資料3 - 日本医師会

資料3
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2015.10.19
9:
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欧⽶に洗脳された⽇本の経営者
公益資本主義を説く原丈⼈⽒に聞く
2015年2⽉19⽇(⽊) 池松 由⾹
「多くの経営者が考える善い会社の定義は間違っている」
こう断⾔するのは、⽶シリコンバレーで活躍するベンチャーキャピタリストの原丈⼈⽒だ。デフタ・パートナーズの
グループ会⻑を務める傍ら、アライアンス・フォーラム財団の代表理事として、バングラデシュやザンビアといった発
展途上国の⼈々を経済的⾃⽴へと促す活動にも携わる。また、「公益資本主義」を提唱していることでも知られる。
こうした活動を通して世界各国の政財界⼈と親交の深い原⽒に、グローバルの視点から⾒た「善い会社」の定義につ
いて聞いた。
(聞き⼿は池松 由⾹)
会社は株主だけのものなのか?
⽶国をはじめとする欧⽶諸国では、「会社は株主のものである」と考える、いわゆる株主資本主義が跋
扈している。⽇本の経営者の多くも、この考え⽅に洗脳されているのが実情だ。だが、私はこの考え⽅は
間違っていると思う。
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「⽇本だからこそ、『善い会社』を世界に発信で
きる」と原丈⼈⽒は語る(写真:村⽥ 和聡)
メディアも悪い。ここのところ、ROE(⾃⼰資本利益率)の⾼い会社をもてはやす傾向にある。過去
には、ROI(投下資本利益率)、ROA(総資産利益率)にEPS(1株当たり利益)…。その時々で様々な
指標を持ち上げてきた。これらの指標は、時代とともに移り変わる⼥性のスカート丈と⼀緒。あくまで
「流⾏」にすぎない。
では、会社は誰のものなのか。誰に対して利益をもたらす会社が「善い会社」なのか。例えば、こんな
会社が⽶国にあった。
その会社の経営トップは、社外からやってきたある⼈物。トップに就任するや独⾃路線で経営を推し進
め、競合他社の買収を決⾏。過去最⾼益も達成した。「わが社はベストカンパニー。証券アナリストの評
価もトップクラス」と誇らしげだった。その直後、その経営者はこんな決断をした。
「⼈員削減を実施する」
株主利益を拡⼤するためだ。この会社とは2000年代前半の⽶ヒューレット・パッカード(HP)、時の
経営者はカーリー・フィオリーナ⽒だ。
こうした発想は少なくとも⾼度成⻑期の⽇本にはなかった。たとえ特定の社員の⽣産性が低かったとし
ても、過去最⾼益を達成した直後に社員をクビにしようなどと考える経営者はいなかった。むしろ、経営
が厳しくても雇⽤を守ろうとする経営者の⽅が多かった。
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過去最⾼益でも社員をクビにする会社と、苦しい状況でも社員を守ろうとする会社とでは、どちらの⽅
が善い会社なのだろうか。
ステークホルダーではなく「社中」
株主資本主義では、当時のHPのような会社を「グッドカンパニー」と⾔う。しかし、私は⾼度成⻑期
の⽇本企業のような会社を「善い会社」と考える。この善さを定義する考え⽅として、私は「公益資本主
義」を提唱している。
公益資本主義では、株主だけではなく、社会全体に広く利益を還元する会社を⾼く評価する。
ここで⾔う社会とは、株主に加えて従業員、顧客、取引先、地域社会、さらには地球全体のことを指
す。株主資本主義では株主のみに利益を還元するが、公益資本主義ではこれらの構成要素すべてにまんべ
んなく利益を還元する。
ここで注意しなければならないのは、社会の構成要素を「ステークホルダー(利害関係者)」と位置付
けてしまいがちな点だ。だが、私はそうは思わない。彼らは「社中」。共通の⽬的を持つ仲間だ。
会社は現代の資本主義社会において最も重要な役割を果たす経済ユニットであることは間違いない。そ
の会社が、社中のうち、株主だけに貢献するのでは社会全体が善くなるはずがない。やがて⼀部の富裕層
だけがどんどん富を得て、ボディーガードなしでは表を出歩けないようになるだろう。そんな社会はいず
れ疲弊する。
株主資本主義が主流の⽶国ではこんなことが起きる。
5〜6年前のことだ。私はチャールズ・ホリデー⽒が⽶デュポンのCEO(最⾼経営責任者)だった頃、
「デュポンも東レのように炭素繊維事業を続けてはどうか」と勧めたことがある。
炭素繊維を⼿掛ける東レは2014年11⽉、⽶ボーイングから新型機の主翼向けに炭素繊維製の材料を受
注した。その供給期間は10年間。⾦額にして1兆円を超えると⾔われる。この事実を⾒ても、私の考えは
あながち間違っていなかったと思う。
ところが当時、彼からはこんな答えが返ってきた。
「炭素繊維事業は45年間(当時)も⾚字が続いている。もしCEOである私がそんな事業に投資し続け
たいなどと主張すれば、株価は下がり、株主は取締役全員を解任するだろう」
私はこの時、世の中が株主資本主義である以上、中⻑期的な視点で経営することのできないつらさを彼
から感じ取った。経営者が株主資本主義の⽋点を分かっていたとしても、環境が変わらなければどうする
こともできないのだ。
善い会社の⼿本を⽇本から
ではどうすればいいのか。
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私はまず、⽇本が公益資本主義を実践し、世界に発信していくのがよいと考えている。かつての⽇本に
は、公益資本主義的な発想を持つ経営者が数多くいた。今でも⽇本には、公益資本主義を実践するための
⼟壌があると考える。
2012年に東京で開かれた国際通貨基⾦(IMF)・世界銀⾏の年次総会。そこで私は、発展途上国を中
⼼とする各国の財務⼤⾂や中央銀⾏総裁を連れて東京⾒物に出掛ける機会に恵まれた。私は鉄道好きなの
で、⾃動⾞から⾒る⾵景だけではつまらないだろうと、⼤⾂ら8⼈ほどを連れて、⼭の⼿線に乗って有楽
町に⾏き、地下鉄丸の内線のホームも案内した。
すると、その中の⼀⼈がこう⾔った。
「アジアで勢いがあるのは中国だと聞いていたので、東京ではなく北京にばかり⾏っていた。この機会
に初めて⽇本を訪問し、⼼底、驚いている。景気が悪いと聞いていたのでさぞ暗い国かと思いきや、現実
は全く違う。空気はきれいだしゴミも落ちていない。交通の秩序もあり、電⾞に乗る⼈はきちんと降りる
⼈が出てくるのを待っている。こんなにいい国は⾒たことがない」
⽇本の国としてのクオリティーは、グローバルの視点から⾒ても⾮常に⾼い⽔準にある。何も、欧⽶諸
国の考え⽅をそのまま受け⼊れる必要などない。⽇本は⽇本独⾃の発想で、経済を動かしていけばいいの
だ。
そのためにも、社会の最も重要な経済ユニットである会社を、正しく評価できる指標を作るべきだろ
う。ROC(return on company)とでも⾔おうか。
株主資本主義で重視されているのはROEだが、株主の視点だけでは不⼗分だ。従業員への貢献度を⾒
るなら、給料や福利厚⽣、教育なども考慮すべきだろう。顧客なら製品やサービスの安全性、取引先なら
取引価格といった具合に、すべての社中に対して貢献できているかどうかを表せる指標が要る。
こうした考えに基づいて私は、名古屋⼤学⼤学院多元数理科学研究科の宇澤達(うざわ・とおる)教授
と共に、数式を組み⽴ててROCを作れないかを検討している最中だ。
すべての社中に平等に利益を分配する。時間やコストのかかる研究開発事業でも、社会に必要とされる
ものであれば実施する。そんな善い会社を⽇本でたくさん⽣み出し、世界基準に育てられれば、世界はも
っと豊かになる。
善い会社 2015年版 いま必要とされる100社ランキング
会社とは何か。単なる「営利組織」という定義は、もはや通⽤しなくなりつつある。働き⼿、顧客、取引
先、地域社会、投資家──。多様な利害関係者のすべてに、持続的にプラスの影響を与える組織。いま必
要とされるのは、利益の向上と社会への貢献が⼀体化した「善い会社」だ。その会社とはどこか。全上場
企業から本誌が選んだ上位100社を紹介しよう。
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トヨタ「元本保証」株で⽬論む資本主義のカイ
ゼン
豊⽥社⻑が本誌に語った理想とは
2015年6⽉22⽇(⽉)熊野 信⼀郎
株主からの要求が⼀段と⼤きくなり、ROE(⾃⼰資本利益率)などが低ければ容赦なく「社⻑失格」の票が投じら
れる今年の株主総会。⽇経ビジネス6⽉22⽇号の特集「株主“騒”会」では、株主のプレッシャーを受けてにわかに動き
出した企業や、アベノミクスの思惑に乗る投資家の動きをレポートした。
総会シーズンはこれからピークを迎えるが、序盤戦で最も⼤きな話題となったのが、6⽉16⽇のトヨタ⾃動⾞の総
会で承認された新型株式の発⾏を巡る議論だ。実は豊⽥章男社⻑は昨年、株主との新たな関係や資本主義のあり⽅に
ついて、本誌のインタビューで語っていた。その発⾔からは、なぜ新型株式の発⾏に踏み切ったのかの真意が読み取
れる。
「理想に⼀番近いのは公益資本主義」。
「理想に⼀番近いのは公益資本主義」。
1年前、トヨタ⾃動⾞の豊⽥章男社⻑は本誌のインタビューでこう語った。⽬先の利益や台数を追うの
ではなく、あくまで中⻑期での成⻑を追求するトヨタの考え⽅を、どのようにして株主や市場に理解して
もらうつもりかを聞いた時のことだ。
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1年前、⾃らが理想とする資本主義の姿を語っていた豊⽥章男社⻑(撮影:早川 俊
昭)
「公益資本主義」。これは、株主価値の最⼤化だけを⽬指すのではなく、従業員や地域、取引先など幅
広いステークホルダーを重視し、雇⽤や納税を通じて報いるという考え⽅だ。1935年、トヨタグループ
の創始者・豊⽥佐吉の5回⽬の命⽇に、グループ全体の指針として「豊⽥綱領」が発表された。その最初
の項⽬にある「産業報国」の考え⽅に近い資本主義のあり⽅と⾔える。
そして豊⽥社⻑はこう続けた。「株主こそがステークホルダーという原理資本主義の考え⽅が、⽶国で
も変わってきた。ハーバード・ビジネススクールでも、コンシャス・キャピタリズム(意識の⾼い資本主
義)といった考え⽅が出てきている。リーマンショック以降、中⻑期的な⽬線を持たない限り、短期の結
果も出ないということに気が付き始めたのではないか」
「コンシャス・キャピタリズム」の考え⽅は公益資本主義の概念とほぼ同じだ。利益の追求よりも⾼い
⽬的を掲げ、顧客や従業員、投資家、地域など幅広いステークホルダーの繁栄を⽬指すというもの。⽶国
の⾷品スーパー、ホールフーズ・マーケットが1つのモデルとなっている。
昨年5⽉の決算発表の会⾒で、豊⽥社⻑は「意思ある踊り場」と発⾔した。やみくもに⽣産台数を追わ
ない。持続的成⻑を遂げるために、クルマの開発プロセスや⼯場の投資効率、エンジニアの働き⽅など社
内のあらゆる活動を⾒直すという決意表明だった。その中の1つのテーマとして、「株主との関係」もあ
った。昨年後半から検討が始まった新型株式の発⾏は、株主との関係、そして資本主義のあり⽅そのもの
を「カイゼン」する試みでもある。
愛知万博の教訓
総会での可決を受け、トヨタは7⽉にも上限を5000万株として⼀回⽬の発⾏をする予定だ。
トヨタが発⾏する「AA型種類株式」は、従来の株式とはさまざまな条件が異なる。普通株の2割以上⾼
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く株価を設定し、株式総会における議決権は付与される。⾮上場なので原則的に株価は変動しない代わり
に、発⾏から5年間、段階的に配当額が増えていく。
取得から5年後以降に、普通株に転換するか、または発⾏価格でトヨタに買い取りを求めることが可能
となる。元本保証の意味合いも持ち、⻑期保有するほどメリットが出る。主に国内の個⼈株主の獲得を想
