古着購入の心理的要因 - Info Shako

平成19年度
卒業論文
古着購入の心理的要因
ファッション志向およびパーソナリティ変数との関連
筑波大学
第三学群
社会工学類
社会経済システム専攻
200411035
日野雄一
指導教官
:
石井健一
准教授
項目
・目次
・第1章 はじめに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1
1−1 背景
1−2 研究目的
1−3 仮説の設定
・第2章 研究方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4
2−1 予備調査の方法
2−2 アンケートによる量的調査
2−3 変数の定義
2−4 尺度について
・第3章 結果と考察・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・9
3−1 予備調査の結果概要
3−2 量的調査の概況
3−3 仮説の検証
3−3−1
「高級ブランドを持っている人は古着屋に抵抗がある」
の検証
3−3−2
「古着を買う人は自分のファッションの幅を固定しない
人である」の検証
3−3−3
「認知的失敗の低い人は古着を買いに行く頻度が高い」
の検証
・第4章 結論 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・19
4−1 本研究における結論と今後の課題
4−2 今回の研究の問題点
・参考文献・資料・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・21
・謝辞・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・22
・付録・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・23
第1章
1−1
はじめに
背景
古着市場は確立され、現在では地域によって違いはあるが古着屋が飽和状態となってい
るところもある。古着は以前までは「安いけれども、だれかが着たものだから抵抗がある」
といった印象の人が多かっただろう。古着の歴史を遡ると、日本では江戸時代には既に着
物の古着を扱う問屋が存在しており、その後にはそういった問屋の組合まであった。けれ
ども粗悪な着物の古着も多かった。
(http://homepage2.nifty.com/makibuchi-2/kyodoshi/69kai.html)
また、
「13世紀のフランスでも古着の売買が正式な職業として認められた。しかし、当
時は既製服の生産はしておらず、特注できるほどのお金を持っていない民衆が古着の需要
者となっていた。そのため、
古着は貧しさの象徴ともとられていた」。
(2002 年 佐野淳美
)
ともある。フランスと日本とでは違いがあるのかもしれないが、このようにフランスにお
いても古着は決して良い印象があったとはいえない。
しかし、1980年代にはファッション雑誌の影響もあって「おしゃれな日常着」とし
て若者中心に古着ブームが起こった。若者中心に古着ブームが起こった要因として、次の
二点が考えられえる。まず一点目は、先に述べたように古着に関する情報源はファッショ
ン雑誌である。そのため、そういったファッション情報に高い関心を示しやすい若者が古
着の情報に触れる機会が多かったと考えられる。二点目は、現代の若者は「貧しさの象徴」
のような差別意識を持たなかったということが考えられる。1990年代にはバブル期の
輸入品の在庫を整理するためもあってアウトレットやオフプライス・ストアが増加すると
ともに、各地でフリーマーケットも展開され、古着を裾野が広がった。
(2002 年 佐野淳美)
また、古着のみを取り扱う大型な古着店も主要都市で展開され、古着屋が人気を集めてき
た。たとえば、近年話題の「表参道ヒルズ」の右側に、アメリカファッションブランド「ラ
ルフローレン」の巨大な旗艦店がオープンした。古着の需要があるのは主要都市だけでは
ない。雑誌でも古着の特集が組まれ全国に発行されているのだから、古着の需要は全国に
あるといってもよい。また中古衣料の輸入も年々増加している。1995 年をピークに一時輸
入量が減少したものの、1998 年を境にまた増加傾向となり、それは 2003 年には 1995 年の
ピークを上回りその後も増加の一途をたどっている。これは日本において中古衣料が注目
され需要が増加していることの表れということができるだろう。
また、古着市場の確立には政府が発表した3R 政策が追い風になった。大量生産、大量消
費、大量廃棄を続けてきた日本が、資源の枯渇が心配される近年においても持続的に経済
成長していくために政府が発表したのが3R 政策である。3R とは Reduce(廃棄物発生抑
制)、Reuse(再利用)
、Recycle(再資源化)である。次に経済産業省では 2001 年に繊維製
品3R 推進会議を設置した。
このように政府の政策として国内中古衣料市場の活性化に取り
組んでいる。2002 年には、初の業界団体として日本古着小売業協同組合も設立された。か
つて古着店を開業しようとした場合、裏通りや隅のテナントにしか出店できない時代もあ
った。それが現在は表通りやファッションビルに進出できるようになったことは、世間の
古着と古着店に対する見方が大きく変わったことの表れだろう。
(2006 年
-1-
原直樹)
まず、ここでの古着の定義をはっきりさせておく必要があるだろう。大辞泉では「着て
古くなった衣服」、また日本語大辞典では「着古した衣服」となっている。そして日本国語
大辞典では「かつて身につけていた着物、着古した衣服、ふるごろも、ふるぎぬ」とある。
ここでは日本国語大辞典の「かつて身につけていた着物」
、つまり、一度でもだれかが着た
ことのある衣服を古着として扱う。また、古着の購入者について調査するため、購入者の
いないような古着、つまり着古して古着として販売できなくなった状態のようなものは範
疇から除外する。
1−2
研究目的
1−1で述べたように、古着屋は地域によっては飽和状態となっている。つまり、古着
市場では古着屋それぞれがお互いの差別化を狙って運営していく必要があるだろう。
そこで、本研究では学生を対象にアンケート調査を実施し、その結果をもとに古着を購
入する人たちの動機、さらに古着を購入する人たちはどのような特徴なのかについて研究
する。
これらを明らかにすることによって、古着屋は顧客の特性を理解し、それに合わせたサ
ービスや店構えを展開し、その店のオリジナリティをさらに追求できるのではないかと思
われる。また本研究の結果は古着の分野だけにとどまらず、アパレル産業全体に衣料品生
産の際に古着としてリサイクルされることを見越した企業展開に役立つものとも考える。
1−3
仮説の設定
