2015年の米国株式市場見通し 企業業績の堅調さを背景に上昇を見込む 2014年12月5日 Market Insights Program グローバル・マーケット・ストラテジスト 重見 吉徳 要旨 2015年の米国株式は、業績の拡大に沿った株価の上昇が期待される 企業業績については、①景気の拡大に伴う売上高の伸びと、②資源価 格や賃金、金利といった生産コストの限定的な上昇を背景とする、一定 の利益率(マージン)確保により、安定的な伸びが期待される バリュエーションについては、景気の拡大とFRBの利上げペースの緩慢 さが投資家心理を下支えすると見られることから、横ばい推移と見込む 2015年の米国株式市場の見通し 株価は「1株当たり利益(EPS)」と「株価収益率(PER)」の2つを掛け合わせた ものとして計算することができます。言い換えると、『株価の半分は業績が決め、 もう半分はバリュエーションが決める』ということです。 まず、業績(EPS)についてですが、11月末時点における株式市場のアナリス ト全体の集計見通しによると、2015年には前年比9.5%の増益率が見込まれ ています(S&P500指数ベース)。ちなみに、過去10年の増益率の平均値は 8.6%、過去20年は8.3%です(いずれも2013年までの実績値に基づく)。 次に、バリュエーションについては、11月末時点のPER(1年先予想PER)は、 16.0倍です(S&P500指数ベース)。同様に、過去10年の平均値は13.9倍、過 去20年の平均値は16.2倍です。 株価見通しを考える上で難しいのはバリュエーションです。米国の景気は拡大 局面にある中、米連邦準備制度理事会(FRB)による利上げのペースは緩や かと見られ、投資家心理が急速に落ち込む可能性は低いと考えます。こうした 見通しから、バリュエーション(PER)については横ばい推移を前提とします。 図:S&P500指数の1株当たり利益(EPS)の伸び率(前年比) データ期間:1994年から2015年まで、2014年および2015年については集計見通しに基づく 30%(円) (円) 日経平均株価 20% アナリスト 集計見通し 10% 0% -10% -20% ドル・円 '94 '95 '96 '97 '98 '99 '00 '01 '02 '03 '04 '05 '06 '07 '08 '09 '10 '11 '12 '13 '14 '15 注:2008年の実績値はマイナス31.6%、2010年はプラス42.8%。 出所 : Datastream, J.P.Morgan Asset Management 2015年の米国株式市場見通し 企業業績の堅調さを背景に上昇を見込む バリュエーション(PER)について横ばい推移を前提とする場合、すなわち、株 価が実力どおりに企業業績の伸びを反映すると、約8-10%程度を中心とする 株価の上昇が期待されます(S&P500指数ベース)。 ただし、こうした見通しはあくまで「目安」です。また、過去の実績は将来の成果 を示唆・保証するものではありません。いずれも十分な注意を要します。 米国経済は引き続き拡大を続ける まず、米国の来年のGDP成長率について、FRBは9月時点で+2.8%程度と見 ています。足元の成長率は4-6月期が+4.6%、7-9月期が+3.5%であり(いず れも前期比年率換算)、米国経済は雇用の伸びを背景に堅調な拡大が続いて います。来年についても引き続き雇用の伸びが期待されるところです。 また、2013年以降、いわゆる『財政の崖』が家計の可処分所得を押し下げたり、 財政支出を抑制したりしてきましたが、給与税減税廃止の影響ははく落し、財 政赤字は大幅に削減される中、インフラ投資の重要性が認識されています。 したがって、家計の消費や政府支出、公的投資が米国の成長率を下支えする ものと見られます。また、企業の設備投資についても、民間・公的需要の拡大 と(次に触れる)低金利環境を背景に伸びが期待されます。 Guide to the Markets-Japan 2014年第4四半期版14ページ (弊社HPよりダウンロード頂けます) 2 2015年の米国株式市場見通し 企業業績の堅調さを背景に上昇を見込む 景気拡大ゆえの利上げだが、ペースは緩やかに留まる 来年の世界経済や金融市場にとっての最も大きなテーマの1つは「FRBによる 利上げ」です。利上げ開始の時期については、FRBが強調するように労働市 場の動向次第ですが、来年の後半以降となる可能性があります。 ま ず、 足 元の 失 業 率は10 月 時 点 で 5.8% と、 過去 65 年 の 長期 平 均値 (5.9%)を下回り、FRBが考える長期の均衡水準(5.2-5.5%)に近づきつつ あります。しかしながら、依然として賃金の伸びが加速する兆しは見られま せん。背景としては①生産性の伸びが鈍化していることや、②米国の中間 層以下の労働者が新興国からの輸入財や新興国への生産拠点の移転な どを通じ、激しい競争にさらされていることなどが挙げられます。 また、足元の原油価格の下落もインフレ率の押し下げ要因として働きます。 加えて、日米欧の中で米国だけが利上げに転じるため、ドル高基調が続く 可能性があります。かつての円高を想像すればわかりやすいですが、ドル 高は、①米国企業の海外業績を下押しする、②シェール革命の恩恵による 製造業の国内回帰トレンドを押し留めて中間層の雇用拡大を抑制する、③ 輸入物価の伸びを抑制する、などの可能性を生みます。 これらの点から、FRBは利上げに転じるも、そのペースは緩やかと見込みます。 