定したものだ。こうした普通株式とは違う「種類株」を発⾏するケースは⽇本でも数えるほど。再建企業
が資本増強のために発⾏する、配当が優先的に⽀払われる「優先株」などに限定されていた。
トヨタは⻑期保有を前提とする株主を確保し、これまで踏み切れなかったことを実⾏に移そうとしてい
る。
1つは⽇経ビジネス6⽉22⽇号の特集でも触れたように、未来技術の研究開発の強化だ。⾃動運転技術
に必要なセンサーやソフトウェア、⼈⼯知能(AI)など、これまで⾃動⾞メーカーとして研究開発のメ
インテーマに⼊らなかった領域を⼿がける必要性が⽇増しに⾼まっている。
2014年度、トヨタの研究開発費は初めて1兆円の⼤台に乗った。しかしこれまではその約9割が、既存
⾞種のモデルチェンジなどに向けられていた。新興国など市場が多様化する中でモデル数が増え、さらに
クルマの電⼦化でソフトウェアの開発負担は増加。こうした流れに対応するべく、資⾦も⼈材も⼿⼀杯な
状態が続いてきた。
⼀⽅、次世代技術の開発競争は激化している。先⾏開発にどう取り組むか。持続的成⻑には極めて重要
だが、トヨタには過去のトラウマがある。「リーマンショック後、研究開発費の削減を迫られる中で真っ
先に対象になったのが、いつ成果が出るかが⾒えにくい先⾏開発分野だった」とトヨタ関係者は⾔う。
2005年に開催された愛知万博で、トランペットなどさまざまな楽器を演奏して主役となった⼆⾜歩⾏
の「トヨタ・パートナーロボット」。今年3⽉、電⼦部品の⼊⼿が困難になったとして、最後の⼀体が引
退した。ソフトバンクが市販を始める「ペッパー」など、これからロボット市場が⽴ち上がろうとしてい
るにもかかわらず、せっかくの開発成果をうまく活⽤できていない。
同じことを繰り返してはならない。しかし、最先端技術のショーケースにもなる2020年の東京五輪と
いう⼤イベントを控え、愛知万博の⼆の舞を演じる可能性がある。そこで⽣み出されたのが新型株式だ。
独⾃の株主優待も
では、実際に調達した資⾦をどのように使おうとしているのか。1つが、新たな開発⼈材の獲得だ。新
しい材料や⼈⼯知能のような、先端研究分野で、これまでトヨタの中では⼿薄だったエンジニアの採⽤に
動く考えだ。
もう1つが、異業種との連携だ。⽇産⾃動⾞と⽶航空宇宙局(NASA)が⾃動運転⾞分野で提携するな
ど、⾃動⾞産業ではこれまでとは違う分野のパートナーと組む動きが進んでいる。⻑期的な開発資⾦を確
保することで、トヨタも異業種と組みやすくなる。
また、新型株式の保有者を対象に、何らかの株主優待を実施することも可能になる。現在、トヨタは株
主優待を実施していない。2014年3⽉時点の株主数が61万。個⼈から機関投資家まで、その実態と国籍
10
はバラバラで、株主優待を平等に実施することは難しい。
新型株式は譲渡制限が付けられており、⻑期保有しているホルダーを特定することが可能になる。⻑期
保有のインセンティブをさらに⾼めるために、株主優待の新設も検討する。
新株の発⾏はトヨタがこれまでできなかったことに取り組む契機となるが、⼀⽅、総会で75%の賛成
率しか得られなかったことも事実。「トヨタの意図は理解できるが、⼀般の投資家が短期志向であること
を前提としているようで、釈然としない」(市場関係者)との声も多い。
新型株式の主な対象は国内の個⼈投資家となる。発⾏済株式総数の5%という上限があるとはいえ、そ
の保有者の多くが⽇本、さらにトヨタの本拠地である東海地区に偏っていては、⽬指すべき「公益資本主
義」の「公益」の範囲が狭まってしまう。
トヨタは将来的な数値⽬標を⽰さないため、「成⻑戦略が⾒えにくい」との声がついて回る。⻑期的な
戦略や経営の考え⽅をより分かりやすく説明し、この新型株式のホルダーを多様化するための投資家向け
広報(IR)にもカイゼンが求められる。
株主騒会
株主総会のシーズンがピークを迎えている。今年はその光景がガラリと変わった。株主はROE(⾃⼰
資本利益率)や配当などの株主還元策、ガバナンスの体制などに⽬を光らせ、満⾜しなければ容赦なく
「社⻑失格」の票を投じる。企業は株主とどのような関係を築いていくべきか。話題を集めている企業ト
ップやキーマンのインタビューなどを掲載する。
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11
12
www.allianceforum.org
アライアンス・フォーラム財団 代表理事
内閣府参与
原 丈人
日本で新産業創出の仕組みを作れ
公益資本主義と成長戦略
自民党国家戦略本部で話した指針
原 丈人
George Hara
アライアンス・フォーラム財団 代表理事
デフタ・パートナーズ グルー プ会長
内閣府本府参与
21
1952 年 大 阪 府 生 ま れ。 慶 應 義 塾 大 学 法 学 部 卒 業 後、
考古学研究を志し中央アメリカへ。スタンフォード大学
経 営 学 大 学 院、 国 連 フ ェ ロ ー を 経 て 同 大 学 工 学 部 大 学 院
を 修 了。 主 に 情 報 通 信 技 術 分 野 で 新 技 術 を 創 出 す る 企 業
の育成と経営に注力し、シリコンバレーを代表するベン
チャーキャピタリストとなる。ポスト・コンピュータ時
代の新産業を先導するだけではなく、新技術を用いた新
興国の支援など幅広い分野で積極的な提言と活動を行っ
ている。 国連政府間機関特命全権大使、アメリカ共和党
ビ ジ ネ ス・ ア ド バ イ ザ リ ー・ カ ウ ン シ ル 名 誉 共 同 議 長、
政府税制調査会特別委員、財務省参与を歴任。
﹃ 世紀の
国富論﹄︵平凡社︶
、
﹃新しい資本主義﹄
︵PHP 新書︶な
ど著書・論文多数。
21
1
日本がこれから成長し続けていくための戦略を、二つの観点から考えたい。
第 に、 世紀の経済成長を支える資本主義の仕組みは、本来どうあるべきかという観点である。欧米型の金
融資本主義に沿った企業のあり方が、成長を阻む要因になってきた。ステークホルダーに対する利益分配、コー
ポレート・ガバナンス、社外取締役の役割や扱いなどが、中長期的な成長を考える上での大きなテーマになる。
︶ に 代 わ る 新 し い 企 業 価 値 に つ い て 議 論 す べ き 時 期 に き て い る。 こ う し た 議
2
/
%
さらに、自己資本利益率︵
論を踏まえた上で、日本の成長戦略はいかにあるべきかを考える。
21
2
に、 世紀は新興国の時代になるという観点である。アフリカ、アジア、ラテンアメリカなどの新興国が、
第
世界経済に大きな影響を及ぼすようになった。これらの国や地域とどのように付き合っていくべきなのか考えた
い。
会社は誰のものか
億 円 の ボ ー ナ ス を 受 け 取 っ た。 日 本 人 の 感 覚 で は 、 経 営 陣 の 行 為 は 、 許 さ れ
ないことに見える。しかし、米国では、同様のことが日常的に起きる。
人の従業員を削減し、同時に経営陣はボーナスをもらった。
1
ズ銀行が、 万
年春にも、英国のバークレイ
れた。その結果、経営陣は
なぜこのようなことが許されるのか。私が米国の財界の会議などでこうした例を批判すると﹁あなたは共産主
義者か﹂と言われる。米国人の理屈は、
﹁会社は株主のものだ。従業員の給与は会社の負債。負債を軽減した経
営陣にボーナスを出すことのどこが悪いのか﹂というものだ。そして社外取締役は﹁わが社の経営方針は、他の
13
003 公益資本主義と成長戦略 × 原 丈人
年、経営危機に陥ったアメリカン航空が、従業員に対して
億円の給与削減を求めた。当時は、
ユナイテッド航空やデルタ航空も経営不振の真っただ中にあった。このため、従業員はこの給与カットを受け入
004
米国企業と同様に市場のルールに基づいて設計されている﹂と言う。経営陣が株主の利益を損ねているか否かを
監視することが、社外取締役の仕事だと言うのだ。日本でも社外取締役の重要性が話題に上る。しかし、アメリ
カン航空の事例で、会社のガバナンスがおかしいと指摘しないような米国流の社外取締役を簡単に導入すること
は危険だ。
1
経済財政諮問会議では、会社は誰のものか再定義した。従業員、顧客、地域社会、地球、取引先、株主など会
社を構成しているすべてのものであるとした︵図 ︶。そして、さまざまなステークホルダーへの適切な利益配
分に経営陣が努めているかを監督するのが、社外取締役であるとした。経済財政諮問会議に参加しているメンバー
で、こうした議論を進め、政府で採択したのは日本が世界で初めてである。これを見て、ドイツ、オーストリア、
21
スイスといった国々は拍手喝さいした。私たちは、こうした考え方を重視し、 世紀型の資本主義として、日本
が世界に対して実例を示していくべきだろう。欧州や米国の中でも、これに賛同する人は増えてきている。
株主は短期の
けだけを重視する
これでは、実際、投資家側から見た
1
︵インターナル・レート・オブ・リターン︶というファンドのパフォー
)
2
2
3
5
10
億円
会社は株主のものだという考え方はおかしい。例えば会社が株主のものであるとすれば、 年で
のリターンを得るよりも、 年、 年、 年といったようにできるだけ短い期間で株主利益を出すほうがよくなる。
マンスを図る指標は、同じ利益を出す場合は短ければ短いほど高くなるようにできているのだ。したがって、ファ
ンド・マネージャーからすると、長期間の研究開発や製造を伴うビジネスモデルは、良いモデルではないことに
なる。結果として、米国や英国で一番
けている産業は、ヘッジファンドやアクティビストなど投機的な金融機
14
36
005 公益資本主義と成長戦略 × 原 丈人
図 1 会社は誰のものか? ∼社中(ステークホルダー)
とは?∼
1
関になる。米国では、金融機関などの投機的なものに従事する %の会社が、全資産の %を持つという富の偏
006
在が起きている。
会社は株主のものと説く株主資本主義を徹底して追求すると、金融資本主義に至る。金融資本主義の特徴は、
勝負が早くつくが、勝負の結果は独り勝ちで残りの参加者はすべてをなくすことにある。このようなゲームを、
人が
1
3
分以内で
1
万円を出してじゃんけんゲームをすると、
人はすべて失う。ゼロサムゲームのルールの下では、ごく少数が一人勝ちして、
99
万円を手にし、残りの
人
1
人が
ゼロサムゲームと呼ぶ。例えば
残りはみんな貧乏になるので富の二極分化を生み出すギャンブル性を持っているのだ。
'
$
0
など
金融資本主義は、米国には信奉者が多いのだが、長期間にわたって米国経済を劣化させていく。
の統計値は上がっても、国民の生活はどんどん劣化していく。ニューヨーク証券取引所での平均株式保有期間は、
年も保有しなくなった。今では、スーパーコンピュータ
1
年には
年間だったが、
8
年には約
を使った超短期のトランザクションが導入され、平均持ち株時間は何分なのか何秒なのか測りようもないくらい
だ。実体経済から金融経済に主体が移るとゼロサムゲームが起動してきて、中間階級層がどんどん減ってくる。
年にかけて %減っている。こ
12
年から
代 男 性 の 年 間 収 入 の 中 央 値 は、
30
実 際、 中 間 階 級 層 の
の期間は、米国経済の実質成長率が欧州や日本の経済成長率を凌駕していた時代だったにもかかわらずだ。
倍﹂といい、経営者階級は﹁
14
#
%
/
50
と従業員の給与の格差は、労働者階級側は﹁
国の
#
10 %
/ 1
、 社 長 の 報 酬 の 中 央 値 は、
年
一方、富裕層は急速に金持ちになっている。米国の上位 社の
年 代、
年 代 と ウ ナ ギ 登 り に 上 が り、 今 や 億 円 で あ る。 米
頃まで約 億円だった。これが、
倍﹂という。
15
日本は 倍から 倍だ。このような格差が生まれてきたのも、金融資本主義がもたらすマクロの影響が実体経済
を脅かしているからである。
自国ルールを押し付ける米国にどう立ち向かうか
4
0
0
に並ぶ
こうした状況下、経済財政諮問会議では、会社の所有者を再定義した。これに対して米国は、