仮説の設定にあたり、事前調査としてインタビュー調査を実施した。この事前調査を通
じて得られた仮説、また私自身がこの事前調査を通して検証してみたいと考えた仮説は以
下の通りである。また、この事前調査の方法や調査結果の概要は2章、3章で述べること
とする。
仮説1:「高級ブランドを持っている人は古着屋に抵抗がある」
仮説2:「古着を買う人は自分のファッションの幅を固定しない人である」
仮説3:「認知的失敗の低い人は古着を買いに行く頻度が高い」
仮説1について
古着というと一般的に価格が安いという印象が挙げられる。それはインタビュー調査に
おいても、そのような結果が得られた。よって、高級ブランドのような高価なものに価値
を見出す人、高級ブランドのような周囲の人間の誰もが認知しているようなブランドを持
っていることに意義を見出している人は、古着のような「安い」という印象のあるものを
買うことに抵抗があるのではないだろうか。また、インタビュー調査においても、
「古着を
-2-
買わない人は一般的にどのような人だと思うか」という質問に対して「高級志向な人」と
いう回答も得られている。こういったことからこの仮説を立てた。
仮説2について
新品の服を扱っているお店はある程度服のジャンルが決まっている。その店の雰囲気や
コンセプトに合った服を取り扱うため、自然と服のジャンルも偏ったものになる。しかし、
古着屋の場合はそれとは異なる。もともとその店主が集めていた服のほかに、一般の人が
売った服もあるため、さまざまなジャンルの服を取り扱うこととなる。こういった視点か
ら考えると、次のようなことが考えられる。新品の服を取り扱うお店に行く人は、そのお
店のコンセプトに共感しており、自身がどんな服を買いたいのかほとんど決まっているの
ではないだろうか。そして、古着屋に行く人はさまざまなジャンルの服の中から気に入る
ものを探し出したいのではないだろうか。つまり、古着屋に行く人は新品の服を取り扱う
お店に行く人よりもファッションの幅を固定していないと考えられる。また、インタビュ
ー調査においても、
「古着を買いに行くのはなぜですか」という質問に対して「特定のジャ
ンルの服に縛られずにいろいろなジャンルの服があるので、いろいろな服を見ることがで
きる」という回答を得られた。こういったことからこの仮説を立てた。
仮説3について
インタビュー調査において、
「古着を買わない人の理由はなんだと思いますか」という質
問に対しては「気に入る服を探すのが面倒な人」というような回答を得られた。また「ど
うしてあなたは古着屋に行くのですか」という質問に対しては「さまざまなジャンルの服
があるから見ていて楽しい」という回答が得られた。つまり、古着屋では自分に似合いそ
うな服、または気に入る服を数多くのジャンルの服から見つけ出さなければならないとい
うことである。その作業を楽しいと感じるか、面倒と感じるかでそれぞれ古着屋に行く頻
度が異なってくるのではないかと考えた。「見つけ出す作業が面倒」ということを「見つけ
だすことが苦手」とし、認知的失敗の多い人と読み替えて、この仮説を立てた。
-3-
第2章
2−1
研究方法
予備調査の方法
仮説を設定するためや、作成するアンケート用紙の項目作成のために、予備調査として
1対1のインタビュー形式で質的調査を行った。いくつかの基本的な質問を用意し、それ
らの被験者の回答に対して「なぜ」と繰り返して質問した。当初に用意をした基本的な質
問をいくつか挙げると以下のようなものである。
・ 古着を買いますか
・ どうして古着を買う(買わない)のですか
・ 一般的に古着を買う人はどうして古着を買う(買わない)と思いますか
・ 古着屋にどのようなイメージがありますか
・ いつから古着を購入するようになりましたか
・ 古着を購入する以前と購入するようになってからで古着に対してなにかイメージが変
わりましたか
・ 古着を買う人はどのような人が多いと思いますか
・ フリーマーケットは行きますか
このような基本的な質問をいくつか用意し、1対1のインタビュー形式で質的調査を実
施した。本研究の被験者は19歳から22歳の男女5名で一人約40分程度、インタビュ
ーを録音しながら行った。そして、録音したものをまとめずに話し言葉のまま文章にした。
インタビューを実施したときの対象者の答え方のニュアンスを加味して、仮説と質問項目
を考えたかったためである。この調査で得られた結果を参考に仮説を設定し、本調査であ
るアンケート用紙の質問項目を考えた。
2−2
アンケートによる量的調査
仮説を検証するために、アンケートによる量的調査を実施した。
(付録 アンケート)
日時
2007年10月18日(木)
場所
筑波大学社会工学類開設授業「社会調査実習」
アンケート回収数100枚
そのうちわけは、男性が77枚、女性が22枚、白紙が1枚であった。筑波大学の社会工
学類開設の授業でアンケートをとったため、対象者は全て社会工学類の学生であり、また
対象者の学年も2年生だけであった。
2−3
変数の定義
アンケートの回答項目の定義について記述しておく。アンケートの回答項目のいくつか
は分析のために以下のように置き換えて使用した。
-4-
・古着屋に行く頻度
1) 全く行かない
→ 0
2) 1年に1∼5回くらい
→ 3
3) 1年に5∼10回くらい → 7
4) 1ヶ月に1∼2回くらい → 18
5) 1週間に1回くらい
→ 48
6) 1週間に2∼3回くらい → 96
7) それ以上
→ 145
・1年間における古着の購入枚数
1)買わない
→ 0
2)1∼5着
→ 3
3)6∼10着
→ 8
4)11∼15着
→ 13
5)16∼20着
→ 18
6)21∼25着
→ 23
7)それ以上
→ 25
・1年間における古着に消費する金額
1)0円
→ 0
2)1∼5000円
→ 2500
3)5001∼10000円
→ 7500
4)10001∼20000円 → 15000
5)20001∼30000円 → 25000
6)30001∼40000円 → 35000
7)40001∼50000円 → 45000
8)それ以上
→ 50000
・1ヶ月に自由に使える金額
1) 4万円以下
→ 4
2) 4∼6万円
→ 5
3) 6∼8万円
→ 7
4) 8∼10万円
→ 9
5) 10∼12万円 → 11
6) 12∼14万円 → 13
7) 14∼16万円 → 15
8) 16万円以上
→ 16
またアンケートの「あなたは古着屋にどの程度行きますか」という質問に対して「1)
全く行かない」に○が付いている人は、以後の対象者の古着購入の実態に関する質問を飛
-5-
ばすように指示を出したので○が付けられていない部分がある。よって、この回答者は古
着を購入していないと考えられるので、
「1年間に何着古着を購入するか」という質問に対
しては「1)買わない」、
「1年間に古着にいくらお金をかけるか」という質問に対しては
「1)0円」に○をつけたものとして扱う。これらを踏まえて SPSS を用いて分析する。
