「今」をとらえる指針 『再検討し、必要な修正や追加を加えつつ、進めていくものである』 世界の トップ を 目指して! そして、これらの指針は、教科書的なもの ーの世界大会から、 世界 との比較で日本の ードバックして再検討し、指針を定期的に作 年代別指導指針① 10 JFA技術委員会 2歳刻みの指針の意義 『それぞれの年代で目指すこと、やっておくべきことは異なる』 ユース年代は成長、発達、発展の過程にあ り、年々大きく変わっていきます。U-12の子 供たちとU-16の少年たちをひと括りに考える ことはできません。発育・発達の過程では、 その時々でさまざまな要素が異なる速度で発 達していき、人は一直線に比例して成長して いくわけではありません。そのため、それぞ れの年代で異なる特徴を示します。 それに伴い、サッカーの育成においても長 期的な育成の過程の中で、それぞれの年代で 目指すこと、やっておくべきことは異なりま す。大人でやることをそのまま縮小すればい いというものではありません。したがって、 トレセンも2歳刻みで活動しています。それぞ れで追求すべきテーマは異なります。 そういった観点から、今回、2歳刻みで指針 を提示することとしました。 キッズU-6から開始し、U-8、U-10のキッズ 年代の指導ガイドラインを初めて提示しまし た。続けてU-12からもナショナルトレセンの 年代にあわせ、U-14、U-16と2歳刻みで提示 していきます。 育成において、U-12からU-16が、同じ取り 組みをするわけではありません。同じ課題を 克服しようとする場合でも、それぞれの年代 ですべきアプローチが異なるからです。今ま ではユース全体で指針を提示していましたが、 各年代でのアプローチを詳細に示してこなか 各年代の課題とは 『短期的な取り組みで解決するもの、 あるいは中・長期的取り組みを要す るものとがある』 一つのポイントとして、例えばU-12の課題、 指針は決して「世界のU-12」との比較のみから 導き出されるものではありません。A代表が世 界の中で闘っていくために、克服しなければな らない課題がありますが、それには、短期的な 取り組みで解決するもの、あるいは中・長期的 取り組みを要するものとがあります。 現在の日本サッカー全体の課題のうち、 中・長期的な課題に関しては、ユース、キッ ズの年代から取り組んでいかなくてはなりま せん。その効果が現れてくるのは、何年も先 になるかもしれませんが、取り組みはしてい かなければ変わりません。中・長期的な課題 の多くは根本的な課題です。それらに早期か ら取り組むことで、ベースを上げて、代表チ ームのレベルアップにつなげていきます。代 表チームは 代表の強化のみ で強化される ものではありません。ユース、キッズ、そし てそれらを日常的に指導する指導者全体がレ ベルアップし、さらに環境が改善されること で、総合力で向上していくものです。 各カテゴリー世界大会 長期一貫指導 課題の克服 分析/評価 課題の抽出 克服のシナリオ作成 ったので、そのため多少なりとも誤解を受け ることもあったように思います。今回は現在 の日本の課題を抽出し、その解決に向けて、 それぞれの年代でやるべき指針を提示します。 長期的課題 42 育成の全体像 『多くの指導者のリレーによって、選手たちは育成され、次の段階へと送り出されていく』 全体像の中で長期的視野に立った育成のコ ンセプトを持って指導に臨むことが重要です。 各年代は、それぞれ育成で特有の期間に相当 します。それぞれが特有の特徴をもっていま す。それに合った過ごし方をすることが重要 です。 何よりも1人の選手の育成は、子供時代か ら大人に至るまでの長い過程の中で、多くの チームや指導者の手を経て、実践されていく という特徴があります。多くの指導者のリレ ●止める・蹴るの技術が不十分 ーによって、選手たちは育成され、次の段階 へと送り出されていきます。どうか、その選 手の最終的な像を思い描きつつ、リレーをし ていっていただきたいと思います。その年代 で果たすべき役割を果たした上で、次の年代 の指導者へとバトンと渡してください。その 時々の小さな勝利や成功を唯一の価値と考え るのではなく、子供たちが大人になった完成 形のときに最高のパフォーマンスにいたるよ う、下から順に積み重ねて行ってください。 長期的なプロセス、全体像の中のどの一部 であるかを意識しつつ、育成に当たることは 非常に重要です。