年に発行した外国貿易渉外報告書の中で、﹁日本は株主の
日米並行協議の中、そして米国通商代表部が
利益をより重視した会社法に改正してほしい﹂と訴えた。同時に、対日直接投資円滑化などの規制緩和策の実施
も盛り込んだ。
1
この要求を聞いて、日本の政治家や経済学者、経営者は、悪い提案ではないと感じた人が多い。しかし、米国
年から
年の間に、﹁従業員の給与を 割削減するならば、
の要求を飲むと大変なことになる。
経営者はそれ以上削減するのが当たり前﹂といった現在の日本企業経営者の伝統的な考え方が、会社法違反になっ
年の会社法改正で、米国版
てしまう可能性すらあるのだ。日本の会社法は、米国の影響を受けつづけ
のほぼコピーになったといってもいい。にもかかわらず、経営者がいまだに日本的伝統と慣習のもとに経営をす
ることを許す曖昧さがあるのは、けしからんというのである。
月に規定されている。実際に日米間の国際法となれば、会社法で定めている日本
5
年
の慣行と、新しく日米間の条約などで判断される指針が、相反するものになる。こうなった時、米国は、日本の
項を持ち出すことになるだろう。日本国の国内法が国際法と矛盾した場合、国際法は国内法に優先
2
条第
98
憲法
するという憲法規定である。
米国の中枢にとって、現在こだわっているように見える農産物や自動車の関税などは、政治ショーとしての位
置づけはあるものの、実はそれほど重視していないと思われる。本当の狙いは、日本が蓄えたお金を米国へ流す
ための仕組み作りである。米国政府は、自国のルールを、日本だけではなくアジア太平洋諸国に広めようとして
15
007 公益資本主義と成長戦略 × 原 丈人
4
0
0
が批准されると、自動的に日米間の条約、国際法となる。こうした手続き上の取り
日米並行協議は、
決めが、すでに
008
いる。グローバル化とは米国のルールに世界を従わせることであり、米国のルールに従い普及する人たちを、グ
ローバル人材と呼んでいる。一般に、グローバル人材の育成は、ビシネススクールで行われている。
目指すべき新しい資本主義のルール
2
/
%
2
/
%
株主の利益とは、株価の上昇による時価総額の最大化と配当金である。そして、株価と最も相関関係の高い指
だ。
は、株主が投入した資金に対してどれだけのリターンが上がっているかを示す。しかし
標が
会社の経営は株主のためだけにあるのではない。会社を支えるすべての社中に利益をもたらすことが今や必然
である。社中とは従業員、顧客、株主、取引先、地域社会そして地球をも含む。食品の安全性を犠牲にすると
世紀に入り企業が独立した経済単位
21
2
/
%
を 上 げ る こ と に な る が 顧 客 や 社 会 へ は 損 失 を 与 え る こ と に な る。
として国境を越え、ますます大きな役割を果たす時代には、株主へのリターンだけでなく社中の各成員に対して
に代わる、会社の価値を測る新しい基準が必要になる。
2
/
%
利益を還元するのが経営の根幹となる。これに伴い
この考え方は、﹁企業は社会の公器﹂という本来の事業経営の在り方を反映した企業価値の計測方法ともいえる。
会社の持続性や分配の公平性などを指標として、会社の価値を決め、民間企業が世界的に活躍する時代の新しい
資本主義のルールを作るのだ。私は、この目指すべき新しい資本主義を﹁公益資本主義﹂と呼んでいる。
年初夏に、経済財政諮問会議の専門調査会では、短期だけでなく、中長期の投資を促進する制度の
検討を開始した。投機家への利益誘導に過ぎないような金融関連の規制緩和は、許すべきでない。本物の規制緩
和と利益誘導を明確に区別して、投資家にとって短期のみならず中長期の投資も意欲的にしたくなるような制度
を作っていく。中長期の投資こそが、
革新的な技術を使った事業を生み出すことになるので日本でこの流れを作っ
ていきたい。
米国では、長期で事業を考えるよりもすぐに かるビジネスに人々は群がり、投機的な金融が主流になった。
このため、新しい技術に対して時間をかけて投資をしなくなった。技術革新の聖地と言えるシリコンバレーでさ
え、短期的なリターンが期待できるものばかりに投資する。
I
0
3
私の役職の一つに、米国の有数の最先端基礎科学研究所であるソーク研究所の国際カウンシルメンバーがある。
細 胞 の 山 中 伸 弥 教 授 が 所 属 し て い る グ ラ ッ ド ス ト ー ン 研 究 所 や、 遺 伝 子 の 二 重 ら せ ん 構 造 を 解
ここは、
名
50
明したワトソンやクリックがいたコールド・スプリング・ハーバー研究所などと並ぶパイオニアと言える。
5
の研究員のうち 名がノーベル賞受賞者で、ここで生まれる新しい技術は、以前と違って投資家の資金がつかな
くなった。﹁長い時間をかけないと成果が出ないような技術に資金を回すことを、投資家が許さない﹂と言う。
米国ができないのなら、中長期の投資家が資金を出せる仕組みを日本が作り上げ、米国の基礎研究の技術を日
本で実用化していくという、大きな流れを作ることができる。これによって、米国の基礎研究機関は喜ぶに違い
年 前 は、 鉄 鋼 の
年前は繊維の時代だった。歴史は繰り返すことを思い出せば、
技術が永遠に基幹産
業として続くことはない。次の時代を担う革新的技術は、科学技術の分野ではすでに出来上がっている。しかし、
時間をかけて産業として育てるために投資する仕組みが米国にはない。一方、世界には、中長期の投資を求める
資金があることも確かだ。今これらの資金を導入しやすいような制度設計が日本でできれば、世界中の科学技術
の種が日本に集まる。そして、中長期での資金運用を考える世界の投資家の資金が実体産業をつくる為に使われ
るだろう。
16
009 公益資本主義と成長戦略 × 原 丈人
40
︶。しかし
)
4
の時代であり、シリコンバレーの時代とも言われる︵図
40 )
4
現在の基幹産業は
時 代 で あ り、 さ ら に
2
ない。
010
革新的技術の事業化を阻む時価会計、減損会計
0
5
で、資本勘定もほぼ になる。
0
して、毎年、研究開発で 億円ずつ使っていくとすると、 年目には現金勘定が
20
3
新しい技術を作り、そして事業化しようと考えるベンチャー企業があったとしよう︵図 ︶。最初に
億
億円、資本勘定が
億 円 の 超 優 良 会 社 で あ る。 そ
円を調達できたとすると、誕生当初は現金勘定が
そして、翌年には債務超過に陥る。しかし、こうした企業がさらに研究開発していくと、どんどん成長していく
場合がある。実際、米国、イスラエル、英国のデフタ・パートナーズが出資し経営陣に加わったような革新的な
技術を事業化しようというベンチャーは、このようなパターンで成長している。ところが、最近の国際会計基準
年目の段階で特別損失を出せ﹂と公認会計士や監査法人に迫られる。これ
5
に従うと、外部からの増資もむずかしくなり資金調達もままならなくなり、
年目のこの段階で会社が倒れてし
5
や減損会計や時価会計によって、
﹁
まい、結局はダメになる。新産業を中長期に生み出すための新たな企業会計基準が求められる。
革新的技術を基幹産業にするための制度設計
持続可能な成長のための国家戦略で論じるべきことは、革新的技術を使っ
第三の矢と言われている成長戦略で、
て無から有を作り新しい産業︵製造業とサービス業︶と雇用を作り出すことである。何度も言うが、お金をお金
で回して膨らますような金融業をいくら活性化しても付加価値は生まれず、実体経済を作ることはできない。し
かし残念なことに先進国では、金融経済に重点が置かれるような制度設計がすすめられるようになった結果、革
新的な技術をもとに新しい雇用と産業を生み出すための理想的な制度を整備した国は、欧州諸国でも米国でもな
17
011 公益資本主義と成長戦略 × 原 丈人
図 3 革新的技術を実用化し新しい基幹産業を創出できるような
民間からの投資の必要性
図 2 基幹産業の変遷
い。もし日本が制度設計を世界に先駆けて進めれば、世界中の中長期投資資金を引き付けることになるだろう。
012
に代わる企業価値基準の算
2
/
%
革新的技術を世界に先駆けて実用化するための税制、会計基準、企業統治、
定方法、会社法、商法などの制度設計をすることが必要だ。
現在の制度は、世界の投機家に都合が良いように出来上がっている。様々な制度が短期的な利益を求めるため
のものに集約されているならば、日本は、世界に散らばる中長期の投資資金を引き付けるような流れを作るべき
だろう。
10
30
3
20
2
10
1
経済財政諮問会議専門調査会の議論でも、中長期の投資を促すシステムとして優先株長期保有の株主に配当金
円と保有期
を優遇できる制度が提案された。 年目は 円、 年目は 円、 年目は 円、 年経てば
間に応じて配当額を増やせる制度である。議決権、株式売却益に対する課税額などでも長期投資家に有利になる
ようにできると投資家が長期に保有する理由を見出すことができる。とにかく短期、中長期とバランスよく投資
がなされるようにすることが大切なのだ。
)
#
4
巨大な雇用と新産業を生み出すような革新的な技術は、新素材から
、 生 命 科 学 と 多 岐 に 及 ぶ が、 そ の
中でも基礎研究も臨床応用研究も世界のトップを日本人が占める分野は、幹細胞研究開発の分野である。ノーベ
ル賞受賞者の山中教授などによる幹細胞分野での研究開発は、日本がリードしている。彼をはじめとし、心臓分
細胞でできた
網膜移植手術に成功した高橋理研研究ユニット・リーダーなど世界最先端を切り開く日本の研究者が
︶に集まり、そ
7
!
&
日にサンフランシスコで開かれるワールド・アライアンス・フォーラム︵
7
∼
6
月
11
年
I
0
3
野の澤阪大教授、脊椎神経分野の岡野慶大教授、血液、臓器分野の中内東大医科研教授、
こにスタンフォード大学やハーバード大学、カリフォルニア大学サンフランシスコ校などの頭脳や産業界も交え
18
4
︶。こうした分野の技術開発競
013 公益資本主義と成長戦略 × 原 丈人
図4
細 胞、 細 胞 治 療 分 野 に 関 連 し た 産 業 を 日 本 で 興 す 仕 組 み を 作 り 出 し て い く ︵ 図
での議論が幹
7
!
&
が 開 か れ た が、 井 の 中 の 蛙 に な ら な い よ う な 世 界 に 開 か れ た
7
!
&
回目の
1
日に第
15
11
月
年
て、今まで治療できなかった難病の診断、治療を行うための臨床研究の実用化の議論がなされる。
014
争は、当然米国も積極的で競争は熾烈だ。米国の研究機関は、日本の人材を引き抜き始めた。優れた頭脳が、日
本から流出しないようにすることも非常に重要になる。
治験の特区を作って最先端の薬を集める
幹細胞分野のライフ・サイエンスの分野の新産業として育成させる戦略の要素として、中長期の投資の仕組み
作りが、必要であることは述べたとおりだ。次のテーマは、幹細胞治療のみならず、アルツハイマー病、パーキ
ンソン病、ハンティントン病、筋ジストロフィーなどの中枢神経系の希少疾患などの新薬認可をどのように緩和
するかにある。
1
3
&
$
!
5
もしあなたが不治の病にかかり、医師から余命 年を宣告されたとする。そして、動物と人間では安全性が確
︵米国食品医薬品局︶が定める 段階のフェーズのうちフェーズ 完
認された薬があるとする。これは
2
了後の薬に当たる。安全性の確認が終わった段階だ。フェーズ は有効性の確認である。しかし、あなたは有効
性が確認されていなくても、ぜひ使いたいと考えるだろう。安全なことはわかっているのだから、効果があれば
2
の治験が終了するまで
3
とフェーズ
けもの、全く効かなくても害はないからだ。しかし米国では、フェーズ
3
はその薬を使えない。フェーズ は、大量の患者による副作用などを含む治験である。
を乗り切れない。その上、短期的な株主の利益を追求する資本家の行動様式により、
3
中長期のベンチャー・ビジネスには資金が出なくなった。よって、フェーズ
を迎えた米国のベンチャー企業は、
2
2
ればフェーズ とフェーズ
&
$
!