次に、今回の調査で古着を購入するという人は50人、購入しないという人は49人だ
った。今後この古着購入者数と非古着購入者数の結果を「古着購入者数割合」と呼ぶこと
とする。
2−4
尺度について
アンケートによる調査において、アンケートに載せた尺度は、開放性を測る尺度、認知
的失敗を測る尺度、被服関心における似合いの良さを追求する程度を測る尺度、被服行動
における経済性を測る尺度、進取性を測る尺度(1994 堀洋道, 山本真理子, 松井豊)であ
る。それぞれの尺度を構成する質問項目は以下の通りである。
開放性(5件法)
・ 進歩的である
・ 頭の回転が速い
・ 好奇心が強い
・ 独立心が強い
認知的失敗(5件法)
・ スーパーマーケットに行って、欲しい品物が目の前にあるのに見つけられないことがあ
る
・ 決心するまであれこれ迷うことがある
・ 約束を忘れることがある
・ のどまででかかっているのに、どうしても思い出せないことがある
被服関心における似合いの良さを追求する程度(5件法)
・ 私は友人と、お互いが着用している衣服の似合いのよさについて話し合う
・ 服装に関する新しい情報を得るために、私は雑誌を読む
・ たとえ友人が無関心であり、また、特に着たいと思わなくても、何が新しい流行の服な
のかを知りたいと思う
被服行動における経済性を測る尺度(5件法)
・ 安い服であれば少しくらい気に入らなくても買うことがある(逆転項目)
・ 多少値段が高くても品質の良い衣服を選ぶ(逆転項目)
・ 自分にとって高価な衣服は必要がないと思う
・ どんなに気に入った服でも高ければ買わない
-6-
先取性(3件法)
・ 平凡に暮らすよりは何か変わったことがしたい
・ 古いものを改造するのが好きだ
・ 新しいことには、すぐ飛びつく
・ いつも何か刺激的なことを求めるほうだ
・ 新しいアイデアを考えるのが好きだ
これらのうち分析で用いた尺度は開放性を測る尺度、認知的失敗を測る尺度、被服行動
における経済性を測る尺度、進取性を測る尺度の四つだったため、それぞれ信頼性分析を
実施した。その結果を受け、尺度の精度を上げるために項目を削除し修正した後のアルフ
ァ係数は以下の表の通りである。
表 2-4-1 尺度のアルファ係数
アルファ係数
開放性
0.699
認知的失敗
0.406
被服行動における経済性を測る尺度
0.768
進取性
0.730
まずは開放性を測る尺度についてである。四つの質問項目のうち「好奇心が強い」がア
ルファ係数を小さくする項目として挙げられた。そのため尺度の精度を上げるために「好
奇心が強い」は取り除いた。残りの三つの項目の得点を合計したものを、開放性を測る尺
度とした。よって開放性の得点は3点∼15点となる。この際、そのまま合計したのでは
開放性が高い人ほど得点が低くなりわかりにくいので、開放性が高い人ほど得点が高くな
るように逆転して扱った。
次に認知的失敗を測る尺度についてである。四つの質問項目のうち「決心するまであれ
これ迷うことがある」がアルファ係数を下げる項目として挙げられた。認知的失敗を測る
尺度の精度を上げるため、「決心するまであれこれ迷うことがある」を取り除き、残りの三
つの質問項目で認知的失敗の尺度を測ることとした。この三つの質問項目の得点を合計し、
その合計点を認知的失敗とする。よって認知的失敗を測る尺度の点数は3点∼15点とな
る。この尺度も先と同様で、そのまま合計しただけでは認知的失敗が高い人ほどこの尺度
の得点が低いこととなり、わかりにくくなってしまうので逆転して扱った。
次に被服行動における経済性を測る尺度についてである。まずは逆転項目があるので、
逆転させた。そしてその四つの質問項目のうち「安い服であれば少しくらい気に入らなく
ても買うことがある」がアルファ係数を下げる項目として挙げられた。被服行動における
経済性を測る尺度の精度を上げるため、安い服であれば少しくらい気に入らなくても買う
ことがある」を取り除き、残り三つの質問項目で被服行動における経済性の尺度を測るこ
ととした。よって被服行動における経済性を測る尺度の点数は3点∼15点となる。この
尺度も先と同様で、そのまま合計しただけでは被服行動における経済性が高い、つまり被
-7-
服にかけるお金を節約したい人ほどこの尺度の得点が低いこととなり、わかりにくくなっ
てしまうので逆転して扱った。
次に先取性についてである。先取性の場合、どの質問項目もアルファ係数を下げる要因
となっていなかったためそのまま五つの項目の得点を合計したものを、先取性を測る尺度
とした。よって得点は5点∼15点となる。この尺度も同様に、そのまま合計したのでは
進取性が高い人ほど得点が低くなりわかりにくくなってしまうので、進取性が高い人ほど
得点が高くなるように逆転して扱った。
-8-
第3章
3−1
結果と考察
予備調査の結果概要
まず被験者の内訳として、19歳女が1人、22歳男女4人であり、そのうち3人が古
着を購入すると答え、2人が古着を購入しないと答えた。
古着を購入すると答えた3人は一様に古着のイメージや購入動機において「安い」とい
う回答が得られた。そして、さらに詳しく質問するにつれその「安い」というイメージは
古着の価格が絶対的に安いということだけではなく、「新品でブランド物を買うよりは安く
買える」という相対的な意味での安いという意味も含まれていることがわかった。また、
安いからこそ気軽に手を出せる、似合うかどうか確信がなくても安いから半ば失敗しても
いいという気持ちで購入する、という回答も得られた。
古着を購入しないと答えた2人は購入しない理由において、
「古着を買うという選択肢が
そもそも最初からない、服を買う店が決まっているから」というような回答と「糸がほつ
れていそう、長持ちしなそう」というような回答が得られた。以上のような回答から服を
購入する際は気に入っている店でしか買わないというような固定観念のようなものがある
ということ、また物持ちの良し悪しという点が服の購入の動機に比較的大きなウェイトを
占めていることが伺えた。
古着屋のイメージとして被験者5人一様に「ごちゃごちゃしている、服が詰め込まれて
いる、おおざっぱ」という回答が得られた。そして古着を購入する3人からは「自分に似
合いそうな服を探し出すことが楽しい、いろいろな種類の服があるから見ているだけで楽
しい」というような回答も得られた。つまり、古着の特性だけに魅力を感じて購入してい
るだけではなく、このような「探し出す楽しさ」のような要因も古着屋に行く動機に結び
付いていることが伺えた。
3−2
量的調査の概況
まず予備調査の対象者の全員から聞くことができた「安い」という点に注目する。古着
購入の動機として、
「全般的に古着は新品の服よりも安いから」というのはもはや当然のこ
とという概念があったため仮説として採り上げなかった。しかし、古着に対しての調査で
