アラブ首長国連邦での出産と子育て(6)

JOMF NEWS LETTER
No.227 (2012.12)
アラブ首長国連邦での出産と子育て
第 6 回 : UAE での子育て :
子どもとの生活
海外出産・育児コンサルタント
Care the World 代表
ノーラ・コーリ
【 住環境 】
アブダビ、ドバイに住む日本人のほとんどは一戸建てよりは高層住宅に住んでいます。このよう
な住居タイプを選ぶ背景には、以下の条件があります。

セキュリティーがしっかりしている、

敷地内にちょっとしたスーパーマーケットがある、

ケーブルテレビが利用できる、

ジム、プールなどの施設がついている
また、このような高層住宅によっては託児所やクリニックが設
けられているところもあります。ホテルアパートメントタイプでは
ルームサービスからハウスキーピングのサービスまであり、光
熱費も家賃に含まれています。
住居の広さは、日本と比べると広く、なかなか外で思いっきり
遊べない子どもたちにとってはよい環境であると判断しました。
ただし、タイル貼りの床は足にひんやりとして心地よいのですが、
子どもたちにとっては転倒した際、危険であるという指摘があり
ました。また、多くの日本人は日本人が多く住む住居を選んでい
るため、友達に欠けることはないことを利点としてあげていまし
た。
日本人が住む高層住宅
【 離乳食 】
離乳食はご家庭で作られている方もいらっしゃいましたが、小児科医の勧めで現地で購入可能な
ベビーフードを食べさせている方々も大勢いらっしゃいました。瓶入りのベビーフードはアメリカ産や
ヨーロッパ産のものが輸入されていました。ただし、品揃えはあまりよくありません。また日本のベビ
ーフードに慣れている子どもは UAE のベビーフードのハーブやスパイスの風味に抵抗があるかもし
れません。
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No.227 (2012.12)
それでも日本人として和食にも慣れさせるために、大人の
ものを徐々に食べられる年齢から日本食も与えていました。
お米はオーストラリア産、カルフォルニア産などのものが売ら
れていますが、エジプト米は安く、しかも日本のお米に似てい
ることから、それを利用している人もいました。市場では新鮮
な魚も手に入りますし、その場でさばいてもくれます。野菜は
輸入されているものが多いのですが、鮮度はよいといえま
す。
ただし、和食の調味料や食材はなかなか手に入りません。
料理酒やみりんはアルコールが入っているので宗教上お酒を
飲まないイスラム教徒の多い UAE では特別な形でしか求め
られません。さらに、イスラム教徒は決して豚肉を口にしない
一般のスーパーマーケットにあった ため、豚肉はこれまた隔離された特別なコーナーに限定され
日本食コーナー
ています。食料品のスーパーマーケットでも日本食のコーナ
ーがあるところもありますが、値段は3倍近いため、なかなか気軽には購入できません。また、在庫
が切れるとなかなか再入荷しないことが多いので、あったらその場ですぐ買うという方法を勧めてい
ました。
そのため、和食の離乳食を作るのも工夫が必要です。
レトルトタイプのものやフリーズドライタイプのもの、また軽
い乾物などは日本から送ってもらうなり、日本から多めに
持ってこられるとよいでしょう。また、お店の営業時間の変
更はラマダン(断食)中はもちろんのこと、普段でも突然変
わるので、せっかく出かけて行ってみたものの閉まってい
るということもありますので、注意が必要です。
市場で売られている新鮮な魚
【 紙おむつ、ミルクなど 育児製品 】
育児製品は UAE でほぼすべて揃います。こだわりがなけ
れば、あえて日本から取り寄せることもないと思います。日本
のピジョン社の製品も売られています。紙おむつに関してもチ
ョイスがあり、日本製品の紙おむつが日本人の指導のもとで
サウジ産として売られているようなものもあります。パンツタイ
プの紙おむつもあります。
バラエティーに富む紙おむつ