の 官 僚 的 な 仕 組 み の 肥 大 化 が 災 い し、 治 験 の コ ス ト が 数 百 億 円 か ら
億円以上
しかも、米国の
かかるようになったので、米国のベンチャー・ビジネスは、大企業からの資金援助をもとにした事業提携がなけ
1
よい薬を持っていながら、何百社という会社が倒産している。フェーズ までに巨大な額の税金を投入した研究
費も日の目を見ないことになるし産業界も発展できない。ある程度のリスクを取ってでも治療を受けたいと思う
米国国民にとっては大きな問題である。
1
こ で、 フ ェ ー ズ を 突 破 し た ベ ン チ ャ ー 企 業 に は 日 本 に 来 る こ と を 許 し 、 日 本 の 国 家 戦 略 特 区 な ど の 中 に 、
そ
安全性は確認されているが有効性は未確認の薬を使える医療機関を認定したらよい。そこには、米国ではその薬
を使えない患者と、その家族がたくさん日本にやって来て長期に滞在するだろう。自分の命を救いたい、家族の
命を救いたいという気持ちを持っている人々は、世界中にいる。米国での聞き取り調査によると、この医療機関
を中心に備えた特区には、世界から製薬ベンチャー企業が本社や工場を移すであろうし、医療従事者、研究者も
移住する。
まずは、契約に基づき、外国人にこのような特区に来て治療してもらう制度を作る。そして、日本の国家財政
に全く影響がないように、有料で、多くの外国人を治療する。成功例を出せば、メディアは﹁なぜ外国人ばかり
に利用させて、日本人に利用させないのか﹂という論調になるだろう。そして日本の世論が、多少のリスクがあっ
ても自己責任で先端治療を受ける権利が日本国民にもあると喚起するまで待って、日本人も国家戦略特区でだけ
る。
日本の将来にとって欠くことのできない途上国世界との付き合い方
次は、これからとても重要になる新興国、特にアフリカについての話をしていきたい。なぜならば、成長戦略
年までに世界人口分布は大
に と っ て 途 上 国 の 発 展 と と も に 日 本 が 発 展 す る こ と は 必 須 で あ る か ら だ。
85
15
きく変化し、日米欧露の先進国の人口は合わせても %以下になる。なんと %がアジア、アフリカ、中南米の
19
015 公益資本主義と成長戦略 × 原 丈人
許された治療を受けることができるようにすれば医療従事者も世論の追い風を受けて先端治療に臨むことができ
016
途上国世界となる。経済を考えたとき、携帯電話でも、自動車でも、住宅でも、人口の数はそれすなわち経済規
模を示す。住宅も人口以上に作りすぎると、しばらくは投機対象として値上がりをだませても必ずバブルは崩壊
する。実体経済を考えた場合、日本国、日本企業は、途上国の発展とともに歩んでいくしか道はない。今まで議
論してきた革新的な技術を使って新産業を興すことをまず日本で行い、ただちにこの流れを途上国に広く進めて
いくことが我が国の進むべき道だ。では、どのように進めていくべきなのかを論じよう。
アフリカ、アジア、中南米の新興国は、自国の開発に伴って外資を導入する場合に、米英欧にルーツを持つ株
主資本主義と、中国型の国家資本主義の二通りの考え方のうち二者択一といった選び方をする傾向がある。
︵東南部アフリカ市場協同体︶本部が置かれてい
#
/
70 %
3
!
一例を示す。アフリカ最大の自由貿易連合の
るザンビア共和国には、世界有数の銅鉱山がある。
年独立以前はユダヤ人が独占していた銅鉱山をいっ
たん国有化したものの、逆に欧米から経済制裁を受けて
年から再民営化が始まり
年 に 完 了 し た。 民 営 化 す る こ と で 会 社 は
90
世論を操る資源マフィアに屈して
年代には国は最貧国となってしまった。その後、国際
株主のものになる。株主は、概ね海外のグループである。会社は株主のもの、という原則に基づき、利益のほと
んどは海外に持ち出される。
'
$
0
経営効率が良くなるため、売上高が上がり、輸出も増える。世界銀行の統計値などを見ると、その国の輸出統
が増え、国が発展していくように見える。しかし実際には、資源がたくさん産出される国ほ
計が増え、
ど紛争問題や貧困問題が発生する。この点は、ナイジェリアや南アフリカなどの状況を見ても明らかだ。だから、
株主資本主義では新興国の人々は幸せにならない。
一方、中国の国家資本主義は、数多くの植民地を作っていった昔の帝国主義を、現代風に焼き直したものであ
る。アフリカ諸国にとっては、意思決定速度の速い中国型国家資本主義を上手に利用したつもりの国も多いが結
果的には、中国は資金援助したお金で中国製を持ち込み中国人労働者を移住させてチャイナタウンを形成し、プ
ロジェクトが終わっても中国人は残るなどの問題や、安全性についても殆ど気をつかわず、先のザンビアの例で
は安全性を無視された黒人鉱夫が中国人経営者に抗議をしようとしたのを暴動と取り違えて発砲して殺してしま
うなどいたるところで問題が起きており、歴史で経験したことと同様の結果を生んでいる。
に渡る。
.
'
/
万円が
2
カ所設置して経営している。
には株主がいないため、
万円のすべてが教育や医療に使えるという仕組みだ。
. '
/
この
万円出た場合、
もしも、税引き後利益が
カ所、クリニックを
は、学校教育を 万
.
'
/
︶。
5
にした。︵図
. .
'
'
/
/
2
そこで、私は、﹁公益資本主義﹂という考え方を新興国に転用したモデルを、バングラデシュで作った。私の
︶に持ってもらうよう
率いるデフタ・パートナーズが、通信会社を作る際、株式の 割を非政府組織︵
万 円 で は 大 き な 違 い が あ り、 同 じ 経
万円と
2
万 円 程 度 し か 社 会 貢 献 に 使 え な い。
2
%の
1
万円の
8
#
3
2
で な け れ ば、 ど う な る の か。 米 国 型 の 株 主 資 本 主 義 に も、 企 業 の 社 会 的 責 任︵
︶と
株主が
万 円 の 税 引 き 後 利 益 の う ち 割 は 配 当 で 取 ら れ る。 こ の た め、 残 り の
い う 考 え 方 が あ る。 し か し、
営を行っても効果に大きな違いが生じる。このようなやり方で新興国に進出するモデルを作ったところ、日本の
を皮切りに途上国に進出したいと意思表明した。こうした運動を、これから発展させていきたい。
21
途上国世界は、 世紀には、先進国に代わり世界経済のエンジンへと大きく発展していく。しかし、人口が増
えて経済が発展しても株主資本主義や、国家資本主義を標榜していたのでは、貧富の差はますます拡大し貧困層
が圧倒的な人口を占めることになる。これでは非常に不安定だ。
そこで公益資本主義的な経済発展の思想をもってして途上国の抱える貧困問題を官民連携で解決する仕組みを
提起したい。貧困問題を解決するのは、栄養不良問題、教育・医療、そして経済的自立化の三つのテーマを克服
︶
6
することが肝要である。
︵図
20
017 公益資本主義と成長戦略 × 原 丈人
社が、公益資本主義推進協議会のもとに集まり、このモデルを手本にしてアジア圏
中小企業を中心に約
018
8
途上国で真っ先に取り組むべきことが栄養不良の改善である。これは国際連合のミレニアム開発目標 項目の
年までに、栄養不良または飢餓によって死亡する幼児の数を三分の一に
一つとして挙げられている。
年に確認された。
減らす目標である。ところが、この目標が実現できそうもないことが、
5
私たちアライアンス・フォーラム財団は、ザンビア共和国において、 歳までの子どもたちの栄養不足による
幼児死亡を無くす仕組みを作るために、人材と資金を出している。この計画は現在進行中だが、画期的なもので
ある。現在、栄養不良対策は、国連機関によって人工タンパク質を配給される形で行われているが、アライアン
70
ス・フォーラム財団は、もともとアフリカ原産のスピルリナという藻が、たんぱく質を %も含有するところに
倍以上の含有率︶
、ザンビアの農民に、自らスピルリナを栽培して自らの栄養不良問題を自
3
目 を つ け︵ 牛 肉 の
分で解決し最終的には、国際機関に対して援助はもう必要ないと宣言してもらうところまで持っていこうという
歳まで生きると大人になるまで生きる可能性が高まる。しかし、教育を受けないで大人になると犯罪
5
ものだ。
者になる率が増えるので、いかに教育を行き渡らせるかが大きなテーマとなる。ここでもアライアンス・フォー
∼ 歳になった時に仕事がないとテロリストになる可能性も出てくるので、仕事を確保することが必
15
受けても
年 に 世 界 最 先 端 技 術 を 用 い て 遠 隔 教 育 シ ス テ ム を ザ ン ビ ア で 実 現 し た 。 さ ら に、 教 育 を
18 ラム財団は、
要になる。ザンビアには、日米欧のような大企業での雇用の道は少ない。このため、自分で養鶏場や小売りなど
を始める。しかし、旧英国領植民地では旧宗主国である英国銀行法を独立後も準拠法としているので、担保が無
いとお金を貸してもらえない。これでは貧困層の中で健康で、熱意もあり、苦学しながらも教育を受けた若者が
何か事業を起こそうとしても資金を借りることはできない。アフリカをはじめとした新興途上国では無担保でも
会社や自営業ができる新しい金融制度を作る必要があるのだ。この制度の基本となるのがマイクロファイナンス
だ。現在でも、小口無担保の貸出制度はないことはないが、準拠法が整備されていない状態で民間が行っている
人材を派遣
スピルリナ・プログラムによる
たんぱく質供給
アライアンス・フォーラムによるスケーラブルな途上国支援のスキーム
マイクロファイナンスプログラム
事業による経済的自立の支援
XVDやWiMAX技術による
遠隔教育、遠隔医療
栄養不良の改善
自立化のサポート
教育・医療の提供
マイクロファイナンスプログラム
・マイクロファイナンス専門家を養成する
プログラム
・2週間の入門編をバングラデシュで実施
( 2009年9月)
・修士コースも開講予定( 2012年∼)
遠隔医療/遠隔教育
・途上国にて最先端技術(XVD WiMAX)
を用いた通信事業
・バングラデシュでのbracNetプロジェクト
を開始(2005∼)
・遠隔教育のパイプロットプロジェクト
開始(2009∼)
スピルリナ・プロジェクト
019 公益資本主義と成長戦略 × 原 丈人
21
・アフリカの栄養不良改善のために
スピルリナの普及を目指すプロジェクト
・学生の代表団を使節団としてザンビア
に派遣( 2009年8月)
1985年創設。90年代には我が国の産業構造転
換に尽力する。新産業創生部門、公益資本主義
研究部門、途上国支援事業部門からなる。途上国
支援事業部門ではbracNet事業のほか、アフリカ
諸国での栄養不良による飢餓の解決のためにタン
パク含量が高い藻であるスピルリナの普及を啓蒙
する。当財団は国連WAFUNIF(ワフニフ)
日本ア
ジア機構と連携しすすめている。
図6
図 5 株主資本主義に代わるビジネスと公益事業の資金の循環
場合が多く、無担保のはずなのに担保を要求したり高い金利を貸したりしてあくどい消費者金融と同じものをマ
020
イクロファイナンスと呼んでいる場合も多い。
賞 受 賞 者 ︶ と と も に マ イ ク ロ フ ァ イ ナ ン ス の プ ロ フ ェ ッ シ ョ ナ ル 養 成 プ ロ グ ラ ム を 作 り、 す で に
カ国の財務省や中央銀行の若手幹部に、マイクロファイ
19
月 か ら は、 ア フ リ カ
12
年
修 了 者 を 出 し た。
名近い
"
2
!
#
.
'
/
年 か ら バ ン グ ラ デ シ ュ で、 マ イ ク ロ フ ァ イ ナ ン ス の 生 み の 親 で
アライアンス・フォーラム財団は、
︵世界最大の
︶ 創 設 者 の ア ベ ッ ド 氏 と、 グ ラ ミ ン 銀 行 創 設 者 の ユ ヌ ス 博 士︵ ノ ー ベ ル 平 和
ある
ナンスを基本にした貧困階級層を中産階級層に導くための金融制度の枠組みを教えやがては英国銀行法に代わる
新しい金融制度を自ら考えてもらうような流れをつくろうとしている。アライアンス・フォーラム財団がアフリ
と連携して行っている公益資本主義に基づく貧しい人のための銀行家養成の活動も、
#
/
%
3
!