ユースの育成に関わる、す べての指導者が、常にこの全体像を思い描き ながら、その役割を果たしていただければと 思っています。 次回より各年代指導指針について、抜粋を 紹介していきます。 サッカーの本質(ゴールを奪う、ゴールを守る)の意識 サッカーの本来の目的に立ち返る! ●点が入らない(狙っていない、も含め) ●自己判断能力が低い ●ゲームを読む能力、かけひきの能力が低い U-16 やりたいことから やるべきことへ U-14 考えながら U-12 感覚的に 全般 コミュニケーション 試合の流れ かけひき 技術/戦術 大人のサッカーの入口 心構え Be Alert チーム戦術 徐々にミスは許されなく なる コンペティション、試合 に向けての生活、コント ロール リーダーシップ アイコンタクト スポーツ選手として 食事の質と量 生活を考えていく 「なぜ」を考える 自分自身で「なぜ必要 か」を考えつつ行う なげかけ−やりとり 感覚から言葉へ セルフコントロール Be Alert コーチングの声 リーダーシップ アイコンタクト 自己判断、表現 仲間意識 集団に参加 トライ&エラー 失敗から学んで工夫する 良いゲームを観る 考える 自分に戻す 喜怒哀楽を出せる 自己表現できる 大きな声! 元気良く! 励ます声 負けず嫌い ミスを恐れない コミュニケーション 様々なゲームの体験 →対応していく 自分たちでミーティング をし、ゲームができる サイドコーチでゲームを つくるのではない ボールコントロール獲得 ミスを恐れない 結果ではなく過程 自分たちでやる機会 ゲームをつくる経験 好き嫌い無く何でも 食べる 早寝早起き、規則正しい 生活 ゲームを読む Read the Game トライ コーチングの声 1対1 守備 U-10 1対1 攻撃 ファーストタッチ 得点力 プレッシャーの中での キックの質(スキルの発揮) ゲーム状況に応じた最適 なファーストタッチ(ゴー ルに向かう/ボールを失 わない) 落ち着き 自信 自分のパターンを持つ プレッシャーが増す中で 強さ 精度 タイミング 常にゴールを意識する 狙いを持ったシュート 正確にボールをコントロー ルしシュートコースを持つ ボールの置き場所 GKとのかけひき ボールなしの準備 状況の中で判断を伴う1 対1(ゲーム状況、エリ アなど)→行くか行かな いかの判断を的確に 取りどころの整理 状況に応じた有効なプレー の選択 グループ戦術の導入 グループの中での個 オフ・ザ・ボールの導入 ポジションの専門性への 導入[ポジションの役割 の理解を深める。決めつ けない(成長が終わるま では特に)] ポジションの意識 エリアの意識(3ゾーン) 空間認知 奪うチャンスを逃さない 相手に自由にさせない チャレンジ&カバー 正しいポジショニング 積極的なしかけ オフ・ザ・ボールの良い 準備 パスorドリブル 選択肢を持とう 積極的に前を向く 相手がいても隙があれば 正確に前を向く 相手がいる中や動きなが らでもゴールを意識した コントロール オン・ザ・ボール 個人技術、個人戦術 様々なポジションの経験 取られたら取り返す 最後まであきらめない スライディング 守備の技術 ボール保持の姿勢 顔をあげる 両足を使える 様々なフェイント 左右どちらにも抜ける 次のプレーを意識したコ 常にゴールを狙い、シュー スキル ントロール トを打つ 両足でのキック 常にゴールを意識したボー 正確性の追求 ルコントロール 多種多様なキック 失うことを恐れない (ボレー、オーバーヘッド ボールコントロールの技 など) 術(浮き球、右・左等) ヘディング やりたいことが自由自在、 思い通りにできる ゲーム戦術 エラーを繰り返さない 自己判断、表現 自己責任 得点力を磨く 様々な球質の使い分け 相手がいる中で 強さ、精度 タイミング フィジカル (食事、休養) 筋力・パワー、強さ コンタクト 持久性 スピード、速さ コーディネーション (ウォームアップでドリル) クラムジーへの対応 コンタクトスキル ・相手の力を使う ・タイミング ・腕も身体の一部 コーディネーション コンタクト導入 (嫌わない) スクリーン、バランス コンタクトを嫌わない コンタクトスキル ユース育成 指導者養成 成し直していきます。世界も変わっていくし、 我々も取り組みを続け、その時々の課題を克 服していくからです。 今回のこの指針は、ポスト2002の今をとら えたものです。そのためあらゆる要素を網羅 することではなく、各年代で今集中的に取り 組むべき課題を特にとり出しています。 ●1対1の攻守が弱い 代表チーム 中期的課題 課題を分析、抽出するというものです。4年 ごとのFIFAワールドカップ、4年ごとのオリ ンピック、2年ごとのFIFAワールドユース選 手権およびFIFA U-17世界選手権などがそれに 相当します。今後もそれらの大会でテクニカ ルスタディグループを編成してテクニカルレ ポートを作成するとともに、その結果をフィ 日本サッカー全体の課題 課題の克服 短期的課題 世界をスタンダードとした強化策の推進 ではなく、その時々の「今」をとらえ、その 「今」の課題に具体的に集中的にアプローチす ることを考えます。したがって、節目ごとに 再検討し、必要な修正や追加を加えつつ、進 めていくものであると考えています。 JFAでは、世界をスタンダードとした強化 策の推進を掲げています。つまり各カテゴリ ゴールデンエイジ パーフェクトスキルを目指せ 顔が上がる→アイディアが出る U-8 目覚めのとき プレ・ゴールデンエイジ 跳躍の準備 U-6 サッカー、スポーツとの出会い 身体を動かすのが大好きな元気なこどもに 普及 チーム対チーム、チームの中の自分 自分と味方、みんなでプレー 自分と相手とボール 自分とボール ボールをゴールに入れる ↑ ボールがほしい ゲームで生きる技術(スキル) をU-12のうちに身につける ※「JFA 2004 U-12指導指針」は好評発売中です。購入方法等は本誌56ページをご参照ください。 様々な形でボールと関わる 様々な動きの経験、動きづくり 身体を動かすのが好きな子供に 43 審判員と指導者、 ともに手を取り合って… C O O R D I N A T I O N B E T W E E N T H E F I E L D S O F R E F E R E E I N G 第2回 2004年に向けての準備 A N D T E C H N I C A L レスリー・モットラム(JFA審判チーフインストラクター) © Jリーグフォト (株) 2004年シーズンのスタートに先立った 施されるレフェリングの正しいスタンダ ミュニケーションがとられ、生産的なも レフェリーのコーチングと指導は、主に ードについて、説明をした。これらの訪 のとなり、結果としてレフェリーとコー サッカーの2つのエリアから得られた情報 問は、Jリーグ担当レフェリーが行った。 チが、サッカーのさまざまな面に関して に基づいて行われている。2003シーズン ビデオを見せ、これらの事例に対し、ど 相互の尊重を改善させる結果となった。 のJ1の全試合、およびJ2から選ばれた数 のように判断がなされるのかを説明した。 試合を見た後、各レフェリー個人ごとの レフェリー、プレーヤー、コーチング 他にも2つ用意した。一つはペン記者を中 パフォーマンス、そしてレフェリーの全 スタッフ間のディスカッションも活発に 心としたメディア、もう一つは実況、解 般のパフォーマンスを評価できるように なされた。これは、事例に対する正しい 説者を中心としたメディアを対象とした なった。試合のビデオを見ることで、反 判定を強化するばかりでなく、それぞれ ものである。ここでもスタンダードビデ スポーツ的でコントロールが必要なプレ の立場の間の建設的なコミュニケーショ オを見せて説明した。願わくは、この知 ーの特定のパターンを認識することもで ンのベースをつくるためのものである。 識が、彼らがサポーターたちに正しいイ きた。 このコミュニケーションが、サッカーで ンフォメーションをレポートするための 必要なコミュニケーションを促進するこ 一助となることを期待している。 これらの情報から、最近の試合から事 例を集めたビデオを作成した。事例の選 とを期待している。 その他、教育用のセッションとして、 私は前回の創刊準備号の記事で、サッ う観点で行い、また、反スポーツ的な特 カーのレフェリングと技術分野の協調を すべてに関わる重要な領域であることは 確かである。 からの反応はさまざまであった。しかし、 定のパターンも選択した。このビデオは 改善する方法の一つは、プレーヤーとコ 「スタンダードビデオ」とも呼ぶべきもの ーチが、レフェリーがプレーヤーのコン そして、我々がここ日本で達成しよう であり、我々レフェリーに期待される正 タクトやチャレンジをどのように判定す としているレフェリーのパフォーマンス しいスタンダードを示している。 るのかについて、実践的な知識を高める のスタンダードと、最近の他国からのレ ことであると述べた。