あるため、念のために被服行動における経済性を測る尺度をもちいて古着購入者数割合と
t検定を行い、古着を購入する人と購入しない人とで被服行動における経済性に差がある
か検証した。その結果が以下の表の通りである。
-9-
表 3-2-1 古着購入者数割合における被服行動における経済性尺度の差の検定
平均値
標準偏差
平均値の標
t値
有意確率
0.089
0.929
準誤差
古着を購入
する人
8.520
2.549
0.361
しない人
8.469
3.076
0.439
平均値が古着を購入する人は 8.520、購入しない人は 8.469 でありほとんど差がなかった。
有意確率をみても 0.929 となり、予想に反し古着購入者数割合において被服行動における
経済性は差がないという結果が得られた。予備調査で「安いから」という回答が得られた
ため、古着を購入する人のほうが購入しない人に比べ被服行動における経済性を測る尺度
において大きい値、つまり経済性が高く被服にあまりお金をかけないという結果が得られ
ると予想していた。被服行動における経済性を測る尺度の平均値は 8.49 となり、この尺度
の得点範囲は3点∼15点なのでほぼ中心値といえる。そして、この平均値である 8.49 は
古着を購入する人の平均値である 8.520、古着を購入しない人の平均値である 8.469 と非常
に近い値である。また双方の標準偏差も近い値となっている。被服行動における経済性を
測る尺度の傾向は以下のグラフの通りである。
図 3-2-1
経済性尺度の傾向
25
20
15
人数
10
5
14
13
12
11
10
9
8
7
6
5
4
3
経
済
性
得
点
0
7点で人数が減ってはいるものの、全体的に真ん中に集中した分布といえる。つまり、
大体の学生はある程度は被服にかけるお金を節約したいが、そこまで極端に意識的に被服
にかける金額を減らそうとはしていない、ということだろう。このように古着購入する人
と購入しない人とで被服行動における経済性に差がないけれども、その上で古着を購入す
る学生と購入しない学生に分けられる要因が他にあるということになる。それを以下の分
- 10 -
析でみていきたい。
次にアンケートの対象者の実態と古着購入との関連性について考察しておく。以下の表
は対象者の男女の割合と古着購入者数割合である。
表 3-2-2 男女の割合と古着購入者数割合
性別
男
女
計
人数
77 人
22 人
99 人
古着購入者数割合
41 人
9人
50 人
古着購入率
53.2%
40.9%
男性と女性とでは流行に関しての敏感さが異なる。
(2001、辻幸恵)その流行の指針とし
てファッションが挙げられるので、被服行動においても男性と女性とでは違いがあると考
えられる。そして、被服が古着であれば一般の新品の服に比べ違ったイメージが付加され
るので、なおさらその差が顕著になるのではないかと考えた。そこで、性別と古着購入者
数割合をカイ2乗検定で差の検定をした。結果、男女間で差は見られなかった(カイ2乗
値=1.042、有意確率 0.342)
。予想に反して男性と女性の間で差はないという結果が得られ
たが、母数が男性と女性で差があり、全体的に少ないのでここでは参考程度にとどめてお
くとする。
次に生活形態が古着購入に与える影響について考察する。筑波大学の学生は賃貸で一人
暮らししている学生が多く、一般の環境とは異なると考えられる。そのような特殊な環境
で調査を実施したため、生活形態の違いが古着購入になんらかの影響を及ぼしているかど
うか検証してみた。以下の表はアンケート対象者の一人暮らしか、家族と同居しているか、
そのうちの古着購入者数割合をまとめたものである。
表 3-2-3 生活形態と古着購入者数割合
生活形態
一人暮らし
家族と同居
計
人数
79 人
20 人
99 人
古着購入者数割合
46 人
4人
50 人
古着購入率
58.2%
20.0%
生活形態の違いが古着購入に影響をもたらしているか検証するために、生活形態と古着
購入者数割合をカイ2乗検定で差の検定をした。結果、一人暮らしと家族との同居との間
で差が見られた(カイ2乗値=9.330、有意確率 0.003)。
検定結果から、一人暮らしの人ほうが家族と同居している人よりも古着を購入すること
がわかる。家族と同居している場合、買い物に家族と一緒に行く機会が多くなる。古着屋
が家族と一緒にいくような雰囲気でないのか、古着屋へ行く機会が減りこのような結果と
なったと考えられる。しかし、クロス表で5以下の度数があり、母数が少ないので参考程
度にとどめておく。
次に車の所有が古着購入に与える影響について考察する。以下の表はアンケート対象者
- 11 -
の車所有状態とそのうち古着購入者数割合をまとめたものである。
表 3-2-4 車の所持と古着購入者数割合
車の所持
所持している
所持していない
計
人数
23 人
76 人
99 人
古着購入者数割合
11 人
39 人
50 人
古着購入率
47.8%
51.3%
つくば市は都市部と比べ交通の便が発達していないため、学生の移動手段は車、もしく
は自転車が大半をしめている。そういうことから車を持つ学生と持たない学生は行動可能
範囲に大きな差がある。この差が古着購入者数割合に影響をもたらすか検証するために、
車の所持と古着購入者数割合とでカイ2乗検定をした。結果、車の所持と古着購入者数割
合の間に差は見られなかった(カイ2乗値=0.086、有意確率 0.815)
。この結果は、車を所
持していなくても所持している人に頼んで連れて行ってもらう、もしくは車を所持してい
る人が古着を購入するときに一緒に行くことが多いからだと解釈できる。しかし、大学2
年生ということもあり、車を所持していると答えた対象者が 23 人と少なかったため、ここ
では参考程度にとどめておく。
次に対象者が 1 ヶ月に自由に使える金額(学生なのでアルバイトなどの収入だけでなく
仕送りなどもあるため、
「1 ヶ月に自由に使える金額」というような表現とした)が古着購
入に与える影響について考察する。以下の表は対象者が答えた 1 ヶ月に自由に使える金額
をまとめたものである。
表 3-2-5 1 ヶ月に自由に使える金額
1 ヶ月に自由に使える金
人数
率
4万円以下
28
28.3%
4∼6万円
41
41.4%
6∼8万円
16
16.2%
8∼10万円
6
6.1%
10∼12万円
5
5.1%
12∼14万円
2
2.0%
14∼16万円
1
1.0%
計
99
100%
額
事前調査であるインタビュー調査の際、「どうして古着を買うのですか」という質問に対
して「安いから」という回答が古着を購入すると回答した対象者全員から得られた。よっ
て、古着購入の動機には自由に使える金額が大きく結びついていると考えられるため、1 ヶ
月に自由に使える金額と1年間における古着の購入枚数、1年間における古着に消費する
- 12 -