カ開発銀行、
日本の国家戦略に沿ったものになろう。日本からの官民連携の様々な活動が実を結んだ時、何億というアフリカ
の人々に日本のおかげで豊かになったと言ってもらえるように顔の見える活動を行っていきたい。
アフリカやイスラムが成長を目指す時代が来る
年になると、
7
︶。
沢アフリカ議員
19
カ国に関心がある分野の民間企
22
021 公益資本主義と成長戦略 × 原 丈人
図8
出典:国連人口推計 2012年改訂(2013年6月)
108億人
95億人
69億人
アフリカ
39%
アフリカ
25%
アフリカ
15%
先進国
12%
先進国
14%
先進国
18%
2010
2050
2100
連盟会長にも参加していただき、鉄道、都市開発、エネルギー、発電所など、
図 7 アフリカの時代が到来する
カ国の政府代表を迎え、安倍総理、甘利経済再生担当大臣、
19
日には、
31
月
5
年
翌
︶。日本からの支援の主役は、民間企業である。
8
要かという話をしたところ、彼らは大いに賛同してくれた︵図
19
#
/
%
3
!
加盟 カ国の首脳たちと、
年
私は、アフリカの中で一番大きい経済圏を持っている
月に会い、﹁公益資本主義﹂という日本発の新しい資本主義が、アフリカの中産階級層を育てるうえでいかに重
11
5
4
10
年には、中国とインドを足した人口よりアフリカの人口が多くなる︵図
全世界人口の 人のうち ∼ 人がアフリカ人になる。
022
業のトップが集まり会議を開催した。今後も継続的に話し合っていく計画である。私たちは、日本政府が直接行
3
!
$
#
5
%
!
#
9
27
#
/
%
3
!
19
の カ国と
︵東アフリカ共同体︶ カ国、
︵南部アフリカ開発共同体︶の
カ国が、やがて合体して カ国からなる、アフリカ最大の自由貿易圏が誕生する︵図 ︶。そして、この中心地
15
う支援を補完する役割を、民間で作っていく。
︵欧州連合︶の中心であるベルギーのブリュッセルのよう
%
5
が ザ ン ビ ア に な る。 ザ ン ビ ア の 首 都、 ル サ カ は
な役割を果たすだろう。
57
'
#
#
︶ の 諸 国、 パ キ ス タ ン、 バ ン グ ラ デ シ ュ、 マ レ ー シ ア、 イ
イ ス ラ ム 圏 の 国 々 は、 湾 岸 協 力 会 議︵
ン ド ネ シ ア な ど カ 国 が あ る。 イ ス ラ ム 圏 は 人 口 も 多 く、 こ れ か ら 目 覚 ま し い 発 展 を 遂 げ る 可 能 性 が 高 い。
カ 国 の イ ス ラ ム 圏 の 諸 国 が 集 ま る の で ア ラ イ ア ン ス・ フ ォ ー ラ
57
日に、ドバイでこの
30
∼
28
月
10
年の
ム財団は、非イスラム圏からは最大規模の官民連携企業団を派遣する。イスラム圏は、とても重要な日本のパー
1
分の 以上をイスラム圏が占める。
3
1
人に 人が、資金量では
4
トナーである。人口で言えば、
イスラムはギャンブルや投機的な行為を嫌っている。むしろ長期の投資ができる仕組み、対象を欲しがってい
る。彼らは、米国の﹁物言う株主﹂と違って、しっかりした経営をしていれば口を出さない強力なサポーターに
なるので、ドイツのダイムラー社︵ベンツで知られる自動車製造会社︶や、フォルクスワーゲン社も、クエート
やカタールが大株主であるのだ。
革新的な技術を集める求心力が必要
23
023 公益資本主義と成長戦略 × 原 丈人
図 9 アフリカ版 TPP アフリカ最大の自由貿易圏の誕生
)
4
)
"
-
米国、英国、イスラエルには、先端技術を事業の核にしたビジネスに注力している企業が数多くある。これら
技術では、インテルやシスコシステムズ、
といった大企業が有名だ。しかし、大
の 国 の 企 業 で は、
024
企業になると革新性があまり出てこないのが共通の悩みとなっている。本当にクリエイティブで革新的な技術を
扱っている企業は、小さな会社であることが多い。そして、大企業は、革新的な小さな企業を吸収して、生き続
けていく場合が多い。
10
年にイスラエルでセグマン博士と共同で創立したオープラス・テクノロジーズ社では、﹁ユーチュー
年というと﹁ユーチューブ﹂が
ブ﹂が普及する時代に求められるマイクロチップを開発した︵図 ︶。
生まれる何年も前なのでこうした将来の革新的な技術は、マイクロチップの最大手であるインテルでは考えつく
年は、インテルと合併し、インテ
年 間 か け て 世 界 の ト ッ プ 企 業 に し た と こ ろ で、
6
ことができない。
ルは将来事業の糧となる革新的な技術を手に入れた。また同様に、シリコンバレーに作ったブロードウェア社も
と合併した。インテル、シスコ、
)
"
-
年に
) " - 年にシスコと、英国に作ったトランシティブも
には、巨大な資金力とブランド力、販売力がある。しかし、革新的な技術を作っている会社と合併して
いかないと生き長らえることができない。
年間は損失、販売高は、最初の数年間はほとんどなく、累積損失は数十億円を超えた。
年には、当時
最 大 規 模 と 言 え る 大 型 の 新 規 株 式 公 開 を 果 た す こ と が で き た。 時 間
はかかったが、新しい事業と雇用を生み出すことができた。しかし、
年以降は手っ取り早く
しかし
︶。最初の
.
!
3
$
!
1
ている︵図
10
11
7
年に作ったフォーティネットという会社は、サイバーテロのセキュリティ分野では今や世界の大手
年 に は 社 員 数 は 名 に 過 ぎ な か っ た が、 今 や セ イ コ ー エ プ ソ ン よ り も 大 き な 会 社 に 育 っ
企業である。
かる金
融や、短期間に買収されることを狙ったネットアプリなどのベンチャー企業に資金が集まるようになった。これ
は、
﹁会社は株主のもの﹂という思想が、
﹁短期的なリターンの追求﹂を行動原理としているので仕方のないこと
だ。そこで、前の章で述べたように、制度面を変えて、時間はかかるがこうした新しい革新的な技術が日本の中
24
025 公益資本主義と成長戦略 × 原 丈人
図 10 基幹産業の変遷
図 11 Fortinet 社 10 年でスタートアップ企業が国際的大企業に成長
で育つ仕組みを作り上げれば、米国や欧州のみならず、インド、ラテンアメリカ、アフリカの起業家たちが日本
25
Organization in Special Consultative Status with
the United Nations Economic and Social Council
2016 年 2 月吉日
公益財団法人原総合知的通信システム基金 評議会議長
アライアンス・フォーラム財団 代表理事 原 丈人
2016 年 IT あわじ会議 World Alliance Forum in AWAJI 開催日時のご案内
この度、公益財団法人原総合知的通信システム基金とアライアンス・フォーラム財団では、3 月 25 日・26 日
の二日間にわたり、
「2016 IT あわじ会議 World Alliance Forum in AWAJI」を開催いたします。本会議は今
年、15 回目を迎えることとなりました。常に「技術を通じて新しい社会を創生する」というコンセプトでテーマ
を設定し、次世代基幹産業を創造するための国際会議として毎年開催されてきました。本年は、テーマを「先端
医療革命と国家戦略特区」~日本から世界の問題を解決する~と題します。
次世代基幹産業におけるITの役割には、医療との親和性を看過することはできません。日本人研究者が世界
の再生医療研究を牽引している今、次世代の基幹産業としての先端医療、再生医療の可能性には世界中からの注
目が集まっています。また、日本政府は、再生医療を国の成長戦略の重点分野と定め、次なる戦略へと移るため
に早期承認制度の導入などを通じて強力に推進する動きが見られ、産業界でも再生医療分野事業への進出が急増
しています。関西圏においては国家戦略特別区域としていくつかの区域計画が策定され、産官学協調の下に日本
が先端医療分野において世界をリードする準備が整いつつあります。
本会議では、次世代基幹産業としての先端医療の事業化について、国家戦略特区を活用したアプローチの可能
性を模索、議論し、議論からアクションへとつなげることを目的としています。再生医療研究、先端医療デバイ
ス、政策立案、サービス、事業経営など、あらゆる角度から先端医療に関わるゲストスピーカーを国内外からお
迎えし、本会議の目的を達成したいと考えています。
ご多用中と存じますが、是非とも万障お繰り合わせの上、ご参加下さいますようお願い申し上げます。略儀なが
らまずは書中をもちまして開催日時のご連絡とさせて頂き、当日のプログラム及びお申込み方法等の詳細は別途
近日中にご案内申し上げます。楽しみにお待ち頂けますと幸いです。
記
名 称:2016ITあわじ会議 World Alliance Forum in AWAJI
テーマ:「先端医療革命と国家戦略特区」~日本から世界の問題を解決する~
日 時:2016年3月25日(金)13:30~17:45(※18:00~20:00 交流会)
2016年3月26日(土) 9:00~15:00
会 場:淡路夢舞台国際会議場
メインホール(兵庫県淡路市夢舞台1番地)
以上
ご登壇が確定しているスピーカー(順丌同、敬称略)
兵庫県 知事 井戸敏三、独立行政法人医薬品医療機器総合機構 再生医療製品等審査部長 佐藤大作、慶應義塾大学 医学部長
岡野栄之教授、大阪大学 医学部長 澤芳樹教授、株式会社三井住友銀行 取締役副会長 蔭山秀一、The New York Stem Cell
Foundation CEO Susan Solomon、CYBERDINE株式会社 代表取締役社長 山海嘉之、株式会社生命科学インスティテュート
代表取締役社長 木曽誠一、ロート製薬株式会社 代表取締役会長兼CEO 山田邦雄、東レ株式会社 代表取締役副社長 阿部 晃
一、日本ユニシス株式会社 最高技術責任者 保科剛、住友精密工業株式会社 前社長 神永晉、ソニーコンピューターサイエンス
研究所 シニアリサーチャー 桜田一洋
問合せ先:AWAF 事務局 熊地・清水 ( secretary@allianceforum.org )
〒220-0011
横浜市西区高島 1-1-2 横浜三井ビルディング 15F
tel:045-232-4280
26
アライアンス・フォーラム・グローバル事業計画
公益資本主義と成長戦略
ミッションステートメント
世界に持続的な成長を促すシステムを構築する為の
新しい資本主義のしくみを日本で造り、順次世界各国に普及していく
公益資本主義(Public Interest Capitalism)によって、中長期・持続的経営、社中分配の公平性など
企業は社会の公器としての位置付けが、全世界であたりまえとなるような時代をつくる
ポスト IT 産業
新興国・途上国への進出と連携
新しい基幹産業の創造
(新しい基幹産業)の創生
(原)
地産地消
革新的技術による新産業
アジア
地方活性化産業
アフリカ
太平洋諸国
中南米
2012 AFDP 太平洋
先端医療革命
東南アジア
島嶼国首脳・経済人
COMESA 19
会議
中国
幹細胞
新素材
エネルギー
PUC Big Data
医療革命
技術革命
技術革命
情報革命
2013AFDP アフリ
SADC 15
カ首脳・経済人会議
南アジア
国首脳・経済人会議
第 1 回 2013 年 11 月 15 日
あわじアライアンス・
第 2 回 2014 年 11 月 6 日・7 日
フォーラム会議
第 3 回 2015 年 11 月 12 日・13 日(予定)
2015 年 3 月 11 日
ワールド・アライアンス・フォーラム@サンフランシスコ
2000 年から毎年開催
EAC 5
57 カ国
イスラム諸国
世界イスラム経済フォーラム
アライアンス・フォーラム
(2012 年、2013 年、2014 年)
世界イスラム経済
東京円卓会議
(2015 年 5 月 26 日)
世界経済フォーラム(ダボス会議)
2015 年
内閣府
経済財政諮問会議 専門調査会
日本が幹細胞先端医療の世界の中心になるための仕組み
投資の仕組み
DEFTA Healthcare Technologies, L.P.