Jクラブ訪問で行っ フェリーに見られるスタンダードの間に たこれらのセッションは、それを達成す は、明らかな差がある。特にアジアの るために一助となるものである。 国々からのレフェリーのスタンダードは 項目は以下のとおりである。 ○フィジカルコンタクト すべてのプレーヤーとコーチたちを対 象としたセッションと並んで、レフェリ ここ日本でプレーヤーのディレイの戦術 ○ディレイ ーとコーチングスタッフの「セカンドミ がどのようにコントロールされるかであ ○ホールディング ーティング」も用意していた。コーチた る。しかし、他の国のレフェリーの場合 ちのリクエストに応じて、さらにディス ○異議 カッションと説明を行った。 U-23日本代表がアテネオリンピックの出場権を獲得しました。 大熊清U-19日本代表監督による山本昌邦監督へのインタビューを中心に、川俣則幸GKコーチからの報告、菅野淳フィ ジカルコーチからの報告を通じて、 「アジアサッカー 最終予選2004」を振り返ります。 アジア サッカー最終予選2004・成績表 グループB 1 U-23日本代表 2 U-23バーレーン代表 は、ほとんどが無視される。 日本では2年前に、この種類の反スポー ○オフサイド このセカンドミーティングは、コーチ ツ的行為はコントロールされるべきだと ○挑発的行為 とレフェリーが互いの間に存在する問題 決定された。そうしないと、素速く自由 点を話し合い、互いの領域に対する相互 な流れるような我々のサッカーのスタイ 本ビデオは、1級審判員、審判インスト の理解に至るのに、大変有用な機会であ ルを守ることができない。そして、この ラクター、審判インスペクター全員に見 る。したがって、この機会を活用したの コントロールの成功例は、Jリーグの試合 せた。また、すべてのJクラブ、J1の16ク がJ1のわずか4クラブ、J2の10クラブのみ では容易に見られるようになっており、J ラブとJ2の12クラブを訪問し、プレーヤ だったのは驚きであった。実際に行われ リーグの試合では、ディレイはほとんど ーとコーチに対し、2004年シーズンで実 たミーティングについては、有意義なコ 見られなくなっている。 44 3大会連続、オリンピックへの出場権を獲得 定まっておらず、この差の一つの例は、 ○シミュレーション ○反スポーツ的行為 © Jリーグフォト (株) プレーヤー、コーチ、メディア担当者 択は、レフェリーのパフォーマンスとい このビデオで扱ったレフェリーの判定 U-23日本代表、 アジア サッカー 最終予選2004 3 4 U-23アラブ首長国連邦(UAE)代表 U-23レバノン代表 日本 バーレーン UAE レバノン UAE △ 0 - 0 ○ 2 - 0 ○ 4 - 0 JPN ● 0 - 1 ○ 3 - 0 ○ 2 - 1 UAE △ 0 - 0 ● 0 - 3 ○ 5 - 3 JPN ○ 1 - 0 ○ 2 - 0 △ 1 - 1 UAE ● 0 - 2 ○ 3 - 0 ○ 4 - 2 JPN ● 0 - 3 ● 0 - 2 △ 2 - 2 UAE ● 0 - 4 ● 3 - 5 ● 2 - 4 JPN ● 1 - 2 △ 1 - 1 △ 2 - 2 勝点 得点 失点 差 13 11 2 9 11 9 7 2 7 9 11 -2 2 9 18 -9 アテネオリンピックの出場権をかけた「アジア サッカー最終予選2004」、日本・UAE・バーレーン・レバノンのグループBは、ダ ブルセントラル方式(2か国開催)にて実施。 日本はUAEラウンド(3月1日〜5日)で初戦バーレーンに引き分けるが首位にて折り返し。日本ラウンド(3月14日〜18日)では初 戦バーレーンに敗れたが、レバノン、UAEに連勝して、アテネオリンピック出場権を獲得した。 日本は1996年アトランタ大会、2000年シドニー大会と3大会連続、通算7回目の出場。 45 U-23日本代表チーム・活動記録 アジア サッカー最終予選2004を振り返る① 1月 〜インタビュー、山本昌邦監督に聞く 前半はもう『0-0か、0-1で良 い日本にいて、暑さに慣れるための準備 い』と言っていました。1点負け をして、時差にも慣れるためにUAEに早 ていても後半1点返して入れれば めに入り、時差と暑さと両方調整して初 いいから、最後は相手が落ちて 戦に備えましたが、日本に帰ってきたと きたところで、我々は新しい選 きにまた時差調整が当然あるわけです。 手を入れていこうと思っていま ションを3月1日に向けてつくっていくと 寒さについては他の国よりも慣れている した。