金額について相関分析をして関係性があるか検証した。その結果が以下の表である。
表 3-2-6 相関分析結果
1 年 間 に お け る 1 年 間 に お け る 1 ヶ月に自由に使
古着の購入枚数
古 着 に 消 費 す る える金額
金額
1年間におけ
相関係数
1
0.880
0.018
る古着の購入
枚数
有意確率
0.000
0.859
1年間におけ
相関係数
1
-0.009
る古着に消費
する金額
0.928
有意確率
N=99
「1年間における古着の購入枚数」と「1年間における古着に消費する金額」の間にお
いて有意に相関があるという結果がでた。古着の購入枚数が増えれば消費する金額も自然
と増えるということが容易に想像できるので当然の結果である。また「1 ヶ月に自由に使え
る金額」と「1年間における古着の購入枚数」、
「1 ヶ月に自由に使える金額」と「1年間に
おける古着に消費する金額」の両方の関係に相関が見られなかった。1 ヶ月に自由に使える
金額が大きいほど古着の購入枚数や古着に消費する金額が大きくなるものと考えていたが、
この結果から 1 ヶ月に自由に使える金額が少ないからこそ新品よりも古着を多く買うとい
うようなことも考えられる。よって一概に 1 ヶ月に自由に使える金額が多いから多く古着
を購入するとは言えないことがわかった。
最後に先に見てきた性別、住居形態、車の所持、1 ヶ月に自由に使える金額の4つの変数
を1つのモデルに取り込み多変量で回帰分析をした。個別に考察した場合ではその一つ一
つの変数が古着購入にどの程度差をもたらすかを見ることができるが、他の変数との関係
性まではみることができないからである。分析する際に、ダミー変数として以下のように
変数を定義した。
性別
男
→1
女
→0
住居形態 一人暮らし
→1
家族と同居
→0
車の所持 所持している →1
所持していない→0
以下の表は従属変数を1年間における古着の購入枚数にした場合と1年間における古着
に消費する金額にした場合の2つのモデルについて回帰分析した結果である。
- 13 -
表 3-2-7 回帰分析結果
従属変数
1年間における古着の購入枚数
非標準化
標準化係
独立変数
係数ベータ
数ベータ
性別
1.738
住居形態
1.937
車 の所 持
t値の有意
モデルの
F値の有
t値
確率
F値
意確率
0.173
1.704
0.092
0.187
1.833
0.07
1.809
0.134
0.232
0.024
0.228
0.82
-1.38E-06
-0.008
-0.76
0.94
1 ヶ月に自
由に使え
る金額
非標準化の定数項は-0.124
従属変数
1年間における古着に消費する金額
非標準化
標準化係
独立変数
係数ベータ
数ベータ
性別
6357.095
住居形態
7571.231
車 の所 持
t値の有意
モデルの
F値の有
t値
確率
F値
意確率
0.194
1.943
0.055
0.223
2.234
0.028
2.781
0.031
3368.333
0.104
1.032
0.305
-0.028
-0.048
-0.485
0.629
1 ヶ月に自
由に使え
る金額
非標準化の定数項は-1348.181
1年間における古着の購入枚数を従属変数にしたモデルは独立変数各々のt値において
もモデル自体のF値においても5%水準で有意な結果がでなかった。よって、古着の購入
枚数は性別、住居形態、車の所持、1 ヶ月に自由に使える金額を組み合わせても関係性がな
いということになる。しかし性別と住居形態においては10%水準では有意でありわずか
な正の相関関係があると考えられるが参考程度としておく。1年間における古着に消費す
る金額を従属変数にしたモデルは、まずモデルのF値が 2.781、有意水準5%で有意であり、
また独立変数各々に注目すると住居形態が有意水準5%で有意となっている。先の個別の
- 14 -
変数で考察した際に住居形態のみ差があるという結果が得られたが、ここで他の変数の要
素を取り除いた結果、1年間における古着に消費する金額に 2.234 という正の相関があるとい
うことがわかった。住居形態の変数において一人暮らしを 1 としたため、ここでも先に個別で行った
カイ 2 乗検定の結果に引き続き、住居形態は家族と同居している場合よりも一人暮らしのほうが
古着屋に消費する金額が大きいという結果になった。また、性別においても有意水準10%で有意
であり、正の相関関係があると考えることができる。男性を1としたため女性よりも男性の方が古
着を購入するという結果が得られた。しかし女性の人数が少なく、また有意水準10%であるため
参考程度としておく。
また双方のモデルにおいて、1ヶ月に自由に使える金額の係数がほぼ 0 に近いものの負
となっている。通常の場合、収入と消費量、消費金額は正の相関関係にあるものが多い。
有意でないという結果になっているものの、相関が負ということは1ヶ月に自由に使える
金額が少ないほど古着の購入枚数、古着にかける金額が多いということになり特異な結果
である。この結果から古着購入者の動機として1ヶ月に自由に使える金額が少ないから、
節約しようとして新品の服よりも古着を買う、ということの表れだと考えることができる。
3−3
仮説の検証
3−3−1 「高級ブランドを持っている人は古着屋に抵抗がある」
ここからは1−3で設定した仮説を検証していく。最初に「高級ブランドを持っている
人は古着屋に抵抗がある」を検証する。この分析ではアンケートの問3の「高級ブランド
を持っているか」という質問項目と問9の「古着屋のイメージ」という質問項目を使用す
る。古着屋に抵抗があるかどうかという尺度として、問9の選択項目の中にネガティブな
イメージをいくつか入れ、それらを得点化する。ネガティブな選択項目は以下のものであ
る。
・ 服が雑多に置いてあり、好みの服を探すのが面倒
・ 使い古された服ばかり置いてあるので、店全体が汚い
・ 独特の雰囲気があり、店に入りにくい
得点化の具体的内容は、これらネガティブな選択項目に1つ丸が付けられる毎に1点加
算され、この3つの選択項目を合わせて0点∼3点までの量的データとした。なお、これ
らのネガティブな選択項目は質的調査から得られた結果をもとに作成した。
ここでは高級ブランドの有無なので、問3の選択項目の「持ってはいないが、今後購入
したい」と「高級ブランドを持っていない」をまとめた。そして高級ブランドの有無と得
点化し量的データにした「古着屋への抵抗」とでt検定をした。その結果が以下の通りで
ある。
- 15 -
表 3-3-1-1 高級ブランドの有無と古着屋への抵抗のt検定の結果
平均値
標準偏差
平均値の
t値
標準誤差
有意確率
(両側)
高級ブランドを
持っている人
1.181
0.983
0.171
持っていない人
0.697
0.764
0.094
-2.699
0.008
t検定の結果、有意確率が 0.008 となり、有意水準1%で帰無仮説は棄却された。よっ