日本版FDAの仕組み
国家戦略特区
大阪大学
未来医療開発部
改正薬事法
WEDGE
日本版NIH
2013 年 12 月号で提案
「日本医療研究開発機構」
(AMED)
未来医療センター
中長期の研究開発を必要とする
再生医療と希少疾患医療の
ベンチャーへの投資の仕組み
条件付き早期承認
27
Organization in Special Consultative Status with
the United Nations Economic and Social Council
アライアンス・フォーラム財団
2016 年活動計画(予定)
‐議論からアクションへ‐
2 月 12 日(金)
講 演
大阪大学医学部教授就任記念講演 「医学の使命」
大阪大学
2 月 13 日(土)
講 演
国際ロータリー第 2660 地区 IM5 組 ロータリーデー
ナレッジキャピタル
「大阪を世界になくてはならない都市にする ‐大阪の未来をつくろう」
ナレッジシアター@大阪
2 月 18 日(木)
講 演
2 月 19 日(金)
講 演
日本医師会主催 平成 27 年度 医療シンポジウム 「資本主義と医療」
2 月 23 日(火)
使節団
「東南部アフリカ・BOP ファイナンス・フィンテックを知る」 調査団派遣
~3 月 1 日(火)
研 修
アフリカ中央銀行、MFI 機関代表に対する金融制度改革研修
KPMG 主催 イノベーション懇話会
飯田橋あずさセンタービル
大阪大学 医学部長 澤教授と共同講演
日本医師会館 大講堂
ケニア・ナイロビ市
3 月 25 日(金)
~3 月 26 日(土)
5 月 12 日(木)
~5 月 14 日(土)
フォーラム
使節団
兵庫県 淡路島
あわじワールド・アライアンス・フォーラム
「先端医療と再生医療の事業化 -日本から世界の問題を解決する」
夢舞台国際会議場
ウェスティンホテル
ダボス会議 AFDP アフリカダボス会議への使節団派遣
アフリカ
5 月 24 日(火)
フォーラム
公益資本主義推進協議会 全国大会
ホテル椿山荘
6 月 11 日(土)
フォーラム
G20 Public Interest Capitalism and European Economy
イタリア・ジェノバ市
6 月 29 日(水)
~12 月 11 日(日)
7 月 2 日(土)
8 月下旬
(28 日の週の予定)
9 月 16 日(金)
~9 月 18 日(日)
全 12 回
研 修
第 3 期 公益資本主義研修
講 演
公益資本主義推進協議会 未来創造経営者フォーラム TOKYO2016
ホテル椿山荘
使節団
AFDP TICAD 使節団派遣
ケニア・ナイロビ市
研 修
第 4 回 アライアンス・フォーラム・グローバル会議
東京にて開催
東レ研修センター
静岡県三島市
10 月 20 日(予)
フォーラム
2016 ワールド・アライアンス・フォーラム東京円卓会議
日本橋三井ホール
11 月中旬(予)
フォーラム
AFDP ラテンアメリカ首脳・経済人会議
東京
11 月 21 日
~11 月 22 日
フォーラム
ワールド・アライアンス・フォーラム in サンフランシスコ
サンフランシスコ
先端医療革命 -再生医療,細胞治療
備考:
2016 年 7 月 16 日~9 月 11 日 世界鉄道博
連絡先:アライアンス・フォーラム財団 秘書室 熊地
TEL:03-6225-2795 / 090-5209-1676
Mail:[email protected]
アライアンス・フォーラム財団
〒103-0021 東京都中央区日本橋本石町 4-4-20 三井第二別館 7 階
ver.20160201
28
29
30
31
32
33
34
アフリカ の ﹁
チ ャレンジ﹂
私 はも とも と マヤ文 明 の考古 学 を
コに住 み、 アメリ カ、 イ ギ リ ス、 イ
原 丈人
デ フタ 。パ ー ト ナ ーズ グ ル ー プ 会 長
ア ラ イ ア ン ス ・フ オー ラ ム 財 団 代 表 理 事
リ カには古 来、非常 に優 れた文 明 が
各 地 に存 在 し て います。古 い豊 かな
貿 易 や植 民地時 代 の帝 国主義 によ る
スラ エル の三 カ所 を中心 に事 業活 動
考 古 学 が 何 よ り も 大 好 き です か
ら、当然、人類 の起源 であ る アフリカ
搾 取 を受 け、 そ の後 も 米 ソ代 理戦争
を行 ってま いりました。
ンジ ュラ ス、 グ ァテ マラなど にも行
にも 大変 関心 を持 って いて、 タ ンザ
に巻 き込 ま れ、 や っと 一九 六 〇年 代
潤 沢 な 文 明 を 築 いて き た ア フリ カ
が、そ の後 の西欧 の進 出 により奴 隷
って いま した。 そ の後、考古 学 の研
ニアにあ るオ ルド ヴ ァイ渓 谷 など、
研究 し て いて、 エルサ ルバド ル、 ホ
究資 金 がなく な って、資 金 を稼ぐ た
エジプ ト文 明 や スー ダ ン北部 のメ
た だ し、政 治的 には独 立 し たも の
チ
の、現在も ア フリカが抱え て いる ﹁
頃 から国 々が独立し てきました。
て現在 、 アライ ア ン ス ・フオー ラム
ロ エ文 明、ジ ンバブ エにあり ます グ
ャレンジ﹂は、 いかにし て経済的 に独
人類 の起源 の地 に足を運びました。
財団 の代表 と し て途 上国支援 など の
レー ト ・ジ ンバブ エ遺 跡 な ど、 ア フ
め に渡 米 し、国連 フ ェローなどを 経
活 動 を し て います。 サ ン フラ ンシ ス
WiLL-2013年 8月 号 ● 192
35
●PEHE● ‖
立す る かと いう こと です。 そ し てま
た、貧 富 の差 を 解 消 し、内 部 抗 争 を
ど のよう にし て解 決 し て いく か が、
て います が、 ア フリカ の大統領 たち
の国 が ア フリカ に経済 的 な支援 を し
ま で ア フリ カ では 土 に還 ら な いゴ ミ
の小 袋 に入 れ て五円、 十 円 と いう 安
鹸 や チ ョ コレー トを プ ラ ステ ィ ック
い金額 で販売 し て いる。し かし、そ れ
によく よく考 え ても らう 必要 があ る
のは、 どう す れば支援 を受 けず とも
経済 的 に自 立 でき る国 にな る のかと
循 環 型 経 済 のも と で生 活 し て いる ア
大きな問題とし て存在 し て います。
現在 、 ア メリ カ、 ョー ロ ッパ、 あ
のな い生 活 を し て いた のです。 バ ナ
ナ の皮 だ って、 捨 てれ ば 三 週 間 以内
BOP ︵
雪需 2 o﹁﹁P
, い い印
e ビ ジ ネ スに は
ヨ一
フリ カ や アジ ア、 中 南 米 の農 村 部 や
いう こと です。
象を 持 た れ る方 も いら つし
奥 地 に、 先 進 国 か ら ビ ニー ル袋 を 持
る いは中 国 な ど の新 興国 も 含 む多 く
ゃると 思 います が、多 国籍
ち 込 んだ途 端 に、 辺り は ゴ ミだ ら け
に土 に還 り ま す。 ゴ ミ箱 の要 ら な い
企 業 のト ップ と話を し て い
ゴミ
多 国籍企 業 の社 長 たち には、﹁
にな ってしまう 。
、経済が
低成長に
なっ
て
様
り
を 処 理す ると こ ろま でき ち んと やり
ほ ますと、先進国の人口が減
、
乱 き た時 に 今 後伸 び る ア フ
そ んな
な さ いよ﹂と 言 う ん です が、 ﹁
け にな ってしま います。
では N G Oも 単 な るご み処 理 の下請
G O に寄 付 し て いると いう が、 これ
返 さ れ る。 ゴ ミを 処 理 し てく れ る N
株主利益 の追求 のため のBOPだ﹂と
こと を し て いた ら採 算 が 取 れ な い。
硼 リカやアジアヽラテンアメ
カ
刀 リカで販売することが、株
υ 主利益の追求にとっては重
本
日 要 な手 段 と な ると考 え て い
幕 一 る経営者もたくさん いまt
5 さまざ ま な企業 が ア フリ
D
A
c 力 に参 入 し て いま す が、 石
l
T
36
193● WiLL-2013年 8月 号
ρ
E●100,a
性 があります。
く のア フリカ諸 国 は植 民地 の時 代 に
いう構 図 で支 配 さ れ てきま した。多
れ の国 の多数派 民族 と対 立 さ せ ると
イ ラク、 シ リ アに分 割 さ れ、 そ れぞ
ありながら独立を許されず、イ ラン、
え ば、 ク ルド族 は 二千 万 人 の人 口が
内 部抗争 も大 き な問 題 です。 た と
政権 によ って逮捕 さ れたり拷 間を受
植 民地 政策 や アパ ルト ヘイ ト政策 の
マンデ ラ大統 領 な ど、彼 ら が英国 の
ブ エのムガ ベ大統領、南 ア フリカ の
ンビ ー ク の独 立 運動 を助 け、 ジ ンバ
ダさ んは自 国 の独 立 だけ ではなく、
南 部 ア フリ カ の国 の マラウイ、 モザ
そ の初 代大統 領 のケネ ス ・カ ウ ン
大統領 によ っては こう いう ことも
ぶん部族融和が進 んできました。
交 流を 二十年 奨励 した こと で、ず い
を東 部 の知事 にす る。 そ し て部 族 間
間を南 部州 の知事 にし、西部 の人 間
出身 部族 は閣僚 に入 れず、 北部 の人
ア共 和 国選 手 団 ﹂と し て参 加 し てお
り、日本 には大変縁 の深 い国 です。
イギ リ ス、 フラン スなど の旧宗 主 国
けた時 にザ ンビ アに匿 ったと いう ﹁
南
可能 にな る のです が、 ここま で見 通
し、 実行 す る のはな かな か難 しく、
内部抗争と いう 問題
が分割統 治 がし易 いよう に国境 が定
部 アフリカ建国 の父たち の父﹂と言わ
いまも ア フリ カ の大き な テー マにな
人 口 一千 二百 万人 の小 さな国 です
が、 七十 四 の部 族 があ り、 カ ウ ンダ
めら れた ので、独 立後 も 部族 間闘争
れる人 です。
四年、東 京 五輪 の開会 式 当 日 に独 立
ンビ アと いう 国 があり ます。
一九 六
ア フリカ 五十 四カ国 のな か に、 ザ
ろうと思 います。
を解 決す る のは非 常 に難 し いこと だ
戦争 ま で重 な るなど し て、内 部抗争
ビ アと いう 国 は、 民族 紛争 の解 決 を
別顧 間を や っており ま した が、 ザ ン
大統 領 のルビ ア ・バ ンダ大統 領 の特
ろう と 思 います。 そ れも あ って、前
ンダ大統 領 は最 も素晴 ら し い方 であ
方 々にお目 にか かり ま し た が、 カ ウ
私 は こ れ ま で に多 く の大 統 領 の
イ アン ス ・フオー ラム財団 が寄与 で
な経 済 と いう テー マのな か で、 アラ
リ カ開発会 議 ︶ にも あ った持続 可能
でし ょう。今 回 のT IC A D ︵ア フ
十年 かけ て解 決 し て いく こと にな る
争 から の独 立を これ から 二十年、 三
ア フリ カは経済 的 な独 立 と内 部抗
37
初代 大統 領 によ って独 立 した時 に、
が起 き やす い。 さら には米 ソの代 理
したザ ンビ アは、入場は ﹁
北 ロー デシ
す る 一つの糸 口を 伝 え てく れ る可能
って います。
ザ ンビ
ア選手 団﹂と し て、閉会式 は ﹁
W LL-2013年 8月 号 ● 194
●P目 ‖菫●鶴
だと捉 え るとす れ ば、 いま の アメリ
カ のよう に燃料 を たく さ ん使う 国 の
曖 味 です。 経済成 長を G DP の成 長
持 続 でき る経 済と は何 か。非常 に
内 閣府 大 臣 も 出席 さ れ、 財務 省、外
ム財 団 が主 催 し て、安 倍 総 理、 甘利
ライ アン ス ・フオー ラム財 団 は参加
し、今 回も アライ ア ン ス ・フオー ラ
開催 さ れた TI C AD 4会 議 から ア
経済 人会 議 を 開催 します。 五年 前 に