体調さえなんとか保てれ © Jリーグフォト (株) コンディションつくり、5秒の質・競争意識の徹底・・・ ことを徹底しました。 なった要素は、 往復 厳しい状況でした。 になったこと。寒 フ明けの準備からアジアでの戦い −−−山本さんは常々この年代では連続して 出るかもしれないという非常に 日程については、我々にとってきつく ○聞き手:大熊清(U-19日本代表監督) ○取材日:2004年3月26日 オ 行うこととなりました。 出ることが意義があるとおっしゃっていまし 逆に奪ったときの5秒の質としては、ど いう作業を重視しました。第二にアラブ首 ことであるのであまり問題はありません ば、相手よりもスタミナ的に最 た。3大会連続ということで、本当におめでと れだけ早く出ていけるかということ。もし 長国連邦(UAE)での戦いに備え、暑熱 でしたが、 時差の往復 後に動けるのは我々だという計 うございます。 くは、 取れるな 対策が必要となりました。 身体的にはダメージがありました。他の 算はありました。本当に最後に 国の選手たちは元々向こうにいるので、 点がとれて、結果が出せて、こ と思ったら出始めるく ということで、 まずは5週間、試合を入れると7週間の準備 らいの、そのような質の向上を図ろうとい 宮崎の合宿(1月19日〜23日)を、フィ について、そしてチームコンセプトについて、 うことを、攻守の間の時間については徹底 ジカルのコンディションづくりとベースを 最初のラウンドは何の問題もなく入って の試合で勝ち点3がとれたという ここだけはチームとして大切にしたというと しました。 上げていくというテーマでやり、その後、 くる。日本に来るときに調整が必要にな のが、全体で眺めたら非常に大 今までは口頭では伝えていても時間がな 暑熱対策のためにオーストラリアでキャン りますが、片道の調整で済みます。往復 きかったです。コンディション くてなかなか徹底できなかったことを、今 プを行いました(1月25日〜2月2日)。そ の調整が必要となるということで、多少、 的に当然疲労もある中で、それ 「チームとしては、守備についてはボール 回はキャンプの期間が十分あったので、個 こでは戦術的な練習も量を増やし、帰って 我々がきつくなった面はあります。 」 に輪をかけてあのような問題が 中心の守備、コンパクトなエリアをつくっ 人のところから、グループ、そしてチーム きてトレーニングマッチをU-23イラン代 て、その中でグループでボールをどう奪う ということで積み上げていきました。 」 表(2月8日) 、ロシア代表(2月11日) 、U- ころについて、お聞かせください。 のか、それもできれば高い位置でボールを 奪う、ということをテーマとしました。 23韓国代表(2月21日)と3試合こなして −−−コンセプト以外に、このチームでメン 攻撃については、ダイレクトプレーが タルなどで、アジアを闘う上でここだけはし まずあって、その後がボールポゼッショ っかりしようということはどのようなことだ ン。あくまでもダイレクトプレーをイメ ったのでしょうか? ージしながらポゼッションするかという UAE戦での勝利、出場権獲得へ 大きく前進 いきました。 」 「いつも必ずしも環境が整って良い状況だ からは、スペースをクリエイティブにど けではないわけで、厳しい状況の中で、ど う活用するかということで、ボールと人 うやって戦うのかということを徹底してき をどんどん追い越していくイメージの動 ました。 よく逞しく闘ったと思います。 マイナス要因はありましたが、 それは選手に一切伝えずに闘い −−−最終予選全体を振り返ってみてどうで ました。試合も体調が悪い選手 −−−アジアサッカー 最終予選2004の戦い したか。流れの6試合の中で、ターニングポイ たちはわかっていましたが、弱 を終えてみて、大会日程についてはどうでし ントがあればお聞かせください。 気なことを言うと選手たちがど んどん精神的にも落ちていって たか。 ことをテーマとしました。今年に入って きを徹底しました。 発生して、その中で選手たちは 「全体で言うと、やはり初戦のバーレーン 「厳しいことは間違いありません。それは 相手も我々も同じ条件です。 全体の20人をどう使うか。もっと言え しまうこともわかっていたので、 にしっかり勝ちきれなかったということが 『やるしかないんだ!』『そのた 誤算となりました。さらに、3月4日に大 めに俺らはやってきたんだか 量に体調不良が出てしまったことで、本当 ら!』