Guide to the Markets-Japan 2014年第4四半期版40ページ 3 (弊社HPよりダウンロード頂けます) 2015年の米国株式市場見通し 企業業績の堅調さを背景に上昇を見込む 企業業績の伸びを反映した株価の上昇が期待される 先の点を企業業績に読みかえると、①景気の拡大により、売上高の伸びが期 待できるほか、②資源価格や賃金、金利といった生産コストの上昇が緩やか に留まる中、企業は一定の利益率(マージン)を確保すると見られます。 利益率(マージン)については、来年についても米国の企業は積極的にM&A (合併・買収)を進めていくものと見られます。M&Aは企業間の過当競争を減ら すことで、安定的な利益率(マージン)を確保していくために大きな効果を発揮 します。また、ドル高基調も米国の企業にとってみると海外企業の買収コスト が低くなるため、M&Aを後押しする可能性があります。 加えて、来年についても米国の企業は引き続き、配当や自社株買いなどの株 主還元を進め、自己資本利益率(ROE)や1株当たり利益(EPS)の上昇を通じ た企業価値の向上に取り組むと見込んでいます。 最後に、政策動向については、民主・共和両党ともに法人税率の引き下げの 必要性で概ね一致していることから、法人税率の引き下げが実現すれば、長 期的な企業利益が押し上げられる可能性があります。 これらの点から、①米国の企業業績は安定的な伸びが期待され、②景気の拡 大とFRBの利上げペースの緩慢さが投資家心理を下支えすると見られること から、株価についても業績の伸びを反映した上昇を見込みます。 S&P500指数は、スタンダード&プアーズ・ファイナンシャル・サービシズ・エル・エル・シーが発表しており、著作権はスタンダード&プアーズ・ファイナンシャル・サービシ ズ・エル・エル・シーに帰属しています。 本資料は、JPモルガン・アセット・マネジメント株式会社が作成したものです。2014年12月5日時点におけるJPモルガン・アセット・マネジメントの見通しを含んでおり、 将来予告なく変更されることがあります。「JPモルガン・アセット・マネジメント」は、JPモルガン・チェース・アンド・カンパニーおよび世界の関連会社の資産運用ビジネ スのブランドです。 過去のパフォーマンスは将来の成果を保証するものではありません。本資料に記載のすべての予測は例示目的であり、投資の助言や推奨を目的とするものでは ありません。意見または推計、予測、金融市場のトレンドに係る記載は、作成時点の市場環境下での我々の判断に基づいており、将来予告なく変更される場 合があります。記載された情報の正確性および完全性を保証するものではありません。本資料はいかなる金融商品の売買も推奨するものではありません。見通し や投資戦略はすべての投資家に適合するものではありません。特定の証券、資産クラス、金融市場の関する記載は例示を目的とするものであり、これらの推奨ま たは投資、商品、会計、法務、税務に係る助言を目的とするものではありません。JPモルガン・チェース・アンド・カンパニー・グループはこれらに関して責任を負うも のではありません。記載された見通しはJPモルガン・アセット・マネジメントによるものであり、JPモルガン・チェース・アンド・カンパニー・グループの他のグループ会社また は他の部門の意見を必ずしも反映していません。 「J.P.モルガン・アセット・マネジメント」は、JPモルガン・チェース・アンド・カンパニーおよび世界の関連会社の資産運用ビジネスのブランドです。本資料は、以下のグ ループ会社により発行されたものです。 香港:証券先物委員会の監督下にあるJFアセット・マネジメント・リミテッド、JPモルガン・ファンズ(アジア)リミテッド、JPモルガン・アセット・マネジメント・リアル・アセット (アジア)リミテッド、インド:証券取引委員会の監督下にあるJPモルガン・アセット・マネジメント・インディア・プライベート・リミテッド、シンガポール:金融管理局の監 督下にあるJPモルガン・アセット・マネジメント(シンガポール)リミテッド、JPモルガン・アセット・マネジメント・リアル・アセット(シンガポール)プライベート・リミテッド、台 湾:金融監督管理委員会の監督下にあるJPモルガン・アセット・マネジメント(タイワン)リミテッド、JPモルガン・ファンズ(タイワン)リミテッド、日本:金融庁の監督下 にあるJPモルガン・アセット・マネジメント株式会社(金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第330号 加入協会:日本証券業協会、一般社団法人投資信 託協会、一般社団法人日本投資顧問業協会)、韓国:金融委員会の監督下にあるJPモルガン・アセット・マネジメント(コリア)カンパニー・リミテッド(韓国預金 保 険 公 社に よ る保 護 は あ りませ ん)、オー ストラ リ ア : 証 券 投 資 委 員会の 監 督 下にあ る JPモル ガ ン・ア セット・ マネジ メ ン ト( オー ス トラ リ ア ) リ ミテッ ド (ABN55143832080)(AFSL376919)(Corporation Act 2001(Cth)第761A条および第761G条で定義される販売会社に配布が限定されます) 本資料は、配布される国・地域の法令や規則によって、受取人が他者に転送したり、他者に見せたりすることはできない場合があります。 投資にはリスクが伴います。投資資産の価値および得られるインカム収入は上下するため、投資家の投資元本が確保されるものではありません。投資判断する 際は、ご自身で調査、評価するか、もしくは投資助言を受けるようにしてください。本資料が配布され、投資判断を行う国・地域で適用される法令諸規則に従う 責任は受取人ご自身にあります。 © 2014 JPMorgan Chase & Co. 4
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