月 三十 一日 にA FD P ア フリカ首 脳
T IC A D5会 議 開催 にあ わ せ、 五
アライ アン ス 。フオー ラム財 団 は
何か﹂と聞くと、とにかく鉄道を造 っ
長らとお会 いし、コ 番欲 し いも のは
M ES A の十九 カ国 の首 脳 ・事 務 総
年 の ア フリ カ首 脳会 議 の場 で、 C O
の共 同体 とも F TA、 関税 同盟 を 結
び、 総数 二十 七 カ国 の ア フリ カ版 T
AC ︵
東 ア フリカ共同体︶と いう 二 つ
易 圏 です が、来年 には S A DC、 E
ES A地域 は ア フリ カ最 大 の自 由貿
き ること があ ると思 って います。
経済 が成 長す ると いう ふう に定 義 せ
ざ るを得 ま せ ん。 し かし、 世界 百 九
務省 や経産省 の後援 も いた だ いて大
てほし いと いう要請 が多 か った。
﹁
鉄 道 が欲し い﹂
十 三 のす べて の国 々が米 国並 み の エ
きな会議を行 います。
〇 八年 には S A DC ︵
南 部 ア フリ
そ こでAF DP ア フリ カ首 脳経済
P Pが完 成 しま す。私 が招 か れた去
ネ ルギ ーを使 った ら、世 界 は破 綻 し
カ開発 共 同体 ︶ の十 五カ国 に焦 点 を
人 会 議 で は J R東 海 ほ か 鉄 道 会 社
や、 そ こに信号 シ ステムを収 め て い
ます。
日本 人も ﹁
失 われた 二十年﹂から立
当 て、外務省など に で﹂の地域 こそ発
る 日本信 号、客 車 や貨車 を造 って い
る日本車 輛 など、各 社 ト ップ に参加
展す る﹂と言 いました。今 回はCOM
ESA ︵
東南部 アフリカ市場共同体 ︶
をお願 いしました。
ち直 って経済成 長ま っしぐ ら に行 く
のが い いのか、内 面的 な豊 かさを育
です。 C O M ES Aと S AD C の両
みな がら の経済成 長 が必要 と考 え る
か、大きな分かれ道 にき て います。
の鉄道 用員 を 十年 間、訓練 す る受 け
ず、 日本語 で教え ます。 三百 人 が十
ア フリ カから毎 年 最 大 三百 人ま で
方 に所 属 し て いる 国 も いく つか あ
り、そ の中 心 に位 置 し て いる のが ザ
入 れ体制 を準 備中 です。 英語 は使 わ
ア フリ カ の首 脳たち はどう かと い
う と、ど んど ん経済成長を し て いき
ンビ ア共和国 です。
現在 でも 十九 カ国 からな るCO M
た いと考 え て いる こと が ひし ひしと
伝わります。
38
195● WiLL-2013年 8月 号
年 で三千 人。 これだけ 日本語 が でき
国連 の アナ ン事 務 総 長 時 代 に作 っ
こう い った活 動 のな か で西側援 助
ラム財団 は スピ ルリナを改 め て紹介
し、農民が自分たち で造り、食 べて、
これを ア ライ ア ン ス ・フオー ラム
組織などと話 します が、﹁
やはり安 い
た ミ レ ニアム開発 目標 では、 ﹁
幼児 死
財 団 で実 現 し よう と、 〇 八年 か ら こ
人 工蛋白質 を 支給 す るほう が援助効
る人間 が ア フリカ に でき ます と、鉄
の活 動 を 始 め、 六年 目 にし て活 動 の
率 が いいL コストも安 い﹂と経済効率
栄養 不良 問 題を自 ら の手 で解 決す る
など のト ップ に参加 いただき ます。
効 果 が出 始 め て いま す。 六 五 ∼ 七 〇
だ け で考 え方 を述 べて いる国連 諸機
亡率 の大幅 な削減 ﹂を 二〇 一五年 ま で
いか にし て英語 を学 ぶか ではなく、
% にも 達 す る蛋白 含 有 率 を も つた ス
関 の幹 部も たく さ ん います。頭 の固
道経営 を やる には 日本語 は不 可欠 な
いか にし て日本語 を 世界 に広 げ るか
ピ ルリ ナと いう 食 用藻 を 使 う ん です
い彼 らを 説得 しな が ら、 ア フリ カ の
活 動 を行 って います。 そ し て、
一七
を考 え た ほう が、 グ ロー バ ル人材 を
が、 牛 肉 が 一九 % です か ら邊 か に多
い。 これ はも と も と ア フリ カ に由 来
人たち が自 発的 に作 り出す 流 れを起
に達 成 し た いと いう こと だ つた ので
考えるうえ でも有効 でし ょう。
す るも ので、 チ ャド湖 で作 ら れ て い
こそうと考え て います。
言語 にな ります。鉄 道 以外 にも、食
アライ ア ン ス ・フオー ラム財 団 は
ました。
三番 目 の財 団 の目 的 であ る ﹁
自立
年 ま でにまず、 ザ ンビ ア内 のあ る地
〇九年、 ザ ンビ アのルサ カ に ア フリ
と ころが現在 では、 スピ ルリナ の
化﹂でわれわれが活用す る のは、 マイ
す が、 ほぼ不可能 な状態 です 。
カ本 部 を設置 しま し た。 こ こを中 心
栽 培 は、 ユ ニセ フなど が配布 す る安
ク ロ フ ァイ ナ ン スと いう 考 え 方 で
品 加 工、 千 不ルギ ー、水 処 理、製 薬
に三 つの活 動 を行 って います。 そ れ
は、① 栄養 不良 の改善② 教育 と 医療
価 な人 工蛋白 質 にと って代 わ ら れ、
す。働 き た い、何 か やり た いと いう
かし担保 がな いと銀行 は金 を貸 さな
域 で完成しようと考え て います。
③自立化 の促進 です。彼ら の望みは、
ア フリカ の人 たちも忘 れ てしま つて
熱意 があ り、苦 学 で勉 強 も した、 し
﹁
幼児死亡率﹂ の削減を
五歳 ま で の子供 たち が栄養 不良 で亡
いると いう状態 です。
です か ら、 アライ ア ン ス ・フオー
くな る こと によ る ﹁
幼児 死亡率 ﹂を何
とかゼ ロにした いと いヽ
つこと でした。
39
196
WiLL-2013年 8月 号 ●
◎酔蒻鑢霧機鸞
る制 度 を ア フリ カ に作 って いこう と
い時 に小 日 の無 担 保 の資 金 を 融資 す
い、 と いう 状 況 下 で、事 業 を 興 し た
アフリカ諸国から訓練生が来ます。
きま した。今年 から はさら に多 く の
役 人 のト レー ニング コー スを行 って
ア フリカ の中央 銀行 や財務省 の若手
とを実現した いも のです。
の制度 的枠 組 みを 造り 上 げ て いく こ
ロフ ァイ ナ ンスによ る中 小企業金 融
二〇 一二年ま でに アジ ア、中南米、
国 から援助 を受 けず に自 立化 し て い
考え て います。
こう いう 話 を す ると、 ア フリ カ側
そし て日本 から合 わ せ て百 五十名 以
く よう な枠 組 み にな る手 だ てを造 り
ア フリ カ の人 たち が自 分 たち の手
で、自 分 たち の考 え で、 な る べく 外
から ﹁
う ち だ つて銀 行 はあ るよ﹂と い
上 の卒業生を出しました。
TEL.045‐ 263‐ 0055
アメリ カ、 ョー ロ ッパ、 ロシ アま で
これから 二〇五〇年ま でに、日本、
上げ て いきた いと考え て います。
う 話 が出 る のです が、 た と え ば 元 英
日本 の企 業 で、途 上国 でビ ジネ ス
自治調査研究会
国 の植 民 地 の場合 は、 英 国 銀 行 法 の
リ カ で商 売 を す るた め に作 った銀 行
を した いと 思う のなら マイ ク ロフ ァ
日 時 7月 29日 (月 )18時
会 場 かながわ県民サポー トセンター
304号 会議室
定 員 90名 (要 予約)
自 立﹂ こそが テー マ
﹁
法 では、 豊 か な 階 層 を ま す ま す 豊 か
イ ナ ン スの手 法 を きち んと 理解 す る
す。 ア フリ カ に帰国後、 ア ライ ア ン
演 題「海は要注意」
下 で でき た銀 行 です 。 英 国 人 が ア フ
に は しま す が、 担 保 力 のな い貧 困 層
産 階級 に育 って いく メカ ニズ ムを知
こと は絶対 に必要 です。貧 困層 が中
これ か ら人 口増 が 見 込 ま れ る低 所
る こと は、企 業 にと って成 功 の秘訣
には無力 です。
得 者 に対 し て小 日 の無 担 保 の融 資 を
を知 るようなも のです。
今年 も C O MES A十九 カ国、 S
造 る仕 組 みを 造 る こと で、 中 産 階 級
層 が大 き く 育 て て いく と いう こと を
〇九 年 か ら バ ング ラ デ シ ュで マイ
ス 。フォー ラム財団 や ア フリ カ域内
A D C の十 五 カ国 か ら 受 け 入 れ ま
ク ロフ ァイ ナ ン ス のプ ロ フ ェッシ ョ
開発銀 行 が加 わ って、新 し い マイ ク
40
号
W LL‐ 2013年 8月
197●
やろう とし て います。
ナ ル ・プ ログ ラムを 当 財 団 が作 り、
講 師 深谷憲一 幡奮
占
朧蹴爵
含 め ても、 先 進 国 の人 口が世 界 の 一
バ ル人材 にと って 一番 必要 な要素 に
国 は 八 八 % を 占 め る こと に な り ま
す。 いま は中 国 やイ ンド が伸 び て い
お前 たち
途 上国を未 開 の国と呼び、﹁
化 に優劣 を 付 け、先進 国 の人 たち が
植 民地 の時代、 二十世紀 ま では文
在 的 な能 力 を DN Aと し て持 って い
日本 人 は こ の多様 性 を受 け 入 れ る潜
い﹂を受 け入れるも のの考え方 です。
違
語 学 以上 に逢 かに大切な力 は、﹁
なる のです。
ま す が、 二〇 三 〇年 ま で に は ア フリ
の文化 は遅 れ て いるから従 え、 英語
る のではな いかと思 います。
多様性を受け 入れる器
カ諸 国 に人 口面 では抜 か れ、 二〇 五
を使え、キリ スト教を信 じよ﹂と いう
二% 以 下 にな ってし ま いま す。 途 上
〇年 か ら は 三十 億 人 以 上 が ア フリ カ
形 で支配をし てきました。
たとえ ば水 洗便 所。 ア フリ カ に行
のな か で増 え て いく と 思 わ れ ま す。
な った時 に、 ア フリ カ が経 済 の中 心
現在 の七 十億 人 か ら百 億 人 の世 界 に
策 であり、戦後 の貧 し い日本 が物質
憧 れ ると いう と ころを利 用し て の政
貧 し い国 々が豊 かな 国 々 の文化 に
洗 便 所 を 使 う のが い いと 考 え ま す
が、 日本 の若 い人 たち の場合 は、 現
41
く と、西洋 人 は清 潔 にす るた め に水
にな って いく ことは明らかでし ょう。
地 の人 が使 って いる便 所 を清 潔 にし
日本 人 は教 え ら れなく ても、相手
的 に豊 かな アメリ カ に憧 れ て、音楽
し かし、 こ のよう な脅 す、憧 れさ
の国 の文化 を受 け 入 れら れ る。 日本
私 は 一九 七 七年 に北京 に行 き ま し
し た。 し か し、 いま の ア フリ カ は 七
せ ると いう 政策 を と ってきた西欧 諸
国 がキ リ スト教も 仏教も受 け 入れた
てそ れを 日本 人も使 う と いう 場面 を
七年 に見 た 中 国 より も 進 か に上 の段
国 の国 々も、経済 的 な 地位 が逆転 す
素 地、 八百 万 の神 と いう よう な昔 か
でも食 べ物 でも 憧 れた よう な状 況 が
階 に達 し て いま す。 ア フリ カ諸 国 民
る今 世紀 には、 これま で の手 法 は通
ら の文 化、伝 統、 習慣 と いう も のを
た が、 こ の時 の北京 は空 港 に着 いて
が育 って いき、 教 育 レ ベ ルも 高 く な
相違点 ﹂を
用しま せ ん。 これ から は ﹁
受 け入 れ て昇 華 し、自 分 のも のにし
見 かけること でし ょう。