というようにメンタル面 に厳しい戦いを強いられました。 をつなぎながらゲームに入りま あとは選手に伝えることだけではなく ば、1月のキャンプに招集した37人がチー また、攻守の切り替えのところでは 5 て、常に競争させることをやってきまし ムです。UAEラウンドに臨む選手と日本 ゲームの中の流れでは、初戦のバーレー 秒の質 を上げようということを徹底して た。それは我々が環境的につくっていく ラウンドに臨む選手は入れ替えることがで ン戦で、立ち上がりに我々が主導権を握っ 本当に全力を出し切って精も やってきました。要するに、人を追い越し ところです。例えば、フィジカルトレー きるわけで、それはプラスアルファで加え て点を取りにいきましたが、そこで点を取 根も尽き果てたような試合でし ていくわけだから、当然リスクもあります。 ニングにしても、同じようなポジション られるイメージをもって準備はしておきま りきれませんでした。結局、最後0-0で終 た。選手たちは本当によくがん ボールを取られたときには不利な状況も起 の選手を同じグループにするなど、グル した。 わってしまい、勝ち点が1しか取れません ばったと思います。 」 きてしまいます。こういうときに 攻守の ープ分けをうまくしながら常に競争の意 日程は①ホーム&アウェイ、②ダブルセ 5秒の質 を上げるということです。 識を持たせていくということを徹底させ ントラル(2か国での開催) 、③1国開催の 流れを引き寄せたという意味でいうと、 −−−このチームを作る上での基 ました。 」 シングルセントラルの3通りに関して、ア 第2戦のレバノン戦で田中(達也/浦和) 本的なシステムや選手の役割につ ジアサッカー連盟(AFC)によって、あら が先制点をとったことで皆気持ちが楽に いての考え方をお聞かせください。 かじめ日程は決定されていました。その3 なり、そこから畳み掛ける戦いができま つの選択肢の中のどれかでやるということ した。 つまり、相手にボールを取られたら、取 られた選手、もしくはその周りの2〜3人 のグループが、その瞬間に相手の攻撃を5 暑熱、時差への対応も 秒遅らせるだけの切り替えの速さを持ち、 追いかけて相手の攻撃を遅らせるというこ −−− 準備の5週間 の考え方について、簡 で、我々は、①では期間が長過ぎ、Jリー とを徹底しました。その代わり、それさえ 単にお聞かせください。 できれば積極的にチャレンジするように言 した。 でした。そこがポイントでした。 「ベースは1-3ー5-2で、それをベ そして、UAE戦では体調面で本当に厳 ースに相手との力関係で、選手 グの日程との調整も難しくなることから、 しい、半数が下痢をしながら闘わなくては の役割で修正することはありま ②のダブルセントラルを選択、③の1国開 ならなかったあの試合で、勝ち点3がとれ す。例えば、相手が3トップにし いました。そこさえがんばって5秒遅らせ 「準備はまず第一に、ゼロからのオフ明け 催は当然、同グループの他国から抵抗があ たということが一番のポイントとなりまし てくると、1-3ー5-2なのですが、 れば組織ができるから、その代わり、取ら のスタートなので、まずフィジカルコーチ るので、2か国でやることで同グループの た。脱水で倒れるかもしれない、最後まで 役割を少し修正し、片方のサイ れたときはとにかく5秒がんばれ、という にしっかりお願いして、けがなくコンディ 国の了承を受けて、この日程でこの形式で ピッチに立っていることができない選手が ドを少しディフェンシブにして 46 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 〜 アテネ五輪派遣手続き・メディカルチェック(JISS) トレーニングキャンプ(宮崎) トレーニングキャンプ(アデレード/オーストラリア) 2月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 〜 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 トレーニングキャンプ(静岡) キリンチャレンジカップ2004 vs U-23イラン代表 1:1(1:0) 国際親善試合 vs ロシア代表 1:1(1:1) トレーニングキャンプ(大阪) キリンチャレンジカップ2004 vs U-23韓国代表 2:0(0:0) 《アジアサッカー 最終予選2004/UAEラウンド》 3月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 ★ vs U-23バーレーン代表 0:0 ★ vs U-23レバノン代表 4:0(2:0) ★ vs U-23UAE代表 2:0(0:0) 《アジアサッカー 最終予選2004/日本ラウンド》 ★ vs U-23バーレーン代表 0:1(0:0) ★ vs U-23レバノン代表 2:1(1:0) ★ vs U-23UAE代表 3:0(2:0) 47 © Jリーグフォト (株) この守備力をゾーンとして強固なディフェ います。