが、日本人のほとんどは私立病院
を利用しています。それは、公立病院の場合、現地の人の利用が多く、混んでいるからとい
う点と、ドクターをはじめとする医療スタッフのモラルのレベルが低いため、あまり勧められ
ないとのことでした。さらに私立病院といえども、医療保険を利用できるため医療費の負担
はさほどではないそうです。
病院の選択においては、日本人同士の口コミ情報と評
判が圧倒的に多く、ほかには日本人会で作っている病院
リストを参考にした方もいました。これらの日本人がかか
る病院は衛生面においても、設備の面においても問題は
ありません。
アブダビにおいては Al Noor 病院もしくは Corniche
病院がトップにあがっていました。アルヌールには日本
人に慣れているドクターが多いという評判でした。またコ
Corniche 病院の外観
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ーニッシュは産婦人科専門病院でもあります。ここは以前英
国系によって運営されていましたが、今はアメリカの資本が
入っています。また、中には健診を出産設備はない Gulf
Diagnostic Centre などで受け、出産は上記のいずれかの
病院でという選択をされる方もいました。ドバイにおいては、
Medcare Hospital の外観
American Hospital, Welcare Hospital, Medcare Hospital,
International Modern Hospital などが日本人の間では最も人気があります。
【 ドクターはどうなのか 】
UAE のドクターの特徴をあげるといくつかあ
がります。まずこの国はほとんど外国人によっ
て成り立っているということを念頭に置かなけれ
ばなりません。それはなにを指すかと言います
と、医療スタッフが必ずしもアラブ人とは限らな
いということです。担当の産科医はエジプト人で
あったり、超音波を診断するドクターはフランス
人の女性のドクターであったり、採血担当のナ
イギリスから来た助産婦と共に
左:著者
ースはフィリピン人であったり、助産師はインド
人ということもあります。このように多くの民族か
ら成り立っているため、彼らが母国あるいは諸外国で受けた教育やお産の方針などが影響
することもあります。そのため、UAE だから検査内容はこれとこれ、検査の頻度は何回、
薬はこれとこれが出されるといったスタンダードはないと言えます。むしろ、そのドクターに
よって方針が変わります。
そのため、日本人は日本人に慣れているドクターを選んでいます。そのようなドクターで
あれば、日本人は妊娠中どのようなことを一般的に心配するかということを把握していたり、
お産においてもどのようなお産を希望するかがわかっているから安心だということでした。
いずれにしろ、自分はどのようなお産をのぞむかといった方針をある程度もっていないと、
さまざまな国のドクターにかかる中で彼らの意見に振り回されてしまう
可能性があります。
さらに、ドクターによっては自然分娩は担当するが、帝王切開は外
科医に担当をふるドクターもいます。また、産婦人科のドクターの多く
は、アラブ人の宗教上の理由から女性が多いのですが、男性のドクタ
ーもいます。アラブ人の女性のドクターの特徴としては、髪の毛を隠す
ためのスカーフで頭が覆われていることでしょう。手術のときもそのス
カーフをしたまま、手術用のキャップをかぶり、アクアグリーンの手術
アラブ人のドクター
着を着用します。
確かに UAE のドクターは特徴がいろいろありますが、知識があり、経験が豊富で、何か
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あったときの対応がきちんとでき、信頼でき、納得のいく説明をし、ことばのハンディがある
日本人でも尊敬をもって接してくれるドクターがよいと思います。
ちなみに病院によっては看護婦長をシスターと呼ぶ病院もあります。これは英国の影響
のなごりでしょう。
【 健診はどうなのか 】
健診の回数は日本と比べてどうなのか、また健診ではどのようなことが行われるのでしょ
う。まず私立病院では予約制なので、予約時間にだいたい見てもらえるので、日本の多くの
総合病院のように長いこと待たされることがないということがよい点としてあがっていまし
た。
初診では最終月経、何度目の妊娠か、流産や中絶の経験の有無、持病、夫婦それぞれ
の血縁家族に高血圧や糖尿病などの病気を患った人の有無などを聞かれますので、前も
ってこのような情報を集め、夫婦で出向くことを勧めます。検査においては血液検査、尿検
査、エコーが行われます。内診はこの段階ではほとんど行われていません。出産間際まで
しないのが特徴です。このあたりも日本との違いです。
毎回の健診では体重測定、血圧測定、エコー、血液検査が行われます。尿検査は毎回
とは限りません。立体画像でも見られる詳しい超音波検査は3回ほどに限られています。さ
らにアラブ人の多くが糖尿病の傾向があるため、血糖値を頻繁に調べています。これは朝
から絶食をし、空腹時に採血、それからブドウ糖液を飲み、1時間後に採血、を3回繰り返
します。
なお、健診は A 病院で、お産は B 病院でというように紹介されるケースもあります。また
健診は A 病院で行われても、お産はそのドクターが提携している B 病院でも C 病院でも可
能ということもあります。病院のチョイスがあるのもここでの特徴でしょう。
いずれにしろ、ことばのハンディがある場合は、事前にわからない単語を調べ、質問事項
をメモして出向くことをお勧めします。
なお、次回は厳しい砂漠気候での妊娠中の過ごし方についてお伝えします。
=編集部より=
今月よりノーラ・コーリさんによる連載を開始します。ノーラさんには今までもオランダ、フラ
ンス、韓国、パナマ、インド等多くの地域の報告を掲載させていただきました。今回はイスラ
ム圏のアラブ首長国連邦がテーマです。妊娠、出産、小児医療等についての貴重なレポー
トをご紹介致します。
今までの記事は JOMF サイト TOP ページ右上の Google でサイト内検索をかけると多数ヒ
ットしますのでぜひあわせて読んでみてください。
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No.221 (2012.06)
プロフィールを簡単にご紹介します。:海外出産・育児コンサルタントとして、20 年以上に渡
り、世界の出産、子育て事情を調べています。精神医学ソーシャルワーカーとしては海外
在住女性のメンタルヘルスにかかわっています。日本で生まれた日本人ですが、アメリカ、
カナダ、シンガポールと海外在住 27 年。現在はニューヨークにて知的および身体障害者の
デイケア施設の管理職に就いています。「海外で安心して赤ちゃんを産む本」、「海外で安
心して子育てをする本」、「愛は傷つけない-自立に向けてのガイドブック」など多数の著書
が出ています。上記の他、医療通訳 (妊娠、出産、育児、福祉、教育 を専門とする)、バ
イリンガル教育コンサルタントとしても活躍中です。詳細は下記サイトでもご覧になれます。
http://www.caretheworld.com
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