り、 わ が国 や世 界 と 対等 に取 引 し て
し つかり 認 めたう え で、違 いを よく
て いく こと。 これ には 一神 教 の国 と
続 いてきた のです。
貿 易 す る よう にな れ ば、 世 の中 は大
説明 し て いく と いう こと が、 グ ロー
も 観 光 客 が誰 も お らず 、貧 し い国 で
きく変 わ るでし ょう。
WiLL-2013年 8月 号 ● 198
●鸞露鶴璽O閣
日本 人 のDN Aを 生 かしな がら、
は違う哲 学を 持 って いる こと が理由
にあると思 います。
国語 と し て使 う。 日本 も これから の
さ せ るとと も に、英 語 はあく ま で外
自 国語 を し つかり 継続 さ せ、発 展
て いく ことを応援しまし ょう。
若 者 が ア フリカ の人 たち と交 流を し
び て いく 時、 温 かく 見 守 り、 日本 の
能 力 を 訓 練 す る こと が 一番 大 切 で
す。 これ から若 い人 たち が世界 に伸
る﹂と答えた のです。
こ の多 様性 の時代 のグ ロー バ ルな人
外 国語 教育 は こ のよう に考 え て いく
を しな さ い﹂と言 います が、私 は ﹁グ
る時 に、多く の人たちが ﹁
英語 の勉強
れば、もう 五年、 十年 す れば、携 帯
いろな開発 を や って いる立場 からす
シリ コンバ レー で先端技 術 の いろ
開 発 を 支 え る グ ロー バ ル人 材 と は 景 五月
これ か ら のパ ー ト ナ ー シ ップ と ア フリ カ
H H A シ ンポ ジ ウ ム ﹁日本 と ア フリ カ
必要があ ると思う。
材 が生 ま れ てく る こと は十分 可能 で
す。 日本 のグ ローバ ル人材 の話 をす
ローバル人材﹂の条件 は決 して語学 で
電話 と 同 じ よう な大 き さ の自 動翻 訳
二十 七 日 ︶ で の原 氏 の講 演 を 元 に再 構 成
どう でした か﹂と 聞 いて
に ついて、﹁
と し て英語 の教育を さ せられ た こと
先 述 のカ ウ ンダ大統 領 に、植 民地
下手 な 英語 教育 を し て日本語 を疎 か
く会 話 でき る時 代 にな る でし ょう。
フラ ン ス語 でも ドイ ツ語 でも、う ま
表 現 でき る人 間 のほう が、 英語 でも
に 中 途 半 端 な 英 語 を 喋 る人 間 よ り
は、 し っかりと した文法 で日本語 を
はら じ ようじ
一九五 二年、大阪府生 まれ。 二十歳代 に中央 アメリカ考
古学 研究に従事、研究資金づくりのためにスタ ンフオー
ド 大 学 経 営 学 大 学 院、 工 学 部 ︵工学 修 士 ︶ で 学 ぶ。
二十九歳 で光 フ ァイバー事業を起業 し、以後、事業家と
し ていく つも のベ ンチ ャーに出資 ・経営し、世界的企業
に育成。〇五年 にはバ ング ラデ シ ュで通信事業を立 ち上
げ 、途上国を支援 。財務省参与、国連政府間機 関特命全
権大使などを歴任。現在、デ フタ バートナーズ 、グル
ープ会長、アライア ンス フオー ラム財団代表理事。安
五ム長代理として公
倍政 権 で経済財政諮問会議専門調査△
︲世紀 の
益資本主義 に沿 った成 長戦略を描 く。著作 に ﹁
2
、 早翻
。
しい資本主義買 PHP新書︶
国宮
平凡社︶
塁型 ︵
したも のです 。
本 稿 は、 中 嶋 嶺 雄 氏 追 悼 企 画 ・第 二 回 U
はな いと思 います。
機 が でき る のがわ かりま す。 そ の時
みま した。英 国を 嫌 って いた大統 領
も、英語 だ け はプ ラ スだ ったと 思 わ
にす るよう な教育 はだ め、 と私 は考
自国語教育 こそ徹 底を
れ て いる のかと 思 い、 何 回も 聞き ま
グ ロー バ ルな 人材 にお いてはも の
え て います。
。コ百葉 は文 化 であ り、英 語 を使
だ﹂
の考 え方、多様 な文化 を受 け 入 れ る
し た。 し か し、 答 え は ﹁英 語 は迷 惑
う こと によ って我 々 の文化 は失 わ れ
42
199● W LL-2013年 8月 号
世界の
﹁悩み﹂を解決する規制緩和
医療﹁特区﹂
で
新薬の治験を変える
iPS細胞などの幹細胞革命が創薬を変えつつあるが、治験のあり方は旧態依然。
︵デフタ・パートナーズグループ会長/アライアンス・フォーラム財団代表理事︶
米FDAの官僚化に苛立つ多くのバイオベンチャーを誘う医療特区構想を掲げよ。
原 丈人
写真・メガファーマの創薬拠点を積極誘致するシンガポール︵ロイター/アフロ︶
かるベンチャーは、ベンチャーキャ
の風潮で、結果を出すのに時間のか
果が思わしくないメガファーマは、
ピタルから見向きもされず、不満を
しか出せないでいる。自社開発の成
デルを真似るのではなく、世界の悩
米国に数多く存在する血気盛んなバ
募らせている。
な視点は、どこかの国のビジネスモ
議決定され、アベノミクスの3本目
みを解決することによって世界の事
イオベンチャー企業群の新薬開発力
月5日、国家戦略特区法案が閣
の矢である成長戦略を具体化するプ
業会社から感謝されるようなアプロ
ロセスが進行している。
人患者を多数受け入れる国際医療拠
世界最高水準の医療を提供して外国
界を牽引してきたのは米国である。
ひとつに創薬がある。この分野で世
世界の医療が抱える大きな課題の
フェーズ1、2を突破したベンチャ
のはメガファーマに事実上限られる。 Aを見習おうとしているようだが、
かるのがフェーズ3で、負担できる
のが一般的だ。特に時間と費用がか
治験︵臨床試験︶に3∼7年かかる
究に数年、前臨床試験に3∼5年、
創薬の流れは図の通りで、基礎研
以上のような状況を踏まえ、世界
ない﹂と口を揃える。日本ではFD
﹁ 何 の 決 定 も せ ず、 何 の 責 任 も 取 ら
た米連邦食品医薬局︵FDA︶
﹂で、
ボトルネックは﹁肥大化、官僚化し
著名な新薬開発者たちに話を聞くと、
製薬企業やベンチャーの経営者、
に多くを依存するようになった。
月に日本経済再生本部が決定し
ーチで考えることである。
点がイメージされているようだ。
欧米の製薬会社は合併を繰り返し
ーが、メガファーマのパイプライン
の悩みを解決する先端医療国際特区
た﹁国家戦略特区における規制改革
諸外国が医療ツーリズムで既に鎬
てきた。米ファイザーや米メルクと
︵新薬候補︶に採用されるのを待つが、
を日本が打ち出せば、審査待ちで苛
一番に医療が掲げられ、具体的には、
事項等の検討方針﹂によれば、いの
を削っているなかで、英語などの社
いったメガファーマ︵巨大製薬企業︶
進めるのは千件余のうち数十程度。
米FDAの
肥大化、官僚化
会基盤の弱い日本にとって、これが
は、年間兆円規模の研究開発費をか
立つ米国のバイオベンチャーがこぞ
FDAは手本にならない。
ふさわしい戦略といえるか疑問だ。
会社は投資家のものだと考える米国
けているが、年間5∼
程度の新薬
成長戦略を考えるにあたって必要
10
43
WEDGE
Report
11
10
62
December 2013 B
創薬の流れ(現在の治験フロー)
って日本に進出し、世界の先端医療
②ただし、先端医療センター︵後述︶
する。
を承認し、市販を許可し、保険収載
だ。前述③の規制緩和はこれらの医
治験のあり方を再定義すべき時なの
薬品は、安全性は高いとされるため、 ろう。無理のある医療ツーリズムよ
間葉系幹細胞、体性幹細胞由来の医
前臨床試験
健康な人(少数)
を
比較的少数の患者
多数の患者を対象
薬として可能性の
対象にした薬の安
を対象にした有効
にした有効性と安
ある物質を対象に、
全性と、薬が体内
性と安全性に関し
全性を確認するた
動物や培養細胞を
に入ってどのよう
ておよその見当を
めの比較試験(ブ
用いて有効性と安
に変化し、排泄さ
つけたり適切な使
ラセボまたは類似
全性を研究、試験
れるかを明らかに
用量を決定したり
薬があればそれと
する試験
するための試験
比較)
(出所)武田薬品工業ホームページなどを参考にウェッジ作成
薬も同じ扱いとする。
り余程、戦略性が高い。
もちろん、こういった最先端の新
幹細胞はさまざまな臓器や組織に
医療機関は限られている。特区は地
治験システムをマネジメントできる
薬を使いこなすことができ、新しい
分化する能力を持つ。例えばiPS
毒性試験や新薬探索など、治験その
るいくつかの先端医療機関そのもの
医科学研究所など、人材や経験のあ
細胞から大量に作製したヒト細胞で、 域に指定するのではなく、東京大学
有効性と安全性の確認を、市販後の
ものを行えば、開発に要する時間や
験のあり方が、創薬の革新について
決して製薬業界のためではない。治
の開発にはうってつけであり、価格
の変化で市場が拡大している検査薬
る。﹁ 治 療 か ら 予 防 へ ﹂ と い う 時 代
業や人材が集まるよう制度設計する
するのではなく、世界から自然と企
補助金を積んで企業や人材を誘致
を特区指定すると良い。
リアルデータで行うわけだ。なぜこ
これまでフェーズ3で行ってきた
家族がこぞって日本にやってくるだ
を日本が牽引するようになるはずだ。
での使用に限定する。
この特区内で実施すべき規制緩和
の内容を、具体的に提案しよう。
薬品から実施していけばよい。
フェーズⅢ
(第Ⅲ相試験)
動物における有効性が確認された新
③国内で人間における安全性および
保険収載
フェーズⅡ
(第Ⅱ相試験)
厚生労働省の審査と承認
フェーズⅠ
(第Ⅰ相試験)
のような規制緩和を行うべきなのか。 コストを大幅に圧縮することができ
いけず、人類の幸福に貢献していな
法人税を余計に払ってもいいという
ことが肝要だ。このような規制緩和
患の新薬開発にメガファーマは本腰
外国企業経営者さえいる。成長戦略
を大きく下げることが可能になる。
を入れてこなかった。市場が小さく
の名の下に、税金や補助金に依存す
いからである。FDAは、この現実
元が取れないからだ。とくに、パー
る事業を増やしてはならない。
を日本が実行してくれるのならば、
キンソン病や、筋萎縮性側索硬化症
これまで患者数が少ない希少性疾
昨年、山中伸弥京都大学教授のノ
︵ALS︶、筋ジストロフィーといっ
から目を逸らして硬直したままだ。
ーベル賞受賞に日本中が沸いたが、
た中枢神経系疾患︵CNS︶は、フ
幹細胞革命が
創薬を変える
山中教授が開発に成功したiPS細
ェーズ3に入れない新薬候補が数多
方が同じではないため、念入りな治
動物と人間では毒性や副作用の現れ
インを抱えるバイオベンチャーに加
みでフェーズ3に入れないパイプラ
そうすれば、メガファーマの絞り込
︹はら・じょうじ︺1952年生まれ。デフタ・
パートナーズグループ会長として、欧米イス
ラエルで先端のベンチャー企業を数多く生み
出してきた。米国の最先端基礎医学研究機関、
S ALK 研究所の国際評議会メンバーや、経
済財政諮問会議専門調査会会長代理なども務
める。一貫して株主至上主義に警鐘を鳴らし、
公益資本主義の実現を提唱。著書に﹃だれか
を 犠 牲 に す る 経 済 は、 も う い ら な い ﹄
︵ウェ
ッジ︶、﹃増補 世紀の国富論﹄︵平凡社︶など。
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①米国のフェーズ1、2通過の新薬
治験(臨床試験)
基礎研究
A
胞︵人工多能性幹細胞︶は、創薬に
療もCNSに光を照らしつつある。
く存在する。幹細胞を用いた再生医
これまで医薬品の中核を占めてき
①の規制緩和は、検査薬やCNS
イノベーションをもたらす。
た化学製剤は、安全性の立証が難し
験が行われてきた。しかし、もとも
え、希少性疾患に苦しむ患者とその
かった。動物で安全性を確認しても、 分野から実施していけばよいだろう。
と自分の細胞である幹細胞、中でも
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December 2013
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