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No.227 (2012.12)
粉ミルクにおいてもチョイスはたくさんありますが、品物の
回転のよいスーパーマーケットで購入することをお母様方
は勧めていました。また、薬局で購入するよりはスーパーマ
ーケットのほうが安いとのアドバイスもありました。ファロー
アップミルクも名称は違いますが、購入可能です。
【 外出時の注意 】
日本では電車やバスなどの公共交通機関の利用が便利
ですが、UAE では子ども連れですとなかなか利用できない
粉ミルクの種類も豊富
とのことでした。それは低所得層の外国人労働者の利用者で
しめられているからだということでした。駐在員の日本人家族は UAE では裕福な部類に入るため、
ほとんどの方は自家用車かタクシーを利用していました。
実際タクシーは日本ほど料金は高くないので、利用し
やすいです。ただし、運転手によっては英語がなかなか
通じなかったり、UAE に来たばかりの運転手に当たると
道もわからないということがあるので、乗る前に目的地へ
の道順を把握しておくとよいでしょう。
車においては、子どもがいると移動が便利ですので、
駐在員の奥様方の中には運転をしている人もいます。た
コンピューター化された
だし、現地の女性のほとんどは運転をしませんので、女
タクシーの料金メーター
性が運転しているのはめずらしい光景です。さらに運転
マナーが悪いので、運転をする場合はかなり神経を使い
ます。そのため、決まった簡単な道しか走らない、ラウンドアバウト(交差点が輪になっているとこ
ろ)のある道は避ける、積極的には他人を乗せない、
後部座席の人にもシートベルトをつけてもらう、時間帯
を選ぶ、などの配慮を必要としていました。
それでも最近開通したドバイの地下鉄は新しく、き
れいで、子どもと女性専用の車両もあり、安全なため
日本人の子ども連れの利用者も少しずつ増えていま
す。ベビーカーでの移動もエレベーターが利用できま
すので便利です。ただし、地下鉄を降りて自宅までの
道路は段差が多いので不便です。
きれいなメトロの車両
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No.227 (2012.12)
授乳環境はどうかといいますと、母乳で育てている人が少ないことと、アラブ人の多くが赤ちゃん
を預けて外出しているため、授乳室はほとんどありません。ただし、おむつを替える台はショッピン
グセンターなどのお手洗いに大方備えてありました。なお、日本人が利用するモールなどのお手洗
いは比較的清潔で、特に衛生面での問題はないと判断しました。
次回はイスラム教の国における子育てについてお届けします。
=編集部より=
6月よりノーラ・コーリさんによる連載を開始しました。ノーラさんには今までもオランダ、
フランス、韓国、パナマ、インド等多くの地域の報告を掲載させていただきました。今回はイス
ラム圏のアラブ首長国連邦がテーマです。妊娠、出産、小児医療等についての貴重なレポートを
ご紹介致します。
今までの記事は JOMF サイト TOP ページ右上の Google でサイト内検索をかけると多数ヒットし
ますのでぜひあわせて読んでみてください。
プロフィールを簡単にご紹介します。:海外出産・育児コンサルタントとして、20 年以上に渡
り、世界の出産、子育て事情を調べています。精神医学ソーシャルワーカーとしては海外在住女
性のメンタルヘルスにかかわっています。日本で生まれた日本人ですが、アメリカ、カナダ、シ
ンガポールと海外在住 27 年。現在はニューヨークにて知的および身体障害者のデイケア施設の管
理職に就いています。
「海外で安心して赤ちゃんを産む本」、
「海外で安心して子育てをする本」、
「愛は傷つけない-自立に向けてのガイドブック」など多数の著書が出ています。上記の他、医療
通訳 (妊娠、出産、育児、福祉、教育
を専門とする)、バイリンガル教育コンサルタントと
しても活躍中です。詳細は下記サイトでもご覧になれます。
http://www.caretheworld.com