て高級ブランドを持っている人と持っていない人とでは、古着屋に対する抵抗という点に
おいて差があるという結果が得られた。そして平均値を見ると、高級ブランドを持ってい
る人のほうが高級ブランドを持っていない人に比べ「古着屋への抵抗」が大きい。よって、
高級ブランドを持っている人のほうが持っていない人に比べて古着屋に抵抗があるという
結果が得られた。高級ブランドを持っている人は、モノを測る基準として「高級感」
、言い
換えると「希少性」
、
「差別化」、
「厳かさ」などが大きなウェイトを占めていると考えられ
る。しかし、古着は質的調査として行ったインタビュー調査において、幾度か「どうせ古
着だから・・・」というような発言があり、古着のその人における貴重さという点では低
いように思われる。このように古着屋は一度他の人たちが着ていた服ばかりがあり、先に
挙げた「希少性」、
「差別化」、
「厳かさ」という要素が低いという特徴がある。
仮説「高級ブランドを持っている人は古着屋に抵抗がある」が支持された。
3−3−2
「古着を買う人は自分のファッションの幅を固定しない人である」
次に「古着を買う人は自分のファッションの幅を固定しない人である」を検証する。今
回「自分のファッションの幅を固定しない」を先取性、開放性の二つの尺度で測ることに
する。
この検証では古着購入者数割合の項目であるアンケートの問12と先の開放性、先取性
の二つの尺度を用いる。古着購入者数割合と開放性、古着購入者数割合と先取性をt検定
した結果が以下の通りである。
- 16 -
表 3-3-2-1 古着購入者数割合と開放性古着購入者数割合と先取性
平均値
標準偏差
平均値の
t値
有意確率
1.143
0.256
0.538
0.592
標準誤差
開放性
古着を購入
進取性
する人
10.580
2.139
0.302
しない人
10.041
2.541
0.363
する人
11.360
2.776
0.393
しない人
11.082
2.353
0.336
古着を購入
まず開放性について見ると、
平均値は古着を購入する人が 10.5800、購入する人が 10.0408
となりほとんど差がない。またt検定の結果、有意確率が 0.256 となり古着購入者数割合
は開放性という点において差はないという結果になった。
次に進取性について見ると、平均値は古着を購入する人が 11.3600、購入しない人が
11.0816 となりほとんど差がない。またt検定の結果、有意確率が 0.592 となり古着購入者
数割合は進取性という点においても差はないという結果になった。古着屋には様々なジャ
ンルの服が置いてあるため、古着を購入する人とは開放性と進取性が高い人であり他には
なさそうなもの、あるいは普段着る服とはジャンルが異なったものを期待して古着屋へ行
くと予想した。しかし古着を購入する人と購入しない人とで開放性、進取性それぞれ平均
値に差はないという結果から予想がはずれ、開放性や進取性は特に古着を購入する人の要
素ではないという結果となった。
仮説「古着を買う人は自分のファッションの幅を固定しない人である」は支持されなかっ
た。
3−3−3
「認知的失敗の低い人は古着を買いに行く頻度が高い」
次に「認知的失敗の低い人は古着を買いに行く頻度が高い」を検証する。この検証では
認知的失敗の尺度と古着屋に行く頻度を測る問10を用いる。
まずは認知的失敗の尺度と問10とで相関分析をした。その結果が以下の表の通りであ
る。
表 3-3-3-1 認知的失敗の尺度と問10の相関分析結果
古着屋に行く頻度
古着屋に行く頻度
認知的失敗
1
-0.650
相関係数
0.526
有意確率
N=99
相関係数が-0.65 と、予想に反して負の値が得られた。しかし、有意確率が 0.526 であり、
古着屋に行く頻度と認知的失敗との間に有意な差はないという結果となった。よって、認
- 17 -
知的失敗の低い人ほど古着屋に行く頻度が高いとは言えないという結果が得られた。これ
は、雑多に展開されている古着の中から自身が気に入るようなものを探すことを苦手とす
る人と得意とする人とに分けられるが、苦手だからといって自分が気に入るものを探した
くない、つまり古着屋に行かない、というわけではないということだろう。
仮説「認知的失敗の低い人は古着を買いに行く頻度が高い」は支持されなかった。
仮説が棄却されてしまったので、次に古着を買いに行く頻度ではなく、そもそも古着屋に
行く人の認知的失敗の程度と、古着屋に行かない人の認知的失敗の程度に差があるのかを
見ていくことにする。そこで、古着屋に行くか行かないかを「古着屋利用者割合」と呼ぶ
こととする。古着屋利用者割合と認知的失敗とでt検定をした結果が以下の表の通りであ
る。
表 3-3-3-2 古着屋利用者割合と認知的失敗とのt検定結果
平均値
標準偏差
平均値の標
t値
有意確率
0.810
0.420
準誤差
古着屋に
行く人
8.763
2.292
0.298
行かない人
8.375
2.404
0.380
古着屋に行く人の認知的失敗の平均値は 8.7627、古着屋に行かない人の認知的失敗の平
均値は 8.3750 となりほとんど差がなかった。有意確率をみても 0.420 であり、古着屋利用
者割合と認知的失敗の間においても有意な差がないという結果が得られた。つまり、古着
屋に行く人ほど古着屋に行かない人に比べて認知的失敗が低いといえないということであ
る。
- 18 -
第4章
4−1
結論
本研究における結論と今後の課題
本研究の目的は、古着購入者がどうして古着を購入するのかという購入動機や購入者の
特徴を調査し、古着需要者の姿をより明確にすることであった。ここでは第 3 章の結果を
振り返り、その目的に沿う形で再び考察をしていく。
まずは古着購入と人々の実態との関係をみていく。実態において性別、車の所持、1ヶ
月に自由に使える金額は古着の購入との関係性は薄いという結果だったが、住居形態のみ
有意となり一人暮らしのほうが家族と同居よりも古着を購入するということだった。この
ことから一人暮らしの人が多い地域で出店したほうが古着購入者の増加につながるといえ
るだろう。具体的に述べると、本大学のように様々な地域から人が集まってくる地域、ま
たは転勤などで一人暮らしをしている人が多いと思われる企業の多い都市部周辺である。
逆に出店を控えるべきと考えられる地域として、家族で住んでいることの多い一戸建てが
多い地域などが挙げられるだろう。または、一人暮らしの方が家族と同居よりも古着を購
入することの理由が3−2でも挙げたように古着屋が家族と一緒に行くような雰囲気でな
いとすれば、店内の雰囲気を変えることが需要者層を増やすことになるといえるだろう。
それは古着屋の幅の広がりとなり、他店との差別化にもつながる。
次に仮説1を通して、古着を購入する人と購入しない人の差異についてみていくことに
