米国社債への投資を考える - JPモルガン・アセット・マネジメント

MARKET INSIGHTS
Market Bulletin
2016年8月22日
米国社債への投資を考える
要旨
• 英国のEU離脱への過度な悲観が後退した後でも、米国の長期金利は低
位で推移している。これにより、投資家は米国投資適格社債や米ハイ・イー
ルド債券を、より重視していく可能性がある
• 低金利環境が進む中で、米国投資適格社債の利回りは十分に魅力的と考
えられる。また、先に始まった欧州中央銀行(ECB)の債券買入策は、欧州
社債の利回りに対して、低下圧力(価格は上昇)をもたらしている。利回り
低下により欧州社債の魅力が薄れることで、相対的に米国投資適格社債
の魅力は増すと考えられる
• 相対的に高い利回りだけでなく、FRBの緩やかな利上げペースも、米国ハ
イ・イールド債券の魅力を一層高める要因となっている。また、「米国株式
の代替」という視点も重要と考える
米国国債の魅力は低下
7月8日、米国の長期金利は、過去最低となる1.36%をつけました。英国のEU
Anastasia V. Amoroso, CFA
Global Market Strategist
Market Insights
Akira Kunikyo
Global Market Strategist
Market Insights
離脱決定に伴い、先行き不透明感が広がったことが要因です。しかし、その後、
英国のEU離脱への過度な悲観が後退した後でも、米国の長期金利は低位で
推移しています。
市場参加者は米国の利上げペースは緩やかと見ているようであり、この見通
しが米長期金利の上昇を抑制していると考えられます。また、市場環境が不
透明な中、「安全資産」を求める投資家の動きから、米長期金利は今後も低位
に留まる可能性があります。しかし、あまりにも低い金利水準を踏まえれば、
投資対象としての米国国債の魅力は低下したといえるでしょう。これにより、投
資家は米国投資適格社債や米ハイ・イールド債券を、より重視していく可能性
があります。
Guide to the Markets Japan
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MARKET BULLETIN | AUGUST 22, 2016
米国投資適格社債の需給環境は良好
まず、米国投資適格社債に注目する理由として、次の理由が挙げられます。
米国投資適格社債の利回りは2.80%(7月31日時点)であり、これは米国
国債と比べ、はるかに大きなインカム獲得の機会となります。加えて、これ
は米国株式の配当利回り2.10%(同日時点)をも上回る水準です。低金利
環境が進む中で、米国投資適格社債の利回りは十分に魅力的と考えられ
ます。
また、需給環境も良好です。米国投資適格社債の多くを保有しているのは、
海外の民間投資家(銀行や生損保)です。足元では、世界各国での低金利
環境の長期化により、投資家は相対的に高利回りの米国投資適格社債を
積極的に購入しています。特に、先に始まった欧州中央銀行(ECB)の債
券買入策は、欧州社債の利回りに対して、低下圧力(価格は上昇)をもたら
しています。利回り低下により欧州社債の魅力が薄れることで、相対的に
米国投資適格社債の魅力は増すと考えられます。
図表1:各資産の利回り(2000年1月1日~2016年7月31日)
10%
9%
8%
7%
6%
5%
4%
米国投資適格社債・
利回り
米国株式・
配当利回り
米国10年
国債利回り
3%
2%
1%
0%
'00 '01 '02 '03 '04 '05 '06 '07 '08 '09 '10 '11 '12 '13 '14 '15 '16
出所:BofA Merrill Lynch、S&P Dow Jones Indices、Bloomberg、J.P. Morgan Asset Management
注:使用したインデックスは次の通り。米国株式: S&P500、米国投資適格社債: BofA Merrill Lynch US
Corporate
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米国ハイ・イールド債券の投資妙味
投資家は、米国ハイ・イールド債券の動向にも目を向けるべきでしょう。な
ぜなら、米国が今後1年以内に景気後退に陥る可能性は低いとみており、
デフォルト率は資源セクターを除き低位にとどまる見通しだからです。
7.14%(7月31日時点)という相対的に高い利回りと、FRBの緩やかな利上
げペースも、米国ハイ・イールド債券の魅力を一層高める要因となっていま
す。
米国ハイ・イールド債券の利回りは、今年初めの高い水準から大幅に低下
しているものの、依然として魅力的な水準にあります。米経済指標の改善
が見られれば、利回りは更に低下(価格は上昇)する可能性があります。
また、「米国株式の代替」という視点も重要です。米企業は依然としてドル
高や原油価格下落に足を引っ張られており、株価上昇のドライバーとなる
業績の伸びは緩やかです。また、株価収益率(PER)は、少なくとも割安と
はいえない水準にまで上昇しています。
このように、株式に大きく資金を振り向けづらい環境下、株式の代替として
米国ハイ・イールド債券を保有することも一案と考えます。米国ハイ・イー
ルド債券は相対的に高利回りな上に、株式に似た価格特性を持ち、さらに
デフォルト時の弁済順位が株式より高いという特徴を有します。これらの特
徴は、足元のような不確実性の大きい市場環境で有利に働く可能性があり
ます。
図表2:米国ハイ・イールド債券とエネルギー・セクターの利回り
(2014年1月1日~2016年7月31日)
25%
米国ハイ・イールド債券
エネルギーセクター
23%
21%
19%
17%
15%
13%
11%
9%
7%
米国ハイ・イールド債券
5%
'14
'15
'16
出所:BofA Merrill Lynch、Factset、J.P. Morgan Asset Management
注:使用したインデックスは次の通り。米国ハイ・イールド社債: BofA Merrill
Lynch US High Yield
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投資への示唆
総合すると、米国の投資適格社債やハイ・イールド債券について投資妙味
があると考えています。
米国投資適格社債については、先に述べた利回り面に加え、価格変動性
の低さや、株式との低相関も重要な要素です。リスクと期待リターンのバラ
ンスや、分散投資効果を踏まえれば、投資適格社債は組み入れを検討す
るに適した資産といえるでしょう。
また、米国ハイ・イールド債券は株式よりも低いリスクで、株式と同様のリ
ターンを期待できる資産です。世界各国で低金利が進行しているため、利
回り獲得競争により、米国ハイ・イールド債券の価格は下支えされていま
す。米国経済が景気後退に陥らないシナリオでは、利回りはさらに低下(価
格は上昇)する可能性があります。
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