そういうときに心がけていること る必要はまったくないし2点返せる、とい 怒らず冷静に。基本的にはそのように考え ンスにするために徳永と茂庭という組み合 は、逆に自分が冷静になって、『何故か』 うような落ち着きが大事だと思います。 ています。 」 わせにしました。 ということだけははっきりさせます。慌て 良いときには強く言うし、悪いときには 選手にはシステムというよりは、ある タイプの選手を置いたり、役割を説明し たりすることで伝え、『今回は1-4-4-2だ』 © Jリーグフォト (株) © Jリーグフォト (株) とかそういう使い方はしません。『こうき たときには、おまえが守備的になって逆 日 本のレベルアップを選手育成 判断の柔軟性、指導者や選手の意識など・・・ 反対のサイドを上げたり中に入れるなど。 大)がそこにいればそのまま4バックにで サイドをあげろ』『守備のときは4バック 攻撃のときは、1-3ー5-2のイメージをその きる。ということで、相手がどう出てくる のイメージになるけど、攻撃のときはも −−−選手育成についてうかがいます。育成 ていくようなテクニックというのも非常に に書くときに、 コミュニケーション、声 ままです。 かわからないときは、徳永の起用というの っと高い位置に出ろ』、そして『数的同数 年代を私も見ていますが、山本さんもユース 重要だと思います。 」 というのは必ず書いています。非常に重要 例えば、ウィングバックの位置をそのま が非常にポイントになってきます。選手に でも守れるから安心して出ろ、それをボ 年代を見てきて、選手の自立したプレーとい ま下げて、4バックにするなどを柔軟にで よって相手の出方によって変えられるよう ランチがカバーするから』などというよ う面に関し、もっと育成年代からその辺りを −−−川淵三郎キャプテンもおっしゃってい う声を出せるかということも含めて、指示 きるようにしています。あとは使う駒。右 なスタメンでいく、ということはありまし うに伝えました。 育てるために、何か心がけたり工夫したほう たのですが、自分自身もユースを見ていて感 できる、コーチングできる選手というのは サイドで4バックにするときに、アウトサ た。特に、UAEは相手の左サイド、うち そのように、自分たちのスタイルを完 がいいのではないかということがあれば、お じることは、声の部分、指示の声が出る選手 非常に重要。そこは本当にうるさく言って イドに石川(FC東京)が出ていたら、そ の右サイド、徳永と茂庭(FC東京)がラ 全に消すのではなくて、バランスで考え 聞かせください。 が少ない。「がんばろう!」とかではなくて、 います。 こは4バックにできないから、逆のスライ インを組んでいたところが、相手が一番使 ました。 」 ドにしなくてはなりません。徳永(早稲田 いたい、良い仕事をするエリアなので、そ U -23日本代表、アテネへ向けての強化 選手たちの成長機会の創出、ハーフタイムでの指示など・・・ な要素だと思います。大事なときにどうい 人を使えるという指示の声が出せる選手が、 例えば、一つのミスが起きたときに、コ 「一人一人がピッチの中も外も、自分が良 下の年代で見ていて少ないと感じています。 ミュニケーション不足で起きたミスは、声 くなるために、いろいろなことを考える習 こういうことをできれば、上の年代になって の出し方で全部クリアできる問題で、技術 慣を持つということだと思います。そのよ プラスアルファになる部分が大きいのではな 的な問題ではないのです。コミュニケーシ うな知識を吸収しようとしている意欲が必 いかと感じています。 ョンを高めてそこから指示ができれば済む 要だろうし、何よりも負けず嫌いなところ は必要です。 山本さんはその点についてはどのようにお そして、自分自身で判断してプレーを出 −−−今後の準備についてお聞かせください。 