する。仮説1の「高級ブランドを持っている人は古着屋に抵抗がある」が3−3−1にお
いて支持された。抵抗があれば当然古着屋を利用しようとする機会は減る。このことから
古着屋の新たな顧客層開拓、需要者増加の手段として如何に高級ブランドを持っているよ
うな人たちの古着屋に対する抵抗を減らすかが考えられるのではないだろうか。よって、
高級ブランドを持っているような人の高級ブランドを持っていない人と比較した特異な特
徴を今後の調査で明確にし、双方にマッチした店舗作りを目指すことが期待される。それ
により先にも述べたが古着屋のあり方の幅が以前より広がり、今後古着屋の可能性がより
広がるものと考える。
このように古着屋はまだ対象となる層が限られており、まだターゲットとなる需要者層
があることがわかる。今回の調査で得られた結果をもとにしてさらなる研究、調査が行わ
れ、その結果古着屋市場がより一層の発展を遂げることを期待して本研究の結論とする。
4−2
今回の研究の問題点
今回のアンケートによる量的調査は筑波大学内の社会工学類における必修の授業で実施
したため、対象者が限定された。詳しく述べると、アンケート回答者は全て社会工学類の
生徒、また2年生ということになった。
「古着」というテーマにあたり、対象年齢は高齢者
よりも若者層のほうがファッションに敏感であり好ましいと思われるので、対象年齢が限
定される筑波大学でアンケート調査を行うことに問題はないと考えた。しかし、学類まで
限定される環境でアンケート調査を実施したことが問題かと思われる。学生は所属する学
類によりある程度学生の特徴が偏り、それがアンケート結果に反映されるということも考
- 19 -
えられる。調査にあたって事前計画の推敲が不足したことが要因である。
また3−3−3の仮説の「認知的失敗の低い人は古着を買いに行く頻度が高い」におい
ても、古着屋利用者割合と認知的失敗の関係性においても言えることであるが、そもそも
認知的失敗の尺度を構成する三つの質問項目を信頼分析した際、アルファ係数が低い値だ
った。そのことから、今回用いた認知的失敗の尺度の精度が低いと思われる。この精度の
低さが仮説の棄却という結果に影響を与えていると考えることもできる。これも調査事前
において認知的失敗の尺度を構成する質問項目選択の推敲が不足したことが原因だと思わ
れる。
- 20 -
参考文献・資料
・ 中央区郷土史同好会
http://homepage2.nifty.com/makibuchi-2/kyodoshi/69kai.html
・ 佐野淳美「OLD CLOTHES」
http://www.osaka-c.ed.jp/matsubara/kadai/27ki/kadair17.htm
・ 経済産業省 METI
http://www.meti.go.jp/policy/recycle/main/3r_policy/policy/outline.html
・ 原直樹 MRI 三菱総合研究所
http://www.mri.co.jp/COLUMN/ECO/HARA/2006/0327HN.html
・ 辻幸恵
「流行と日本人 −若者の購買行動とファッション・マーケティング」
白桃書房(2001)
・ 山本眞理子 『心理測定尺度集(1)
人間の内面を探る「自己・個人内過程」』
サイエンス社(2001)
・ 吉田富二雄
『心理測定尺度集(2) 人間と社会のつながりをとらえる「対人関係・価値観」』
サイエンス社(2001)
・ 松井豊
『心理測定尺度集(3) 心の健康を計る「適応・臨床」
』
サイエンス社(2001)
・ 堀洋道, 山本真理子, 松井豊 「心理尺度ファイル 人間と社会を測る」
垣内出版(1994)
- 21 -
謝辞
担当してくださった石井健一先生には、卒業研究のご指導を引き受けて下さったこと、
また本研究におきましても常に適切なご指導をしていただいたことを心より感謝申し上げ
ます。また、アンケート調査においても先生の貴重な講義の時間を割いてアンケートを実
施させてくださった石井健一先生、アンケートに協力していただいた方々に、深く御礼申
し上げます。
- 22 -
付録
調査に用いたアンケート用紙 (二人で共同に行ったため、本研究に無関係のも
のも含む)
社会工学類4年 日野雄一
金山浩之
連絡先:[email protected]
[email protected]
このアンケート調査は卒業研究の一環として実施するものです。回答結果は調査のためのみ使用
されるものであり、個人情報を厳重に管理し、第三者への編成および目的外使用を一切行わない
ことを約束します。ご協力お願いします。
あなたの所属と学年、年齢を記入し、性別を○で囲んでください。
(
) 学類
(
)年
男 ・ 女
【問1】
次の質問について、あなた自身にどの程度当てはまるかをお答えください。
1
2
3
4
5
頭の回転が速い
1
2
3
4
5
好奇心が強い
1
2
3
4
5
独立心が強い
1
2
3
4
5
1
2
3
4
5
色々な良い素質を持っている
1
2
3
4
5
敗北者だと思うことがよくある
1
2
3
4
5
物事を人並みには、うまくやれる
1
2
3
4
5
自分には、自慢出来るところがあまりない
1
2
3
4
5
自分に対して肯定的である
1
2
3
4
5
だいたいにおいて自分に満足している
1
2
3
4
5
もっと自分自身を尊敬できるようになりたい
1
2
3
4
5
自分は全くだめな人間だと思うことがある
1
2
3
4
5
少なくとも人並みには、価値のある人間であ
る。
- 23 -
まったく当
てはまらな
い
やや当ては
まらない
どちらとも
いえない
やや当ては
まる
当てはまる
進歩的である
目の前にあるのに見つけられないことがある
決心するまであれこれ迷うことがある
約束を忘れることがある
のどまででかかっているのに、どうしても思
い出せないことがある
私は友人と、お互いが着用している衣服の
似合いのよさについて話し合う
服装に関する新しい情報を得るために、私
は雑誌を読む
1
2
3
4
5
1
2
3
4
5
1
2
3
4
5
1
2
3
4
5
1
2
3
4
5
1
2
3
4
5
1
2
3
4
5
1
2
3
4
5
1
2
3
4
5
1
2
3
4
5
1
2
3
4
5
たとえ友人が無関心であり、また、特に着た
いと思わなくても、何が新しい流行の服なの
かを知りたいと思う
安い服であれば少しくらい気に入らなくても
買うことがある
多少値段が高くても品質の良い衣服を選ぶ
自分にとって高価な衣服は必要がないと思
う
どんなに気に入った服でも高ければ買わな
い
【問2】
次の質問について、あなた自身にどの程度当てはまるかをお答えください。
1
2
3
古いものを改造するのが好きだ
1
2
3
- 24 -
いいえ
もない
どちらで
はい
平凡に暮らすより何か変わったことがしたい
質問項目
まったく当
てはまらな