「今回、アジア最終予選を突破して何が一 番良かったかというと、アテネの切符を取 流れを変えるに、ハーフタイムの指示や選手 辺になると、選手は基本的にもちろんよく せるようにしていくことが大事ですが、こ 交代ということになると思うのですが、ハー やっている。だけど、もっとがんばらなく れがなかなか難しい。いちいち我々が答え フタイムに心がけていること、自分の中のや てはいけないということです。99%がんば を言いたくなってしまって、最初から答え り方などがあれば教えてください。 ったのだがもう1%何かが足りない、そこ を先に出してしまいがちですが、むしろ でさらに『もっとがんばれ!よくがんばっ 『何故そうしたんだ?』ということを常に問 ったことで、これからの5か月を選手たち が必死になってそこにチャレンジするチャ 「ハーフタイムには選手たちも興奮状態で ているけど、もっとがんばらなくてはだめ いかけることが重要です。選手が何故そう ンスができる、さらに成長する機会ができ 頭もそれほどフレッシュな状態ではないの だ!』ということを伝えるというのが難し したかということを我々もわからなくては たということです。アテネの本大会の数試 で、本当にポイントを整理してシンプルに いところです。それがうまくいったときは、 いけないし、選手が答えを自分で探し出す 合ということではなくて、そこへ向かう過 絞って伝えるということ。それもわかりや 後半、必ず良い試合になります。 ようなアプローチができれば、選手自身が 程で、少しまた膨らんだメンバー、ある程 すく伝えるということだと思います。 本当に、とことんがんばっているときで 度可能性のある選手たちがこの5か月間を 目標をもって前進できるよう、競争をさら カールームに入ってきて、最初は何も言わ 足して『このままでいいぞ』などというと、 うなことが起こったときに、その答えだ に強化して、そのことを有効に生かしてい ないということ。黙って、選手たちを観察 選手はそれで落ちていってしまいます。そ けを表現しようとしてしまいます。それ きます。 している。最初は他のスタッフにとにかく んなことを言って、後半良くなったためし に対して、途中の過程を学んでいる選手 フレンドリーマッチに関しては、いろ 選手たちを冷静にさせ、リフレッシュ、身 はありません。前半どれだけ良くても、も は多少違う問題が出たときにも、自分で 体の手当てなどをするということを徹底さ っとがんばらなくては後半きついぞ、とい 解決する方法を考えることができます。 イプに対する準備をしていきたいと思い せ、その間に準備できることは白板に書い うメンタル面のケアがポイントのように思 そのようなことの繰り返しが、だんだん ます。オーバーエイジ(出生が1980年12 ておく。ハーフタイムの後半になって、選 います。 といろいろな意味で選手を大きくしてい 月31日以前)は有効活用し、それによっ 手たちがリフレッシュを終え、話が聞ける 逆に悪いときには『いいぞ』という。明 てさらに強いチームをつくりたいと考え 状態になったときに、パッと必要なことを らかに、前半悪すぎるというときには『こ また、若い選手たちはなかなか言いたい ています。 」 必要なタイミングでポイントを絞って伝え んなに悪いのに、1点しかとられていない ことも言えないようなところがあるので、 るということを心がけています。 から大丈夫だ』といったように、落ち着か 距離感をうまく保って、普段からコミュニ せるようにしています。そのようなときは、 ケーションをとり、この選手は何を考えて 選手自身がもうやられているのがわかって いるのかということを、冗談の中から探っ てメンタル面をコントロールしたり、試合の 48 個人が力を出し切れていないときは、 ネジ をまかなくてはいけません。この 「試合前のミーティングでポイントを白板 しています。 」 結局、答えを教えてしまうと、同じよ いろな大陸の国とやって、いろいろなタ −−−先ほどもお話が出ましたが、監督とし ミスが起きたのかということは厳しく追求 変わっていくのではないかと思っています。 私が注意しているのは、選手たちがロッ も、絶対に良いとは言いません。前半で満 ことで、それも指示を出すタイミングとか そういう問題だから、それは何故そういう 考えですか? © Jリーグフォト (株) くように思います。 © Jリーグフォト (株) © Jリーグフォト (株) 49
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