い
やや当ては
まらない
どちらとも
いえない
やや当ては
まる
当てはまる
スーパーマーケットに行って、欲しい品物が
1
2
3
いつも何か刺激的なことを求めるほうだ
1
2
3
新しいアイデアを考えるのが好きだ
1
2
3
いいえ
もない
どちらで
はい
新しいことには、すぐに飛びつく
質問項目
【問3】
あなたは、衣服、装飾品、香水、化粧品などで、高級ブランドの商品を持っていますか。当てはまる
答えに○を付けて下さい。
1、はい
2、持ってはいないが、今後購入したい
3、いいえ
1の方は、そのまま次の質問にお答えください。
2、3の方は、【問8】から回答を続けてください。
【問4】
あなたが所有している高級ブランドの商品分野を以下から選び、全てに○を付けて下さい。
1、時計
2、カジュアル衣料
5、カバン
3、フォーマル衣料
6、財布・名刺入れ
4、その他衣料(下着など)
7、その他革製品(ベルトなど)
9、宝飾品(指輪、ネックレス)
10、その他装飾品(キーホルダー等)
11、香水
13、スカーフ・ハンカチ
12、化粧品
14、その他 [
]
【問5】
高級ブランド商品は、全部で何個くらい所有していますか。
個数を[ ]内に記入してください。
[
]個
【問6】
入手方法を選び、当てはまる番号に○を付けて下さい。
1、人からもらったことが多い
2、自分で買ったことが多い
3、両方同じくらい
- 25 -
8、文具
【問7】
自分で買った経験のある方は、購入頻度を以下から選び、○を付けて下さい。
・月に一回以上
・一年に一回程度
・2、3ヶ月に一回程度
・半年に一回程度
・2、3年に一回程度
・それ以下
【問8】
次の質問について、あなた自身にどの程度当てはまるかをお答えください。
1
2
3
4
5
1
2
3
4
5
ブランド品は長く使っても飽きない
1
2
3
4
5
ブランド品は使っているうちに良さが分かる
1
2
3
4
5
1
2
3
4
5
1
2
3
4
5
1
2
3
4
5
1
2
3
4
5
1
2
3
4
5
1
2
3
4
5
1
2
3
4
5
周りの人が持っているブランド品が欲しくなる
1
2
3
4
5
話題のブランド品を持ちたい
1
2
3
4
5
ブランド品は割高だが長期間使えるので結局
は得である
ブランド品は有名だからと言うよりも品質が良
いから買う
ブランド品はデザインやスタイルがすぐには
流行遅れにはならない
そのブランドが持っているイメージが自己表
現に役立つ
ブランド品を持つことによって自分の好みを
表現できる
ブランド品によって自分のイメージやフィーリ
ングを主張できる
ブランド品を使い分けることにより自分のイメ
ージをいろいろ変えて楽しむ
日本製のものよりも海外ブランドのほうが価値
がある
- 26 -
まったく当て
はまらない
やや当てはま
らない
どちらともい
えない
やや当てはま
る
当てはまる
良いブランドであれば繰り返し買いたい
2
3
4
5
1
2
3
4
5
1
2
3
4
5
1
2
3
4
5
1
2
3
4
5
人がほとんどもっていない商品を持つのは恥
ずかしい
1
2
3
4
5
ブランド品を買うことによって商品を選ぶ手間
を省くことができる
1
2
3
4
5
ブランド品は多くの消費者が使っているので
安心して買える
1
2
3
4
5
1
2
3
4
5
1
2
3
4
5
1
2
3
4
5
1
2
3
4
5
1
2
3
4
5
1
2
3
4
5
よく知らない商品を買うのは抵抗がある
ブランド品を買っておいたほうが普及品を買
ってがっかりするよりよい
ブランド品を購入すると後悔することが少ない
だろう
周りの人が持っていないブランド品を所有し
たい
他人が持っているブランド品は持ちたくない
ブランド品が権威付けになると思うと魅力が少
なくなる気分になる
- 27 -
まったく当て
とはない
はまらない
ブランド品を選べば社会や集団から外れるこ
やや当てはま
い
らない
1
ブランド品を身につけていると優越感を感じる
ブランド品を選ぶ事で異端な人と思われにく
どちらともい
られる
えない
ブランド品を持つことでその人の価値が高め
やや当てはま
になれる
る
当てはまる
ブランド品を身につけると他の人より魅力的
【問9】∼【問13】は古着についておうかがいします。
【問9】
古着屋にどういったイメージを持っていますか。以下の選択肢の中から当てはまるもの全てに○を
付けてください。他にもイメージがあれば「その他」の欄に自由に書いてください。
1)価格が絶対的に安い
2)使われた感じのでているよい物を買える
3)様々な種類の服を見ることができ、楽しめる
4)ブランドの服を新品と比較して安く買える
5)服が雑多に置いてあり、好みの服を探すのが面倒
6)幅広いジャンルの中から服を選べる
7)使い古された服ばかり置いてあるので、店全体が汚い
8)独特の雰囲気があり、店に入りにくい
【問10】
あなたは古着屋にどの程度行きますか。以下の選択肢の中から当てはまるものに○をつけてくださ
い。
1)全く行かない
2)1年に1∼5回くらい
3)1年に5∼10回くらい
4)1ヶ月に1∼2回くらい
5)1週間に1回くらい
6)1週間に2∼3回くらい
7)それ以上
「1.全く行かない」と答えた方は【問14】、へ進んでください
それ以外の方は【問11】から続けて回答してください。
【問11】
古着を買いに行く際、友人と一緒に行く場合と、一人で行く場合、どちらが多いですか。
1)友人と行く
2)同じくらい
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3)一人で行く
【問12】
あなたは1年間に古着を何着購入しますか。以下の選択肢の中から当てはまるものに○を付けてく
ださい。
1)買わない
2)1∼5着
3)6∼10着
4)11∼15着
5)16∼20着
6)21∼25着
7)それ以上
【問13】
あなたは1年間に古着にいくらお金をかけますか。以下の選択肢の中から当てはまるものに○を付
けてください。
1)0円
2)1∼5000円
3)5001∼10000円
4)10001∼20000円
5)20001∼30000円
6)30001∼40000円
7)40001∼50000円
8)それ以上
【問14】
あなたは一人暮らしですか
1)はい
2)いいえ
【問15】
あなたは車を持っていますか。
1)はい
2)いいえ
【問16】
あなたが一ヶ月に自由に使える金額(食費含む)はどの程度ですか。当てはまるものを○で囲んで
ください。
1)4万円以下
2)4∼6万円
3)6∼8万円
4)8∼10万円
5)10∼12万円
6)12∼14万円円
7)14∼16万円
8)16万円以上
◆アンケートは以上です。調査にご協力いただき、ありがとうございました。
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